説明

洋上風力発電施設の施工方法

【課題】洋上風力発電施設の効率的な施工方法を提供する。
【解決手段】トップタワー47を設置する工程が、運搬用甲板昇降式作業台船33を、第1の高さから該第1の高さよりも高い第2の高さに上昇させる工程と、運搬用甲板昇降式作業台船33に積載されたトップタワー47を、施工用甲板昇降式作業台船31の他方の長手方向側縁にて前記マスト保持装置13,14を用いて保持するとともにツインブーム11を用いて吊り上げる工程と、施工用甲板昇降式作業台船31を、第1の高さから第1の高さよりも高い第3の高さに上昇させる行程と、トップタワー47を、施工用甲板昇降式作業台船31のブーム旋回台8を用いて180度旋回させ、第1の移動機構4,5又は第2の移動機構6を用いて一方の長手方向側縁における前記基礎62,63,64に対向する位置まで移動させて、ミドルタワー41の上に設置する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業効率、安定性及び安全性に優れた甲板昇降式作業台船、及び、その甲板昇降式作業台船を用い、作業効率、安定性及び安全性に優れた施工を可能にする洋上風力発電施設の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電は、石油代替エネルギー源として優れており、又、地球温暖化防止等の環境対策に有効なエネルギー源である。
風力発電の発電施設の設置場所としては、陸上と洋上のいずれも可能であるが、つぎのような点で洋上は陸上よりも風力発電に有利な条件を備えている。
(1)洋上では、一般的に陸上と比べて風速が強く、又、良好で安定した風が吹く。
(2)洋上には障害物が少なく、騒音、電波障害も少ない。
(3)大型化しつつある風車の機材を運搬設置する施工コストも洋上の方が陸上より少ない。
(4)大規模な電力消費地帯は沿岸区域に集中しており、その他の電力系設備も沿岸部の方が整備されている傾向があるため、洋上の方が送電コスト等が安くなる。
このように、洋上は陸上よりも風力発電に有利な条件を備えている。洋上風力発電施設は、多くの国に於いて採用されており、一般的に沿岸から数百m〜数kmの距離に設置されている。
【0003】
本願出願人は、風力発電に関し、特許文献1の「洋上風力発電施設の施工方法」を既に出願している。
特許文献1には、タワーをタワー運搬用SEP(Self Elevating Platform 自己昇降式作業台船)に積載して現場へ運搬し、モノパイル式基礎上へ設置すると共に、ナセル、ハブ及びブレードを予め風車の形状に一体化しておき、これを風車運搬用SEPに積載して現場へ運搬し、タワー上に風車を設置する洋上風力発電施設の施工方法が記載されている。
特許文献1に於いては、タワーをモノパイル式基礎上へ設置する時、タワー運搬用SEPに搭載したクローラクレーンを用いて設置し、タワー上に風車を設置する時、風車運搬用SEPに搭載したクローラクレーンを用いて設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献1に於いては、タワーをモノパイル式基礎上へ設置する時、タワー運搬用SEPに搭載したクローラクレーンを用いて設置し、タワー上に風車を設置する時、風車運搬用SEPに搭載したクローラクレーンを用いて設置している。
然しながら、タワー運搬用SEP、風車運搬用SEPにクローラクレーンを積むことにより、SEP上の積載スペースを狭めることになり、積載量が少なくなる問題があり、又、SEP上で、タワーや、風車の向きを変えたり、移動させる場合に、クローラクレーンを駆動するが、クローラクレーンでは作業能率や、作業の正確性等において作業性が悪く、又、タワーや、風車を、クローラクレーンのシングルブームで吊下するため、タワーや、風車が揺れて作業しにくいという問題があった。
【0006】
以上の現状に鑑み、本発明は、甲板昇降式作業台船を用い、洋上風力発電施設の作業効率、安定性及び安全性に優れた施工を可能にする洋上風力発電施設の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
本発明による洋上風力発電施設の施工方法は、運搬用甲板昇降式作業台船(33)と施工用甲板昇降式作業台船(31)とを用いて、ボトムタワー(43)、ミドルタワー(41)及びトップタワー(47)を備えた洋上風力発電施設を施工する施工方法であって、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)は、トップタワー(47)を両側から保持可能なマスト保持装置(13,14)及び2本のブーム(9,10)を具備するツインブーム(11)と、前記ツインブーム(11)を支持しかつ旋回させるブーム旋回台(8)と、前記ブーム旋回台(8)を台船本体の長手方向に沿って移動させる第1の移動機構(4,5)と、前記ブーム旋回台(8)を台船本体の幅方向に沿って移動させる第2の移動機構(6)とを備えている、前記施工方法において、
(A)洋上風力発電施設の設置サイト地点にて、海面上方の第1の高さに固定した前記施工用甲板昇降式作業台船(31)を用いて、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の一方の長手方向側縁の近傍に基礎(62,63,64)を施工する工程と、
(B)ボトムタワー(43)、ミドルタワー(41)及びトップタワー(47)をそれぞれ起立状態にて積載した前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の他方の長手方向側縁の近傍にて、双方の台船の長手方向が平行となりかつ前記第1の高さとなるように固定する工程と、
(C)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ボトムタワー(43)及びミドルタワー(41)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記ツインブーム(11)及び前記ブーム旋回台(8)並びに前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記基礎(62,63,64)の上に順次設置する工程と、
(D)前記ボトムタワー(43)及びミドルタワー(41)が設置された上に前記トップタワー(47)を設置する工程と、を有しており、
前記トップタワーを設置する工程が、
(D1)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)を、前記第1の高さから該第1の高さよりも高い第2の高さに上昇させる工程と、
(D2)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記トップタワー(47)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記マスト保持装置(13,14)を用いて保持するとともに前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げる工程と、
(D3)前記施工用甲板昇降式作業台船(31)を、前記第1の高さから該第1の高さよりも高い第3の高さに上昇させる行程と、
(D4)前記トップタワー(47)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎(62,63,64)に対向する位置まで移動させて、前記ミドルタワー(41)の上に設置する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記施工方法において、前記ボトムタワー(43)及び前記ミドルタワー(41)を、順次設置する工程が、
(C1)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ボトムタワー(43)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げ、前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎に対向する位置まで移動させて、前記基礎(62,63,64)の上に設置する工程と、
(C2)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ミドルタワー(41)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げ、前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎に対向する位置まで移動させて、前記ボトムタワー(43)の上に設置する工程と、を有すること、が好適である。
【0009】
上記施工方法において、前記トップタワー(47)は、ナセル(35)及びブレード(39)を組み込んだ状態で前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載されていること、が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洋上風力発電施設の施工を作業効率良く、安定して安全に行うことができる洋上風力発電施設の施工方法を提供することが可能である。
特に、運搬用甲板昇降式作業台船及び施工用甲板昇降式作業台船の昇降機構並びに第1及び第2の移動機構及びブーム旋回台により、ブームが、台船とともに昇降可能であるとともに、台船本体甲板上で旋回できかつ台船方向と台船幅方向との何れにも迅速、円滑、且つ、正確に移動できるので、タワー及び風車の効率的且つ迅速な施工が可能となる。
又、運搬用甲板昇降式作業台船にクローラクレーンを積み込む必要がないため、運搬効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明に係る甲板昇降式作業台船を示す正面図である。(b)本発明に係る甲板昇降式作業台船を示す平面図である。
【図2】(a)本発明に係る洋上風力発電施設の施工方法に於いて、運搬用甲板昇降式作業台船へのトップタワーの積み込み完了状況を示す正面図である。(b)運搬用甲板昇降式作業台船へのトップタワーの積み込み作業状態を示す平面図である。
【図3】(a)ミドルタワーの積み込み作業状態を示す正面図である。(b)ミドルタワーの積み込み作業状態を示す平面図である。
【図4】運搬用甲板昇降式作業台船の反転状況を示す平面図である。
【図5】(a)運搬用甲板昇降式作業台船の反転完了状態を示す正面図である。(b)運搬用甲板昇降式作業台船の反転完了状態を示す平面図である。
【図6】(a)第2セットのトップタワーを積み込む作業状態を示す正面図である。(b)第2セットのトップタワーを積み込む作業状態を示す正面図である。
【図7】(a)運搬用甲板昇降式作業台船を曳航する状態を示す正面図である。(b)運搬用甲板昇降式作業台船を曳航する状態を示す平面図である。
【図8】(a)基礎としてモノパイルを施工した状態を示す正面図である。(b)基礎としてジャケットを施工した状態を示す正面図である。(c)基礎としてケーソンを施工した状態を示す正面図である。(d)基礎としてモノパイルを施工した状態を示す側面図である。(e)基礎としてジャケットを施工した状態を示す側面図である。(f)基礎としてケーソンを施工した状態を示す側面図である。
【図9】トランジションピースを取り付ける状態を示す側面図である。
【図10】運搬用甲板昇降式作業台船を施工用甲板昇降式作業台船の近傍に固定した状態を示す平面図である。
【図11】(a)施工用甲板昇降式作業台船にボトムタワーを取り込む状態を示す正面図である。(b)施工用甲板昇降式作業台船にボトムタワーを取り込む状態を示す平面図である。
【図12】(a)ボトムタワーを設置する状態を示す正面図である。(b)ボトムタワーを設置する状態を示す平面図である。
【図13】(a)ミドルタワーを設置する状態を示す正面図である。(b)ミドルタワーを設置する状態を示す平面図である。
【図14】(a)施工用甲板昇降式作業台船にトップタワーを取り込む状態を示す正面図である。(b)施工用甲板昇降式作業台船にトップタワーを取り込む状態を示す平面図である。
【図15】(a)施工用甲板昇降式作業台船を上昇させた状態を示す正面図である。(b)施工用甲板昇降式作業台船を上昇させた状態を示す平面図である。
【図16】(a)トップタワーを設置する状態を示す正面図である。(b)トップタワーを設置する状態を示す平面図である。
【図17】トップタワーの設置完了状態を示す側面図である。
【図18】トップタワーの保持状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、1は、主として洋上風力発電施設の施工に用いる本発明に係る第1実施態様の甲板昇降式作業台船を示し、甲板昇降式作業台船1は、平面視略矩形状の台船本体2と、台船本体2の四隅部に遊挿自在に鉛直方向に延びて設けられ、油圧ジャッキアップシステム(図示せず)により台船本体2を昇降自在に移動させるレグ3,3…と、台船本体甲板長手軸方向(長手方向)に敷設された走行レール4,4上を走行自在の走行桁5と、走行桁5上に台船本体2の甲板横軸方向(幅方向)に敷設された移動レール6上を移動自在の移動作業台車7と、移動作業台車7上に旋回自在に架装されるブーム旋回台8と、ブーム旋回台8上に取り付けられ、2本の左右ブーム9,10から成るツインブーム11とを備えている。
【0013】
又、前記ツインブーム11は、図15に示す如く、トップタワー12の下部マストを抱持する下部マスト保持装置13と、トップタワー12の中間マストを抱持する中間マスト保持装置14とを備えている。
【0014】
前記下部マスト保持装置13は、図18に示す如く、左右ブーム9,10にガイドレール15を介して両端を摺動自在に保持される保持基材16と、保持基材16に揺動自在に取り付けられ、トップタワー12を抱持する左右吊りプレート17,18と、左右吊りプレート17,18を抱持自在に揺動させる左右油圧シリンダー19,20とを備えている。
そして、前記保持基材16の左右方向略中心部にトップタワー12の下部マストの外周部を当接させた状態で、左右油圧シリンダー19,20を伸張させると、左右吊りプレート17,18が抱持方向に揺動してトップタワー12の下部マストの外周部を抱持する。
トップタワー12の下部マストを抱持状態から解放する時は、左右油圧シリンダー19,20を縮小させると、左右吊りプレート17,18が抱持方向と反対方向に揺動してトップタワー12の下部マストを解放する。
図15に示す中間マスト保持装置14も前記下部マスト保持装置13と同様に構成され、同様に作動する。
【0015】
図1に示す如く、前記台船本体2は、油圧ジャッキアップシステムによりレグ3,3…を鉛直方向に上昇又は下降させるように構成され、例えば、前記台船本体2が海面に浮いた状態で、レグ3,3…を下降させると、所定下降後に、レグ3,3…の下端部が海底に到達し、更に、レグ3,3…を下降させると、台船本体2が海面上方に上昇する。その状態から、逆にレグ3,3…を上昇させると、台船本体2は下降し、所定下降後に、海面に着水して、海面に浮いた状態になり、更に、レグ3,3…を所定高さ上昇させると、台船本体2の自走又は曳航が可能になる。
尚、前記台船本体2は、洋上風力発電施設の施工のための基礎を施工するための必要な構成も備えるが、その構成は本発明の特徴ではないので説明を省略する。
【0016】
前記甲板昇降式作業台船1の作用については、後述する図2乃至図18に示す本発明の第2実施態様の洋上風力発電施設の施工方法に於いて、甲板昇降式作業台船1と同構成の施工用甲板昇降式作業台船31の作用によって説明する。
【0017】
次に、本発明の第2実施態様の洋上風力発電施設の施工方法を、図2乃至図18に従って説明する。
本発明の洋上風力発電施設の施工方法に於いては、前記甲板昇降式作業台船(図1に於いて1)を、洋上風力発電施設の施工のための施工用甲板昇降式作業台船31として用いるものである。従って、施工用甲板昇降式作業台船31は前記甲板昇降式作業台船(図1に於いて1)と同構成を有する。
そこで、説明の都合上、前述した第1実施態様と同一構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
尚、詳細は後述するが、施工用甲板昇降式作業台船31は、洋上風力発電施設の基礎を施工する場合にも用いる。
【0018】
先ず、図2に示す如く、岸壁32に接岸した運搬用甲板昇降式作業台船33を、レグ34,34…を用いた油圧ジャッキアップシステム(図示せず)により、海面上方の所定高さに上昇させる。
尚、前記運搬用甲板昇降式作業台船33は、前記施工用甲板昇降式作業台船31とは異なる構成を有する主として海上運搬用に用いる甲板昇降式作業台船であり、2セットの洋上風力発電施設の機材を積載可能に構成され、運搬用甲板昇降式作業台船33の甲板の右半部と左半部に夫々1セットの洋上風力発電施設の機材を積み込み可能に構成される。
【0019】
次に、予め陸上に於いてナセル35を組み込んだトップタワー12を陸上のクローラクレーン36によって運搬用甲板昇降式作業台船33上に積み込む。この時、運搬用甲板昇降式作業台船33の甲板上の左半部の前部に設置された第1積載台37に、トップタワー12を起立状態で積載する。
【0020】
次に、予め陸上に於いてハブ38に取り付けたブレード39,39,39を陸上のクローラクレーン36によって、図3に示す如く、トップタワー12の上端のナセル35前部に組み付ける。
更に、クローラクレーン36によって運搬用甲板昇降式作業台船33の甲板上の右半部の中部に設置された第2積載台40に、ミドルタワー41を起立状態で積載し、甲板上の右半部の後部に設置された第3積載台42に、ボトムタワー43を起立状態で積載する。
【0021】
そして、もう1セットの洋上風力発電施設の機材を積み込む場合は、甲板上の右半部に積載済みの1セットを第1セットとして、もう1つのセットである第2セットを甲板上の左半部に積み込む。そのため、運搬用甲板昇降式作業台船33のレグ34,34…を上昇させ、運搬用甲板昇降式作業台船33を海面上に浮かせた後、図4に示す如く、運搬用甲板昇降式作業台船33を矢印の如く180度反転させて、図5に示す如く、運搬用甲板昇降式作業台船33の左半部側を岸壁に接岸させ、再度、レグ34,34…を下降させ、運搬用甲板昇降式作業台船33を海面上方の所定高さに上昇させたのち、運搬用甲板昇降式作業台船33の甲板上の左半部に、第2セットの洋上風力発電施設の機材を第1セットの洋上風力発電施設の機材と同様に積み込む。この時、図6に示す如く、運搬用甲板昇降式作業台船33の甲板上の左半部の後部、中部、前部の第4積載台44、第5積載台45、第6積載台46に夫々トップタワー47、ミドルタワー48、ボトムタワー49を起立状態で積載し、トップタワー12とトップタワー47とを互いに向かい合わせて、且つ、互いにブレード39,39…が干渉しないように離反させて積み込む。
【0022】
そして、レグ34,34…を用いた油圧ジャッキアップシステムにより、運搬用甲板昇降式作業台船33を海面上に降ろし、自走により、又は、図7に示す如く、曳航船61による曳航により洋上風力発電施設設置サイト地点まで、移動させる。
【0023】
洋上風力発電施設設置サイト地点では、図8に示す如く、予め、施工用甲板昇降式作業台船31により、モノパイル62、ジャケット63、又は、ケーソン64のうちいずれか一つの基礎を施工しておく。尚、ケーソン64は、図に示すような、波の影響を少なくした逆さじょうご型が好適である。
前記モノパイル62、ジャケット63及びケーソン64の基礎施工、並びに、ジャケット63及びケーソン64のピンパイル65の杭打ち作業は、施工用甲板昇降式作業台船31に備えられたツインブーム11を用いて行われる。
ツインブーム11を用いた施工及び作業によって、モノパイル、ジャケット及びケーソンの基礎施工、並びに、ピンパイルの杭打ち作業を迅速且つ安定して安全正確に行うことができる。
【0024】
本発明の洋上風力発電施設の施工方法に於いては、前記モノパイル62、ジャケット63、又は、ケーソン64のうちいずれの基礎上にも洋上風力発電施設を施工可能であるが、ここでは、モノパイル62に施工する例について説明する。
図9に示す如く、モノパイル62は、施工用甲板昇降式作業台船31を用いて施工される。モノパイル62の施工時におけるモノパイル62の吊り下げは、2本の左右ブーム9,10から成るツインブーム11によって行う。又、モノパイル62の位置決め作業、圧入作業、引き抜き作業は、例えば、図示は省略するが、施工用甲板昇降式作業台船31に備えられた、パワーケーシングジャッキ又はパワースイングジャッキを備える位置決め保持装置等で行う。そして、施工されたモノパイル62の上端にトランジションピース66を取り付ける。
【0025】
次に、図10に示す如く、運搬用甲板昇降式作業台船33を施工用甲板昇降式作業台船31の近傍に固定する。
この時、図11に示す如く、施工用甲板昇降式作業台船31は、レグ3,3…を用いた油圧ジャッキアップシステムにより海面上方の所定高さに上昇させた状態にあり、同様に、運搬用甲板昇降式作業台船33を、レグ34,34…を用いた油圧ジャッキアップシステムにより、海面上方の所定高さに上昇させる。
【0026】
次に、施工用甲板昇降式作業台船31に備えた夫々フックを具備する2本の左右ブーム9,10から成るツインブーム11によって、例えば、第1セットのボトムタワー43を抱き吊り上げる。
そして、ツインブーム11が取り付けられたブーム旋回台8を旋回させることにより、ボトムタワー43の向きを変え、走行桁5上に台船本体2の甲板横軸方向に敷設された移動レール6上を、ブーム旋回台8が架装される移動作業台車7を移動させることにより、ボトムタワー43を同方向に移動させ、走行桁5を台船本体甲板長手軸方向に敷設された走行レール4上を走行させることにより、ボトムタワー43を同方向に移動させ、図12に示す如く、ボトムタワー43の下端部を積木方式(積重ねる方式)によってトランジションピース66に設置する。
トランジションピース66によって、ボトムタワー43が鉛直方向になるように鉛直度を調整してモノパイル62と、ボトムタワー43とを固定する。
次に、図13に示す如く、ミドルタワー41を、ボトムタワー43と同様に移動させて、ボトムタワー43の上端に積重ねる如く設置する。
【0027】
そして、図14に示す如く、運搬用甲板昇降式作業台船33を、レグ34,34…を用いた油圧ジャッキアップシステムにより、所定高さに上昇させた状態で、トップタワー12を、図18に示すように、ツインブーム11に備えた下部マスト保持装置13によって抱持する如く保持すると共に、図14に示す如く、中間マスト保持装置14によって抱持する如く保持し、且つ、トップタワー12の下端部にワイヤー67を掛けてツインブーム11によりトップタワー12を吊下する。
下部マスト保持装置13及び中間マスト保持装置14によって、ブレード39、ナセル35等の重みによるトップタワー12の転倒、又は、傾斜を防止することができる。
次に、図15に示す如く、施工用甲板昇降式作業台船31を、レグ3,3…を用いた油圧ジャッキアップシステムにより、更に上昇させ、ミドルタワー41の高さに合わせてトップタワー12を吊り上げる。
【0028】
そして、ツインブーム11が取り付けられたブーム旋回台8を旋回させることにより、トップタワー12の向きを変え、走行桁5上に施工用甲板昇降式作業台船31の甲板横軸方向に敷設された移動レール6上を、ブーム旋回台8が架装される移動作業台車7を移動させることにより、トップタワー12を同方向に移動させ、走行桁5を台船本体甲板長手軸方向に敷設された走行レール4,4上を走行させることにより、トップタワー12を同方向に移動させ、図16及び図17に示す如く、トップタワー12の下端部をミドルタワー43の上端に積重ねる如く積木方式によって設置する。
【0029】
次に、洋上風力発電施設の機材に第2セットを施工する場合は、運搬用甲板昇降式作業台船33を第2セットを施工する洋上風力発電施設設置サイト地点まで移動させ、第1セットと同様に施工すれば良い。
【符号の説明】
【0030】
1 甲板昇降式作業台船
2 台船本体
3,34 レグ
4 走行レール
5 走行桁
6 移動レール
7 移動作業台車
8 ブーム旋回台
11 ツインブーム
12,47 トップタワー
13 下部マスト保持装置
14 中間マスト保持装置
31 施工用甲板昇降式作業台船
32 岸壁
33 運搬用甲板昇降式作業台船
35 ナセル
36 クローラクレーン
38 ハブ
39 ブレード
41,48 ミドルタワー
43,49 ボトムタワー
62 モノパイル
63 ジャケット
64 ケーソン
65 ピンパイル
66 トランジションピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬用甲板昇降式作業台船(33)と施工用甲板昇降式作業台船(31)とを用いて、ボトムタワー(43)、ミドルタワー(41)及びトップタワー(47)を備えた洋上風力発電施設を施工する施工方法であって、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)は、トップタワー(47)を両側から保持可能なマスト保持装置(13,14)及び2本のブーム(9,10)を具備するツインブーム(11)と、前記ツインブーム(11)を支持しかつ旋回させるブーム旋回台(8)と、前記ブーム旋回台(8)を台船本体の長手方向に沿って移動させる第1の移動機構(4,5)と、前記ブーム旋回台(8)を台船本体の幅方向に沿って移動させる第2の移動機構(6)とを備えている、前記施工方法において、
(A)洋上風力発電施設の設置サイト地点にて、海面上方の第1の高さに固定した前記施工用甲板昇降式作業台船(31)を用いて、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の一方の長手方向側縁の近傍に基礎(62,63,64)を施工する工程と、
(B)ボトムタワー(43)、ミドルタワー(41)及びトップタワー(47)をそれぞれ起立状態にて積載した前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の他方の長手方向側縁の近傍にて、双方の台船の長手方向が平行となりかつ前記第1の高さとなるように固定する工程と、
(C)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ボトムタワー(43)及びミドルタワー(41)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記ツインブーム(11)及び前記ブーム旋回台(8)並びに前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記基礎(62,63,64)の上に順次設置する工程と、
(D)前記ボトムタワー(43)及びミドルタワー(41)が設置された上に前記トップタワー(47)を設置する工程と、を有しており、
前記トップタワーを設置する工程が、
(D1)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)を、前記第1の高さから該第1の高さよりも高い第2の高さに上昇させる工程と、
(D2)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記トップタワー(47)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記マスト保持装置(13,14)を用いて保持するとともに前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げる工程と、
(D3)前記施工用甲板昇降式作業台船(31)を、前記第1の高さから該第1の高さよりも高い第3の高さに上昇させる行程と、
(D4)前記トップタワー(47)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎(62,63,64)に対向する位置まで移動させて、前記ミドルタワー(41)の上に設置する工程と、を有することを特徴とする
洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項2】
前記ボトムタワー(43)及び前記ミドルタワー(41)を、順次設置する工程が、
(C1)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ボトムタワー(43)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げ、前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎に対向する位置まで移動させて、前記基礎(62,63,64)の上に設置する工程と、
(C2)前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載された前記ミドルタワー(41)を、前記施工用甲板昇降式作業台船(31)の前記他方の長手方向側縁にて前記ツインブーム(11)を用いて吊り上げ、前記ブーム旋回台(8)を用いて180度旋回させ、前記第1の移動機構(4,5)又は前記第2の移動機構(6)を用いて前記一方の長手方向側縁における前記基礎に対向する位置まで移動させて、前記ボトムタワー(43)の上に設置する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の洋上風力発電施設も施工方法。
【請求項3】
前記トップタワー(47)は、ナセル(35)及びブレード(39)を組み込んだ状態で前記運搬用甲板昇降式作業台船(33)に積載されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の洋上風力発電施設も施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−112239(P2012−112239A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34971(P2012−34971)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2010−48051(P2010−48051)の分割
【原出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(594062938)第一建設機工株式会社 (5)
【出願人】(390017684)大石建設株式会社 (6)
【出願人】(510060707)熊進開発株式会社 (3)
【Fターム(参考)】