説明

治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチおよび方法

本発明の実施形態は、鉄欠乏に罹患する個体に、鉄含有組成物を経皮送達するためのパッチを提供する。多くの実施形態は、鉄の治療有効量を経皮送達するためのイオン泳動パッチを提供する。このパッチは、電極と、治療有効量の鉄の送達のためのイオン鉄を含む組成物を含む貯蔵部とを含む。種々の実施形態が、一つ以上の形態の鉄欠乏に罹患する個体に治療有効量の鉄を送達するためのイオン泳動パッチを提供する。そのような方法は、鉄欠乏を治療および/または防止するために用いられえる。送達される鉄の量は、患者の体重および型、鉄欠乏の量などのパラメーターに依存して調節されえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願との関連
本願は、「Patches And Methods For The Transdermal Delivery Of A Therapeutically Effective Amount Of Iron」と題された、2008年6月25日に出願された、米国仮特許出願第61/075,720号の優先権の利益を主張し、この米国仮特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野。本発明の実施形態は、鉄欠乏を治療するためのパッチおよび方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、必要な個体への鉄の経皮送達を含むパッチおよび方法に関する。
【0003】
現在、鉄は、非経口的または経口的に投与される。鉄は、溶液、錠剤または腸溶コーティング製剤を含む様々な鉄製剤を介して経口的に投与される。経口鉄製剤の最も一般的な形は、硫酸第一鉄およびグルコン酸第一鉄である。硫酸第一鉄は、より安価で、より多くの元素鉄を含むが、グルコン酸第一鉄よりも胃腸内の副作用が強い。典型的には、一錠の経口鉄が1日につき約325mgの用量で毎日3回投与される。しかし、当業者には当然のことながら、325mgの補助剤はおそらくフマル酸第一鉄またはグルコン酸第一鉄から作られており、実際にはピル一つあたり100mgの元素鉄しか含まず、質量の残部はフマル酸塩またはグルコン酸カウンター鉄である。さらに、実際に吸収されるのはこの用量の鉄のごく一部だけである。
【0004】
経口鉄製剤は、多くの不都合を有する。何よりもそれらは、嘔気、膨満、便秘、および下痢を含む胃腸内の副作用を引き起こす。これは、このような補助剤をとっている患者の約40〜66%において、鉄補充が続けられない原因となる。さらに、鉄の吸収は可変的であり、他の化合物の経口摂取により影響される。例えば、食品の経口摂取により、鉄吸収が約50%減少するが、これは、多くの患者が胃腸内の副作用を減らすために食品と一緒に鉄を摂取することから問題である。
【0005】
第二に、多くの薬物が鉄吸収を減らすことが知られている。例えば、制酸剤および胃のpHを減らす他の薬物の経口摂取により、鉄吸収が減少することが知られている。同様に、鉄の経口摂取もまた、抗生物質を含む多くの薬物の吸収を減少させる。
【0006】
さらに、鉄が胃腸系の細胞を通して適切に吸収できないため、鉄欠乏性貧血と関連する多くの状態は、経口鉄補充に十分に反応しない。これは、クローン病等、腸の特定の炎症状態で特に言えることである。さらに、腎不全の貧血等の機能的鉄欠乏と関連する疾患も、経口投与された鉄の吸収の制限と関連する。これは、関節リウマチおよび他の自己免疫疾患と関連するもの、ならびに癌または癌化学療法治療に続発する貧血等、機能的鉄欠乏と関連する他の多くのいわゆる「炎症状態」にも言えることである。これは、エリスロポイエチンで治療され、鉄要求量がかなり増加している、これらの状態の患者において特に言えることである。
【0007】
経口鉄投与に代わる治療戦略は、注射により鉄を投与することである。鉄は筋肉内に注射できるが、これは注射処置自体に伴う痛みのために、まず行われない。したがって鉄は、注射方法により患者に投与される場合には、静脈内投与されるのが典型的である。
【0008】
鉄注射により鉄欠乏を治療するために、様々なアプローチが用いられている。過去には、注射に利用できる鉄製剤は、鉄デキストラン一つのみだった。鉄欠乏の是正には有効であるものの、鉄デキストランの注射にはいくつかの限界があった。鉄デキストランは、患者へのリスクを減らすために数時間かけて投与しなければならなかったが、この予防措置をとっても、10〜15%の患者がアレルギー性副作用を発症し、これにより鉄デキストラン注射後に患者が死亡することもあった。
【0009】
鉄デキストラン注射のこうした副作用から、新しい形の静脈内鉄注射、すなわちグルコン酸第一鉄および第一鉄スクロースの使用が生まれた。同じように有効なこれらの形の鉄が、今日使用される好ましいタイプの鉄となっている。しかし、ほとんどの患者は、数百ミリグラムの鉄が数日から数週間にわたり与えられた後、注射一回あたり約100mgが毎週または毎月の頻度で間欠投与される、何らかのタイプの負荷レジメンにより治療される。静脈内投与等、非経口経路による長期的鉄投与治療レジメンの方法は、特に注射部位の局所的痛みや、注射を受ける患者を潜在的に血液媒介の疾患にさらすといった、いくつかの不都合を有する。
【0010】
したがって、鉄欠乏を患う患者のための、より好都合かつ有効な形の鉄補充への必要性が、当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な実施形態において、本発明は、治療有効量の鉄を含む組成物の経皮送達用のパッチを提供する。多くの実施形態において、パッチは、組成物の経皮イオン泳動送達用に構成される。特定の実施形態においては、鉄は、一つ以上の第一鉄塩類の形である。当業者には当然のことながら、治療有効量の鉄は元素鉄であり、本明細書に記載の鉄含有化合物の任意のものから得られる。関連の実施形態においては、一つ以上の第一鉄塩類は、グルコン酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、およびフマル酸第一鉄からなる群より選択される。
【0012】
本発明の実施形態は、治療有効量の鉄(例えば一つ以上の第一鉄塩の形)と、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン、およびエリスロポイエチン刺激剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬剤とを含む組成物の経皮送達用のパッチを提供する。特定の実施形態では、ビタミン補助剤は、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピロキシジン、ビオチン、葉酸、およびコバラミンからなる群より選択される。
【0013】
他の特定の関連の実施形態においては、本発明は、鉄含有化合物中に治療有効量の鉄を含む組成物であり、組成物がシクロデキストリンをさらに含む該組成物の、経皮送達用のパッチを提供する。
【0014】
ある実施形態では、本発明のパッチは、一つ以上の経皮透過化剤を含む鉄含有組成物をさらに含む。
【0015】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、一つ以上の鉄含有化合物由来の治療有効量の鉄と、および/またはビタミン補助剤、エリスロポイエチン刺激剤、エリスロポイエチン、製薬学的に許容可能な担体、経皮透過化剤、およびシクロデキストリン類からなる群より選択される一つ以上の化合物または薬剤とを含む、本発明の医薬組成物の経皮送達用のパッチを提供する。さらに、これらおよび関連の実施形態において、パッチは、様々な医薬組成物のイオン泳動経皮送達用に構成でき、電極と医薬組成物の貯蔵部を含みうる。
【0016】
特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチを提供し、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約1gの元素鉄の範囲である。さらに、特定の実施形態は、この範囲および後述の他の範囲の鉄のイオン泳動送達用のパッチを提供する。
【0017】
関連の特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチを提供し、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約300mgの元素鉄の範囲である。
【0018】
より特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチを提供し、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約100mgの元素鉄の範囲である。
【0019】
さらにより特定の実施形態においては、本発明は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチを提供し、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約50mgの元素鉄の範囲である。
【0020】
様々な実施形態において、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法も提供する。方法は、治療有効量の鉄を含む組成物を含むパッチに個体を接触させるステップと、パッチ中の鉄を個体に送達するステップとを含む。特定の実施形態においては、個体は、一つ以上の第一鉄塩類の形で鉄を投与される。
【0021】
関連の実施形態においては、個体は、グルコン酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、およびフマル酸第一鉄からなる群より選択される一つ以上の第一鉄塩類の形で、鉄を投与される。
【0022】
本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法も提供する、方法は、治療有効量の鉄(例えば一つ以上の第一鉄塩類の形で)と、ビタミン剤、エリスロポイエチン、およびエリスロポイエチン刺激剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬剤とを含む組成物の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含む。特定の実施形態では、ビタミン補助剤は、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピロキシジン、ビオチン、葉酸、およびコバラミンからなる群より選択される。
【0023】
特定の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、鉄含有化合物中に治療有効量の鉄を含む組成物の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含み、当該組成物は、シクロデキストリンをさらに含む。
【0024】
ある実施形態では、本発明の方法は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、本発明のパッチに個体を接触させるステップを含み、鉄含有組成物は、一つ以上の経皮透過化剤をさらに含む。
【0025】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、一つ以上の鉄含有化合物由来の治療有効量の鉄と、および/または、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン刺激剤、エリスロポイエチン、製薬学的に許容可能な担体、経皮透過化剤、およびシクロデキストリン類からなる群より選択される一つ以上の化合物または薬剤とを含む、本発明の医薬組成物を含むパッチに、個体を接触させるステップを含む。
【0026】
特定の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含み、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約1gの元素鉄の範囲である。
【0027】
関連の特定の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含み、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約300mgの元素鉄である。
【0028】
より特定の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含み、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約100mgの元素鉄の範囲である。
【0029】
さらにより特定の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法を提供する。この方法は、治療有効量の鉄の経皮送達用のパッチに個体を接触させるステップを含み、パッチ中の治療有効量の鉄は、約10mg〜約50mgの元素鉄の範囲である。
【0030】
様々な実施形態において、本発明は、治療有効量の鉄を含む組成物を含むパッチに個体を接触させるステップと、パッチ中の鉄を個体に送達するステップと含む、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法も提供する。
【0031】
関連の実施形態においては、本発明は、鉄を含む組成物の、必要な個体への経皮送達のための方法も提供し、当該方法は、治療有効量の鉄を含む組成物を含むパッチに個体を接触させるステップと、パッチ中の治療有効量の鉄を含む組成物を、個体に送達するステップとを含み、さらに、パッチ中に治療有効量の鉄を含む組成物を、個体に能動的に送達するステップを含む。
【0032】
特定の実施形態では、パッチ中の治療有効量の鉄を含む組成物を能動的に送達する方法は、熱泳動、イオン泳動、磁気泳動、および超音波泳動からなる群より選択されうる。
【0033】
特定の関連の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む組成物が、持続的または間欠的に送達される。より特定の関連の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む組成物は、約1日〜約1ヶ月の期間、持続的に送達される。他の特定の関連の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む組成物は、約1日〜約1週間の期間、持続的に送達される。
【0034】
さらに他の特定の関連の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む組成物は、約1日〜約3日の期間、持続的に送達される。
【0035】
さらに他の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む組成物は、約1日の期間、持続的に送達されうる。
【0036】
様々な実施形態において、本発明は、本発明によるパッチのいずれか一つに個体を接触させるステップと、治療有効量の鉄を個体に送達し、これにより個体の鉄欠乏を防止および/または治療するステップとを含む、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法も提供する。
【0037】
関連の実施形態においては、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法は、本発明によるパッチのいずれか一つに個体を接触させるステップと、治療有効量の鉄を個体に送達し、これにより個体の鉄欠乏を防止および/または治療するステップとを含み、さらに、非経口または経口の治療有効量の鉄を投与するステップを含む。特定の実施形態においては、投与は、非経口である。
【0038】
ある特定の実施形態においては、非経口投与は、本発明の実施形態により提供されるパッチのいずれか一つに個体を接触させる前に行われうる。他の特定の実施形態においては、非経口投与は、静脈内でありうる。他の関連の特定の実施形態において、非経口投与は、皮下でありうる。他の特定の実施形態においては、投与は経口でありうる。ある特定の実施形態においては、経口投与は、本発明の実施形態により提供されるパッチのいずれか一つに個体を接触させる前に行われる。また、特定の実施形態では、本発明の実施形態により提供されるパッチのいずれか一つによる鉄の送達量または鉄の送達速度は、投与される非経口または経口用量に基づいて調節でき、逆もまた同様である。
【0039】
関連の実施形態においては、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法は、発明により提供されるパッチのいずれか一つに個体を接触させる前に、鉄の静脈内ボーラスを個体に投与するステップも含みうる。ボーラスは、鉄約500mg〜1グラムでありうる。
【0040】
本発明の方法の様々な実施形態は、様々な鉄欠乏を治療および/または防止するために適合されうる。特定の実施形態においては、個体は、貧血を伴わない鉄欠乏である。他の関連の実施形態においては、成長遅延;認知障害、および/または精神遅滞を防止するために、鉄欠乏が治療される。他のある実施形態においては、慢性アルコール中毒;栄養不良;動物タンパク質およびアスコルビン(absorbic)酸の消費量の減少;妊娠中、乳幼児期、または思春期の鉄要求量の増加;吸収不良症候群;および鉄の胃腸内吸収を減らす食品または薬物により、鉄欠乏が引き起こされる。
【0041】
特定の実施形態においては、個体は、鉄欠乏性貧血である。関連の実施形態においては、鉄欠乏性貧血は、薬物、消化性潰瘍疾患、痔核、外傷、手術、胃腸出血、透析、肺出血、子宮出血、月経、出生、尿路出血および供血により引き起こされる失血;原発性無酸症(achlorhydia)、胃酸pHを減じる化合物の使用に続発する続発性無酸症(achlorhydia);胃腸疾患;クローン病;潰瘍性大腸炎;スプルー;胃バイパス手術;悪性貧血;腸内寄生虫;鉤虫感染;鞭虫症;赤血球生成刺激剤の使用から生じる機能的鉄欠乏;炎症性疾患自己免疫疾患;腎不全;癌;およびベータサラセミアに起因する。
【0042】
ある関連の実施形態においては、個体は、赤血球の小赤血球症、20%未満のヘモグロビン鉄結合能、10μg/L未満のフェリチンレベル、または20%未満のトランスフェリン鉄飽和レベルを特徴とする鉄欠乏である。他の関連の実施形態においては、個体は、100μg/L未満のフェリチンレベルを伴う機能的鉄欠乏である。
【0043】
関連の実施形態においては、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法は、パッチ中の治療有効量の鉄を含む組成物を個体に能動的に送達するステップを含む。特定の実施形態においては、能動的送達の方法は、熱泳動、イオン泳動、磁気泳動、および超音波泳動からなる群より選択される。いずれの場合においても、パッチは、特定の送達様式のために適合されうる。例えば、パッチは、電極と、鉄含有化合物の貯蔵部とをパッチに含むことにより、経皮イオン泳動送達のために適合されうる。
【0044】
様々な実施形態においては、本発明の方法は、子供、乳幼児、または新生児である個体の鉄欠乏の治療/防止のために適合されうる。これらおよび関連の実施形態において、子供、乳幼児または新生児は、約1mg〜100mgの、治療有効量の鉄を投与されうる。関連の実施形態においては、子供、乳幼児または新生児は、約1日〜約7日の期間、治療有効量の鉄を持続的に送達されうる。ある実施形態では、治療有効量の鉄が、本明細書に記載のパッチの一つ以上の実施形態を用いて、これらの個体に能動的に送達されうる。これらおよび関連の実施形態において、能動的送達の方法には、熱泳動、イオン泳動、磁気泳動、超音波泳動およびその組み合わせが含まれうる。パッチは、各方法または方法の組み合わせごとに適合されうる。イオン泳動送達用のパッチの実施形態は、活性電極アセンブリまたは対電極アセンブリの一つ以上を含みうる。
【0045】
これらおよび他の実施形態のさらなる詳細および本発明の態様は、添付の図面を参照しながらさらに詳しく後述される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、皮膚の三つの主要な層である、表皮、真皮および皮下組織、ならびに皮膚内への通路を示す断面図である。
【図2】図2は、様々な治療剤の経皮イオン泳動送達用のパッチを含むシステムの実施形態の側面図である。
【図3】図3は、経皮パッチの実施形態を示す側面図である。
【図4】図4は、モノリシック構造を有する経皮パッチの実施形態を示す側面図である。
【図5】図5は、速度制御部材を含む多層経皮パッチの実施形態を示す側面図である。
【図6】図6は、貯蔵部と送達層との間に配置された速度制御部材を含む多層経皮パッチの実施形態を示す側面図である。
【図7】図7は、微小針のアレイを含む経皮パッチの実施形態を示す側面図である。
【図8】図8は、微小針の実施形態の透視図である。
【図9】図9は、微小針のアレイの実施形態の透視図である。
【図10a】図10aは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10aは、皮膚のマイクロチャネルを作るための微小針アレイパッチの使用を示す。
【図10b】図10bは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10bは、皮膚のマイクロチャネルを作るための微小針アレイパッチの使用を示す。
【図10c】図10cは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10cは、皮膚のマイクロチャネルを作るための微小針アレイパッチの使用を示す。
【図10d】図10dは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10dは、皮膚のマイクロチャネルを作るための微小針アレイパッチの使用を示す。
【図10e】図10eは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10eは、経皮パッチの適用を示す。
【図10f】図10fは、経皮送達パッチおよび微小針アレイパッチまたは他の関連のデバイスを含む、鉄または他の治療剤の経皮送達のためのシステムの実施形態の側面図である。図10fは、経皮イオン泳動パッチの適用を示す。
【図11】図11は、経皮イオン泳動パッチの実施形態の側面図である。
【図12】図12は、経皮イオン泳動送達システムの実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の実施形態は、治療有効量の鉄を含む組成物の経皮送達のための、デバイスおよび方法を提供する。本発明の実施形態は、鉄欠乏性貧血鉄を含む鉄欠乏の治療に特に有用である。したがって、様々な実施形態において、本発明は、治療有効量の鉄を含む組成物の、必要な個体への送達を提供する。本明細書で使用されるところの、「治療有効量」という用語は、鉄欠乏に関連または起因する容態、疾患、障害、または状態を治療するために個体に投与されたときに、そのような治療をもたらすのに十分な、例えば第一鉄塩等の、鉄含有化合物の形の鉄の量を意味する。「治療有効量」は、治療される特定の容態、疾患、障害、または状態、およびその重症度、ならびに治療される個体の年齢、体重、健康状態および反応により変動する。したがって、これらのパラメータの一つ以上を用いて、鉄の治療有効量を選択および調節できる。また、用量反応曲線等の公知技術の薬理学的方法を用いて量を決定できる。
【0048】
本明細書で用いられるところの、容態、障害または状態についての「治療する」または「治療」という用語は、(1)容態、疾患、障害、または状態を患いうるか、または患いやすいが、その容態、疾患、障害、または状態の臨床または亜臨床的症状を未だ経験または示していない個体の鉄欠乏に関連または起因する容態、疾患、障害、または状態の臨床症状の発現または発症を防止または遅延すること、(2)鉄欠乏に関連または起因する容態、疾患、障害、または状態を阻害すること、例えば鉄欠乏に関連または起因する容態、疾患、障害、または状態の発症、またはその少なくとも一つの臨床または亜臨床的症状を、抑制または減少すること、あるいは(3)鉄欠乏に関連または起因する容態、疾患、障害、または状態を軽減または改善すること、例えば鉄欠乏に関連または起因する状態、容態、疾患、障害、または状態、またはその少なくとも一つの臨床または亜臨床的症状の後退または改善を生じさせることを意味する。治療される被験体に対する利益は、統計学的に有意であるか、少なくとも患者または医師に知覚可能である(例えば、公知技術の臨床的分析法を用いて測定されるヘマトクリットの増加)。したがって、本明細書において企図される方法および経皮送達デバイスは、任意の形の鉄欠乏を治療するのに適する。
【0049】
経皮送達
本発明の実施形態は、部分的には、治療有効量の鉄(例えば第一鉄塩類の形で)を含む組成物を必要な個体に送達するための、経皮デバイスを企図する。特定の実施形態においては、個体は哺乳類であり、関連の実施形態では、哺乳類はヒトである。特定の実施形態においては、人間は運動選手、妊娠女性、閉経前女性、閉経後女性、青春期の若者、子供、乳幼児、または新生児である。ある実施形態では、個体は、青春期の若者、子供、乳幼児、および新生児からなる群より選択されうる。
【0050】
図1を参照すると、ヒト皮膚Sは、真皮D、皮下SDおよび表皮Eを含む。表皮は、いくつかの組織層、すなわち角質層SC、淡明層、顆粒層、有棘層、および基底層(皮膚の外表面から内側へ順に識別される)を有する。角質層は、薬の経皮送達において最大の障害物となる。角質層は厚さが典型的に約10〜15μmであり、複数の層に配される平らな角化(keratised)細胞(角質細胞)からなる。角質細胞間の細胞間隙は脂質構造で満たされ、皮膚をとおる物質の透過に重要な役割を果たしうる(Bauerova等,Chemical enhancers for transdermal drug transport,European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics,2001,26(1/2):85‐94)。角質層の下の残りの表皮は、約150μmの厚さである。真皮Dは厚さ約1〜2mmであり、表皮の下に位置する。真皮Dは、様々な毛細管ならびに神経突起により神経支配されている。
【0051】
当業者には当然のことながら、医薬品の経皮投与は、特定の医薬組成物または化合物の非経口および経口送達に対して有効な補助的な投与経路を提供するために、活発な研究努力の対象となっている。例えば、本発明の実施形態は、鉄欠乏を患う個体に、速やかに正常範囲の鉄レベルを確立するために、組成物中の治療有効量の鉄が、例えば一つ以上の第一鉄塩類を含む医薬組成物の形で、経口または非経口経路により投与され、その後、その個体にさらに、持続時間、例えば数日、数週、または数ヶ月間にわたり、正常および/または健常な鉄レベルを維持するために、組成物中の一つ以上の鉄含有化合物から得られる治療有効量の鉄(例えば第一鉄塩類)が、経皮送達デバイスによって投与されうる、方法を提供する。
【0052】
当業者には当然のことながら、鉄投与の非経口経路の反復的または長期的使用は、局所的痛みを引き起こすことが多く、注射を受ける患者を潜在的に血液媒介の疾患にもさらすため、鉄を含む組成物の長期投与には、経皮送達が好適な態様であることが多い。さらに、鉄欠乏を患う個体を、第一鉄塩類を含む鉄含有組成物を厳密に経口投与することにより長期的に治療することは、嘔気、膨満、便秘、および下痢を含む鉄の経口投与に伴う胃腸内の副作用により、望ましくないことが多い。食物と当該組成物の同時摂取、胃pHを減らす薬物、または鉄吸収に影響する特定の疾患、障害または状態(例えばクローン病)に伴う鉄の腸管吸収の低下により、経口投与される鉄含有組成物のバイオアベイラビリティも問題である。
【0053】
特定の実施形態においては、本明細書の全体にわたり記載される、治療有効量の鉄を含む組成物の経皮送達は、組成物の実施形態に対する角質層の透過性を改善することにより、当該組成物の治療効力を増加させることを試みる。関連の実施形態においては、本発明は、患者の循環系に取り込まれ、したがって皮膚を通しての組成物の全身投与を可能にする医薬組成物を投与することを目的とする、経皮送達の方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態においては、本発明の方法および/または経皮送達デバイスは、皮膚を通る分子の透過性を高める化学増強剤を含む。
【0055】
他の実施態様においては、一つ以上の第一鉄塩類の形での治療有効量の鉄の投与は、角質層の一部をバイパスまたは切除するための、機械的装置の実施形態の使用を伴う。関連の実施形態においては、本発明の方法は、鉄(例えば第一鉄塩類)を含む組成物の皮膚を通る透過を促進するための、超音波またはイオン泳動の使用を提供する。
【0056】
本発明の様々な実施形態は、鉄含有化合物が真皮の毛細血管床に通ることができ、そこで鉄が治療される個体に全身的に取り込まれて治療効果が達成されるように、典型的には一つ以上の第一鉄塩類の形で少なくとも一つの鉄含有化合物を含む医薬組成物を、皮膚を通して送達するように構成される、経皮送達デバイスを提供する。
【0057】
次に図2を参照すると、本発明の様々な実施形態は、治療有効量の鉄を含む組成物30を、(1)皮膚Sへの薬物送達の速度を制御する様式か、または(2)皮膚Sが薬物吸収の速度を制御するのを可能にする様式のいずれかにより送達するように構成された、経皮パッチ10または関連のデバイスの形で、経皮送達デバイスを提供する。多くの実施形態においては、パッチ10は経皮イオン泳動送達用に構成され、後述のように活性電極アセンブリと対電極アセンブリとを含み得る。
【0058】
経皮パッチ10の実施形態は、防止、改善、および/または治療を必要な個体に提供するため、一つ以上の鉄含有化合物(例えば第一鉄塩類)由来の治療有効量の鉄を含む組成物30を経皮送達するために、好ましく構成される。経皮パッチ10の実施形態は、(i)バッキング層11と;(ii)貯蔵部層またはコンパートメント12と;(iii)制御膜または非制御微細孔膜13と;(iv)接着剤フィルム14と;(v)剥離ライナ15とを含みうる。貯蔵部層またはコンパートメント12は、少なくとも一つの鉄含有化合物31由来の治療有効量の鉄を含む医薬組成物30を含入または搭載しうる。特定の実施形態では、少なくとも一つの鉄含有化合物31は、本明細書の他所に記載のように、第一鉄塩の形である。医薬組成物は、本明細書に記載のように、製薬学的に有効な担体、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン、エリスロポイエチン刺激剤、および/または経皮透過化剤をさらに含みうる。
【0059】
本発明の経皮送達デバイスを製造および使用するために用いられる方法は、当業者にとってなじみのあるものである。例えば、バッキング層11、貯蔵部層12、制御膜13、接着剤14、および剥離ライナ15は、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,818,226号(Dermal penetration enhancers and drug delivery systems involving same);第6,791,003号(Dual adhesive transdermal drug delivery system);第6,787,149号(Topical application of opioid analgesic drugs such as morphine);第6,716,449号(Controlled release compositions containing opioid agonist and antagonist);第5,858,393号(Transdermal formulation);第5,612,382号(Composition for percutaneous absorption of pharmaceutically active ingredients);第5,464,387号(Transdermal delivery device);第5,023,085号(Transdermal flux enhancers in combination with iontophoresis in topical administration of pharmaceuticals;第4,891,377号(Transdermal delivery of the narcotic analgesics etorphine and analogs);第4,654,209号(Preparation of percutaneous administration)において言及されるもののような、当技術分野の従来の教示を用いて形成されうる。
【0060】
次に図3を参照すると、経皮パッチ10の実施形態は、公知技術の様々な構造成分を含みうる。例えば、粘着性マトリックスパッチ10m(本明細書においてマトリックスパッチ10mとしても記載される)の場合には、多くの場合、遠位バッキング16が、マトリックスポリマー層17にラミネートされる。このような遠位バッキング16は、マトリックスパッチ10mの環境に面する側、すなわち皮膚または粘膜に対して遠位の側を定義する。バッキング層は、マトリックスポリマー層および鉄含有組成物を保護し、環境中に鉄組成物が失われるのを防ぐ不浸透層を提供するように機能する。したがって、バッキング用に選択される材料は、ポリマー層、鉄含有化合物、および経皮透過化剤等の他の成分と適合するのが好ましく、マトリックスパッチの任意の成分に対する透過性が最小限であるのが好ましい。一態様では、バッキングは、マトリックスパッチの成分を紫外線露光による劣化から保護するために、不透明でありうる。別の態様においては、バッキングは、使用時のパッチの可視性を最小限にするために透明でありうる。また、バッキングは、ポリマー層に結合し、支持できるのが好ましく、また、マトリックスパッチを使用する人の運動に対処できるよう、十分に柔軟であるのが好ましい。
【0061】
バッキング用の適切な材料には、金属箔、金属化ポリフォイル、ポリエステルテレフタレート、ポリエステルまたはアルミニウム化ポリエステル等のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミドコポリマー類、ポリエチレンメチルメタクリレートブロックコポリマー類、ポリウレタン類、ポリビニリデンクロリド、ナイロン、シリコーンエラストマー類、ゴム系ポリイソブチレン、スチレン、スチレン‐ブタジエンおよびスチレン‐イソプレンコポリマー類、ポリエチレン、およびポリプロピレンを含む複合フォイルまたはフィルムが含まれるがこれに限られない。さらに、バッキングは、独立気泡発泡体等の様々な発泡体を含みうる。例には、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体などが含まれるがこれに限られない。本発明の一態様においては、バッキング層は約0.0005〜0.1インチの厚みを有しうる。
【0062】
様々な実施形態において、経皮パッチ10または他の関連の経皮送達デバイスは、一つ以上の鉄含有化合物と本発明による組成物の製剤に含まれる任意の他の成分とを含むことを意図した、製薬学的に許容可能な担体を含みうる。多数の製薬学的に許容可能な担体が当業者に公知であり、本発明と一緒に使用できる。
【0063】
パッチ10の実施形態は、接着剤層14の近位側14p(皮膚に接着される側)に着脱可能(例えば、剥がすことにより)に連結された、剥離ライナ15も含みうる。このようなライナ15は、パッチ10を皮膚に接着する前に、バッキング層11と同じ多くの機能を提供する。使用時には、剥離ライナ15が適用直前に接着剤層14から剥がされた後、廃棄される。剥離ライナ14は、バッキング層と同一材料または公知技術の適切な剥離剤でコートされた他の適切なフィルムで作られ得る。
【0064】
次に図4〜6を参照すると、本発明の実施形態は、イオン泳動送達用に構成されるパッチを含めて、経皮マトリックスパッチ10mの様々な構造配置を企図する。例えば、図4に示される実施形態では、マトリックスパッチ10mは、鉄含有化合物31を含む組成物30が、単一の感圧接着剤層18に直接含まれる、モノリシック配置物10maを有しうる。層18は、バッキング層11と同様に、担体層11c上に一体化またはコートされる。関連の実施形態においては、パッチ10mは、感圧接着剤層18に加えて、一つ以上のポリマー貯蔵部(図示せず)も含みうる。パッチ10mの他の実施形態は、図5の実施形態に示すように、多層/ラミネートパッチ10mlを含みうる。多層パッチ10mlの実施形態は、速度制御部材19および/または送達層20を含みうる。部材19および/または層20は、担体層11cと一体化または付着されうる。典型的には、速度制御部材19は、貯蔵部層12と皮膚Sとの間に位置する。送達層20および貯蔵部層12も含む実施形態においては、速度制御部材19が、図6の実施形態に示されるように、貯蔵部層12の近位側12p(皮膚に近い側)と送達層20の遠位側20s(皮膚から遠い側)との間に接着されうる。速度制御部材19は、鉄含有組成物または他の薬物および/または浸透促進剤が貯蔵部層から送達層20中に移動する速度を計量または制御するように構成される。本明細書で触れるように、本発明の一態様では、一つ以上の経皮透過化剤を、薬物の送達速度を増加させるために用いることができ、したがって、パッチサイズ等の他のパラメータを変化させるために用いることができる。
【0065】
一態様では、マトリックスパッチ10mで使用される担体層11cは、生体適合性ポリマーでありうる。ゴム類;シリコーンポリマー類およびコポリマー類;アクリルポリマー類およびコポリマー類;およびその混合物を含むがこれに限られない、生体適合性ポリマーの様々な一般的カテゴリーが知られている。一態様では、生体適合性ポリマーは、天然および合成ゴムを含むゴムでありうる。有用なゴムの一つの具体例は、可塑化スチレン‐ゴムブロックコポリマーである。別の態様においては、生体適合性ポリマーは、シリコーンポリマー類、ポリシロキサン類、およびその混合物を含みうる。さらに別の態様においては、生体適合性ポリマーは、アクリルポリマー類、ポリアクリレート類、およびその混合物を含みうる。さらなる態様においては、生体適合性ポリマーは、ビニルアセテート類、エチレン−酢酸ビニルコポリマー類、ポリウレタン類、可塑化ポリエーテルブロックアミドコポリマー類、およびその混合物を含みうる。一つの特定の態様においては、生体適合性ポリマーは、2‐エチルヘキシアクリレートのコポリマー類等のアクリルコポリマー接着剤およびn‐ビニルピロリドン接着剤を含みうる。
【0066】
一態様では、生体適合性ポリマーは、皮膚との長期間接触(例えば、1日より長く、おそらくは3〜4日、またはそれ以上の、例えば7日、さらには1〜4週間)に適しうる。別の態様においては、担体の生体適合性ポリマーは、短期間投与(例えば数分〜数時間、1日以下)に適する。そのような生体適合性ポリマーは、本発明の鉄含有化合物と、また、製剤に組み込まれる任意の担体および/または媒質または他の添加物と、物理的および化学的に適合しなければならない。一態様では、担体の生体適合性ポリマーは、ポリマー接着剤を含みうる。このような接着剤の例には、架橋および非架橋アクリルコポリマー類を含むアクリル接着剤;酢酸ビニル接着剤;ポリイソブチレン類、ネオプレン類、ポリブタジエン類、およびポリイソプレン類を含む天然および合成ゴム類;エチレン酢酸ビニルコポリマー類;ポリシロキサン類;ポリアクリレート類;ポリウレタン類;可塑化重量ポリエーテルブロックアミドコポリマー類、および可塑化スチレン‐ゴムブロックコポリマー類、またはその混合物を含みうるがこれに限られない。本発明のさらなる態様においては、担体層11cに用いられる接触接着剤は、DuroTak.(商標)87‐2888接着剤(National Starch & Chemical Co.,Bridgewater,N.J.)等のアクリル接着剤;およびARcare.(商標)MA‐24(Adhesives Research,Glen Rock,Pa.)等のポリイソブチレン接着剤およびエチレン酢酸ビニルコポリマー接着剤でありうる。さらに別の態様においては、ゲルタイプまたは「ヒドロゲル」接着剤の使用が企図される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,827,529号を参照。当業者には当然のことながら、使用する接着性ポリマーの具体的種類および量は、最終生産物の所望の具体的特性(例えばパッチのサイズおよび意図される着用時間、ならびに意図される位置、例えば腕対脚など)に応じて選択されうる。
【0067】
経皮イオン泳動送達用に構成されるものを含む、経皮マトリックス10mの様々な実施形態は、パッチ中の元素鉄の所望の投与量および所望の送達速度、ならびに他のファクター(例えば送達部位、皮膚の種類、透過化剤の使用等)に基づいたサイズと共に様々なサイズを有しうる。一態様では、イオン泳動送達用に構成されるパッチを含む経皮パッチ10は、表面積が約0.5cm〜約200cmの範囲のサイズを有しうる。別の態様においては、経皮パッチ10は、表面積が約5cm〜約75cmのサイズを有しうる。さらに別の態様においては、経皮パッチ10は、表面積が約10cm〜約100cmのサイズを有しうる。さらなる態様においては、経皮パッチは、表面積が約50cm〜約100cmの範囲のサイズを有しうる。さらなる態様においては、経皮パッチは、大きさが約0.5cm〜約100cmの範囲のサイズを有しうる。追加的な態様においては、経皮パッチは、表面積が約100cm〜約200cmの範囲のサイズを有しうる。さらに追加的な態様では、経皮パッチ10は、表面積が約10cm〜約50cmの範囲のサイズを有しうる。
【0068】
本明細書に記載の経皮イオン泳動送達用に構成されるものを含む経皮パッチ10の様々な実施形態は、少なくとも一つの鉄含有化合物を含む医薬組成物の、短期間、中期間、および長期間の投与を提供するように構成されうる。当業者には当然のことながら、投与の継続期間は、経皮透過化剤の選択、パッチ中の制御微細孔膜または非制御微細孔膜のタイプ、および組成物が送達される様式(すなわち能動的または受動的)を含むがこれに限られない、多数の可変事項(variables)の選択を通じて選択されうる。
【0069】
一実施形態においては、経皮パッチは、適用されるパッチの圧力により、本発明の医薬組成物を受動的に送達する。受動送達の別の実施形態においては、経皮パッチは、貯蔵部層がない代わりに鉄含有組成物が適切な圧感接着剤(DURO‐TAKポリアクリレート類等であるが、これに限られない)中に完全に分配される、いわゆる「薬物含有接着剤」またはマトリックスパッチ10mを構成しうる。
【0070】
鉄含有化合物を含む医薬組成物の受動送達アプローチの別の実施形態は、皮膚表面を壊さずに薬物を運ぶために、皮膚の天然の輸送機構を利用する。このアプローチは、リン酸化ビタミンEがビタミンEそのものよりもほぼ10倍速く皮膚に浸透するという観察に基づく。したがって一実施形態では、リン酸化ビタミンEナノ球体を作るために、鉄含有組成物がリン酸化されたビタミンEのシェル中にカプセル化されうる。そして、これらのビタミンEナノ球体が、鉄含有組成物が皮膚を横断して効率的に運ばれるのを可能にする。その結果、長期間にわたる持続送達が達成可能となる。
【0071】
本発明の様々な実施形態は、角質層および/または皮膚の他の層(例えば表皮)における、鉄含有化合物または他の医薬組成物の経皮送達を増強するためのマイクロチャネルの作製も企図する。マイクロチャネルは、機械的手段(例えば、微小針または他の組織貫通要素の使用による);電気的手段(例えば皮膚への静電放電による);超音波手段(例えば皮膚に送達される高周波超音波の使用);および化学的手段(例えば透過化剤の使用)を含むいくつかの異なるアプローチを使用して作製されうる。本発明の様々な実施形態は、マイクロチャネルを製成するためのこのような方法が、経皮イオン泳動送達のために構成される実施形態を含め、多数の経皮パッチ10の実施形態とともに用いられうることも企図する。マイクロチャネルの作製のための具体的手段は、他の医薬品または鉄の送達の所望される量および速度のほか、様々な患者特性ならびに鉄欠乏のタイプおよび程度を含むいくつかのファクターに基づいて、必要に応じて選択および調節されうる。
【0072】
次に、図7〜9を参照すると、本発明の特定の実施形態において、経皮パッチ10、他の経皮デバイス10は、図7の実施形態に示されるように、経皮パッチ10の皮膚接触側10p上に配置された微小針40のアレイ40aを含みうる。微小針(単数または複数)の長さ40lは、角質層(例えば皮膚の外側10〜15μm)を貫通するのに十分に長いが、皮膚のより深くの、例えば表皮および真皮のより深くに見られるような神経を刺激しないように十分に短く構成されるのが好ましい。微小針の適切な長さ40lは、10〜150μm、10〜15μm、25〜50μm、75〜100μm、好ましい実施形態では100〜150μmの範囲であればよく、後者の範囲は、しわ、毛髪などの皮膚の不均一な表面トポロジを補う余分の長さを提供する点で、好ましい。針アレイ40aは、写真平版と、反応性イオンエッチング等の公知のエッチング技術との組み合わせを含む、公知技術の様々な微細加工技術を使用して製造されうる。微小針40および微小針アレイ40aの例が、図8および9の実施形態に示される。アレイは、様々な接着剤または公知技術の他の接合法を使用してパッチ10に付着させ得るか、またはパッチ10上へ直接製造され得る。また、針アレイ40aは、約10ニュートン以下の力で皮膚内に所望の深さで圧入されうるように、構成されうる。微小針および微小針製作技術のさらなる説明は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Henry等による論文、“Microfabricated Microneedles:A Novel Approach to Transdermal Drug Delivery”,J.Pharm.Sci.,vol.87:922‐925(1998)に見られる。
【0073】
本発明の実施形態は、鉄含有組成物および他の医薬組成物の経皮送達を遂行または増強するための手段として微小針を用いるための、いくつかのアプローチを企図する。微小針のアレイにより、皮膚中に複数のマイクロチャネルが作られ、それを通して、鉄含有組成物または他の組成物が透過できる。一実施形態においては、鉄含有組成物が、微小針の管腔または空洞化部分に格納されうる。
【0074】
他の実施態様においては、マイクロチャネルが作られた後に、微小針のアレイが皮膚から除去され、別個の経皮パッチが適用されうる。したがって、ここで図10a〜10fを参照すると、本発明の実施形態は、マイクロチャネルMCを作った後、そのマイクロチャネルを通じて鉄化合物31または治療剤を経皮送達する、システム50を企図する。システム50は、角質層SCのみを貫通するように選択可能な長さを有する微小針40のアレイ40aを有するパッチ10a、および、経皮送達パッチ10のもう一つの実施形態を含む。使用時には、マイクロチャネルMCを作るために、パッチ10aが皮膚に適用されて短時間(例えば数秒〜数分)そのままにされる。パッチ10aが除去された後、送達パッチ10が皮膚に適用され、化合物の増強させた経皮送達を提供するマイクロチャネルMCを通して、鉄または他の化合物31が皮膚中に送達される。多くの実施形態においては、経皮パッチ10は、図10fの実施形態に示されるようにマイクロチャネルMCを通してイオン泳動輸送が起こる、経皮イオン泳動送達パッチ10iでありうる。これらおよび関連の実施形態において、マイクロチャネルMCを通じた化合物31の輸送(無傷の角質層と比較して、化合物の輸送/拡散に対する抵抗が大きく減少している)は、拡散抵抗の減少により、皮膚中に送達される化合物31の速度および量を大幅に増強するのに役に立つ。
【0075】
マイクロチャネルの作製のためのさらに他の実施形態においては、パッチ10が、金属フィラメントのアレイ、および別々の電池式電気アクチベータを含みうる。アクチベータを介してフィラメントに適用される瞬時的パルス電流により、角質層を通る多数のマイクロチャネルが作られ、その後薬物が持続的様式で透過するのが可能になる。
【0076】
多くの実施形態において、経皮パッチ10は、治療される個体の皮膚に鉄含有化合物31を通過させるために、イオン泳動を用いるように構成されうる。ここで図11および12を参照すると、そのような経皮イオン泳動パッチの実施形態10iは、活性電極アセンブリ60、ならびに本明細書に記載のパッチ10の他の構成要素(例えば接着剤層14など)を含む。活性電極アセンブリ60は、電気コネクタ61、電極素子62(電極62としても記載される)、および貯蔵部12または送達層20の一つ以上を含みうる。コネクタ61は、電極62に電気的に連結され、電力源80に連結されるように構成される。電極62は、金属または他の導電材料を含み、貯蔵部12または送達層20の一つ以上に直接または動作可能に電気的に連結される。貯蔵部12および送達層20の一方または両方が、鉄含有化合物31または他の活性薬剤35を含む、イオン泳動チャンバ63を含みうる。経皮イオン泳動パッチ10iは、同様に帯電した活性薬剤および/またはその媒質を含むイオン泳動チャンバに適用される小さな電荷を用いることにより、起電力および/または電流を用いて、活性薬剤35を皮膚または他の生体界面(例えば粘膜)などに伝達しうる。活性薬剤35は、帯電物質、イオン化要素(例えばイオン鉄)、治療薬、生物活性剤などを含みうる。本明細書に記載の様々な実施形態において、活性薬剤35はイオン鉄を含む。
【0077】
経皮イオン泳動送達のためのシステム90の実施形態は、図12の実施形態に示されるように、活性電極アセンブリ60と対電極アセンブリ70とに加え電力サプライ80を含む、パッチ10iを含みうる。対電極アセンブリ70は、コネクタ71および電極72を含み、第二パッチ10’または同じパッチ10i上に配置されうる。活性電極アセンブリ60および対電極アセンブリ70は、電力源80、例えば電気的リードを介してイオン泳動デバイスに接続された化学電池または外部発電所の、反対の極または端末81に連結される。上述の通り、各電極アセンブリ60は、貯蔵部12および/または送達層20に起電力および/または電流を適用するための、電極素子(または電極)62を含む。活性薬剤35は陽イオン性または陰イオン性であり得、電源80は活性薬剤の極性に基づいて適切な電圧および極性を適用するように構成されうる。イオン泳動は、活性薬剤の送達速度を増強または制御するために都合よく用いられうる。様々な実施形態において、活性薬剤35は、特定の実施形態においては空洞を含みうる貯蔵部12に格納されうる。例えば、米国特許第5,395,310号を参照。あるいは、活性薬剤は、多孔質構造体またはゲル等といった貯蔵部に格納されうる。イオン交換膜が、活性薬剤貯蔵部と生体界面との間に極性選択的バリアとして働くために配置されうる。膜は、典型的には一つの特定のタイプのイオン(例えば荷電活性薬剤)に関してのみ透過性であるが、皮膚または粘膜からの反対に荷電したイオンのバックフラックスを防ぐ。医薬組成物の経皮送達におけるイオン泳動の使用のさらなる説明は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0093799号、第2007/0088243号、第2007/0083186号、第2007/0083185号、および第2007/0083151号に記載される。
【0078】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも一つの鉄含有化合物を含む医薬組成物を、必要とする個体に能動的に送達するように構成される、経皮パッチを提供する。能動的送達の様式には、熱泳動、イオン泳動、磁気泳動、および超音波泳動が含まれるがこれに限られない。したがって、様々な実施形態において、本発明の医薬組成物は、熱泳動、イオン泳動、磁気泳動、および超音波泳動からなる群より選択される能動的送達により、上記組成物を必要とする個体に能動的に送達されうる。
【0079】
上述のように、イオン泳動は、電場の適用を利用し、皮膚膜を横断して荷電化学化合物を送達することを伴う。例えば、“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems‐‐Chapter 10‐‐Transdermal Drug Delivery Systems,Ointments,Creams,Lotions and Other Preparations”,Ansel等編,Williams & Wilkins,page360,(1995)を参照。磁気泳動は、皮膚への薬物送達を増強するための、磁場の使用を伴う。例えば、Murthy等,“Physical and Chemical Permeation Enhancers in Transdermal Delivery of Terbutaline Sulphate”,AAPS Pharm Sci Tech.2001;2(1)を参照。超音波泳動は、角質層の完全性を損ない、皮膚を通る化合物の透過性を改善するように働く、高周波の超音波の使用である。
【0080】
本発明の鉄含有化合物
本発明は、部分的には、イオン鉄の投与を含むがこれに限らない、治療有効量の元素鉄の投与のための方法を企図する。本発明の医薬組成物の実施形態中に存在する治療有効量のイオン鉄は、可溶性第一鉄塩類等、一つ以上鉄含有化合物の形でありうるが、やや可溶性の第一鉄塩類、不溶性第一鉄塩類、カルボニル鉄類、およびそのブレンド、混合物または組み合わせを、限定を伴わずにさらに含みうる。
【0081】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、第一鉄スクロース、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、フマル酸第一鉄、次亜リン酸第二鉄、アルブミン酸第二鉄、塩化第二鉄、クエン酸第二鉄、含糖酸化第二鉄、クエン酸第二鉄アンモニウム、塩化第一鉄、ヨウ化第一鉄、乳酸第一鉄、トリスグリシン第二鉄、ビスグリシン第一鉄、硝酸第二鉄、含糖水酸化第一鉄、硫酸第二鉄、グルコン酸第二鉄、アスパラギン酸第二鉄、硫酸第一鉄七水和物、リン酸第一鉄、アスコルビン酸第二鉄、ギ酸第一鉄、酢酸第一鉄、リンゴ酸第一鉄、グルタミン酸第一鉄、コリンイソクエン酸第一鉄、硫酸フェログリシン、水和酸化第二鉄、溶性ピロリン酸第二鉄、含糖水酸化第二鉄、含糖第二鉄マンガン、亜硫酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、セスキ塩化第二鉄、クエン酸第二鉄コリン、クエン酸第二鉄マンガン、クエン酸第二鉄キニーネ、クエン酸第二鉄ナトリウム、エデト酸第二鉄ナトリウム、ギ酸第二鉄、シュウ酸第二鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄カリウム、シュウ酸第二鉄ナトリウム、ペプトン酸第二鉄、ペプトン酸第二鉄マンガン、他の製薬学的に許容可能な可溶性第一鉄塩類、そのブレンド、混合物および/または組み合わせを含むがこれに限られない、選択された可溶性第一鉄塩(単数または複数)の投与のための、方法および/または本明細書に記載の一つ以上の経皮パッチ等の送達媒体を提供する。
【0082】
特定の実施形態においては、本発明の方法および/または送達媒体は、選択された可溶性第一鉄塩(単数または複数)の投与を含み、必要に応じてこれとともに、やや可溶性の塩(単数または複数)が、本発明の組成物において利用されればよく、このやや可溶性の塩(単数または複数)には、酢酸第二鉄、フッ化第二鉄、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、含糖炭酸第一鉄、炭酸第一鉄塊、コハク酸第一鉄、クエン酸第一鉄、酒石酸第一鉄、フマル酸第二鉄、コハク酸第二鉄、水酸化第一鉄、硝酸第一鉄、炭酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄ナトリウム、酒石酸第二鉄、酒石酸第二鉄カリウム、次炭酸第二鉄、グリセロリン酸第二鉄、糖酸第二鉄、糖酸水酸化第二鉄、糖酸第二鉄マンガン、硫酸第一鉄アンモニウム、他の製薬学的に許容可能なやや可溶性の第一鉄塩類、そのブレンド、混合物および/または組み合わせが含まれるがこれに限られない。
【0083】
ある特定の実施形態においては、本発明の方法および/または送達媒体は、選択された可溶性鉄塩(単数または複数)および/またはやや可溶性の塩(単数または複数)、あるいはこれとともに不溶性塩(単数または複数)を含む、医薬組成物の投与を提供し、この不溶性塩(単数または複数)には、ピロリン酸第二鉄ナトリウム、炭酸第一鉄、水酸化第二鉄、酸化第一鉄、オキシ水酸化第二鉄、シュウ酸第一鉄、他の製薬学的に許容可能な不溶性第一鉄塩類、そのブレンド、混合物および/または組み合わせが含まれるがこれに限られない。
【0084】
当業者には当然のことながら、任意の組み合わせおよび濃度での前述の第一鉄塩類の任意のものが、いずれも周知技術の方法により識別できる、患者の特性、治療される鉄欠乏、および所望される治療結果を非限定的な例として含む様々な治療パラメータを基礎として選択および調節されうる。
【0085】
一実施形態においては、先に列挙した任意の一つ以上の第一鉄塩類、またはそれとあわせて本発明の組成物は、選択されたヘム鉄および/またはヘム鉄ポリペプチドと組み合わせてキレート鉄を選択的に含みうる。したがって、そのような実施形態では、本組成物のキレート鉄は、鉄多糖、ビスグリシン酸鉄、および/または鉄タンパク化合物の好ましい錯体の任意の一つ以上から選択されうる。しかし、代替的なキレート鉄錯体も企図され、これには、メチリジン‐鉄錯体、EDTA‐鉄錯体、フェナンスロレン鉄錯体、p‐トルイジン鉄錯体、糖酸第一鉄錯体、フェルレシット、グルコン酸第一鉄錯体、フェルムヴァイチス(ferrum vitis)、糖酸水酸化第一鉄錯体、鉄‐アレーンサンドイッチ錯体、アセチルアセトン鉄錯体塩、鉄‐デキストラン錯体、鉄‐デキストリン錯体、鉄‐ソルビトール‐クエン酸錯体、含糖酸化鉄、フマル酸第一鉄錯体、鉄ポルフィリン錯体、鉄フタロシアニン錯体、鉄サイクラム錯体、ジチオカルボキシ‐鉄錯体、デスフェリオキサミン‐鉄錯体、ブレオマイシン‐鉄錯体、フェロジン‐鉄錯体、鉄ペルハロポルフィリン錯体、アルケンジアミン‐N,N’‐二コハク酸鉄(III)錯体、ヒドロキシピリドン‐鉄(III)錯体、アミノグリコシド‐鉄錯体、トランスフェリン‐鉄錯体、鉄チオシアネート錯体、鉄錯体シアン化物、ポルフィリナト鉄(III)錯体、ポリアミノポリカーボネート鉄錯体、ジチオカルバメート鉄錯体、アドリアマイシン鉄錯体、アントラサイクリン‐鉄錯体、MGD‐鉄錯体、フェリオキサミンB、クエン酸第一鉄錯体、硫酸第一鉄錯体、グルコン酸第二鉄錯体、コハク酸第一鉄錯体、ポリグルコピラノシル鉄錯体、ポリアミノ二コハク酸鉄錯体、ビリベルジン‐鉄錯体、デフェリプロン鉄錯体、オキシ水酸化第二鉄‐デキストラン錯体、ジニトロシルジチオラト鉄錯体、鉄ラクトフェリン錯体、1,3‐PDTA第二鉄錯体塩類、ジエチレントリアミン五酢酸鉄錯体塩類、シクロへキサンジアミン四酢酸鉄錯体塩類、メチルイミノ二酢酸鉄錯体塩類、グリコールエーテルジアミン四酢酸鉄錯体塩類、第二鉄ヒドロキシピロン錯体類、コハク酸第二鉄錯体、塩化第二鉄錯体、硫酸第二鉄グリシン錯体、アスパラギン酸第二鉄錯体、グルコン酸ナトリウム第一鉄錯体、水酸化第一鉄ポリマルトース錯体、他の製薬学的に許容可能なキレート鉄錯体、そのブレンド、混合物および/または組み合わせが含まれうるがこれに限られない。
【0086】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも一つ、少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つ、少なくとも六つ、少なくとも七つ、少なくとも八つ、少なくとも九つ、少なくとも十またはそれ以上の第一鉄塩類、またはそのブレンド、混合物および/または組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0087】
他の実施態様においては、本発明は、一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、五つ以上、六つ以上、七つ以上、八つ以上、九つ以上、十以上、または任意の数の第一鉄塩類、またはそのブレンド、混合物および/または組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0088】
本発明の他の実施形態は、本発明は、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十、またはそれ以上の第一鉄塩類、またはそのブレンド、混合物および/または組み合わせを含みうる医薬組成物を提供する。さらに追加的な数の塩類も企図される。
【0089】
好ましい実施形態においては、治療有効量の鉄は、第一鉄スクロース、グルコン酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、およびフマル酸第一鉄からなる群より選択される一つ以上の第一鉄塩類の形で送達される。
【0090】
さらなる実施形態においては、本発明の医薬組成物は、一つ以上の鉄含有化合物および一つ以上のビタミン補助剤を含む。
【0091】
ビタミン補助剤
特定の実施形態においては、本発明の鉄含有組成物(例えば第一鉄塩類を含む組成物)は、本明細書に記載の鉄欠乏の治療を促進するために、葉酸、ビタミンA、ビタミンB(B3、B6、B12を含む全種類)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、カルシウム、マグネシウムなどを含むがこれに限られない、一つ以上または特定のビタミン補助剤および/またはミネラルをさらに選択的に含みうる。本明細書において使用されるところの、「ビタミンC」という用語は、アスコルビン酸およびLトレオン酸を含む任意の形のビタミンCを意味する。本明細書において使用されるところの、「ビタミンD」という用語は、コレカルシフェロール(ビタミンD3)およびエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)の両方を意味する。本明細書において使用されるところの、「ビタミンE」という用語は、アルファ‐トコフェロール、D‐アルファ‐トコフェロール、D‐アルファ‐トコフェリルコハク酸塩(または酢酸塩)、DL‐アルファ‐トコフェロール、DL‐アルファ‐トコフェリル酢酸塩(またはコハク酸塩)、ガンマトコフェロール、混合トコフェロール、およびDL‐アルファニコチン酸トコフェロールを意味する。本明細書において使用されるところの、「カルシウム」という用語は、炭酸、リン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸カルシウムおよびその組み合わせを含む任意の形のカルシウムを意味する。本明細書において使用されるところの、「マグネシウム」という用語は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびグルコン酸マグネシウムを含む、任意の形のマグネシウムを意味する。
【0092】
特定の実施形態において、本発明は、一つ以上のビタミン補助剤と組み合わせて一つ以上の第一鉄塩を含む鉄含有組成物の投与も提供し、このビタミン補助剤には、一つ以上のBビタミンが含まれる。
【0093】
Bビタミンは、水溶性である。マルチビタミンおよびミネラル補助剤に含まれるBビタミンは、サイアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ビオチン、葉酸、コバラミン類(ビタミンB12)、およびコリンである。ビタミンB1またはサイアミンは、コラーゲンの豊富な結合膜および粘膜を健康に保つのを助け、平滑筋を維持するのを助け、血液細胞の形成を助け、適切な神経系機能に必要である。ビタミンB2またはリボフラビンは、健康な毛髪、爪、および粘膜に必要であり、赤血球形成、抗体産生、および成長全般に関係する。ビタミンB3またはナイアシンは、性ホルモンの大半の産生を助け、血管を拡張し、コレステロールを低下させ、血液循環を維持するのを助ける。ナイアシンは、ナイアシン活性を呈する化合物群の一般名であり、ナイアシンアミドおよびニコチン酸を含む。ビタミンB6またはピリドキシンは、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)の産生および体内の他の多くの反応に関わる。ピリドキシンは、ピリドキシン、ピリドキサミン、およびピリドキサールの三つの異なる化合物をさし、それらを含む。葉酸は、赤血球の産生、ホルモン類の産生、およびDNAの合成に必須である。ビタミンB12またはコバラミンは、代謝全般、神経系の機能、葉酸の代謝、および赤血球の産生に必要である。コバラミンの活性形が少なくとも三つあり、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、およびニトロコバラミンである。ビオチンは、炭水化物類、タンパク質類、および脂肪類の代謝に必要であり、健康な皮膚および毛髪に必要である。パントテン酸は、副腎ホルモン類の産生に重要であり、全体的なエネルギーを増加させ、食物をエネルギーに転換するのを助ける。コリンは、神経系機能および脳機能に必要である。これは、胆嚢および肝機能にとっても重要である。
【0094】
本明細書の他所に記載のように、本発明の様々な組成物は、前述のビタミン類および/またはミネラル類の一つ以上の形を任意の量、および選択された第一鉄塩(単数または複数)および/または他の鉄含有化合物との任意の組み合わせにおいて、含みうる。好ましい実施形態において、一つ以上の鉄含有化合物(例えば第一鉄塩類)由来の治療有効量の鉄を含む本発明の組成物は、一つ以上のビタミン補助剤をさらに含む。特定の好ましい実施形態においては、一つ以上の鉄含有化合物(例えば第一鉄塩)由来の治療有効量の鉄を含む本発明の組成物は、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピロキシジン、ビオチン、葉酸、コルバラミン(colbalamin)、およびコリンからなる群より選択される一つ以上のビタミン補助剤をさらに含む。
【0095】
当業者には当然のことながら、本発明の鉄含有組成物中のビタミン補助剤の適切な用量は、公知技術であり、例えば、参照により関連部分が本明細書に組み込まれるGoodman & Gilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics,Eleventh Edition.McGraw‐Hill,2005”,“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition.Baltimore,MD:Lippincott Williams & Wilkins,2000.”,および“The Merck Index,Fourteenth Edition.Whitehouse Station,NJ:Merck Research Laboratories,2006”に記載される通常の方法で決定できる。
【0096】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、一つ以上の鉄含有化合物、一つ以上のビタミン補助剤、および一つ以上のエリスロポイエチン刺激剤を含みうる。エリスロポイエチン刺激剤は、エリスロポイエチンの組換え形、またはその誘導体であり、骨髄の赤血球の産生を刺激し、鉄欠乏の治療において有用である。エリスロポイエチン刺激剤の例には、エリスロポイエチン、エポエチン(例えばProcrit、Epogen、およびEprex)、ダーベポエチン(Aranesp)、およびPDpoietin(Pooyesh Darou Pharmaceuticalsによりイランで生産されるエリスロポイエチン)が含まれる。
【0097】
したがって、一実施形態においては、一つ以上の鉄含有化合物由来の治療有効量の鉄、一つ以上のビタミン補助剤、エリスロポイエチン、および一つ以上のエリスロポイエチン刺激剤を含む組成物が、必要な個体に経皮投与される。
【0098】
製薬学的に許容可能な担体
特定の実施形態において、本発明の鉄含有組成物(例えば第一鉄塩類を含む組成物)は、一つ以上または製薬学的に許容可能な担体をさらに選択的に含みうる。一態様では、製薬学的に許容可能な担体は、鉄含有化合物を含む軟膏でありうる。軟膏は、油脂性基剤、ラノリン類、エマルション、または水溶性基剤等の周知の材料に基づく半固体医薬品である。軟膏の製剤は、参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy 19th ed.(1995),vol.2,pp.1585‐1591に記載されるなど、公知技術である。このような製剤は、多くの場合にワセリンまたは酸化亜鉛を含む。本発明の使用に適する油脂性軟膏基剤は、一般に植物油類、動物性脂肪類、および石油から得られる半固体炭化水素類を含むがこれに限られない。本発明の吸収性軟膏基剤は、水をほとんどまたは全く含まず、ヒドロキシステアリン硫酸、無水ラノリン、および親水性ワセリン等の成分を含みうるがこれに限られない。本発明のエマルション軟膏基剤は、油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかであり、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、ポリアルキルシロキサン類、およびステアリン酸を含みうるがこれに限られない。本発明の使用に適した水溶性軟膏基剤は、様々な分子量のポリエチレングリコール類から調製されうる。
【0099】
本発明の別の実施形態においては、製薬学的に許容可能な担体は、鉄含有化合物を含むクリームでありうる。周知のように、クリームは、水中油型または油中水型の粘性液体または半固体エマルションである、軟膏の一種である。クリーム基剤は、水溶性であり得、油相、乳化剤、水相、および活性薬剤を含む。本発明の詳細な態様においては、油相は、ワセリンおよびセチルまたはステアリルアルコール等の脂肪族アルコールを含みうる。本発明の別の詳細な態様においては、水相が体積で油相を上回り、湿潤剤を含みうる。本発明の別の実施形態においては、クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性界面活性剤でありうる。
【0100】
本発明の別の実施形態においては、製薬学的に許容可能な担体は、鉄含有化合物を含むローションでありうる。ローションは、活性薬剤を含む固体粒子が水またはアルコール基剤中に存在する液体または半液体製剤でありうる、軟膏である。本発明の使用に適するローションは、固体の懸濁液または水中油エマルションでありうる。本発明の別の態様では、ローションは、分散を改善する懸濁剤、または皮膚と活性薬剤の接触を改善する他の化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または類似の化合物も含みうる。
【0101】
本発明のさらに別の実施形態においては、製薬学的に許容可能な担体は、鉄含有化合物を含むペーストでありうる。本発明のペーストは、活性薬剤が適切な基剤に懸濁された半固体製剤を形成する有意な量の固体を含む、軟膏である。本発明の詳細な態様において、ペーストは、脂肪性ペーストを生産するために基剤から形成され、または単相水性ゲルから作られうる。本発明の使用に適する脂肪性ペーストは、ワセリン、親水性ワセリンなどの基剤から形成されうる。本発明の使用に適する単相水性ゲルから作られるペーストは、カルボキシメチルセルロースなどのようなセルロースベースのポリマー類を基剤として取り込みうる。
【0102】
本発明の別の実施形態においては、鉄含有化合物を含む製薬学的に許容可能なゲルが調製されうる。本発明により調製されるゲルは、分散相が連続相と合わさって粘稠性産物が生産された、コロイドの製剤でありうる。ゲル化剤は、間隔に溶媒を保持する超顕微鏡的結晶性粒子群を形成しうる。当業者には当然のことながら、ゲルは、半固体の懸濁液タイプの系である。単相のゲルは、水性または非水性であり得、アルコールまたは油を含みうる担体液体の全体に実質的に均一に分布した有機巨大分子を含みうる。
【0103】
鉄含有化合物を含むことに加え、本明細書に列挙される経皮製剤の製薬学的に許容可能な担体は、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン、エリスロポイエチン刺激剤、シクロデキストリン類、希釈剤、経皮透過化剤、賦形剤、皮膚軟化剤、可塑剤、皮膚刺激減少剤、安定化化合物、またはその任意の混合物または組み合わせ等、多数の他の添加物を含みうる。これらのタイプの成分ならびに特に列挙されないその他の成分は、様々な経皮製剤(例えば本発明の医薬組成物)への含入が公知技術であり、所望の結果を達成するために、特定の種類および量で本発明の経皮薬物送達システムに必要に応じて加えられうる。
【0104】
経皮透過化剤
特定の実施形態においては、本発明の鉄含有組成物(例えば第一鉄塩類を含む組成物)は、鉄含有化合物(単数または複数)に対する皮膚の透過性を高めるために、一つ以上または特定の経皮透過化剤をさらに選択的に含みうる。例えば、有用な浸透増強剤には、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、脂肪族アルコール類、乳酸またはグリコール酸の脂肪酸エステル類、グリセロールトリエステル、ジエステル、およびモノエステル、トリアセチン、短鎖アルコール類、およびその混合物が含まれうるがこれに限られない。一つの特定の態様では、浸透増強剤は、ラウリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、またはラウリルアルコールとミリスチン酸イソプロピルの組み合わせを含みうる。他の態様では、使用される特定のアトモキセチン化合物の増強を最適化するために、上に列挙した化合物群から特定の種または種の組み合わせが当業者により選択されうる。
【0105】
適切な皮膚浸透促進剤のさらなる例には、スルホキシド類、アルコール類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、ポリオール類、アミド類、界面活性剤、テルペン類、アルカノン類、および有機酸類がとりわけ含まれる。適切なスルホキシド類の具体例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシドがとりわけ含まれる。好適なアルコール類には、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、n‐オクタノール、ノナノール、デカノール、2‐ブタノール、2‐ペンタノール、およびベンジルアルコール等のアルカノール類;カプリル酸アルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、2‐ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、およびリノレニルアルコール等の脂肪族アルコール類;およびイソプロピルアルコールが含まれる。好適な脂肪酸類の例には、吉草酸、ヘプタン酸、ペラゴン(pelagonic)酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびカプリル酸等の直鎖脂肪酸類;およびイソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸、およびイソステアリン酸等の分枝鎖脂肪酸類があげられる。
【0106】
好適な脂肪酸エステル類の例には、n‐酪酸イソプロピル、n‐ヘキサン酸イソプロピル、n‐デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪族脂肪酸エステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、メチル吉草酸、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチルおよびオレイン酸エチル等のアルキル脂肪酸エステル類;およびアジピン酸ジイソプロピルおよびジメチルイソソルビドが含まれる。
【0107】
適切なポリオール類の例には、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール、およびグリセリンが含まれる。
【0108】
適切なアミド類の例には、尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルオクタミド、ジメチルデカミド、生分解環状尿素(例えば、1‐アルキル‐4‐イミダゾリン‐2‐オン)、ピロリドン誘導体類、生分解ピロリドン誘導体類(例えば、N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐ピロリドンの脂肪酸エステル類)、環状アミド類、ヘキサメチレンラウラミドおよびその誘導体類、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンが含まれる。ピロリドン誘導体類の例には、1‐メチル‐2‐ピロリドン、2‐ピロリドン、1‐ラウリル‐2‐ピロリドン、1‐メチル‐4‐カルボキシ‐2‐ピロリドン、1‐ヘキシル‐4‐カルボキシ‐2‐ピロリドン、1‐ラウリル‐4‐カルボキシ‐2‐ピロリドン、1‐メチル‐4‐メトキシカルボニル‐2‐ピロリドン、1‐ヘキシル‐4‐メトキシカルボニル‐2‐ピロリドン、1‐ラウリル‐4‐メトキシカルボニル‐2‐ピロリドン、N‐シクロヘキシルピロリドン、N‐ジメチルアミノプロピルピロリドン、N‐ココアルキルピロリドン、N‐タローアルキルピロリドン、およびN‐メチルピロリドンが含まれる。環状アミド類の例には、1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン(例えばAzone(登録商標))、1‐ゲラニルアザシクロヘプタン‐2‐オン、1‐ファルネシルアザシクロヘプタン‐2‐オン、1‐ゲラニルゲラニルアザシクロヘプタン‐2‐オン、1‐(3,7‐ジメチルオクチル)アザシクロヘプタン‐2‐オン、1‐(3,7,11‐トリメチルドデシル)アザシクロヘプタン‐2‐オン、1‐ゲラニルアザシクロヘキサン‐2‐オン、1‐ゲラニルアザシクロペンタン‐2,5‐ジオン、および1‐ファルネシルアザシクロペンタン‐2‐オンが含まれる。
【0109】
適切な界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、胆汁酸塩類、およびレシチンを含みうる。適切な陰イオン性界面活性剤の例には、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびラウレス硫酸ナトリウムが含まれる。適切な陽イオン性界面活性剤には、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、および塩化ヘキサデシウルトリメチルアンモニウム(hexadecyultrimethylammonium chloride)が含まれる。適切な非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー231、ポロキサマー182、ポロキサマー184、Brij(登録商標)30(ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル)、Brij(登録商標)93(ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル)、Brij(登録商標)96(ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル)、Brij(登録商標)99(ポリオキシル(10)オレイルエーテル)、Span(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)、Span(登録商標)40(ソルビタンモノパルミテート)、Span(登録商標)60(ソルビタンモノステアレート)、Span(登録商標)80(ソルビタンモノオレエート)、Span(登録商標)85(ソルビタントリオレエート)、TWEEN(登録商標)20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN(登録商標)40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、TWEEN(登録商標)60(ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、TWEEN(登録商標)80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Myrj(登録商標)45(ポリオキシエチレン(8)ステアレート)、Myrj(登録商標)51(ポリオキシエチレンステアレート)、Myrj(登録商標)52(ポリオキシエチレンステアレート、およびMiglyol840(プロピレングリコールジカプリレート/ジカプラート)などが含まれる。好適な胆汁酸塩類の例には、コール酸ナトリウム、およびタウロコール酸、グリコール酸、およびデゾキシコリン酸のナトリウム塩類が含まれる。
【0110】
適切なテルペン類には、炭化水素類(例えばD‐リモネン、α‐ピネン、β‐カレン等)、アルコール類(例えばα‐テルピネオール、テルピネン‐4‐オル、カルボール等)、ケトン類(例えばカルボン、プレゴン、ピペリトン、メントン等)、オキシド類(例えばシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、α‐ピネンオキシド、シクロペンテンオキシド、1,8‐シネオール等)、および油類(例えばイランイラン、アニス、ヘノポジ、ユーカリ、ペパーミント等)が含まれる。適切なアルカノン類の例には、N‐ヘプタン、N‐オクタン、N‐ノナン、N‐デカン、N‐ウンデカン、N‐ドデカン、N‐トリデカン、N‐テトラデカン、およびN‐ヘキサデカンなどが含まれる。適切な有機酸類の例には、サリチル酸およびサリチレート(そのメチル、エチル、およびプロピルグリコール誘導体類を含む)、クエン酸、およびコハク酸などが含まれる。
【0111】
適切な経皮透過化剤のその他の例は、従来技術において周知であり、例えば、モノグリセリド類、ポリグリコシル化グリセリド類、グリセリルモノエチルエーテル、ポリソルベート類、ベータ‐シクロデキストリン、シクロペンタデカラクトン、アルキル‐2‐(N,N‐二置換アミノ)‐アルカノエートエステル、2‐(n‐ノニル)‐1,3‐ジオキソラン、ミリスチン酸イソプロピル、テルピノール、メントール、シネオール、モノオレイン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸オレイル、ラウリルカプラム(laurylcapram)、ビサボロール、カパイシン(capaicin)、およびトウガラシを含む。その他の適切な皮膚浸透促進剤の例およびその作用機序の記載は、Goodman and Barry,“Percutaneous Absorption,”in Mechanisms‐Methodology‐Drug Delivery,2nd Edition,Bronaugh and Maibach,eds.,1989,pp.567‐593,Marcel Dekker,Inc.,NYに見られる。
【0112】
特定の実施形態では、経皮透過化剤は、n‐オクタノール、D‐リモネン、オレイン酸、シネオール、ミリスチン酸イソプロピル、モノオレエート、モノオレイン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸オレイル、ラウリルカプラム(laurylcapram)、ラウリル硫酸ナトリウム、ビサボロール、DMSO、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、ジメチルイソソルビド、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、ペンチレングリコール、尿素、レシチン、ラウレス硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ポロキサマー231、Brij(登録商標)30、Span(登録商標)20、Tween(登録商標)20、油(例えばイランイラン、ユーカリ、ペパーミント)、サリチル酸、クエン酸、メントール、カパイシン(capaicin)、トウガラシ、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0113】
別の特定の実施形態においては、経皮透過化剤は、オレイン酸、ラウロカプラム、ラウリル硫酸ナトリウム、ビサボロール、DMSO、エタノール、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、ジメチルイソソルビド、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、ペンチレングリコール、レシチン、塩化ベンザルコニウム、D‐リモノン(D‐limonone)、油(例えばイランイラン、ユーカリ、ペパーミント)、サリチル酸、メントール、カパイシン(capaicin)、トウガラシ、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0114】
シクロデキストリン類
本発明の医薬組成物は、一つ以上の鉄含有化合物由来の治療有効量の鉄、および/または、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン刺激剤、エリスロポイエチン、製薬学的に許容可能な担体、経皮透過化剤、およびシクロデキストリン類からなる群より選択される一つ以上の化合物または薬剤を含む。本明細書および特許請求の範囲で用いられるところの、「シクロデキストリン」という用語は、環状オリゴ糖類ファミリーのいずれかをさす。シクロデキストリン類は、シクロアミロース類とも呼ばれることもあるが、アミロースと同様に、α‐(1,4)グリコシド結合により連結される、5以上のD‐グルコピラノシド単位で構成されるが必ずしもこれに限られない。32までの1,4‐グルコピラノシド単位を有するシクロデキストリンがよく特徴づけられている。150単位までの大きさの環状オリゴ糖類が同定されている。典型的には、シクロデキストリン類は、環中に6〜8のグルコピラノシド単位を含有するが必ずしもこれに限られず、一般的にα‐シクロデキストリン(6単位)、β‐シクロデキストリン(7単位)、およびγ‐シクロデキストリン(8単位)と呼ばれる。これらは天然でも、または合成的に製造されたものでもありうる。シクロデキストリン類は、容易に入手可能な酵素類、例えばα‐アミラーゼおよびシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTase)という多数の異なる生物により産生される酵素の使用により、デンプンから生産されうる。公知技術のある方法では、例えばデンプンがまず加熱またはα‐アミラーゼで処理された後、CGTaseでの酵素的転換が行われうる。転換は典型的に三つの一般的なシクロデキストリンの混合物を生じ、その比率は転換反応に用いられる特定のCGTaseによる。三つのシクロデキストリンの各々の水中の溶解特性が、精製スキームにおいて利用される。例えば、β‐シクロデキストリンは難水溶性であり、結晶化により単離されうる。はるかに水溶性のあるα‐およびγ‐シクロデキストリンは、クロマトグラフィにより精製されうる。あるいは、ある有機物質を利用した合成方法は、特定のシクロデキストリンと複合体を形成し、転換反応の進行とともにこれを反応混合物から沈殿させることにより、反応から特定のシクロデキストリンが優先的に生成されるように誘導しうる。そして、この特定のシクロデキストリンが、沈殿物の回収および複合体形成に用いた物質からの分離により、単離されうる。
【0115】
シクロデキストリンの最も安定な三次元立体配置は、位相幾何学的に環状体として表され、環状体のより小さな開口部およびより大きな開口部が、それぞれ第一級および第二級ヒドロキシル基を、シクロデキストリンが配置される水性環境に曝露する。これらの領域は、水性環境よりもかなり低親水性である。環状体の内部は、疎水性である。環状体シクロデキストリンの外部は、水中溶解を可能にするのに十分に親水性である。
【0116】
シクロデキストリン類は、製薬、食品、および化学産業において広範囲の用途に用いられている。シクロデキストリン類は、経皮透過化剤としてだけでなく、化合物の溶解性を増加させるように働きうる。種々の化学物質との複合体が、ファンデルワールス力、水素結合、および疎水性相互作用の組み合わせにより、シクロデキストリン空洞の非極性内部環境中に形成されうる。シクロデキストリンの内部への化合物の含入は、溶液中のその化合物の物理的および/または化学的特性を大きく改質しうる。例えば、シクロデキストリン中への医薬組成物の難溶性成分の含入は、水性環境との適合性の増大により、このような薬剤が生体界面または身体組織に浸透するのを可能にしうる。生体界面および/または身体組織を通過すると、水性環境中のシクロデキストリン複合体の濃度の低減により、シクロデキストリンの自然解離がもたらされ、組成物の成分が組織中に放出されうる。
【0117】
鉄欠乏
鉄欠乏は、世界中で最も一般的な栄養欠損の一つであり、地球規模で貧血の主因である。鉄バランスは、赤血球生成の速度および鉄貯蔵の大きさによって基本的に調節される。鉄欠乏は貧血を伴って、または伴わずに生じ得、特に新生児および子供において、発育異常および認知発達障害に関連付けられている。チリにおける研究により、母乳が主な栄養源である子供の40%が、鉄欠乏性貧血を発症したことが示されている。そのような子供には疲れと不注意が見受けられ、運動発達遅延を生じうる。鉄欠乏性貧血の結果、軽度から中度の精神遅滞を発症する子供または新生児もいる。乳幼児における鉄欠乏性貧血と精神、運動、および行動発達の低下との関係は、最近の発見ではない。関連の可能性は1970年代末に指摘され、その後過去20年間における生後12〜23ヶ月の乳幼児についての研究で、それらの所見が裏付けられた。1990年代までには、鉄欠乏性貧血とより低い発達テストスコアとの間の関係は確実となったが、鉄欠乏性貧血の有病率の低下により、米国においては期待されるほど注目されなかったかもしれない。近年、鉄欠乏性貧血が是正されても、こうした影響が長く続くことが明らかとなっている。
【0118】
精神、運動、および行動への影響は、鉄欠乏が貧血を引き起こすほど深刻な場合にだけ生じる。Bayley Scales of Infant Developmentを用いた研究においては、鉄欠乏性貧血の乳幼児は、粗大および微細運動神経を含む精神および運動テストにおいて、より低いスコアを受け、慎重、臆病、および不機嫌など、感情的差異が見られる。これらの所見は、多様な文化的設定において様々な研究により確認されている。行動要素のさらなる研究により、貧血の乳幼児はあまり遊びたがらず、疲れやすく、抱かれるのを好むという、活動差が分かった。これらの精神および運動への影響は通常の理学的検査では検出できず、行動の変化が顕著であるかは分かっていない。
【0119】
鉄欠乏は、鉄供給の不足(レベルまたは貯蔵)として、または体内の鉄の利用能または利用の不足として、定義されうる。これは、栄養欠損、例えば食事中の鉄の不足;例えば手術(胃切除後)または疾患(クローン病)による鉄吸収不良;または、傷害または外傷、化学療法、大腸癌、月経、供血、静脈切開(様々な処置、手術等による)から生じる慢性または急性の失血による鉄供給の枯渇または鉄喪失の増加;例えば、乳幼児期または思春期の急成長、妊娠、エリスロポイエチン療法等による鉄需要量の増加によるものでありうる。生後6〜24ヶ月の乳幼児および幼児は、特に鉄欠乏を発症しやすい。彼らは成長および送血量増加が早く、外因性鉄の必要量は、体重に比例して高い。
【0120】
鉄欠乏は、機能的鉄欠乏、例えば鉄貯蔵にアクセスして利用する被験体の能力の障害を特徴とする鉄欠乏も含みうる。赤血球の正常なヘモグロビン産生を可能にするのに十分な速度で鉄が利用可能でなく、これにより網状赤血球および赤血球細胞のヘモグロビン含量が減少する。機能的鉄欠乏は、正常または増加すらしているように見える鉄貯蔵を有するが、例えば、低レベルのトランスフェリン飽和度により測定される、鉄利用能が損なわれた個体に認められることが多い。この種の鉄欠乏は、急性または慢性の炎症に関連することが多い。
【0121】
任意の種類の鉄欠乏が、赤血球数が減少し、および循環赤血球が正常より小さく(小球性)、適切なヘモグロビンを欠き、したがって色が淡い(低色素性)、鉄‐欠乏または鉄‐制限赤血球生成につながりうる。
【0122】
当業者には、多様な集団、例えば運動選手、妊婦、青春期の若者、および新生児における、鉄欠乏の代謝指標が良く知られている。例えば、機能的鉄欠乏を有する個体は、ヘモグロビン合成障害、トランスフェリン飽和度の減少、ヘモグロビンおよびヘマトクリットレベルの低下を発症し、鉄欠乏性貧血をきたしうる。フェリチン合成の間に、可溶性形のフェリチンが循環中に放出される。循環中のフェリチンの量(血清フェリチンとして測定される)は、全身鉄貯蔵と相関することが示されている。例えば、絶対的鉄欠乏の指標は、100ng/mL未満の血清フェリチンレベル、および約20%未満のTSATレベルとして定義される。トランスフェリン飽和度は、循環中のタンパク質結合鉄の量、すなわち赤血球生成に直ちに利用可能な量を表す。トランスフェリン飽和度は、血清鉄を総鉄結合能(TIBC)で割った後、結果に100を掛け合わせることにより計算される。総鉄結合能は、トランスフェリンの全結合能の測定値である。正常なTSATは、約30%〜約50%である。約20%未満のTSAT値は鉄欠乏を示す一方で、約50%以上のレベルは鉄過剰を示す。閉経前女性および思春期前の患者における、約33%未満のヘマトクリット(HCT)および/または約11g/dL未満のヘモグロビン飽和(Hb)は、鉄欠乏を示す。成人男性および閉経後女性における、約37%未満のHCTおよび/または約12g/dL未満のHbは、鉄欠乏を示す。
【0123】
鉄欠乏性貧血は、世界で最も一般的な貧血である。鉄は、ヘモグロビンの必須成分であり、鉄なしでは、骨髄はヘモグロビンを有効に生産することができない。鉄欠乏性貧血は、鉄供給の減少または障害を有する被験体で生じ得、または、鉄貯蔵は存在するが、例えばヘモグロビン産生に利用できない場合に、機能的鉄欠乏を有する被験体において生じうる。
【0124】
鉄代謝は一般に、細胞、組織、臓器、臓器系、または生物全体が、鉄代謝の特定のプロセスを変更、例えば、増減することにより鉄ホメオスタシスを維持するプロセスを含む。鉄代謝または鉄代謝プロセスは、鉄プロセシング、輸送、取り込み、利用、貯蔵、動員、吸収等に関わるプロセスを含む。鉄代謝およびプロセシングの特定の態様は、細胞膜を横断した鉄の移動および細胞による鉄の保持または分泌を促進する鉄輸送体および酵素の発現;血液中の鉄輸送に関わるタンパク質の発現の変更;トランスフェリンおよびトランスフェリン受容体の発現の変更;鉄吸収に関わるタンパク質の発現および/または活性の変更;鉄関連転写および翻訳調節タンパク質の発現および活性の変更;ならびに、例えば間質(すなわち細胞外)、細胞内、血液、骨髄等を含む、体内または培養液中の鉄分配の変更を含む。
【0125】
本発明の多くの実施形態は、i)本発明の経皮パッチ(これは、本明細書に記載の少なくとも一つの鉄含有化合物由来の治療有効量の鉄を含む組成物を含む)に、個体の皮膚または他の部分を接触させるステップと;ii)この個体に治療有効量の鉄を送達し、これにより個体の鉄欠乏を防止および/または治療するステップとを含む、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法を提供する。
【0126】
様々な実施形態において、治療される個体は、新生児、乳幼児、子供、青春期の若者、閉経前女性、閉経後女性、妊婦、男性または運動選手でありうる。特定の実施形態において、治療される個体は、貧血を伴わない鉄欠乏でありうる。他の特定の実施形態においては、個体は、成長遅延および認知障害および/または精神遅滞に関係する鉄欠乏を防止するために治療される。関連の実施形態においては、治療される個体は、新生児、乳幼児、または妊婦である。
【0127】
他の特定の実施形態においては、治療される個体は、慢性アルコール中毒;栄養不良;動物タンパク質およびアスコルビン(absorbic)酸の消費量の減少;妊娠中、乳幼児期、または思春期の鉄要求量の増加;吸収不良症候群;および鉄の胃腸内吸収を減らす食品または薬物により引き起こされる、鉄欠乏でありうる。
【0128】
特定の実施形態においては、治療される個体は、鉄欠乏性貧血でありうる。他の特定の実施形態においては、治療される個体は、薬物、消化性潰瘍疾患、痔核、外傷、手術、胃腸出血、透析、肺出血、子宮出血、月経、出生、尿路出血、および供血;原発性無酸症(achlorhydia)、胃酸pHを減じる化合物の使用に続発する続発性無酸症(achlorhydia);胃腸疾患;クローン病;潰瘍性大腸炎;スプルー;胃バイパス手術;悪性貧血;腸内寄生虫;鉤虫感染;鞭虫症;赤血球生成刺激剤の使用から生じる機能的鉄欠乏;炎症性疾患自己免疫疾患;腎不全;癌;およびベータサラセミアの一つ以上により引き起こされる、鉄欠乏でありうる。
【0129】
他の特定の実施形態においては、治療される個体は、赤血球の小赤血球症、20%未満のヘモグロビン鉄結合能、10μg/L未満のフェリチンレベル、または20%未満のトランスフェリン鉄飽和レベルを特徴とする鉄欠乏でありうる。他の特定の実施形態においては、治療される個体は、100μg/L未満のフェリチンレベルを特徴とする機能的鉄欠乏でありうる。
【0130】
鉄の治療用量
通常の技術を有する当業者には当然のことながら、本発明の方法の実施形態は、部分的には、経皮イオン泳動送達を含めて、必要な個体を治療するために治療有効量の鉄を経皮送達することを企図するが、過去の経皮鉄投与の方法は治療用量以下の鉄を投与している。例えば、平均的な成人男性は体内に約3〜4グラムの鉄を有し、成人女性は約2〜3グラムの鉄を有する。毎日の代謝の間に、成人男性は1日につき約1〜2mgの鉄を失う一方、成人女性は1日につき約3〜4mgの鉄を失う(女性の妊娠の有無、閉経の前後に依存する)。病気の間には、成人男性および女性は、毎日最大5〜6mgの鉄を失いうる。過去の経皮送達方法の1日の送達量は、0.7mg/日以下である。当業者には当然のことながら、この治療用量以下の用量は、鉄の毎日の代謝回転がその量の二倍を超えることを考えると、正常な生理的鉄レベルの維持にさえ十分でないことを認識する。
【0131】
対して、本発明の方法の実施形態は、治療用量の鉄の経皮送達を提供する。したがって、本発明の様々な実施形態は、治療有効量の鉄を含む一つ以上の鉄含有化合物を含む組成物の経皮送達用のパッチを提供する。パッチの実施形態は、治療有効量の鉄を含む一つ以上のイオン鉄含有化合物を含む経皮イオン泳動パッチを含みうる。治療有効量の鉄には、様々な範囲が含まれうる。特定の実施形態においては、パッチに含まれる鉄の治療有効量は、約10mg〜約10グラムの元素鉄の範囲、約10mg〜約5グラムの元素鉄の範囲、約10mg〜約1グラムの元素鉄の範囲、約10mg〜約900mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約800mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約700mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約600mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約500mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約400mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約300mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約200mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約100mgの元素鉄の範囲、約10mg〜約50mgの元素鉄の範囲、または約10mg〜約25mgの元素鉄の範囲、または任意の間の範囲の元素鉄でありうる。
【0132】
特定の実施形態においては、パッチに含まれる鉄含有化合物は、治療有効量の約10mgの元素鉄、約25mgの元素鉄、約50mgの元素鉄、約100mgの元素鉄、約200mgの元素鉄、約300mgの元素鉄、約400mgの元素鉄、約500mgの元素鉄、約600mgの元素鉄、約700mgの元素鉄、約800mgの元素鉄、約900mgの元素鉄、約1gの元素鉄、約5gの元素鉄、約10mgの元素鉄、または任意の間の量の元素鉄を含む。例えば、一実施形態においては、鉄含有化合物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の約10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、または25mgの元素鉄を含む。
【0133】
当業者には当然のことながら、以上の量の治療有効量の元素鉄は、本明細書の他所に記載のとおり、様々な組み合わせの本発明の鉄含有化合物(例えば第一鉄塩類)から得られる。
【0134】
他の特定の実施形態において、少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄を含む化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の、1日につき約10mgの元素鉄、1日につき約15mgの元素鉄、1日につき約20mgの元素鉄、1日につき約25mgの元素鉄、1日につき約30mgの元素鉄、1日につき約35mgの元素鉄、1日につき約40mgの元素鉄、1日につき約50mgの元素鉄、1日につき約100mgの元素鉄、1日につき約200mgの元素鉄、1日につき約300mgの元素鉄、1日につき約400mgの元素鉄、1日につき約500mgの元素鉄、または1日につき約1gの元素鉄、または1日につき任意の中間の量の元素鉄を送達するように構成されうる。
【0135】
他の特定の実施形態では、少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の、1日につき少なくとも10mgの元素鉄、1日につき少なくとも15mgの元素鉄、1日につき少なくとも20mgの元素鉄、1日につき少なくとも25mgの元素鉄、1日につき少なくとも30mgの元素鉄、1日につき少なくとも35mgの元素鉄、1日につき少なくとも40mgの元素鉄、1日につき少なくとも50mgの元素鉄、1日につき少なくとも100mgの元素鉄、1日につき少なくとも200mgの元素鉄、1日につき少なくとも300mgの元素鉄、1日につき少なくとも400mgの元素鉄、1日につき少なくとも500mgの元素鉄、または1日につき少なくとも1gの元素鉄または1日につき任意の間の量の元素鉄を送達するように構成されうる。
【0136】
さらに他の特定の実施形態では、一つ以上の鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の、1日につき約10mg〜約1gの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄〜1日につき約500mgの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄〜1日につき約250mgの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄〜1日につき約100mgの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄〜1日につき約50mgの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄〜1日につき約25mgの元素鉄、または1日につき任意の間の量の元素鉄を送達するように構成されうる。
【0137】
治療される個体が新生児、乳幼児、または子供である、ある実施形態においては、一つ以上の鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、約1mg〜約100mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約90mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約80mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約70mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約60mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約50mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約40mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約30mgの元素鉄の範囲、約1mg〜約20mgの元素鉄、約1mg〜約10mgの元素鉄の範囲、または任意の間の元素鉄の範囲の、治療有効量を含みうる。送達される鉄の量は、子供の年齢、体重(例えば体重1kgにつき2mg/日)、サイズまたは他の擬人化パラメータ(ならびにフェリチンレベル、またはトランスフェリン鉄飽和レベルまたは他の鉄欠乏の指標の一つ以上に基づいて調節されうる。
【0138】
治療される個体が新生児、乳幼児、または子供であるさらに他のある実施形態においては、少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の、約1mgの元素鉄、約10mgの元素鉄、約20mgの元素鉄、約30mgの元素鉄、約40mgの元素鉄、約50mgの元素鉄、約60mgの元素鉄、約70mgの元素鉄、約80mgの元素鉄、約90mgの元素鉄、約100mgの元素鉄または任意の間の範囲の元素鉄を含む。
【0139】
治療される個体が新生児、乳幼児、または子供である、ある特定の実施形態においては、少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)を含む組成物の経皮送達用のパッチは、治療有効量の、1日につき約0.5mgの元素鉄、1日につき約1mgの元素鉄、1日につき約2mgの元素鉄、1日につき約5mgの元素鉄、1日につき約10mgの元素鉄、1日につき約15mgの元素鉄、1日につき約20mgの元素鉄、1日につき約25mgの元素鉄、1日につき約30mgの元素鉄、1日につき約35mgの元素鉄、1日につき約45mgの元素鉄、1日につき約50mgの元素鉄、1日につき約75mgの元素鉄、または1日につき約100mgの元素鉄または1日につき任意の間の量の元素鉄を送達する。
【0140】
特定の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む医薬組成物は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週、約2週、3週、約1ヶ月、約2ヶ月、またはそれ以上の期間、または任意の間の期間、持続的に送達される。
【0141】
別の特定の実施形態においては、治療有効量の鉄を含む医薬組成物は、約1日〜約2ヶ月、約1日〜約1ヶ月、約1日〜約1週、約1日〜約5日、約1日〜約3日または約1〜2日の期間、または任意の間の期間、持続的に送達される。
【0142】
したがって、一実施形態においては、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法には、i)本明細書に記載の少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)由来の治療有効量の鉄を含む医薬組成物を含む本発明の経皮パッチに、個体を接触させるステップと;ii)治療有効量の元素鉄を個体に送達し、これにより、個体の鉄欠乏を防止および/または治療するステップとが含まれる。
【0143】
別の実施形態においては、本発明の医薬組成物は、本明細書全体の他所に記載のように、一つ以上の鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)由来の治療有効量の鉄と、および/またはビタミン補助剤、エリスロポイエチン刺激剤、エリスロポイエチン、製薬学的に許容可能な担体、経皮透過化剤、およびシクロデキストリン類からなる群より選択される一つ以上の化合物または薬剤とを含む。
【0144】
本発明は、部分的には、特定の実施形態において、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法が、i)本明細書に記載の少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)由来の治療有効量の鉄を含む医薬組成物を含む本発明の経皮パッチに、個体を接触させるステップと;ii)治療有効量の元素鉄を個体に送達するステップとを含み、治療効果のある用量の鉄の非経口(例えば血管内、静脈内、筋肉内、皮下または筋肉内経路による注射)または経口投与をさらに含むことを企図する。
【0145】
当業者であれば、前述のような鉄の非経口および経口投与の実施経験があり、したがって、本明細書にさらに説明しなくても、これらの鉄製剤を容易に調製および投与できる。
【0146】
特定の実施形態では、非経口または経口鉄投与が、治療効果のある用量の元素鉄を含む本発明の経皮パッチに個体を接触させるのより前、同時または後に達成される。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明は、部分的には、経口または非経口経路により投与される治療効果のある用量の鉄が、速やかに作用して、鉄欠乏を患う個体の生理的鉄レベルを再び正常範囲内の生理的鉄レベルへと増加させることを企図する。そして、本明細書全体に記載のように、持続的な鉄の経皮送達によりこれらの患者における正常な鉄レベルが維持されうる。
【0147】
非経口または経口投与される鉄の量は、約100mgの元素鉄、約200mgの元素鉄、約300mgの元素鉄、約400mgの元素鉄、約500mgの元素鉄、約600mgの元素鉄、約700mgの元素鉄、約800mgの元素鉄、約900mgの元素鉄、約1gの元素鉄、または任意の間の量の鉄でありうる。
【0148】
特定の実施形態では、非経口または経口投与される鉄の量は、約100mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約200mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約300mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約400mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約500mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約600mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約700mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約800mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、約900mgの元素鉄〜約1グラムの元素鉄の範囲、または任意の間の量の鉄でありうる。
【0149】
したがって、一実施形態においては、個体の鉄欠乏を治療および/または防止するための方法には、i)本明細書に記載の少なくとも一つの鉄含有化合物(イオン鉄含有化合物を含みうる)由来の治療有効量の鉄を含む医薬組成物を含む本発明の経皮パッチに、個体を接触させるステップと;ii)非経口または経口用量の治療有効量の鉄を任意に投与しながら、治療有効量の鉄を個体に送達し、これにより個体の鉄欠乏を防止および/または治療するステップとが含まれる。
【0150】
当業者は、本明細書に記載の実施形態の任意のものを実行できる。さらに、当業者は、本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供できる。
【0151】
本明細書において言及され、および/またはApplication Dataに列挙される、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全てが、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0152】
結論
以上の本発明の様々な実施形態の記載は、例示および説明のために示されている。本発明を開示される正確な形に制限することを意図するものではない。多くの変更、変化および改良が、当業者に明らかである。例えば装置の実施形態は、様々な小児科および新生児への適用のために大きさが設定され、あるいは別の方法で適合されうる。
【0153】
一つの実施形態の要素、特徴または行為は、他の実施形態からの一つ以上の要素、特徴または行為と容易に再結合されまたは置換されて、本発明の範囲内の多数の追加的な実施形態が形成されうる。さらに、他の要素と結合されるものとして表示または記載される要素は、様々な実施形態において、独立した要素として存在しうる。したがって、本発明の範囲は、記載された実施形態の明細に限定されず、添付の請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の鉄の経皮送達用のイオン泳動パッチであって、該パッチが、電極と、貯蔵部とを含み、該貯蔵部は、該治療有効量の鉄の送達のためのイオン鉄を含む組成物を含む、パッチ。
【請求項2】
前記貯蔵部が、前記パッチの層を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記貯蔵部が、コンパートメントを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項4】
前記貯蔵部が、実質的にパッチ全体を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項5】
前記イオン鉄が、少なくとも一つの第一鉄塩の形である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項6】
前記少なくとも一つの第一鉄塩が、グルコン酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、およびフマル酸第一鉄からなる群より選択される、請求項5に記載のパッチ。
【請求項7】
前記組成物が、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン、およびエリスロポイエチン刺激剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬剤をさらに含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも一つの経皮透過化剤をさらに含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
前記少なくとも一つの経皮透過化剤が、シクロデキストリンを含む、請求項8に記載のパッチ。
【請求項10】
前記組成物が、約10mg〜約50mgの範囲の量の元素鉄を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項11】
前記組成物が、約1mg〜約100mgの範囲の量の元素鉄を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項12】
前記組成物が、約1mg〜約75mgの範囲の量の元素鉄を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項13】
前記組成物が、約1mg〜約50mgの範囲の量の元素鉄を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項14】
前記組成物が、約1mg〜約10mgの範囲の量の元素鉄を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項15】
前記パッチが、前記組成物の送達を増強するために皮膚層に選択された深さを貫通するとともに、該貫通による知覚可能な痛みを最小限にするように構成された、少なくとも一つの針を含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項16】
前記少なくとも一つの針が、針のアレイを含む、請求項15に記載のパッチ。
【請求項17】
前記少なくとも一つの針が、約100〜約150μmの範囲の長さを有する、請求項16に記載のパッチ。
【請求項18】
前記貯蔵部と前記パッチの組織接触側との間に配置される速度制御部材
をさらに含み、該速度制御部材が、鉄が該貯蔵部から該組織接触側に移動する速度を制御するように構成される、請求項1に記載のパッチ。
【請求項19】
治療有効量の鉄の経皮送達用のイオン泳動システムであり、該システムが、請求項1に記載のパッチと;
第二パッチとを含み、該パッチが、複数の針を含む皮膚接触層を有し、該複数の針が、アレイ化されたパターンに配置され、該複数の針が、該第二パッチが該皮膚に対して押圧されたときに該針が該皮膚に選択された深さを貫通して、該皮膚の角質層に該組成物の送達を増強するためのチャネルを作るとともに、該貫通による知覚可能な痛みを最小限にする、長さを有する、イオン泳動システム。
【請求項20】
前記針が、約100〜約150μmの範囲の長さを有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記針のアレイが、前記第二パッチへの約10ニュートン以下の力の適用により、前記角質層に前記チャネルを作るように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
イオン鉄を含む組成物の経皮イオン泳動送達を必要とする個体への該組成物を含む経皮イオン泳動送達のための方法であって、
活性電極と、イオン鉄を含む組成物とを含むパッチに、該個体を接触させる、ステップと;
治療有効量のイオン鉄の該個体への経皮イオン泳動送達を引き起こすために、該活性電極からの電流を適用する、ステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記イオン鉄が、一つ以上の第一鉄塩類の形である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記一つ以上の第一鉄塩類が、グルコン酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、およびフマル酸第一鉄からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、ビタミン補助剤、エリスロポイエチン、およびエリスロポイエチン刺激剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬剤を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ビタミン補助剤が、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、ピロキシジン、ビオチン、葉酸、およびコバラミンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約1mg〜約50mgの範囲の元素鉄である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約1mg〜約40mgの範囲の元素鉄である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約1mg〜約30mgの範囲の元素鉄である、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
治療パラメータに基づいて、前記個体への前記イオン送達鉄の治療有効量を調節するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記治療パラメータが、患者特性、患者体重、治療される鉄欠乏のタイプ、または選択される治療結果である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン鉄組成物が、実質的に持続的に送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記イオン鉄組成物が、約1日〜約1ヶ月の期間にわたり送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記イオン鉄組成物が、約1日〜約1週間の期間にわたり送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記イオン鉄組成物が、約1日〜約3日の期間にわたり送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イオン鉄組成物が、約1日の期間にわたり送達される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約1mg〜約50mgの元素鉄の範囲である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
個体の鉄欠乏を防止および/または治療するために十分な鉄を送達するステップ
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
治療有効量の鉄を非経口投与するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記非経口投与が、経皮送達の前に行われる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記非経口投与が、静脈内投与または皮下投与である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記非経口投与および前記経皮送達の少なくとも一方が、他方に対して調節される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記調節が、鉄送達の速度または量の少なくとも一つについてである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
治療有効量の鉄を経口投与するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記経口投与が、前記経皮送達の前に行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
経皮送達の前に、前記個体に鉄の静脈内ボーラスを投与するステップをさらに含み、該ボーラスが、約500mg〜1グラムの鉄を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記個体が、貧血を伴わない鉄欠乏である、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記鉄欠乏が、成長遅延、認知障害、および/または精神遅滞を防止するために治療される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記鉄欠乏が、慢性アルコール中毒;栄養不良;動物タンパク質およびアスコルビン酸(absorbic)の消費量の減少;妊娠中、乳幼児期、または思春期の鉄要求量の増加;吸収不良症候群;および鉄の胃腸内吸収を減らす食品または薬物により引き起こされる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記個体が、鉄欠乏性貧血である、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記個体が、赤血球の小赤血球症、20%未満のヘモグロビン鉄結合能、約10μg/L未満のフェリチンレベル、または20%未満のトランスフェリン鉄飽和レベルを特徴とする鉄欠乏である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記個体が、100μg/L未満のフェリチンレベルを伴う機能的鉄欠乏である、請求項38に記載の方法。
【請求項53】
前記個体が、子供、乳幼児、および新生児からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項54】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約0.5mg〜約40mgの範囲の元素鉄である、請求項38に記載の方法。
【請求項55】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、約0.5mg〜約20mgの範囲の元素鉄である、請求項38に記載の方法。
【請求項56】
前記治療有効量の送達されるイオン鉄が、擬人化パラメータまたは鉄欠乏の指標に基づいて調節される、請求項38に記載の方法。
【請求項57】
前記イオン鉄組成物が、約1日〜約1週間の期間にわたり送達される、請求項38に記載の方法。
【請求項58】
前記イオン鉄の経皮送達を増強するために、前記角質層に複数のマイクロチャネルを作るステップ
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項59】
前記複数のマイクロチャネルが、機械的に作られる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数のマイクロチャネルが、複数の針を用いて作られる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記複数のマイクロチャネルが、前記皮膚上または皮膚内への放電を用いて作られる、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記放電が、複数の伝導マイクロフィラメントを用いて作られる、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−525916(P2011−525916A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516322(P2011−516322)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/003837
【国際公開番号】WO2009/158032
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(511001769)エフイー3 メディカル, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】