説明

治療薬

【課題】非定型抗精神疾患薬であり、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A神経伝達機能障害に関連する神経及び精神障害の薬の提供。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物の使用。


(式中、Rは、置換されていないか又は1〜6個のフッ素で置換されているC1−6アルキルであり、ここで、環上のR及びヒドロキシル基は同じ炭素原子に結合している)

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
統合失調症は、陰性症状(感情鈍麻、禁断症状、無快感症)及び陽性症状(偏執、幻覚、妄想)並びに著しい認知障害の組合せを特徴とする、衰弱精神障害である。
【0002】
統合失調症の病因は現在のところ未知であるが、この疾患は、生物学的、環境的及び遺伝的要因の複雑な相互作用により発症すると考えられている。非定型抗精神疾患薬は、統合失調症、及び、更に最近では双極性障害の治療において最前線である。しかし、統合失
調症患者の30%は、現在入手可能な薬物により適切に治療されていない。現在入手可能な多くの非定型抗精神疾患薬があるが、これらの薬物は、患者及び/又は医師のいずれかの有効性又は安全性/耐性に対する不満により高い割合の中断を被っている。非定型抗精
神疾患薬は、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A受容体における拮抗作用による陽性症状に対し効果を達成する性能をなすと思われる薬効を有する。これらの活性は、陰性症状においてある種の効果をもたらすのみならず、有害な副作用に寄与する。これらの副作用には、体重増加/代謝効果(5−HT2Cにおける拮抗作用及びヒスタミンH1受容体における拮抗作用と関連があると思われる)、錐体外路症状及びプロラクチン分泌(ドーパミンD2受容体における拮抗作用と関連があると思われる)、鎮静(α1アドレナリン作動性受容体における拮抗作用及びヒスタミンH1受容体における拮抗作用と関連があると思われる)及び認知障害(ムスカリン性M1受容体における拮抗作用と関連があると思われる)が含まれる。従って、当該技術分野において、陽性症状、陰性症状及び/又は副作用の減少に良好な効果を有する非定型抗精神疾患薬についての要望がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
本発明は、非定型抗精神疾患薬であり、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A神経伝達機能障害に関連する神経及び精神障害の治療において有用な治療薬に関する。
【0004】
発明の詳細な記載
本発明は、式I:
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、置換されていないか又は1〜6個のフッ素で置換されているC1−6アルキルであり、ここで、環上のR及びヒドロキシル基は同じ炭素原子に結合している)の化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0007】
この実施態様においては、本発明は、Rが、置換されていないか又は1〜6個のフッ素で置換されているC1−3アルキルである化合物を含む。
【0008】
更に、この実施態様においては、本発明は、Rが、
(1)メチル、
(2)エチル、
(3)n−プロピル、
(4)イソプロピル、
(5)トリフルオロメチル、及び
(6)トリフルオロエチル、
からなる群から選択される化合物を含む。
【0009】
更に、この実施態様においては、本発明は、Rがメチルである化合物を含む。また、更に、この実施態様においては、本発明は、Rがエチルである化合物を含む。また、更に、この実施態様においては、本発明は、Rがトリフルオロメチルである化合物を含む。
【0010】
本発明の一実施態様は、式Ia:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rは本明細書において定義される)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0013】
本発明の一実施態様は、式Ia’:
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rは本明細書において定義される)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0016】
本発明の一実施態様は、式Ib:
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rは本明細書において定義される)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0019】
本発明の一実施態様は、式Ib’:
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、Rは本明細書において定義される)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0022】
本発明の特定の実施態様は、本明細書の実施例の主題の化合物からなる群から選択される化合物及び薬学的に許容されるその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーを含む。
【0023】
本発明の化合物は1個以上のキラル中心を含んでいてもよく、それ故、ラセミ体又はラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオ異性体混合物及び個々のジアステレオマーとして存在してもよい。追加の不斉中心は、分子上の種々の置換基の性質に依存して存在してもよい。このようなそれぞれの不斉中心は、それぞれ独立して2種の光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体及びジアステレオマーが、混合物中並びに純粋又は部分的に精製された化合物として本発明の範囲内にあることを意図する。本発明は、これらの化合物の全てのこのような異性体形態を包含することを意図する。
【0024】
これらのジアステレオマーのそれぞれの合成又はそのクロマトグラフ分離体は、本明細書に開示される方法の適切な修飾によって、当該技術分野において周知なように達成してもよい。必要に応じて、それらの化合物の絶対立体化学は、結晶性生成物又は公知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶性中間体のX−線結晶解析によって決定してもよい。所望であれば、化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーが分離されるように分離してもよい。分離は、当該技術分野において周知の方法、例えば、化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を生成し、分別結晶又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により個々のジアステレオマーを分離することにより実施してもよい。カップリング反応は、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を用いる塩の形成である場合がある。次いで、ジアステレオマー誘導体は付加されたキラル残基を切断することにより純粋なエナンチオマーに変換してもよい。化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を用いるクロマトグラフィー法によって直接分離してもよく、この方法は当該技術分野において周知の方法である。又は、化合物の任意のエナンチオマーは、当該技術分野において周知の方法により公知の配置を有する光学的に純粋な出発原料又は試薬を用いた立体選択的合成により得てもよい。
【0025】
当業者に理解されるように、本明細書で用いられるハロ又はハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むことを意図する。同様に、C1−6アルキルの場合のようなC1−6は、直鎖又は分岐状に1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するものとして基が定義され、C1−6アルキルは、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。独立して置換基で置換されているように指定されている基は、独立して複数のこのような置換基で置換されていてもよい。
【0026】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機又は有機塩基並びに無機又は有機酸を含む薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩を意味する。無機塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第1鉄、第2鉄、リチウム、マグネシウム、第1マンガン、第2マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。特定の実施態様は、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩を含む。固体形状の塩は、1種を超える結晶構造で存在してもよく、水和物の形態でも存在してよい。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩には、1級、2級及び3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機及び有機酸を含む薬学的に許容される非毒性の酸から調製してもよい。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。特定の実施態様は、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸及び酒石酸を含む。本明細書で用いられる場合、本発明の化合物の言及は薬学的に許容される塩をも含むことを意味することが理解されるであろう。本発明の具体例は、実施例及び明細書に開示される化合物の使用である。
【0027】
本発明の化合物は、本発明の化合物の有効量を投与することを含む、阻害を必要とするほ乳動物のような患者における、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A神経伝達機能障害に関連する神経又は精神障害の治療方法に有用である。霊長類、特にヒトに加え、多様な種々の動物を、本発明の方法により治療することができる。
【0028】
本発明は、更に、本発明の化合物と薬学的担体又は希釈剤とを組み合わせることを含む、ヒト及び動物における、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A神経伝達機能障害に関連する神経又は精神障害の治療のための医薬の製造方法に関する。
【0029】
本発明の方法において治療される患者は、一般に治療が望まれるほ乳動物、特に雄性又は雌性のヒトである。「治療上有効な量」なる用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家により求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する対象化合物の量を意味する。本発明の化合物の有効量を用いて、現在疾患に苦しんでいる患者を治療するか、又はこのような障害に苦しんでいる患者を予防的に治療することにより神経及び精神障害に影響を及ぼすことを当業者は理解するであろう。本明細書で用いられる場合、「治療」及び「治療する」なる用語は、本明細書に開示される神経及び精神障害の進行を遅延し、妨害し、阻止し、制御し、又は停止する全ての工程を意味するが、全ての疾患の症状の完全な消失を示す必要はなく、特にこのような疾患又は障害にかかりやすい患者において、言及される症状の進行を遅延し、危険性を減少するための予防的治療を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに特定の量の特定成分の組合せから直接又は間接的に得られる任意の生成物を包含することが意図される。医薬組成物に関するこのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物、並びに任意の2種以上の成分の組合せ、複合若しくは会合から、又は1種以上の成分の解離から、又は1種以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用から直接又は間接的に得られる任意の生成物を包含することが意図される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することにより製造された任意の組成物を包含する。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、それの受容者に有害であってはならないことを意味する。化合物の「投与」及び又は「投与する」なる用語は、治療を必要とする個体に、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味することが理解されるであろう。
【0031】
非定型抗精神疾患薬としての本発明の化合物の有用性は、当該技術分野において周知の方法によって証明されうる。特に、以下の実施例の化合物は、ドーパミンD2、セロトニン5−HT2A、α2Cアドレナリン作動性受容体に対する高い親和力拮抗作用、5−HT1A受容体における部分的作動性、並びに5−HT2C、ヒスタミンH1及びM1受容体における弱い親和力を示すことによる、参考アッセイにおける活性を有する。
【0032】
米国特許第5,532,372号(1996年7月2日発行)及び特開平8−333368(1996年12月17日公開)に開示されたような他のイミド化合物に関して、本発明の化合物は、代謝的安定性、経口バイオアベイラビリティ、安全性及び/又は関連受容体に対する選択性の向上に関するような、予想外の性質を示す。一般に、本発明の化合物は、ドーパミンD2、セロトニン5−HT2A、α2Cアドレナリン作動性受容体に対する相対的に高い親和力拮抗作用、5−HT1A受容体における部分的作動性、並びに5−HT2C、ヒスタミンH1及びM1受容体における弱い親和力を有する。この受容体プロフィールに基づき、本発明の化合物は、統合失調症の陽性及び陰性症状における効果を有すると予想される。本発明の化合物は、相対的に良好な耐容性を示すことも予想される。本発明の化合物は、現在市販されている非定型抗精神疾患薬と比較し、体重増加及び治療に関連する代謝異常に対する低い傾向を有することも予想される。
【0033】
本発明の化合物は、以下の1種以上の病状又は疾患:すなわち、統合失調症又は統合失調症を含む精神疾患(妄想型、解体型、緊張型又は未分化型)、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期精神疾患性障害、二人組精神疾患、通常の病状による精神疾患性障害及び物質誘発性又は薬物誘発性(フェンシクリジン、ケタミン及び他の解離性麻酔薬、アンフェタミン及び他の精神刺激薬並びにコカイン)精神疾患性精神障害、情動障害と関連する精神疾患、短期反応精神疾患、統合失調性精神病、統合失調症的人格障害又は統合失調症性人格障害のような「統合失調症型」障害、又は統合失調症及び他の精神疾患の陽性及び陰性症状の両方を含む、精神疾患と関連する疾患(大うつ病、躁鬱性(双極性)障害、アルツハイマー病及び心的外傷後ストレス症候群等)を含む統合失調症又は精神疾患;痴呆(アルツハイマー病、虚血、多発脳梗塞性痴呆症、心的外傷、血管の異常又は卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、周生期低酸素症、その他の通常の症状又は薬物乱用と関連する)を含む認識障害;精神錯乱、健忘症障害又は加齢に関係する認識力低下;急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、対人恐怖症、特定の恐怖症、物質誘発性不安障害及び通常の病状に起因する不安を含む不安障害;物質関連障害及び耽溺行為(物質誘発性幻覚症状、持続性痴呆症、持続性健忘症障害、精神疾患性障又は不安障害;アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚発現物質、吸入抗原、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮痛剤、睡眠薬又は抗不安薬を含む物質からの耐性、依存性、禁断症状を含む);肥満症、神経性過食症及び強迫性摂食障害;双極性障害、うつ病性障害を含む気分障害;単極性うつ病、季節性情動障害及び産後うつ病、月経前症候群(PMS)及び月経前不機嫌性障害(PDD)、通常の病状に起因する気分障害及び物質誘発性気分障害を含むうつ病;学習障害、自閉性障害を含む広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む注意障害及び行為障害;自閉症、うつ病、良性健忘症、幼児期学習障害及び閉鎖性頭部外傷のようなNMDA受容体関連疾患;無動症及び無動性硬直症候群(akinetic−rigid syndrome)(パーキンソン病、薬物誘発性パーキンソン症、脳炎後
パーキンソン症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン症−ALS痴呆複合及び大脳基底核硬化を含む)を含む運動障害、薬物誘発性パーキンソン症(神経安定薬誘発性パーキンソン症、神経弛緩薬性悪性症候群、神経安定薬誘発性急性筋緊張異常、神経安定薬誘発性急性静座不能症、神経安定薬誘発性遅発性ジスキネジア及び薬物誘発性姿勢振戦等)、ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群、癲癇、筋肉痙攣及び震顫を含む筋痙直又は筋力低下に関係する障害;運動障害[震顫(静止時震顫、姿勢震顫及び意図震顫等)、舞踏病(シデナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病及び片側バリズム)、間代性筋痙攣(全身性間代性筋痙攣及び局所性間代性筋痙攣を含む)、チック(単純チック、複雑チック及び症候性チックを含む)、並びにジストニア(特発性ジストニア、薬物誘発性ジストニア、症候性ジストニア及び発作性ジストニアのような全身性ジストニア、並びに眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性ジストニア、痙性斜頚、軸ジストニア、ジストニー書痙及び片麻痺性ジストニアのような局所性ジストニアを含む)を含む];尿失禁;眼損傷を含む神経細胞の損傷、目の網膜症又は黄斑変性症、耳鳴り、聴覚障害及び聴覚損失、並びに脳浮腫;嘔吐;並びに不眠症及び発作性睡眠を含む睡眠障害を含む様々な神経及び精神障害の治療に有用性を有する。
【0034】
上記障害のうち、統合失調症、双極性障害、単極性うつ病、季節性情動障害及び産後うつ病を含む鬱病、月経前症候群(PMS)及び月経前不機嫌性障害(PDD)、学習障害、自閉性障害を含む広汎性発達障害、注意欠陥/多動性障害を含む注意障害、自閉症、トゥーレット症候群を含むチック障害、恐怖症及び心的外傷後ストレス障害を含む不安障害、痴呆に関連する認識障害、AIDS痴呆症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病と関連する認識障害、痙直、間代性筋痙攣、筋痙攣、耳鳴り及び聴覚障害及び聴覚損失の治療が特に重要である。
【0035】
特定の実施態様においては、本発明は、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、認識障害の治療方法を提供する。特定の認識障害は、痴呆、精神錯乱、健忘症障害及び加齢に関連する認識力低下である。現在、精神障害診断統計便覧の第4版改訂版(DSM−IV−TR)(2000年、米国精神医学会、ワシントンDC)は、痴呆、精神錯乱、健忘症障害及び加齢に関連する認識力低下を含めた認識障害を含む診断手段を提供している。本明細書で用いられる場合、「認識障害」なる用語は、DSM−IV−TRに記載のようにそれらの精神障害の治療を含む。当業者は、精神障害のための別の命名法、疾病分類学及び分類体系があり、これらのシステムが医学及び科学的進歩とともに進化することを理解するであろう。従って「認識障害」なる用語は、他の診断源に記載される類似の障害を含むことを意図している。
【0036】
別の特定の実施態様においては、本発明は、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、不安障害の治療方法を提供する。特定の不安障害は全般性不安障害、強迫障害及びパニック発作である。現在、精神障害診断統計便覧の第4版改訂版(DSM−IV−TR)(2000年、米国精神医学会、ワシントンDC)は、全般性不安障害、強迫障害及びパニック発作である不安障害を含む診断手段を提供している。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「不安障害」なる用語は、DSM−IV−TRに記載のようにそれらの精神障害の治療を含む。当業者は、精神障害のための別の命名法、疾病分類学及び分類体系があり、これらのシステムが医学及び科学的進歩とともに進化することを理解するであろう。従って、「不安障害」なる用語は、他の診断源に記載される類似の障害を含むことを意図している。
【0038】
別の特定の実施態様においては、本発明は、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、統合失調症又は精神疾患の治療方法を提供する。特定の統合失調症又は精神疾患の病状は、妄想型、解体型、緊張型又は未分化型統合失調症及び物質誘発性精神疾患性障害である。現在、精神障害診断統計便覧の第4版改訂版(DSM−IV−TR)(2000年、米国精神医学会、ワシントンDC)は、妄想型、解体型、緊張型又は未分化型統合失調症及び物質誘発性精神疾患性障害を含む診断手段を提供している。本明細書で用いられる場合、「統合失調症又は精神疾患」なる用語は、DSM−IV−TRに記載のようにそれらの精神障害の治療を含む。当業者は、精神障害のための別の命名法、疾病分類学及び分類体系があり、これらのシステムが医学及び科学的進歩とともに進化することを理解するであろう。従って、「統合失調症又は精神疾患」なる用語は、他の診断源に記載される類似の障害を含むことを意図している。
【0039】
別の特定の実施態様においては、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、物質関連障害及び耽溺行為の治療方法を提供する。特定の物質関連障害及び耽溺行為は、薬物乱用により誘発される持続性痴呆症、持続性健忘症障害、精神病性障害又は不安障害;並びに薬物乱用の耐性、依存症、又は禁断症状である。現在、精神障害診断統計便覧の第4版改訂版(DSM−IV−TR)(2000年、米国精神医学会、ワシントンDC)は、薬物乱用により誘発される持続性痴呆症、持続性健忘症障害、精神病性障害又は不安障害;及び薬物乱用の耐性、依存症、又は禁断症状を含む診断手段を提供している。本明細書で用いられる場合、「物質関連障害及び耽溺行為」なる用語は、DSM−IV−TRに記載のようにそれらの精神障害の治療を含む。当業者は、精神障害のための別の命名法、疾病分類学及び分類体系があり、これらのシステムが医学及び科学的進歩とともに進化することを理解するであろう。従って、「物質関連障害及び耽溺行為」なる用語は、他の診断源に記載される類似の障害を含むことを意図している。
【0040】
別の特定の実施態様においては、本発明は、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、疼痛の治療方法を提供する。特定の疼痛の実施態様は、骨及び関節痛(骨関節炎)、反復動作による疼痛、歯痛、癌性疼痛、筋筋膜痛(筋肉損傷、線維筋痛)、手術前後の疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛及び神経因性疼痛である。
【0041】
別の特定の実施態様においては、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、過剰食物摂取に関連する肥満症又は摂食障害及びそれに関連する合併症の治療方法を提供する。現在、肥満症は国際疾病分類第10版(International Classification of Diseases and Related Health Problems)(ICD−10)(1992年、世界保健機関)に通常の病状として含まれている。精神障害診断統計便覧の第4版改訂版(DSM−IV−TR)(2000年、米国精神医学会、ワシントンDC)は、病状に影響を及ぼす心理的要因が存在する肥満症を含む診断手段を提供している。本明細書で用いられる場合、「過剰食物摂取に関連する肥満症又は摂食障害」なる用語は、ICD−10及びDSM−IV−TRに記載のようにそれらの病状及び障害の治療を含む。当業者は、一般病状のための別の命名法、疾病分類学及び分類体系があり、これらのシステムが医学及び科学的進歩とともに進化することを理解するであろう。従って、「過剰食物摂取に関連する肥満症又は摂食障害」なる用語は、他の診断源に記載される類似の症状及び障害を含むことを意図している。
【0042】
本発明の化合物は、更に、本明細書で言及する疾患、障害及び病状の予防、治療、制御、改善又は危険性の減少方法において有用である。本発明の化合物は、更に、他の薬物と組合せ、前述した疾患、障害及び病状の予防、治療、制御、改善又は危険性の減少方法において有用である。本発明の化合物は、本発明の化合物又は他の薬物が有用性を有する可能性がある疾患又は病状の治療、予防、制御、改善又は危険性の減少において1種以上の他の薬物と併用してもよく、ここで、薬物を一緒に組み合わせることは、いずれかの薬物単独よりも更に安全であり、又は更に効果的である。このような1種以上の他の薬物は、本発明の化合物と同時に又は連続して、そのために通常用いられる経路及び量で投与してもよい。本発明の化合物が1種以上の他の薬物と同時に用いられる場合、このような他の薬物及び本発明の化合物を含む単位投薬形態での医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、本発明の化合物及び1種以上の薬物を異なる重複スケジュールで投与する治療も含んでよい。1種以上の他の活性成分と組み合わせて用いる場合、本発明の化合物及び他の活性成分はそれぞれを単独で使用する場合よりも少ない用量で使用してもよい。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1種以上の他の活性成分を含有するものを含む。上記の組み合わせは、1種の他の活性化合物との組合せのみではなく、2種以上の他の活性化合物と本発明の化合物との組み合わせをも含む。同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患又は病状の予防、治療、制御、改善又は危険性の減少に用いられる他の薬剤と組み合わせて用いてもよい。このような他の薬物は、本発明の化合物と同時に又は連続して、そのために通常用いられる経路及び量で投与してもよい。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1種以上の他の活性成分をも含む。本発明の化合物の第2の活性成分に対する重量比を変えてもよく、各成分の有効量に依存するであろう。通常、それぞれの有効量が用いられるであろう。従って、例えば、本発明の化合物を他の薬物と組み合わせる場合、本発明の化合物の他の薬物に対する重量比は、通常、約1000:1〜約1:1000の範囲であり、例えば約200:1〜約1:200の範囲であろう。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせも、通常、前述の範囲内にあるが、それぞれの場合において各活性成分の有効量が用いられるであろう。
【0043】
このような組み合わせにおいて、本発明の化合物及び他の活性薬物は、別々に又は一緒に投与してもよい。更に、1種の成分の投与は、他の薬剤の投与より先に、同時に、又は後にしてもよい。
【0044】
従って、本化合物は単独で又は目的とする適応で有益であることが知られている他の薬物と、又は本発明の化合物の有効性、安全性、利便性を増加させるか、若しくは望まない副作用又は毒性を減少させるような、受容体又は酵素に影響を及ぼす他の医薬と組み合わせて用いてもよい。本発明の化合物及び他の薬物は、併用療法又は固定した併用剤として同時投与してもよい。
【0045】
一実施態様においては、本発明の化合物は、抗アルツハイマー薬、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、イブプロフェンを含むNSAID類、ビタミンE及び抗アミロイド抗体と組み合わせて用いてもよい。
【0046】
別の実施態様においては、本発明の化合物は、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗不安薬、シクロピロロン類、イミダゾピリジン類、ピラゾロピリミジン類、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン性薬物、ベン
ゾジアゼピン類、バルビツレート類、5HT−2アンタゴニスト等、例えばアジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスプリオン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロルジアゼポキシド、クロレテート、クロルプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デキスクラモール、ジアゼパム、ジクロラールフェナゾン、ジバルプロックス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エスクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メフォバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルル、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバマート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾラート、トラニルサイプロマイン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデム等、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせなどと組み合わせて使用してもよく、また、本発明の化合物は、光線療法又は電気刺激のような物理的方法の使用と併せて投与してもよい。
【0047】
別の実施態様においては、本発明の化合物は、レボドパ(カルビドパ又はベンセラジドのような脳以外の選択的なデカルボキシラーゼ阻害剤と共に、又はなしに)、ビペリデン(場合によってその塩酸塩又は乳酸塩として)及びトリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)塩酸塩のような抗コリン薬、エンタカポンのようなCOMT阻害剤、MOA−B阻害剤、酸化防止剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト並びにアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキソールのようなドーパミン受容体アゴニストと組み合わせて用いてもよい。ドーパミンアゴニストが薬学的に許容できる塩の形態、例えば臭化水素酸アレンテモール、ブロモクリプチンメシレート、フェノルドパムメシレート、塩酸ナキサゴリド及びペルゴリドメシレートであってもよいことが理解されるであろう。リスリド及びプラミペキソールは通常、非塩形態で使用される。
【0048】
別の実施態様においては、本発明の化合物は、神経遮断薬のフェノチアジン、チオキサンテン、へテロ環ジベンザゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジン及びインドロン類からの化合物と組み合わせて用いてもよい。フェノチアジン類の適切な具体例には、クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン及びトリフルオペラジンが含まれる。チオキサンテン類の適切な具体例には、クロルプロチキセン及びチオチキセンが含まれる。ジベンザゼピンの具体例はクロザピンである。ブチロフェノンの具体例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの具体例はピモジドである。インドロンの例はモリンドロンである。その他の神経遮断薬には、ロキサピン、スルピリド及びリスペリドンが含まれる。神経遮断薬は、本発明の化合物と組み合わせて用いられる場合、薬学的に許容される塩の形態、例えば、塩酸クロルプロマジン、ベシル酸メソリダジン、塩酸チオリダジン、マレイン酸アセトフェナジン、塩酸フルフェナジン、フルフェナジンエナセート、デカン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸チオチキセン、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピン及び塩酸モリンドンであってよいことは理解されるであろう。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジド及びリスペリドンは、通常、非塩形態で用いられる。従って、本発明の化合物は、アセトフェナジン、アレンテモール、アリピプラゾール、アミスルプリド、ベンゼソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、レボドパ及びベンセラジド、レボドパ及びカルビドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、クエチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシフェニジル、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン又はジプラシドンと組み合わせて使用してもよい。
【0049】
別の実施態様においては、本発明の化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(三級アミン三環系及び二級アミン三環系を含む)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、モノアミン酸化酵素の可逆的阻害剤(RIMA)、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、非定型の抗うつ薬、ベンゾジアゼピン類、5−HT1Aアゴニスト又はアンタゴニスト、特に5−HT1A部分アゴニスト及び副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)アンタゴニストを含む抗うつ薬又は抗不安薬と組み合わせて用いてもよい。特定の薬物には:アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン及びトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン及びプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン及びセレギリン;モクロベミド:ベンラファキシン;デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドン及びヴィロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロルアゼパート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム及びプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ジェピロン及びイプサピロン、及び薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0050】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、嚢内注射若しくは注入、皮下注射、又はインプラント)により、吸入スプレーにより、鼻、腟、直腸、舌下又は局所的投与経路で投与してもよく、並びにそれぞれの投与経路に適した、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤及び媒体を含む、適した用量単位の剤形で、単独又は一緒に製剤化してもよい。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル等の温血動物の治療に加え、本発明の化合物はヒトにおける使用に効果的である。
【0051】
本明細書で用いられる場合、「組成物」なる用語は、所定の量又は比率で特定の成分を含む生成物、及び特定された量の特定の成分の組み合わせから直接又は間接的に得られる任意の生成物も含むことを意図している。医薬組成物に関するこの用語は、1種以上の活性成分及び不活性成分を含む任意の担体を含む生成物、及び任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体形成若しくは凝集から、又は1種以上の成分の分離から、又は1種かそれ以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接又は間接的に得られる任意の生成物も含むことを意図している。一般に、医薬組成物は、活性成分を均一及び密接に液体担体又は微粉化された固体担体又はその両者に導入し、次いで、必要に応じて、その生成物を所望の製剤に成形することにより調製される。医薬組成物においては、活性な目的化合物は疾患の進行又は状態に望ましい効果を生じるのに十分な量含まれる。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することにより製造される任意の組成物を包含する。
【0052】
経口用途を意図する医薬組成物は、医薬組成物の製造用のための技術分野において公知の任意の方法に従って調製してもよく、このような組成物は、薬学的な優雅さ及び味のよい製剤を提供するために甘味料、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含んでもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含む。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は消化管内での分解及び吸収を遅延させための公知の技術によりコーティングされていてもよく、それによって長期にわたる持続する作用をもたらす。経口用組成物は、活性成分を、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンのような不活性個体希釈剤と混合する硬ゼラチンカプセルとして、或いは活性成分を水又はピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油のような油性媒体と混合する軟ゼラチンカプセルとして存在してもよい。水性懸濁液、油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、水中油型エマルジョン及び無菌の注射用水性又は油性懸濁液は、当該技術分野において公知の標準的方法により調製してもよい。
【0053】
本発明の化合物は、本明細書で言及する疾患、障害及び病状の予防、治療、制御、改善又は危険性の減少方法に更に有用である。しかし、本発明の組成物中の活性成分の用量は、変化してもよく、活性成分の量は、適切な投薬形態が得られるようであることが必要である。活性成分は、このような治療を必要とする患者(動物及びヒト)に、最適な薬学的効果をもたらすであろう用量で投与してもよい。選択される用量は、望まれる治療効果、投与経路及び治療期間に依存する。投与量は、疾患の性質及び重症度、患者の体重、患者が実践する特定の食事、併用する薬剤及び当業者が認識するであろう他の要因に依存し患者によって変わるであろう。一般に、1日あたり、0.0001〜10mg/体重1kgの用量レベルが、患者、例えばヒト及び高齢のヒトに投与される。用量範囲は、通常、1日あたり約0.5mg〜1.0g/患者であり、単一又は複数の投与で投与される。一実施態様においては、用量範囲は、1日あたり約0.5mg〜500mg/患者であり;別の実施態様においては、1日あたり約0.5mg〜200mg/患者であり;更に別の実施態様においては、1日あたり約5mg〜50mg/患者である。本発明の医薬組成物は、約0.5mg〜500mgの活性成分を含むような、又は約1mg〜250mgの活性成分を含むような固体投与製剤において供給されてもよい。医薬組成物は、約1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg又は250mgの活性成分を含む固体投与製剤で供給されてもよい。経口投与の場合、治療すべき患者への症状による用量の調整のために、組成物を1.0〜1000ミリグラムの活性成分、例えば、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で供給してもよい。化合物は、例えば1日あたり1回又は2回のような、1日あたり1〜4回の投薬計画により投与されてもよい。
【0054】
本発明の化合物を調製するためのいくつかの方法を、以下のスキーム及び実施例において説明する。出発原料及び必要な中間体は、ある場合においては市販されており、又は文献の方法又は本明細書で説明したようにして調製することができる。本発明の化合物は、文献において公知であるか実験手順に例示されている他の標準操作に加え、以下のスキームにおいて示されるような反応を用いることにより調製してもよい。スキームに示されるような置換基の番号付けは、請求項で用いたものと関連する必要はなく、明確にするために、しばしば単一の置換基が前記の定義により複数の置換基が可能である化合物に結合するように示される。本発明の化合物を生成するために用いられる反応物は、文献において公知であるか、実験手順に例示されているようなエステル加水分解、保護基の切断のような他の標準操作に加え、本明細書のスキーム及び実施例に示すような反応を用いて調製することができる。
【0055】
ある場合においては、最終生成物は、例えば、置換基の操作により更に修飾してもよい。これらの操作には、当業者に公知な還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれるが、これらに限定されない。ある場合においては、反応促進のため、又は望まない反応生成物の回避のために、前述の反応スキームを実施する順番を変えてもよい。以下の実施例は、本発明を更に十分に理解するように提供される。これらの実施例は一例であり、多少なりとも本発明を限定するものとして解釈すべきでない。
【0056】
実施例1
【0057】
【化6】

【0058】
工程1:ラセミ−(3aS,4S,7S,7aR)−テトラヒドロ−1H−4,7−メタ
ノイソインドール−1,3,5(4H)−トリオン
【0059】
【化7】

【0060】
三酸化クロム(2.7g)を濃硫酸(2.3mL)及び水(10mL)に溶解した。12.17mLのこの溶液を、ラセミ−(3aS,4R,5S,7R,7aR)−5−ヒドロキシヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン(4.21g)(特公平8−333368号公報、1996年12月17日の方法の修飾により調製)の20mLのアセトン中の0℃の溶液に滴下して加えた。1時間後、2−プロパノール(20mL)を加え、反応物を30分間撹拌した(オレンジ色が消えた)。反応物をセライトによりろ過し、真空下に濃縮した。98:2のCHCl:MeOHを用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより、標題の化合物を白色固体として得た。
【0061】
工程2:ラセミ−(3aS,4S,5R,7S,7aR)−5−ヒドロキシ−5−メチル
ヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン
【0062】
【化8】

【0063】
ラセミ−(3aS,4S,7S,7aR)−テトラヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3,5(4H)−トリオン(1.08g,6.03ミリモル)(Kossakowski,Jerzy;Zawadowski,Teodor;Balicka,Eliza.,Acta Poloniae Pharmaceutica(1997),54(6),479−481)の50mLの無水THF中の−78℃の溶液に、臭化メチルマグネシウム(THF中の3M溶液を5.02mL,15.07ミリモル)を加えた。2時間後、更に追加の3mLの臭化メチルマグネシウム溶液を加えた。更に2時間後、更に追加の2mLの臭化メチルマグネシウム溶液を加えた。−78℃で合計6時間後、冷却槽を取り除き、反応物を室温まで加温した。酢酸(1.725mL,30.1ミリモル)を用いて反応を停止した(慎重に)。200μLの水を加え、混合物をCHCl及び2mLのMeOHで希釈した。混合物をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、白色の泡状物質を得た。泡状物質を5%MeOH/CHClに溶解しシリカのプラグでろ過し、標題の化合物を灰色がかった白色固体として得た。
【0064】
工程3:(3aS,4S,5R,7S,7aR)−2−[((1R,2R)−2−{[4
−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロ
ヘキシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノ
イソインドール−1,3−ジオン
【0065】
【化9】

【0066】
及び(3aR,4S,5S,7S,7aS)−2−[((1R,2R)−2−{[4−
(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロヘ
キシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイ
ソインドール−1,3−ジオン
【0067】
【化10】

【0068】
ラセミ−(3aS,4S,5R,7S,7aR)−5−ヒドロキシ−5−メチルメチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン(88mg,0.451ミリモル)のトルエン(5mL)及びDMF(1.8mL)中の溶液に、トランス−R,R−3a,7a−オクタヒドロイソインドリウム−2−スピロ−1’−[4’−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)]ピペラジンメタンスルホネート(191mg,0.451ミリモル)及び炭酸カリウム(125mg,0.902ミリモル)を加えた。反応物を110℃で23時間加熱し、次いで加熱を除いた。混合物を酢酸エチル及び水で分配し、水溶液を酢酸エチルでもう1回洗浄した。一緒にした有機溶液を乾燥し(NaSO)、濃縮した。残渣を、EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、189mgの、2種の標題の化合物の混合物を得た。分取用HPLC(Chiralcel OD、60%EtOH/ヘキサン+0.1%ジエチルアミン)により:(3aS,4S,5R,7S,7aR)−2−[((1R,2R)−2−{[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロヘキシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン、及び(3aR,4S,5S,7S,7aS)−2−[((1R,2R)−2−{[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロヘキシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオンを得た。(3aS,4S,5R,7S,7aR)−2−[((1R,2R)−2−{[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロヘキシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン。保持時間4.6分。HNMR(CDCl)δ7.91(d,1H,J=8Hz);7.80(d,1H,J=8Hz);7.46(t,1H,J=8Hz);7.35(t,1H,J=8Hz);3.94(dd,1H,J=13,4Hz);3.53(t,3H,J=5Hz);3.50(d,1H,J=7Hz);3.34(dd,1H,J=13,10Hz);2.73(d,1H,J=7Hz);2.68−2.59(m,6H);2.48(s,1H);2.23(dd,1H,J=13,7Hz);1.89(brd,1H,J=14Hz);1.74(dd,1H,J=13,5Hz);1.67(brd,2H,J=12Hz);1.61−1.51(m,3H);1.48(d,2H,J=11Hz);1.41(s,3H);1.38(dd,1H,J=13,3Hz);1.27−1.09(m,4H);1.06−0.96(m,2H).HRMS(ESI)C2938Sの計算値:523.2738[M+H];実測値:523.2713.ヒト受容体におけるインビトロアフィニティー(Ki):5HT1A(野生型)8nM;α2C 9nM;α2A 59nM;D2 1nM;5HT2A<10nM;D3 2nM;5HT2C 16nM;H1 371nM;D1 457nM;α1A 31nM;α1D 82nM;hERG 644nM。ヒト受容体における機能的能力(IC50):5HT1A EC50=98(最大77%);α2C 160nM;α2A 1217nM;5HT2A 32nM;D2 25nM;D1 1650nM;5HT2C 1707nM;H1 3100nM;hERG 4000nM。(3aR,4S,5S,7S,7aS)−2−[((1R,2R)−2−{[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)ピペラジン−1−イル]メチル}シクロヘキシル)メチル]−5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオン。保持時間5.2分。HNMR(CDCl)δ7.91(d
,1H,J=8Hz);7.80(d,1H,J=8Hz);7.46(t,1H,J=8Hz);7.35(t,1H,J=8Hz);3.95(dd,1H,J=13,4Hz);3.53(t,3H,J=5Hz);3.50(d,1H,J=7Hz);3.34(dd,1H,J=13,10Hz);2.73(d,1H,J=7Hz);2.68−2.59(m,6H);2.48(s,1H);2.23(dd,1H,J=13,7Hz);1.89(brd,1H,J=13Hz);1.74(dd,1H,J=13,5Hz);1.70−1.46(m,7H);1.41(s,3H);1.37(dd,1H,J=13,3Hz);1.27−1.09(m,4H);1.06−0.96(m,2H).HRMS(ESI)C2938Sの計算値:523.2738[M+H];実測値:523.2709.
【0069】
前記スキーム及び前記実施例において記載されたような適切に置換されたラセミ−(3aS,4S,5R,7S,7aR)−5−ヒドロキシ−5−アルキルヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドール−1,3−ジオンに置換したことを除き、前述したようにして、表1中の化合物を合成した。必要な出発原料は市販されており、文献に開示されており又は有機合成の分野における当業者により容易に合成された。
【0070】
【表1−1】

【0071】
【表1−2】

【0072】
特定の実施態様を参照し本発明を記述し説明したが、当業者は、手段及びプロトコールの種々の適用、変形、修飾、置換、欠失又は付加を、本発明の精神及び範囲を逸脱せずに行ってよいことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、Rは、置換されていないか又は1〜6個のフッ素で置換されているC1−6アルキルであり、ここで、環上のR及びヒドロキシル基は同じ炭素原子に結合している)の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
式Ia:
【化2】

で表わされる請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
式Ia’:
【化3】

で表わされる請求項2記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
式Ib:
【化4】

で表わされる請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
式Ib’:
【化5】

で表わされる請求項4記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
が、置換されていないか又は1〜6個のフッ素で置換されているC1−3アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
が、
(1)メチル、
(2)エチル、
(3)n−プロピル、
(4)イソプロピル、
(5)トリフルオロメチル、及び
(6)トリフルオロエチル、
からなる群から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
がメチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
がエチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
がトリフルオロメチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項11】
【化6】

【化7】

からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
薬学的に許容される担体と、請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩とを含む医薬組成物。
【請求項13】
医薬中で使用するための、請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
精神異常の治療又は予防のための医薬の製造のための、請求項1記載の化合物又は薬学
的に許容されるその塩の使用。
【請求項15】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、ドーパミンD2及びセロトニン5−HT2A神経伝達機能障害に関連する神経又は精神障害の治療方法。
【請求項16】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、統合失調症の治療方法。
【請求項17】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、双極性障害の治療方法。
【請求項18】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、アルツハイマー病の治療方法。
【請求項19】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、認識の増強方法。
【請求項20】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とする哺乳類患者における、不安症の治療方法。

【公開番号】特開2013−28626(P2013−28626A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−207291(P2012−207291)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2010−502133(P2010−502133)の分割
【原出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】