説明

洗浄タンクにおける排水弁の操作装置

【課題】作用レバーの回動によって玉鎖等の引上げ材を引き上げ、排水弁を開弁させる排水弁の操作装置において、作用レバーのアーム長を短くし得て操作装置を小型化でき、或いは洗浄タンクを薄型化し得るようにする。
【解決手段】洗浄タンク10内の排水弁30に一端が連結された可撓性を有する線状の引上げ材32と、洗浄ハンドル44と、作用レバー46と、を備えた洗浄タンク10における排水弁30の操作装置42において、引上げ材32の他端を作用レバー46に近接した位置で固定部に固定するとともに、他端の固定位置から離れた位置で作用レバー46のアーム50にて引上げ材32を支持し、作用レバー46の回動に伴ってアーム50にて引上げ材32を軸線方向に相対移動させながら他端の固定位置よりも上側に引き上げ、排水弁30を開弁させるようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗浄タンクにおける排水弁の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(イ)便器の洗浄水を内部に貯える洗浄タンクの排出口を開閉する排水弁に一端が連結された可撓性を有する線状の引上げ材と、(ロ)排水弁を開弁操作する操作部と、(ハ)操作部からの操作力を引上げ材に作用させ、引張状態とした引上げ材を支持部で引上げ作用させて排水弁を開弁させる作用部材と、を備えた洗浄タンクにおける排水弁の操作装置が公知である。
図7はその具体例を示している。
【0003】
図において200は洗浄タンクで、202は陶器製のアウタタンク、204は樹脂製のインナタンクで、このインナタンク204内部に便器の洗浄水が貯えられる。
206は洗浄タンク200の底部に設けられた排出口で、208はこの排出口206を開閉する排水弁(ここではフロート弁)である。
210は可撓性を有する玉鎖(線状の引上げ材)で、その一端(下端)が排水弁208に連結されている。
【0004】
212は、洗浄タンク200の側壁外部に回動可能に設けられた手動操作部としての洗浄ハンドルで、214はこの洗浄ハンドル212に連結されて洗浄タンク200内部を延びる作用レバー(作用部材)である。
【0005】
作用レバー214は、洗浄タンク200内を幅方向にほぼ水平に延びる回転軸部216と、回転軸部216の先端から下向きに折れ曲った形態のアーム218とを有する、全体としてL字状をなす部材で、そのアーム218の先端部に、上記の玉鎖210の排水弁208とは反対側の他端がフック金具220を介して連結されている。
尚、222は電気的操作部としてのモータ駆動部で、作用レバー214は洗浄ハンドル212の回動操作によっても、或いはモータ駆動部222によっても回動操作可能である。
【0006】
この排水弁の操作装置にあっては、洗浄ハンドル212若しくはモータ駆動部222によって、作用レバー214を図7及び図8(I)に示す状態から側面視において一方(大洗浄側)に回動させると、図8(II)に示しているように玉鎖210が引き上げられてフロート弁208が開弁する。
ここにおいて排出口206が開放されて洗浄タンク200内に貯えられていた洗浄水が便器に向けて排出され、便器の大洗浄が行われる。
この大洗浄では洗浄タンク200内部の洗浄水が大量で排出される。
【0007】
一方作用レバー214を上記とは逆方向に回動させると、同様にしてフロート弁208が開弁し、排出口206から洗浄水が排出されて便器の小洗浄が行われる。
この小洗浄時においては洗浄水が大洗浄時に比べて小量で排出される。
尚、この種の排水弁の操作装置は例えば下記特許文献1,特許文献2に開示されている。
【0008】
従来の排水弁の操作装置において、上記の作用レバー214は、通常、洗浄タンク200の奥行方向(厚み方向)の内部スペースをアーム218の回動スペースとする状態に設けられる。
ところが、近年における洗浄水の節水化等に伴う洗浄タンク200の小型化,薄型化に伴って、アーム218の回動スペースを十分に確保することが困難化してきている。
換言すれば、アーム218の回動スペースの確保が洗浄タンク200の薄型化を制約する要因となっている。
【0009】
この場合、アーム218の長さを短くすることで対応するといったことも考えられるが、この場合には作用レバー214の回動に伴う玉鎖210の引上げ量が不足してしまい、洗浄水の排出流量即ち便器の洗浄水量を十分に確保できなくなってしまう。
従って単にアーム218の長さを短くすることで対応するといったことは実際上採用することはできない。
【0010】
また節水式の便器洗浄装置、例えば洗浄水を小量の6リットル洗浄タンク200から排出して便器洗浄を行うものの場合、玉鎖210の引上げ量が設定した引上げ量に対して不足してしまうと、洗浄水量が所要の6リットルに足らない量となって便器の洗浄不足を招いてしまう。
【0011】
従ってこのような場合には玉鎖210の長さを適正且つ微妙に調節することが必要であり、この場合玉鎖210の長さの調節作業が面倒な作業となってしまうといった問題も生ずる。
尚、玉鎖即ち排水弁の引上げ不足の問題を解決することを目的としたロータンク装置が下記特許文献3に開示されているが、このものは課題解決のための手段が本発明と異なっており、本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−34763号公報
【特許文献2】実用新案登録第2535917号公報
【特許文献3】実開平7−35579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来の排水弁の操作装置と同じ操作量の下でも引上げ材を余裕をもって大きく引き上がることができ、玉鎖等の引上げ材の長さの調節作業を容易化し得るとともに、作用レバーの回動によって玉鎖等の引上げ材を引き上げ、排水弁を開弁させる場合においても、アーム長を短くし得て操作装置を小型化でき、或いは洗浄タンクを薄型化し得るとともに、操作部の操作によって設定した十分な量で洗浄水を洗浄タンクから排出することのできる排水弁の操作装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、(イ)便器の洗浄水を内部に貯える洗浄タンクの排出口を開閉する排水弁に一端が連結された可撓性を有する線状の引上げ材と、(ロ)該排水弁を開弁操作する操作部と、(ハ)該操作部からの操作力を前記引上げ材に作用させ、引張状態とした該引上げ材を支持部において引き上げ作用させて前記排水弁を開弁させる作用部材と、を備えた洗浄タンクにおける排水弁の操作装置であって、前記引上げ材の前記排水弁とは反対側の他端を前記作用部材に近接した位置で固定部に固定するとともに、該他端の固定位置から離れた位置で前記支持部により前記引上げ材を支持し、前記作用部材による作用により該支持部において該引上げ材を、該支持部に対し該引上げ材を軸線方向に相対移動させながら上側に引き上げて前記排水弁を開弁させるようになしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記支持部が前記引上げ材に対する支持位置を前記他端の固定位置よりも上方に移動させ、該支持位置において該引上げ材を上側に引き上げるものとなしてあることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記支持部には挿通孔が設けられ、該挿通孔に前記引上げ材が挿通してあることを特徴とする。
【0017】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記作用部材自体に前記支持部が備えられていることを特徴とする。
【0018】
請求項5のものは、請求項4において、前記作用部材が、前記操作部に連結されて前記洗浄タンク内部を延びる作用レバーであって、回転軸部と該回転軸部から下向きに折れ曲った形態のアームとを有しており、該アームを前記支持部となして該アームの先端部で前記引上げ材を支持し且つ前記操作部からの操作力を該引上げ材に作用させるものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように本発明は、引上げ材の、排水弁とは反対側の他端を作用部材に近接した位置で固定部に固定するとともに、その他端の固定位置から離れた位置で支持部により引上げ材を支持し、作用部材による作用により、支持部において引上げ材を支持部に対し軸線方向に相対移動させながら上側に引上げ作用させて、排水弁を開弁させるようになしたものである。
【0020】
この排水弁の操作装置においては、例えば洗浄タンクの壁又はこれに固定の部材の壁を固定部として、そこに引上げ材の他端を固定し、そしてその他端の固定位置から離れた位置で、引上げ材を支持部に対し軸線方向に相対移動させながら支持部において引上げ材を引上げ作用させ、排水弁を開弁させるものであるため、従来の排水弁の操作装置のように、引上げ材の他端を直接支持部に連結して、その支持部により引上げ材を上向きに引き上げる場合に比べ、少ない操作量の下で排水弁を大きく引き上げ開弁させるようになすことが可能である。
従って排水弁の引上げ不足が生じないように、洗浄タンク内において引上げ材の長さ調節をそれほど厳密に行わなくても良く、引上げ材の長さ調節作業を容易化することができる。
【0021】
本発明においては、上記支持部を、引上げ材に対する支持位置を上記他端の固定位置よりも上方に移動させ、その支持位置において引上げ材を上側に引き上げるものとなしておくことができる(請求項2)。
このようにすることで、効果高く引上げ材の排水弁側の一端即ち排水弁を大きく引き上げることができる。
尚、引上げ材の他端の固定位置は、支持部による支持位置(便器洗浄を行わないときの通常の位置)と同等以下の位置となしておくのが有利である。
【0022】
本発明では、上記の支持部に挿通孔を設けておき、その挿通孔に引上げ材を挿通しておくことができる(請求項3)。
このようにしておけば、支持部に対し引上げ材を円滑に軸線方向に相対移動させながら、支持部において引上げ材を引上げ作用させることができ、ひいては排水弁を円滑に開弁させることができる。
【0023】
本発明では、上記作用部材と支持部とを別々に構成しておくことも可能であるが、請求項4に従って作用部材自体に上記の支持部を備えておくことができる。
【0024】
本発明は、好適には請求項5に従って、上記の作用部材を図7に示した作用レバーにて構成し、その作用レバーのアームを上記の支持部となして、作用レバーの回動に伴ってアームの先端部で引上げ材を支持し且つ引き上げるようになすことができる。
【0025】
このようになした場合、従来と同じ回動量で作用レバーを回動させた場合、排水弁を従来に比べてより大きく引き上げることができる。
或いは排水弁の引上げ量を従来と同様とする場合には、アーム長さを従来に比べて短くすることができる。
これにより作用レバーを含む操作装置を従来に比べてコンパクト化することができる。
またアームの回動スペースを大きく確保しなくても良くなるため、洗浄タンクを従来に比べて容易に薄型化、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態である排水弁の操作装置を備えた洗浄タンクの断面図である。
【図2】同実施形態の操作装置の斜視図である。
【図3】同実施形態の操作装置の作用説明図である。
【図4】同実施形態の操作装置の要部拡大図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図7】従来の排水弁の操作装置の一例を示した図である。
【図8】図7の操作装置の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンクで陶器製のアウタタンク12と、樹脂製のインナタンク14とを有しており、そのインナタンク14内部に便器の洗浄水が貯えられる。
アウタタンク12の上部には、蓋を兼用した手洗鉢16が設けられている。この手洗鉢16には手洗水を吐水する吐水管18が起立する状態で設けられている。
【0028】
20は、洗浄タンク10内部に配設されたボールタップで、浮玉22の昇降に連動して給水及び給水停止を行う。
即ち、浮玉22が下降するとボールタップ20の弁部が開かれて吐出管24を通じ洗浄タンク10内部に給水が行われる。
また一方洗浄タンク10内部の水面の上昇につれて浮玉22が上昇し、そしてその水面が設定満水位に達すると、ボールタップ20の弁部が閉じて給水を停止する。
【0029】
このボールタップ20からはまた、蛇腹管から成る導水管26が延び出していて、その先端部が吐水管18に接続され、洗浄タンク10への給水時に、併せてこの導水管26を通じて吐水管18への給水が行われる。
【0030】
洗浄タンク10の底部には、排出口28が設けられており、この排出口28が排水弁(ここではフロート弁、但しフラッパー弁であっても良い)30にて開閉されるようになっている。
この排水弁30には、可撓性を有する紐状材から成る引上げ材32の一端(下端)が連結されている。
ここでは引上げ材32の一端がカップ34及び弁棒36を介して排水弁30に連結されている。
【0031】
カップ34は底部に貫通の水抜孔を有しており、小洗浄時には弁棒36の傾動により水抜孔が閉鎖されることで、内部の水を錘として作用させ、排水弁30を開弁後に速く閉弁させて洗浄水の排出量を少なくする。
また大洗浄時には弁棒36の上記とは逆方向の傾動により水抜孔を開放させて水抜きを行い、排水弁30を開弁後にゆっくりと閉弁させて洗浄水を多く排出させる。
【0032】
弁棒36は軸38周りに傾動可能とされており、小洗浄時においてはこの弁棒36がカップ34の水抜孔を閉鎖する状態、また大洗浄時には水抜孔を開放した状態となる。
尚、40はオーバーフロー管である。
【0033】
42は排水弁30の操作装置で、この操作装置は、上記の引上げ材32と、洗浄タンク10の側壁の外面に回動可能に設けられた手動操作部としての洗浄ハンドル44と、洗浄タンク10内部を延びる作用レバー(作用部材)46と、更に電動操作部としてのモータ駆動部48とを有している。
即ちこの実施形態では、洗浄ハンドル44の操作によっても、またモータ駆動部48の操作によっても、作用レバー46を回動させて排水弁30を開弁可能となしてある。
【0034】
但しモータ駆動部48による操作では、作用レバー46を大洗浄側及びこれと反対の小洗浄側の何れにも丁度90°回動させるが、洗浄ハンドル44の操作ではこれよりも僅かに大きい角度だけ作用レバー46を回動可能である。
このときの洗浄ハンドル44の回動の上限はストッパによって規制される。
【0035】
図2に示しているように、上記引上げ材32は排水弁30とは反対側の他端(上端)が、従来の排水弁の操作装置のように作用レバー46の先端に直接連結されておらず、作用レバー46に近接した位置で、固定部材としてのモータ駆動部48のケースの壁に固定されている。
【0036】
図2に示しているように、作用レバー46は洗浄タンク10内部をその幅方向である図1中左右方向にほぼ水平に延びる回転軸部49と、その先端から下向きに直角に折れ曲ったアーム50とを有しており、そのアーム50の先端部において引上げ材32を、他端の固定位置から離れた位置で支持している。
即ちこの作用レバー46におけるアーム50は引上げ材32に対する支持部を兼ねている。
【0037】
ここでアーム50の先端部には、これを図中左右方向に貫通する挿通孔52が設けられており、引上げ材32はこの挿通孔52を挿通して上記の他端がモータ駆動部48のケースに固定されている。
ここで引上げ材32の上記他端の固定位置は、下向き状態にあるアーム50の挿通孔52即ちアーム50による支持位置と同等の高さ位置としてある。
【0038】
尚引上げ材32は、例えばポリアミド等の樹脂繊維その他の有機又は無機繊維を用いて上記の紐状に構成することもできるし、或いは金属ワイヤその他様々な材質のものを用いて1本の線状材として構成することもできる。
尚図4(A)に示しているようにアーム50の挿通孔52には、引上げ材32の円滑な移動を確保するために金属のはと目、その他の低摩擦の筒状のガイド部材54を装着しておくと良い。
このようにしておけば、引上げ材32の摺動時の滑りを良くして、引上げ材32を支持部としてのアーム50に対し円滑に相対移動させることができる。
【0039】
上記引上げ材32は、従来と同様に図4(B)に示すような玉鎖を用いることもできる。
この場合には、挿通孔52内に玉鎖の玉32Aが常時2つないしそれ以上位置するように、挿通孔52の軸線方向の長さを定めておくのが良い。
このようにすることで、引上げ材32として玉鎖を用いた場合においても、かかる玉鎖を挿通孔52に対し円滑に相対移動させることができる。
【0040】
図3は本実施形態の操作装置の作用を表している。
尚上記のようにこの実施形態では、モータ駆動部48,手動操作部としての洗浄ハンドル44の何れの操作によっても作用レバー46を回動可能であるが、ここでは洗浄ハンドル44を回動操作するものとして以下に説明する。
【0041】
図3(I)は洗浄ハンドル44を操作していないときの状態を表しており、このときには作用レバー46はアーム50が下向きの状態にあり、引上げ材32は引張状態ではなく僅かに緩んだ状態にある。
この状態で洗浄ハンドル44を大洗浄側に回動操作すると、作用レバー46がこれに伴って回動運動し、アーム50が下向きの姿勢から回転軸部49の軸線周りに回動運動して横向きの姿勢となる。
【0042】
このとき、引上げ材32は固定部材としてのモータ駆動部48のケースへの固定位置から離れた位置で作用レバー46のアーム50の上方移動によりアーム50にて上側に、詳しくはケースへの他端の固定位置よりも上側に引き上げられる。
従って引上げ材32の図中下端の引上げ量即ち排水弁30の引上げ量は、作用レバー46におけるアーム50の先端の上方への移動量よりも多くなる。
【0043】
例えば引上げ材32の他端をアーム50の先端に連結してあるときの排水弁30の引上げ量が20mmであったとすると、この実施形態によれば、排水弁30を(従来の引上げ量20mm)+(図中Lに相当する量)だけ多く引き上げることができる。
【0044】
尚この実施形態では、小洗浄時においても洗浄ハンドル44及び作用レバー46が上記大洗浄時とは逆方向に同じ角度だけ回動せしめられる。従ってその際の作用は、大洗浄時と同様の図3に示したものとなる。
但し小洗浄時においては、開弁した排水弁30は大洗浄時よりも速く下降して閉弁し、洗浄タンク10からの洗浄水の排出量を少なくする。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、作用レバー46のアーム長が従来と同様若しくは多少短い場合であっても、従来と同様の操作量即ち作用レバー46の回動量の下で引上げ材32即ち排水弁30を大きく引き上げ開弁させることができる。
従って排水弁30の引上げ不足が生じないように、洗浄タンク10内において引上げ材32の長さ調節をそれほど厳密に行わなくても良く、引上げ材32の長さ調節作業を容易化することができる。
【0046】
またアーム長を短くできることから、作用レバー46を含む操作装置42を従来に比べてコンパクト化することができる。
またアーム50の回動スペースを大きく確保しなくても良くなるため、洗浄タンク10を従来に比べて容易に薄型化、小型化することができる。
【0047】
この実施形態では、上記のように手動操作部としての洗浄ハンドル44と、電動操作部としてのモータ駆動部48との何れによっても作用レバー46を回動可能としているが、場合によってモータ駆動部48を省略し、洗浄ハンドル44の操作によってだけ作用レバー46を回動させるようになしておくことも可能である。
【0048】
その場合、上記のように洗浄ハンドル44はモータ駆動部48による回動量よりも僅かに多く作用レバー46を回動させることができる。
ところがモータ駆動部48にて作用レバー46を回動させる場合、モータに大きな負荷がかからないようにするため、作用レバー46を洗浄ハンドル44による操作のときよりも少ない回動量で、詳しくは丁度角度90°だけ作用レバー46を回動させるようにする。
この場合当然に洗浄ハンドル44によって排水弁30を引き上げるときよりも、その引上げ量は少なくなる。
【0049】
つまり引上げ材32を作用レバー46の先端部に直接連結してモータ駆動部48にて排水弁30を引き上げるようになした場合、洗浄ハンドル44によって排水弁30を引き上げるときよりも排水弁30の引上げ不足が生じる恐れが高い。
【0050】
しかるに排水弁30の操作装置42を本実施形態に従って構成しておいた場合、モータ駆動部48によって引上げ材32を引き上げるようになしても十分な引上げ量で排水弁30を引き上げることができ、従ってモータ駆動部48にて排水弁30を引き上げたときに引上げ不足が生じる恐れを有効に解消することができる。
つまり本実施形態はこのようなモータ駆動部48を備えた操作装置42に適用して特に有利なものである。
【0051】
図5は本発明の他の実施形態を示している。
この例では操作部が押ボタン式の操作部となしてある。
図中58はその操作部としての押ボタンで、洗浄タンク10の上面に下向きに押込可能に設けてある。
尚押ボタン58は、復帰ばね60によって押込後に自動的に元も位置へと戻される。
【0052】
図において、62は作用部材で、ここでは作用部材62は図中上下方向に直線往復運動する。
この作用部材62には、その下端部に引上げ材32を挿通する挿通孔52が設けられている。作用部材62はこの挿通孔52を支持位置として引上げ材32を支持する。
尚、ここでは引上げ材32の他端は洗浄タンク10の壁自体に固定されている。
【0053】
上記押ボタン58と作用部材62との間には、操作力の伝達機構64が設けられており、押ボタン58の押込運動が、この伝達機構64によって作用部材62に伝達され、かかる作用部材62が押ボタン58の押込みに連動して上向きに移動するようになしてある。
即ちこの作用部材62の上向きの移動によって、引上げ材32が作用部材62の支持部62Aによって上向きに引き上げられるようになっている。
従ってこの実施形態においても作用部材62に、引上げ材32の支持部が一体に構成してある。
【0054】
上記伝達機構64は、押ボタン58に結合されてこれと一体に上下移動するラック部材66と、そのラック部材66に設けられたラックギヤ68に噛み合う大径のピニオンギヤ70,これと一体に回転し、上記作用部材62に設けられたラックギヤ72に噛み合う小径のピニオンギヤ74とを有しており、押ボタン58を下向きに押込操作すると、各ギヤの噛合いに基づいて作用部材62が上向きに直線移動し、引上げ材32を挿通孔52において上側に引き上げる。
【0055】
そして押ボタン58から手を離すと、復帰ばね60の付勢力によって押ボタン58が元の位置へと上昇して戻り、これとともに作用部材62が元の位置へと下向きに直進移動せしめられる。
尚この例では、押ボタン58を大きく押し込むことで大洗浄を行い、またこれよりも小さく押し込むことで小洗浄を行うことができる。
【0056】
図6は本発明の更に他の実施形態を示している。
図6(A)において、76は上下移動する棒状の作用部材で、その下端部に挿通孔52が設けられて、その挿通孔52に引上げ材32が挿通され、かかる引上げ材32が作用部材76にて支持され且つ引き上げられるようになっている。
即ちこの実施形態においても、作用部材76に引上げ材32の支持部76Aが一体に構成されている。
【0057】
64は、押ボタン58に加えられた押込力を作用部材76に伝達する伝達機構で、ここでは伝達機構64はレバー式の伝達機構とされている。
即ちこの伝達機構64は、押ボタン58に一体移動状態に結合された押棒78と、軸80周りに揺動運動するレバー82とを有しており、そのレバー82の一端部が押棒78に相対回転可能に連結され、また他端が上記の作用部材76の上端に相対回転可能に連結されている。
【0058】
この実施形態では、押ボタン58を下向きに押込操作するとレバー82が図中反時計方向に回動して、作用部材76を上向きに移動させる。ここにおいて引上げ材32が挿通孔52の個所において上向きに引き上げられる。
尚図6(A)において、復帰ばね60は場合によって省略することも可能である。
【0059】
一方図6(B)の例は、作用部材と引上げ材32の支持部とを別体に構成した例である。
図において84は位置固定の軸86周りに回転可能に設けられた固定側の滑車で、この固定側の滑車84と、引上げ材32の固定側の他端との間に、上下に移動可能な可動の滑車88が設けられている。
ここで滑車88は押ボタン58と一体に移動する押棒78の下端の軸90周りに回転可能に設けられている。
そして上記の引上げ材32が、固定側の滑車84の上半部及び可動側の滑車88の下半部にそれぞれ巻き掛けられている。
【0060】
この実施形態では、押棒78と可動の滑車88とによって作用部材90が構成され、また固定側の滑車84にて引上げ材32を支持する支持部が構成されている。
ここでは押ボタン58を下向きに押し込むと、作用部材90を成す押棒78と可動の滑車88とが図中下向きに押ボタン58と一体に移動して、引上げ材32の、固定の滑車84による支持部と固定側の他端との間の部分を下向きに押し下げる。
即ち押ボタン58に加えられた操作力を引上げ材32に対して作用させ、滑車84と固定側の他端との間を下向きに押し下げる。
【0061】
すると支持部である滑車84の回転を伴って引上げ材32の滑車84よりも排水弁30側の部分が引き上げられ、排水弁30が開弁動作する。
また押ボタン58に加えていた操作力を除くと、排水弁30が洗浄タンク10内の洗浄水の水位低下に伴って下降運動し、最終的に閉弁動作する。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 洗浄タンク
28 排出口
30 排水弁
32 引上げ材
42 操作装置
44 洗浄ハンドル
46 作用レバー(作用部材)
49 回転軸部
50 アーム(支持部)
52 挿通孔
58 押ボタン(操作部)
62,76 作用部材
62A,76A 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)便器の洗浄水を内部に貯える洗浄タンクの排出口を開閉する排水弁に一端が連結された可撓性を有する線状の引上げ材と、(ロ)該排水弁を開弁操作する操作部と、(ハ)該操作部からの操作力を前記引上げ材に作用させ、引張状態とした該引上げ材を支持部において引き上げ作用させて前記排水弁を開弁させる作用部材と、を備えた洗浄タンクにおける排水弁の操作装置であって、
前記引上げ材の前記排水弁とは反対側の他端を前記作用部材に近接した位置で固定部に固定するとともに、該他端の固定位置から離れた位置で前記支持部により前記引上げ材を支持し、前記作用部材による作用により該支持部において該引上げ材を、該支持部に対し該引上げ材を軸線方向に相対移動させながら上側に引き上げて前記排水弁を開弁させるようになしてあることを特徴とする洗浄タンクにおける排水弁の操作装置。
【請求項2】
請求項1において、前記支持部が前記引上げ材に対する支持位置を前記他端の固定位置よりも上方に移動させ、該支持位置において該引上げ材を上側に引き上げるものとなしてあることを特徴とする洗浄タンクにおける排水弁の操作装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記支持部には挿通孔が設けられ、該挿通孔に前記引上げ材が挿通してあることを特徴とする洗浄タンクにおける排水弁の操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記作用部材自体に前記支持部が備えられていることを特徴とする洗浄タンクにおける排水弁の操作装置。
【請求項5】
請求項4において、前記作用部材が、前記操作部に連結されて前記洗浄タンク内部を延びる作用レバーであって、回転軸部と該回転軸部から下向きに折れ曲った形態のアームとを有しており、該アームを前記支持部となして該アームの先端部で前記引上げ材を支持し且つ前記操作部からの操作力を該引上げ材に作用させるものであることを特徴とする洗浄タンクにおける排水弁の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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