説明

洗浄操作装置

【課題】所要部品点数が少なくて済み、コストが安価でしかも洗浄タンク内で占めるスペースを少なくすることのできる洗浄操作装置を提供する。
【解決手段】洗浄ハンドルに連結されたスピンドル96に対する正面視において左,右に分かれて取付部116,118から下向きに垂れ下った大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との左右方向の間の位置で引上げアーム124を下向きに延び出させ、スピンドル96の一方向の回転により引上げアーム124の先端部124aを、大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との一方の玉鎖に引掛けて引き上げ、またスピンドル96の他方向の回転により他方の玉鎖に引掛けて引き上げるようにし、大洗浄と小洗浄とを行わせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は便器の洗浄タンクに設けられ、玉鎖を引き上げてタンク底部の排水弁を開操作する洗浄操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄ハンドルに連結されて洗浄タンク内に延出したスピンドルと、スピンドルの先端側に設けられた玉鎖の取付部及び引上げ部とを有し、取付部に大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖とを取り付けて、スピンドルの一方向の回転により引上げ部にて大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との一方の玉鎖を引き上げ、逆方向の他方向の回転により引上げ部にて他方の玉鎖を引き上げることによって、洗浄水を大量放出する大洗浄と小量放出する小洗浄とを行わせる洗浄操作装置が公知である。
【0003】
図15はその具体例を示している。
図において、200は洗浄ハンドル202に連結されて洗浄タンク内に延出するスピンドルで、204はこれとは別体に構成されたレバー部であり、筒部206及び結合ピン208にてスピンドル200と結合されるようになっている。
また210は洗浄操作装置212、具体的にはスピンドル200及び洗浄ハンドル202を洗浄タンクのタンク壁に固定するために、スピンドル200に嵌められたナットである。
【0004】
レバー部204は、スピンドル200の先端側の位置で下向きに立ち下る板状の立下り部214と、立下り部214の下端からスピンドル200の軸方向の前方に延出するとともに、スピンドル200に対する正面視において左右方向に張り出した板状部216とを有しており、その板状部216の、左右方向に大きく距離を隔てて配置された取付部218と220とに、大洗浄用の玉鎖222と小洗浄用の玉鎖224とが固定状態に取り付けられている。
【0005】
この図15に示す洗浄操作装置212では、取付部218を上昇させる方向に洗浄ハンドル202にてスピンドル200を回転させると、大洗浄用の玉鎖222が引き上げられる一方、小洗浄用の玉鎖224が押し下げられ、また洗浄ハンドル202にてスピンドル200を逆方向に回転させると、今度は取付部220が上昇して小洗浄用の玉鎖224が引き上げられ、大洗浄用の玉鎖222が下向きに押し下げられる。
尚、この図15に示す洗浄操作装置は下記特許文献1,特許文献2に開示されている。
【0006】
しかしながらこの図15に示す洗浄操作装置の場合、レバー部204が大形状をなしているために、これをスピンドル200と一体構造としてしまうと、固定用のナット210をスピンドル200に嵌め合せることができない。
そのため図15に示す装置では、レバー部204とスピンドル200とを別体構造となしている。
この場合、装置の所要部品点数が多くなり、コストが高くなってしまう。また洗浄タンク内でレバー部204が広いスペースを占有してしまう。
近年、洗浄タンクは小型化してきており、これに伴って内部のスペースが狭小化してきている中で、レバー部204が洗浄タンク内で広いスペースを占有してしまうといったことは望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−243097号公報
【特許文献2】特開2007−46349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、所要部品点数が少なくコストが安価で、しかも洗浄タンク内で占めるスペースを少なくすることのできる洗浄操作装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、洗浄ハンドルに連結されて洗浄タンク内に延出したスピンドルと、該スピンドルの先端側に設けられた玉鎖の取付部及び引上げ部とを有し、該取付部に大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖とを取り付けて、該スピンドルの一方向の回転により前記引上げ部にて前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との一方の玉鎖を引き上げ、逆方向の他方向の回転により該引上げ部にて他方の玉鎖を引き上げることによって、洗浄水を大量放出する大洗浄と小量放出する小洗浄とを行わせる洗浄操作装置において、前記スピンドルに対する先端面からの正面視において左,右に分かれて前記取付部からそれぞれ下向きに垂れ下った前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との左右方向の間の位置で、前記取付部よりも設定距離下側位置まで引上げアームを下向きに延び出させて前記引上げ部となし、前記スピンドルの前記一方向の回転により該引上げアームを同方向に回転させて、該引上げアームの先端部を、前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との前記他方の玉鎖を前記取付部から垂れ下らせたまま、前記一方の玉鎖に引掛けて該一方の玉鎖を引き上げ、また前記スピンドルの前記他方向の回転により該一方の玉鎖を前記取付部から垂れ下らせたまま、該他方の玉鎖に引掛けて該他方の玉鎖を引き上げるようになしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記引上げアームが板状のリブにて構成してあることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項2において、前記引上げアームを構成する前記板状のリブが1枚であることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記スピンドルと前記取付部及び前記引上げアームが一体構造をなしていることを特徴とする。
【0013】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記取付部に取り付けられた前記玉鎖を、該取付部から前記左右方向の外方に外れ防止する第1外れ防止部が該取付部に続いて設けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項6のものは、請求項5において、前記第1外れ防止部は、前記取付部に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉のうちの下側の玉を内部に収容する状態に該下側の玉を前記左右方向の外方から覆うカバー部を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記引上げアームに対して前記スピンドルの軸方向の前後の位置で、該引上げアームに沿って下向きに延び、前記玉鎖に対して前後方向に当接するガイド壁を有し、該ガイド壁の当接作用により該玉鎖を該引上げアームに沿った垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する第2外れ防止部が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0016】
以上のように本発明は、取付部からそれぞれ左右に分かれて下向きに垂れ下った大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との左右方向の間の位置で、玉鎖の取付部よりも設定距離下側位置まで引上げアームを下向きに延び出させ、そしてスピンドルの回転とともに引上げアームを一方向に回転させて、その先端部を、大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との一方の玉鎖に引掛けてこれを引き上げるとともに、他方の玉鎖についてはこれを取付部から垂れ下らせたままとし、また引上げアームの上記とは逆方向の回転により、今度はその先端部を他方の玉鎖に引掛けてこれを引き上げるとともに、一方の玉鎖については取付部から垂れ下らせたままとするようになしたものである。
【0017】
本発明の洗浄操作装置は、従来の洗浄操作装置のように大洗浄用及び小洗浄用の玉鎖のそれぞれの取付部を、スピンドルの回転によって持ち上げるのではなく、取付部とは別に且つ取付部よりも設定距離下側位置まで下向きに延び出させた引上げアームの先端部を、回転方向の違いによって大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との何れか一方に引掛けて、これを引き上げるようになしたものである。
【0018】
従って本発明の洗浄操作装置では、大洗浄用の玉鎖の取付部と小洗浄用の玉鎖の取付部とを、スピンドルに対する正面視において左右に大きく距離を隔てて配置しておく必要もないし、またそれら取付部を上向きに引き上げるためのアームを同じく左右方向に長く張り出させておく必要もない。
【0019】
即ち大洗浄用の玉鎖の取付部と小洗浄用の玉鎖の取付部とを左右に近接して配置しておくことができるし、また引上げアームを単に下向きに延び出させておくだけでよく、これによりそれら取付部や引上げアーム等を小形状化し得て、それらが洗浄タンク内で占めるスペースを小スペース化することができる。
【0020】
ここで上記引上げアームは板状のリブにて構成しておくことができる(請求項2)。
【0021】
また引上げアームは、これを1枚の板状のリブにて構成することができる(請求項3)。
このようにすることで、大洗浄用と小洗浄用とで2枚のリブを設けておく必要がなくなるため、引上げアームをより小形状化することができる。
【0022】
また本発明では、上記スピンドルと取付部及び引上げアームとを一体構造となしておくことができる(請求項4)。
本発明では、取付部及び引上げアームを、スピンドルに対する正面視において左右方向に幅広の形状とする必要がなく、狭小幅でこれらを構成することができる。
そのため固定用のナットをそれらに通すことが可能であり、従って本発明では取付部及び引上げアームをスピンドルと一体に構成しておくことが可能となる。
而してそのようにすれば装置の所要部品点数を少なくでき、コストを安価となすことができる。
【0023】
本発明では、取付部に取り付けられた玉鎖を、取付部から左右方向の外方に外れ防止する第1外れ防止部を取付部に続いて設けておくことができる(請求項5)。
このようにしておけば、引上げアームの回転によって引き上げられず、取付部から垂れ下ったままとなる側の玉鎖が取付部から左右方向外方に外れてしまうのを有効に防止することができる。
これにより、玉鎖が左右方向の外方に外れて取付部から脱落してしまうのを有効に防止することができる。
【0024】
この場合においてその第1外れ防止部は、取付部に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉のうちの下側の玉を内部に収容する状態に、下側の玉を左右方向の外方から覆うカバー部を有するものとなしておくことができる(請求項6)。
【0025】
本発明ではまた、上記の引上げアームに対してスピンドルの軸方向の前後の位置で引上げアームに沿って下向きに延び、玉鎖に対して前後方向に当接するガイド壁を有し、そのガイド壁の当接作用により玉鎖が引上げアームに沿った垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する第2外れ防止部を設けておくことができる(請求項7)。
【0026】
このようにしておけば、玉鎖が引上げアームに沿った垂れ下り位置から前後方向に外れてしまうことにより、引上げアームを回転させたときに、その先端部で玉鎖を引き上げ損ない、洗浄不良を生ぜしめてしまうのを有効に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の洗浄操作装置を洗浄タンク等とともに示した図である。
【図2】図1のフラッパ弁とその周辺部を示した図である。
【図3】図2のフラッパ弁とその周辺部を拡大して示した図である。
【図4】同実施形態の洗浄操作装置を示した図である。
【図5】同実施形態の洗浄操作装置の要部を夫々拡大して示した図である。
【図6】同実施形態の洗浄操作装置の要部を図5とは異なった方向で示した図である。
【図7】同実施形態の洗浄操作装置における要部と玉鎖との結合関係を示した図である。
【図8】同実施形態の要部の作用説明図である。
【図9】同実施形態の利点を説明するために比較例を示した比較例図である。
【図10】大洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図11】図10に続く作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】小洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図14】図13に続く作用説明図である。
【図15】従来公知の洗浄操作装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンク(以下単にタンクとする)で、アウタタンク12と、インナタンク14とを有している。
図中16はタンク10の底部を、18はタンク壁を表している。
タンク10の底部16には、図2に示しているように内部の洗浄水を便器に向けて放出する排水口20と、これを開閉する排水弁としてのフラッパ弁22とが設けられている。
図2において、24は排水口20に連通して設けられたオーバーフロー管で、タンク10の内部において底部16から上向きに立ち上がっている。
【0029】
フラッパ弁22は、図3に詳しく示しているようにシール部材26を保持した円板状の弁部28と、これから図中右方に延び出した一対のアーム30とを有している。
アーム30の夫々の図中右端部にはフック状の掛止部32が設けられており、これら一対の掛止部32が、オーバーフロー管24の周方向に180°隔たった2個所から突出した軸部34に回転可能に下向きに掛止されている。
フラッパ弁22は、軸部34に対する掛止部32の掛止に基づき、軸部34周りに回転運動することによって開閉動作する。
【0030】
図1において、36は一定ピッチで配置された玉38と、それらを繋ぐ線材からなる繋ぎ材40とを有する大洗浄用の玉鎖で、その下端部が、フラッパ弁22における弁部28の外周部位に、取付部42において固定状態に取り付けられている。
尚、排水口20の上端の開口周りに設けられた弁座44は、図3中左方向に向って斜め下向きに傾斜しており、従ってフラッパ弁22は、閉弁状態で弁部28が同じく左方向に向って斜め下向きに傾斜した状態となる。
【0031】
図3において、46はフラッパ弁22の動作を小洗浄動作に切り替える切替機構で、この切替機構46は、弁部28の下側に空気チャンバ48を有している。この空気チャンバ48は、内側に空気室50を形成している。
尚この空気チャンバ48は、下部が下向きに先細りとなるテーパ部52とされている。このテーパ部52の下端は開口部54とされている。
切替機構46はまた、円筒状の筒壁56と、筒壁56内部を上下に摺動し、空気室50の上端の開口57を開閉する切替弁58と、切替弁58を図中下向きの閉弁方向に付勢するばね(ここではコイルばね)60とを有している。
【0032】
ここで切替弁58は、シール部材62を保持した円板状の弁部64と、内部中空の軸部66とを有している。
軸部66の端部は取付部68とされており、そこに玉38と繋ぎ材40とを有する小洗浄用の玉鎖70の下端部が固定状態に取り付けられている。
また切替機構46における筒壁56には、これを貫通して水流入口72が設けられている。
【0033】
本実施形態において、切替機構46は次のように働く。
切替弁58が閉弁状態にあり、空気室50に空気が溜められた状態の下では、フラッパ弁22は開弁及び閉弁によって大洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を大量放出する大洗浄のための動作を行う。
【0034】
一方切替弁58を図中上向きに引き上げて開弁させると、ここにおいて筒壁56周りの外部の水が、流入口72より筒壁56内部に流入し、更に開口57を通じて空気室50に入り込み、空気室50を水で埋める。
このときにはフラッパ弁22は小洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を少量放出する小洗浄のための動作を行う。
即ちこの実施形態では、切替弁58を開弁させることによって、フラッパ弁22の動作を小洗浄の動作に切り替える。
尚その切替えの具体的な原理については後述する。
【0035】
74は、その内部に小洗浄用の玉鎖70を挿通させる円筒形状の筒体で、76はそのガイド部である。
ガイド部76は、筒体74を間にして互いに対向する板状の一対のガイド壁78と、その下側の筒部80を有しており、切替機構46における筒壁56の上端開口を閉鎖する上壁部82と一体に構成されている。
筒体74は、このガイド部76における筒部80に下端を当接させ、そこに下向きの力を及ぼす。
【0036】
図1及び図2において、84はフロートでドーナツ環状の密閉された空気室86を有しており、そこに空気を保持している。
またその中心部には挿通孔88を有し、その挿通孔88に小洗浄用の玉鎖70が上下方向に挿通されている。
ここでフロート84は、小洗浄用の玉鎖70に沿って上下に相対移動可能である。
【0037】
図1に示しているように、小洗浄用の玉鎖70には所定高さ位置にストッパ90が固定状態に取り付けられている。
但しこのストッパ90は、小洗浄用の玉鎖70に対する固定位置を上下に調節することが可能である。
【0038】
ここでストッパ90は、筒体74が上記のガイド部76の筒部80に下向きに当った状態の下で、筒体74の上端とストッパ90との間の距離が、フロート84の上下寸法よりも一定距離大となるような位置で、小洗浄用の玉鎖70に固定されている。
従ってフロート84は、筒体74の上端とストッパ90との間で小洗浄用の玉鎖70に沿って所定距離上下に相対移動することができる。
【0039】
図1において、92は本実施形態の洗浄操作装置で、タンク壁18に固定された洗浄ハンドル94と、これに連結されてタンク内に延出したスピンドル96とを有している。
図4において、98は洗浄ハンドル94及びスピンドル96をタンク壁18に取り付けるための取付部材で、雄ねじ部100を有しており、そこにナット102がねじ込まれることでタンク壁18に固定されている。
【0040】
スピンドル96は、先端側に角形状の雄嵌合部104と、弾性を有する嵌込部106とを有しており、その雄嵌合部104を洗浄ハンドル94の対応する角形状の雌嵌合部108に嵌合させる状態に、嵌込部106が洗浄ハンドル94に設けられた嵌込孔110に弾性的に嵌め込まれている。
これによりスピンドル96が、取付部材98の中心の挿通孔を挿通して洗浄ハンドル94に軸方向及び回転方向に固定されている。
ここでスピンドル96はタンク内奥部に向って直線状に延びている。
【0041】
スピンドル96の先端側には、スピンドル96に対して直角に湾屈曲したレバー部112が一体に設けられている。
ここでレバー部112は縦向き、即ち通常の状態において、垂直下向きに延びている。
尚この実施形態において、図4に示しているようにレバー部112は、ナット102を嵌めてこれを通過させることが可能なサイズである。スピンドル96もまた同様である。
【0042】
レバー部112は、図5(C)及び図6に示しているように先端側(図中下端側)にヘッド部114を有している。
またヘッド部114は、その上端部に且つスピンドル96に対する正面視において左,右の位置に、大洗浄側の取付部116と、小洗浄側の取付部118とを有している。
そして取付部116に大洗浄用の玉鎖36が、また取付部118に小洗浄用の玉鎖70が、夫々固定状態に取り付けられている。
【0043】
ここで各取付部116,118は、図5(A),(C)及び図6に示しているように、夫々上記の繋ぎ材40を上下方向に挿通する挿通孔120と、そこに挿通された繋ぎ材40の上側の玉38a(図7参照)と下側の玉38bとに係合する係合部122とを有している。
大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の夫々は、繋ぎ材40を挿通孔120に挿通し、上側の玉38aと下側の玉38bとに係合部122を係合させることで各取付部116,118に取り付けられる。
これら取付部116,118に取り付けられた大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70とは、夫々取付部116,118から左,右に分かれて下向きに垂れ下がった状態となる。
【0044】
ヘッド部114は、また、取付部116と118との左右の間の位置において、取付部116,118よりも設定距離下側位置まで垂直下向きに延び出た引上げアーム124を有している。
ここで引上げアーム124は1枚の板状のリブにて構成してある。
この引上げアーム124は、大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の何れにも固定されておらず、通常時においてそれらに対しフリーの状態にある。
【0045】
そして大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70の夫々は、取付部116,118から引上げアーム124に沿って垂直下向きに垂れ下がった状態にある。
従ってこの状態で洗浄ハンドル94を、図1中右からの正面視において反時計方向に回転させると、これと同方向にスピンドル96及び引上げアーム124が回転し、引上げアーム124がその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36に引掛けてこれを引き上げる。
【0046】
ここにおいてフラッパ弁22が引き上げられて開弁し、タンク10内の洗浄水が大量放出されて便器の大洗浄が行われる。
このとき、小洗浄用の玉鎖70は当然ながら引上げアーム124にて引き上げられることはなく、取付部118から垂れ下がったままとなる。
【0047】
逆に洗浄ハンドル94を、図1中右側からの正面視において時計方向に回転させると、今度は同方向に回転する引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けてこれを引き上げる。
而して小洗浄用の玉鎖70が引き上げられると、上記の切替弁58及びばね60を介してフラッパ弁22が引き上げられ、ここにおいてフラッパ弁22が開弁して、タンク内の洗浄水が便器に向けて少量放出され、便器の小洗浄が行われる。
このとき、大洗浄用の玉鎖36は引上げアーム124によって引き上げられることはなく、取付部116から下向きに垂れ下がったままである。
【0048】
ヘッド部114は、更に、図5及び図6に示しているように引上げアーム124に対してスピンドル96の軸方向の前後の位置で、取付部116,118から引上げアーム124に沿って下向きに延びる、前後に対向した各一対の板状のガイド壁128を有する、大洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)130と、小洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)132とを備えている。
【0049】
大洗浄側の外れ防止部130は、大洗浄用の玉鎖36に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置にある大洗浄用の玉鎖36が、その垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する働きを有している。
【0050】
同様に小洗浄側の外れ防止部132もまた、小洗浄用の玉鎖70に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から小洗浄用の玉鎖70が前後方向に外れるのを防止する働きを有する。
【0051】
これら外れ防止部130及び132による玉鎖の外れ防止は、次のような意味を有している。
タンクの種類やサイズ等によっては、玉鎖36,70の上端側の取付部116,118への取付位置と、フラッパ弁22側の下端側の位置とが、スピンドル96の軸方向の前後に一定以上異なる場合がある。
【0052】
この場合、上記のガイド壁128を有する外れ防止部130,132が設けてないと、図9の比較例図に示すように大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70が、それぞれ引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から前後方向に外れてしまうことがある。
そのような状態になると、引上げアーム124を回転させても、その先端部124aを玉鎖36,70の予め定めた位置に引掛けて、これを引上げ動作することができなくなってしまう。
そこでここでは、一対のガイド壁128を有する外れ防止部130,132を設けてこれを防止するようになしている。
【0053】
ヘッド部114はまた、引上げアーム124の回転時に垂れ下り側となる玉鎖が取付部から左右方向外方に外れるのを防止する、上記とは別の外れ防止部(第1の外れ防止部)として、大洗浄側の外れ防止部134と、小洗浄側の外れ防止部136とを備えている。
【0054】
ここで外れ防止部134,136は、それぞれ取付部116,118からガイド壁128に沿って湾曲しながら下向きに延びるカバー部138と、取付部116,118の挿通孔120に続いてカバー部138に設けられたスリット140とを有している。
【0055】
ここでカバー部138は、図7に示しているように取付部116,118に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉38a,38bのうちの下側の玉38bを内部に収容する状態に、下側の玉38bを左右方向の外方から覆う形状をなしている。
【0056】
尚スリット140は、玉鎖36,70を取付部116,118に取り付けるに当って、図8に示すように玉鎖36,70における繋ぎ材40を、カバー部138を通過して取付部116,118の挿通孔120に持ち来すためのものである。
このときには、図8に示すように下側の玉38bをカバー部138の内側に先ず嵌め入れた状態とし、その状態でスリット140に沿って繋ぎ材40を上側の玉38aとともに取付部118,116側に移動させる。
ここでカバー部138の下端には、繋ぎ材40をスリット140に向けて案内する傾斜形状の案内部144が設けてある。
【0057】
尚、ヘッド部114の上端からは、引上げアーム124に連続して補強用のリブ142がスピンドル96に向って延びている。
この補強用のリブ142は、引上げアーム124の一部を成していると考えることもできる。
【0058】
次に本実施形態の作用を説明する。
この実施形態において、洗浄ハンドル94が図4に示す中立位置にあるとき、図10(I)に示しているようにフラッパ弁22は閉弁状態にあり、またフロート84は水中に没した位置でストッパ90に上向きに当接した状態にある。
またこのとき、フラッパ弁22に設けられている空気室50の内部は空気で満たされている。
【0059】
この状態から洗浄ハンドル94を大洗浄側、つまり上記した反時計方向に回転させると、レバー部112に設けられた引上げアーム124が同方向に回転し、そしてその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36の、取付部116から設定距離下側の部位を引掛けて玉鎖36を一定の所要の距離だけ引き上げる。
これにより、図10(II)に示しているようにフラッパ弁22が玉鎖36によって持ち上げられ、開弁する。
開弁したフラッパ弁22は、依然として水中に没した状態のフロート84による浮力と,空気チャンバ48による浮力とによって,その後も開弁状態に維持され、タンク10内の洗浄水が排水口20から便器に向けて放出される。
【0060】
タンク10内の洗浄水の放出に伴って、タンク内の水位Wは降下していく。
そして図11(III)に示しているように、水位Wがフロート84の上端から一定距離下側位置まで下がったところで、フロート84に作用する浮力とフロート84自体の重力とがバランスした状態となり、その後フロート84は水位Wの降下に連れて下向きに移動して行く。
【0061】
尚このとき、空気チャンバ48の内部の空気室50は依然として空気で満たされた状態にあり、従って空気チャンバ48に対しては引き続き浮力が作用しており、図11(IV)に示すようにフロート84が水位Wの降下に連動して下向きに移動しても、フラッパ弁22は依然として開弁状態に保持されている。
従って図11(IV)に示しているように、フロート84はストッパ90から離れて単独で小洗浄側の玉鎖70に沿って下向きに移動していく。
【0062】
単独で下向きに移動したフロート84は、ストッパ90から離れて一定距離下がったところで、図12(V)に示しているように筒体74の上端に当接するに到る。
この状態から水位Wが更に降下すると、フロート84に対する浮力はますます減少し、これに伴ってフロート84の重みが筒体74にかかり、且つ水位Wの降下に伴って筒体74に加わる重みが増大していく。
【0063】
即ち筒体74をフロート84が下向きに押す力が漸次増大していく。
そしてその下向きの力が、空気チャンバ48に対する浮力よりも打ち勝つに到ると、フラッパ弁22が開弁状態を維持できなくなって、その後は水位Wの降下に伴ってフラッパ弁22が閉弁開始し、最終的にフラッパ弁22が完全閉弁状態となる。
ここにおいて排水口20からの洗浄水の放出が停止する。
【0064】
一方洗浄ハンドル94を大洗浄時とは逆の小洗浄側、つまり上記の時計方向に回転させると、今度はレバー部112の引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けて、詳しくは小洗浄用の玉鎖70の、取付部118から設定距離下側の部位に引掛けて、玉鎖70を一定の所要距離だけ引き上げる。
【0065】
このとき、フラッパ弁22が閉弁した状態の下で先ず切替機構46の切替弁58が、ばね60の付勢力に抗して上向きに引き上げられる。
すると空気室50の上端の開口57が開放状態となって、流入口72を通じ空気室50にタンク10内の水が流入して、空気室50を水で埋める。
【0066】
上向きに引き上げられた切替弁58が、筒壁56の上端を閉鎖している上壁部82に当ると、小洗浄用の玉鎖70による引上げ力がフラッパ弁22自体に及ぼされ、ここにおいてフラッパ弁22が開弁動作する。
このとき、弁座44から離れたフラッパ弁22は速やかにばね60の付勢力で切替弁58に対し相対的に上向き移動する。即ち一旦開弁した切替弁58が、その後速やかにもとの閉弁状態に戻る。
そしてその状態でフラッパ弁22が小洗浄用の玉鎖70により引き上げられ、その後最大開弁状態となる(図13(I)参照)。
【0067】
フラッパ弁22の開弁によって、タンク10内の洗浄水は放出され、水位Wはその放出に伴って降下していく。
そして図13(II)に示すようにフロート84の頭が僅かに水面から露出した位置となると、そこでフロート84に対する浮力とフロート84に対して下向きに加わる力とが釣り合った状態となり(大洗浄時と異なって、小洗浄時には空気チャンバ48に対して浮力は働いていない)、その後は水位Wの降下と一緒にフロート84が降下即ち下向きに移動し、これに伴ってフラッパ弁22は弁開度を漸次少なくしていき、そして図14に示すように最終的に弁座44に着座して完全閉弁状態となる。
【0068】
この間、空気チャンバ48に対して浮力は働いていないため、フロート84はストッパ90に当った状態を維持したまま、即ち筒体74との間に一定の距離を隔てた状態を維持したまま、水位Wの降下と一緒に下向きに移動していく。
そのためにこの小洗浄時においては、フラッパ弁22が完全開弁してから閉弁開始するまでの時間が短く、即ち大洗浄時に較べて早い段階で閉弁開始し、閉弁状態に到る。
そのため、小洗浄時においては洗浄水の放出水量が少なく、少ない水量で便器洗浄(小洗浄)を行う。
【0069】
以上のように本実施形態の洗浄操作装置92は、従来の洗浄操作装置のように大洗浄用及び小洗浄用の玉鎖のそれぞれの取付部を、スピンドルの回転によって持ち上げるのではなく、取付部とは別に且つ取付部よりも設定距離下側位置まで下向きに延び出させた引上げアーム124の先端部124aを、回転方向の違いによって大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70との何れか一方に引掛けて、これを引き上げるようになしたものである。
【0070】
従って本実施形態の洗浄操作装置92では、大洗浄用の玉鎖36の取付部116と、小洗浄用の玉鎖70の取付部118とを、スピンドル96に対する正面視において左右に大きく距離を隔てて配置しておく必要もないし、またそれら取付部116,118を上向きに引き上げるための引上げアームを同じく左右方向に長く張り出させておく必要もない。
【0071】
即ち大洗浄用の玉鎖36の取付部116と小洗浄用の玉鎖70の取付部118とを、左右に近接して配置しておくことができるし、また引上げアーム124を単に下向きに延び出させておくだけでよく、これによりそれら取付部116,118や引上げアーム124等を含むレバー部112を小形状化し得て、それらが洗浄タンク10内で占めるスペースを小スペース化することができる。
【0072】
またレバー部112は固定用のナット102を通すことが可能で、そのため本実施形態では取付部116,118及び引上げアーム124を含むレバー部112とスピンドル96とが一体化してあり、而してそのようにすることで装置の所要部品点数を少なくでき、コストを安価となすことができる。
【0073】
本実施形態では、取付部116,118に取り付けられた玉鎖36,70を、取付部116,118から左右方向の外方に外れ防止する大洗浄側の外れ防止部134,小洗浄側の外れ防止部136が設けてあるため、引上げアーム124の回転によって引き上げられず、垂れ下ったままとなる側の玉鎖36,70が取付部116,118から左右方向外方に外れてしまうのを有効に防止することができる。
これにより、玉鎖36,70が左右方向の外方に外れて取付部116,118から脱落してしまうのを有効に防止することができる。
【0074】
また本実施形態では上記とは別に、更に大洗浄側の外れ防止部130,小洗浄側の外れ防止部132が設けてあるため、玉鎖36,70が引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から前後方向に外れてしまうことにより、引上げアーム124を回転させたときに、その先端部124aで玉鎖36,70を引き上げ損ない、洗浄不良を生ぜしめてしまうのを有効に防ぐことができる。
【0075】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は例えば大洗浄側と小洗浄側とで玉鎖の取付部の位置をスピンドルに対する正面視において前後方向に異ならせたり、高さ方向に異ならせたりすることも可能であるし、玉鎖の取付部を上記とは別の個所に設けておくことも可能である。また上記実施形態では、引上げアームを1枚の板状リブで構成していたが、これを大洗浄用及び小洗浄用の2枚の板状リブで構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 洗浄タンク
36,70 玉鎖
38 玉
40 繋ぎ材
92 洗浄操作装置
94 洗浄ハンドル
96 スピンドル
116,118 取付部
124 引上げアーム
124a 先端部
128 ガイド壁
130 大洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)
132 小洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)
134 大洗浄側の外れ防止部(第1外れ防止部)
136 小洗浄側の外れ防止部(第1外れ防止部)
138 カバー部
140 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ハンドルに連結されて洗浄タンク内に延出したスピンドルと、該スピンドルの先端側に設けられた玉鎖の取付部及び引上げ部とを有し、該取付部に大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖とを取り付けて、該スピンドルの一方向の回転により前記引上げ部にて前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との一方の玉鎖を引き上げ、逆方向の他方向の回転により該引上げ部にて他方の玉鎖を引き上げることによって、洗浄水を大量放出する大洗浄と小量放出する小洗浄とを行わせる洗浄操作装置において、
前記スピンドルに対する先端面からの正面視において左,右に分かれて前記取付部からそれぞれ下向きに垂れ下った前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との左右方向の間の位置で、前記取付部よりも設定距離下側位置まで引上げアームを下向きに延び出させて前記引上げ部となし、
前記スピンドルの前記一方向の回転により該引上げアームを同方向に回転させて、該引上げアームの先端部を、前記大洗浄用の玉鎖と小洗浄用の玉鎖との前記他方の玉鎖を前記取付部から垂れ下らせたまま、前記一方の玉鎖に引掛けて該一方の玉鎖を引き上げ、また前記スピンドルの前記他方向の回転により該一方の玉鎖を前記取付部から垂れ下らせたまま、該他方の玉鎖に引掛けて該他方の玉鎖を引き上げるようになしたことを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項2】
請求項1において、前記引上げアームが板状のリブにて構成してあることを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項3】
請求項2において、前記引上げアームを構成する前記板状のリブが1枚であることを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記スピンドルと前記取付部及び前記引上げアームが一体構造をなしていることを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記取付部に取り付けられた前記玉鎖を、該取付部から前記左右方向の外方に外れ防止する第1外れ防止部が該取付部に続いて設けてあることを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項6】
請求項5において、前記第1外れ防止部は、前記取付部に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉のうちの下側の玉を内部に収容する状態に該下側の玉を前記左右方向の外方から覆うカバー部を有していることを特徴とする洗浄操作装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記引上げアームに対して前記スピンドルの軸方向の前後の位置で、該引上げアームに沿って下向きに延び、前記玉鎖に対して前後方向に当接するガイド壁を有し、該ガイド壁の当接作用により該玉鎖を該引上げアームに沿った垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する第2外れ防止部が設けてあることを特徴とする洗浄操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−162866(P2012−162866A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22176(P2011−22176)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】