説明

洗浄ノズルおよび洗浄装置

【課題】水道水でも十分な洗浄効果が得られ、ノズル自体の強度も十分で耐久性も高い、円筒状のフィルターエレメント用の洗浄ノズルを提供する。
【解決手段】軸方向に所定長さの円筒部(3)から構成する。円筒部(3)は、被洗浄物である円筒状のフィルターエレメントに対応しており、軸方向に2列に複数個の噴射孔4、4、…が「h」の間隔をおいて明けられている。1列目の複数個の噴射孔4、4、…と2列目の複数個の噴射孔4、4、…の間隔は軸方向に「1/2・h」だけずれている。これらの噴射孔4、4、…は、内側から外側に向かってテーパ状に絞られたテーパ孔として電子ビーム孔加工機によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水等の洗浄水をシャワー状に洗浄対象物に噴射して、該洗浄対象物に付着している汚れ、異物等を除去する洗浄ノズルに関し、限定するものではないが、特に円筒状のフィルターエレメント用の洗浄装置に適用して好適な洗浄ノズルおよび洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品加工分野においては、例えば果実を絞って得られる果汁、牛乳等から色々な飲料食品が加工されている。これらの果汁、牛乳等の液体食品原料に、繊維質等の固形物、凝固した固形成分、果実に元々付着していた異物等が混入していると、品質の高い飲料食料品を加工する上で問題となる。そこで、これらの異物等を液体食品原料中から濾過して取り除くために、食品加工機械にはストレーナすなわちフィルタエレメントが設けられている。このようなフィルタエレメントは、従来周知のように、一方が開口した中空の円筒形状を呈し、円筒の底面および周面が濾過面となっている。濾過面は目の細かい金網、微小な孔が多数明けられた金属板等で構成されている。このように構成されているフィルタエレメントは、例えば配管の途中にラインストレーナとして取り付けられる。このフィルタエレメントにより異物等は濾し取られ、品質の高い液体食品原料あるいは液体食品が得られる。
【0003】
このような食品加工用のフィルタエレメントは、ろ材としての性能維持と衛生上の理由から定期的に洗浄され、付着した異物や汚れが除去されている。洗浄に当たっては、食品加工機械から取り外した円筒状のフィルタエレメントを、開口部の方から洗浄ノズルを挿入し、フィルタエレメントの内周壁に洗浄水を噴射して異物を除去するようにしている。このような洗浄には、1個の噴射孔あるいはノズル孔が設けられている洗浄ノズルが使用されている。1個のノズル孔で洗浄するために、ノズル孔の形状は洗浄水が円形に広がるように、あるいは洗浄水が縦方向や横方向に扁平した楕円形状に広がるような形状になっている。これにより、洗浄水はフィルタエレメントの内周壁の所定の範囲に噴射されることになる。このとき、洗浄ノズルを回転させ、あるいは洗浄ノズルをフィルタエレメントの軸方向に前後動させて、フィルタエレメントの内周壁に隈無く洗浄水を噴射させている。
【0004】
ところで、フィルタエレメントの金網の目、金属板に多数明けられた微少な孔等に詰まった微小な異物は、比較的強い水圧が直接異物に作用しないと取り除くことは難しい。従来の洗浄ノズルから噴射される洗浄水は、上記したように面状に広がるので、直接異物に当たる水圧が低くなり、十分に洗浄できない。そこで、洗浄ノズルから噴射される洗浄水を絞って、洗浄水が広がりすぎないようにしたり、あるいは供給される洗浄水にあらかじめ高圧をかけて噴射するように実施されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−211779号公報
【0006】
本発明の直接的な文献にはならないが、特許文献1にボトル洗浄用ノズルが記載されている。このボトル洗浄用ノズル60は、図5に示されているように、ノズル先端に軸方向に明けられた1個の第1の噴射孔61と、ノズルの先端部近傍に軸方向とわずかに角度がずらされてノズルの肩近傍に明けられた4個の第2の噴射孔62、62、…と、さらに軸方向と角度がずらされた4個の第3の射出孔63、63、…とからなっている。各噴射孔61、62、63、…から噴射される洗浄水は、棒状あるいは針状に噴射されて広がらないので、噴射される洗浄水の水圧は減少することなく洗浄対象物に作用する。従って、特許文献1に記載の洗浄用ノズル60がフィルタエレメントの洗浄に適用されると、フィルタエレメントの金網の目等に詰まった異物はある程度除去されると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来周知の洗浄ノズルによっても、上記したようにフィルタエレメントの洗浄は可能であるが、色々な欠点がある。例えば、洗浄水の水圧を確保するために、噴射される洗浄水が広がらないように絞ると、一度に洗浄できる範囲が狭くなる。洗浄範囲が狭くなるので、フィルタエレメントの内側を隈無く洗浄するのに時間がかかり作業効率が悪いという問題がある。また、作業効率を上げるために噴射される洗浄水が広げるようにすると、水道水の供給圧力だけでは不十分で、所定の水圧を確保するために格別に加圧ポンプ等の加圧装置が必要となり、洗浄装置が大型化するだけでなく高価になってしまう。
【0008】
一方、特許文献1に記載のボトル洗浄用ノズル60をフィルタエレメントの洗浄に適用すると、前述したように各噴射孔61、62、63、…から噴射される洗浄水は、棒状あるいは針状に噴射されて広がらないので、噴射される洗浄水の水圧が減少することはないが、噴射孔の数が少ないので洗浄される範囲は限られてしまう。結果的に、一度に洗浄できる範囲が狭くなり、作業効率が悪い。
【0009】
特許文献1に記載のボトル洗浄用ノズル60の長所の一つは、洗浄水が棒状あるいは針状に噴射されて、噴射される洗浄水の水圧が下がらないことであり、このボトル洗浄用ノズル60に細い管状の噴射孔を多数明けて、シャワー状に洗浄水を噴射させることは考えられる。このように改良すると、洗浄される範囲は広くなる。しかしながら、以下に説明するように、内径が一定の細い管状の噴射孔では、噴射孔そのものの管壁摩擦による圧力損失によって、噴射される水圧が低下するという別の問題が生じる。
【0010】
以下、図6に基づいて、内径が一定の細い管状の噴射孔では水圧が低下する理由を説明する。図6に、ノズルに明けられた細い管状の噴射孔の、1個の噴射孔の断面が示されている。ノズル50には内側面50aから外側面50bに向かって内径が一定の噴射孔51が明けられている。噴射孔51の内径dは、洗浄水が針状に噴射されるように、例えば0.3〜1.0mmの大きさになっている。噴射される洗浄水の流速は、秒速数m程度であるので、噴射孔51の内面側50aでは洗浄水は層流になる。内径が一定の管状の噴射孔51を流れる層流には、管壁摩擦によって噴射孔51の長さ方向にわたって水圧の圧力損失が生じる。損失水圧は噴射孔51の内径の二乗に反比例するので、このように小さな孔径の噴射孔51の場合、噴射孔51の長さLにわたって損失する水圧は無視できない。圧力損失を小さくするため、ノズル肉厚を薄くして噴射孔51の長さLを短くすることも考えられるが、薄くするとノズル自体の強度が低下して耐久性が落ちるという別の問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記したような問題点あるいは欠点を解決した洗浄ノズルおよび洗浄装置を提供しようとするもので、具体的には一度に広範囲を洗浄することができ、洗浄の作業効率が高いにも拘わらず、高圧水を格別に必要とせず、換言すると水道水の供給圧力のみによっても十分な洗浄効果が得られ、ノズル自体の強度も十分で耐久性も高い、洗浄ノズルおよび洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、洗浄ノズルの噴射孔は入口から出口に向かってテーパ状に縮径されている。すなわち、洗浄水は洗浄水源側から洗浄対象物に向けて噴射されるが、その噴射孔の断面形状は洗浄水源側は大きく、洗浄対象物側は小さく、全体としてテーパ状を呈するように構成される。また、噴射孔の平面形状は、円形あるいは長方形を呈するように構成される。そして、これらの噴射孔は、電子ビーム孔加工機あるいはレーザ孔加工機により形成される。本発明に係る洗浄ノズルが、円筒状のフィルターエレメントの洗浄に適用されるときは、洗浄ノズルは軸方向に所定長さの円筒部を備えるように構成される。そして、円筒部には軸方向に1列あるいは複数列にわたって、複数個の噴射孔が形成される。
【0013】
上記のように構成されている、特に円筒状のフィルターエレメントの洗浄に適用されるときは洗浄ノズルは、円筒状のフィルターエレメントの内側で回転駆動されるように構成される。すなわち、円筒状のフィルターエレメントの洗浄装置は、洗浄ノズルと、洗浄水供給管と、前記洗浄ノズルと洗浄水供給管とを制御された速度で一体的に回転駆動する電動モータとから構成される。前記洗浄ノズルは着脱自在のカバー内に、前記洗浄水供給管と電動モータは筐体内に収納される。そして、前記洗浄ノズルは円筒部を備えるように構成され、該円筒部には軸方向に1列あるいは複数列にわたって、複数個の噴射孔が形成される。これらの噴射孔もテーパ状に形成される。また、洗浄対象物が円筒状のフィルターエレメントのときは、軸方向の長さがまちまちな円筒状のフィルターエレメントにも適用できるように、高さ調節自在なスペーサが適用される。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、洗浄水源側の洗浄水を複数個の噴射孔から洗浄対象物に向けて噴射して、前記洗浄対象物に付着している異物、汚れ等を除去するための洗浄ノズルであって、前記洗浄ノズルに形成されている前記複数個の噴射孔は、前記洗浄水源側から前記洗浄対象物側に向けてテーパ状に縮径されている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、該洗浄ノズルは軸方向に所定長さの円筒部からなり、該円筒部には前記噴射孔が軸方向に列をなして複数個形成されていると共に、前記円筒部の径は洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントの径よりも小さく、前記円筒状のフィルターエレメントは前記円筒部に装着されて洗浄されるようになっている。請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の洗浄ノズルにおいて、前記噴射孔は、その平面形状は円形あるいは長方形で、電子ビーム孔加工機によって形成されている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、洗浄ノズルと、回転継手を介して接続されて前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給管と、前記洗浄ノズルと洗浄水供給管とを制御された速度で回転駆動する電動モータとを備え、前記洗浄ノズルは着脱自在のカバー内に、前記洗浄水供給管と電動モータは筐体内に収納されている洗浄装置であって、前記洗浄ノズルは軸方向に所定長さの円筒部からなり、該円筒部には内周面から外周面に向けてテーパ状に縮径されている噴射孔が軸方向に列をなして複数個形成されていると共に、前記円筒部の径は洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントの径よりも小さく、前記円筒状のフィルターエレメントは前記円筒部に装着されて洗浄されるようになっている。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の装置において、前記噴射孔は複数列にわたって電子ビーム孔加工機によって形成され、請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の装置において、前記洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントは、高さ調節用の管状のスペーサを介して前記洗浄ノズルの円筒部に装着されて洗浄されるようになっている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によると、洗浄ノズルには複数個の噴射孔が明けられているので、一度に広範囲に洗浄水を噴射することができ、洗浄の作業効率が高くなる。このとき、噴射孔は浄水源側から洗浄対象物側に向けてテーパ状に縮径されているので、洗浄水は針状に噴射され、噴射される洗浄水の圧力は、減少することなく異物、汚れ等に直接的に作用する。すなわち、洗浄水は滑らかに加速されて噴出されるだけでなく、噴射孔の管壁摩擦による圧力損失も小さく、管壁摩擦による圧力損失は、噴射孔の内径の二乗に反比例して小径となるほど大きくなるが、噴射孔がテーパ状に形成されているので、小径の部分の噴射孔の長さは短く、圧力損失は小さい。これにより、複数個の噴射孔が明けられているにも拘わらず、安価な水道水の供給圧力によって十分に洗浄することができるという、本発明に特有の効果が得られる。さらに、噴射孔の圧力損失を小さくするために、洗浄ノズルの肉厚を薄くする必要もないので、十分な強度と耐久性を兼ね備えた洗浄ノズルを提供することもできる。また、他の発明によると、噴射孔は電子ビーム孔加工機によって形成されているので、肉厚の素材から安価に形成できる効果も得られる。さらには、洗浄装置の発明によると、円筒状のフィルタエレメントを洗浄することができるが、このときも上記したような本発明に特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルを、フィルタエレメントの洗浄用ノズルとして実施した例について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る洗浄ノズル1が取り付けられた、フィルタエレメント用の洗浄装置10を示す側面図である。洗浄装置10は、概略、水道水を供給する洗浄水供給部、供給された洗浄水を噴射させてフィルタエレメントを洗浄する洗浄部、洗浄後の排水を装置外に排出する排水部等から構成され、これらが以下に説明するように筐体内に組み込まれている。
【0018】
筐体は、図1に示されているように、作業エリアに設置されて装置全体のベースとなる第1の筐体K1と、第1の筐体1に取り付けられる第2の筐体K2とから構成されている。第2の筐体K2の、第1の筐体K1への取付位置を変更すると、装置全体の高さを自在に調整できるようになっている。第2の筐体K2の内部には、3枚の水平の第1〜3のテーブルT1、T2、T3が上下方向に所定の間隔で設けられている。最下層に位置する第3のテーブルT3と中間に位置する第2のテーブル2は、その周囲は第2の筐体K2の周壁に液密的に固着されているが、最上層に位置する第1のテーブルT1は、第2のテーブルT2に支持材17、17によって支持され、第1のテーブルT1の周囲と第2の筐体K2の周壁との間には所定の幅の隙間が設けられている。従って、下方が開口した筒状のカバーCを開口部を下にして第2の筐体K2の上から被せると、カバーCの周壁の下端部が第1のテーブルT1と第2の筐体K2の周壁との間の隙間に挿入され、カバーCが第2の筺体K2に着脱自在に取り付けられる。
【0019】
洗浄水供給部は、洗浄水供給管11、回転継手15、送水管16等から構成されている。本実施の形態によると、洗浄水供給管11には加圧ポンプ等の加圧装置を介することなく、直接水道水が供給されるようになっている。洗浄水供給管11には、開閉バルブ、水圧計18等が取り付けられて、第2の筐体K2の周壁に明けられた孔から、洗浄装置10の内部に挿入されている。この洗浄水供給管11は、回転継手15を介して送水管16に接続されている。送水管16の上端部は、第2のテーブルT2を貫通するように、第2のテーブルT2の中央に明けられた孔に通されている。本実施の形態によると、送水管16は第3のテーブルT3の下部のモータ室に設けられている電動モータ14によって制御された回転速度で回転駆動されるようになっている。洗浄水供給管11が、回転継手15を介して送水管16に接続されているので、電動モータ14により送水管16が回転駆動されても、洗浄水供給管11から洗浄水を連続して供給することができる。第2のテーブルT2の中央の孔と送水管16との隙間は、回転自在なシールド19で塞がれているので、第2のテーブルT2の孔と送水管16の隙間から洗浄水が下側の室に漏れることはない。
【0020】
このような送水管16の上端部分、すなわち送水管16の第2のテーブルT2の上方に突き出ている部分には、洗浄ノズル取付部12が設けられている。この洗浄ノズル取付部12の外周部には雄ネジが形成されている。
【0021】
洗浄部は、本発明の実施の形態では、円筒状の洗浄ノズル1から構成されている。円筒状の洗浄ノズル1の下端部あるいは開放端部には、後で説明するように取付部2が設けられているので、洗浄ノズル1を第1のテーブルT1の中央に明けられた所定の大きさの孔を貫通するように差し込んで、前述した洗浄ノズル取付部12に接続することができる。上記したように、送水管16が電動モータ14により回転駆動されるので、洗浄ノズル1も送水管16と一体となって回転駆動されることになる。
【0022】
排水部は排水管13から構成されている。排水管13の一方は、第2の筐体K2の周壁に明けられた孔から洗浄装置10内に挿入され、第2のテーブルT2の表面に開口し、他方は洗浄装置10外部の図に示されていない排水処理設備に接続されている。この排水管13にも開閉弁等が設けられれているが、図1には示されていない。
【0023】
次に、本発明の実施の形態に係る、洗浄ノズルについて説明する。図2の(ア)の斜視図に、本発明の第1の実施の形態に係る洗浄ノズル1が示されている。洗浄ノズル1は、一方が開口した長さが約100mmの中空の細長い円筒部3と、その開口した端部に取り付けられている幅広のリング状の取付部2とから構成されている。取付部2の内周面には、雌ネジが形成され、前述した洗浄装置10の洗浄ノズル取付部12に設けられている雄ネジに螺合するようになっている。
【0024】
洗浄ノズル1の円筒部3の周壁には、軸方向に2列に複数の小径の噴射孔4、4、…が明けられている。図2の(イ)は、円筒部3の展開図であるが、この展開図に示されているように、第1列の噴射孔4、4、…は、軸方向に所定の間隔hで明けられており、第2列の噴射孔4、4、…も同じ間隔hで明けられているが、第1列の噴射孔4、4、…に対して間隔hの半分だけ軸方向にずれている。噴射孔4、4、…は、1列当たり例えば183個明けられている。このような噴射孔4、4、…が形成されている第1列と第2列の間隔hwは、これらの噴射孔4、4、…から噴射される洗浄水が互いに干渉しない程度の間隔になっている。
【0025】
以上のように、本実施の形態によると、第1列の噴射孔4、4、…と、第2列の噴射孔4、4、…は、軸方向に「h」の間隔をおいて配置され、また第1列と第2列は間隔「hw」をおいて配置されているので、これらの噴射孔4、4、…から噴射される洗浄水は互いに干渉するようなことはない。しかも、本実施の形態によると、第1列の噴射孔4、4、…と第2列の噴射孔4、4、…は、軸方向に「1/2・h」だけずらされて明けられているので、洗浄ノズル1が回転駆動されると、噴射孔4、4、…は見かけ上「1/2・h」の間隔で明けられていることになる。これにより、密に洗浄できる効果が得られる。
【0026】
図3の(ア)は、上記したような第1の実施の形態に係る1個の噴射孔4を模式的に示す断面図である。噴射孔4は、この断面図に示されているように、洗浄ノズル1の円筒部3の内周面3aから、外周面3bに向かって、すなわち半径外方に向かってテーパ状に縮径されている。本実施の形態によると、円筒部3の肉厚は、例えば2.85mmで、噴射孔4の内周面3a側の内径d1は、0.77mm、外周面3b側の内径d2は、0.54mmに選定されている。
【0027】
次に、本発明の実施の形態に係る洗浄ノズル1の使用例について説明する。準備工程として図1に示されているように、洗浄装置10に本発明の第1の実施の形態に係る円筒状の洗浄ノズル1の取付部2を、洗浄ノズル取付部12に取り付ける。洗浄されるフィルタエレメントの長さに応じて選定された所定長さの管状のスペーサ20を、第1のテーブルT1の上に取り付ける。次いで、洗浄対象物であるフィルタエレメント21を、洗浄ノズル1に被せるように装着して、その下端部をスペーサ20に取り付ける。そして、洗浄水の飛散防止のためにカバーCを上から被せ、第2の筐体K2に取り付ける。これで準備工程が完了する。
【0028】
水道水、すなわち洗浄水を洗浄水供給管11から供給する。そうすると、洗浄水は回転継手15、送水管16等を介して洗浄ノズル1に達し、洗浄ノズル1に明けられている複数個の噴射孔4、4、…から、シャワー状に噴射される。噴射される洗浄水は、フィルタエレメント21の内壁に縦長に帯状に当たる。図に示されていないインバータ等で電動モータ14の回転数を制御し、ゆっくり送水管16を回転させる。そうすると、洗浄ノズル1も回転して、噴射される洗浄水はフィルタエレメント21の内壁に隈無く当たる。シャワー状に噴射される洗浄水がフィルタエレメント21の網の目等に詰まった異物、汚れ等に直接作用して、異物等が除去される。異物を含んだ洗浄水すなわち排水Hは、第1のテーブルT1上で一旦受けられて、第1のテーブルT1の周囲に流れ、第1のテーブルT1の周部とカバーCとの隙間から第2のテーブルT2上に流れ落ちる。落ちた排水Hは、第2のテーブルT2上で集められ、排水管13から外部に排出される。カバーCを取り外し、洗浄が終わったフィルタエレメント21を取り出す。以下同様にして次のフィルタエレメント21を洗浄する。
【0029】
上記のように本実施の形態によると、圧力が例えば0.5MPaのような低圧の水道水で洗浄することができるが、その理由を説明する。図4には、一つの噴射孔4の断面と噴射される洗浄水とが模式的に示されている。洗浄ノズル1の噴射孔4の内径d1は、前記したように内周面3a側では比較的大きいので、内周面3a側近傍における洗浄水の流速v1は比較的小さい。しかしながら、噴射孔4の外周面3b側における内径d2は比較的小さいので、外周面3a側近傍における洗浄水の流速v2は大きい。このように本実施の形態によると、噴射孔4はテーパ状に縮径されているので、洗浄水は滑らかに加速されて噴射される。
【0030】
次に、噴射孔4における孔内抵抗について考える。噴射される洗浄水の流速v2が、例えば秒速3mとすると、10℃の水の動粘性係数はν=0.013cm/秒であるので、噴射孔4の内径d2=0.54mmを流れる洗浄水のレイノルズ数Reは、下記で与えられる。
Re=v2×d2/ν=1246
従って、臨界レイノルズ数Rc=2300より小さいので、噴射孔4の内部では層流となっていることが分かる。層流の場合、管内抵抗による圧力損失は、平均流速に比例して、内径の二乗に反比例することが知られている。図6に示されるような、内径dが一定の噴射孔では、流速vも一定で、噴射孔の全長Lにわたって圧力損失が大きいのに対して、本願発明の実施の形態に係る洗浄ノズル1の噴射孔4は、内径が小さい部分は噴射孔4の一部だけであり、洗浄ノズル1の内壁3a近傍は内径が大きく、流速v1も小さいので、噴射孔の全長Lにわたる圧力損失は比較的少ない。従って、0.5MPa程度の水道水の供給圧力によっても、噴射孔4、4、…から噴射される洗浄水の水圧は十分高く、洗浄能力は高い。
【0031】
本発明の実施の形態に係る噴射孔4、4、…は、本出願人が特開2001−110307号公報により開示しているように、従来周知の電子ビーム加工機あるいは電子ビーム孔加工機で明けることができる。電子ビームのフォーカス位置を金属板の厚さ方向の上下にずらしながら、噴射孔を加工すると、金属板に噴射孔4、4、…がテーパ状に形成される。噴射孔が加工された金属板を円筒状に巻いて接合部を溶接すると、洗浄ノズル1の円筒部3が得られる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る洗浄ノズルについて説明する。洗浄ノズルの全体の形状は、第1の実施の形態に係る洗浄ノズル1とほぼ同様であるが、洗浄水を噴射する噴射孔4’、4’、…の形状が第1の実施の形態の噴射孔4、4、…とは異なっている。図3の(イ)には、本発明の第2の実施の形態に係る1個の噴射孔4’が示されている。図に示されているように、第2の実施の形態によると、噴射孔4’は平面形状が長方形を呈するスロット状の噴射孔4’として構成されている。このスロット状の噴射孔4’もテーパ孔として形成され、内周面3a側の長方形の面積の方が、外周面3b側のそれよりも大きく、全体としてテーパ状に形成されている。例えば、外周面3b側の長方形の大きさは、幅a=0.15〜0.5mm、長さb=2〜5mmのように形成されている。第2の実施の形態に係る洗浄ノズルによっても、噴射孔4’、4’、…は大きさが噴出される方向に向かって小さくなるようにテーパ状に形成されているので、第1の実施の形態と同様な作用を奏し、同様な効果が得られる。
【0033】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、噴射される1個の噴射孔の径が前記した径に限定されることなく、0.3〜1.0mm、あるいはそれ以上の大きさの径で実施できることは明らかである。洗浄ノズル1の筒部3に明けられる噴射孔4、4、…の列も、1列あるいは3列以上で実施することも、さらには噴射孔4、4、…の数を増減することもできる。また、洗浄ノズル1の長さを変更することも、洗浄ノズルの形状を変更して、例えば浴室に備わっているシャワーノズルのような凸面状のノズルとして実施することもできる。このように実施しても同様な効果が得られることは明らかである。また、本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルに高圧水を適用できることも明らかである。さらには、洗浄ノズルの噴射孔は、電子ビーム孔加工機によって明ける旨説明されているが、レーザ孔加工機によっても明けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
多数の噴射孔が明けられていながら、噴射孔による圧力損失が小さく、洗浄能力が高いので、フィルタエレメントの洗浄以外の洗浄にも適用可能である。さらに、洗浄水だけでなく、洗浄用の溶媒を噴射することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルが取り付けられている、フィルタエレメント用の洗浄装置を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る洗浄ノズルを模式的に示す図で、その(ア)は洗浄ノズルの斜視図、その(イ)は洗浄ノズルを板状に展開して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルに明けられた噴射孔を示す図で、その(ア)は第1の実施の形態を、その(イ)は第2の実施をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルに明けられた噴射孔の作用を説明するための断面図である。
【図5】特許文献1に記載のボトル洗浄用ノズルを模式的に示す断面図である。
【図6】洗浄ノズルに明けられた、従来周知の噴射孔の作用を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 洗浄ノズル 3 円筒部
4、4’ 噴射孔 11 洗浄水供給管
20 スペーサ 21 円筒状のフィルタエレメント
C カバー K1、K2 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源側の洗浄水を複数個の噴射孔から洗浄対象物に向けて噴射して、前記洗浄対象物に付着している異物、汚れ等を除去するための洗浄ノズルであって、
前記洗浄ノズルに形成されている前記複数個の噴射孔は、前記洗浄水源側から前記洗浄対象物側に向けてテーパ状に縮径されていることを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄ノズルにおいて、該洗浄ノズルは軸方向に所定長さの円筒部からなり、該円筒部には前記噴射孔が軸方向に列をなして複数個形成されていると共に、前記円筒部の径は洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントの径よりも小さく、前記円筒状のフィルターエレメントは前記円筒部に装着されて洗浄されるようになっていることを特徴とする、洗浄ノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄ノズルにおいて、前記噴射孔は、その平面形状は円形あるいは長方形で、電子ビーム孔加工機によって形成されていることを特徴とする、洗浄ノズル。
【請求項4】
洗浄ノズルと、回転継手を介して接続されて前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給管と、前記洗浄ノズルと洗浄水供給管とを制御された速度で回転駆動する電動モータとを備え、
前記洗浄ノズルは着脱自在のカバー内に、前記洗浄水供給管と電動モータは筐体内に収納されている洗浄装置であって、
前記洗浄ノズルは軸方向に所定長さの円筒部からなり、該円筒部には内周面から外周面に向けてテーパ状に縮径されている噴射孔が軸方向に列をなして複数個形成されていると共に、前記円筒部の径は洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントの径よりも小さく、前記円筒状のフィルターエレメントは前記円筒部に装着されて洗浄されるようになっていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、前記噴射孔は複数列にわたって電子ビーム孔加工機によって形成されていることを特徴とする、洗浄装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の装置において、前記洗浄対象物である円筒状のフィルターエレメントは、高さ調節用の管状のスペーサを介して前記洗浄ノズルの円筒部に装着されて洗浄されるようになっていることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−296186(P2008−296186A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147606(P2007−147606)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(591196887)大平洋特殊鋳造株式会社 (6)
【Fターム(参考)】