治療的に活性なα−MSHアナログ
【課題】天然α−MSHペプチドに比較して高い効果を有するα-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)のペプチドアナログを提供する。
【解決手段】具体的なアミノ酸配列:X-Aa1-Aa2-Aa3−Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Zに基づく。当該α-MSHアナログは、α-MSHペプチドに比べて高い抗炎症効果及び虚血状態を予防する高い能力を示す。
【解決手段】具体的なアミノ酸配列:X-Aa1-Aa2-Aa3−Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Zに基づく。当該α-MSHアナログは、α-MSHペプチドに比べて高い抗炎症効果及び虚血状態を予防する高い能力を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然型のα-MSHペプチドに比べて高い効力を有するα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)のペプチドアナログに関する。当該α-MSHアナログは、α-MSHに比べて、高い抗炎症効果、並びに虚血若しくは虚血後の血管再灌流に関連する全身、臓器、又は細胞の損傷を治療又は予防する高い能力を示す。
【背景技術】
【0002】
天然型のペプチドα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、1型、3型、4型及び5型メラノコルチン(MC)受容体の天然アゴニストとして知られている。MC受容体は、Gタンパク質共役受容体のクラスに属する。全ての受容体亜型は、G-刺激タンパク質に共役し、このことは、受容体刺激がcAMPの産生増加に関与するということを意味する。ACTHは、II型受容体(MC2)に対する天然リガンドである。
【0003】
様々な組織のMC受容体について一連の研究が行われた。α-MSHが高い親和性で結合する1型受容体(MC1)は、幾つかの組織及び細胞、例えば、脳、例えば星状細胞、精巣、卵巣、マクロファージ及び好中球において発現することが知られている。しかしながら、MC1は、さらに広い範囲の組織において発現される可能性があるが、これはまだ実証されていない。異なるMSHペプチドに結合するMC受容体の選択性は変化する。MC1は、高い親和性でα-MSHに結合し、そして低い親和性でβ-MSH、γ-MSH及びACTHと結合する。MC2は、ACTHにのみ結合するが、MSHペプチドのどれにも結合しないことが報告されている。他の受容体のリガンドについての高い親和性は、γ-MSH(MC3-受容体)及びβ-MSH(MC4受容体)が挙げられる。対照的に、MC5は、ずっと低い親和性で、MC1と同じパターン(つまり、α-MSHに対する最大の親和性)でMSHペプチドに結合する。
【0004】
MC受容体の刺激を通して作用するMSHペプチドは、免疫調節、消炎、体温調節、疼痛知覚、アルドステロン合成、血圧調節、心拍数、血管緊張、脳血流、神経成長、胎盤発達、種々のホルモン、例えばアルドステロン、チロキシン、プロラクチン、FSHなどのホルモンの合成/放出を含む様々な機能を有する。ACTHは、ステロイド新生の刺激に主要な効果を有する。α-MSHは、皮膚における色素形成を誘導する。
【0005】
どの受容体が関与するかについて、MSHペプチド類、特にα-MSHの多くの作用が完全に実証されたわけでないことを強調することは重要である。α-MSHの抗炎症作用は、マクロファージ及び単球で発現されるMC1受容体と連関するNO産生の妨害、エンドテリン-1作用、インターロイキン10形成を含む様々なプロセスに関わることが憶測されてきた。
【0006】
α-MSHでのMC受容体刺激が、様々な抗炎症プロセスにおいて重要であることが示されてきた(Lipton及びCatania1997):1)好中球の化学遊走(chemotactive migration)を抑制する(Catania 1996)。2)アナログを含むα-MSHが、LPS処理(Goninard1996)に応答したサイトカイン(IL-1、TNF-α)の放出を抑制する。3)細菌エンドトキシンに応答したTNF-αを抑制する(Wong,K.Y.ら、1997)。4)α-MSHのICV又はIP投与は、局所投与されたLPSによる中枢TNF−α産生を抑制する。5)α-MSHが、実験的炎症性腸疾患、虚血誘導性急性腎不全の炎症を低下させることを示した。(Star、R.A.ら、1995)。6)接触性過敏症の誘導及び誘発を抑制することにより、幾らかの保護的効果も有し、そしてハプテン抵抗性を誘導し、α-MSHが、皮膚炎症及び過剰増殖性皮膚疾患の重要な負の制御を媒介し得るということが憶測される(Luger、T.A.、1997)。このため、α-MSHは、皮膚の微小血管系からのIL-8放出増加を引き起こす(Hartmeyer, M., 1997)。
【0007】
低酸素症(虚血)及び再灌流損傷の両者は、ヒト病態生理学において重要な因子である。再灌流の間において損傷を受けやすくする組織低酸素症の例として、循環性ショック、心筋虚血、ストローク、一時的腎虚血、大手術及び臓器移植が挙げられる。虚血が原因で生じる疾患は、病的状態と死亡のかなり一般的な原因であり、そして臓器移植がかなり頻繁に行われているので、再灌流損傷を限定的にする可能性についての治療戦略は、公衆健康を改善するためにかなりの必要性がある。虚血再灌流損傷の原因となる病態生理学は複合的であり、そして好中球の浸潤に応答する古典的炎症再灌流応答だけではなく、再灌流組織/臓器内で、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)1β、IL-6、IL-8、インターフェロン-γ及び細胞内接着分子-1(ICAM-1)を含むサイトカイン遺伝子発現に関する。さらに、心筋梗塞を起こした心臓と同様に、局所的に産生されるTNF-αが収縮の直接的な減少及びアポトーシスを誘導することにより、虚血後の臓器不全に寄与するということが示唆された。虚血及び/又は再灌流損傷の複合的な性質のために、単純な抗炎症治療の考え方は、効果的でないことが示されてきた。再灌流損傷を保護するために、1より多くの活性経路への同時相互作用が必要であるということが多くの実験研究により指摘された。α-MSHが、抗炎症性、抗酸化性及び抗アポトーシス能力の全てを有することが示され、このことは、再灌流損傷を保護するために当該化合物の有効性をよく説明する。
【0008】
α-MSHアミノ酸配列のアミノ酸残基のある改変が、受容体(例えば、MC4受容体)親和性の増加をもたらすこと、生物学的活性の延長をもたらすこと、又はより強力なペプチドの受容体特異的結合プロファイルをもたらすことが知られている(Schiothら、1998, Hrubyら、1995, Sawyerら、1980, Hiltzら、1991, Scardeningsら、2000)。しかしながら、ペプチド薬剤の作成を目的とする場合、これらのペプチドは、酵素変性に対する安定性の低さについての問題を有する。
【0009】
上で記載される様に、ペプチド治療活性薬の開発の問題は、ペプチドが迅速にそしてかなり効果的に、一般的に数分の範囲の半減期で酵素により分解されるという点である。プロテアーゼ及び他のタンパク質分解性の酵素は偏在しており、特に消化管に存在しており、その結果ペプチドは通常、経口投与されると複数の場所で分解され、そして血中、肝臓、腎臓及び血管内皮においてある程度分解されやすい。さらに、所定のペプチドは通常、骨格内の1超の結合部で切断されやすく、各場所での加水分解は特定のプロテアーゼにより媒介される。このような障害が克服されたとしても、特に神経ペプチドについては、血液脳関門の通過について困難に直面する。
【0010】
ペプチドの代謝安定性を増加させるために、SIP(構造誘導性プローブ(Structural Induced Probe))と呼ばれる技術が、Larsenら、1999(WO99/46283)により開発された。SIP技術は、構造誘導プローブの使用に基いており、これは、親ペプチドのC末端又はN末端、或いはC末端とN末端の両方に加えられる短いペプチド配列、つまり(Lys)6により示される。構造誘導性プローブは、細胞間水素結合に基いてより秩序だった立体構造へと親ペプチドを制約し、それにより当該ペプチド・キメラ(プローブに結合されたペプチド)は、ランダムコイル立体構造のペプチドに比べてプロテアーゼに対する分解性を低くする。この構造の結果として、ペプチドキメラは、プロテーゼにより分解されにくくなる。生理的に活性なペプチドにSIPを加えることは、ペプチドの酵素安定性の増加をもたらす一方、同時に生理活性が維持される(Rizziら、2002)。
【発明の概要】
【0011】
本発明の要約
本発明者は、驚くべきことに、α-MSH及びα-MSHアナログをペプチドのN末端においてSIP改変することが、天然型のα-MSHペプチドに比較されたペプチドの最大効力を増加させるということを示した。本発明のペプチドは、天然型のα-MSHに比べて高い抗炎症効果及び虚血状態を予防するための高い能力を示す。
【0012】
こうして、本発明は、当該ペプチドのN-末端部分においてSIP改変を含み、かつα-MSHのアミノ酸配列又は当該ペプチドのC末端部分におけるα-MSHのバリアントを含む具体的ペプチドに関する。
【0013】
第一態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6を含み、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、Lys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、式中B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端は、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む全体で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチドを提供する。
【0014】
本発明はまた、哺乳動物の1以上の臓器の組織における状態の治療又は予防のための医薬組成物の製造のためのペプチドの使用に関する。さらに本発明は、組成物、例えば本発明に記載される1以上のペプチド及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物、医薬において使用するための本発明のペプチド、及び本発明に従ったペプチドの有効量を投与することを含む哺乳動物の1以上の臓器の組織における病気の治療方法に関する。具体的に、本発明は、虚血、炎症及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により引き起こされる病気を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#1について10-7Mだけ達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルに対しp<0.05、#:α-MSHに対しp<0.05。
【図2】血漿におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、ivで与えられた200μg/kg体重のα-MSH及びMCA#1の両方により達成された。平均±SE(各群についてN=4〜6)。*:ビヒクルに対してp<0.05、#:α-MSHに対してp<0.05。
【図3】好酸球。当該図は、実験例3において肺内への好酸球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の効果を示す。両方の化合物は、iv bidで与えられた200μg/kg体重の用量で与えられた。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図4】肺動脈圧。当該図は、ブタにおける肺動脈圧のLPS誘導性の変化についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の効果を示す。平均±SE(2群においてN=3及び6)。*:ビヒクルとの差。
【図5】再懸濁後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4における心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の保護的効果を示す。MCA#1の最大効果は、ivで200μg/kg体重で与えられることにより達成される。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*:ビヒクルとの差。
【図6】60分間のLAD閉塞後二週後のLVEDP。当該図は、実験例4の梗塞後うっ血性心不全の発達についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の保護的効果を示す。MCA#1の効果は、200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:偽手術に対してp<0.05;#:ビヒクルに対してp<0.05。
【図7】利尿。当該図は、実験例5における虚血後多尿症の発達についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の保護的効果を示す。MCA#1の効果を、ivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=5〜7)。*:ビヒクルとは異なる。
【図8】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#2(配列番号5)(MCA#2)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#2の両方について10-7Mにより達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとは異なる。
【図9】血漿におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#2(配列番号5)(MCA#2)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#2の両方についてivで200μg/kg体重により達成される。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図10】好酸球。当該図は、実験例3における肺内への好酸球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の効果を示す。両化合物は、iv bidで与えられる200μg/kg体重で与えられる。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図11】好中球。当該図は、実験例3における肺内への好中球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の効果を示す。両方の化合物が、iv bidで200μg/kg体重の用量で与えられる。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図12】再灌流後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4のいて心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の保護的効果を示す。MCA#3の効果を、ivで与えられた200μg/kg体重により達成した。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*ビヒクルとの差。
【図13】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#3(配列番号9*)(MCA#3)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNFα産生についての最大抑制性効果は、α-MHS及びMCA#3の両方について10-7Mにより達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図14】血漿におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#3(配列番号9)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNFαについての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#3の両方についてのivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図15】再灌流後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4において心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#3(配列番号9*)(MCA#3)の保護的効果を示す。MCA#3の効果は、ivで与えられた200μg/kg体重により達成される。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*:ビヒクルとの差。
【図16】血漿におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。 当該図面は、実験例2におけるα-MSHアナログ#4(配列番号13)(MCA#4)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNFα生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#4の両方についてivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルに対してp<0.05;#α-MSHに対してp<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、虚血、炎症、及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により誘導される臓器機能不全を寛解又は予防する効果を有する治療活性ペプチドに関する。
【0017】
本明細書に定義される場合、ペプチド配列は、疾患状態、生理的条件、症状又は病因適応症の治療、寛解または軽減、或いはその評価又は診断のために使用することができる場合に、「治療活性」となる。ペプチド配列は、疾患状態、生理的状態、症状又は病因適応症を予防するために使用できる場合に、「予防活性」である。医薬として活性な薬剤は、生理的に及び/又は生物学的に活性である。医薬活性は、in vitro、in vivo、又はex vivoにおいて生理的及び/又は生物学的システムへの当該物質(ペプチド)の効果を計測し、そして特定のペプチド又は同様の生理的機能を有するペプチドについての技術分野に知られている標準的なin vitro、in vivo、又はex vivoアッセイを用いてアッセイされてもよい。
【0018】
本発明のペプチド
本発明は、α-MSH又は当該ペプチドのC末端部分におけるα-MSHのバリアント、並びに当該ペプチドのN末端部分における構造誘導性プローブ(SIP)のアミノ酸配列を含むペプチドに関する。本発明のペプチドは、α-MSHアナログと呼ばれている。本明細書及び特許請求の範囲では、これらの用語は、同義的に用いられる。
【0019】
α-MSHバリアントは、配列内での少なくとも1のアミノ酸残基の欠失、置換、添加、又は改変により、天然型のα-MSH(Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val、配列番号101)に比べて改変されるアミノ酸配列として定義される。α-MSHバリアントは、好ましくは、以下の構造:Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Zを有し、ここでYは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そしてここでZは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そしてここでAa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然又は非天然型アミノ酸残基であるか、又は存在しない。
【0020】
本文脈では、「アミノ酸残基」という用語は、任意の天然型のアミノ酸残基(天然アミノ酸残基)又は非天然型のアミノ酸残基(非天然アミノ酸残基)を意味する。
【0021】
天然アミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸残基、例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Tyr、Thr、Trp、Valとして定義される。
【0022】
α-MSHバリアントの構造についての好ましい天然アミノ酸残基の例は、Ser、Tyr、Met、Glu、Ile、Trp及びGlyである。
【0023】
非天然アミノ酸残基は、自然には存在しないが、実験的に作成できるアミノ酸残基として定義される。非天然アミノ酸残基として、合成α、βまたはγアミノ酸残基(L立体配置又はD立体配置のいずれか)並びに、改変チロシンなどの側鎖改変アミノ酸(ここで芳香環は、さらに、例えば1以上のハロゲン、スルホノ基、ニトロ基など及び/又はフェノール基は、エステル基等へと変換される)、例えば側鎖保護アミノ酸であり、ここでアミノ酸側鎖は、ペプチド化学において当業者に知られている方法に従って保護され、例えば、Bodanszkyら、1994, 及びJ. Jones, 及びJones 1991に記載される。好ましい非天然アミノ酸残基の例は、ノルロイシン(Nle)、Nal(β-2-ナフチル-アラニン)、D-Nal(β-2-ナフチル-d-アラニン)、D-フェニルアラニン(D-Phe)及びD-バリン(D-Val)である。
【0024】
最も広い態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立してLys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端は、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む、全体で12〜19のアミノ酸を有するペプチドに関する。
【0025】
本発明の文脈では、「場合により置換される」という用語は、問題の基が、1又は数回、例えば1〜5回、好ましくは1〜3回、最も好ましくは1〜2回、C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、オキソ(互変異エノール形態で示されてもよい)、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシ(エノール系で存在する場合、互変異ケト形態で示されてもよい)、ニトロ、シアノ、ジハロゲン-C1-8-アルキル、トリハロゲン-C1-8-アルキル、ハロゲンで置換されてもよいということを意味することが意図される。一般的に、上記置換基が、さらなる任意の置換基を受け入れる余地があってもよい。
【0026】
本文脈では、「C1-6アルキル」という用語は、直線状又は分岐状の飽和炭化水素鎖を意味することを意図し、ここで最長の鎖は、1〜6個の炭素原子を有し、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルなどを有する。分岐状の炭化水素鎖は、炭化水素鎖を有する任意の炭素でC1-6-アルキルを意味することを意図する。
【0027】
本文脈では、「C2-6アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を有する直線状又は分岐状炭化水素を意味することを意図し、そして1又はそれより多くの二重結合を含む。C2-6アルケニル基の代表的な例として、アリル、ホモ-アリル、ビニル、クロチル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルがあげられる。1超の二重結合を有するC2-6-アルケニル基の代表的な例として、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、及びヘキサトリエニル基、並びにそれらの分岐形態が挙げられる。不飽和(二重結合)の位置は、炭素鎖に沿った任意の位置であってもよい。
【0028】
本文脈では、「C3-8-シクロアルキル」という用語は、炭素原子のみを含む3、4、5、6、7、及び8員環をカバーすることを意図し、ここで、「ヘテロシクリル」という用語は、3、4、5、6、7、及び8員環を意味することを意図し、ここで炭素原子は、1〜3のヘテロ原子と一緒に当該環を構成する。ヘテロ原子は、独立して、酸素、硫黄、及び窒素から独立して選ばれる。
【0029】
C3-8シクロアルキル及びヘテロシクリル環は、しかしながら、芳香族π電子系が生じない様式で1以上の不飽和結合を場合により含んでもよい。
【0030】
好ましい「C3-8シクロアルキル」の代表的な例は、炭素環シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,2-シクロヘプタジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,4-シクロヘプタジエン及び1,3,5-シクロヘプタトリエンである。
【0031】
「複素環」の代表的な例は、複素環2H-トリピラン、3H-チピラン、4H-チピラン、テトラヒドロチオピラン、2H-ピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,2-ジチイン、1,2-ジチアン、1,3-ジチイン、1,3-ジチアン、1,4-ジチイン、1,4-ジチアン、1,2-ジオキシン、1,2-ジオキサン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,2-オキサチイン、1,2-オキサチアン、4H-1,3-オキサチイン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、2H-1,2-チアジン、テトラヒドロ-1,2-チアジン、2H-1,3-チアジン、4H-1,3-チアジン、5,6-ジヒドロ-4H-チアジン、4H-1,4-チアジン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、4H-1,2-オキサジン、6H-1,2-オキサジン、2H-1,3-オキサジン、4H-1,3-オキサジン、4H-1,4-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、オキサゾール、フラザン、バルビツル酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、イソオキサゾール、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、4H-1,2,3-トリチイン、1,2,3-トリチアン、1,3,5-トリチアン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,2-ジオキソール、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソール、1,3-ジオキソラン、3H-1,2-ジチオール、1,2-ジチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、チアゾリン、チオゾリジン、3H-1,2-オキサチオール、1,2-オキサチオラン、5H-1,2-オキサチオール、1,3-オキサチオール、1,3-オキサチオラン、1,2,3-トリチオール、1,2,3-トリチオラン、1,2,4-トリチオラン、1,2,3-トリオキソール、1,2,3-トリオキソラン、1,2,4-トリオキサオラン、1,2,3-トリアゾリン及び1,2,3-トリアゾリジンである。複素環への結合は、ヘテロ原子の位置であってもよいし、又は複素環の炭素原子を介してもよい。
【0032】
本文脈では、「アリール」という用語は、炭素芳香環又は環系を意味することを意図する。さらに、「アリール」という用語は、融合環系を含み、ここで少なくとも2のアリール環、又は少なくとも1のアリール及び少なくとも1のC3-8-シクロアルキル、又は少なくとも1のアリール及び少なくとも1のヘテロシクリルは、少なくとも化学結合を共有する。アリール環の代表的な例としては、場合により、置換フェニル、ナフタレニル、フェナンスレニル、アントラセニル、アセナフチレニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、インドリル、クマラニル、クマリニル、クロマニル、イソクロマニル、及びアズレニルが挙げられる。好ましいアリール基はフェニルである。
【0033】
本文脈では、「C7-16アラルキル」は、C1-6アルキルで置換されたC1-6アルキルを意味することを意図する。
本文脈では、「C7-16アルキルアリール」は、C6-10アリールで置換されるC1-6アルキルを意味することを意図する。
【0034】
1の実施態様では、本発明は:
X-Y-Z、
X-Aa1-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Z、
X-Aa1-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Z,
X-Aa1-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Aa6-Aa7-Z、及び
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立してLys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中、B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2であり、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、全体で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチドに関する。
【0035】
好ましい実施態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6、及びAa7は、独立して、任意の天然又は非天然アミノ酸で在りうる。こうして、Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は、全て本発明のペプチド中に存在する]
を含む、ペプチドに関する。
【0036】
1の実施態様では、本発明は、アミノ末端が(B4)HN-、(式中、B4=H)である、本発明に従ったペプチドに関する。
【0037】
1の実施態様では、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中、B1=OH)である本発明に従ったペプチドに関する。
【0038】
幾つかの方法は、分解に対してペプチドを安定化するため、そして他の化合物、薬剤及び/又は例えば血漿中のペプチド/タンパク質と反応するペプチドの能力を低減するために使用できる。本発明は、当該技術分野に知られているこのような方法により改変される本発明に関するペプチドに関する。好ましい実施態様では、本発明は、ペプチドのアミノ末端がアセチル化により改変される、本発明に従ったペプチドに関する。こうして、好ましい実施態様では、本発明は、当該アミノ末端が(B6)HN-であり、ここで、B6=B4-C(=O)-、及びB4=CH3である、本発明に従ったペプチドに関する。他の好ましい実施態様では、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端がアミド化により改変された本発明に従ったペプチドに関する。こうして、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端が-C(=O)-B1、(ここでB1=NH2)である本発明に従ったペプチドにペプチド関する。
【0039】
本発明の最も広い態様では、
Xは、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号37)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号38)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号39)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号40)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号41)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号42)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号43)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号44)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号45)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号46)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号47)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号48)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号49)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号50)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号51)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号52)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号53)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号54)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号55)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号56)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号57)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号58)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号59)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号60)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号61)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号62)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号63)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号64)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号65)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号66)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号67)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号68)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号69)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号70)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号71)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号72)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号73)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号74)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号75)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号76)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号77)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号78)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号79)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号80)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号81)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号82)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号83)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号84)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号85)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号86)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号87)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号88)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号89)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号90)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号91)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号92)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号93)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号94)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号95)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号96)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号97)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号98)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号99)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号100)
から選ばれる。
【0040】
本発明の現在好ましいペプチドは、以下のペプチド配列:
【化1】
の安定化合物である。
【0041】
安定化は、上で記載される様にペプチドのN末端及び/又はC末端を改変することにより行われて、例えば本発明のペプチドのN末端をアセチル化し、及び/又は本発明のペプチドのC末端をアミド化してもよい。
【0042】
天然アミノ酸についてアミノ酸配列は3文字表記により与えられる。天然アミノ酸残基の改変及び置換は、以下のように略記される:Nleは、ノルロイシンの略記である。D-Nalは、β-2-ナフチル-d-アラニンの略記である。D-Val(D-バリン)は、バリンのD体の略記である。D-Phe(D-フェニルアラニン)は、フェニルアラニンのD体の略記である。
【0043】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号1)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0044】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号2)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0045】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号3)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0046】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号5)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0047】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号9)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0048】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号13)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0049】
別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号17)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0050】
上で記載される様に、本発明のペプチドは、天然型ペプチドα-MSHに比べて、高い治療効力及び/又は高い最大応答及び/又は高い最大効力を有する。
【0051】
発明者は、本発明のペプチドの幾つか:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Glu)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号2*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)-NH2 (配列番号3*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号13*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号17*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
の生物学的効果を試験した。
【0052】
一般的に、「Ac-」は、本発明のペプチドがN-末端でアセチル化されることを指し、そして「-NH2」が、本発明のペプチドがC末端でアミド化されることを指す。
【0053】
ヒト白血球細胞の懸濁液中で( 実験例1)、7個全てのペプチドは、用量依存的にLPSに誘導されたTNF-αの蓄積を抑制する(実施例1〜7)。驚くべきことに、7個のペプチド全てが、天然メラニン細胞刺激ホルモンであるα-MSHに比べて、TNF-α産生について最大抑制効果として定義された場合にさらに効果的であり、並びにTNF-α蓄積の最大抑制を与えるために必要とされる化合物の濃度として定義された場合にさらに強力である (実施例1〜7)。
【0054】
本発明者は、実験例で上に挙げられる7個のペプチド(配列番号1*、配列番号2*、配列番号3*、配列番号5*、配列番号9*、配列番号13*及び配列番号17*、これら全ては、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)を調査した。ここで、ラットにLPSを静脈内輸液することにより全身炎症を誘導した(実験例2)。これらのペプチドが、循環血液中でLPS誘導性のTNF-αを有意に抑制することが示された。驚くべきことに、7個全てのペプチド(配列番号1*、配列番号2*、配列番号3*、配列番号5*、配列番号9*、配列番号13*及び配列番号17*、これら全てはN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)は、天然のメラニン細胞刺激ホルモンα-MSH(実施例1〜7)よりも高い程度で循環血液中でTNF-αの濃度を抑制できた(実施例1〜7)。
【0055】
本発明者は、炎症がラットにおいてLPSを吸入させることにより誘導される実験(実験例3)において以下のペプチド:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、及び
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号5*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
の効果を調査し、そして2個のペプチド(配列番号1*及び5*)がLPS誘導性の肺内への好酸球の蓄積の効果を有意に抑制することが示された(実施例1及び2)。驚くべきことに、好酸球についての効果に加えて当該ペプチド(配列番号5*)は、天然メラニン細胞刺激ホルモン、α-MSH(実施例2)で処理されたラットで見られたよりもずっと高い程度で好中球の浸潤を顕著に抑制した。
【0056】
腎臓の一時的虚血は、低減された血圧、血液量減少、腎臓及び/又は大動脈の血流低下に関する外科的介入の結果として、又は敗血症に付随して頻繁に見られる。これは、虚血誘導性急性腎不全をもたらし、この大部分が、慢性腎不全へと悪化させる。現在では、腎不全の発達を抑制するための効果的な治療が存在しない。虚血段階後の一般的な知見は、溶質を含まない尿の生産を増加させる尿濃縮障害の発達である。
【0057】
ラットにおける虚血及び再灌流により誘導される虚血誘導性急性腎不全(ARF)は、尿細管の特徴的な構造変化を引き起こすことが知られており、尿濃縮メカニズムの機能障害を伴う。この虚血誘導性ARFモデルは、虚血誘導性損傷におけるMSHアナログの効果を評価する適切な実験例を提供する。本発明者は、以下のペプチド:Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)の効果を調査し、そして、重篤な急性腎疾患誘導性の腎動脈の一時的な両側性閉塞について、当該ペプチドの効果を天然ペプチドα-MSHの効果と比較した(実験例6)。一時的な腎動脈の閉塞後5日目で評価された場合、ビヒクルで処理されたラットは、腎動脈の偽閉塞にかけられた対照ラットに比べて101%より高い利尿により定義される多尿症を発達させた。驚くべきことに、天然ペプチドα-MSHと等量で与えられた化合物(配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)は、完全に多尿症を通常化し、当該ペプチドが虚血誘導性ARFに対する保護を与える能力を有することが示唆される。一方、この実験において天然ペプチドでの処理は、尿生産を通常化することができなかった。
【0058】
急性心筋梗塞(AMI)は、先進国において最も一般的な死亡原因のうちの1つである。AMIは、ほとんどの場合、突然の冠状動脈血栓症のため、冠状動脈アテロームを有する患者において生じる。今日では、線溶療法又は経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、標準的な治療であり、そして50〜70%の患者において初期の再灌流を達成できる(自発的な再灌流率は、30%未満である)。再灌流の目的は、梗塞サイズを低減すること、それにより心筋機能の損傷の発達を低減することである。血栓溶解/PTCAの全体の効果は、短期間及び長期間の死亡率を20%低下することである。しかしながら、AMIは、炎症反応と関連し、炎症反応は回復と瘢痕形成の必要条件である。冠状動脈閉塞は、心筋の部分への血流を致命的に低減し、これは顕著にエネルギー代謝を損なわせる。かなりの時間(20分超)の虚血は、梗塞を誘導し、そして炎症応答をもたらし、これらの両方は、虚血心筋が再灌流される場合に促進及び増大される。
【0059】
心筋虚血/再灌流(MIR)は、好中球の浸潤を伴う古典的な炎症性再灌流応答ばかりでなく、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-8、インターフェロン-γ、及び細胞内接着分子-1(ICAM-1)を含む心筋サイトカイン遺伝子の発現を活性化する。この局所的なサイトカインの心筋での発現は、梗塞の大きさの調節だけではなく、血管壁リモデリング、心臓損傷、及び心筋肥大を含む心臓記脳損傷の進行の役割を果たしてもよい。さらに、局所的に産生されたTNF-αが、収縮性の直接的な減少及びアポトーシスの誘導を介して、虚血後心筋機能不全に寄与することが示唆された。
【0060】
多くの実験により、抗炎症/抗酸化性/抗アポトーシス戦略は、MIRの動物モデルにおいて梗塞サイズを低減する能力を有する。しかしながら、臨床試験は、ヒトにおいて有意な効果を示さなかった。
【0061】
左冠動脈が60分間閉塞されたラットにおける心筋虚血/再灌流のモデルでは、本発明に記載されるペプチドでの治療が冠状動脈閉塞を取り除く前にされ、そして次にラットをさらに3時間追跡した。次に梗塞サイズについてのペプチドの能力を評価し、そして天然ペプチドα-MSH(実験例5)の効果と比べられた。
【0062】
驚くべきことに、以下の:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)、及び
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)
で表される3個全てのペプチドは、天然ペプチドα-MSHよりも高い程度に梗塞サイズを低減した(実施例1、3、4)。
【0063】
上及び実施例において記載されるペプチドの機能性質の点で、本発明は、少なくとも1の以下の性質:
a)ヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生を抑制し、
b)炎症誘導性の肺内への好酸球浸潤を抑制し、
c)炎症誘導性の肺内への好中球浸潤を抑制し、
d)循環血液中の炎症誘導性TNF-α蓄積を抑制し、
e)虚血誘導性急性腎不全を低減し、
f)心筋梗塞サイズを低減し、
g)心筋梗塞後の心不全の程度を低減し、
h)肺高血圧を低減し、
i)シスプラチン誘導性腎不全を低減する
のうちの少なくとも1を有するペプチドに関する。
【0064】
ペプチドは、これらの性質のうちの1超、例えば2、3、4、5、6、7、8又は上記性質の全てを有してもよい。これらの性質は、実施例に概説されるように試験することができる。
【0065】
上に記載される様に、本発明のα-MSHアナログは、天然α-MSHに比べて高い効力を有することにより特徴付けられる。
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲では、「効力」という用語は、化合物により獲得可能な最大応答として定義される。本発明のα-MSHアナログは、実施例に記載される様々な実験において天然α-MSHに比べて高い最大応答を産生できる。
【0067】
好ましくは、本発明のα-MSHアナログは、α-MSHに比べて最小10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは40%だけ、ヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生を抑制する。
【0068】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、気管支-肺胞洗浄又は同等の方法により回収される液体内の好酸球の数を低減させる能力により計測される肺内への炎症誘導性好酸球浸潤を抑制してもよい。予期される最小の効果は、α-MSHに比べて好酸球の10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは50%の低下が見られた。
【0069】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、気管支-肺胞洗浄又は同等の方法により回収された液体内の好中球の数を低減させる能力により計測される肺内への炎症誘導性好中球浸潤を抑制してもよい。予期される最小の効果は、α-MSHと比べた場合に、好中球の10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは40%の低下が見られた。
【0070】
本発明のα-MSHアナログは、α-MSHと比べて、最小で10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは約40%だけ循環血液の炎症誘導性TNF-αを抑制しうる。
【0071】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、虚血後多尿症の程度を低減させる能力により計測される虚血誘導性急性腎不全を低下させうる。最小の予期された効果は、10%、より好ましくは30%、そして最も好ましくは50%の多尿症の低下が、α-MSHに比べた場合に見られる。
【0072】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、虚血心筋でのネクローシス領域のサイズの低下する能力により示される心筋梗塞サイズを低下しうる。最小の予期された効果は、梗塞サイズの10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%の低下が、α-MSHと比べて見られる。
【0073】
さらなる態様では、本発明のα-MSHアナログは、左心室拡張末期圧の直接的な計測又は同様の定性計測を通して評価される心臓機能により証拠付けられる心筋梗塞心不全後の程度を低減させうる。最小の予期される効果は、α-MSHと比べた場合に、心臓機能の程度の10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは25%の低下である。
【0074】
さらなる態様では、本発明のα-MSHアナログは、肺高血圧を低減しうる。予期される最小の効果は、α-MSHに比べた場合に、10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%の肺動脈圧の低下である。
【0075】
別の態様では、本発明のα-MSHアナログは、シスプラチン誘導性腎不全を低下しうる。最小の予期された効果は、α-MSHに比べた場合に見られる10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%のマグネシウム血症及び/又は糸球体ろ過割合の低下である。
【0076】
上に記載されたように、天然ペプチドであるα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、1型、3型、4型、及び5型メラノコルチン(MC)受容体の天然アゴニストとして知られている一方、ACTHは、2型受容体(MC2)に対する天然リガンドである。本ペプチドがα-MSH又はそのアナログのアミノ酸配列を含むので、本発明のペプチドは、1以上のメラノコルチン受容体、つまり1、3、4、又は5型メラノコルチン受容体を刺激する能力を有する。
【0077】
本発明のペプチドの製造方法
本発明のペプチドは、当該技術分野に知られている方法により製造されうる。こうして、α-MSH、α-MSH-バリアント、α-MSHアナログ及びXモチーフは、溶液合成又はメリフィールド型の固相合成などの鎖状ペプチド製造技術により製造されうる。
【0078】
1の可能な合成戦略では、本発明のペプチドは、最初に、周知の標準保護、カップリング及び脱保護方法を用いて、医薬として活性な配列を構築し、その後に連続して活性ペプチドの構築と同様な様式で活性なペプチド上にモチーフXのアミノ酸配列を順次カップリングし、そして最終的に担体からペプチド全体を切りはなすことにより、固相合成によって製造されうる。この戦略は、当該ペプチド配列Xが、当該ペプチドのN末端窒素原子で医薬として活性なペプチドに共有結合される、ペプチドを産生する。
【0079】
別の可能な戦略は、溶液合成、固相合成、組換え技術、又は酵素合成により別々にα-MSHペプチド/アナログ及びXモチーフ(又はその一部)の配列を製造し、それに続いて溶液又は固相技術のいずれか、又はその組合せにより、2個の配列をカップリングすることにより、α-MSHペプチド/アナログの配列を製造することである。1の実施態様では、α-MSHペプチド/アナログは、組換えDNA法により製造されてもよいし、そしてXモチーフは、固相合成により製造されてもよい。α-MSHペプチド/アナログとXモチーフの結合は、化学ライゲーションにより行われてもよい。この技術は、高度に特異的な様式で完全に脱保護されたペプチド断片の集合を可能にする(Liuら、1996)。結合は、プロテアーゼ触媒ペプチド結合により行われてもよい。これは、完全に脱保護ペプチド断片をペプチド結合を介して組み合わせるために高度に特異的技術を提供する(Kullmann, 1987)。
【0080】
適切な固体支持物質(SSM)の例は、例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、セルロース、ポリエチレン、ポリエチレングリコールであって、ポリスチレン、ラテックス、ダイナビーズなどに埋め込まれたものなどの官能化レジンである。
【0081】
Xモチーフのペプチド配列のC末端アミノ酸、又はα-MSH、α-MSH-バリアント、又はα-MSHアナログのC末端アミノ酸は、共通のリンカー、例えば、2,4-ジメトキシ-4'-ヒドロキシ-ベンゾフェノン、4-(4-ヒドロキシ-メチル-3-メトキシフェノキシ)-酪酸、4-ヒドロキシ-メチル安息香酸、4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸、3-(4-ヒドロキシメチルフェノキシ)プロピオン酸、及びp-[(R,S)-a[1-(9H-フルオレン-9-イル)メトキシホルムアミド]-2,4-ジメトキシベンジル]-フェノキシ-酢酸などにより固体支持体に結合されるということが必須であるか又は望ましいということが理解されるべきである。
【0082】
本発明のペプチドは、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、臭化水素、塩化水素、塩化フッ素などの酸により、本目的に適した1以上の「スカベンジャー」、例えばエタンジチオール、トリイソプロピルシラン、フェノール、チオアニソールなどと組み合わせて、固体支持物質から切断されうるか、或いは本発明のペプチドコンジュゲートは、アンモニア、ヒドラジン、アルコキシド、例えばナトリウム・エトキシド、水酸化物、例えば水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて固体支持体から切断されてもよい。
【0083】
本発明のペプチドは、当業者に周知の一般的方法及び原理を用いて、組換えDNA技術を用いることにより製造されうる。本発明のペプチドをコードする核酸配列は、確立された標準方法、例えばホスホアミダイト法により合成的に調製されうる。ホスホアミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動化DNA合成機中で合成され、精製、アニール、ライゲーションされ、そして適切なベクター中にクローン化される。
【0084】
本発明のペプチドをコードする核酸は、次に、組換え発現ベクターへと挿入される。当該ベクターは、組換えDNA法に都合よく用いられ得る任意のベクターであってもよい。ベクターの選択は、当該ベクターの導入先の宿主細胞に依存することが多いであろう。こうして、当該ベクターは、自発的に複製するベクター、つまり染色体外染色体として存在するベクターであってもよく、その複製は、染色体複製から独立している。例えばプラスミドである。或いは、当該ベクターは、宿主細胞へと導入された場合に、宿主細胞ゲノムへと組み込まれ、そして組み込まれた染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。
【0085】
ベクター中では、本発明のペプチドをコードする核酸配列は、適切なプロモーター配列に作用可能なように接続されるべきである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意の核酸配列であってもよく、宿主細胞に同種又は異種であるタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。当該ペプチドをコードする核酸配列の哺乳動物細胞内での転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター又はアデノウイルス2主要後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、及びウシパピローマウイルスプロモーター(BPV)である。昆虫細胞で用いるための適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである。
【0086】
特に細菌宿主細胞での本発明のペプチドをコードする核酸の転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、大腸菌lacオペロン、ストレプトマイシス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)のアガラーゼ遺伝子(dagA)、バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)のレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バチルス リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)のαアミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のxylA及びxylB遺伝子、及び原核細胞β-ラクタマーゼ遺伝子、並びにtacプロモーターから得られるプロモーターである。さらなるプロモーターは、"Useful proteins from recombinant bacteria" 、Scientific American, 1980, 242:74-94;及び Sambrookら、10 1989,に記載されている。
【0087】
糸状菌宿主細胞において、本発明のペプチドをコードする核酸配列の転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール ミヒー(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)のリパーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)トリオースホスフェートイソメラーゼ、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)のアセトアミダーゼ、フサリウム・オキシポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(米国特許第4,288,627号、当該文献は本明細書に援用される)、並びにこれらのハイブリッドに由来するプロモーターである。糸状菌宿主細胞で使用するための特に好ましいプロモーターは、TAKAアミラーゼ、NA2-tpi(アスペルギルス・ニガーの中性アミラーゼ及びアスペルギルス・オリゼのトリオースホスフェートイソメラーゼをコードする遺伝子からプロモーターのハイブリッド)、及びglaAプロモーターである。
【0088】
酵母宿主では、有用なプロモーターは、サッカロマイシス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-I)遺伝子、サッカロマイシス・セルビシエガラクトキナーゼ遺伝子(GAL1)、サッカロマイシス・セルビシエのアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH2/GAP)、及びサッカロマイシス・セルビシエの3-ホスホグリセラーテ・キナーゼ遺伝子から得られる。酵母宿主細胞について有用なほかのプロモーターは、Romanosら、1992, Yeast 8:423-488に記載される。
【0089】
本発明の当該ペプチドをコードする核酸配列は、適切なターミネーター、例えばヒト成長ホルモンターミネーターなどに作動可能なように接続されていてもよい。糸状菌宿主細胞の好ましいターミネーターは、アスペルギルス・オリゼのTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス・アンスラニラートシンターゼ、アスペルギルス・ニガーのαグリコシダーゼ、及びフサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼから得られる。
【0090】
酵母宿主細胞についての好ましいターミネーターは、サッカロマイシス・セルビシエのエノラーゼ、サッカロマイシス・セルビシエのシトクロームC(CYC1)、又はサッカロマイシス・セルビシエのグリセルアルデヒド-3-ホスフェート・デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子から得られる。他の有用な酵母宿主細胞のターミネーターは、Romanosら、1992(上記)を参照のこと。
【0091】
当該ベクターは、さらに、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40由来又はアデノウイルス5Elb領域)、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)、及び転写エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVAのRNAをコードする配列)を含む。さらに、糸状菌宿主細胞についての好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・オリゼTAKAのアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランスのアントラニラート・シンターゼ、及びアスペルギルス・ニガーのα-グリコシダーゼをコードする遺伝子から得られる。酵母宿主細胞についての有用なポリアデニル化配列は、Guo及び Sherman, 1995, Molecular Cellular Biology 15:5983-5990に記載される。
【0092】
組換え発現ベクターは、問題の宿主細胞においてベクターが複製することを可能にするDNA配列をさらに含んでもよい。このような配列の例は(宿主細胞が哺乳動物細胞である場合)、SV40又はポリオーマの複製開始点である。細菌の複製開始点の例は、プラスミドpBR322、pUC19、pACYC177、pACYC184、pUB110、pE194、pTA1060、及びpAMB1である。酵母宿主細胞で使用する複製開始点の例は、2ミクロンの複製開始点であり、CEN6とARS4の組合せ、及びCEN3とARS1の組合せである。複製開始点は、宿主細胞においてその機能を温度感受性にする突然変異を有する開始点であってもよい(例えば、Ehrlich, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1433を参照のこと)。
【0093】
当該ベクターは、選択可能なマーカー、例えば遺伝子を含む。その産物は、宿主細胞の欠損を補完し、例えばジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子、又は薬剤、例えばネオマイシン、ジェネテシン、アンピシリン、又はハイグロマイシンなどに対する抵抗性を与える遺伝子を含む。酵母宿主細胞に対する適切なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3である。糸状菌宿主細胞において使用するための選択可能なマーカーは、以下の:amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オリチニン・カルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノチトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5'-ホスフェートデカルボキシラーゼ),sC(硫酸アデニストランスフェラーゼ)、trpC(アントラニレート・シンターゼ)、及びグルホシネート抵抗性マーカー、並びに他の種由来の等価物を含む群から選ばれてもよい。アスペルギルス細胞において使用するのに好ましいものは、アスペルギルス・ニジュラス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス オリゼ(Aspergillus Oryzae)のamdS及びpyrGマーカーであり、そしてストレプトマイシス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbarマーカーである。さらに、選別は、例えば、WO91/17243に記載されるコトランスフォーメーションにより達成され得る。ここで選択可能なマーカーは別々のベクター上に存在する。
【0094】
本発明のペプチドをコードする核酸配列をライゲーションするために使用される方法、プロモーター及びターミネーター、並びにそれらを複製に必須の情報を含む適切なベクターに挿入することは、当業者に周知である(例えば、Sambrookら、前掲)。
【0095】
発現ベクターが導入された宿主細胞は、本発明のペプチドを産生できる任意の細胞であり、そして真核細胞、例えば無脊椎(昆虫)細胞又は脊椎細胞、例えば、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞又は哺乳動物細胞、特に昆虫および哺乳動物細胞でありうる。適切な哺乳動物細胞株の例は、COS(例えばATCC CRL1650)、BHK(例えば、ATCC CRL1632、ATCC CCL10)又はCHO(例えば、ATCC CCL 61)細胞株である。
【0096】
哺乳動物細胞をトランスフェクションする方法、及び細胞中に導入されたDNA配列を発現する方法は、当該技術分野に既知の任意の方法でありうる(例えば、MANIATIS, T., E. F. FRITSCH及びJ. SAMBROOK, 1982 Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY.を参照のこと)。
【0097】
宿主細胞は、例えば、原核細胞などの単細胞病原体であってもよいし、又は例えば、真核細胞などの非単細胞病原体であってもよい。有用な単細胞は、細菌細胞、例えばグラム陽性細菌、例えば非限定的に、バチルス細胞、例えばバチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サークランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びバチルス・チューリギエンシス(Bacillus thuringiensis);或いはストレプトマイシス細胞、例えばストレプトマイシス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイシス・ムリヌス(Streptomyces murinus)、或いはグラム陰性細菌、例えば、大腸菌(E. coli)及びシュードモナスspである。細菌宿主細胞の形質転換は、例えば、プロトプラスト形質転換により、コンピテント細胞の使用により、電気穿孔により、又はコンジュゲーションにより行われてもよい。
【0098】
宿主細胞は、真菌細胞であってもよい。本明細書に使用される「真菌」として、アスコミコタ門(phyla Ascomycota)、バシジオミコタ門(phyla Basidiomycota)、シトリジオミコタ門(phyla Chytridiomycota)、及びザイゴミコタ門(Zygomycota)、並びにオオミコタ門(phyla Oomycota)及び全ての分生子形成菌が挙げられる。アスコミコタ門の代表的な属は、ニューロスポラ(Neurospora)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)(=ペニシリウム)、エメリセラ(Emericella)(=アスペルギルス(Aspergillus))、ユーロチウム(Eurotium)(=アスペルギルス(Aspergillus))、及び上記真性酵母が挙げられる。菌類宿主細胞は、酵母細胞であってもよい。本明細書に使用される「酵母」には、子嚢胞子形成酵母(ascosporogenous yeast)(エンドミケス目(Endomyoetales))、担子胞子形成酵母(basidiosporogenous yeast)及び不完全菌類(Fungi Imperfecti)(ブラストミセテス(Blastomycetes))に属する酵母が含まれる。細胞の培養に用いる培地は、哺乳動物細胞を生育するのに好適な通常の培地、例えば適当な添加物を含有する血清含有培地若しくは無血清培地、又は昆虫細胞、酵母細胞、若しくは真菌細胞を生育するのに好適な培地であってよい。好適な培地は、製造業者から入手可能であり、または公表されている配合表(例えば、American Type Culture CoIlectionのカタログ)に従って調製できる。
【0099】
次に、細胞により産生される本発明のペプチドは、慣用方法により培養培地から回収することができる。当該慣用方法は、例えば、遠心、ろ過、により培地から宿主細胞を分離し、上清又はろ液のタンパク質成分を硫酸アンモニウムなどの塩を用いて沈殿させることにより培地から宿主細胞を分離すること、種々のクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなど)によって精製することを含む。
【0100】
こうして、本発明は、以下の
(a) 当該ペプチドをコードする核酸配列を宿主細胞に誘導し、
(b) 当該宿主細胞を培養し、そして
(c) 当該培養物から当該ペプチドを単離する
を含むか、或いは
(a) 当該ペプチドをコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞を、当該ペプチドの産生を許容する条件下で培養し、そして
(b) 当該ペプチドを培養物から単離する
を含む組換えDNA技術を用いて、本発明に従ったペプチドを製造する方法に関する。
【0101】
使用
本発明は、特に、上又は以下に記載される病気、障害又は疾患のうちの1以上と組み合わせて使用する医薬において使用するための本発明に記載されるペプチドに関する。
【0102】
1の実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織の病気を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための、本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関する。当該臓器は、非限定的に、腎臓、肝臓、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨、肺、気道、脾臓、外分泌腺、膀胱、内分泌腺、生殖臓器、例えば卵管、眼、耳、脈管系、胃腸管、例えば小腸、結腸、直腸、及び肛門管及び前立腺からなる群から選ばれうる。
【0103】
上に記載される場合、本発明のペプチドは、α-MSHに比べて、高い抗炎症効果及び虚血状態を予防する高い能力を示す。
【0104】
こうして、本発明は、1以上の臓器の組織において病気を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該病気は、虚血又は炎症状態である。当該病気は、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器の障害のため生じる可能性がある。
【0105】
本明細書及び特許請求の範囲では、「治療」という用語は、一般的に、本文がこの解釈を特異的に除外しない限りは、現存する病気の治療、並びにそのような病気の予防(予防的処置)を含む。
【0106】
最も広い概念として、本発明は、臓器又は組織の通常の機能が虚血又は炎症のために変化している任意の状態に関する。傷害は、急性又は慢性傷害を含みうる。慢性傷害は、臓器又は組織の完全又は部分的に回復している間に次々に行われる繰り返しの傷害の状態を含む。
【0107】
虚血
本明細書及び特許請求の範囲では、虚血は、1以上の臓器への血流の低下として定義されて、酸素のデリバリーの低下及び/又は組織による利用の低下をもたらす。虚血は、脳、心臓、四肢、腎臓、脾臓、肝臓、腸、胃、肺、目、皮膚、筋肉、膵臓、内分泌臓器などを含む1以上の臓器(非限定的なリスト)で生じうる。
【0108】
虚血は、動脈血供給の低下/完全な停止により、複数の組織反応、例えば好中球の集積、他の炎症応答及び細胞死を誘導する。虚血は、主に手術そして次に他の重篤な疾患に付随して複数の疾患に関与する。虚血の結果として生じる多くの細胞/組織/臓器の機能障害又は破綻を抑制又は予防できる化合物を同定することは、かなり利益がある。
【0109】
治療される状態は、動脈狭窄又は他の任意の完全又は部分的な血液供給の制限などにおける組織の虚血のため生じ得るか、又は当該虚血により引き起こされる。虚血は、疾患の重篤度に依存して急性であるか又は慢性的であることもあり、そしてさらに当該状態は、可逆的であるか又は不可逆的であることもある。可逆的状態の例は、外科又は他の治療介入の間に生じる血圧の低下のため生じることもあり、臓器の血液灌流に影響する。従って、治療される状態は、腸、心臓、腎臓又は任意のほかの臓器への全身血流に影響しうる低血圧などの全身血流の任意の低下であってもよい。
【0110】
一の実施態様では、本発明は、虚血の治療のための医薬組成物の製造のための本発明に記載されるペプチドの使用に関し、ここで当該状態は、急性、亜急性、又は慢性虚血により引き起こされる。
【0111】
臓器又は四肢又は組織の急性、亜急性、又は慢性虚血は、多様な疾患により引き起こされうる。当該虚血として、(非限定的なリストとして)、血栓症を伴うアテローム性の疾患、任意の臓器、血管又は心臓の塞栓症、血管攣縮、大動脈瘤又は他の臓器の動脈瘤、胸郭又は腹腔或いは解離性大動脈瘤、心疾患から生じる低血圧、全身性の疾患、例えば感染症又はアレルギー反応から生じる低血圧症、1以上の毒性化合物又は毒素又は薬剤のため生じる低血圧症が挙げられる。
【0112】
第二実施態様では、本発明は虚血の治療用の医薬組成物の製造のための本発明に記載されるペプチドの使用であって、当該状態が、二次虚血により引き起こされる、使用に関する。
【0113】
疾患又は病気に二次的な虚血は、以下の:糖尿病、高脂血症、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、高安症候群、側頭動脈炎、皮膚粘膜リンパ節症候群(皮膚粘膜リンパ節症候群)、心血管梅毒、結合組織障害、例えばレイノー病、有痛性青股腫、血管外傷、例えば、カニューレ挿入又は外科手術又は臓器移植などの医原外傷から選ばれる疾患及び状態の1以上において観察されうる。さらに、上記リストは、1以上の臓器の手術、1以上の臓器の移植、外科的挿入移植、デバイス、グラフト、プロテーゼ又は他の生医学的化合物又は装置の移植により引き起こされる虚血を含む。
【0114】
第三実施例では、本発明は、前記状態が肺血製ショック又は全身性低血圧に付随する状態のため生じる虚血により引き起こされる、本発明に記載されるペプチドの使用に関する。
【0115】
炎症状態
本文脈中の「炎症状態」という用語は、特異的Tリンパ球又は抗体と抗原との反応などのメカニズムが、炎症細胞のリクルート及び内在性メディエーター化学物質を引き起こす状態を意味する。幾つかの場合、臓器又は組織の通常の機能は、血管透過性における増加により、及び/又は内臓平滑筋の収縮により変更されよう。このような炎症状態は、炎症疾患を生じさせうる。
【0116】
一の実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織における状態を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該状態は、炎症状態である。
【0117】
炎症状態は、(非限定的なリストとして):関節炎、(例えば、関節炎に付随する疾患)、骨関節炎、関節リウマチ;脊椎関節症(例えば、強直性脊椎塩)、反応性関節炎(例えば、リウマチ熱を伴う関節炎)、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、及びライター病を含む炎症性疾患により引き起こされうる。さらに、炎症性疾患として、結合組織障害、例えば全身性エリテマトーデス、ポリ筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合性結合組織病、サルコイドーシス及び原発性シェーグレン症候群、例えば乾性角結膜炎、リウマチ性多発筋痛症、及び他のタイプの血管炎、結晶析出疾患(例えば痛風)、ピロリン酸関節症、急性石灰沈着性関節周囲炎が挙げられる。さらに、炎症疾患として、若年性関節炎(スティル病)、乾癬、骨関節炎、過可動性に付随する骨関節炎、先天性異形成、大腿骨頭滑り症、ペルテス病、関節内骨折、半月板切除術、肥満、反復性転位、反復性作用、血症析出疾患及び軟骨の代謝異常、例えばピロリン酸関節症、オクロノーシス、ヘモクロマトーシス、無血管性壊死、例えば鎌状赤血球病、コルチコイド又は他の薬剤での治療、潜函病、敗血性又は感染性関節炎(例えば、結核性関節炎、髄膜炎菌性関節炎、淋菌性関節炎、サルモネラ関節炎)、感染性心内膜炎 (例えば、緑連菌、大便腸球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ヒストプラズマ、ブルセラ、カンジダ及びアスペルゲルス種及びコクシエラ・ブルネッティにより誘発された心内膜炎)、ウイルス性関節炎 (例えば、風疹、流行性耳下腺炎、B型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス又はパルボウイルスでの感染)、又は反復性関節血症が挙げられる。さらに 炎症性疾患として、ライム病、梅毒、リケッチア性及びマイコバクテリア感染症、心筋、ウイルス性又は原生動物の感染などのスピロヘータ疾患を含む細菌種での感染のため生じる感染性血管炎などの血管炎が挙げられる。さらに、炎症疾患として、非感染性血管炎、例えば、高安動脈炎、巨大細胞動脈炎(側頭動脈炎及びリウマチ性多発筋痛症)、バージャー病、結節性多発動脈炎、顕微鏡の顕微鏡的多発性動脈炎、ウェグナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、全身性ループス エリテマトーデスを含む結合組織疾患に続発する血管炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合型結合組織病、サルコイドーシス 及び原発性シェーグレン症候群が挙げられる。さらに炎症性疾患は、関節リウマチに続発する血管炎を含む。
【0118】
さらに、炎症性疾患として、感覚過敏に続発する非-感染性血管炎及び白血球破砕性血管炎、例えば血清病、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、薬剤誘導性血管炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、ハイポコンプレンテミア(hypocomplentaemia)、他の種類の悪性度に付随する血管炎、炎症性腸疾患及び原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群が挙げられる。
【0119】
さらに、炎症性疾患は、子供における関節炎の全ての種類、例えば、若年性慢性関節炎 、例えばスティル病、若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎を含む。
【0120】
さらに、炎症性疾患として、上部及び下部気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性及び非アレルギー性喘息、アレルギー疾患、アレルギー性及び非アレルギー性結膜炎が挙げられる。さらに、炎症性疾患として、アレルギー性及び非アレルギー性 皮膚炎も挙げられる。
【0121】
さらに炎症性疾患として、析出性疾患の全ての種類、例えば痛風、ピロリン酸関節症及び急性石灰沈着性関節周囲炎が挙げられる。
【0122】
さらに炎症性疾患として、腰痛を引き起こす全ての種類の炎症状態、敗血性椎間板炎、結核、悪性悪性腫瘍(例えば、転移、骨髄腫など)、脊髄腫瘍、強直性関節炎、急性椎間板脱出、慢性椎間板脱出/骨関節炎、骨粗鬆症、及び骨軟化症が挙げられる。パジェット病、副甲状腺機能亢進、腎性骨異栄養症、脊椎すべり症、脊髄狭窄、先天性異常及び線維筋痛症が挙げられる。
【0123】
さらに、炎症疾患は、全ての種類の軟組織リウマチ、例えば滑液包炎、腱鞘炎又は石灰沈着性腱鞘炎、腱付着部炎、神経圧迫、関節周囲炎又は関節包炎、筋張力及び筋肉機能障害が挙げられる。
【0124】
さらに炎症性疾患として、胃腸管系の炎症性疾患(例えば、全ての種類の口内炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡及び良性粘膜類天疱瘡)、唾液腺疾患(例えば、サルコイドーシス、唾液腺管閉塞及びシェーグレン症候群)、食道の炎症(例えば、胃-食道逆流又はカンジダ種、単純ヘルペス及びサイトメガロウイルスのため生じる)、胃の炎症性疾患(例えば、急性及び慢性胃炎、ヘリコバクター・ピロリ(helicobacter pylori)感染症及びメントリアー病)、小腸の炎症(例えば、セリアック病、グルテン感受性腸疾患、疱疹状皮膚炎、熱帯性スプルー、ウィップル病、照射腸炎、全身性アミロイドーシス、結合組織障害、例えば全身性エリテマトーデス、多発筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合型結合組織病及びサルコイドーシス)、好酸球性胃腸炎、腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、結腸の憩室性疾患、及び過敏性腸症候群が挙げられる。
【0125】
好ましい実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織において病気の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該病気は、肺炎症、関節炎、皮膚炎、膵炎及び炎症性腸疾患から選ばれる炎症性状態である。
【0126】
薬剤誘導性細胞、組織及び臓器不全
1の実施態様では、本発明は、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器不全の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関する。
【0127】
本明細書及び特許請求の範囲において、「薬剤誘導性の細胞、組織及び臓器不全」は、医薬品により誘導される細胞又は組織の機能及び/又は形態の変化として定義される。当該医薬品としては非限定的に、シスプラチン、カルボプラチン、ダカルベジン(dacarbezine)、プロカルバジン、アルトレタミン、セムスチン、ロムスチン、カルムスチン、ブスルファン、チオテパ、メルファラン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メクロレタミン、アザシチジン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、アロプリノール、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン (アドリアマイシン)、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、マイトマイシン、パクリタキセル、プリカマイシン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、アマサクリン(amasacrine)、アスパラギナーゼ、ヒドロキシ尿素、ミチタン(mititane)、ミトキサントロンを含む癌化学治療薬; ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン及びニチルマイシン(nitilmicin)を含むアミノグリコシド類などの抗生物質;免疫抑制化合物、例えばシクロスポリン、三環系抗うつ薬、リチウム塩、プレニラミン及びフェノチジン誘導体が挙げられる。
【0128】
細胞、組織又は臓器の通常機能が変化される状態としては、虚血、急性及び/又は慢性炎症、アレルギー、リューマチ様疾患、ウイルス、心筋、細菌感染、プリオン及び他の微生物及び当該技術分野に既知の病原体を含む感染、薬剤誘導性毒性含む全ての形態の毒性反応、並びに急性及び慢性傷害が挙げられる。慢性傷害としては、臓器又は組織機能の完全又は部分的な回復の期間で次々生じる繰り返しの傷害状態が挙げられる。細胞、組織又は臓器の通常機能が変化される状態は、1以上の臓器又は他の移植用装置の移植に伴う傷害を含み、そして本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考慮される。臓器は、自分自身のもの、その動物自身のもの、又は他の人又は動物のものでありうる。このことは、臓器移植、骨移植、軟組織移植(シリコーン移植)金属およびプラスチック移植、又は他の医療用の移植可能な装置を含む。個人は、ヒト並びに他の哺乳動物を表す。
【0129】
治療される状態は、癌により引き起こされるか、又は肺、気管支、上気道、及び/又は心臓及び/又は腎臓及び/又は胃腸系の臓器に影響を与える前癌障害、例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ白血病、ホジキン病、リンパ肉腫、骨髄腫、任意の臓器の転移癌腫により引き起こされ得る。本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考えられる。
【0130】
さらに、治療される状態は、糖尿病、LDL-コレステロールの絶食レベルが増加した状態、LDL-コレステロール及びトリグリセリドの絶食レベルが併せて増加した状態、トリグリセリドの絶食レベルが増加した状態、HDL-コレステロールの絶食レベルが増加した状態、後腹膜線維症、エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、関節リウマチ、アナフィラキシー、血清病、溶血性貧血、及びアレルギー性無顆粒球症から選ばれる任意の疾患により引き起こされうる。本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考えられる。
【0131】
多くの感染は、組織への影響を有し、そして通常の機能を乱して、低いパフォーマンスをもたらし、これは、本発明のペプチドの有効用量の投与により改善されうる。このような感染としては、プロトゾア、ウイルス、細菌及び真菌による感染を含み、そしてAIDS、細菌性敗血症、全身性心筋症、リケッチア病、毒素性ショック症候群、伝染性単核球症、クラミジア・トラコマチス(chlamydia thrachomatis)、クラミジア・シッタシ(chlamydia psittaci)、サイトメガロウイルス感染症、カンピロバクター、サルモネラ、インフルエンザ、灰白髄炎、トキソプラズマ症、ラッサ熱、黄熱病、ビルハルツ住血吸虫症、コリバクテリア、エンテロコッカス、プレテウス(preteus)、クレブシエラ(klebsiella)、シュードモナス、スタフィロココッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミジス(staphylococcus epidermidis)、カンジダ・アルビカンス、結核、流行性耳下腺炎、伝染性単核球症、肝炎及びコックサッキーウイルスなどの状態を含む。
【0132】
治療される状態は、1以上の毒性物質及び/又は薬剤に関する化学傷害に関連してもよい。このような薬剤として、三環系抗うつ薬、リチウム塩、プレニラミン、フェノチジン誘導体、癌化学療法薬、例えばシスプラチン、カルボプラチン、ダカルバジン(dacarbezine)、プロカルバジン、アルトレタミン、セムスチン、ロムスチン、カルムスチン、ブスルファン、チオテパ、メルファラン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メクロレタミン、アザシチジン、クラドリビン、シタラビン(cytorabine)、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、アロプリノール、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン (アドリアマイシン)、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、マイトマイシン、パクリタキセル、プリカマイシン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、アマサクリン、アスパラギナーゼ、ヒドロキシ尿素、ミチタン、ミトキサントロン; 抗生物質、例えば、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン及びニチルマイシン(nitilmicin)を含むアミノグリコシドなど;並びに免疫抑制化合物、例えばシクロスポリンが挙げられる。電磁放射を含む物理的傷害は、損傷を引き起こし得る。当該損傷は、本発明に従ったα-MSHアナログの有効量を投与することにより軽減されうる。
【0133】
本発明に従って治療される状態として、さらに結合組織疾患、例えば強皮症、全身性エリテマトーデス又は神経筋障害、例えばデュシェンヌ型の進行性筋ジストロフィー、フリードリッヒ運動失調、及び筋緊張性ジストロフィーが挙げられうる。当該様態は、例えば、哺乳動物の腸の組織に関連しうる。
【0134】
本発明はまた、上記状態が、心筋虚血、アンギナ、心膜炎、心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、粘液水腫、及び心内膜炎である、本発明に記載されるペプチドの使用に関する。
【0135】
1の実施態様では、本発明は、当該状態が心臓不整脈と関連する本発明に従ったペプチドの使用に関する。
【0136】
治療方法
本発明は、治療を必要とする個々の哺乳動物の1以上の臓器の組織の状態を治療又は予防する方法であって、当該方法は、本発明に記載される1以上のペプチドの有効量を投与することを含む、前記方法に関する。当該状態は、虚血又は炎症状態であり、及び/又は毒素又は薬剤治療の毒性効果から生じる。
【0137】
本発明の治療方法は、任意の臓器又は血管の移植により引き起こされるか又はこれらに付随する状態に関して特に利点を有し、例えば組織片対宿主反応の予防を含む。このような状態では、全臓器は、栄養、代謝、灌流などについて全ての変化に対しかなり感受性であり、そして本発明に記載される治療は、状態を安定化し、そして臓器の機能を圧迫する任意の状況に対して組織をより抵抗性にする。本発明に記載される当該方法は、本発明の有効量のペプチドを、受容者に移植する間、移植された臓器に対して投与することを含み、本発明のペプチドの有効量を移植培地に加えることを含む。
【0138】
さらに、本出願は、心筋虚血などの重篤な疾患において、本発明に記載されるα-MSHアナログでの治療は、死亡及び臓器不全を劇的に予防するという証拠を提供する。
【0139】
最も一般的な心臓状態のうちの1は、間欠的狭心症又は胸部疼痛であり、ここで本発明に従った治療は、特に関心が高い。狭心症に関する状態としては、不安定狭心症、安定狭心症及びプリンツメタル型狭心症が挙げられる。
【0140】
さらなる態様では、当該予防及び治療は、心膜炎、心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、筋脂肪変性(myxodemia)、及び心内膜炎によりひきおこされる状況において利用されうる。
【0141】
治療される状態は、原発性疾患又は対象の別の状態に対して続発性疾患のいずれかとして、心臓不整脈と関連しうる。不整脈の種々の原因の例として、急性感染症、特に肺に罹患する感染症、肺塞栓症、低血圧、ショック、無酸素血症又は貧血が挙げられ、これらは心筋虚血に関与し、そうして不整脈を引き起こす。不整脈は、循環障害を悪化させ、それによりひどい自己永続的なサイクルを作り上げてしまう。
【0142】
本発明に記載される治療は、不整脈の発達の閾値を増加させ、そうして不整脈の発達を予防するということが信じられている。この効果は、伝導系に直接的に作用するか、又は不整脈の原因を模倣するか又は原因そのものである状態に作用することにより間接的に作用してもよい。
【0143】
本方法に従って軽減され得る症候群又は不整脈は、原発性であってもよいし、又は続発性であってもよく、そして心室又は上心室頻脈性不整脈、房室ブロック、洞結節病、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、レングレー病(Lenegres Disease), レブ病、心房と心室の間における異常な心筋の結合を含む症候群から選ばれうる。
【0144】
不整脈を抑制する目的で行われる抗不整脈治療は、常に、新たな不整脈を作り出す危険性を伴う。不整脈は、薬剤の過用量のため生じる毒性反応として生じる可能性がある。しかしながら、特に、クラスIA薬剤として知られている薬剤群を用いた治療の間、非用量依存性の副作用-特異体質反応-として不整脈が生じ、治療範囲内の薬剤濃度で発達させる可能性がある。さらなる実施態様では、1以上の不整脈薬剤、例えば、ジギタリス、キニジン、ジソピラミド、アデノシン、アプリンジン、フレカイニド、アミオダロン、ソタロール、メキシレチン、β遮断薬、及びベラパミルにより引き起こされ得る。
【0145】
本発明に従ったα-MSHアナログでの治療は、他の抗不整脈薬での併用療法のため生じる不整脈を発達させるリスクを低減させる。
【0146】
本発明のさらなる態様では、当該状態は、心電図記録法(ECG)により計測される1以上の異常により特徴づけられうる。ECGでの異常は、P波、STセグメント、T波、QRSコンプレックス、Q波、δ波、及びU波から選択される構成の1以上の変化から選択される。
【0147】
本発明に記載されるペプチドの有効量の投与により軽減され得る他の状態は、臓器(例えば、心臓)についての電解質撹乱の効果並びに撹乱そのものであり、例えば個別のイオンの相対濃度の異常を含む。この様な状態は、カリウム、カルシウム、ナトリウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる電解質の1以上の異常血清濃度を含む。
【0148】
本発明によると、影響され得る組織は、臓器に存在する1以上の細胞型を含み、そして上皮細胞、マクロファージ、細網内皮系単球、好中球顆粒球、好酸球顆粒球、好塩基球顆粒球、T細胞、B細胞、マスト細胞、及び樹状細胞から選ばれてもよい。特に、T細胞、B細胞及びマスト細胞は、この点で特に関心が高い。
【0149】
本発明の好ましい態様は、予防又は治療であって、本発明に従ったα-MSHアナログの用量が、当該状態又は当該状態の任意の症状の進行を予防するために投与される、前記予防又は治療に関する。
【0150】
予防又は予防的処置は、例えば、冠動脈狭窄を患う患者において心発作を予防するための、又は例えば外科手術の際の治療でありうる。予防処理は、限られた期間の間であってもよい。当業者は、実際の状況に基いて、特異的治療スケジュールを評価することができよう。好ましい実施態様では、治療又は予防は、冠動脈狭窄の虚血の際の梗塞サイズを低減することができる。このような梗塞サイズは、未処理の対象と比べて20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%低減する可能性がある。
【0151】
従って、本発明に記載されるα-MSHアナログの用量は、病気又は病気の任意の症状の発達を予防するために、予防的に投与される。
【0152】
本発明に従ったα-MSHアナログの用量は、1回用量、習慣的又は継続投与として、或いは連続投与として投与されてもよい。
【0153】
投与は、全身投与、局所投与であってもよく、例えば、薬剤標的系の使用、カテーテル及びインプラントの使用、経口投与、非経口投与、例えば皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、くも膜下内投与、肺投与、例えば吸入、局所投与、経粘膜投与、経皮投与を含む。
【0154】
従って、投与は、全身投与;組織又は関節を含む体腔中に注射し;組織又は体腔にインプラントし;皮膚又は任意の胃腸管表面へと、或いは体腔のライニングを含む粘膜表面へと局所的に適用することを含む。
【0155】
上の記載から明らかなように、任意の関連する投与経路により本明細書に開示されるいずれかの状態を治療又は予防するための医薬の製造のための、本発明に従ったペプチドの使用に関する。
【0156】
医薬製剤及び組成物
本発明は、本発明に従った1以上のペプチドを含む医薬組成物にも関する。当該医薬組成物は、さらに1以上の医薬担体を含んでもよい。さらに、当該医薬組成物は、さらに1以上の医薬として許容される賦形剤を含んでもよい。
【0157】
本発明に従った医薬組成物は、非限定的に非経口、経口、局所、経粘膜又は経皮組成物でありうる。
【0158】
以下の実施例では、本発明に従った1以上のペプチドを含む適切な組成物が与えられる。対象(動物又はヒト)への投与のために、当該物質が好ましくは当該物質及び場合により1以上の医薬として許容される賦形剤を含む医薬組成物へと剤形される。
【0159】
組成物は、例えば、固体、半固体、又は液体組成物、例えば、非限定的に、生体吸収可能なパッチ、水薬、包帯材、ハイドロゲル包帯材、ハイドロコロイド包帯材、フィルム、泡、シート、包帯、硬膏剤、デリバリー装置、移植片、粉末、顆粒、顆粒化する、カプセル、アガロース又はキトサン・ビーズ、錠剤、ピル、ペレット、マイクロカプセル、微粒子、ナノ粒子、噴霧、エアロゾル、吸入装置、ゲル、ハイドロゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ソープ、坐薬、バジトリー(vagitory)、歯磨き粉、溶液、分散、懸濁液、乳濁液、混合物、ローション、口腔洗浄薬、シャンプー、浣腸;例えば2個の別個の容器を含むキット、ここで第一コンテナが本発明に従ったペプチドを含み、そして第二容器が、使用前に第一容器へと加えることを意図された適切な溶媒を含み、すぐ使える組成物を得ることができるキット、及び他の適切な形態、例えば移植片又は移植片の被膜、又はインプラント又は移植と組み合わせて使用するのに適した形態などの形態である。
【0160】
組成物は、慣用の医薬慣例に従って剤形されてもよい。例えば、Remington: 「The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA, 2000 ISBN 0-912734-04-3 及び「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology", Swarbrick, J. & J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988 ISBN 0-8247- 2800-9.を参照のこと。
【0161】
活性物質を含む医薬組成物は、薬剤デリバリーシステムとして機能する。本文脈では、用語「薬剤デリバリーシステム」は、投与の際に活性物質をヒト又は動物の体に提示する医薬組成物(医薬製剤又は薬剤形態)を指す。こうして、「薬剤デリバリーシステム」という用語は、例えば、クリーム、軟膏、液体、粉末、錠剤などの通常の医薬組成物、並びにより洗練された製剤、例えばスプレー、プラスター、包帯材、包帯、デバイスなどを包含する。
【0162】
上で記載される様に、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬として又は化粧品として許容される賦形剤を含んでもよい。
【0163】
本発明に従って使用するための組成物中の医薬として許容される賦形剤の選択、並びにその最適濃度は、一般的に予想できず、そしてその実験的決定に基いて決定されなければならない。医薬として許容される賦形剤が、医薬組成物中で使用するのに適しているかは、どの種類の投与形態が選択されるかに一般的に依存する。しかしながら、医薬製剤の技術分野で当業者は、指針、例えばRemington: 「The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA, 2000 ISBN 0-912734-04-3を見つけることができる。
【0164】
医薬として許容される賦形剤は、当該組成物が投与される対象にとって実質的に害のない物質である。この様な賦形剤は、通常、国立薬品局により与えられる要件を満たす。公的な薬局方、例えば、英国薬局方、米国薬局方、及び欧州薬局方は、周知の医薬として許容される賦形剤についての基準を定めた。
【0165】
本発明に従って使用するための関連する医薬組成物についての総説を以下に与える。当該総説は、投与の特定経路に基いている。しかしながら、医薬として許容される賦形剤が異なる投与形態又は組成物中で使用されうる場合、特定の医薬として許容される賦形剤の適用は、特定の薬剤形態又は特定の賦形剤の機能に限定されないということが認められる。
【0166】
非経口組成物
全身適用では、本発明に記載される組成物は、慣用的に非毒性の医薬として許容される担体及び賦形剤であって、マイクロスフィア及びリポソームを含むものを含みうる。
【0167】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、及び液体組成物を含む。特に関係のある組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、移植錠剤及びインプラントが挙げられる。
【0168】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成薬、希釈液、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤が挙げられうる。様々な薬剤の例として、以下を参照のこと。
【0169】
局所、経粘膜及び経皮組成物
粘膜又は皮膚について適用するために、本発明に従って使用するための組成物は、慣用的に、非毒性医薬として許容される担体及び賦形剤、例えばマイクロスフィア及びリポソームを含みうる。
【0170】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、及び液体組成物が挙げられる。特に関係のある組成物は、例えば、ペースト、軟膏、親水性軟膏、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、溶液、乳濁液、懸濁液、ローション、リニメント剤、リソリブレット(resoriblets)、坐薬、浣腸、腟坐薬、成型ペッサリー、腟坐薬、腟カプセル、腟錠剤、シャンプー、ゼリー、ソープ、スティック、スプレー、粉末、フィルム、泡、パッド、スポンジ (例えば、コラーゲンスポンジ)、パッド、包帯剤(例えば、吸着性創傷包帯剤)、ドレンチ、包帯、硬膏剤及び経皮デリバリーシステムが挙げられる。他の薬剤の例については以下を参照のこと。
【0171】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存料、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐薬基剤、浸透エンハンサー、芳香剤、皮膚保護剤、希釈液、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤が挙げられる。
【0172】
経口組成物
粘膜又は皮膚への適用のために、本発明に従って使用するための組成物は、マイクロスフィア及びリポソームを含む慣用的に非毒性の医薬として許容される担体及び賦形剤を含みうる。
【0173】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、そして液体組成物を含む。特定の関連のある組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、未被膜錠剤、過異変放出錠剤、胃腸抵抗性錠剤、口腔内崩壊錠、発泡錠、咀嚼錠、軟カプセル、硬カプセル、改変放出カプセル、胃抵抗性カプセル、未被覆顆粒、発泡顆粒、経口使用するための液体の調製用顆粒、被膜顆粒、胃抵抗性顆粒、改変放出顆粒、経口投与用粉末及び経口使用用の液体の製造のための粉末が挙げられる。
【0174】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存料、湿潤剤、キレート薬、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、被膜薬剤及び湿潤剤が挙げられる。異なる薬剤の例として、以下を参照のこと。
【0175】
様々な薬剤の例
溶媒の例は、非限定的に、水、アルコール、植物油又は魚油(例えば、食用油、例えばアーモンド油、ヒマシ油、カカオバター、やし油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ケシの実油、アブラナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、及び茶油)、ミネラルオイル、脂肪油、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、液体ポリアルキルシロキサン及びそれらの混合物である。
【0176】
緩衝薬の例は、非限定的に、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素、ジエチルアミンなどである。
【0177】
組成物中で使用するための保存剤の例は、非限定的に、パラベン、例えば、メチル、エチル、プロピルp-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、メチル安息香酸、フェノキシエタノール、ブロノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバマート、EDTA、ベンズアルコニウム・クロリド、及びベンジルアルコール、又は保存剤の混合物である。
【0178】
湿潤剤の例は、非限定的に、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、及びそれらの混合物である。
【0179】
キレート薬の例は、非限定的にEDTAナトリウム及びクエン酸である。
【0180】
抗酸化剤の例は、非限定的に、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン、及びこれらの混合物である。
【0181】
乳化剤の例は、非限定的に、天然ゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム;天然ホスファチド、例えば大豆レシチン;モノオレイン酸ソルビタン誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタン・エステル;モノグリセリド;脂肪アルコール;脂肪酸エステル(例えば脂肪酸トリグリセリド);及びそれらの混合物である。
【0182】
懸濁剤の例は、非限定的にセルロース及びセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アカシアゴム、アラビアゴム、トラガカントゴム、及びそれらの混合物である。
【0183】
ゲル基剤及び増粘剤の例は、非限定的に、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド性シリカ又はアルミニウム、亜鉛セッケン、グリセリン、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニル重合体、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、Carbopol(登録商標)、親水性重合体、例えばデンプン又はセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び他のセルロース誘導体、吸水性親水コロイド、カラギーナン、ヒアルロン酸 (例えば、場合により塩化ナトリウムを含むヒアルロン酸ゲル)、及びアルギン酸塩、例えばアルギン酸プロピレングリコールである。
【0184】
軟膏基剤の例は、非限定的に、蜜蝋、パラフィン、セタノール、セチルパルミチン酸、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸ソルビタンエステルと酸化エチレンとの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビタン(Tween)である。
【0185】
疎水性軟膏基材の例は、非限定的に、パラフィン、植物油、動物性脂肪、合成グリセリド、ワックス、ラノリン、及び液体ポリアルキルシロキサンである。
【0186】
親水性軟膏基剤の例は、非限定的に固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)である。
【0187】
粉末成分の例は、非限定的に、アルギン酸、コラーゲン、ラクトース、粉末であって、傷に適用された場合にゲルを形成できる(液体/傷からの浸出液を吸収する)成分である。
【0188】
希釈剤及び崩壊剤の例は、非限定的にラクトース、サッカロース、エムデックス(emdex)、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、デンプン及び微結晶セルロースである。
【0189】
結合薬の例は、非限定的に、サッカロース、ソルビトール、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールである。
【0190】
湿潤薬の例は、非限定的にラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80である。
【0191】
潤滑剤の例は、非限定的に、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化ケイ素、プレシロール及びポリエチレングリコールである。
【0192】
被膜薬剤の例は、非限定的に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポイビニルプロピリドン、エチルセルロース及びポリメチルアクリレートである。
座剤基材の例は、非限定的に、カカオ脂、アデプス・ソリダス(Adeps solidus)及びポリエチレングリコールである。
【0193】
α-MSHアナログは、医薬品の重量あたり0.001〜99%、一般的には0.01〜75%、より一般的に0.1〜20%、特に1〜15%、例えば1〜10%の量で医薬品中に存在する。
【0194】
用量は、治療される状態に左右される。個々の薬剤は、当業者に知られている用量で使用されうる。本発明に記載される1以上のペプチドの投与量が、1ng〜100mg/kg体重、一般的に1μg〜10mg/kg体重、より一般的に10μg〜1mg/kg体重、例えば50〜500μg/kg体重であることが意図される。
【0195】
さらなる態様では、本発明は、場合により医薬として許容される担体を伴って本発明に記載される1以上のペプチドを含む上記医薬組成物に関する。
【0196】
本発明に従った医薬組成物は、当業者に知られている慣用技術を用いることにより、そして慣用の医薬担体を伴って製造される。さらに、医薬組成物は、本明細書に記載される任意の使用に適した任意の形態であってもよい。
【0197】
本明細書に記載され、そして特許請求される発明は、本明細書に開示された具体的実施態様により範囲を制限されるべきではない。なぜなら、これらの実施態様は、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるからである。任意の同等の実施態様は、本発明の範囲内であることが意図される。さらに、本明細書に示されそして記載されている発明に加えて、本発明の様々な改変が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。この様な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0198】
様々な参考文献が本明細書に引用される。この開示は、その全てを本明細書に援用される。
【0199】
この明細書を通して、「含む」という語句、又は「含んでいる」又は「含む」などの変化形は、記載された要素、整数又はステップ、或いは要素、整数又はステップの群を含めることを意図するが、任意のほかの要素、整数又はステップ、或いは要素、整数又はステップの群を除くことを意図しない。
【0200】
本発明の様々な態様、及びこれらの態様の具体的な実施態様についての上の記載について、1の態様及び/又は本発明の態様の1の実施態様と組み合わせて上に記載され、言及された任意の特性及び特徴は、記載された本発明の他のいくらか又は全ての態様の類似点により適用することが理解されるべきである。
【0201】
本発明は、以下に、非限定的な図面及び実施例により記載される。
【実施例】
【0202】
以下において、本発明のペプチドを試験する方法が、一般的に記載されている。試験されたペプチドについての結果は、実施例1〜7に与えられる。本方法の目的は、虚血、炎症又は薬剤の毒性効果の結果として生じる細胞/組織/臓器の機能障害を抑制又は予防する抗炎症効果及び能力について本発明のペプチドを試験することである。
【0203】
炎症応答又は慢性炎症における再燃は、細胞性メディエーター、例えば腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン(IL-1β、IL-8)、一酸化窒素(NO)、及び遊離の酸素ラジカルの産生により特徴付けられる。これらは、最終的に、全身の血管において細動脈の緊張の喪失を伴う広範囲の内皮損傷、毛細血管透過性、持続性高血圧及び臓器不全を誘導する。肺での臓器不全は、好中球及び好酸球を含む白血球の肺胞領域への集積を伴う。病原菌から放出されるリポ多糖(LPS)は、TNF-αを含む多くの炎症メディエーターを誘導することにより、感染に対する炎症応答に中心的な役割を果たす。TNF-α産生を抑制する能力を用いた治療は、その結果、顕著な抗炎症効果を有することが信じられている。本発明者は、多くのセットアップ(実施例1-3を参照)において炎症応答を産生する為にLPS刺激を用い、そして本発明に従ったペプチドの抗炎症効果についての主なマーカーは、TNF-α産生を抑制する能力である。
【0204】
動脈血供給の低減/完全な停止により誘導される虚血は、好中球の集積、他の炎症応答及び細胞死を含む複数の組織反応を誘導する。虚血/炎症の結果として生じる多くの細胞/組織/臓器の機能障害又は破壊を抑制又は予防できる化合物の同定はかなりの利益がある。発明者は、一時的な虚血について2つのモデルを使用する:1)ラットにおける心筋虚血再灌流モデル、当該モデルは、、急性心筋梗塞を発達させ、次に、線溶療法又は冠動脈血管形成術により達成されるように(実験例4)、血液供給の回復させることを模倣する。2)両側腎動脈狭窄、当該狭窄は、外科的大介入を受けている患者において見られる様に、腎臓血液供給の一時的な低下により誘導されるAFRに匹敵する急性腎不全(ARF)を誘導する(この例は、腹部大動脈瘤のための外科的介入でありうる)(実験例5)。
【0205】
腎毒性は、シスプラチン治療の周知の副作用である。必ずしもそうではないが、用量制限のある腎毒性はそれでも大部分の患者に影響を与え、そして糸球体ろ過率の有意な低下が治療の間に観察される。シスプラチンの腎毒性は、特に腎近位尿細管のS3セグメントにおける外側髄質におけるネフロン、並びにヘンレ係蹄の厚上行脚(thick ascending limb)におけるネフロンにおける直接的な細胞傷害性損傷として現れる。それゆえ、シスプラチン処理は、尿を希釈する能力の障害を含む尿細管再吸収の欠損を招く。シスプラチンで治療された患者の50%において、低マグネシウム血症が観察され、そしてこれは、おそらく、腎臓マグネシウム再吸収の欠損のために生じる。Mg補給が、シクロスポリンAの腎毒性作用に対する保護に決定的な因子であることが、近年の研究により示唆され、そしてMg欠損とシスプラチン誘導性の腎毒性との間の潜在的な反応が示唆されてきた。低マグネシウム血症を予防することを目的とした処置が、その結果、Mg補給の必要性を低下させるだけでなく、シスプラチンの腎毒性を低下させる有利な効果を有する。本発明に従ったペプチドのシスプラチン誘導性腎毒性についての効果は、実験例6で試験された。
【0206】
材料と方法
本発明のペプチドは、以下に記載される方法の試験化合物である。
【0207】
実験例1
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α産生の抑制
EDTA入りのVacutainer(登録商標)チューブ中に20mlのヒト血液を回収した。Ficoll-Paque Plus(Amershamの製品、71-7167-00 AD, 2002-06)を用いてPBMCを単離した。トリパンブルー溶液(Sigma)を用いてPBMCを計数し、そして10mMのHepes(Sigma)、2mMのL-グルタミン(Sigma)、0.1%のBSA(Sigma)及び50U/50μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を添加したRPMI1640(Applichem)中で5×105細胞/mlの濃度でインキュベートした。単離PBMCを、培地、10ngLPS/ml(Sigma)、及び試験化合物を入れた24ウェル平底プレート(Corning Incorporated)中で、加湿5%CO2、95%空気中でインキュベートした。18時間後、サンプルを遠心し、そして上清中のTNF-αを、Human Biotrak ELISA System(Amersham)からの腫瘍壊死因子α[(h)TNF-α]を用いて計測した。
【0208】
サンプルをドナーごとに以下のようにインキュベートした:
RPMI中のPBMC(時間対照)
10ngLPS/mlを伴うPBMC(ビヒクル)
PBMC、10ngLPS/mL、10-17Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-15Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-13Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-11Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-9Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-7Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
全てのサンプルを、最初のストック溶液から1.4×10-4M〜1.8×10-3Mで希釈する。
当該化合物の容器の表面への結合を保護するために、全ての溶液をBSA被膜容器中で取り扱う。
データを平均±SEで示す。LPS誘導性TNF-α遊離についての試験化合物の効果は、LPSビヒクル群におけるTNF-αの蓄積の割合として表現される。全ての比較は、スチューデントの対応のないt検定で分析した。確率水準(p)=0.05を有意差とした。
【0209】
実験例2
in vivoでのラットにおけるLPS誘導性TNFαの抑制
実験動物
雌Wistarラット(220〜240g)をCharles River, Sulzfeld, Germanyから購入し、そして12時間の明暗サイクル(午前6時から午後6時まで明るくする)で温度及び湿度が調節された動物室中(22〜24℃)(40〜70%)で飼育した。ラットを、140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%タンパク質(Altromin International, Lage, Germany)を含むげっ歯類の標準飼料で維持し、そして自由に水へとアクセスさせた。
【0210】
動物標本
イソフルラン-亜酸化窒素麻酔中に大腿動脈及び静脈を介して、腹部大動脈及び下大静脈中に、常設医療品質のTygonカテーテルを動物にインプラントした。設置の後に、動物を個別に7〜10日間、実験の日まで飼育した。
【0211】
実験プロトコル
実験前に、全てのラットを、それぞれ2回2時間トレーニングさせることにより実験に使用する梗塞ケージに順応させた。実験の日に、動物を拘束ケージに移し、そして150mMのグルコースを含むビヒクル溶液を静脈内に輸液を開始した。輸液速度は、実験を通して0.5ml/時であった。短い適応期間の後に、リポ多糖(LPS)の輸液を開始する。LPS(大腸菌セロタイプ0127 B8、L 3129、Sigma、St.Louis, USA)を4mg/kg体重の用量でi.v.輸液として1時間かけて与えた。0.3mlの動脈血試料を、LPS輸液開始後60、90、及び120分でとり、そして通常のドナーラットから直ぐにヘパリン化血と取り替えた。
【0212】
実験群:
LPS輸液に加えて、全てのラットを、以下の:
ビヒクル(0.5ml等張生理食塩水)
以下の用量:50μg/kg体重;200μg/kg体重又は1000μg/kg体重のうちの1の用量のα-MSH;
以下の用量:50μg/kg体重;200μg/kg体重又は1000μg/kg体重のうちの1の用量の試験化合物
のボーラス注射で処理する。
【0213】
血漿中のTNF-αの計測:
血液試料を予め凍結された、0.5mMのEDTA、pH7.4、及び20×106IU/mlアプロチニンを入れた試験管中に回収した。4℃で遠心した後に、血漿サンプルを予め凍結させた試験管に移し、そして-20℃でのちにTNF-αを計測するまで貯蔵した。血漿中のTNF-αは、ELISAにより決定される(Biotrak,Amersham, UK)。
【0214】
統計分析
結果を平均±SEとして示す。繰り返し計測についての2-ウェイANOVAを、群間の差について試験するために用いる。p<0.05の場合、対応するペプチド間の差は、対応のないt検定により評価され、有意差のレベルについてボンフェローニの補正を行った。
【0215】
実験例3
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球浸潤の抑制
M&B A/S, DK-8680 Ry, Denmarkから得た雄のスプラーグ-ドーリーラット(体重〜200g)を全ての実験に用いた。ラットを標準3型ケージにいれ、そして12時間の明暗サイクル(午前6時から午後6時まで明るくする)で温度及び湿度調節された動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した。食餌は、オートクレーブ済みのAltromin 1324特別処方(Altromin Denmark, Chr. Pedersen A/S, 4100 Ringsted, Denmarkにより販売される)であった。
【0216】
馴化後に、ラットをランダムに実験群に割り当て、そしてLPS誘導の開始時、及びLPS誘導後8時間でもう一度、試験化合物をI.V.で投与した。
【0217】
第3群のラットを0.1mlのヒポノルム/ドルミカムpr.で麻酔し、100gの試験化合物を投与した。投与後すぐに、ラットを吸入チャンバー内に配置し、ここでラットは噴霧上のLPS溶液に晒した。LPSの濃度は、1mg/mlである。投与時間は、15分である。ラットを試験物質を投与後24時間で安楽死させた。最後にラットはCO2/O2で安楽死させた。次に気管支洗浄を、6×2.5mlのPBSを右肺に入れ、そして取り出すことにより行う。胸骨と助骨を取り除いた後に、肺を胸腔中に留めて行う。左肺への接続を、この方法を行う間に結紮した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を4℃で10分間1000rpmで遠心する。上清を取り除いた後に、細胞ペレットを0.5mlPBS中に懸濁する。May-Gruwald Giemsa染色で染色された2個のBALFのスメアを各ラットから作成した。各ラットからのBALFを総細胞数の計測にかけ、そして白血球の百分率を計算する。
【0218】
実験群:
LPSの注入に加え、ラットを以下の:
ビヒクル(0.5ml等張生理食塩水)
α-MSH:200μg/kg/bw
α-MSHアナログ:200μg/kg/bw
のいずれかのボーラス注射で処理する。LPS吸入をされなかった時間対照群は、ビヒクルで処理される。
【0219】
統計
データは、平均±標準偏差として示される。分散の1ウェイ分析を行い、次にフィッシャーの最小有意差検定行うことにより、群間比較を行う。
【0220】
実験例4
in vivoにおけるLPS誘導性サイトカイン放出及びブタにおける肺高血圧の抑制
雌のランドレースブタ(Landrace pig)(〜30kg)を一晩絶食させたが、水は自由に与えた。次に、ブタに筋中でケタミン(10mg/kg)及びミダゾラム(0.25mg/kg)を前投与する。静脈内ケタミン(5mg/kg)で麻酔を誘導する。ブタに経口挿管し、そしてフェンタニル(60μg/kg/h)及びミダゾラム(6mg/kg/h)を連続静脈内輸液して麻酔を維持する。動物を、体積制御ベンチレーター(Servo 900ベンチレーター;Siemens Elema, Solna, Sweden)を用いて5cmH2Oの呼吸終末陽圧でベンチレートした。1回換気量を10〜15ml/kgに維持し、そして炭酸正常状態を維持するために(34〜45mmHgの範囲の二酸化炭素圧[PaCO2])、呼吸数を調節した(20〜25回の呼吸/分)。105mmHgを超える動脈酸素圧(PaO2)を達成するために空気中の酸素を用いて行った。1の動脈及び2の静脈シースを、輸液のために頚動脈及び対応する静脈に配置した。液体を満たしたカテーテルを通して血圧を計測し、血液サンプリング及び導入カテーテルに用いた。
【0221】
Swan-Ganzカテーテル(Edwards Lifescience Crop.,Irvine, CA)を右上大静脈を介して、肺動脈に挿入する。バルーンカテーテルの位置を、心臓の右側を通して肺動脈へと進める際のモニター上での特徴的な圧力追跡を観察することにより、並びにX線により測定した。別のカテーテル(5 French; St. Jude Medical Company, St. Paul, MN)を連続血圧モニタリング及び血液サンプリングのために左頚動脈中に挿入する。尿カテーテルを尿採取のために挿入する。心臓パフォーマンスをアッセイする際に、一時的ペースメーカーカテーテルを、静脈シースを通して右心房へと挿入して(X線ガイド)、心拍を標準化した。
【0222】
血行動態モニタリング
心臓血圧、心拍数(心電図)、及び肺動脈圧(PAP)の連続観察を行った。
【0223】
リポ多糖注入
大腸菌リポ多糖エンドトキシン(大腸菌、026:_6、バクトリポ多糖;Difco Laboratoies、Detroit、MI)を、全ての沈殿を溶解するために各実験の前に120分間生理食塩水中に溶解した。安定期間後に、リポ多糖の注入は、2.5μg/kg/hの割合でベースラインで開始し、そして徐々に30分間、15μg/kg/分に増加させた。この後に、150分間、2.5μg/hkg/hの割合で維持し、そしてその後に止めた。
【0224】
介入群
LPS注入を開始する直前に、対照群に介入群と等体積のビヒクルを与える。介入群に1回静脈内ボーラス注射として、α-MSHアナログを200μg/kgの用量で与える。
【0225】
サイトカイン
EDTA安定化血液から得られた新鮮凍結血漿サンプル(-80℃)を、製造説明書に従って、市販の酵素結合免疫吸着アッセイを用いることによりTNF-αの計測のために使用する。
【0226】
統計
データを平均±S.E.で表す。群間比較を、分散の1ウェイ分析の次にフィッシャーの最小有意差検定を行うことにより行なう。差は、0.05レベルで有意であるとした。
【0227】
実験例5
ラットの左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞のサイズの抑制
バリア-ブレッド(barrier-bred)及び特定病原菌除去ウィスターラット(250g)をCharles River, Hannover, Germanyから購入した。動物を12時間の明暗サイクルの温度及び湿度調節動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した(午前6時から午後6時までを明るくした)。全ての動物に水道水、並びに約140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%のタンパク質を含むペレット状のラット飼料(Altrominカタログ番号1310、Altoromin International Large, Germany)を自由に与えた。
【0228】
大腿静脈及び動脈を介して、下大静脈及び腹部大動脈に常設医療品質のTygonカテーテルを設置する。1週間後、ラットを4%イソフルラン+O2で吸入チャンバー内で麻酔する。気管内チューブの挿入後、Hugo Basile Rodentベンチレーターを用いて、動物を人工的に1.0%イソフルランを含むO2をベンチレートした。一回換気体積を8〜10ml/kg b.w.及び呼吸回数を75分-1とし、これにより動脈pHを7.35から7.45に維持した。外科手術の間に、直腸温度を37℃から38℃に維持する加熱台に当該動物を置いた。標準ECG(二次リード(second lead))を、Hugo Sachs ECG Couplerを用いて計測し、そして4000HzのPowerLabでオンラインで回収した。胸骨傍での開胸術及び心膜を開口した後に、左前下行枝(LAD)を目に見える位置にした。結紮の再開口を可能にする閉塞器(occluder)を用いた非外傷性の6-0絹縫合を、肺躯幹(pulmonary trunk)と左心耳のより低い右末端との間のLADの周囲に配置した。10分後、左前下行枝(LAD)を閉塞させる。閉塞の成功は、ECGの変化(ST上昇及びR波振幅の増大)の変化により、及びMAPの減少により確認された。再灌流は、閉塞を開口することにより行なった。対照ラットは偽手術される。
【0229】
ラットは、以下の:
ビヒクル:0.5mlの150mM・NaCl
α-MSH:200μg又は1000μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
試験化合物:200μg又は1000μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
のi.v.処理のうちの1にかける。
【0230】
虚血及び壊死心筋の大きさの決定
ラットを、虚血/再灌流後に麻酔状態を維持し、そしてLADの再拘束を、再灌流後3時間で行なった。この期間の間に、ECG及びMAPを連続して計測した。次に虚血領域のサイズを決定するためにEvans青色色素(1ml;2%w/v)をi.v.で投与した。心臓を取り除き、そして水平切片に切り、虚血領域の大きさを決定した。心臓を取り出し、そして水平切片に切り、虚血領域の大きさを決定し、そして非虚血心筋から虚血心筋を分離した。虚血領域を単離し、そして0.5%トリフェニルテトラゾリウム・クロリド溶液で37℃で10分間インキュベートした。ネクローシス組織の大きさは、次に、コンピューターによるイメージプログラムを用いることによって計測した。さらなる動物の実験例では、動物は、術後にブプレノルフィンで処理され、そしてケージに戻し、医薬による治療の高層性心不全の発達についての効果を評価するために、2週間後に左心室拡張末期圧(LVEDP)を計測した。右頚動脈を介して左心室へと挿入される2Fマイクロチップカテーテルを用いて、LVEDPを計測した。85〜90mmHgに平均動脈血圧(MAP)を安定化させるために、イソフルラン濃度を調節した。
【0231】
統計
データを、平均±S.E.で示す。スチューデントの対応のあるt検定を用いて群間比較を分析する。群間比較を、分散の1ウェイ分析をし、次にFishersの最小有意差検定により行なった。0.05レベルで差を有意差とみなした。
【0232】
実験例6
ラットにおいて、腎動脈の40分の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
バリア-ブレッド及び特定病原体除去の雌ウィスターラット(250g)をCharles River, Hannover, Germanyから購入した。当該動物を12時間の明暗サイクルで温度及び湿度調節動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した。全ての動物に水道水、並びに約140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%のタンパク質を含むペレット状のラット飼料(Altrominカタログ番号1310、Altoromin International Large, Germany)を自由に与えた。
【0233】
前もって常設静脈カテーテルを設置されたラットを、代謝ケージに入れ、そして代謝ケージに2日間馴化後に、両側腎動脈を60分間閉塞させることにより実験的にARFを誘導した。外科手術の間、ラットをイソフルラン-亜酸化窒素で麻酔し、そして加熱テーブルに置いて直腸温度を37℃に維持した。両方の腎臓を側腹切開を通してあらわにし、脂肪被膜から切り離すことにより可動化した。次に、腎動脈の一部分を、動脈からゆっくり切り離した。腎動脈を平滑表面血管クリップ(60g圧;World Precision Instruments, UK)で40分間閉塞させた。全ての腎臓表面の青白化により、完全な虚血が確認される。虚血期間の間、体温を維持するために創傷を一時的に閉じた。クリップを取り除いた後に、血液の再灌流を示す色の変化を確かめるために、腎臓をさらに2〜5分間観察した。次に傷を3-0絹結紮糸で閉じた。ラットを代謝ケージに戻し、そして毎日24時間尿量と水の摂取量を5日間計測した。対照群として、ARFラットについて用いた手術と同一であるが、腎動脈の結紮を行なわない偽手術をラットに行なった。偽手術されたラットは、ARFを患うラットと平行してモニターされた。
【0234】
ラットに、以下の:
ビヒクル:0.5mlの150mM・NaCl、
α-MSH:200μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl、
試験化合物:200μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
のi.v.処理のうちの1を行なう。腎臓の再灌流の5分前に処理を行い、そして続いて6及び24時間後に行なう。
【0235】
統計
データを平均±S.E.として示す。群間比較は、スチューデントの対応のあるt検定を用いて分析した。群間比較を、分散の1ウェイ分析を行い、次にFisherの最小有意差試験を行なった。0.05レベルの差を有意差とした。
【0236】
実験例7
シスプラチン誘導性腎不全の抑制
前もって常設静脈カテーテルを設置されたラットを代謝ケージにいれ、そして代謝ケージへの馴化期間の後に、ラットを腹腔内シスプラチン注射5.0mg/kgbwを含む0.5mlの150mM・NaCl又はビヒクル(0.5ml・150mM・NaCl)で処理した。5日後、次にラットを代謝ケージに戻し、そして続く5日間、毎日24時間の尿量及び水摂取量を計測し、そして回収した。次に全てのラットをハロタン/N2Oで麻酔し、そして動脈血液サンプルを予め凍結されたEDTA被膜バイアル中に回収した。血液サンプルを、0.5mM・EDTA、pH7.4、及び20×106IU/mlアプロチニンを入れた予め凍結された試験チューブに回収し、そして-20℃で、クレアチニン及びマグネシウム(Mg)を後に計測した。このクレアチニンに加えて、血液採取の前の最後の24時間の期間回収された尿を計測する。糸球体ろ過量(GFR)の指標として使用されるクレアチニンクリアランス(Ccr)は、Ccr=Vu×Ucr/Pcrとして計算できる。ここでVuは、24時間の尿生産である;Ucrは、尿についてのックレアチニン濃度であり、そしてPcrは、血漿におけるクレアチニン濃度である。尿及び血漿におけるクレアチニンの計測は、臨床化学システムVITROS950(Ortho-Clinical diagnostics Inc., Johnson & Johnson, NJ)及びRoche Hitachi Modular (Roche Diagnostics, Manheim, Germany)を用いることにより行なわれる。
【0237】
ラットを以下の:
ビヒクル:0.5ml・150mM・NaCl、
α-MSH:200μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5ml150mM・NaCl、
試験化合物:200μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl、
のi.v.処置のうちの1を行なう。腎臓の再灌流の5分前に処置を行い、そして6時間及び24時間後に処置を行なう。
【0238】
統計
データーを平均±S.E.として示す。群間比較を、スチューデントの対応のあるt検定で分析した。群間比較は、分散の1ウェイ分析を行ない、次にFisherの最小有意差検定を行なうことにより行なわれる。0.05レベルの差を有意差とした。
【0239】
結果
実施例1
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#1:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*:N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている)
である。当該化合物は、実験例1-7で試験された。
【0240】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、独立して、ヒト白血球懸濁液におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積を低減させた。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)の抑制性効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症性効果よりも顕著に強調されている。これと対照的に、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、TNF-α蓄積をビヒクルの47±2%に低減することができる(αMSHに対してP<0.01)(図1を参照のこと)。
【0241】
in vivoでのラットにおけるLPS誘導性TNF-α産生の抑制
α-MSHとα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、LPSのiv注入の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減した。α-MSH並びにα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の投与量で達成し、そしてTNF-α産生に対する最大抑制効果は、LPS融合の開始後120分で見られる。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)抑制性効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調される。ラット血漿中のTNF-α濃度を、最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%に抑制する一方、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、TNF-α蓄積を9±1%のビヒクルに低減することができる(α-MSHに対してP=0.05)(図2を参照のこと)。
【0242】
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球の浸潤の抑制
α-MSHとαMSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、LPS吸入後24時間で収集された気管支肺胞洗浄液中の好酸球の顕著な減少により示されるように、肺胞スペース内におけるLPS吸入に対する炎症応答を低減する。α-MSH処置は、BALFの好酸球の数を、26.7±4.3×105細胞に低減し(ビヒクルに対してP値<0.05)、そしてα-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、好酸球の数を、49.0±10.5×105細胞(ビヒクルに対してP値<0.05)に低減し、BALF中の好酸球の数が164.6±42.2×105細胞であるビヒクル処理されたラットに比べられる(図3を参照のこと)。上と一致して、BALF内の好中球の数の効果は、α-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)と同様である。
【0243】
in vivoにおいてブタのLPS誘導性サイトカイン放出及び肺性高血圧の抑制
α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)で処理されたブタにおいてLPS誘導後に、TNFαの血漿濃度の顕著な低下により示される顕著な抗炎症効果を有する。この抗炎症効果に加えて、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、驚くべきことに、肺性高血圧の発達に対する保護能力を有し、当該能力は、α-MSHアナログ#1(配列番号1)で処理されたラットにおいて見られたPAPのLPS誘導性の増加の顕著な減少により証拠付けられる(PAPの最大増加:ビヒクルについて22±4mmHg、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)について8±2mmHg;p=0.05)(図4を参照のこと)。
【0244】
ラットにおける左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞のサイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、驚くべきことに、LAD-再灌流後3時間で計測されたリスク領域の画分としての壊死領域として表現される心筋梗塞サイズを低下させる。α-MSHアナログ#1の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約30%である(ビヒクルについてリスク領域の50.6±2.6%、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)についてリスク領域の35.7±5.6、p=0.01)(図5を参照のこと)。1000μg/kg体重の用量で、梗塞サイズの低減は、ビヒクル処理されたラットに比較して〜30%である(α-MSHアナログ#1(配列番号1*)についてリスク領域の35.0±4.4%、ビヒクルに対してp<0.01)(図5を参照のこと)。60分のLADの閉塞後の14日目の動物のさらなる実験例での左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測により、梗塞サイズのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の有利な効果がLVEDPの顕著な低下、そしてそれにより、梗塞後うっ血性心不全の発達の顕著な低下を伴うことが示された(LVEDP:α-MSHアナログ#1(配列番号1*):10.4±2.9mmHg;対ビヒクル:20.0±2.2mmHg;P<0.01;対時間対照7.5±2.3mmHg;NS)(図6を参照のこと)。
【0245】
ラットにおける腎動脈の40分間の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
60分の両側腎虚血(RIR)は、顕著な虚血多尿症を誘導する。RIRラットは、持続性多尿症を患い、虚血誘導の4日後に、偽手術対照ラットと比べて101%だけ増加した(RIR-ビヒクル:34.8±3.3ml/24時間対時間対照:17.3±2.1ml/24時間、P<0.01)。α-MSH処理は、多尿症を低減することができない(RIR-α-MSH:29.0±2.9ml/24時間;NS対RIR-ビヒクル)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、尿流量の完全な通常化を誘導できる(RIR-α-MSHアナログ#1(配列番号1*):18.8±3.6ml/24時間;NS対時間対照;P<0.01対RIR-ビヒクル)(図7を参照のこと)。
【0246】
シスプラチン誘導性腎不全の抑制
シスプラチン処理は、顕著な低マグネシウム症及びGFRの低下により証拠付けられるネフロン毒性を誘導する。これに従って、シスプラチン及びビヒクルで処理されたラットは低マグネシウム血漿を誘導し(血漿Mg:0.61±0.04mM、対照ラット:0.77±0.05mM、P<0.05)、そしてGFRの顕著な低下を誘導した。血漿Mgは、シスプラチン及びα-MSHで処理されたラットにおいて低下した(0.37±0.04mM、P<0.05対対照ラット)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)での処理は、シスプラチン誘導性の低マグネシウム血漿を抑制し(0.84±0.04mM、NS対対照ラット)、そしてシスプラチン誘導性のGFRの低下を予防する。
【0247】
実施例2
試験化合物は以下のα-MSHアナログ#2:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5* N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#2(配列番号5)は、10位でMetをNleに置換し、そして13位のPheを(D-Phe)に立体化学的に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なっている。
当該化合物を、実験例1-3、及び5-7で試験した。
【0248】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方は、独立してヒト白血球懸濁液中でLPS誘導性のTNF-αの蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりもより顕著である。α-MSHは、最大応答(LPS-ビヒクル)の73±9%にTNF-αの蓄積を抑制する。これとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、ビヒクルの42±11%へのTNF-αへと蓄積を低減できる(P<0.01対α-MSH)(図8を参照のこと)。
【0249】
in vivoにおけるラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方が、LPSのiv注入の間にラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著に強調される。一方、α-MSHが、ラット血漿中へのTNF-αの濃縮を最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%へと抑制する一方、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、TNF-αの蓄積を、ビヒクルの9±1%へと低減する(P<0.05対α-MSH)(図9を参照のこと)。
【0250】
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球の浸潤の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方が、LPS吸入に応答する肺胞スペース内の炎症を低下させる。当該炎症の低下は、LPS吸入後24時間で回収されたBALF中の好酸球の顕著な低下により示される。α-MSH処理は、BALF中の好酸球の数を26.7±4.3×105細胞に低減し(ビヒクルに対してP値<0.05)、そしてα-MSHアナログ#2(配列番号5*)が、ビヒクル処理されたラットに比べて、好酸球を34.0±8.6×105細胞(ビヒクルに対してP値<0.05)に低減する。ビヒクル処理されたラットでは、BALF中の好酸球数は、164.6±42.2×105細胞である(図10を参照のこと)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、α-MSHに比べてBALF内の好中球についてより顕著な抑制効果を有した(α-MSHアナログ#2(配列番号5*)では9.1±2.4×105細胞、α-MSHでは20.1±2.5×105細胞;P<0.05)(図11を参照のこと)。
【0251】
ラットにおいて左下行性冠動脈の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞サイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は驚くべきことに、LAD再灌流後3時間で計測されたリスク領域の画分として壊死領域として表される心筋梗塞サイズを低減する。α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで当該梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約27%である(ビヒクルについてリスク領域の51.4±2.1%の割合対α-MSHアナログ#2(配列番号5*):リスク領域の37.4±5.1%、p=0.01)(図12を参照のこと)。60分のLADの閉塞の14日後の動物のさらなる実験例における左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測は、梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の有利な効果は、LVEDPの顕著な低下と関連し、それにより梗塞後うっ血性心不全の発達の低下と関連することを示す。
【0252】
ラットにおける腎動脈の40分の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
60分の両側腎虚血(RIR)は、顕著な虚血後多尿症を誘導した。RIRラットは、持続性多尿症を有した。虚血発作後5日で当該多尿症は、偽手術対照ラットに比べて101%だけ増加した(RIR-ビヒクル:34.8±3.3ml/24時間対 時間対照:17.3±2.1ml/24時間、p<0.01)。α-MSH処置は、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)で処置することに比べて、RIR後に見られる多尿症の程度を顕著に低減する。
【0253】
シスプラチン誘導性の腎不全の抑制
シスプラチン処置は、顕著な低マグネシウム症及びGFRの低下により証拠付けられるネフロン毒性を誘導する。これに従って、シスプラチン及びビヒクルで処置されたラットは、GFRの低下に関連する低マグネシウム症(血漿Mg:0.61±0.04mM、対照ラットに対して0.77±0.05mM、p<0.05)を発達させる。血漿Mgは、シスプラチン及びα-MSHで処置されたラットにおいても低減する(0.37±0.04mM、P<0.05対対照ラット)。これとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、シスプラチン誘導性低マグネシウム症、並びにシスプラチン誘導性GFRの低下を予防する。
【0254】
実施例3
試験化合物は、α-MSHアナログ#3:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9* N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
であった。
α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、10位でMetをNleに置換し、そして13位でPheをD-Nalに置換する点で、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)と異なる。
化合物は、実験例1、2及び5において試験される。
【0255】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α産生の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の両方は、用量依存的にヒト白血球懸濁物においてLPS誘導性TNF-α蓄積を独立して低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の抑制効果は、天然ペプチドであるα-MSHの抗炎症効果と比べて顕著により強調されている。α-MSHは、最大応答(LPS-ビヒクル)の73%±9%にTNF-αの蓄積を抑制する。これとは対照的に、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、ビヒクルの53±13%にTNF-αの蓄積を低減することができる(α-MSHに対してP<0.05)(図13を参照のこと)。
【0256】
in vivoにおけるラットのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の両方が、LPSのiv注入の間、ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の最大抑制効果が、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症性効果と比べて、顕著により強調されている。α-MSHがラット血漿において、最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%にTNF-α濃度を抑制する一方、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)が、ビヒクルの11±3%にTNF-αの蓄積を低減することができる(P<0.05対α-MSH)(図14を参照のこと)。
【0257】
ラットにおける左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞サイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、驚くべきことに、LAD再灌流後3時間でリスク領域の画分としての壊死領域として表現される心筋梗塞サイズを低下する。α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約24%である(ビヒクルについて51.3±2.15、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)について39.0±3.4%のリスク領域、p=0.05(図15を参照のこと)。LADの60分間の閉塞後14日目での動物の追加実験例における左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測により、梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の有利な効果が、LVEDPの顕著な低下に関連し、そしてそれにより梗塞後うっ血性心不全の発達の顕著な低下に関連するということが示された。
【0258】
実施例4
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#4:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号13*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#4(配列番号13)は、8位においてTyrをSerで置換し、9位においてSerをIleで置換し、10位においてMetをIleで置換し、そして11位においてGluをSerで置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)と異なっている。
化合物を実験例1及び2で試験する。
【0259】
in vitroにおけるヒト白血病によるLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#4(配列番号13*)の両方ともが、ヒト白血球懸濁物において用量依存的にLPS誘導性TNF-αの蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#4(配列番号13*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調されている。
【0260】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#4(配列番号13*)の両方は、LPSのiv注入の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#4の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#4の抑制効果は、天然ペプチドであるα-MSHの抗炎症性効果に比べて顕著により強調されている。α-MSHがラット血漿中のTNF-αの濃度を最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%に抑制する一方、α-MSHアナログ#4(配列番号13*)は、TNF-α蓄積をビヒクルの12±2%に低減することができる(α-MSHに対して、P<0.05)(図16を参照のこと)。
【0261】
実施例5
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#5:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号17*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている)である。
【0262】
α-MSHアナログ#5(配列番号17)は、8位でTyrをSerで置換し、9位でSerをIleで置換し、10位でMetをIleに置換し、11位位でGluをSerに置換し、そして13位でPheの立体化学を(D-Phe)に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なる。
当該化合物は、実験例1及び2で試験される。
【0263】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-αの生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の両方は、独立して、ヒト白血球懸濁におけるLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#5(配列番号17*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著である。
【0264】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の両者は、LPSのiv注入の間ラットにおけるTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことにα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調される。
【0265】
実施例6
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#6:
Ac-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号2*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#6(配列番号2)は、1〜6位で(Lys)6を(Glu)6に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なっている。
当該化合物は、実験例1及び2において試験される。
【0266】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-αの生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の両方が、独立してヒト白血球懸濁液中でLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#6(配列番号2*)の抑制効果が、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べてより顕著に強調されている。
【0267】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の両方が、LPSのiv注射の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#6(配列番号2*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果をよりも顕著に強調されている。
【0268】
実施例7
試験化合物が、以下のα-MSHアナログ#7:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)-NH2(配列番号3*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)である。
α-MSHアナログ#7(配列番号3)は、19位でPheの立体化学をD-Valへと置換する点で、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なる。
当該化合物は、実験例1及び2において試験される。
【0269】
in vitroにおいてヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#7(配列番号3)の両方が、独立してヒト白血球懸濁物中でのLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#7(配列番号3*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べて顕著により強調される。
【0270】
in vivoにおいてラットのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#7(配列番号3*)の両方が、LPSのiv注入の間にラットにおいてTNF-α蓄積を低減する。α-MSH、並びにα-MSHアナログ#7(配列番号3*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#7(配列番号3*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べて顕著により強調される。
【0271】
参考文献
米国特許第4,288,627号
WO 91/17243
WO 99/46283
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然型のα-MSHペプチドに比べて高い効力を有するα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)のペプチドアナログに関する。当該α-MSHアナログは、α-MSHに比べて、高い抗炎症効果、並びに虚血若しくは虚血後の血管再灌流に関連する全身、臓器、又は細胞の損傷を治療又は予防する高い能力を示す。
【背景技術】
【0002】
天然型のペプチドα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、1型、3型、4型及び5型メラノコルチン(MC)受容体の天然アゴニストとして知られている。MC受容体は、Gタンパク質共役受容体のクラスに属する。全ての受容体亜型は、G-刺激タンパク質に共役し、このことは、受容体刺激がcAMPの産生増加に関与するということを意味する。ACTHは、II型受容体(MC2)に対する天然リガンドである。
【0003】
様々な組織のMC受容体について一連の研究が行われた。α-MSHが高い親和性で結合する1型受容体(MC1)は、幾つかの組織及び細胞、例えば、脳、例えば星状細胞、精巣、卵巣、マクロファージ及び好中球において発現することが知られている。しかしながら、MC1は、さらに広い範囲の組織において発現される可能性があるが、これはまだ実証されていない。異なるMSHペプチドに結合するMC受容体の選択性は変化する。MC1は、高い親和性でα-MSHに結合し、そして低い親和性でβ-MSH、γ-MSH及びACTHと結合する。MC2は、ACTHにのみ結合するが、MSHペプチドのどれにも結合しないことが報告されている。他の受容体のリガンドについての高い親和性は、γ-MSH(MC3-受容体)及びβ-MSH(MC4受容体)が挙げられる。対照的に、MC5は、ずっと低い親和性で、MC1と同じパターン(つまり、α-MSHに対する最大の親和性)でMSHペプチドに結合する。
【0004】
MC受容体の刺激を通して作用するMSHペプチドは、免疫調節、消炎、体温調節、疼痛知覚、アルドステロン合成、血圧調節、心拍数、血管緊張、脳血流、神経成長、胎盤発達、種々のホルモン、例えばアルドステロン、チロキシン、プロラクチン、FSHなどのホルモンの合成/放出を含む様々な機能を有する。ACTHは、ステロイド新生の刺激に主要な効果を有する。α-MSHは、皮膚における色素形成を誘導する。
【0005】
どの受容体が関与するかについて、MSHペプチド類、特にα-MSHの多くの作用が完全に実証されたわけでないことを強調することは重要である。α-MSHの抗炎症作用は、マクロファージ及び単球で発現されるMC1受容体と連関するNO産生の妨害、エンドテリン-1作用、インターロイキン10形成を含む様々なプロセスに関わることが憶測されてきた。
【0006】
α-MSHでのMC受容体刺激が、様々な抗炎症プロセスにおいて重要であることが示されてきた(Lipton及びCatania1997):1)好中球の化学遊走(chemotactive migration)を抑制する(Catania 1996)。2)アナログを含むα-MSHが、LPS処理(Goninard1996)に応答したサイトカイン(IL-1、TNF-α)の放出を抑制する。3)細菌エンドトキシンに応答したTNF-αを抑制する(Wong,K.Y.ら、1997)。4)α-MSHのICV又はIP投与は、局所投与されたLPSによる中枢TNF−α産生を抑制する。5)α-MSHが、実験的炎症性腸疾患、虚血誘導性急性腎不全の炎症を低下させることを示した。(Star、R.A.ら、1995)。6)接触性過敏症の誘導及び誘発を抑制することにより、幾らかの保護的効果も有し、そしてハプテン抵抗性を誘導し、α-MSHが、皮膚炎症及び過剰増殖性皮膚疾患の重要な負の制御を媒介し得るということが憶測される(Luger、T.A.、1997)。このため、α-MSHは、皮膚の微小血管系からのIL-8放出増加を引き起こす(Hartmeyer, M., 1997)。
【0007】
低酸素症(虚血)及び再灌流損傷の両者は、ヒト病態生理学において重要な因子である。再灌流の間において損傷を受けやすくする組織低酸素症の例として、循環性ショック、心筋虚血、ストローク、一時的腎虚血、大手術及び臓器移植が挙げられる。虚血が原因で生じる疾患は、病的状態と死亡のかなり一般的な原因であり、そして臓器移植がかなり頻繁に行われているので、再灌流損傷を限定的にする可能性についての治療戦略は、公衆健康を改善するためにかなりの必要性がある。虚血再灌流損傷の原因となる病態生理学は複合的であり、そして好中球の浸潤に応答する古典的炎症再灌流応答だけではなく、再灌流組織/臓器内で、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)1β、IL-6、IL-8、インターフェロン-γ及び細胞内接着分子-1(ICAM-1)を含むサイトカイン遺伝子発現に関する。さらに、心筋梗塞を起こした心臓と同様に、局所的に産生されるTNF-αが収縮の直接的な減少及びアポトーシスを誘導することにより、虚血後の臓器不全に寄与するということが示唆された。虚血及び/又は再灌流損傷の複合的な性質のために、単純な抗炎症治療の考え方は、効果的でないことが示されてきた。再灌流損傷を保護するために、1より多くの活性経路への同時相互作用が必要であるということが多くの実験研究により指摘された。α-MSHが、抗炎症性、抗酸化性及び抗アポトーシス能力の全てを有することが示され、このことは、再灌流損傷を保護するために当該化合物の有効性をよく説明する。
【0008】
α-MSHアミノ酸配列のアミノ酸残基のある改変が、受容体(例えば、MC4受容体)親和性の増加をもたらすこと、生物学的活性の延長をもたらすこと、又はより強力なペプチドの受容体特異的結合プロファイルをもたらすことが知られている(Schiothら、1998, Hrubyら、1995, Sawyerら、1980, Hiltzら、1991, Scardeningsら、2000)。しかしながら、ペプチド薬剤の作成を目的とする場合、これらのペプチドは、酵素変性に対する安定性の低さについての問題を有する。
【0009】
上で記載される様に、ペプチド治療活性薬の開発の問題は、ペプチドが迅速にそしてかなり効果的に、一般的に数分の範囲の半減期で酵素により分解されるという点である。プロテアーゼ及び他のタンパク質分解性の酵素は偏在しており、特に消化管に存在しており、その結果ペプチドは通常、経口投与されると複数の場所で分解され、そして血中、肝臓、腎臓及び血管内皮においてある程度分解されやすい。さらに、所定のペプチドは通常、骨格内の1超の結合部で切断されやすく、各場所での加水分解は特定のプロテアーゼにより媒介される。このような障害が克服されたとしても、特に神経ペプチドについては、血液脳関門の通過について困難に直面する。
【0010】
ペプチドの代謝安定性を増加させるために、SIP(構造誘導性プローブ(Structural Induced Probe))と呼ばれる技術が、Larsenら、1999(WO99/46283)により開発された。SIP技術は、構造誘導プローブの使用に基いており、これは、親ペプチドのC末端又はN末端、或いはC末端とN末端の両方に加えられる短いペプチド配列、つまり(Lys)6により示される。構造誘導性プローブは、細胞間水素結合に基いてより秩序だった立体構造へと親ペプチドを制約し、それにより当該ペプチド・キメラ(プローブに結合されたペプチド)は、ランダムコイル立体構造のペプチドに比べてプロテアーゼに対する分解性を低くする。この構造の結果として、ペプチドキメラは、プロテーゼにより分解されにくくなる。生理的に活性なペプチドにSIPを加えることは、ペプチドの酵素安定性の増加をもたらす一方、同時に生理活性が維持される(Rizziら、2002)。
【発明の概要】
【0011】
本発明の要約
本発明者は、驚くべきことに、α-MSH及びα-MSHアナログをペプチドのN末端においてSIP改変することが、天然型のα-MSHペプチドに比較されたペプチドの最大効力を増加させるということを示した。本発明のペプチドは、天然型のα-MSHに比べて高い抗炎症効果及び虚血状態を予防するための高い能力を示す。
【0012】
こうして、本発明は、当該ペプチドのN-末端部分においてSIP改変を含み、かつα-MSHのアミノ酸配列又は当該ペプチドのC末端部分におけるα-MSHのバリアントを含む具体的ペプチドに関する。
【0013】
第一態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6を含み、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、Lys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、式中B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端は、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む全体で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチドを提供する。
【0014】
本発明はまた、哺乳動物の1以上の臓器の組織における状態の治療又は予防のための医薬組成物の製造のためのペプチドの使用に関する。さらに本発明は、組成物、例えば本発明に記載される1以上のペプチド及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物、医薬において使用するための本発明のペプチド、及び本発明に従ったペプチドの有効量を投与することを含む哺乳動物の1以上の臓器の組織における病気の治療方法に関する。具体的に、本発明は、虚血、炎症及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により引き起こされる病気を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#1について10-7Mだけ達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルに対しp<0.05、#:α-MSHに対しp<0.05。
【図2】血漿におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、ivで与えられた200μg/kg体重のα-MSH及びMCA#1の両方により達成された。平均±SE(各群についてN=4〜6)。*:ビヒクルに対してp<0.05、#:α-MSHに対してp<0.05。
【図3】好酸球。当該図は、実験例3において肺内への好酸球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の効果を示す。両方の化合物は、iv bidで与えられた200μg/kg体重の用量で与えられた。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図4】肺動脈圧。当該図は、ブタにおける肺動脈圧のLPS誘導性の変化についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の効果を示す。平均±SE(2群においてN=3及び6)。*:ビヒクルとの差。
【図5】再懸濁後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4における心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の保護的効果を示す。MCA#1の最大効果は、ivで200μg/kg体重で与えられることにより達成される。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*:ビヒクルとの差。
【図6】60分間のLAD閉塞後二週後のLVEDP。当該図は、実験例4の梗塞後うっ血性心不全の発達についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)(MCA#1)の保護的効果を示す。MCA#1の効果は、200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:偽手術に対してp<0.05;#:ビヒクルに対してp<0.05。
【図7】利尿。当該図は、実験例5における虚血後多尿症の発達についてのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の保護的効果を示す。MCA#1の効果を、ivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=5〜7)。*:ビヒクルとは異なる。
【図8】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#2(配列番号5)(MCA#2)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#2の両方について10-7Mにより達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとは異なる。
【図9】血漿におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#2(配列番号5)(MCA#2)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#2の両方についてivで200μg/kg体重により達成される。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図10】好酸球。当該図は、実験例3における肺内への好酸球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の効果を示す。両化合物は、iv bidで与えられる200μg/kg体重で与えられる。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図11】好中球。当該図は、実験例3における肺内への好中球の集積についてのα-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の効果を示す。両方の化合物が、iv bidで200μg/kg体重の用量で与えられる。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルとの差。
【図12】再灌流後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4のいて心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#2(配列番号5*)(MCA#2)の保護的効果を示す。MCA#3の効果を、ivで与えられた200μg/kg体重により達成した。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*ビヒクルとの差。
【図13】ヒトリンパ球の懸濁物におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例1におけるα-MSHアナログ#3(配列番号9*)(MCA#3)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNFα産生についての最大抑制性効果は、α-MHS及びMCA#3の両方について10-7Mにより達成された。平均±SE(各群においてN=6〜9)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図14】血漿におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積。当該図は、実験例2におけるα-MSHアナログ#3(配列番号9)の最大抗炎症効果を示す。ラットにおけるLPS誘導性TNFαについての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#3の両方についてのivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルについてp<0.05;#:α-MSHについてp<0.05。
【図15】再灌流後3時間での梗塞サイズ。当該図は、実験例4において心筋梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#3(配列番号9*)(MCA#3)の保護的効果を示す。MCA#3の効果は、ivで与えられた200μg/kg体重により達成される。平均±SE(各群においてN=5〜10)。*:ビヒクルとの差。
【図16】血漿におけるLPS誘導性のTNF-αの蓄積。 当該図面は、実験例2におけるα-MSHアナログ#4(配列番号13)(MCA#4)の最大抗炎症効果を示す。LPS誘導性TNFα生産についての最大抑制効果は、α-MSH及びMCA#4の両方についてivで与えられる200μg/kg体重により達成された。平均±SE(各群においてN=4〜6)。*:ビヒクルに対してp<0.05;#α-MSHに対してp<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、虚血、炎症、及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により誘導される臓器機能不全を寛解又は予防する効果を有する治療活性ペプチドに関する。
【0017】
本明細書に定義される場合、ペプチド配列は、疾患状態、生理的条件、症状又は病因適応症の治療、寛解または軽減、或いはその評価又は診断のために使用することができる場合に、「治療活性」となる。ペプチド配列は、疾患状態、生理的状態、症状又は病因適応症を予防するために使用できる場合に、「予防活性」である。医薬として活性な薬剤は、生理的に及び/又は生物学的に活性である。医薬活性は、in vitro、in vivo、又はex vivoにおいて生理的及び/又は生物学的システムへの当該物質(ペプチド)の効果を計測し、そして特定のペプチド又は同様の生理的機能を有するペプチドについての技術分野に知られている標準的なin vitro、in vivo、又はex vivoアッセイを用いてアッセイされてもよい。
【0018】
本発明のペプチド
本発明は、α-MSH又は当該ペプチドのC末端部分におけるα-MSHのバリアント、並びに当該ペプチドのN末端部分における構造誘導性プローブ(SIP)のアミノ酸配列を含むペプチドに関する。本発明のペプチドは、α-MSHアナログと呼ばれている。本明細書及び特許請求の範囲では、これらの用語は、同義的に用いられる。
【0019】
α-MSHバリアントは、配列内での少なくとも1のアミノ酸残基の欠失、置換、添加、又は改変により、天然型のα-MSH(Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val、配列番号101)に比べて改変されるアミノ酸配列として定義される。α-MSHバリアントは、好ましくは、以下の構造:Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Zを有し、ここでYは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そしてここでZは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そしてここでAa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然又は非天然型アミノ酸残基であるか、又は存在しない。
【0020】
本文脈では、「アミノ酸残基」という用語は、任意の天然型のアミノ酸残基(天然アミノ酸残基)又は非天然型のアミノ酸残基(非天然アミノ酸残基)を意味する。
【0021】
天然アミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸残基、例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Tyr、Thr、Trp、Valとして定義される。
【0022】
α-MSHバリアントの構造についての好ましい天然アミノ酸残基の例は、Ser、Tyr、Met、Glu、Ile、Trp及びGlyである。
【0023】
非天然アミノ酸残基は、自然には存在しないが、実験的に作成できるアミノ酸残基として定義される。非天然アミノ酸残基として、合成α、βまたはγアミノ酸残基(L立体配置又はD立体配置のいずれか)並びに、改変チロシンなどの側鎖改変アミノ酸(ここで芳香環は、さらに、例えば1以上のハロゲン、スルホノ基、ニトロ基など及び/又はフェノール基は、エステル基等へと変換される)、例えば側鎖保護アミノ酸であり、ここでアミノ酸側鎖は、ペプチド化学において当業者に知られている方法に従って保護され、例えば、Bodanszkyら、1994, 及びJ. Jones, 及びJones 1991に記載される。好ましい非天然アミノ酸残基の例は、ノルロイシン(Nle)、Nal(β-2-ナフチル-アラニン)、D-Nal(β-2-ナフチル-d-アラニン)、D-フェニルアラニン(D-Phe)及びD-バリン(D-Val)である。
【0024】
最も広い態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立してLys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端は、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む、全体で12〜19のアミノ酸を有するペプチドに関する。
【0025】
本発明の文脈では、「場合により置換される」という用語は、問題の基が、1又は数回、例えば1〜5回、好ましくは1〜3回、最も好ましくは1〜2回、C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、オキソ(互変異エノール形態で示されてもよい)、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシ(エノール系で存在する場合、互変異ケト形態で示されてもよい)、ニトロ、シアノ、ジハロゲン-C1-8-アルキル、トリハロゲン-C1-8-アルキル、ハロゲンで置換されてもよいということを意味することが意図される。一般的に、上記置換基が、さらなる任意の置換基を受け入れる余地があってもよい。
【0026】
本文脈では、「C1-6アルキル」という用語は、直線状又は分岐状の飽和炭化水素鎖を意味することを意図し、ここで最長の鎖は、1〜6個の炭素原子を有し、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルなどを有する。分岐状の炭化水素鎖は、炭化水素鎖を有する任意の炭素でC1-6-アルキルを意味することを意図する。
【0027】
本文脈では、「C2-6アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を有する直線状又は分岐状炭化水素を意味することを意図し、そして1又はそれより多くの二重結合を含む。C2-6アルケニル基の代表的な例として、アリル、ホモ-アリル、ビニル、クロチル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルがあげられる。1超の二重結合を有するC2-6-アルケニル基の代表的な例として、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、及びヘキサトリエニル基、並びにそれらの分岐形態が挙げられる。不飽和(二重結合)の位置は、炭素鎖に沿った任意の位置であってもよい。
【0028】
本文脈では、「C3-8-シクロアルキル」という用語は、炭素原子のみを含む3、4、5、6、7、及び8員環をカバーすることを意図し、ここで、「ヘテロシクリル」という用語は、3、4、5、6、7、及び8員環を意味することを意図し、ここで炭素原子は、1〜3のヘテロ原子と一緒に当該環を構成する。ヘテロ原子は、独立して、酸素、硫黄、及び窒素から独立して選ばれる。
【0029】
C3-8シクロアルキル及びヘテロシクリル環は、しかしながら、芳香族π電子系が生じない様式で1以上の不飽和結合を場合により含んでもよい。
【0030】
好ましい「C3-8シクロアルキル」の代表的な例は、炭素環シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,2-シクロヘプタジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,4-シクロヘプタジエン及び1,3,5-シクロヘプタトリエンである。
【0031】
「複素環」の代表的な例は、複素環2H-トリピラン、3H-チピラン、4H-チピラン、テトラヒドロチオピラン、2H-ピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,2-ジチイン、1,2-ジチアン、1,3-ジチイン、1,3-ジチアン、1,4-ジチイン、1,4-ジチアン、1,2-ジオキシン、1,2-ジオキサン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,2-オキサチイン、1,2-オキサチアン、4H-1,3-オキサチイン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、2H-1,2-チアジン、テトラヒドロ-1,2-チアジン、2H-1,3-チアジン、4H-1,3-チアジン、5,6-ジヒドロ-4H-チアジン、4H-1,4-チアジン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、4H-1,2-オキサジン、6H-1,2-オキサジン、2H-1,3-オキサジン、4H-1,3-オキサジン、4H-1,4-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、オキサゾール、フラザン、バルビツル酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、イソオキサゾール、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、4H-1,2,3-トリチイン、1,2,3-トリチアン、1,3,5-トリチアン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,2-ジオキソール、1,2-ジオキソラン、1,3-ジオキソール、1,3-ジオキソラン、3H-1,2-ジチオール、1,2-ジチオラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、チアゾリン、チオゾリジン、3H-1,2-オキサチオール、1,2-オキサチオラン、5H-1,2-オキサチオール、1,3-オキサチオール、1,3-オキサチオラン、1,2,3-トリチオール、1,2,3-トリチオラン、1,2,4-トリチオラン、1,2,3-トリオキソール、1,2,3-トリオキソラン、1,2,4-トリオキサオラン、1,2,3-トリアゾリン及び1,2,3-トリアゾリジンである。複素環への結合は、ヘテロ原子の位置であってもよいし、又は複素環の炭素原子を介してもよい。
【0032】
本文脈では、「アリール」という用語は、炭素芳香環又は環系を意味することを意図する。さらに、「アリール」という用語は、融合環系を含み、ここで少なくとも2のアリール環、又は少なくとも1のアリール及び少なくとも1のC3-8-シクロアルキル、又は少なくとも1のアリール及び少なくとも1のヘテロシクリルは、少なくとも化学結合を共有する。アリール環の代表的な例としては、場合により、置換フェニル、ナフタレニル、フェナンスレニル、アントラセニル、アセナフチレニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、インドリル、クマラニル、クマリニル、クロマニル、イソクロマニル、及びアズレニルが挙げられる。好ましいアリール基はフェニルである。
【0033】
本文脈では、「C7-16アラルキル」は、C1-6アルキルで置換されたC1-6アルキルを意味することを意図する。
本文脈では、「C7-16アルキルアリール」は、C6-10アリールで置換されるC1-6アルキルを意味することを意図する。
【0034】
1の実施態様では、本発明は:
X-Y-Z、
X-Aa1-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Z、
X-Aa1-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Aa6-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Z,
X-Aa1-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Y-Aa6-Aa7-Z、
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Y-Aa6-Aa7-Z、及び
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基R1-R2-R3-R4-R5-R6、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立してLys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、天然型又は非天然型のアミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中、B1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2であり、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ、
当該ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立して、H、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、全体で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチドに関する。
【0035】
好ましい実施態様では、本発明は、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6、及びAa7は、独立して、任意の天然又は非天然アミノ酸で在りうる。こうして、Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は、全て本発明のペプチド中に存在する]
を含む、ペプチドに関する。
【0036】
1の実施態様では、本発明は、アミノ末端が(B4)HN-、(式中、B4=H)である、本発明に従ったペプチドに関する。
【0037】
1の実施態様では、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、(式中、B1=OH)である本発明に従ったペプチドに関する。
【0038】
幾つかの方法は、分解に対してペプチドを安定化するため、そして他の化合物、薬剤及び/又は例えば血漿中のペプチド/タンパク質と反応するペプチドの能力を低減するために使用できる。本発明は、当該技術分野に知られているこのような方法により改変される本発明に関するペプチドに関する。好ましい実施態様では、本発明は、ペプチドのアミノ末端がアセチル化により改変される、本発明に従ったペプチドに関する。こうして、好ましい実施態様では、本発明は、当該アミノ末端が(B6)HN-であり、ここで、B6=B4-C(=O)-、及びB4=CH3である、本発明に従ったペプチドに関する。他の好ましい実施態様では、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端がアミド化により改変された本発明に従ったペプチドに関する。こうして、本発明は、当該ペプチドのカルボキシ末端が-C(=O)-B1、(ここでB1=NH2)である本発明に従ったペプチドにペプチド関する。
【0039】
本発明の最も広い態様では、
Xは、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号37)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号38)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号39)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号40)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号41)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号42)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号43)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号44)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号45)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号46)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号47)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号48)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号49)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号50)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号51)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号52)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号53)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号54)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号55)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号56)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号57)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号58)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Lys-Lys(配列番号59)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Lys-Lys(配列番号60)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Glu-Lys(配列番号61)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Lys-Glu(配列番号62)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号63)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号64)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号65)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号66)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号67)、
Glu-Lys-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号68)、
Lys-Lys-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号69)、
Lys-Lys-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号70)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号71)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号72)、
Lys-Glu-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号73)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号74)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号75)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号76)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号77)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号78)、
Lys-Lys-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号79)、
Lys-Glu-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号80)、
Lys-Glu-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号81)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号82)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号83)、
Glu-Lys-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号84)、
Glu-Lys-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号85)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号86)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号87)、
Glu-Glu-Lys-Lys-Glu-Glu(配列番号88)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Lys-Glu(配列番号89)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Glu-Lys(配列番号90)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Lys-Glu(配列番号91)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Glu-Lys(配列番号92)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Lys-Lys(配列番号93)、
Lys-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号94)、
Glu-Lys-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号95)、
Glu-Glu-Lys-Glu-Glu-Glu(配列番号96)、
Glu-Glu-Glu-Lys-Glu-Glu(配列番号97)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Lys-Glu(配列番号98)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Lys(配列番号99)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu(配列番号100)
から選ばれる。
【0040】
本発明の現在好ましいペプチドは、以下のペプチド配列:
【化1】
の安定化合物である。
【0041】
安定化は、上で記載される様にペプチドのN末端及び/又はC末端を改変することにより行われて、例えば本発明のペプチドのN末端をアセチル化し、及び/又は本発明のペプチドのC末端をアミド化してもよい。
【0042】
天然アミノ酸についてアミノ酸配列は3文字表記により与えられる。天然アミノ酸残基の改変及び置換は、以下のように略記される:Nleは、ノルロイシンの略記である。D-Nalは、β-2-ナフチル-d-アラニンの略記である。D-Val(D-バリン)は、バリンのD体の略記である。D-Phe(D-フェニルアラニン)は、フェニルアラニンのD体の略記である。
【0043】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号1)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0044】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号2)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0045】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号3)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0046】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号5)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0047】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号9)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0048】
さらに好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号13)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0049】
別の好ましい実施態様では、本発明は、以下の化合物:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号17)
のN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている本発明に従ったペプチドに関する。
【0050】
上で記載される様に、本発明のペプチドは、天然型ペプチドα-MSHに比べて、高い治療効力及び/又は高い最大応答及び/又は高い最大効力を有する。
【0051】
発明者は、本発明のペプチドの幾つか:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Glu)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号2*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)-NH2 (配列番号3*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号13*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、
Ac-(Lys)6-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号17*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
の生物学的効果を試験した。
【0052】
一般的に、「Ac-」は、本発明のペプチドがN-末端でアセチル化されることを指し、そして「-NH2」が、本発明のペプチドがC末端でアミド化されることを指す。
【0053】
ヒト白血球細胞の懸濁液中で( 実験例1)、7個全てのペプチドは、用量依存的にLPSに誘導されたTNF-αの蓄積を抑制する(実施例1〜7)。驚くべきことに、7個のペプチド全てが、天然メラニン細胞刺激ホルモンであるα-MSHに比べて、TNF-α産生について最大抑制効果として定義された場合にさらに効果的であり、並びにTNF-α蓄積の最大抑制を与えるために必要とされる化合物の濃度として定義された場合にさらに強力である (実施例1〜7)。
【0054】
本発明者は、実験例で上に挙げられる7個のペプチド(配列番号1*、配列番号2*、配列番号3*、配列番号5*、配列番号9*、配列番号13*及び配列番号17*、これら全ては、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)を調査した。ここで、ラットにLPSを静脈内輸液することにより全身炎症を誘導した(実験例2)。これらのペプチドが、循環血液中でLPS誘導性のTNF-αを有意に抑制することが示された。驚くべきことに、7個全てのペプチド(配列番号1*、配列番号2*、配列番号3*、配列番号5*、配列番号9*、配列番号13*及び配列番号17*、これら全てはN末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)は、天然のメラニン細胞刺激ホルモンα-MSH(実施例1〜7)よりも高い程度で循環血液中でTNF-αの濃度を抑制できた(実施例1〜7)。
【0055】
本発明者は、炎症がラットにおいてLPSを吸入させることにより誘導される実験(実験例3)において以下のペプチド:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)、及び
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号5*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
の効果を調査し、そして2個のペプチド(配列番号1*及び5*)がLPS誘導性の肺内への好酸球の蓄積の効果を有意に抑制することが示された(実施例1及び2)。驚くべきことに、好酸球についての効果に加えて当該ペプチド(配列番号5*)は、天然メラニン細胞刺激ホルモン、α-MSH(実施例2)で処理されたラットで見られたよりもずっと高い程度で好中球の浸潤を顕著に抑制した。
【0056】
腎臓の一時的虚血は、低減された血圧、血液量減少、腎臓及び/又は大動脈の血流低下に関する外科的介入の結果として、又は敗血症に付随して頻繁に見られる。これは、虚血誘導性急性腎不全をもたらし、この大部分が、慢性腎不全へと悪化させる。現在では、腎不全の発達を抑制するための効果的な治療が存在しない。虚血段階後の一般的な知見は、溶質を含まない尿の生産を増加させる尿濃縮障害の発達である。
【0057】
ラットにおける虚血及び再灌流により誘導される虚血誘導性急性腎不全(ARF)は、尿細管の特徴的な構造変化を引き起こすことが知られており、尿濃縮メカニズムの機能障害を伴う。この虚血誘導性ARFモデルは、虚血誘導性損傷におけるMSHアナログの効果を評価する適切な実験例を提供する。本発明者は、以下のペプチド:Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)の効果を調査し、そして、重篤な急性腎疾患誘導性の腎動脈の一時的な両側性閉塞について、当該ペプチドの効果を天然ペプチドα-MSHの効果と比較した(実験例6)。一時的な腎動脈の閉塞後5日目で評価された場合、ビヒクルで処理されたラットは、腎動脈の偽閉塞にかけられた対照ラットに比べて101%より高い利尿により定義される多尿症を発達させた。驚くべきことに、天然ペプチドα-MSHと等量で与えられた化合物(配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)は、完全に多尿症を通常化し、当該ペプチドが虚血誘導性ARFに対する保護を与える能力を有することが示唆される。一方、この実験において天然ペプチドでの処理は、尿生産を通常化することができなかった。
【0058】
急性心筋梗塞(AMI)は、先進国において最も一般的な死亡原因のうちの1つである。AMIは、ほとんどの場合、突然の冠状動脈血栓症のため、冠状動脈アテロームを有する患者において生じる。今日では、線溶療法又は経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は、標準的な治療であり、そして50〜70%の患者において初期の再灌流を達成できる(自発的な再灌流率は、30%未満である)。再灌流の目的は、梗塞サイズを低減すること、それにより心筋機能の損傷の発達を低減することである。血栓溶解/PTCAの全体の効果は、短期間及び長期間の死亡率を20%低下することである。しかしながら、AMIは、炎症反応と関連し、炎症反応は回復と瘢痕形成の必要条件である。冠状動脈閉塞は、心筋の部分への血流を致命的に低減し、これは顕著にエネルギー代謝を損なわせる。かなりの時間(20分超)の虚血は、梗塞を誘導し、そして炎症応答をもたらし、これらの両方は、虚血心筋が再灌流される場合に促進及び増大される。
【0059】
心筋虚血/再灌流(MIR)は、好中球の浸潤を伴う古典的な炎症性再灌流応答ばかりでなく、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-8、インターフェロン-γ、及び細胞内接着分子-1(ICAM-1)を含む心筋サイトカイン遺伝子の発現を活性化する。この局所的なサイトカインの心筋での発現は、梗塞の大きさの調節だけではなく、血管壁リモデリング、心臓損傷、及び心筋肥大を含む心臓記脳損傷の進行の役割を果たしてもよい。さらに、局所的に産生されたTNF-αが、収縮性の直接的な減少及びアポトーシスの誘導を介して、虚血後心筋機能不全に寄与することが示唆された。
【0060】
多くの実験により、抗炎症/抗酸化性/抗アポトーシス戦略は、MIRの動物モデルにおいて梗塞サイズを低減する能力を有する。しかしながら、臨床試験は、ヒトにおいて有意な効果を示さなかった。
【0061】
左冠動脈が60分間閉塞されたラットにおける心筋虚血/再灌流のモデルでは、本発明に記載されるペプチドでの治療が冠状動脈閉塞を取り除く前にされ、そして次にラットをさらに3時間追跡した。次に梗塞サイズについてのペプチドの能力を評価し、そして天然ペプチドα-MSH(実験例5)の効果と比べられた。
【0062】
驚くべきことに、以下の:
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)、
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)、及び
Ac-(Lys)6-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9*、N末端でアセチル化されており、そしてC末端でアミド化されている)
で表される3個全てのペプチドは、天然ペプチドα-MSHよりも高い程度に梗塞サイズを低減した(実施例1、3、4)。
【0063】
上及び実施例において記載されるペプチドの機能性質の点で、本発明は、少なくとも1の以下の性質:
a)ヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生を抑制し、
b)炎症誘導性の肺内への好酸球浸潤を抑制し、
c)炎症誘導性の肺内への好中球浸潤を抑制し、
d)循環血液中の炎症誘導性TNF-α蓄積を抑制し、
e)虚血誘導性急性腎不全を低減し、
f)心筋梗塞サイズを低減し、
g)心筋梗塞後の心不全の程度を低減し、
h)肺高血圧を低減し、
i)シスプラチン誘導性腎不全を低減する
のうちの少なくとも1を有するペプチドに関する。
【0064】
ペプチドは、これらの性質のうちの1超、例えば2、3、4、5、6、7、8又は上記性質の全てを有してもよい。これらの性質は、実施例に概説されるように試験することができる。
【0065】
上に記載される様に、本発明のα-MSHアナログは、天然α-MSHに比べて高い効力を有することにより特徴付けられる。
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲では、「効力」という用語は、化合物により獲得可能な最大応答として定義される。本発明のα-MSHアナログは、実施例に記載される様々な実験において天然α-MSHに比べて高い最大応答を産生できる。
【0067】
好ましくは、本発明のα-MSHアナログは、α-MSHに比べて最小10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは40%だけ、ヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生を抑制する。
【0068】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、気管支-肺胞洗浄又は同等の方法により回収される液体内の好酸球の数を低減させる能力により計測される肺内への炎症誘導性好酸球浸潤を抑制してもよい。予期される最小の効果は、α-MSHに比べて好酸球の10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは50%の低下が見られた。
【0069】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、気管支-肺胞洗浄又は同等の方法により回収された液体内の好中球の数を低減させる能力により計測される肺内への炎症誘導性好中球浸潤を抑制してもよい。予期される最小の効果は、α-MSHと比べた場合に、好中球の10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは40%の低下が見られた。
【0070】
本発明のα-MSHアナログは、α-MSHと比べて、最小で10%、より好ましくは25%、そして最も好ましくは約40%だけ循環血液の炎症誘導性TNF-αを抑制しうる。
【0071】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、虚血後多尿症の程度を低減させる能力により計測される虚血誘導性急性腎不全を低下させうる。最小の予期された効果は、10%、より好ましくは30%、そして最も好ましくは50%の多尿症の低下が、α-MSHに比べた場合に見られる。
【0072】
さらに、本発明のα-MSHアナログは、虚血心筋でのネクローシス領域のサイズの低下する能力により示される心筋梗塞サイズを低下しうる。最小の予期された効果は、梗塞サイズの10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%の低下が、α-MSHと比べて見られる。
【0073】
さらなる態様では、本発明のα-MSHアナログは、左心室拡張末期圧の直接的な計測又は同様の定性計測を通して評価される心臓機能により証拠付けられる心筋梗塞心不全後の程度を低減させうる。最小の予期される効果は、α-MSHと比べた場合に、心臓機能の程度の10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは25%の低下である。
【0074】
さらなる態様では、本発明のα-MSHアナログは、肺高血圧を低減しうる。予期される最小の効果は、α-MSHに比べた場合に、10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%の肺動脈圧の低下である。
【0075】
別の態様では、本発明のα-MSHアナログは、シスプラチン誘導性腎不全を低下しうる。最小の予期された効果は、α-MSHに比べた場合に見られる10%、より好ましくは20%、そして最も好ましくは30%のマグネシウム血症及び/又は糸球体ろ過割合の低下である。
【0076】
上に記載されたように、天然ペプチドであるα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、1型、3型、4型、及び5型メラノコルチン(MC)受容体の天然アゴニストとして知られている一方、ACTHは、2型受容体(MC2)に対する天然リガンドである。本ペプチドがα-MSH又はそのアナログのアミノ酸配列を含むので、本発明のペプチドは、1以上のメラノコルチン受容体、つまり1、3、4、又は5型メラノコルチン受容体を刺激する能力を有する。
【0077】
本発明のペプチドの製造方法
本発明のペプチドは、当該技術分野に知られている方法により製造されうる。こうして、α-MSH、α-MSH-バリアント、α-MSHアナログ及びXモチーフは、溶液合成又はメリフィールド型の固相合成などの鎖状ペプチド製造技術により製造されうる。
【0078】
1の可能な合成戦略では、本発明のペプチドは、最初に、周知の標準保護、カップリング及び脱保護方法を用いて、医薬として活性な配列を構築し、その後に連続して活性ペプチドの構築と同様な様式で活性なペプチド上にモチーフXのアミノ酸配列を順次カップリングし、そして最終的に担体からペプチド全体を切りはなすことにより、固相合成によって製造されうる。この戦略は、当該ペプチド配列Xが、当該ペプチドのN末端窒素原子で医薬として活性なペプチドに共有結合される、ペプチドを産生する。
【0079】
別の可能な戦略は、溶液合成、固相合成、組換え技術、又は酵素合成により別々にα-MSHペプチド/アナログ及びXモチーフ(又はその一部)の配列を製造し、それに続いて溶液又は固相技術のいずれか、又はその組合せにより、2個の配列をカップリングすることにより、α-MSHペプチド/アナログの配列を製造することである。1の実施態様では、α-MSHペプチド/アナログは、組換えDNA法により製造されてもよいし、そしてXモチーフは、固相合成により製造されてもよい。α-MSHペプチド/アナログとXモチーフの結合は、化学ライゲーションにより行われてもよい。この技術は、高度に特異的な様式で完全に脱保護されたペプチド断片の集合を可能にする(Liuら、1996)。結合は、プロテアーゼ触媒ペプチド結合により行われてもよい。これは、完全に脱保護ペプチド断片をペプチド結合を介して組み合わせるために高度に特異的技術を提供する(Kullmann, 1987)。
【0080】
適切な固体支持物質(SSM)の例は、例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、セルロース、ポリエチレン、ポリエチレングリコールであって、ポリスチレン、ラテックス、ダイナビーズなどに埋め込まれたものなどの官能化レジンである。
【0081】
Xモチーフのペプチド配列のC末端アミノ酸、又はα-MSH、α-MSH-バリアント、又はα-MSHアナログのC末端アミノ酸は、共通のリンカー、例えば、2,4-ジメトキシ-4'-ヒドロキシ-ベンゾフェノン、4-(4-ヒドロキシ-メチル-3-メトキシフェノキシ)-酪酸、4-ヒドロキシ-メチル安息香酸、4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸、3-(4-ヒドロキシメチルフェノキシ)プロピオン酸、及びp-[(R,S)-a[1-(9H-フルオレン-9-イル)メトキシホルムアミド]-2,4-ジメトキシベンジル]-フェノキシ-酢酸などにより固体支持体に結合されるということが必須であるか又は望ましいということが理解されるべきである。
【0082】
本発明のペプチドは、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、臭化水素、塩化水素、塩化フッ素などの酸により、本目的に適した1以上の「スカベンジャー」、例えばエタンジチオール、トリイソプロピルシラン、フェノール、チオアニソールなどと組み合わせて、固体支持物質から切断されうるか、或いは本発明のペプチドコンジュゲートは、アンモニア、ヒドラジン、アルコキシド、例えばナトリウム・エトキシド、水酸化物、例えば水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて固体支持体から切断されてもよい。
【0083】
本発明のペプチドは、当業者に周知の一般的方法及び原理を用いて、組換えDNA技術を用いることにより製造されうる。本発明のペプチドをコードする核酸配列は、確立された標準方法、例えばホスホアミダイト法により合成的に調製されうる。ホスホアミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動化DNA合成機中で合成され、精製、アニール、ライゲーションされ、そして適切なベクター中にクローン化される。
【0084】
本発明のペプチドをコードする核酸は、次に、組換え発現ベクターへと挿入される。当該ベクターは、組換えDNA法に都合よく用いられ得る任意のベクターであってもよい。ベクターの選択は、当該ベクターの導入先の宿主細胞に依存することが多いであろう。こうして、当該ベクターは、自発的に複製するベクター、つまり染色体外染色体として存在するベクターであってもよく、その複製は、染色体複製から独立している。例えばプラスミドである。或いは、当該ベクターは、宿主細胞へと導入された場合に、宿主細胞ゲノムへと組み込まれ、そして組み込まれた染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。
【0085】
ベクター中では、本発明のペプチドをコードする核酸配列は、適切なプロモーター配列に作用可能なように接続されるべきである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す任意の核酸配列であってもよく、宿主細胞に同種又は異種であるタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。当該ペプチドをコードする核酸配列の哺乳動物細胞内での転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター又はアデノウイルス2主要後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、及びウシパピローマウイルスプロモーター(BPV)である。昆虫細胞で用いるための適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである。
【0086】
特に細菌宿主細胞での本発明のペプチドをコードする核酸の転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、大腸菌lacオペロン、ストレプトマイシス コエリカラー(Streptomyces coelicolor)のアガラーゼ遺伝子(dagA)、バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)のレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バチルス リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)のαアミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のxylA及びxylB遺伝子、及び原核細胞β-ラクタマーゼ遺伝子、並びにtacプロモーターから得られるプロモーターである。さらなるプロモーターは、"Useful proteins from recombinant bacteria" 、Scientific American, 1980, 242:74-94;及び Sambrookら、10 1989,に記載されている。
【0087】
糸状菌宿主細胞において、本発明のペプチドをコードする核酸配列の転写を仕向ける適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール ミヒー(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)のリパーゼ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のアルカリプロテアーゼ、アスペルギルス オリゼ(Aspergillus oryzae)トリオースホスフェートイソメラーゼ、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)のアセトアミダーゼ、フサリウム・オキシポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(米国特許第4,288,627号、当該文献は本明細書に援用される)、並びにこれらのハイブリッドに由来するプロモーターである。糸状菌宿主細胞で使用するための特に好ましいプロモーターは、TAKAアミラーゼ、NA2-tpi(アスペルギルス・ニガーの中性アミラーゼ及びアスペルギルス・オリゼのトリオースホスフェートイソメラーゼをコードする遺伝子からプロモーターのハイブリッド)、及びglaAプロモーターである。
【0088】
酵母宿主では、有用なプロモーターは、サッカロマイシス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-I)遺伝子、サッカロマイシス・セルビシエガラクトキナーゼ遺伝子(GAL1)、サッカロマイシス・セルビシエのアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH2/GAP)、及びサッカロマイシス・セルビシエの3-ホスホグリセラーテ・キナーゼ遺伝子から得られる。酵母宿主細胞について有用なほかのプロモーターは、Romanosら、1992, Yeast 8:423-488に記載される。
【0089】
本発明の当該ペプチドをコードする核酸配列は、適切なターミネーター、例えばヒト成長ホルモンターミネーターなどに作動可能なように接続されていてもよい。糸状菌宿主細胞の好ましいターミネーターは、アスペルギルス・オリゼのTAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス・アンスラニラートシンターゼ、アスペルギルス・ニガーのαグリコシダーゼ、及びフサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)のトリプシン様プロテアーゼから得られる。
【0090】
酵母宿主細胞についての好ましいターミネーターは、サッカロマイシス・セルビシエのエノラーゼ、サッカロマイシス・セルビシエのシトクロームC(CYC1)、又はサッカロマイシス・セルビシエのグリセルアルデヒド-3-ホスフェート・デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子から得られる。他の有用な酵母宿主細胞のターミネーターは、Romanosら、1992(上記)を参照のこと。
【0091】
当該ベクターは、さらに、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40由来又はアデノウイルス5Elb領域)、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)、及び転写エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVAのRNAをコードする配列)を含む。さらに、糸状菌宿主細胞についての好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・オリゼTAKAのアミラーゼ、アスペルギルス・ニガーのグルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランスのアントラニラート・シンターゼ、及びアスペルギルス・ニガーのα-グリコシダーゼをコードする遺伝子から得られる。酵母宿主細胞についての有用なポリアデニル化配列は、Guo及び Sherman, 1995, Molecular Cellular Biology 15:5983-5990に記載される。
【0092】
組換え発現ベクターは、問題の宿主細胞においてベクターが複製することを可能にするDNA配列をさらに含んでもよい。このような配列の例は(宿主細胞が哺乳動物細胞である場合)、SV40又はポリオーマの複製開始点である。細菌の複製開始点の例は、プラスミドpBR322、pUC19、pACYC177、pACYC184、pUB110、pE194、pTA1060、及びpAMB1である。酵母宿主細胞で使用する複製開始点の例は、2ミクロンの複製開始点であり、CEN6とARS4の組合せ、及びCEN3とARS1の組合せである。複製開始点は、宿主細胞においてその機能を温度感受性にする突然変異を有する開始点であってもよい(例えば、Ehrlich, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1433を参照のこと)。
【0093】
当該ベクターは、選択可能なマーカー、例えば遺伝子を含む。その産物は、宿主細胞の欠損を補完し、例えばジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子、又は薬剤、例えばネオマイシン、ジェネテシン、アンピシリン、又はハイグロマイシンなどに対する抵抗性を与える遺伝子を含む。酵母宿主細胞に対する適切なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3である。糸状菌宿主細胞において使用するための選択可能なマーカーは、以下の:amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オリチニン・カルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノチトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5'-ホスフェートデカルボキシラーゼ),sC(硫酸アデニストランスフェラーゼ)、trpC(アントラニレート・シンターゼ)、及びグルホシネート抵抗性マーカー、並びに他の種由来の等価物を含む群から選ばれてもよい。アスペルギルス細胞において使用するのに好ましいものは、アスペルギルス・ニジュラス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス オリゼ(Aspergillus Oryzae)のamdS及びpyrGマーカーであり、そしてストレプトマイシス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbarマーカーである。さらに、選別は、例えば、WO91/17243に記載されるコトランスフォーメーションにより達成され得る。ここで選択可能なマーカーは別々のベクター上に存在する。
【0094】
本発明のペプチドをコードする核酸配列をライゲーションするために使用される方法、プロモーター及びターミネーター、並びにそれらを複製に必須の情報を含む適切なベクターに挿入することは、当業者に周知である(例えば、Sambrookら、前掲)。
【0095】
発現ベクターが導入された宿主細胞は、本発明のペプチドを産生できる任意の細胞であり、そして真核細胞、例えば無脊椎(昆虫)細胞又は脊椎細胞、例えば、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞又は哺乳動物細胞、特に昆虫および哺乳動物細胞でありうる。適切な哺乳動物細胞株の例は、COS(例えばATCC CRL1650)、BHK(例えば、ATCC CRL1632、ATCC CCL10)又はCHO(例えば、ATCC CCL 61)細胞株である。
【0096】
哺乳動物細胞をトランスフェクションする方法、及び細胞中に導入されたDNA配列を発現する方法は、当該技術分野に既知の任意の方法でありうる(例えば、MANIATIS, T., E. F. FRITSCH及びJ. SAMBROOK, 1982 Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY.を参照のこと)。
【0097】
宿主細胞は、例えば、原核細胞などの単細胞病原体であってもよいし、又は例えば、真核細胞などの非単細胞病原体であってもよい。有用な単細胞は、細菌細胞、例えばグラム陽性細菌、例えば非限定的に、バチルス細胞、例えばバチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サークランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びバチルス・チューリギエンシス(Bacillus thuringiensis);或いはストレプトマイシス細胞、例えばストレプトマイシス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトマイシス・ムリヌス(Streptomyces murinus)、或いはグラム陰性細菌、例えば、大腸菌(E. coli)及びシュードモナスspである。細菌宿主細胞の形質転換は、例えば、プロトプラスト形質転換により、コンピテント細胞の使用により、電気穿孔により、又はコンジュゲーションにより行われてもよい。
【0098】
宿主細胞は、真菌細胞であってもよい。本明細書に使用される「真菌」として、アスコミコタ門(phyla Ascomycota)、バシジオミコタ門(phyla Basidiomycota)、シトリジオミコタ門(phyla Chytridiomycota)、及びザイゴミコタ門(Zygomycota)、並びにオオミコタ門(phyla Oomycota)及び全ての分生子形成菌が挙げられる。アスコミコタ門の代表的な属は、ニューロスポラ(Neurospora)、ユーペニシリウム(Eupenicillium)(=ペニシリウム)、エメリセラ(Emericella)(=アスペルギルス(Aspergillus))、ユーロチウム(Eurotium)(=アスペルギルス(Aspergillus))、及び上記真性酵母が挙げられる。菌類宿主細胞は、酵母細胞であってもよい。本明細書に使用される「酵母」には、子嚢胞子形成酵母(ascosporogenous yeast)(エンドミケス目(Endomyoetales))、担子胞子形成酵母(basidiosporogenous yeast)及び不完全菌類(Fungi Imperfecti)(ブラストミセテス(Blastomycetes))に属する酵母が含まれる。細胞の培養に用いる培地は、哺乳動物細胞を生育するのに好適な通常の培地、例えば適当な添加物を含有する血清含有培地若しくは無血清培地、又は昆虫細胞、酵母細胞、若しくは真菌細胞を生育するのに好適な培地であってよい。好適な培地は、製造業者から入手可能であり、または公表されている配合表(例えば、American Type Culture CoIlectionのカタログ)に従って調製できる。
【0099】
次に、細胞により産生される本発明のペプチドは、慣用方法により培養培地から回収することができる。当該慣用方法は、例えば、遠心、ろ過、により培地から宿主細胞を分離し、上清又はろ液のタンパク質成分を硫酸アンモニウムなどの塩を用いて沈殿させることにより培地から宿主細胞を分離すること、種々のクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなど)によって精製することを含む。
【0100】
こうして、本発明は、以下の
(a) 当該ペプチドをコードする核酸配列を宿主細胞に誘導し、
(b) 当該宿主細胞を培養し、そして
(c) 当該培養物から当該ペプチドを単離する
を含むか、或いは
(a) 当該ペプチドをコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞を、当該ペプチドの産生を許容する条件下で培養し、そして
(b) 当該ペプチドを培養物から単離する
を含む組換えDNA技術を用いて、本発明に従ったペプチドを製造する方法に関する。
【0101】
使用
本発明は、特に、上又は以下に記載される病気、障害又は疾患のうちの1以上と組み合わせて使用する医薬において使用するための本発明に記載されるペプチドに関する。
【0102】
1の実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織の病気を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための、本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関する。当該臓器は、非限定的に、腎臓、肝臓、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨、肺、気道、脾臓、外分泌腺、膀胱、内分泌腺、生殖臓器、例えば卵管、眼、耳、脈管系、胃腸管、例えば小腸、結腸、直腸、及び肛門管及び前立腺からなる群から選ばれうる。
【0103】
上に記載される場合、本発明のペプチドは、α-MSHに比べて、高い抗炎症効果及び虚血状態を予防する高い能力を示す。
【0104】
こうして、本発明は、1以上の臓器の組織において病気を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該病気は、虚血又は炎症状態である。当該病気は、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器の障害のため生じる可能性がある。
【0105】
本明細書及び特許請求の範囲では、「治療」という用語は、一般的に、本文がこの解釈を特異的に除外しない限りは、現存する病気の治療、並びにそのような病気の予防(予防的処置)を含む。
【0106】
最も広い概念として、本発明は、臓器又は組織の通常の機能が虚血又は炎症のために変化している任意の状態に関する。傷害は、急性又は慢性傷害を含みうる。慢性傷害は、臓器又は組織の完全又は部分的に回復している間に次々に行われる繰り返しの傷害の状態を含む。
【0107】
虚血
本明細書及び特許請求の範囲では、虚血は、1以上の臓器への血流の低下として定義されて、酸素のデリバリーの低下及び/又は組織による利用の低下をもたらす。虚血は、脳、心臓、四肢、腎臓、脾臓、肝臓、腸、胃、肺、目、皮膚、筋肉、膵臓、内分泌臓器などを含む1以上の臓器(非限定的なリスト)で生じうる。
【0108】
虚血は、動脈血供給の低下/完全な停止により、複数の組織反応、例えば好中球の集積、他の炎症応答及び細胞死を誘導する。虚血は、主に手術そして次に他の重篤な疾患に付随して複数の疾患に関与する。虚血の結果として生じる多くの細胞/組織/臓器の機能障害又は破綻を抑制又は予防できる化合物を同定することは、かなり利益がある。
【0109】
治療される状態は、動脈狭窄又は他の任意の完全又は部分的な血液供給の制限などにおける組織の虚血のため生じ得るか、又は当該虚血により引き起こされる。虚血は、疾患の重篤度に依存して急性であるか又は慢性的であることもあり、そしてさらに当該状態は、可逆的であるか又は不可逆的であることもある。可逆的状態の例は、外科又は他の治療介入の間に生じる血圧の低下のため生じることもあり、臓器の血液灌流に影響する。従って、治療される状態は、腸、心臓、腎臓又は任意のほかの臓器への全身血流に影響しうる低血圧などの全身血流の任意の低下であってもよい。
【0110】
一の実施態様では、本発明は、虚血の治療のための医薬組成物の製造のための本発明に記載されるペプチドの使用に関し、ここで当該状態は、急性、亜急性、又は慢性虚血により引き起こされる。
【0111】
臓器又は四肢又は組織の急性、亜急性、又は慢性虚血は、多様な疾患により引き起こされうる。当該虚血として、(非限定的なリストとして)、血栓症を伴うアテローム性の疾患、任意の臓器、血管又は心臓の塞栓症、血管攣縮、大動脈瘤又は他の臓器の動脈瘤、胸郭又は腹腔或いは解離性大動脈瘤、心疾患から生じる低血圧、全身性の疾患、例えば感染症又はアレルギー反応から生じる低血圧症、1以上の毒性化合物又は毒素又は薬剤のため生じる低血圧症が挙げられる。
【0112】
第二実施態様では、本発明は虚血の治療用の医薬組成物の製造のための本発明に記載されるペプチドの使用であって、当該状態が、二次虚血により引き起こされる、使用に関する。
【0113】
疾患又は病気に二次的な虚血は、以下の:糖尿病、高脂血症、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、高安症候群、側頭動脈炎、皮膚粘膜リンパ節症候群(皮膚粘膜リンパ節症候群)、心血管梅毒、結合組織障害、例えばレイノー病、有痛性青股腫、血管外傷、例えば、カニューレ挿入又は外科手術又は臓器移植などの医原外傷から選ばれる疾患及び状態の1以上において観察されうる。さらに、上記リストは、1以上の臓器の手術、1以上の臓器の移植、外科的挿入移植、デバイス、グラフト、プロテーゼ又は他の生医学的化合物又は装置の移植により引き起こされる虚血を含む。
【0114】
第三実施例では、本発明は、前記状態が肺血製ショック又は全身性低血圧に付随する状態のため生じる虚血により引き起こされる、本発明に記載されるペプチドの使用に関する。
【0115】
炎症状態
本文脈中の「炎症状態」という用語は、特異的Tリンパ球又は抗体と抗原との反応などのメカニズムが、炎症細胞のリクルート及び内在性メディエーター化学物質を引き起こす状態を意味する。幾つかの場合、臓器又は組織の通常の機能は、血管透過性における増加により、及び/又は内臓平滑筋の収縮により変更されよう。このような炎症状態は、炎症疾患を生じさせうる。
【0116】
一の実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織における状態を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該状態は、炎症状態である。
【0117】
炎症状態は、(非限定的なリストとして):関節炎、(例えば、関節炎に付随する疾患)、骨関節炎、関節リウマチ;脊椎関節症(例えば、強直性脊椎塩)、反応性関節炎(例えば、リウマチ熱を伴う関節炎)、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、及びライター病を含む炎症性疾患により引き起こされうる。さらに、炎症性疾患として、結合組織障害、例えば全身性エリテマトーデス、ポリ筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合性結合組織病、サルコイドーシス及び原発性シェーグレン症候群、例えば乾性角結膜炎、リウマチ性多発筋痛症、及び他のタイプの血管炎、結晶析出疾患(例えば痛風)、ピロリン酸関節症、急性石灰沈着性関節周囲炎が挙げられる。さらに、炎症疾患として、若年性関節炎(スティル病)、乾癬、骨関節炎、過可動性に付随する骨関節炎、先天性異形成、大腿骨頭滑り症、ペルテス病、関節内骨折、半月板切除術、肥満、反復性転位、反復性作用、血症析出疾患及び軟骨の代謝異常、例えばピロリン酸関節症、オクロノーシス、ヘモクロマトーシス、無血管性壊死、例えば鎌状赤血球病、コルチコイド又は他の薬剤での治療、潜函病、敗血性又は感染性関節炎(例えば、結核性関節炎、髄膜炎菌性関節炎、淋菌性関節炎、サルモネラ関節炎)、感染性心内膜炎 (例えば、緑連菌、大便腸球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ヒストプラズマ、ブルセラ、カンジダ及びアスペルゲルス種及びコクシエラ・ブルネッティにより誘発された心内膜炎)、ウイルス性関節炎 (例えば、風疹、流行性耳下腺炎、B型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス又はパルボウイルスでの感染)、又は反復性関節血症が挙げられる。さらに 炎症性疾患として、ライム病、梅毒、リケッチア性及びマイコバクテリア感染症、心筋、ウイルス性又は原生動物の感染などのスピロヘータ疾患を含む細菌種での感染のため生じる感染性血管炎などの血管炎が挙げられる。さらに、炎症疾患として、非感染性血管炎、例えば、高安動脈炎、巨大細胞動脈炎(側頭動脈炎及びリウマチ性多発筋痛症)、バージャー病、結節性多発動脈炎、顕微鏡の顕微鏡的多発性動脈炎、ウェグナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、全身性ループス エリテマトーデスを含む結合組織疾患に続発する血管炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合型結合組織病、サルコイドーシス 及び原発性シェーグレン症候群が挙げられる。さらに炎症性疾患は、関節リウマチに続発する血管炎を含む。
【0118】
さらに、炎症性疾患として、感覚過敏に続発する非-感染性血管炎及び白血球破砕性血管炎、例えば血清病、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、薬剤誘導性血管炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、ハイポコンプレンテミア(hypocomplentaemia)、他の種類の悪性度に付随する血管炎、炎症性腸疾患及び原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群が挙げられる。
【0119】
さらに、炎症性疾患は、子供における関節炎の全ての種類、例えば、若年性慢性関節炎 、例えばスティル病、若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎を含む。
【0120】
さらに、炎症性疾患として、上部及び下部気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性及び非アレルギー性喘息、アレルギー疾患、アレルギー性及び非アレルギー性結膜炎が挙げられる。さらに、炎症性疾患として、アレルギー性及び非アレルギー性 皮膚炎も挙げられる。
【0121】
さらに炎症性疾患として、析出性疾患の全ての種類、例えば痛風、ピロリン酸関節症及び急性石灰沈着性関節周囲炎が挙げられる。
【0122】
さらに炎症性疾患として、腰痛を引き起こす全ての種類の炎症状態、敗血性椎間板炎、結核、悪性悪性腫瘍(例えば、転移、骨髄腫など)、脊髄腫瘍、強直性関節炎、急性椎間板脱出、慢性椎間板脱出/骨関節炎、骨粗鬆症、及び骨軟化症が挙げられる。パジェット病、副甲状腺機能亢進、腎性骨異栄養症、脊椎すべり症、脊髄狭窄、先天性異常及び線維筋痛症が挙げられる。
【0123】
さらに、炎症疾患は、全ての種類の軟組織リウマチ、例えば滑液包炎、腱鞘炎又は石灰沈着性腱鞘炎、腱付着部炎、神経圧迫、関節周囲炎又は関節包炎、筋張力及び筋肉機能障害が挙げられる。
【0124】
さらに炎症性疾患として、胃腸管系の炎症性疾患(例えば、全ての種類の口内炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡及び良性粘膜類天疱瘡)、唾液腺疾患(例えば、サルコイドーシス、唾液腺管閉塞及びシェーグレン症候群)、食道の炎症(例えば、胃-食道逆流又はカンジダ種、単純ヘルペス及びサイトメガロウイルスのため生じる)、胃の炎症性疾患(例えば、急性及び慢性胃炎、ヘリコバクター・ピロリ(helicobacter pylori)感染症及びメントリアー病)、小腸の炎症(例えば、セリアック病、グルテン感受性腸疾患、疱疹状皮膚炎、熱帯性スプルー、ウィップル病、照射腸炎、全身性アミロイドーシス、結合組織障害、例えば全身性エリテマトーデス、多発筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、混合型結合組織病及びサルコイドーシス)、好酸球性胃腸炎、腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、結腸の憩室性疾患、及び過敏性腸症候群が挙げられる。
【0125】
好ましい実施態様では、本発明は、哺乳動物の1以上の臓器の組織において病気の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関し、ここで当該病気は、肺炎症、関節炎、皮膚炎、膵炎及び炎症性腸疾患から選ばれる炎症性状態である。
【0126】
薬剤誘導性細胞、組織及び臓器不全
1の実施態様では、本発明は、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器不全の治療又は予防のための医薬組成物の製造のための本発明に記載される1以上のペプチドの使用に関する。
【0127】
本明細書及び特許請求の範囲において、「薬剤誘導性の細胞、組織及び臓器不全」は、医薬品により誘導される細胞又は組織の機能及び/又は形態の変化として定義される。当該医薬品としては非限定的に、シスプラチン、カルボプラチン、ダカルベジン(dacarbezine)、プロカルバジン、アルトレタミン、セムスチン、ロムスチン、カルムスチン、ブスルファン、チオテパ、メルファラン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メクロレタミン、アザシチジン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、アロプリノール、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン (アドリアマイシン)、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、マイトマイシン、パクリタキセル、プリカマイシン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、アマサクリン(amasacrine)、アスパラギナーゼ、ヒドロキシ尿素、ミチタン(mititane)、ミトキサントロンを含む癌化学治療薬; ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン及びニチルマイシン(nitilmicin)を含むアミノグリコシド類などの抗生物質;免疫抑制化合物、例えばシクロスポリン、三環系抗うつ薬、リチウム塩、プレニラミン及びフェノチジン誘導体が挙げられる。
【0128】
細胞、組織又は臓器の通常機能が変化される状態としては、虚血、急性及び/又は慢性炎症、アレルギー、リューマチ様疾患、ウイルス、心筋、細菌感染、プリオン及び他の微生物及び当該技術分野に既知の病原体を含む感染、薬剤誘導性毒性含む全ての形態の毒性反応、並びに急性及び慢性傷害が挙げられる。慢性傷害としては、臓器又は組織機能の完全又は部分的な回復の期間で次々生じる繰り返しの傷害状態が挙げられる。細胞、組織又は臓器の通常機能が変化される状態は、1以上の臓器又は他の移植用装置の移植に伴う傷害を含み、そして本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考慮される。臓器は、自分自身のもの、その動物自身のもの、又は他の人又は動物のものでありうる。このことは、臓器移植、骨移植、軟組織移植(シリコーン移植)金属およびプラスチック移植、又は他の医療用の移植可能な装置を含む。個人は、ヒト並びに他の哺乳動物を表す。
【0129】
治療される状態は、癌により引き起こされるか、又は肺、気管支、上気道、及び/又は心臓及び/又は腎臓及び/又は胃腸系の臓器に影響を与える前癌障害、例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ白血病、ホジキン病、リンパ肉腫、骨髄腫、任意の臓器の転移癌腫により引き起こされ得る。本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考えられる。
【0130】
さらに、治療される状態は、糖尿病、LDL-コレステロールの絶食レベルが増加した状態、LDL-コレステロール及びトリグリセリドの絶食レベルが併せて増加した状態、トリグリセリドの絶食レベルが増加した状態、HDL-コレステロールの絶食レベルが増加した状態、後腹膜線維症、エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、関節リウマチ、アナフィラキシー、血清病、溶血性貧血、及びアレルギー性無顆粒球症から選ばれる任意の疾患により引き起こされうる。本発明のペプチドが、当該状態の治療又は予防に有用であることが考えられる。
【0131】
多くの感染は、組織への影響を有し、そして通常の機能を乱して、低いパフォーマンスをもたらし、これは、本発明のペプチドの有効用量の投与により改善されうる。このような感染としては、プロトゾア、ウイルス、細菌及び真菌による感染を含み、そしてAIDS、細菌性敗血症、全身性心筋症、リケッチア病、毒素性ショック症候群、伝染性単核球症、クラミジア・トラコマチス(chlamydia thrachomatis)、クラミジア・シッタシ(chlamydia psittaci)、サイトメガロウイルス感染症、カンピロバクター、サルモネラ、インフルエンザ、灰白髄炎、トキソプラズマ症、ラッサ熱、黄熱病、ビルハルツ住血吸虫症、コリバクテリア、エンテロコッカス、プレテウス(preteus)、クレブシエラ(klebsiella)、シュードモナス、スタフィロココッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミジス(staphylococcus epidermidis)、カンジダ・アルビカンス、結核、流行性耳下腺炎、伝染性単核球症、肝炎及びコックサッキーウイルスなどの状態を含む。
【0132】
治療される状態は、1以上の毒性物質及び/又は薬剤に関する化学傷害に関連してもよい。このような薬剤として、三環系抗うつ薬、リチウム塩、プレニラミン、フェノチジン誘導体、癌化学療法薬、例えばシスプラチン、カルボプラチン、ダカルバジン(dacarbezine)、プロカルバジン、アルトレタミン、セムスチン、ロムスチン、カルムスチン、ブスルファン、チオテパ、メルファラン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メクロレタミン、アザシチジン、クラドリビン、シタラビン(cytorabine)、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、アロプリノール、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン (アドリアマイシン)、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン、マイトマイシン、パクリタキセル、プリカマイシン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、アマサクリン、アスパラギナーゼ、ヒドロキシ尿素、ミチタン、ミトキサントロン; 抗生物質、例えば、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン及びニチルマイシン(nitilmicin)を含むアミノグリコシドなど;並びに免疫抑制化合物、例えばシクロスポリンが挙げられる。電磁放射を含む物理的傷害は、損傷を引き起こし得る。当該損傷は、本発明に従ったα-MSHアナログの有効量を投与することにより軽減されうる。
【0133】
本発明に従って治療される状態として、さらに結合組織疾患、例えば強皮症、全身性エリテマトーデス又は神経筋障害、例えばデュシェンヌ型の進行性筋ジストロフィー、フリードリッヒ運動失調、及び筋緊張性ジストロフィーが挙げられうる。当該様態は、例えば、哺乳動物の腸の組織に関連しうる。
【0134】
本発明はまた、上記状態が、心筋虚血、アンギナ、心膜炎、心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、粘液水腫、及び心内膜炎である、本発明に記載されるペプチドの使用に関する。
【0135】
1の実施態様では、本発明は、当該状態が心臓不整脈と関連する本発明に従ったペプチドの使用に関する。
【0136】
治療方法
本発明は、治療を必要とする個々の哺乳動物の1以上の臓器の組織の状態を治療又は予防する方法であって、当該方法は、本発明に記載される1以上のペプチドの有効量を投与することを含む、前記方法に関する。当該状態は、虚血又は炎症状態であり、及び/又は毒素又は薬剤治療の毒性効果から生じる。
【0137】
本発明の治療方法は、任意の臓器又は血管の移植により引き起こされるか又はこれらに付随する状態に関して特に利点を有し、例えば組織片対宿主反応の予防を含む。このような状態では、全臓器は、栄養、代謝、灌流などについて全ての変化に対しかなり感受性であり、そして本発明に記載される治療は、状態を安定化し、そして臓器の機能を圧迫する任意の状況に対して組織をより抵抗性にする。本発明に記載される当該方法は、本発明の有効量のペプチドを、受容者に移植する間、移植された臓器に対して投与することを含み、本発明のペプチドの有効量を移植培地に加えることを含む。
【0138】
さらに、本出願は、心筋虚血などの重篤な疾患において、本発明に記載されるα-MSHアナログでの治療は、死亡及び臓器不全を劇的に予防するという証拠を提供する。
【0139】
最も一般的な心臓状態のうちの1は、間欠的狭心症又は胸部疼痛であり、ここで本発明に従った治療は、特に関心が高い。狭心症に関する状態としては、不安定狭心症、安定狭心症及びプリンツメタル型狭心症が挙げられる。
【0140】
さらなる態様では、当該予防及び治療は、心膜炎、心筋梗塞、心筋虚血、心筋炎、筋脂肪変性(myxodemia)、及び心内膜炎によりひきおこされる状況において利用されうる。
【0141】
治療される状態は、原発性疾患又は対象の別の状態に対して続発性疾患のいずれかとして、心臓不整脈と関連しうる。不整脈の種々の原因の例として、急性感染症、特に肺に罹患する感染症、肺塞栓症、低血圧、ショック、無酸素血症又は貧血が挙げられ、これらは心筋虚血に関与し、そうして不整脈を引き起こす。不整脈は、循環障害を悪化させ、それによりひどい自己永続的なサイクルを作り上げてしまう。
【0142】
本発明に記載される治療は、不整脈の発達の閾値を増加させ、そうして不整脈の発達を予防するということが信じられている。この効果は、伝導系に直接的に作用するか、又は不整脈の原因を模倣するか又は原因そのものである状態に作用することにより間接的に作用してもよい。
【0143】
本方法に従って軽減され得る症候群又は不整脈は、原発性であってもよいし、又は続発性であってもよく、そして心室又は上心室頻脈性不整脈、房室ブロック、洞結節病、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、レングレー病(Lenegres Disease), レブ病、心房と心室の間における異常な心筋の結合を含む症候群から選ばれうる。
【0144】
不整脈を抑制する目的で行われる抗不整脈治療は、常に、新たな不整脈を作り出す危険性を伴う。不整脈は、薬剤の過用量のため生じる毒性反応として生じる可能性がある。しかしながら、特に、クラスIA薬剤として知られている薬剤群を用いた治療の間、非用量依存性の副作用-特異体質反応-として不整脈が生じ、治療範囲内の薬剤濃度で発達させる可能性がある。さらなる実施態様では、1以上の不整脈薬剤、例えば、ジギタリス、キニジン、ジソピラミド、アデノシン、アプリンジン、フレカイニド、アミオダロン、ソタロール、メキシレチン、β遮断薬、及びベラパミルにより引き起こされ得る。
【0145】
本発明に従ったα-MSHアナログでの治療は、他の抗不整脈薬での併用療法のため生じる不整脈を発達させるリスクを低減させる。
【0146】
本発明のさらなる態様では、当該状態は、心電図記録法(ECG)により計測される1以上の異常により特徴づけられうる。ECGでの異常は、P波、STセグメント、T波、QRSコンプレックス、Q波、δ波、及びU波から選択される構成の1以上の変化から選択される。
【0147】
本発明に記載されるペプチドの有効量の投与により軽減され得る他の状態は、臓器(例えば、心臓)についての電解質撹乱の効果並びに撹乱そのものであり、例えば個別のイオンの相対濃度の異常を含む。この様な状態は、カリウム、カルシウム、ナトリウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる電解質の1以上の異常血清濃度を含む。
【0148】
本発明によると、影響され得る組織は、臓器に存在する1以上の細胞型を含み、そして上皮細胞、マクロファージ、細網内皮系単球、好中球顆粒球、好酸球顆粒球、好塩基球顆粒球、T細胞、B細胞、マスト細胞、及び樹状細胞から選ばれてもよい。特に、T細胞、B細胞及びマスト細胞は、この点で特に関心が高い。
【0149】
本発明の好ましい態様は、予防又は治療であって、本発明に従ったα-MSHアナログの用量が、当該状態又は当該状態の任意の症状の進行を予防するために投与される、前記予防又は治療に関する。
【0150】
予防又は予防的処置は、例えば、冠動脈狭窄を患う患者において心発作を予防するための、又は例えば外科手術の際の治療でありうる。予防処理は、限られた期間の間であってもよい。当業者は、実際の状況に基いて、特異的治療スケジュールを評価することができよう。好ましい実施態様では、治療又は予防は、冠動脈狭窄の虚血の際の梗塞サイズを低減することができる。このような梗塞サイズは、未処理の対象と比べて20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%低減する可能性がある。
【0151】
従って、本発明に記載されるα-MSHアナログの用量は、病気又は病気の任意の症状の発達を予防するために、予防的に投与される。
【0152】
本発明に従ったα-MSHアナログの用量は、1回用量、習慣的又は継続投与として、或いは連続投与として投与されてもよい。
【0153】
投与は、全身投与、局所投与であってもよく、例えば、薬剤標的系の使用、カテーテル及びインプラントの使用、経口投与、非経口投与、例えば皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、くも膜下内投与、肺投与、例えば吸入、局所投与、経粘膜投与、経皮投与を含む。
【0154】
従って、投与は、全身投与;組織又は関節を含む体腔中に注射し;組織又は体腔にインプラントし;皮膚又は任意の胃腸管表面へと、或いは体腔のライニングを含む粘膜表面へと局所的に適用することを含む。
【0155】
上の記載から明らかなように、任意の関連する投与経路により本明細書に開示されるいずれかの状態を治療又は予防するための医薬の製造のための、本発明に従ったペプチドの使用に関する。
【0156】
医薬製剤及び組成物
本発明は、本発明に従った1以上のペプチドを含む医薬組成物にも関する。当該医薬組成物は、さらに1以上の医薬担体を含んでもよい。さらに、当該医薬組成物は、さらに1以上の医薬として許容される賦形剤を含んでもよい。
【0157】
本発明に従った医薬組成物は、非限定的に非経口、経口、局所、経粘膜又は経皮組成物でありうる。
【0158】
以下の実施例では、本発明に従った1以上のペプチドを含む適切な組成物が与えられる。対象(動物又はヒト)への投与のために、当該物質が好ましくは当該物質及び場合により1以上の医薬として許容される賦形剤を含む医薬組成物へと剤形される。
【0159】
組成物は、例えば、固体、半固体、又は液体組成物、例えば、非限定的に、生体吸収可能なパッチ、水薬、包帯材、ハイドロゲル包帯材、ハイドロコロイド包帯材、フィルム、泡、シート、包帯、硬膏剤、デリバリー装置、移植片、粉末、顆粒、顆粒化する、カプセル、アガロース又はキトサン・ビーズ、錠剤、ピル、ペレット、マイクロカプセル、微粒子、ナノ粒子、噴霧、エアロゾル、吸入装置、ゲル、ハイドロゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ソープ、坐薬、バジトリー(vagitory)、歯磨き粉、溶液、分散、懸濁液、乳濁液、混合物、ローション、口腔洗浄薬、シャンプー、浣腸;例えば2個の別個の容器を含むキット、ここで第一コンテナが本発明に従ったペプチドを含み、そして第二容器が、使用前に第一容器へと加えることを意図された適切な溶媒を含み、すぐ使える組成物を得ることができるキット、及び他の適切な形態、例えば移植片又は移植片の被膜、又はインプラント又は移植と組み合わせて使用するのに適した形態などの形態である。
【0160】
組成物は、慣用の医薬慣例に従って剤形されてもよい。例えば、Remington: 「The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA, 2000 ISBN 0-912734-04-3 及び「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology", Swarbrick, J. & J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988 ISBN 0-8247- 2800-9.を参照のこと。
【0161】
活性物質を含む医薬組成物は、薬剤デリバリーシステムとして機能する。本文脈では、用語「薬剤デリバリーシステム」は、投与の際に活性物質をヒト又は動物の体に提示する医薬組成物(医薬製剤又は薬剤形態)を指す。こうして、「薬剤デリバリーシステム」という用語は、例えば、クリーム、軟膏、液体、粉末、錠剤などの通常の医薬組成物、並びにより洗練された製剤、例えばスプレー、プラスター、包帯材、包帯、デバイスなどを包含する。
【0162】
上で記載される様に、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬として又は化粧品として許容される賦形剤を含んでもよい。
【0163】
本発明に従って使用するための組成物中の医薬として許容される賦形剤の選択、並びにその最適濃度は、一般的に予想できず、そしてその実験的決定に基いて決定されなければならない。医薬として許容される賦形剤が、医薬組成物中で使用するのに適しているかは、どの種類の投与形態が選択されるかに一般的に依存する。しかしながら、医薬製剤の技術分野で当業者は、指針、例えばRemington: 「The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA, 2000 ISBN 0-912734-04-3を見つけることができる。
【0164】
医薬として許容される賦形剤は、当該組成物が投与される対象にとって実質的に害のない物質である。この様な賦形剤は、通常、国立薬品局により与えられる要件を満たす。公的な薬局方、例えば、英国薬局方、米国薬局方、及び欧州薬局方は、周知の医薬として許容される賦形剤についての基準を定めた。
【0165】
本発明に従って使用するための関連する医薬組成物についての総説を以下に与える。当該総説は、投与の特定経路に基いている。しかしながら、医薬として許容される賦形剤が異なる投与形態又は組成物中で使用されうる場合、特定の医薬として許容される賦形剤の適用は、特定の薬剤形態又は特定の賦形剤の機能に限定されないということが認められる。
【0166】
非経口組成物
全身適用では、本発明に記載される組成物は、慣用的に非毒性の医薬として許容される担体及び賦形剤であって、マイクロスフィア及びリポソームを含むものを含みうる。
【0167】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、及び液体組成物を含む。特に関係のある組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、移植錠剤及びインプラントが挙げられる。
【0168】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成薬、希釈液、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤が挙げられうる。様々な薬剤の例として、以下を参照のこと。
【0169】
局所、経粘膜及び経皮組成物
粘膜又は皮膚について適用するために、本発明に従って使用するための組成物は、慣用的に、非毒性医薬として許容される担体及び賦形剤、例えばマイクロスフィア及びリポソームを含みうる。
【0170】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、及び液体組成物が挙げられる。特に関係のある組成物は、例えば、ペースト、軟膏、親水性軟膏、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、溶液、乳濁液、懸濁液、ローション、リニメント剤、リソリブレット(resoriblets)、坐薬、浣腸、腟坐薬、成型ペッサリー、腟坐薬、腟カプセル、腟錠剤、シャンプー、ゼリー、ソープ、スティック、スプレー、粉末、フィルム、泡、パッド、スポンジ (例えば、コラーゲンスポンジ)、パッド、包帯剤(例えば、吸着性創傷包帯剤)、ドレンチ、包帯、硬膏剤及び経皮デリバリーシステムが挙げられる。他の薬剤の例については以下を参照のこと。
【0171】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存料、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐薬基剤、浸透エンハンサー、芳香剤、皮膚保護剤、希釈液、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤が挙げられる。
【0172】
経口組成物
粘膜又は皮膚への適用のために、本発明に従って使用するための組成物は、マイクロスフィア及びリポソームを含む慣用的に非毒性の医薬として許容される担体及び賦形剤を含みうる。
【0173】
本発明に従って使用するための組成物として、全ての種類の固体、半固体、そして液体組成物を含む。特定の関連のある組成物は、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、未被膜錠剤、過異変放出錠剤、胃腸抵抗性錠剤、口腔内崩壊錠、発泡錠、咀嚼錠、軟カプセル、硬カプセル、改変放出カプセル、胃抵抗性カプセル、未被覆顆粒、発泡顆粒、経口使用するための液体の調製用顆粒、被膜顆粒、胃抵抗性顆粒、改変放出顆粒、経口投与用粉末及び経口使用用の液体の製造のための粉末が挙げられる。
【0174】
医薬として許容される賦形剤として、溶媒、緩衝剤、保存料、湿潤剤、キレート薬、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、被膜薬剤及び湿潤剤が挙げられる。異なる薬剤の例として、以下を参照のこと。
【0175】
様々な薬剤の例
溶媒の例は、非限定的に、水、アルコール、植物油又は魚油(例えば、食用油、例えばアーモンド油、ヒマシ油、カカオバター、やし油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ケシの実油、アブラナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、及び茶油)、ミネラルオイル、脂肪油、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、液体ポリアルキルシロキサン及びそれらの混合物である。
【0176】
緩衝薬の例は、非限定的に、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素、ジエチルアミンなどである。
【0177】
組成物中で使用するための保存剤の例は、非限定的に、パラベン、例えば、メチル、エチル、プロピルp-ヒドロキシ安息香酸、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、メチル安息香酸、フェノキシエタノール、ブロノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバマート、EDTA、ベンズアルコニウム・クロリド、及びベンジルアルコール、又は保存剤の混合物である。
【0178】
湿潤剤の例は、非限定的に、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、及びそれらの混合物である。
【0179】
キレート薬の例は、非限定的にEDTAナトリウム及びクエン酸である。
【0180】
抗酸化剤の例は、非限定的に、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン、及びこれらの混合物である。
【0181】
乳化剤の例は、非限定的に、天然ゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム;天然ホスファチド、例えば大豆レシチン;モノオレイン酸ソルビタン誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタン・エステル;モノグリセリド;脂肪アルコール;脂肪酸エステル(例えば脂肪酸トリグリセリド);及びそれらの混合物である。
【0182】
懸濁剤の例は、非限定的にセルロース及びセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アカシアゴム、アラビアゴム、トラガカントゴム、及びそれらの混合物である。
【0183】
ゲル基剤及び増粘剤の例は、非限定的に、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド性シリカ又はアルミニウム、亜鉛セッケン、グリセリン、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニル重合体、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、Carbopol(登録商標)、親水性重合体、例えばデンプン又はセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び他のセルロース誘導体、吸水性親水コロイド、カラギーナン、ヒアルロン酸 (例えば、場合により塩化ナトリウムを含むヒアルロン酸ゲル)、及びアルギン酸塩、例えばアルギン酸プロピレングリコールである。
【0184】
軟膏基剤の例は、非限定的に、蜜蝋、パラフィン、セタノール、セチルパルミチン酸、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸ソルビタンエステルと酸化エチレンとの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビタン(Tween)である。
【0185】
疎水性軟膏基材の例は、非限定的に、パラフィン、植物油、動物性脂肪、合成グリセリド、ワックス、ラノリン、及び液体ポリアルキルシロキサンである。
【0186】
親水性軟膏基剤の例は、非限定的に固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)である。
【0187】
粉末成分の例は、非限定的に、アルギン酸、コラーゲン、ラクトース、粉末であって、傷に適用された場合にゲルを形成できる(液体/傷からの浸出液を吸収する)成分である。
【0188】
希釈剤及び崩壊剤の例は、非限定的にラクトース、サッカロース、エムデックス(emdex)、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、デンプン及び微結晶セルロースである。
【0189】
結合薬の例は、非限定的に、サッカロース、ソルビトール、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールである。
【0190】
湿潤薬の例は、非限定的にラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80である。
【0191】
潤滑剤の例は、非限定的に、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化ケイ素、プレシロール及びポリエチレングリコールである。
【0192】
被膜薬剤の例は、非限定的に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポイビニルプロピリドン、エチルセルロース及びポリメチルアクリレートである。
座剤基材の例は、非限定的に、カカオ脂、アデプス・ソリダス(Adeps solidus)及びポリエチレングリコールである。
【0193】
α-MSHアナログは、医薬品の重量あたり0.001〜99%、一般的には0.01〜75%、より一般的に0.1〜20%、特に1〜15%、例えば1〜10%の量で医薬品中に存在する。
【0194】
用量は、治療される状態に左右される。個々の薬剤は、当業者に知られている用量で使用されうる。本発明に記載される1以上のペプチドの投与量が、1ng〜100mg/kg体重、一般的に1μg〜10mg/kg体重、より一般的に10μg〜1mg/kg体重、例えば50〜500μg/kg体重であることが意図される。
【0195】
さらなる態様では、本発明は、場合により医薬として許容される担体を伴って本発明に記載される1以上のペプチドを含む上記医薬組成物に関する。
【0196】
本発明に従った医薬組成物は、当業者に知られている慣用技術を用いることにより、そして慣用の医薬担体を伴って製造される。さらに、医薬組成物は、本明細書に記載される任意の使用に適した任意の形態であってもよい。
【0197】
本明細書に記載され、そして特許請求される発明は、本明細書に開示された具体的実施態様により範囲を制限されるべきではない。なぜなら、これらの実施態様は、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるからである。任意の同等の実施態様は、本発明の範囲内であることが意図される。さらに、本明細書に示されそして記載されている発明に加えて、本発明の様々な改変が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。この様な改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0198】
様々な参考文献が本明細書に引用される。この開示は、その全てを本明細書に援用される。
【0199】
この明細書を通して、「含む」という語句、又は「含んでいる」又は「含む」などの変化形は、記載された要素、整数又はステップ、或いは要素、整数又はステップの群を含めることを意図するが、任意のほかの要素、整数又はステップ、或いは要素、整数又はステップの群を除くことを意図しない。
【0200】
本発明の様々な態様、及びこれらの態様の具体的な実施態様についての上の記載について、1の態様及び/又は本発明の態様の1の実施態様と組み合わせて上に記載され、言及された任意の特性及び特徴は、記載された本発明の他のいくらか又は全ての態様の類似点により適用することが理解されるべきである。
【0201】
本発明は、以下に、非限定的な図面及び実施例により記載される。
【実施例】
【0202】
以下において、本発明のペプチドを試験する方法が、一般的に記載されている。試験されたペプチドについての結果は、実施例1〜7に与えられる。本方法の目的は、虚血、炎症又は薬剤の毒性効果の結果として生じる細胞/組織/臓器の機能障害を抑制又は予防する抗炎症効果及び能力について本発明のペプチドを試験することである。
【0203】
炎症応答又は慢性炎症における再燃は、細胞性メディエーター、例えば腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン(IL-1β、IL-8)、一酸化窒素(NO)、及び遊離の酸素ラジカルの産生により特徴付けられる。これらは、最終的に、全身の血管において細動脈の緊張の喪失を伴う広範囲の内皮損傷、毛細血管透過性、持続性高血圧及び臓器不全を誘導する。肺での臓器不全は、好中球及び好酸球を含む白血球の肺胞領域への集積を伴う。病原菌から放出されるリポ多糖(LPS)は、TNF-αを含む多くの炎症メディエーターを誘導することにより、感染に対する炎症応答に中心的な役割を果たす。TNF-α産生を抑制する能力を用いた治療は、その結果、顕著な抗炎症効果を有することが信じられている。本発明者は、多くのセットアップ(実施例1-3を参照)において炎症応答を産生する為にLPS刺激を用い、そして本発明に従ったペプチドの抗炎症効果についての主なマーカーは、TNF-α産生を抑制する能力である。
【0204】
動脈血供給の低減/完全な停止により誘導される虚血は、好中球の集積、他の炎症応答及び細胞死を含む複数の組織反応を誘導する。虚血/炎症の結果として生じる多くの細胞/組織/臓器の機能障害又は破壊を抑制又は予防できる化合物の同定はかなりの利益がある。発明者は、一時的な虚血について2つのモデルを使用する:1)ラットにおける心筋虚血再灌流モデル、当該モデルは、、急性心筋梗塞を発達させ、次に、線溶療法又は冠動脈血管形成術により達成されるように(実験例4)、血液供給の回復させることを模倣する。2)両側腎動脈狭窄、当該狭窄は、外科的大介入を受けている患者において見られる様に、腎臓血液供給の一時的な低下により誘導されるAFRに匹敵する急性腎不全(ARF)を誘導する(この例は、腹部大動脈瘤のための外科的介入でありうる)(実験例5)。
【0205】
腎毒性は、シスプラチン治療の周知の副作用である。必ずしもそうではないが、用量制限のある腎毒性はそれでも大部分の患者に影響を与え、そして糸球体ろ過率の有意な低下が治療の間に観察される。シスプラチンの腎毒性は、特に腎近位尿細管のS3セグメントにおける外側髄質におけるネフロン、並びにヘンレ係蹄の厚上行脚(thick ascending limb)におけるネフロンにおける直接的な細胞傷害性損傷として現れる。それゆえ、シスプラチン処理は、尿を希釈する能力の障害を含む尿細管再吸収の欠損を招く。シスプラチンで治療された患者の50%において、低マグネシウム血症が観察され、そしてこれは、おそらく、腎臓マグネシウム再吸収の欠損のために生じる。Mg補給が、シクロスポリンAの腎毒性作用に対する保護に決定的な因子であることが、近年の研究により示唆され、そしてMg欠損とシスプラチン誘導性の腎毒性との間の潜在的な反応が示唆されてきた。低マグネシウム血症を予防することを目的とした処置が、その結果、Mg補給の必要性を低下させるだけでなく、シスプラチンの腎毒性を低下させる有利な効果を有する。本発明に従ったペプチドのシスプラチン誘導性腎毒性についての効果は、実験例6で試験された。
【0206】
材料と方法
本発明のペプチドは、以下に記載される方法の試験化合物である。
【0207】
実験例1
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α産生の抑制
EDTA入りのVacutainer(登録商標)チューブ中に20mlのヒト血液を回収した。Ficoll-Paque Plus(Amershamの製品、71-7167-00 AD, 2002-06)を用いてPBMCを単離した。トリパンブルー溶液(Sigma)を用いてPBMCを計数し、そして10mMのHepes(Sigma)、2mMのL-グルタミン(Sigma)、0.1%のBSA(Sigma)及び50U/50μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を添加したRPMI1640(Applichem)中で5×105細胞/mlの濃度でインキュベートした。単離PBMCを、培地、10ngLPS/ml(Sigma)、及び試験化合物を入れた24ウェル平底プレート(Corning Incorporated)中で、加湿5%CO2、95%空気中でインキュベートした。18時間後、サンプルを遠心し、そして上清中のTNF-αを、Human Biotrak ELISA System(Amersham)からの腫瘍壊死因子α[(h)TNF-α]を用いて計測した。
【0208】
サンプルをドナーごとに以下のようにインキュベートした:
RPMI中のPBMC(時間対照)
10ngLPS/mlを伴うPBMC(ビヒクル)
PBMC、10ngLPS/mL、10-17Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-15Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-13Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-11Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-9Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
PBMC、10ngLPS/mL、10-7Mのα-MSH又はα-MSHアナログ
全てのサンプルを、最初のストック溶液から1.4×10-4M〜1.8×10-3Mで希釈する。
当該化合物の容器の表面への結合を保護するために、全ての溶液をBSA被膜容器中で取り扱う。
データを平均±SEで示す。LPS誘導性TNF-α遊離についての試験化合物の効果は、LPSビヒクル群におけるTNF-αの蓄積の割合として表現される。全ての比較は、スチューデントの対応のないt検定で分析した。確率水準(p)=0.05を有意差とした。
【0209】
実験例2
in vivoでのラットにおけるLPS誘導性TNFαの抑制
実験動物
雌Wistarラット(220〜240g)をCharles River, Sulzfeld, Germanyから購入し、そして12時間の明暗サイクル(午前6時から午後6時まで明るくする)で温度及び湿度が調節された動物室中(22〜24℃)(40〜70%)で飼育した。ラットを、140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%タンパク質(Altromin International, Lage, Germany)を含むげっ歯類の標準飼料で維持し、そして自由に水へとアクセスさせた。
【0210】
動物標本
イソフルラン-亜酸化窒素麻酔中に大腿動脈及び静脈を介して、腹部大動脈及び下大静脈中に、常設医療品質のTygonカテーテルを動物にインプラントした。設置の後に、動物を個別に7〜10日間、実験の日まで飼育した。
【0211】
実験プロトコル
実験前に、全てのラットを、それぞれ2回2時間トレーニングさせることにより実験に使用する梗塞ケージに順応させた。実験の日に、動物を拘束ケージに移し、そして150mMのグルコースを含むビヒクル溶液を静脈内に輸液を開始した。輸液速度は、実験を通して0.5ml/時であった。短い適応期間の後に、リポ多糖(LPS)の輸液を開始する。LPS(大腸菌セロタイプ0127 B8、L 3129、Sigma、St.Louis, USA)を4mg/kg体重の用量でi.v.輸液として1時間かけて与えた。0.3mlの動脈血試料を、LPS輸液開始後60、90、及び120分でとり、そして通常のドナーラットから直ぐにヘパリン化血と取り替えた。
【0212】
実験群:
LPS輸液に加えて、全てのラットを、以下の:
ビヒクル(0.5ml等張生理食塩水)
以下の用量:50μg/kg体重;200μg/kg体重又は1000μg/kg体重のうちの1の用量のα-MSH;
以下の用量:50μg/kg体重;200μg/kg体重又は1000μg/kg体重のうちの1の用量の試験化合物
のボーラス注射で処理する。
【0213】
血漿中のTNF-αの計測:
血液試料を予め凍結された、0.5mMのEDTA、pH7.4、及び20×106IU/mlアプロチニンを入れた試験管中に回収した。4℃で遠心した後に、血漿サンプルを予め凍結させた試験管に移し、そして-20℃でのちにTNF-αを計測するまで貯蔵した。血漿中のTNF-αは、ELISAにより決定される(Biotrak,Amersham, UK)。
【0214】
統計分析
結果を平均±SEとして示す。繰り返し計測についての2-ウェイANOVAを、群間の差について試験するために用いる。p<0.05の場合、対応するペプチド間の差は、対応のないt検定により評価され、有意差のレベルについてボンフェローニの補正を行った。
【0215】
実験例3
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球浸潤の抑制
M&B A/S, DK-8680 Ry, Denmarkから得た雄のスプラーグ-ドーリーラット(体重〜200g)を全ての実験に用いた。ラットを標準3型ケージにいれ、そして12時間の明暗サイクル(午前6時から午後6時まで明るくする)で温度及び湿度調節された動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した。食餌は、オートクレーブ済みのAltromin 1324特別処方(Altromin Denmark, Chr. Pedersen A/S, 4100 Ringsted, Denmarkにより販売される)であった。
【0216】
馴化後に、ラットをランダムに実験群に割り当て、そしてLPS誘導の開始時、及びLPS誘導後8時間でもう一度、試験化合物をI.V.で投与した。
【0217】
第3群のラットを0.1mlのヒポノルム/ドルミカムpr.で麻酔し、100gの試験化合物を投与した。投与後すぐに、ラットを吸入チャンバー内に配置し、ここでラットは噴霧上のLPS溶液に晒した。LPSの濃度は、1mg/mlである。投与時間は、15分である。ラットを試験物質を投与後24時間で安楽死させた。最後にラットはCO2/O2で安楽死させた。次に気管支洗浄を、6×2.5mlのPBSを右肺に入れ、そして取り出すことにより行う。胸骨と助骨を取り除いた後に、肺を胸腔中に留めて行う。左肺への接続を、この方法を行う間に結紮した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を4℃で10分間1000rpmで遠心する。上清を取り除いた後に、細胞ペレットを0.5mlPBS中に懸濁する。May-Gruwald Giemsa染色で染色された2個のBALFのスメアを各ラットから作成した。各ラットからのBALFを総細胞数の計測にかけ、そして白血球の百分率を計算する。
【0218】
実験群:
LPSの注入に加え、ラットを以下の:
ビヒクル(0.5ml等張生理食塩水)
α-MSH:200μg/kg/bw
α-MSHアナログ:200μg/kg/bw
のいずれかのボーラス注射で処理する。LPS吸入をされなかった時間対照群は、ビヒクルで処理される。
【0219】
統計
データは、平均±標準偏差として示される。分散の1ウェイ分析を行い、次にフィッシャーの最小有意差検定行うことにより、群間比較を行う。
【0220】
実験例4
in vivoにおけるLPS誘導性サイトカイン放出及びブタにおける肺高血圧の抑制
雌のランドレースブタ(Landrace pig)(〜30kg)を一晩絶食させたが、水は自由に与えた。次に、ブタに筋中でケタミン(10mg/kg)及びミダゾラム(0.25mg/kg)を前投与する。静脈内ケタミン(5mg/kg)で麻酔を誘導する。ブタに経口挿管し、そしてフェンタニル(60μg/kg/h)及びミダゾラム(6mg/kg/h)を連続静脈内輸液して麻酔を維持する。動物を、体積制御ベンチレーター(Servo 900ベンチレーター;Siemens Elema, Solna, Sweden)を用いて5cmH2Oの呼吸終末陽圧でベンチレートした。1回換気量を10〜15ml/kgに維持し、そして炭酸正常状態を維持するために(34〜45mmHgの範囲の二酸化炭素圧[PaCO2])、呼吸数を調節した(20〜25回の呼吸/分)。105mmHgを超える動脈酸素圧(PaO2)を達成するために空気中の酸素を用いて行った。1の動脈及び2の静脈シースを、輸液のために頚動脈及び対応する静脈に配置した。液体を満たしたカテーテルを通して血圧を計測し、血液サンプリング及び導入カテーテルに用いた。
【0221】
Swan-Ganzカテーテル(Edwards Lifescience Crop.,Irvine, CA)を右上大静脈を介して、肺動脈に挿入する。バルーンカテーテルの位置を、心臓の右側を通して肺動脈へと進める際のモニター上での特徴的な圧力追跡を観察することにより、並びにX線により測定した。別のカテーテル(5 French; St. Jude Medical Company, St. Paul, MN)を連続血圧モニタリング及び血液サンプリングのために左頚動脈中に挿入する。尿カテーテルを尿採取のために挿入する。心臓パフォーマンスをアッセイする際に、一時的ペースメーカーカテーテルを、静脈シースを通して右心房へと挿入して(X線ガイド)、心拍を標準化した。
【0222】
血行動態モニタリング
心臓血圧、心拍数(心電図)、及び肺動脈圧(PAP)の連続観察を行った。
【0223】
リポ多糖注入
大腸菌リポ多糖エンドトキシン(大腸菌、026:_6、バクトリポ多糖;Difco Laboratoies、Detroit、MI)を、全ての沈殿を溶解するために各実験の前に120分間生理食塩水中に溶解した。安定期間後に、リポ多糖の注入は、2.5μg/kg/hの割合でベースラインで開始し、そして徐々に30分間、15μg/kg/分に増加させた。この後に、150分間、2.5μg/hkg/hの割合で維持し、そしてその後に止めた。
【0224】
介入群
LPS注入を開始する直前に、対照群に介入群と等体積のビヒクルを与える。介入群に1回静脈内ボーラス注射として、α-MSHアナログを200μg/kgの用量で与える。
【0225】
サイトカイン
EDTA安定化血液から得られた新鮮凍結血漿サンプル(-80℃)を、製造説明書に従って、市販の酵素結合免疫吸着アッセイを用いることによりTNF-αの計測のために使用する。
【0226】
統計
データを平均±S.E.で表す。群間比較を、分散の1ウェイ分析の次にフィッシャーの最小有意差検定を行うことにより行なう。差は、0.05レベルで有意であるとした。
【0227】
実験例5
ラットの左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞のサイズの抑制
バリア-ブレッド(barrier-bred)及び特定病原菌除去ウィスターラット(250g)をCharles River, Hannover, Germanyから購入した。動物を12時間の明暗サイクルの温度及び湿度調節動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した(午前6時から午後6時までを明るくした)。全ての動物に水道水、並びに約140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%のタンパク質を含むペレット状のラット飼料(Altrominカタログ番号1310、Altoromin International Large, Germany)を自由に与えた。
【0228】
大腿静脈及び動脈を介して、下大静脈及び腹部大動脈に常設医療品質のTygonカテーテルを設置する。1週間後、ラットを4%イソフルラン+O2で吸入チャンバー内で麻酔する。気管内チューブの挿入後、Hugo Basile Rodentベンチレーターを用いて、動物を人工的に1.0%イソフルランを含むO2をベンチレートした。一回換気体積を8〜10ml/kg b.w.及び呼吸回数を75分-1とし、これにより動脈pHを7.35から7.45に維持した。外科手術の間に、直腸温度を37℃から38℃に維持する加熱台に当該動物を置いた。標準ECG(二次リード(second lead))を、Hugo Sachs ECG Couplerを用いて計測し、そして4000HzのPowerLabでオンラインで回収した。胸骨傍での開胸術及び心膜を開口した後に、左前下行枝(LAD)を目に見える位置にした。結紮の再開口を可能にする閉塞器(occluder)を用いた非外傷性の6-0絹縫合を、肺躯幹(pulmonary trunk)と左心耳のより低い右末端との間のLADの周囲に配置した。10分後、左前下行枝(LAD)を閉塞させる。閉塞の成功は、ECGの変化(ST上昇及びR波振幅の増大)の変化により、及びMAPの減少により確認された。再灌流は、閉塞を開口することにより行なった。対照ラットは偽手術される。
【0229】
ラットは、以下の:
ビヒクル:0.5mlの150mM・NaCl
α-MSH:200μg又は1000μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
試験化合物:200μg又は1000μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
のi.v.処理のうちの1にかける。
【0230】
虚血及び壊死心筋の大きさの決定
ラットを、虚血/再灌流後に麻酔状態を維持し、そしてLADの再拘束を、再灌流後3時間で行なった。この期間の間に、ECG及びMAPを連続して計測した。次に虚血領域のサイズを決定するためにEvans青色色素(1ml;2%w/v)をi.v.で投与した。心臓を取り除き、そして水平切片に切り、虚血領域の大きさを決定した。心臓を取り出し、そして水平切片に切り、虚血領域の大きさを決定し、そして非虚血心筋から虚血心筋を分離した。虚血領域を単離し、そして0.5%トリフェニルテトラゾリウム・クロリド溶液で37℃で10分間インキュベートした。ネクローシス組織の大きさは、次に、コンピューターによるイメージプログラムを用いることによって計測した。さらなる動物の実験例では、動物は、術後にブプレノルフィンで処理され、そしてケージに戻し、医薬による治療の高層性心不全の発達についての効果を評価するために、2週間後に左心室拡張末期圧(LVEDP)を計測した。右頚動脈を介して左心室へと挿入される2Fマイクロチップカテーテルを用いて、LVEDPを計測した。85〜90mmHgに平均動脈血圧(MAP)を安定化させるために、イソフルラン濃度を調節した。
【0231】
統計
データを、平均±S.E.で示す。スチューデントの対応のあるt検定を用いて群間比較を分析する。群間比較を、分散の1ウェイ分析をし、次にFishersの最小有意差検定により行なった。0.05レベルで差を有意差とみなした。
【0232】
実験例6
ラットにおいて、腎動脈の40分の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
バリア-ブレッド及び特定病原体除去の雌ウィスターラット(250g)をCharles River, Hannover, Germanyから購入した。当該動物を12時間の明暗サイクルで温度及び湿度調節動物室(22〜24℃、40〜70%)で飼育した。全ての動物に水道水、並びに約140mmol/kgのナトリウム、275mmol/kgのカリウム及び23%のタンパク質を含むペレット状のラット飼料(Altrominカタログ番号1310、Altoromin International Large, Germany)を自由に与えた。
【0233】
前もって常設静脈カテーテルを設置されたラットを、代謝ケージに入れ、そして代謝ケージに2日間馴化後に、両側腎動脈を60分間閉塞させることにより実験的にARFを誘導した。外科手術の間、ラットをイソフルラン-亜酸化窒素で麻酔し、そして加熱テーブルに置いて直腸温度を37℃に維持した。両方の腎臓を側腹切開を通してあらわにし、脂肪被膜から切り離すことにより可動化した。次に、腎動脈の一部分を、動脈からゆっくり切り離した。腎動脈を平滑表面血管クリップ(60g圧;World Precision Instruments, UK)で40分間閉塞させた。全ての腎臓表面の青白化により、完全な虚血が確認される。虚血期間の間、体温を維持するために創傷を一時的に閉じた。クリップを取り除いた後に、血液の再灌流を示す色の変化を確かめるために、腎臓をさらに2〜5分間観察した。次に傷を3-0絹結紮糸で閉じた。ラットを代謝ケージに戻し、そして毎日24時間尿量と水の摂取量を5日間計測した。対照群として、ARFラットについて用いた手術と同一であるが、腎動脈の結紮を行なわない偽手術をラットに行なった。偽手術されたラットは、ARFを患うラットと平行してモニターされた。
【0234】
ラットに、以下の:
ビヒクル:0.5mlの150mM・NaCl、
α-MSH:200μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl、
試験化合物:200μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl
のi.v.処理のうちの1を行なう。腎臓の再灌流の5分前に処理を行い、そして続いて6及び24時間後に行なう。
【0235】
統計
データを平均±S.E.として示す。群間比較は、スチューデントの対応のあるt検定を用いて分析した。群間比較を、分散の1ウェイ分析を行い、次にFisherの最小有意差試験を行なった。0.05レベルの差を有意差とした。
【0236】
実験例7
シスプラチン誘導性腎不全の抑制
前もって常設静脈カテーテルを設置されたラットを代謝ケージにいれ、そして代謝ケージへの馴化期間の後に、ラットを腹腔内シスプラチン注射5.0mg/kgbwを含む0.5mlの150mM・NaCl又はビヒクル(0.5ml・150mM・NaCl)で処理した。5日後、次にラットを代謝ケージに戻し、そして続く5日間、毎日24時間の尿量及び水摂取量を計測し、そして回収した。次に全てのラットをハロタン/N2Oで麻酔し、そして動脈血液サンプルを予め凍結されたEDTA被膜バイアル中に回収した。血液サンプルを、0.5mM・EDTA、pH7.4、及び20×106IU/mlアプロチニンを入れた予め凍結された試験チューブに回収し、そして-20℃で、クレアチニン及びマグネシウム(Mg)を後に計測した。このクレアチニンに加えて、血液採取の前の最後の24時間の期間回収された尿を計測する。糸球体ろ過量(GFR)の指標として使用されるクレアチニンクリアランス(Ccr)は、Ccr=Vu×Ucr/Pcrとして計算できる。ここでVuは、24時間の尿生産である;Ucrは、尿についてのックレアチニン濃度であり、そしてPcrは、血漿におけるクレアチニン濃度である。尿及び血漿におけるクレアチニンの計測は、臨床化学システムVITROS950(Ortho-Clinical diagnostics Inc., Johnson & Johnson, NJ)及びRoche Hitachi Modular (Roche Diagnostics, Manheim, Germany)を用いることにより行なわれる。
【0237】
ラットを以下の:
ビヒクル:0.5ml・150mM・NaCl、
α-MSH:200μgのα-メラニン細胞刺激ホルモン/kg b.w.を含む0.5ml150mM・NaCl、
試験化合物:200μgの試験化合物/kg b.w.を含む0.5mlの150mM・NaCl、
のi.v.処置のうちの1を行なう。腎臓の再灌流の5分前に処置を行い、そして6時間及び24時間後に処置を行なう。
【0238】
統計
データーを平均±S.E.として示す。群間比較を、スチューデントの対応のあるt検定で分析した。群間比較は、分散の1ウェイ分析を行ない、次にFisherの最小有意差検定を行なうことにより行なわれる。0.05レベルの差を有意差とした。
【0239】
結果
実施例1
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#1:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号1*:N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている)
である。当該化合物は、実験例1-7で試験された。
【0240】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α産生の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、独立して、ヒト白血球懸濁液におけるLPS誘導性TNF-αの蓄積を低減させた。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)の抑制性効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症性効果よりも顕著に強調されている。これと対照的に、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、TNF-α蓄積をビヒクルの47±2%に低減することができる(αMSHに対してP<0.01)(図1を参照のこと)。
【0241】
in vivoでのラットにおけるLPS誘導性TNF-α産生の抑制
α-MSHとα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、LPSのiv注入の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減した。α-MSH並びにα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の投与量で達成し、そしてTNF-α産生に対する最大抑制効果は、LPS融合の開始後120分で見られる。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)抑制性効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調される。ラット血漿中のTNF-α濃度を、最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%に抑制する一方、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、TNF-α蓄積を9±1%のビヒクルに低減することができる(α-MSHに対してP=0.05)(図2を参照のこと)。
【0242】
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球の浸潤の抑制
α-MSHとαMSHアナログ#1(配列番号1*)の両方が、LPS吸入後24時間で収集された気管支肺胞洗浄液中の好酸球の顕著な減少により示されるように、肺胞スペース内におけるLPS吸入に対する炎症応答を低減する。α-MSH処置は、BALFの好酸球の数を、26.7±4.3×105細胞に低減し(ビヒクルに対してP値<0.05)、そしてα-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、好酸球の数を、49.0±10.5×105細胞(ビヒクルに対してP値<0.05)に低減し、BALF中の好酸球の数が164.6±42.2×105細胞であるビヒクル処理されたラットに比べられる(図3を参照のこと)。上と一致して、BALF内の好中球の数の効果は、α-MSH及びα-MSHアナログ#1(配列番号1*)と同様である。
【0243】
in vivoにおいてブタのLPS誘導性サイトカイン放出及び肺性高血圧の抑制
α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)で処理されたブタにおいてLPS誘導後に、TNFαの血漿濃度の顕著な低下により示される顕著な抗炎症効果を有する。この抗炎症効果に加えて、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、驚くべきことに、肺性高血圧の発達に対する保護能力を有し、当該能力は、α-MSHアナログ#1(配列番号1)で処理されたラットにおいて見られたPAPのLPS誘導性の増加の顕著な減少により証拠付けられる(PAPの最大増加:ビヒクルについて22±4mmHg、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)について8±2mmHg;p=0.05)(図4を参照のこと)。
【0244】
ラットにおける左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞のサイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、驚くべきことに、LAD-再灌流後3時間で計測されたリスク領域の画分としての壊死領域として表現される心筋梗塞サイズを低下させる。α-MSHアナログ#1の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約30%である(ビヒクルについてリスク領域の50.6±2.6%、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)についてリスク領域の35.7±5.6、p=0.01)(図5を参照のこと)。1000μg/kg体重の用量で、梗塞サイズの低減は、ビヒクル処理されたラットに比較して〜30%である(α-MSHアナログ#1(配列番号1*)についてリスク領域の35.0±4.4%、ビヒクルに対してp<0.01)(図5を参照のこと)。60分のLADの閉塞後の14日目の動物のさらなる実験例での左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測により、梗塞サイズのα-MSHアナログ#1(配列番号1*)の有利な効果がLVEDPの顕著な低下、そしてそれにより、梗塞後うっ血性心不全の発達の顕著な低下を伴うことが示された(LVEDP:α-MSHアナログ#1(配列番号1*):10.4±2.9mmHg;対ビヒクル:20.0±2.2mmHg;P<0.01;対時間対照7.5±2.3mmHg;NS)(図6を参照のこと)。
【0245】
ラットにおける腎動脈の40分間の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
60分の両側腎虚血(RIR)は、顕著な虚血多尿症を誘導する。RIRラットは、持続性多尿症を患い、虚血誘導の4日後に、偽手術対照ラットと比べて101%だけ増加した(RIR-ビヒクル:34.8±3.3ml/24時間対時間対照:17.3±2.1ml/24時間、P<0.01)。α-MSH処理は、多尿症を低減することができない(RIR-α-MSH:29.0±2.9ml/24時間;NS対RIR-ビヒクル)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)は、尿流量の完全な通常化を誘導できる(RIR-α-MSHアナログ#1(配列番号1*):18.8±3.6ml/24時間;NS対時間対照;P<0.01対RIR-ビヒクル)(図7を参照のこと)。
【0246】
シスプラチン誘導性腎不全の抑制
シスプラチン処理は、顕著な低マグネシウム症及びGFRの低下により証拠付けられるネフロン毒性を誘導する。これに従って、シスプラチン及びビヒクルで処理されたラットは低マグネシウム血漿を誘導し(血漿Mg:0.61±0.04mM、対照ラット:0.77±0.05mM、P<0.05)、そしてGFRの顕著な低下を誘導した。血漿Mgは、シスプラチン及びα-MSHで処理されたラットにおいて低下した(0.37±0.04mM、P<0.05対対照ラット)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)での処理は、シスプラチン誘導性の低マグネシウム血漿を抑制し(0.84±0.04mM、NS対対照ラット)、そしてシスプラチン誘導性のGFRの低下を予防する。
【0247】
実施例2
試験化合物は以下のα-MSHアナログ#2:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号5* N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#2(配列番号5)は、10位でMetをNleに置換し、そして13位のPheを(D-Phe)に立体化学的に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なっている。
当該化合物を、実験例1-3、及び5-7で試験した。
【0248】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方は、独立してヒト白血球懸濁液中でLPS誘導性のTNF-αの蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりもより顕著である。α-MSHは、最大応答(LPS-ビヒクル)の73±9%にTNF-αの蓄積を抑制する。これとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、ビヒクルの42±11%へのTNF-αへと蓄積を低減できる(P<0.01対α-MSH)(図8を参照のこと)。
【0249】
in vivoにおけるラットにおけるLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方が、LPSのiv注入の間にラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著に強調される。一方、α-MSHが、ラット血漿中へのTNF-αの濃縮を最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%へと抑制する一方、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、TNF-αの蓄積を、ビヒクルの9±1%へと低減する(P<0.05対α-MSH)(図9を参照のこと)。
【0250】
ラットにおけるLPS吸入後の好中球及び好酸球の浸潤の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の両方が、LPS吸入に応答する肺胞スペース内の炎症を低下させる。当該炎症の低下は、LPS吸入後24時間で回収されたBALF中の好酸球の顕著な低下により示される。α-MSH処理は、BALF中の好酸球の数を26.7±4.3×105細胞に低減し(ビヒクルに対してP値<0.05)、そしてα-MSHアナログ#2(配列番号5*)が、ビヒクル処理されたラットに比べて、好酸球を34.0±8.6×105細胞(ビヒクルに対してP値<0.05)に低減する。ビヒクル処理されたラットでは、BALF中の好酸球数は、164.6±42.2×105細胞である(図10を参照のこと)。驚くべきことに、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、α-MSHに比べてBALF内の好中球についてより顕著な抑制効果を有した(α-MSHアナログ#2(配列番号5*)では9.1±2.4×105細胞、α-MSHでは20.1±2.5×105細胞;P<0.05)(図11を参照のこと)。
【0251】
ラットにおいて左下行性冠動脈の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞サイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は驚くべきことに、LAD再灌流後3時間で計測されたリスク領域の画分として壊死領域として表される心筋梗塞サイズを低減する。α-MSHアナログ#2(配列番号5*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで当該梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約27%である(ビヒクルについてリスク領域の51.4±2.1%の割合対α-MSHアナログ#2(配列番号5*):リスク領域の37.4±5.1%、p=0.01)(図12を参照のこと)。60分のLADの閉塞の14日後の動物のさらなる実験例における左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測は、梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#2(配列番号5*)の有利な効果は、LVEDPの顕著な低下と関連し、それにより梗塞後うっ血性心不全の発達の低下と関連することを示す。
【0252】
ラットにおける腎動脈の40分の両側閉塞により誘導される腎不全の抑制
60分の両側腎虚血(RIR)は、顕著な虚血後多尿症を誘導した。RIRラットは、持続性多尿症を有した。虚血発作後5日で当該多尿症は、偽手術対照ラットに比べて101%だけ増加した(RIR-ビヒクル:34.8±3.3ml/24時間対 時間対照:17.3±2.1ml/24時間、p<0.01)。α-MSH処置は、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)で処置することに比べて、RIR後に見られる多尿症の程度を顕著に低減する。
【0253】
シスプラチン誘導性の腎不全の抑制
シスプラチン処置は、顕著な低マグネシウム症及びGFRの低下により証拠付けられるネフロン毒性を誘導する。これに従って、シスプラチン及びビヒクルで処置されたラットは、GFRの低下に関連する低マグネシウム症(血漿Mg:0.61±0.04mM、対照ラットに対して0.77±0.05mM、p<0.05)を発達させる。血漿Mgは、シスプラチン及びα-MSHで処置されたラットにおいても低減する(0.37±0.04mM、P<0.05対対照ラット)。これとは対照的に、α-MSHアナログ#2(配列番号5*)は、シスプラチン誘導性低マグネシウム症、並びにシスプラチン誘導性GFRの低下を予防する。
【0254】
実施例3
試験化合物は、α-MSHアナログ#3:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2 (配列番号9* N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
であった。
α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、10位でMetをNleに置換し、そして13位でPheをD-Nalに置換する点で、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)と異なる。
化合物は、実験例1、2及び5において試験される。
【0255】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性のTNF-α産生の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の両方は、用量依存的にヒト白血球懸濁物においてLPS誘導性TNF-α蓄積を独立して低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の抑制効果は、天然ペプチドであるα-MSHの抗炎症効果と比べて顕著により強調されている。α-MSHは、最大応答(LPS-ビヒクル)の73%±9%にTNF-αの蓄積を抑制する。これとは対照的に、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、ビヒクルの53±13%にTNF-αの蓄積を低減することができる(α-MSHに対してP<0.05)(図13を参照のこと)。
【0256】
in vivoにおけるラットのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の両方が、LPSのiv注入の間、ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の最大抑制効果が、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症性効果と比べて、顕著により強調されている。α-MSHがラット血漿において、最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%にTNF-α濃度を抑制する一方、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)が、ビヒクルの11±3%にTNF-αの蓄積を低減することができる(P<0.05対α-MSH)(図14を参照のこと)。
【0257】
ラットにおける左前下行枝の60分間の閉塞により誘導される心筋梗塞サイズの抑制
α-MSHとは対照的に、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)は、驚くべきことに、LAD再灌流後3時間でリスク領域の画分としての壊死領域として表現される心筋梗塞サイズを低下する。α-MSHアナログ#3(配列番号9*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成され、ここで梗塞サイズの低下は、ビヒクル処理されたラットに比べて約24%である(ビヒクルについて51.3±2.15、α-MSHアナログ#3(配列番号9*)について39.0±3.4%のリスク領域、p=0.05(図15を参照のこと)。LADの60分間の閉塞後14日目での動物の追加実験例における左心室拡張末期圧(LVEDP)の計測により、梗塞サイズについてのα-MSHアナログ#3(配列番号9*)の有利な効果が、LVEDPの顕著な低下に関連し、そしてそれにより梗塞後うっ血性心不全の発達の顕著な低下に関連するということが示された。
【0258】
実施例4
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#4:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号13*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#4(配列番号13)は、8位においてTyrをSerで置換し、9位においてSerをIleで置換し、10位においてMetをIleで置換し、そして11位においてGluをSerで置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)と異なっている。
化合物を実験例1及び2で試験する。
【0259】
in vitroにおけるヒト白血病によるLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#4(配列番号13*)の両方ともが、ヒト白血球懸濁物において用量依存的にLPS誘導性TNF-αの蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#4(配列番号13*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調されている。
【0260】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#4(配列番号13*)の両方は、LPSのiv注入の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH並びにα-MSHアナログ#4の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#4の抑制効果は、天然ペプチドであるα-MSHの抗炎症性効果に比べて顕著により強調されている。α-MSHがラット血漿中のTNF-αの濃度を最大応答(LPS-ビヒクル)の17±3%に抑制する一方、α-MSHアナログ#4(配列番号13*)は、TNF-α蓄積をビヒクルの12±2%に低減することができる(α-MSHに対して、P<0.05)(図16を参照のこと)。
【0261】
実施例5
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#5:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号17*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化されている)である。
【0262】
α-MSHアナログ#5(配列番号17)は、8位でTyrをSerで置換し、9位でSerをIleで置換し、10位でMetをIleに置換し、11位位でGluをSerに置換し、そして13位でPheの立体化学を(D-Phe)に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なる。
当該化合物は、実験例1及び2で試験される。
【0263】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-αの生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の両方は、独立して、ヒト白血球懸濁におけるLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#5(配列番号17*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著である。
【0264】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性のTNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の両者は、LPSのiv注入の間ラットにおけるTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH及びα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことにα-MSHアナログ#5(配列番号17*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果よりも顕著により強調される。
【0265】
実施例6
試験化合物は、以下のα-MSHアナログ#6:
Ac-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(配列番号2*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)
である。
α-MSHアナログ#6(配列番号2)は、1〜6位で(Lys)6を(Glu)6に置換する点でα-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なっている。
当該化合物は、実験例1及び2において試験される。
【0266】
in vitroにおけるヒト白血球によるLPS誘導性TNF-αの生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の両方が、独立してヒト白血球懸濁液中でLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#6(配列番号2*)の抑制効果が、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べてより顕著に強調されている。
【0267】
in vivoにおけるラットでのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の両方が、LPSのiv注射の間ラットにおいてTNF-αの蓄積を低減する。α-MSH及びα-MSHアナログ#6(配列番号2*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#6(配列番号2*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果をよりも顕著に強調されている。
【0268】
実施例7
試験化合物が、以下のα-MSHアナログ#7:
Ac-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)-NH2(配列番号3*、N末端でアセチル化され、そしてC末端でアミド化される)である。
α-MSHアナログ#7(配列番号3)は、19位でPheの立体化学をD-Valへと置換する点で、α-MSHアナログ#1(配列番号1*)とは異なる。
当該化合物は、実験例1及び2において試験される。
【0269】
in vitroにおいてヒト白血球によるLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#7(配列番号3)の両方が、独立してヒト白血球懸濁物中でのLPS誘導性TNF-α蓄積を低減する。驚くべきことに、α-MSHアナログ#7(配列番号3*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べて顕著により強調される。
【0270】
in vivoにおいてラットのLPS誘導性TNF-α生産の抑制
α-MSH及びα-MSHアナログ#7(配列番号3*)の両方が、LPSのiv注入の間にラットにおいてTNF-α蓄積を低減する。α-MSH、並びにα-MSHアナログ#7(配列番号3*)の最大抑制効果は、200μg/kg体重の用量で達成される。驚くべきことに、α-MSHアナログ#7(配列番号3*)の抑制効果は、天然ペプチドα-MSHの抗炎症効果に比べて顕著により強調される。
【0271】
参考文献
米国特許第4,288,627号
WO 91/17243
WO 99/46283
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基:R1-R2-R3-R4-R5-R6を含み、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、Lys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は、独立して任意の天然又は非天然アミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端は-C(=O)-B1であり、ここでB1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;そして
当該ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立してH、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む、合計で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、任意の天然又は非天然アミノ酸残基でありうる]
を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号1)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号2)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号3)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号4)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号5)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号6)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号7)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号8)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号9)、
Glu-Glu-Glu--Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号10)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号11)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号12)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号13)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号14)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号15)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号16)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号17)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号18)、
Lys-lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号19)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号20)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号21)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号22)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号23)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Vat)(配列番号24)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号25)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号26)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号27)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号28)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号29)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号30)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号31)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号32)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号33)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号34)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号35)、及び
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号36)
からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号1)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lyg-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号5)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号9)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号13)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号17)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、以下の:
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号2)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号3)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1であり、そしてここでB1はOHである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、そしてここでB1がNH2である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-であり、そしてここでB4がHである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドのアミノ末端が、(B6)HN-であり、そしてここでB6=B4-C(=O)-であり、そしてB4=CH3である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドが、1、3、4及び5型メラノコルチン受容体から選ばれる1以上のメラノコルチン受容体を刺激する能力を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが以下の性質:
a)ヒト白血球によりLPS誘導性TNF-α生成を抑制し、
b)肺内への炎症誘導性好酸球の浸潤を抑制し、
c)肺内への炎症誘導性好中球の浸潤を抑制し、
d)循環血液中での炎症誘導性TNF-αの蓄積を抑制し、
e)虚血誘導性急性腎不全を軽減し、
f)心筋梗塞サイズを低減し、
g)心筋梗塞性心不全後の程度を低減し、
h)肺血管高血圧を低減し、
i)シスプラチン誘導性腎不全を低減する
のうち少なくとも1を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
医薬において使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
哺乳動物の1以上の臓器の組織の状態の治療又は予防用の医薬組成物の製造のための、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項19】
前記臓器が、腎臓、肝臓、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨、肺、気道、脾臓、外分泌腺、膀胱、内分泌腺、卵管を含む生殖臓器、眼、耳、脈管系、小腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む胃腸管、及び前立腺からなる群から選ばれる、請求項18に記載のペプチドの使用。
【請求項20】
前記状態が、虚血又は炎症状態である、請求項18又は19に記載のペプチドの使用。
【請求項21】
前記状態が、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器不全のため生じる、請求項18〜20のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項22】
前記状態が急性、亜急性、又は慢性虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項23】
前記状態が、二次的虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項24】
前記二次的虚血が、敗血性ショック又は全身性低血圧に付随する状態のため生じる、請求項20に記載のペプチドの使用。
【請求項25】
前記状態が、心筋虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項26】
前記状態が、狭心症又は心筋梗塞である、請求項25に記載のペプチドの使用。
【請求項27】
前記状態が、炎症性状態である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項28】
前記炎症状態が、肺炎症、関節炎、皮膚炎、膵炎、炎症性腸疾患、心膜炎、心筋炎及び心内膜炎から選ばれる、請求項27に記載のペプチドの使用。
【請求項29】
前記状態が、心不整脈に付随する、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれか一項に定義されるペプチドを含む医薬組成物。
【請求項31】
1以上の医薬担体をさらに含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
1以上の医薬として許容される賦形剤をさらに含む、請求項30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が、非経口、経口、局所、経粘膜又は経皮組成物である、請求項30〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
哺乳動物の1以上の臓器の組織において状態の治療又は予防のための方法であって、請求項1〜17に定義されるペプチドの有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項35】
前記状態が、虚血、炎症及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により引き起こされる、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Xは、6個のアミノ酸残基:R1-R2-R3-R4-R5-R6を含み、ここでR1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、Lys又はGluであり、そして
Yは、His-Phe-Arg、His-(D-Phe)-Arg、His-Nal-Arg及びHis-(D-Nal)-Argから選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Zは、Lys-Pro-Val及びLys-Pro-(D-Val)から選ばれるアミノ酸配列を含み、そして
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は、独立して任意の天然又は非天然アミノ酸残基であるか、又は存在しないものであり、そして
当該ペプチドのカルボキシ末端は-C(=O)-B1であり、ここでB1は、OH、NH2、NHB2、N(B2)(B3)、OB2、及びB2から選ばれ、ここでB2及びB3は独立して、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;そして
当該ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-、(B4)(B5)N-、又は(B6)HN-であり、ここでB4及びB5は独立してH、場合により置換されるC1-6アルキル、場合により置換されるC2-6アルケニル、場合により置換されるC6-10アリール、場合により置換されるC7-16アラルキル、及び場合により置換されるC7-16アルキルアリールから選ばれ;B6は、B4-C(=O)-である]
を含む、合計で12〜19のアミノ酸残基を有するペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、以下のアミノ酸配列:
X-Aa1-Aa2-Aa3-Aa4-Aa5-Y-Aa6-Aa7-Z
[式中、
Aa1、Aa2、Aa3、Aa4、Aa5、Aa6及びAa7は独立して、任意の天然又は非天然アミノ酸残基でありうる]
を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号1)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号2)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号3)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号4)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号5)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号6)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号7)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号8)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号9)、
Glu-Glu-Glu--Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号10)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号11)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号12)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号13)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号14)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号15)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号16)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号17)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号18)、
Lys-lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号19)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号20)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号21)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号22)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号23)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Vat)(配列番号24)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号25)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号26)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号27)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号28)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号29)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号30)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号31)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号32)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号33)、
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号34)、
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号35)、及び
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Nle-Glu-His-D-Nal-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val) (配列番号36)
からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号1)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが以下の:
Lys-Lys-Lys-Lyg-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号5)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-(D-Nal)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val(配列番号9)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号13)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Ser-Ile-Ile-Ser-His-(D-Phe)-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号17)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、以下の:
Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val (配列番号2)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、以下の:
Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-(D-Val)(配列番号3)
で表される配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1であり、そしてここでB1はOHである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドのカルボキシ末端が、-C(=O)-B1、そしてここでB1がNH2である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドのアミノ末端が、(B4)HN-であり、そしてここでB4がHである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドのアミノ末端が、(B6)HN-であり、そしてここでB6=B4-C(=O)-であり、そしてB4=CH3である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドが、1、3、4及び5型メラノコルチン受容体から選ばれる1以上のメラノコルチン受容体を刺激する能力を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが以下の性質:
a)ヒト白血球によりLPS誘導性TNF-α生成を抑制し、
b)肺内への炎症誘導性好酸球の浸潤を抑制し、
c)肺内への炎症誘導性好中球の浸潤を抑制し、
d)循環血液中での炎症誘導性TNF-αの蓄積を抑制し、
e)虚血誘導性急性腎不全を軽減し、
f)心筋梗塞サイズを低減し、
g)心筋梗塞性心不全後の程度を低減し、
h)肺血管高血圧を低減し、
i)シスプラチン誘導性腎不全を低減する
のうち少なくとも1を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
医薬において使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
哺乳動物の1以上の臓器の組織の状態の治療又は予防用の医薬組成物の製造のための、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項19】
前記臓器が、腎臓、肝臓、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨、肺、気道、脾臓、外分泌腺、膀胱、内分泌腺、卵管を含む生殖臓器、眼、耳、脈管系、小腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む胃腸管、及び前立腺からなる群から選ばれる、請求項18に記載のペプチドの使用。
【請求項20】
前記状態が、虚血又は炎症状態である、請求項18又は19に記載のペプチドの使用。
【請求項21】
前記状態が、毒素又は薬剤誘導性の細胞、組織又は臓器不全のため生じる、請求項18〜20のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項22】
前記状態が急性、亜急性、又は慢性虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項23】
前記状態が、二次的虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項24】
前記二次的虚血が、敗血性ショック又は全身性低血圧に付随する状態のため生じる、請求項20に記載のペプチドの使用。
【請求項25】
前記状態が、心筋虚血である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項26】
前記状態が、狭心症又は心筋梗塞である、請求項25に記載のペプチドの使用。
【請求項27】
前記状態が、炎症性状態である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項28】
前記炎症状態が、肺炎症、関節炎、皮膚炎、膵炎、炎症性腸疾患、心膜炎、心筋炎及び心内膜炎から選ばれる、請求項27に記載のペプチドの使用。
【請求項29】
前記状態が、心不整脈に付随する、請求項18〜21のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれか一項に定義されるペプチドを含む医薬組成物。
【請求項31】
1以上の医薬担体をさらに含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
1以上の医薬として許容される賦形剤をさらに含む、請求項30又は31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が、非経口、経口、局所、経粘膜又は経皮組成物である、請求項30〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
哺乳動物の1以上の臓器の組織において状態の治療又は予防のための方法であって、請求項1〜17に定義されるペプチドの有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項35】
前記状態が、虚血、炎症及び/又は毒又は薬剤治療の毒性効果により引き起こされる、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−56881(P2013−56881A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−214656(P2012−214656)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−527307(P2008−527307)の分割
【原出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(512251116)アブビー インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214656(P2012−214656)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−527307(P2008−527307)の分割
【原出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(512251116)アブビー インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
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