説明

油性睫用化粧料

【課題】ツヤ(透明性)を維持しつつ、耐水性・耐皮脂性を兼ね備えた油性睫用化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(D);
(A)アルコール変性ミツロウ
(B)有機変性粘土鉱物
(C)デキストリン脂肪酸エステル
(D)揮発性油剤
を含有することを特徴とする油性睫用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れた油性睫用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マスカラなどの睫用化粧料に対するニーズは年々多様化し、近年ではロング、ボリューム、カール力などの基本的な化粧効果以外にも様々な機能が求められるようになっている。特に化粧崩れを起こしにくい耐水性や耐皮脂性、また、目元を艶やかな印象にするためのツヤについても高い性能が求められるようになってきている。
【0003】
しかしながら、従来技術ではツヤ(透明性)を維持するためにはワックスや皮膜形成剤の配合量を少なくする必要があり、その結果、耐水性や耐皮脂性が低下する。一方、耐水性や耐皮脂性を維持しようとするとワックスや皮膜形成剤の配合量を多くする必要があるためツヤ(透明性)が低下する。従って、ツヤ(透明性)と耐水性や耐皮質性の、両方の性質を併せ持つ睫用化粧料はまだ開発されていなかった。
【0004】
一方、アルコール変性ミツロウは、化粧品基剤としての利用や(特許文献1参照)、睫用化粧料への配合が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−92605号公報
【特許文献2】特開平10−1419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ツヤ(透明性)を維持しつつ、耐水性、耐皮脂性を兼ね備えた油性睫用化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、デキストリン脂肪酸エステルと揮発性油剤とアルコール変性ミツロウと有機変性粘土鉱物とを組み合わせて配合した場合に、従来にはない透明性、耐水性及び耐皮脂性を発揮し、さらに保存安定性が良好な油性睫用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)アルコール変性ミツロウ
(B)有機変性粘土鉱物
(C)デキストリン脂肪酸エステル
(D)揮発性油剤
を含有することを特徴とする油性睫用化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来にはない透明性、耐水性及び耐皮脂性を発揮し、さらに保存安定性が良好な油性睫用化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について詳述する。また、本発明における「透明又は半透明」とは、アプリケーターで透明フィルム(ポリエステル製)上に60μmの膜厚で膜を作成し、室温で3時間乾燥させた際に、下に置いた文字(フォント:Century、ポイント:9)が読解可能な程度の透明度を有することをさす。
【0011】
本発明に用いる成分(A)は、ミツロウの遊離脂肪酸をアルコールでエステル化させたアルコール変性ミツロウであり、本発明において油性睫用化粧料の透明性及び安定性を高めるものである。変性に用いられる、アルコールとしては、炭素数12〜24の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和アルコール、コレステロール等が挙げられ、このうち炭素数12〜24の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数12〜24の直鎖又は分岐鎖の飽和アルコールが好ましい。
具体的にはステアリルミツロウ、ベヘニルミツロウ等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができるが、ステアリルミツロウとベヘニルミツロウを併用するのが透明性及び安定性の観点より特に好ましい。市販品としてはBW Ester BW67(Kester Keunen社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)のアルコール変性ミツロウは、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその含有量は、化粧料総量を基準として1〜15質量%であると好ましく、より好ましくは3〜10質量%である。アルコール変性ミツロウをこの範囲で含有すると、透明性及び安定性が良好であり、化粧料自体が白っぽく濁ることがない。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)の有機変性粘土鉱物としては、通常化粧料に配合できる原料であれば特に限定されないが、粘土鉱物を第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものが好ましい。当該第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サボナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の天然又は合成粘土鉱物が挙げられる。有機変性粘土鉱物の具体例としては、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ジメチルジステアリルアンモニウム変性モンモリロナイト等が挙げられる。市販品としては、ベントン38やベントン34(何れも、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)等が挙げられ、これら有機変性粘土鉱物はその1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
本発明に用いられる成分(B)の有機変性粘土鉱物は、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその含有量は、化粧料総量を基準として1〜8質量%であると好ましく、より好ましくは3〜5質量%である。
有機変性粘土鉱物をこの範囲で含有すると、透明性及び安定性が良好であり、化粧料自体が白っぽく濁ってしまうことがない。
【0015】
本発明に用いられる成分(C)のデキストリン脂肪酸エステルは、通常化粧料に配合できる原料であれば特に限定されないが、デキストリンC6−C24脂肪酸エステルが好ましい。具体的にはパルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、オクタン酸デキストリン等が挙げられるが、パルミチン酸デキストリンを用いると特に安定性が良好であり好ましい。市販品としてはレオパールKLやレオパールTT(何れも、千葉製粉社製)、N−DXEやNPA−DX(何れも、日本サーファクタント工業社製)等が挙げられ、これらデキストリン脂肪酸エステルはその1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明に用いられる成分(C)のデキストリン脂肪酸エステルは、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその含有量は、化粧料総量を基準として1〜10質量%であると好ましく、より好ましくは2〜6質量%である。デキストリン脂肪酸エステルをこの範囲で含有すると、透明性、安定性、耐水性及び耐皮脂性が良好であり、特に透明性が良好である。
【0017】
本発明に用いられる成分(D)の揮発性油剤としては、化粧料に使用できるものであれば、特に制限されないが、例えば、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、低重合度ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられ、これらを必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。揮発性油剤であれば、いずれのものも使用することができるが、中でも軽質流動イソパラフィン及び/又はイソドデカンが油性睫用化粧料の乾燥を高め、揮発により強固な化粧塗膜を形成する効果に優れ、好ましい。市販品としては、IPソルベント(出光興産社製)、マルカゾールR(丸善石油化学社製)、シェルソル(シェル化学社製)、シリコンKF994、KF995、KF96A(5CS)(何れも、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる成分(D)の揮発性油剤は、1種又は2種以上を適時選択して用いることができ、またその含有量は、化粧料総量を基準として1〜97質量%が好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。揮発性油剤をこの範囲で含有すると、安定性の点から好ましい。
【0019】
本発明の油性睫用化粧料は、前記の各成分に加えて必要に応じて、かつ本発明の効果を損なわない範囲において、化粧品において一般的に用いられる各種の成分、例えば、睫毛を長く見せるための繊維、固形又は半固形又は液状の油性成分、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、溶剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン剤、育毛剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類、キューティクル保護成分等を適時配合することができる。
【0020】
本発明で用いることのできる上記繊維としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられる。また、これらの繊維は一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。
【0021】
本発明で用いることのできる上記油性成分としては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、α−オレフィンオリゴマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モクロウ、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、コメヌカロウなどのワックス類や、ステアリン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ウンデシレン酸、パルミトオレイン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ツバキ油、アボガド油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ホホバ油、パーム油、ヤシ油、硬化ヤシ油、硬化油、硬化ヒマシ油、卵黄油、ナタネ油、コムギ胚芽油、落花生油、コメヌカ油等の油脂、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)トリグリセリル、オレイン酸フィトステリル、乳酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル,マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等のエステル類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラノリンアルコール、オクチルドデカノール、カプリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン等の炭化水素、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン系油、フッ素変性ポリシロキサン等、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油、パルミチン酸2−エチルヘキシル,2−エチルヘキサン酸セチル,イソノナン酸イソトリデシル等の脂肪酸と一価のアルコールのエステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール,ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール等の脂肪酸とグリコールのエステル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン,テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトールなどの脂肪酸と多価アルコールのエステル、リンゴ酸ジイソステアリルなどの水酸基を持つエステル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル,炭酸ジアルキルなどの二塩基酸のエステル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル,マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸とステロールとのエステルや液状ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられる。
【0022】
本発明の油性睫用化粧料は、マスカラとしても使用できるが、マスカラを使用する前又は後に別途使用するマスカラ下地やマスカラオーバーコート剤として使用することが望ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、表中の数値は含有量(質量%)を表わす。実施例に先立ち、試料の製造方法及び各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0024】
(1)試料の製造方法(実施例1〜4及び比較例1〜4)
表1の成分(1)〜(12)を100℃まで加熱して溶解させた後、均一分散する。その後、分散を続けながら30℃まで水冷する。
【0025】
(2)透明性の評価
アプリケーターで透明フィルム(ポリエステル製)上に60μmの膜厚で膜を作成し、室温で3時間乾燥させ、下に文字(フォント:Century、ポイント:9)を置き、目視により評価できるか否かで判定を行なった。
透明又は半透明;◎
わずかに白濁 ;△
完全に白濁 ;×
【0026】
(3)安定性の評価
試料を5〜40℃の1サイクル/日の往復恒温槽内に放置して、2週間後の保存安定性を下記の評価基準に従って評価した。
分離、凝集、固化なし ;◎
分離、凝集、固化ごくわずかに有り;○
分離、凝集、固化あり ;△
完全に分離又は固化 ;×
【0027】
(4)耐水性の評価
室温にてO/Wタイプのマスカラを睫毛に塗布し乾燥させ、その上から試料を塗布しさらに乾燥させた。その後スプレー式の水を5秒間噴霧し、その後2秒間隔で瞬きをして1分後に下瞼にマスカラが色移りするかを確認した。
色移りなし ;◎
ごくわずかに色移り;△
色移り ;×
【0028】
(5)耐皮脂性の評価
室温にてO/Wタイプのマスカラを睫毛に塗布し乾燥させ、その上から試料を塗布しさらに乾燥させた。6時間後に下瞼にマスカラが色移りするかを確認した。
色移りなし ;◎
ごくわずかに色移り;△
色移り ;×
【0029】
実施例1〜4及び比較例1〜4(マスカラオーバーコート)
処方及び上記の評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかなように、本発明の油性睫用化粧料は、透明性、安定性、耐水性及び耐皮脂性が良好であった。しかし、成分(A)〜(C)のいずれかを具備しない比較例1〜4は、実施例と比較して、いずれかの評価項目で劣ったものしか得ることができなかった。
【0032】
実施例5(ラメ入りマスカラオーバーコート)
(成分) (質量%)
1.ステアリルミツロウ 2.0
2.ベヘニルミツロウ 2.0
3.ミツロウ 1.0
4.パラフィン 1.0
5.カルナウバワックス 0.5
6.ポリエチレン 1.0
7.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 4.5
8.パルミチン酸デキストリン 4.0
9.トリメチルシロキシケイ酸 5.0
10.(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー 2.0
11.フェノキシエタノール 0.3
12.雲母チタン 1.5
13.イソドデカン to100
【0033】
実施例6(繊維入りマスカラベース)
(成分) (質量%)
1.ステアリルミツロウ 3.0
2.ベヘニルミツロウ 3.0
3.ミツロウ 1.0
4.パラフィン 1.0
5.カルナウバワックス 0.5
6.ポリエチレン 1.0
7.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 4.5
8.パルミチン酸デキストリン 3.0
9.トリメチルシロキシケイ酸 8.0
10.フェノキシエタノール 0.3
11.ナイロンファイバー 2.0
12.イソドデカン to100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D);
(A)アルコール変性ミツロウ
(B)有機変性粘土鉱物
(C)デキストリン脂肪酸エステル
(D)揮発性油剤
を含有することを特徴とする油性睫用化粧料。
【請求項2】
油性睫用化粧料の総量を基準として、成分(A)を1〜15質量%、成分(B)を1〜8質量%、成分(C)を1〜10質量%含有する請求項1記載の油性睫用化粧料。
【請求項3】
透明又は半透明である請求項1又は2記載の油性睫用化粧料。

【公開番号】特開2013−63927(P2013−63927A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203668(P2011−203668)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】