説明

活性成分の経皮的投与のためのヒドロゲルの形態の医薬組成物

【課題】本発明は、炭酸エステル、C2-C4アルキルアルコール、活性物質およびポリマーマトリックスを含んでなるヒドロゲルの形態の医薬組成物に関する。
【解決手段】本発明は、また、ヒドロゲルの形態の医薬組成物中の活性物質のための経皮透過剤として炭酸エステルを使用することに関し、ここで前記組成物はポリマーマトリックスとC2-C4アルキルアルコールとを含んでなる。本発明は、また、セルロース誘導体と組み合わせてアクリルポリマーを含んでなる、ヒドロゲルの形態の耐汗組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分 (薬学的物質) 、特にステロイドホルモンおよびそれらの誘導体の経皮的投与を促進できる、ヒドロゲルの形態の医薬組成物に関する。好ましい態様において、ヒドロゲルはプロピレンカーボネート、エタノールおよび7α-メチル-11β-フルオロ-19-ノルテステステロン (eF-MENT) を含有する。本発明は、また、特別の物理的性質、特に増加した汗抵抗性を有し、したがって皮膚に特に適切に適用できる、ヒドロゲルの形態の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドホルモンの全身的投与は、原理的には、適当な投与形態の助けにより経口的方法で実施することができる。しかしながら、経口的投与における生物学的利用能はしばしば減少する。なぜなら、活性成分は、全身血液循環中に入る前に、肝臓において代謝されるからである (いわゆる 「第1通過代謝」 ) 。また、ステロイドホルモンの放出は延長期間にわたってできるだけ均一に実施すべきであるので、経口投与の場合において、投与形態について一般に特別の必要条件が設定される。ステロイドホルモンの経口投与を回避するために、特に注射に適当である、ある種のステロイド誘導体が開発された。これに関して、例えば、刊行物WO 99/67270およびWO 99/67271を参照することができる。
【0003】
連続的にかつ第1通過作用をバイパスしてステロイドホルモンを投与する、他の可能性は、適当な移植片を使用することにある。アンドロゲンおよびそれらの誘導体を投与するための移植片は、例えば、下記の刊行物に記載されている: EP-A 970 704、WO 97/30656、WO 99/13883、WO 00/28967、US 5,733,565、K. Sundaram 他、Annuals of Medicine 1993、25 (2) 、199; R. A. Anderson 他、J. Clin. Endocrin. & Metab. 1999、84 (10) 3556およびJ. Suvisaari 他、Contraception 1999、60 (5) 、399。しかしながら、これらの移植片は、医師による手術的関与により患者に挿入し、再び除去しなくてはならないという欠点を有する。このような手術的関与は、ある種の感染の危険を常に伴う。また、全身的投与の別のプロセスが利用可能である場合、このような小出し法に対する基本的嫌悪が個体群中に存在する。
【0004】
一方において、経口投与の薬理学的欠点、および、他方において、医学的器具 (皮下針、メス) による皮膚の侵襲的な、純粋に機械的貫通という欠点を回避するために、活性成分が連続的に皮膚に通して特定の時間的スパンにわたって拡散し、こうして全身的血液循環に入ることを促進するプロセスが開発された。
【0005】
皮膚はヒトの体の最大器官を表し、ほぼ20,000 cm2の表面積を有し、そして生物において全体の血液のほぼ1/3を受け取る (参照: Y. W. Chien、Logics of Transdermal Controlled Drug Administration. Drug Dev. Ind. Pharm. 1983、9、497) 。皮膚は主として保護的機能を発揮する: 皮膚は外来物質および微生物の侵入および本質的に内因的な物質、例えば、水および電解質の喪失を防止する。しかしながら、皮膚は外因的物質に対して完全な不透過性バリヤーを形成せず、こうして活性成分を異なる方法を介して生物中に経皮的に取り込むことができる。
【0006】
経皮的透過性は投与部位および角質層の厚さにより決定的に影響され、これは外来物質に対する主要なバリヤーを表す。ヒドロコーチゾンはモデル物質として手の表面およびより少ない程度に足裏に吸収されるが、耳介領域および陰のうの皮膚を通る吸収速度は下腕に比較して40×まで増加される (参照: H. Asche、Konzept und Aufbau transdermaler therapeutischer Systeme [Concept and Design of Transdermal Therapeutic Systems]、Schweiz [Switzerland]、 Rundsch. Med. Prax. 1985、74、3) 。
【0007】
こうして活性成分は経皮的に作用するが、皮膚の表皮を通して適切な量で拡散し、血液循環から採取されなくてはならない。この場合において、表皮は強力なバリヤー機能を発揮する。これは下記の事実に起因させることができる、すなわち、一方において、関係する活性成分は順次に親水性層および親油性層を通過し、次いで再び親水性層を通過しなくてはならないが、他方において、角質層中の低い水分もまた活性成分の拡散を妨害する。
【0008】
全身的作用およびまたほとんどの場合において外部から投与すべき活性成分の作用に必要である角質層の透過は、損傷していない皮膚において経皮的方法 (細胞間または細胞透過的方法) でかつ孔を通して (腺透過または小胞透過的方法で) 起こる (参照: K. Karzel 他、Mechanismen transkutaner Resorption - Pharmkologische und biochemische Aspekte [Mechanisms of Transcutaneous Resorption - Pharmacological and Biochemical Aspects] 。Arzbeum. - Forsch. Drug Res. 1989、39、1487) 。
【0009】
概念的に、活性成分の浸透は活性成分の透過と区別することができる: 浸透は活性成分が皮膚の中に入ることを意味するが、透過の場合において、活性成分は皮膚を通して血流の中に入ることを意味する。したがって、血液循環を介する活性成分の全身的投与のために、透過は必要である。
経皮的投与のために、全身的血液循環中への活性成分の浸入を促進できる活性成分含有パッチが開発された。拡散により、活性成分は皮膚の下に存在する組織の中に入り、血管に放出され、こうして活性成分はその作用を全身的に発揮することができる。
【0010】
しかしながら、活性成分含有パッチは、その投与期間の間に皮膚に対して容易に目に付き、可視であるように適用されるという欠点を有する。また、パッチのカバーフィルムは閉塞の条件を提供する。これに関して生成される皮膚の膨潤は、活性成分のための拡散条件を変更することがある。活性成分はほとんどのパッチのタイプにおいて皮膚に不完全に放出される。体毛はパッチの接着表面に接着し、こうしてパッチを除去するとき、毛は根から切断されるので、パッチの除去は時々患者に痛みを与える。また、経皮的パッチは、患者において使用される触圧接着剤がしばしばアレルギーおよび皮膚の刺激を生成するという欠点を有する。また、同一皮膚部分上で反復して使用される活性成分含有パッチの反復した粘着および引裂き除去は、経時的に皮膚を赤くし、刺激することがある。
【0011】
また、活性成分含有パッチは、皮膚上の接触表面積が制限されるという本質的欠点を有する。しかしながら、多数の活性成分の有効性のために比較的高い血漿濃度を必要とするので、皮膚を通して活性成分を大きい面積にわたって投与することによって、このような有効性を達成することができる; 活性成分含有パッチは急速に限界に到達する。これは、特に、特定の活性成分が不都合な透過挙動を示す場合であり、これは対応する大きい面積の皮膚接触によってのみ補償することができる。
【0012】
一般に、50 cm2より大きいサイズのパッチのみが条件的に使用に適当であるという仮定をすることができる。活性成分含有パッチにおいて、この系の表面積は制限されるので、高度に効力のある活性成分のみを使用することができ、その活性血漿レベルはng/mlの範囲である。他の詳細に関して、例えば、下記の文献を参照のこと: K. H. Bauer 他、Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie [Textbook for Pharmaceutical Technology] 、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaftt mbH Stuttgart、1999、第6版。
【0013】
活性成分含有パッチの代替物として、活性成分含有ゲルが開発され、これらのゲルは皮膚に適用し、皮膚表面上で短時間内に乾燥する。乾燥は、一方において、溶媒の蒸発により実施され、ゲルを適用した後、使用する溶媒のタイプに依存するが、溶媒の少なくともある部分は選択的にゲルから皮膚の中に直接浸透することがある。
【0014】
ポリマーマトリックスを含んでなる活性成分含有ゲルは、皮膚上で乾燥後、ポリマーマトリックスから成る薄膜が残留し、ここに活性成分およびゲルの他の成分が埋め込まれる。乾燥状態において、ポリマーマトリックスは皮膚を通る活性成分の拡散をコントロールし、こうして延長した時間間隔にわたって生物へのコントロールした放出を可能とする。このような活性成分の血液循環へのコントロールされた時間をモニターする連続的放出は、特にホルモンおよびホルモン誘導体において望ましく、こうしてこれらの活性成分含有ゲルはこのような活性成分の投与に特に適する。経皮的投与の場合において胃腸管をバイパスすることによって、不都合な第1通過代謝もまた回避される。
【0015】
ゲルの量およびゲルを適用する表面積を変化させることによって、活性成分の投与量を容易にコントロールすることができる。生物学的半減期が短い活性成分の作用期間をこの方法において延長することができる。治療的作用範囲が狭い活性成分の場合において、副作用は減少し、患者のコンプライアンスもまたしばしばよりよくなる。
【0016】
活性成分含有ゲルは真の1相系を表す。これらは半固体系であり、ここで液体はゲル骨格形成因子により固化されている。ヒドロゲルおよび油ゲルは、ゲルを形成する液体が水または油であるかどうかに依存して区別される。ヒドロゲルは、主として高分子親水性物質でゲルに固化する、水性活性成分溶液から成る。ゲル骨格形成因子として、有機ポリマーばかりでなく、かつまた無機物質、例えば、ベントナイトおよび高分散性二酸化ケイ素を使用することができる。油ゲルはゲル骨格形成因子で剛化された油である。
【0017】
ヒドロゲルは、なかでも、軟膏が水性相を含有しない調製物であることにおいて、軟膏と区別される。ヒドロゲルは、脂質相を含有しないことにおいて、クリームと区別される。他の半固体投与形態のヒドロゲルの制限に関するそれ以上の詳細に関して、例えば、下記の文献を参照のこと: K. H. Bauer 他、Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie 、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaftt mbH Stuttgart、1999、第6版。
【0018】
活性成分含有パッチに関し、ゲルは、皮膚上で乾燥後、ゲル成分からの薄膜のみが残留し、これは直ちに蒸発または皮膚に浸透することができないという利点を有する。乾燥によって、外側の皮膚層とゲル残留物との間の非常に密接な接触が生成し、そして流動性ゲルは皮膚上の穴および極端に小さい隆起に到達する。これは活性成分含有パッチでは達成することが非常に困難である。接触表面全体上のゲル残留物の弾性および接着のために、患者の動きにより引き起こされる皮膚の伸張は問題とならない。しかしながら、活性成分含有パッチの場合において、このような皮膚の伸張はパッチおよび外側皮膚層の望ましくない横方向の動きをしばしば生ずる。
【0019】
患者は吸収される活性成分を感ずることはなく、そして患者の物理的動きもまたその他の点でまったく障害されない。また、ゲルは皮膚の大きい面積上に適用することができ、こうして活性成分含有パッチに不適当である活性成分をまた経皮的に投与することができる。これはパッチに比較してゲルの本質的利点である。活性成分の放出が完結した後、皮膚上に残留する薄膜残留物は水で洗浄除去することができる。皮膚刺激は経皮的パッチを使用する場合より一般に少なく、それにもかかわらず、特にこれらのゲルは透過を改良するためにかなりの量 (この時使用されるヒドロゲルにおいて約70%) のエタノールを含有するので、皮膚刺激は多数のヒドロゲルでは問題を生ずる。高いエタノール含有率はすぐれた透過を保証するために必要であるが、皮膚刺激を生ずる。
【0020】
適合性およびすぐれた透過性に加えて、また、活性成分含有ゲルに特定の物理的必要条件が設定される。ゲルが容易に皮膚に適用され、かつ揮発性成分が蒸発するか、あるいは皮膚の中には入る間、ゲル骨格が維持されるために十分なゲル強度を有するように、ゲルのコンシステンシーを構成しなくてはならない。投与単位当たり皮膚に適用しなくてはならない量は通常1〜5 mlである。先行技術において、皮膚接触時に即時に部分的に液化するポリアクリル酸に基づくゲルは知られている。
【0021】
この理由は、これらのゲル系における電解質耐性の欠如である。皮膚上の親水性薄膜中に塩が存在するために、これにより生成物は急速に流出または滴下する。また、皮膚表面は高濃度の塩を含有し、発汗のために湿潤する場合、特別の問題が生ずる。この適用挙動は、事実問題となり、高度に効力のあるステロイドホルモンの投与において、その目的において特別の使用を必要とするという背景に対して特に不都合である。有効性に加えて、この関係において、安全性 (汚染の危険) もまたある役割を演ずる。
【0022】
ポリアクリル酸に基づくゲルに比較して、またこの分野において知られているヒドロゲル形成因子としてセルロース誘導体を使用すると、感覚的性質が欠如しかつ皮膚上に大量のゲル形成因子が残留するという欠点が生ずる。ゲル骨格を形成するために必要な濃度はポリアクリレートに比較して2〜3×高く、そして皮膚上に適用後いわゆる 「イレーザー効果」 (波しわ) を生成する。また、これらの残留物は、活性成分を経皮的に与するヒドロゲルの適切な使用に望ましくない。
【0023】
US 6,010,716には、乾燥後に柔軟性薄膜を形成するポリマーマトリックスを含んでなる経皮的投与用医薬組成物が開示されている。ポリマーマトリックスは、セルロースポリマーまたはセルロースコポリマーまたはビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーから選択される。
【0024】
ゲルを使用する経皮的療法に適当な活性成分の物理的および化学的性質に、種々の必要条件が関係付けられる。分子量は1000/グラムモルより小さくあるべきである。この物質は油溶性であるべきであるが、また水性媒質中である程度の溶解度を示すべきである。物理的および化学的性質のために原理的に適当である活性成分として、ステロイドは薬理学的観点から特に好都合である。この場合において、これらは特にアンドロゲン作用をもつステロイド (アンドロゲン) である。
【0025】
多数の場合において、作用に適切である血漿濃度を達成するために、透過エンハンサーの添加を必要とする。多数の透過エンハンサーがこの目的のために検査されてきた。例えば、下記の文献を参照のこと: E. W. Smith 他、Percutaneous Penetration Enhancers、CRC Press、1995。
【0026】
ステロイドホルモン、なかでも、ある種のアンドロゲン (特にテストステロン) の経皮的投与のための種々の組成物は、この分野において知られており、例えば、下記の文献に開示されている: WO 96/08255、WO 97/03698、WO 97/43989、WO 98/37871、WO 99/13812、WO 00/71133、WO 02/066018およびA. W. Meikle 他、J. Clin. Endocrin. & Metab. 1992、74、623。上記刊行物に記載されている経皮的投与用組成物について共通の特徴は、ステロイドホルモンと少なくとも1種の透過エンハンサーとの組み合わせを投与して、活性成分が皮膚を完全に透過することのみを保証することである。テストステロンについて記載されている既知の透過エンハンサーの例として、脂肪酸、簡単なアルコールとの脂肪酸エステル、多価アルコールとの脂肪酸モノエステル、脂肪族アルコールおよびテルペンを挙げることができる。
【0027】
活性成分含有パッチと活性成分含有ゲルとの間の本質的の差は、活性成分含有パッチに適当な透過エンハンサーがまた活性成分含有ゲルに適当であると結論できないことである。こうして、これは、なかでも、下記の事実に関連する。すなわち、活性成分含有ゲルは皮膚への適用後に乾燥するが、活性成分含有パッチにおいて、溶媒に対して不透過性である支持層は通常乾燥を防止する。
【0028】
活性成分含有パッチは、時々、内部にゲルコアを含有し、ゲルコアの中に活性成分といくつかのアジュバントが埋め込まれている。この関係において、例えば、下記の文献を参照のこと: EP-A 208 395。活性成分含有パッチのこのようなゲルコアは、活性成分含有ゲルと比較することができない。しかしながら、これに関して、活性成分含有ゲルは、前述の理由のために、それらの性質において、皮膚に適用することが意図される。
【0029】
現在、実際には、大量のエタノール (70重量%以上) を含有する活性成分含有ゲルのみが使用される。なぜなら、より少ない量のエタノールでは、必要な透過速度を達成できないことが仮定されるからである。エタノール含有率が低いゲルが記載されているが、それらは透過速度が低いために、実際には使用されない。エタノール含有率が高いことに関連する問題、例えば、皮膚における赤色化、膨潤および永久的損傷および断裂が許容される。先行技術において、低分子量アルキルアルコール、例えば、エタノールは角質層中の液体の流動性を増加させ、または角質層から液体を抽出し、こうして皮膚を通る活性成分の透過を増大させるという事実から出発がなされる。
【0030】
EP-A 811 381には、エストロゲンおよび/またはプロゲスチン、11〜19個の炭素原子を有する線状脂肪族第一級アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、2〜4個の炭素原子を有するアルコール、グリコール、水、アクリル酸から成るポリマーおよびコポリマーおよび第三級アミンを含有するゲルが開示されている。しかしながら、このようなゲルは、特に、多数の活性成分についての透過性質が完全には満足すべきものではないという欠点を有する。これらの処方物の透過性質は、水分を減少させかつアルコール含有率を増加させることによって改良することができるが、これは必ずしも適合性を減少させない。
【0031】
また、経皮的ゲルを使用するとき起こる問題は下記の事実から成る。すなわち、ヒドロゲルの形態の医薬組成物は皮膚への適用後に流れ去り、これにより活性成分の放出のコントロールに必要なゲル骨格は破壊され、生成物の滴下の可能性は患者のコンプライアンスを減少させかつ不適切な領域または物体を汚染する確率を増加させる。この問題は正常の皮膚状態において起こる。ヒドロゲルを 「汗をかいた」 皮膚に適用する場合、それは特に大きい程度に起こり、こうして既知の商業的に入手可能なゲルでは、ゲルの適用前に皮膚を基本的にクリーニングすることが必要である。しかしながら、ヒドロゲルを汗が完全には除去されていない皮膚に適用する場合、ヒドロゲルはまた無傷に止まることが好ましい。
【0032】
経皮的ゲルを使用する治療は、特にステロイドを投与する場合において、しばしば長期間の治療である。このような治療を成功に導くために、活性成分の有効な投与 (高い透過速度) に加えて、患者のコンプライアンスは決定的である。ゲルの投与に費用がかかり過ぎると考えるために (例えば、皮膚を特別の方法でクリーニングしなくてはならないか、あるいは衣服が汚れることがあるので) または不耐性が起こるので、患者が治療を破壊するか、あるいは治療を規則的に実行しない場合、治療の完全な成功が疑問となる。
【0033】
経皮的ゲルを使用する治療のために、高い透過速度に加えて、できるだけ線形の浸透は、延長期間にわたって血液中の活性成分のレベルをできるだけ一定に維持するために好都合である。
こうして、活性成分の経皮的投与に適当でありかつ先行技術の組成物に比較して利点を示す医薬組成物が必要とされており、特にきわめてすぐれた適合性を有すると同時に非常にすぐれた透過性質を有する、活性成分の経皮的投与のためのヒドロゲル (いわゆる 「経皮的ゲル」 ) が必要とされている。
【0034】
本発明によれば、特許請求の範囲において規定されかつきわめてすぐれた適合性を有すると同時に顕著な透過性質を有するヒドロゲルが入手可能である。好ましい態様において、また、ヒドロゲルの流出および滴下を生じさせないで、ヒドロゲルを皮膚に適用して顕著なヒドロリピッド薄膜を形成できる。
炭酸ジエステル、C2-C4アルキルアルコール、少なくとも1種の活性成分およびポリマーマトリックスを含有するヒドロゲルの形態の医薬組成物を使用して、皮膚の刺激および他の副作用を効果的に減少できることが、十分に驚くべきことには、発見された。同時に、これらの組成物により、異なる活性成分の透過挙動に関して非常にすぐれた結果が達成される。
【0035】
炭酸ジエステル、特にプロピレンカーボネートを含有する医薬組成物はこの分野において知られている。
WO 98/10742には、プロピレンカーボネート、少なくとも1種のアルコール、グリコール、グリセロールおよび治療的または化粧品的に有効な成分を含有する、局所的に使用する、単一相の無水調製物が開示されている。この組成物は完全に無水であり、かつ活性成分は皮膚に急速に浸透する。しかしながら、透過は提供されない。
【0036】
WO 00/41702には、21-アルコキシステロイド、プロピレンカーボネートおよびポリオキシエチレン/硬化ヒマシ油を含有する、外部使用のための調製物が開示されている。この組成物は、皮膚疾患、例えば、慢性または急性の湿疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および乾癬を治療する目的でステロイドを局所的に投与するために適する。
JP 590 70 612には、カルボキシビニルポリマー、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびエタノールを含有する、ゲル化軟膏基剤が開示されている。この軟膏基剤は、皮膚中の活性成分の浸透を増強するためにアジピン酸イソプロピルを含有する。また、ここでは透過は起こらない。
【0037】
JP 91 94 396には、抗ヒスタミン、アミノアクリレートに基づくポリマー、酸可溶性ポリマーおよび合計4〜20個の炭素原子を有する短鎖エステルまたはエーテル、例えば、イソプロピルミリステート、トリアセチン-エチレングリコール-モノノルマンブチルエーテルまたはプロピレンカーボネートを含んでなる組成物が開示されている。この組成物はパッチのマトリックスとして使用できる。
【0038】
US 3,924,004には、16〜24個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコール、プロピレンカーボネート、グリコール、界面活性剤、可塑剤、および水を含有する、局所的使用のための組成物が開示されている。この組成物は、すべてのタイプの活性成分、特に抗炎症性コルチコステロイドの局所的投与に使用できる。この組成物が水を含有しない場合、この組成物の安定性は改良される。
【0039】
EP-A 319 555には、治療効果を有し、かつ皮膚上にスプレーとして適用できる、経皮的医薬製剤が開示されている。この医薬製剤は、柔軟性薄膜に硬化する液状ポリマーマトリックス、活性成分、活性成分の放出をコントロールし、活性成分がその中に少なくとも部分的に可溶性である溶媒、および皮膚上で蒸発するマトリックスのための溶媒を含有する。活性成分の放出をコントロールする溶媒として、ソルビタンマクロゴルラウレートおよび/またはパラフィンおよび/または中鎖脂肪酸ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドおよび/またはプロピレンカーボネートが開示されている。医薬製剤は無水である。
【0040】
これらの刊行物のいずれにも、炭酸ジエステル、C2-C4アルキルアルコール、少なくとも1種の活性成分およびポリマーマトリックスを含有するヒドロゲルの形態の医薬組成物が開示されていない。また、ポリマーマトリックスおよびC2-C4アルキルアルコールを含有する、ヒドロゲルの形態の医薬組成物中の活性成分の透過エンハンサーとして炭酸ジエステル (例えば、プロピレンカーボネートの) を使用することは先行技術において記載されていない。
【発明の概要】
【0041】
十分に驚くべきことには、活性成分の透過エンハンサーとして炭酸ジエステルを使用するとき、この場合において、透過挙動に対して陰性作用与えないで、組成物中のC2-C4アルキルアルコールの含有率を比較的低く保持できることが発見された。組成物中の炭酸ジエステルは特に重要である。なぜなら、医薬組成物適用直後に、水およびC2-C4アルキルアルコールが大きく蒸発し、皮膚中に吸収されるが、揮発性が低い炭酸ジエステルはポリマーマトリックス中に活性成分と一緒に止まり、こうして活性成分の薬物速度論的挙動に決定的に影響を及ぼすからである。
【0042】
炭酸ジエステルは特に適合性でありかつ化学的に安定であり、通常アレルギー反応を引き起こさず、医薬組成物中に含有される追加の内容物、特にヒドロゲル中に含有される水およびC2-C4アルキルアルコールと十分に相互作用しないことが発見された。C2-C4アルキルアルコールの量およびC2-C4アルキルアルコールにより引き起こされる副作用が最小化されるが、同時に、それにもかかわらず、活性成分の非常にすぐれた透過作用が達成されるように、炭酸ジエステル、組成物中に含有される水およびC2-C4アルキルアルコールの重量比率を選択することができる。
【0043】
本発明による炭酸ジエステルはキラル化合物であり、これはラセミ体であることが好ましい。しかしながら、また、本発明による組成物は鏡像異性体またはジアステレオマーの濃縮された形態の炭酸ジエステルを含有する。
炭酸ジエステルの分子量は、好ましくは750/グラムモルより小さく、より好ましくは500/グラムモルより小さく、特に250/グラムモルより小さい。炭酸ジエステルは好ましくは12以下の炭素原子を含有するが、好ましくは10以下、好ましくは7以下、特に5以下の炭素原子を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、実施例3の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例5の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の好ましい態様において、炭酸ジエステルは一般式 (I) の化合物である:
【化1】

【0046】
式中、R1およびR2は、互いに独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C4-C6シクロアルキル、C1-C6ヘテロシクロアルキル、フェニル、C1-C6ヘテロアリール、フェニル-C1-C4アルキルまたはC2-C10ヘテロアリールアルキルであり、ここでアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は必要に応じて各場合において酸素原子および/または硫黄原子で3回まで中断されることができるか、あるいはR1およびR2は、互いに独立して、前述の意味の1つを有し、そしてC-C結合を介して互いに接続されている。R1およびR2がC-C結合を介して互いに接続されている場合、一般式 (I) の化合物は環状炭酸ジエステルである。C1-C6ヘテロシクロアルキル基、C1-C6ヘテロアリール基およびC2-C10ヘテロアリールアルキル基は、複素環式化合物中に1〜4個のN、OおよびSから互いに独立して選択される異種原子を含有することができる。
【0047】
好ましい基R1およびR2 (ここでアルキル基は必要に応じて各場合において酸素原子および/または硫黄原子で3回まで中断されている) は次の通りである:
C1-C6アルキル: -CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH(CH3)CH2CH3、-C(CH3)3、-CH2OCH3、-CH2SCH3、-CH2CH2OCH3、-CH2CH2SCH3、-CH2CH2OCH2CH3、-CH2CH2SCH2CH3および-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH3;
C2-C6アルケニル: -CH=CH2、-CH2CH=CH2、-CH2CH=CHCH3、-CH(CH3)CH=CHCH2および-CH=C(CH3)2;
C2-C6アルキニル: -C≡CH、-CH2C≡CHおよび-CH2C≡CCH3;
【0048】
C4-C6シクロアルキル; -シクロペンチルおよび-シクロヘキシル;
C1-C6ヘテロシクロアルキル; -ピペリジル、-モルホリニル、-テトラヒドロピラニルおよび-フラニル;
C1-C6ヘテロアリール; -ピリジル、-ピロリルおよび-イミダゾリル;
フェニル-C1-C4アルキル; -CH2-フェニル、-CH2CH2-フェニル、-CH2CH2O-フェニル、-CH2CH2OCH2-フェニルおよび-CH2CH2OCH2CH2O-フェニル;
C2-C10ヘテロアリールアルキル: -CH2-ピリジル、-CH2CH2-ピリジル、-CH2CH2OCH2-ピリジル、-CH2CH2-イミダゾリル、-CH2CH2O-イミダゾリルおよび-CH2CH2OCH2-イミダゾリル。
【0049】
C-C結合を介して互いに接続されている好ましい基R1およびR2として、下記の2価の基を列挙することができる:
-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH(OCH3)CH2-、-CH(OCH2CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CH(OCH3)CH(OCH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH2CH(CH3)-および-CH2CH2OCH2CH2-。
【0050】
透過エンハンサーとして、炭酸ジエステルは一般式 (II) の化合物であることが好ましい:
【化2】

【0051】
式中、指標mは1〜3の数であり、そしてR3は水素またはC1-C4アルキルである。
本発明によれば、mが1であり、そしてR3がメチル (プロピレンカーボネート) または水素 (エチレンカーボネート) である、一般式 (II) の炭酸ジエステルは特に好ましい。
プロピレンカーボネート [(±)-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン] は、102/グラムモルの分子量および242℃の沸点を有する。それは2つの鏡像異性体の形態で存在する。原理的には、本発明による組成物はR-鏡像異性体またはS-鏡像異性体または濃縮された形態の2鏡像異性体の1つの形態のプロピレンカーボネートを含有することができる。本発明によれば、プロピレンカーボネートは組成物中にラセミ体として含有されることが好ましい。
【0052】
炭酸ジエステル/医薬組成物の重量比率は、好ましくは1.0〜40.0重量%、より好ましくは2.5〜30.0重量%、なおより好ましくは5.0〜20.0重量%、特に7.5〜12.5重量%である。
炭酸ジエステルはこの分野において知られている。それらは、例えば、アルコールとホスゲンまたはホスゲン誘導体との反応により製造することができる。プロピレンカーボネートは、例えば、1,2-プロピレングリコールをホスゲンと反応させることによって技術的に製造することができる。多数の炭酸ジエステルが商業的に入手可能である。
【0053】
本発明によれば、組成物はエタノール、n-プロパノールおよびイソ-プロパノールから成る群から選択されるC2-C4アルキルアルコールを含有することが好ましい。
C2-C4アルキルアルコール/医薬組成物の重量比率は、好ましくは25.0〜70.0重量%、より好ましくは30.0〜65.0重量%、なおより好ましくは30.0〜60.0重量%、特に40.0〜60.0重量%である。
好ましい態様において、炭酸ジエステル/ C2-C4アルキルアルコールの重量相対比は0.01〜1.50、好ましくは0.08〜0.80、特に0.10〜0.30である。
【0054】
特に好ましい態様において、本発明による組成物はエタノールとエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートとの組み合わせを含有し、ここでエタノールとエチレンカーボネートとの組み合わせは好ましい。
原理的には、本発明による組成物は広範な種類の活性成分の経皮的投与に適する; この組成物は活性成分としてステロイドを含有することが好ましい。
好ましい態様において、本発明による組成物は活性成分として一般式 (III) の化合物を含有する:
【0055】
【化3】

【0056】
式中、
R4は水素、フッ素、塩素、C1-C3アルキルまたは必要に応じてアセチル化されたヒドロキシル基であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
点線は、互いに独立して、任意の結合であり、そして
AおよびBは、互いに独立して、カルボニル基または下記式の基であり、
【0057】
【化4】

【0058】
式中、Xはヒドロキシル基または1〜8個の炭素原子を有する炭酸とのそのエステルであり、そしてYはC1-C3アルキルである。本発明によれば、R7、R8およびR9が水素である、一般式 (III) の化合物は好ましい。一般式 (III) の化合物はこの分野において知られている。例えば、下記の文献を参照のこと: DE 1 182 229、US 3,341,557、US 4,000,273、WO 99/26962、WO 02/48169、Hill 他、Dictionary of Steroids、Chapman and Hall、1991、Fieser & Fieser、Steroide [Steroids] 、VCH Weinheim、1961、J. F. Griffin 他、Atlas of Steroid Structure、Plenum Pub Corp、1984、およびG. W. A. Milne、Ashgate Handbook of Endocrine Agents and Steroids、Ashgate Publishing Company、2000。
【0059】
特に好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、一般式 (IV) の化合物を含有する:
【化5】

【0060】
式中、Xはヒドロキシル基または1〜4個の炭素原子を有する炭酸とのそのエステルであり、R4は水素、フッ素またはヒドロキシル基であり、R5およびR6は、互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであり、そして点線は任意の結合である。一般式 (IV) の化合物は19-ノル-アンドロゲン誘導体であり、すなわち、炭素原子19に通常含有されるメチル基が水素で置換されている。これらのステロイドは特別の薬理学的作用が際立って特徴的である。
【0061】
一般式 (III) または (IV) の化合物は、純粋な形態でまたはいくつかの立体異性体の混合物として存在する。一般式 (III) または (IV) の化合物は、好ましくは本質的に純粋な形態で存在する、すなわち、eeまたはde値は好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に99%以上である。
【0062】
本発明によれば、組成物が活性成分として一般式 (V) の化合物を含有する場合、特に好ましい:
【化6】

【0063】
式中、R4はフッ素または水素であり、そしてXはヒドロキシル基またはそのアセテートである。Xは特に好ましくはヒドロキシル基である。
R4が水素でありかつXがヒドロキシル基である場合、化合物は7α-メチル-19-ノルテステステロン (MENT) である。R4が水素でありかつアセテートの基Xがヒドロキシル基である場合、化合物は対応するアセテート (MENTAc) である。R4がフッ素でありかつXがヒドロキシル基である場合、化合物は7α-メチル-11β-フルオロ-19-ノルテステステロン (eF-MENT) である。R4がフッ素でありかつアセテートの基Xがヒドロキシル基である場合、化合物は対応するアセテート (eF-MENTAc) である。
【0064】
これらの化合物はこの分野において知られている; 下記の文献を参照のこと: Sundaram 他、Annals in Medicine 1993、25、199およびWO 2002/59139 A1。
一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物/医薬組成物の重量比率は好ましくは0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜5.0重量%、なおより好ましくは0.1〜2.5重量%、特に0.5〜1.0重量%である。
【0065】
一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物/炭酸ジエステルの重量比は好ましくは0.0001〜10、より好ましくは0.005〜1、特に0.05〜0.1である。
本発明の特に好ましい態様において、医薬組成物は、活性成分として一般式 (V) の化合物、C2-C4アルキルアルコールとしてエタノール、および炭酸ジエステルとしてエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートを含有し、ここでeF-MENTとエタノールおよびプロピレンカーボネートとの組み合わせは特に好ましい。
【0066】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、一般式 (III) 、(IV) または (V) の2種またはそれ以上の化合物から成る組み合わせを含有する。
また、本発明による組成物は、活性成分として、一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物と異なる1種または2種以上の活性成分を含有することができる。このような活性成分の例として、アンドロゲン、抗アンドロゲン、5α-レダクターゼインヒビター、エストロゲンレセプターモジュレーター、エストロゲン、抗エストロゲン、ゲスタゲン、抗ゲスタゲン、子宮活性物質、m-コリノセプターアンタゴニスト、プロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体および/またはニコチンを挙げることができる。
【0067】
好ましい態様において、本発明による組成物は、一般式 (III) 、(IV) または (V) の1種または2種以上の活性成分および一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物と異なる1種または2種以上の活性成分から成る組み合わせを含有する。一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物と異なるこのような活性成分の例として、アンドロゲン、抗アンドロゲン、5α-レダクターゼインヒビター、エストロゲンレセプターモジュレーター、エストロゲン、抗エストロゲン、ゲスタゲン、抗ゲスタゲン、子宮活性物質、m-コリノセプターアンタゴニスト、プロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体および/またはニコチンを挙げることができる。
【0068】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上のアンドロゲンを含有する。例として、MENT、MENTAc、eF-MENT、eF-MENTAc、テストステロン、テストステロンプロピオネート、テストステロンウンデカノエート、テストステロンエナンテート、メステロロン、ナンドロロンデカノエート、クロステボルアセテートまたはメタノロロンアセテートを挙げることができる。
【0069】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の抗アンドロゲン、例えば、シプロテロンアセテート、フルタミドまたはビカルタミドを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の5α-レダクターゼインヒビター、例えば、フィナステリドまたは17α‐エストラジオールを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、例えば、ラロキシフェンを含有する。
【0070】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上のエストロゲン、例えば、エストラジオール、エストラジオールバレレートまたはエストリオールを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の複合化エストロゲン、エストロゲンスルファメートまたは抗エストロゲン、例えば、クロミフェンまたはタキソール、または部分的抗エストロゲン、例えば、ラロキシフェンを含有する。
【0071】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上のゲスタゲン、例えば、プロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロンカプロネート、メゲストロールアセテート、メドロキシプロゲステロンアセテート、クロルマジノンアセテート、シプロテロンアセテート、メドロゲストン、ジドロゲステロン、ノレチステロン、ノレチステロンアセテート、ノレチステロンエナンテート、レボノルゲストレル、ゲストデン、エトノゲストレル、ジエノゲスト、ダナゾール、ノルゲスチメート、リネストレノール、デソゲストレルまたはドロスピレノンを含有する。
【0072】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の抗ゲスタゲン、例えば、ミフェプリストンまたはメソプロゲスチンを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上の子宮活性物質、例えば、オキシトシンを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上のm-コリノセプターアンタゴニスト、例えば、スコポラミンを含有する。
【0073】
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、1種または2種以上のプロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体、例えば、アルプロスタジル、ゲメプロスト、ジノプロストン、スルプロストン、ジノプロスト、ラタノプロストまたはミソプロストルを含有する。
好ましい態様において、本発明による組成物は、活性成分として、ニコチンを含有する。
また、2種またはそれ以上の上記活性成分の組み合わせは好ましい。
【0074】
アンドロゲン、抗アンドロゲン、5α-レダクターゼインヒビター、エストロゲンレセプターモジュレーター、エストロゲン、抗エストロゲン、ゲスタゲン、抗ゲスタゲン、子宮活性物質、m-コリノセプターアンタゴニスト、プロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体およびニコチンの必要な投与量は当業者に知られている。この関係において、例えば、下記の文献を参照のこと: Mutschler Arzneimittelwirkungen - Lehrbuch der Pharmakologie und Toxikologie [Pharmaceutical Agent Actions - Textbook of Pharmacology and Toxicology] 、2001およびW. Forth 他、Allgemeine und Spezielle Pharmakologie und Toxikologie [General and Special Pharmacology and Toxicology] 、BI Wissenschaftsverlag [Scientific Press] 1992、第6版。
【0075】
好ましい態様において、本発明による組成物は、アンドロゲンおよび/または抗アンドロゲンおよび/または5α-レダクターゼインヒビターおよび/またはエストロゲンレセプターモジュレーターおよび/またはエストロゲンおよび/または抗エストロゲンおよび/またはゲスタゲンおよび/または抗ゲスタゲンおよび/または子宮活性物質および/またはm-コリノセプターアンタゴニストおよび/またはプロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体および/またはニコチンおよび/または一般式 (III) 、(IV) または (V) の化合物から成る群から選択される、いくつかの活性成分の組み合わせを含有する。
【0076】
本発明による組成物は、アジュバントとして、追加の内容物を含有することが好ましい。
好ましい態様において、この組成物は、アジュバントとして、シクロメチコンおよび/またはイソプロピルミリステートを含有する。ヒドロゲルにおいて、シクロメチコンおよびイソプロピルミリステートはすぐれた拡がりおよびスキンケアーを保証する。好ましい態様において、この組成物はアジュバントとしてグリセロールを含有する。グリセロールは、組成物および皮膚のためのモイシュチャライザーとして働く。
【0077】
好ましい態様において、この組成物は、アジュバントとして、シクロメチコン、イソプロピルミリステートおよびグリセロールを含有する。組成物中の水およびアジュバントの比率は、それらの組み合わせにおいて、組成物のよりすぐれた適合性を生成する。養成アジュバント (シクロメチコンおよびイソプロピルミリステート) の濃度ならびにシクロメチコンの揮発性は重要である。なぜなら、皮膚上の組成物の残留物は大きく回避すべきである - 残留物はそうでなければ患者と他の個体との皮膚接触により汚染されることがあるからである。
【0078】
追加のアジュバントとして、ポリエチレングリコールおよび/または揮発性シリコーン油、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはデカメチルシクロペンタシロキサンを本発明による組成物に添加することができる。アジュバントとして、水およびC2-C4アルキルアルコールに加えて、例えば、溶媒、ベンジルアルコール、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドを使用することもできる。また、 多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはヘキシレングリコールは好ましい。
【0079】
組成物の乾燥を防止するために、グリセロールに加えてまたはその代わりに、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールまたはエチレングリコールとプロピレングリコールとから成るコポリマーを添加することができる。グリセロールは特に適当であることが証明された。さらに、医薬組成物は、例えば、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、殺菌剤、殺真菌剤、錯化剤、シクロデキストリン、電解質および/または粘度助剤を含有することができる。このようなアジュバントは当業者に知られている。追加の情報に関して、例えば、下記の文献を参照のこと: Fiedler、Lexikon der Hilfsstoffe [Lexicon of Adjuvants] 、ECU Aulendorf 1996、第4版、およびHunnius Studienausgabe [Hunnius Textbook Edition] 、de Gruyter 1993、第7版。
【0080】
アジュバントは皮膚に対する組成物の適合性を改良する。アジュバント/医薬組成物の相対比率は、好ましくは0.001〜15.0重量%、より好ましくは0.01〜10.0重量%、なおより好ましくは0.5〜5.0重量%、特に1.0〜4.0重量%である。1.0〜2.0重量%のシクロメチコンおよび/または0.3〜0.8重量%のイソプロピルミリステートおよび/または0.5〜1.5重量%のグリセロールの比率は特に好ましい。
【0081】
本発明による医薬組成物はヒドロゲルである。ヒドロゲルの水分は、好ましくは5.0〜90.0重量%、より好ましくは10.0〜70.0重量%、なおより好ましくは20.0〜50.0重量%、特に25.0〜40.0重量%である。
C2-C4アルキルアルコール/水の相対重量比は、好ましくは0.1〜10.0、より好ましくは0.5〜5.0、なおより好ましくは1.0〜3.0、特に1.8〜2.2である。
【0082】
本発明の好ましい態様において、医薬組成物は、炭酸ジエステルとしてプロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネートを含有し、そしてC2-C4アルキルアルコールとしてエタノールを含有する。この場合について、医薬組成物は好ましくは29.0〜73.0重量%のエタノールおよび5.0〜50.0重量%の水、より好ましくは34.0〜68.0重量%のエタノールおよび10.0〜45.0重量%の水、なおより好ましくは39.0〜63.0重量%のエタノールおよび15.0〜40.0重量%の水、特に好ましくは44.0〜58.0重量%のエタノールおよび20.0〜35.0重量%の水、特に54.8〜57.5重量%のエタノールおよび27.2〜30.8重量%の水を含有する。
【0083】
本発明による医薬組成物のpHは、好ましくは4.5〜7.5、より好ましくは5.0〜7.0、特に5.5〜6.5の値に設定される。この目的に対して、緩衝剤、例えば、トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、トリエタノールアミンまたは塩基、例えば、ジイソプロピルアミンまたは水酸化カリウムは適当である。また、他の適当な緩衝化物質および塩基は当業者に知られている。それ以上の情報に関して、例えば、下記の文献を参照のこと: Fiedler、Lexikon der Hilfsstoffe 、ECU Aulendorf 1996、第4版、およびHunnius Studienausgabe 、de Gruyter 1993、第7版。
【0084】
また、本発明による医薬組成物はポリマーマトリックスを含有する。このポリマーマトリックスは、少なくとも1種のゲル骨格形成因子および必要に応じて1種または2種以上の増粘剤を含んでなる。増粘剤は組成物の流動学的性質を改良する。ゲル骨格により、患者のコンプライアンスはかなり増加し、これは本発明による組成物の本質的利点である。ゲル性質の釣合いは重要であり、これは本発明の組成物により保証される。患者は一般に本発明による組成物を連続的に使用するが、皮膚へのヒドロゲルの再適用は非常に容易であるので、いかなる問題も生じない。
【0085】
適当なゲル骨格形成因子はこの分野において知られている。本発明によれば、ゲル骨格形成因子として、ポリマーマトリックスはアクリルポリマーを含んでなることが好ましい。アクリルポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであることができる。
アクリルポリマーはホモポリマーであり、ここでホモポリマーはアクリル酸-C1-C30アルキルエステルまたはメタクリル酸-C1-C30アルキルエステルから誘導されることが好ましい。
【0086】
アクリルポリマーはコポリマーであり、ここでコポリマーはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-C1-C30アルキルエステルまたはメタクリル酸-C1-C30アルキルエステルと1種または2種以上のビニルモノマーとの組み合わせから誘導されることが好ましい。1種または2種以上のビニルモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-C1-C30アルキルエステルまたはメタクリル酸-C1-C30アルキルエステルであることができるが、例えば、コポリマーは、また、スチレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、酢酸ビニル、ビニルエーテルまたはビニルピロリドンを含有することができる。
【0087】
アクリルポリマーとして、特にアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-C1-C30アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸-C1-C30アルキルエステルの重合により得られるホモポリマーまたはコポリマーは好ましい。
本発明による組成物に添加されるアクリルポリマーは非架橋であるか、あるいは架橋されていることができる。好ましい態様において、本発明による組成物は架橋されたアクリルポリマーを含有する。
アクリルポリマーは非架橋ポリマーであり、ここでアクリルポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは50,000〜2,500,000/グラムモルの範囲、より好ましくは100,000〜2,000,000/グラムモルの範囲、特に500,000〜1,500,000/グラムモルの範囲である。
【0088】
ゲル骨格形成因子として、本発明による組成物は特に好ましくはアクリルポリマーを含有し、ここでこのアクリルポリマーはコポリマーであり、かつアクリル酸とアクリル酸-C10-C30アルキルエステルとから成る混合物から誘導される。特に好ましい態様において、これらのコポリマーは、例えば、アリルペンタエリトリトールで架橋されている。このような架橋ポリマーはこの分野において知られている。例えば、アクリレート-C10-C30アルキルアクリレートは、表示Pemulen(商標) TR1で商業的に入手可能である。これはアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーである。Pemulen(商標) TR1の一般的化学構造は、次のように簡素化された式で可視化することができる:
【0089】
【化7】

【0090】
ここでk = 10〜30。
ゲル骨格形成因子/医薬組成物の重量比率は、好ましくは0.001〜20.0重量%、より好ましくは0.005〜10.0重量%、なおより好ましくは0.01〜5.0重量%、特に0.5〜1.0重量%である。
【0091】
ゲル骨格形成因子に加えて、本発明による組成物のポリマーマトリックスは追加のポリマーを含有することができる。このようなポリマーは増粘剤として作用することができる。本発明によれば、増粘剤として、この組成物はポリアクリル酸を含有することが好ましい。ポリアクリル酸は、例えば、表示Carbopol(商標)で商業的に入手可能である。本発明によれば、Carbopol(商標) 980は特に好ましい。
【0092】
ポリアクリル酸/医薬組成物の重量比率は、好ましくは0〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、なおより好ましくは0.1〜1.0重量%、特に0.3〜0.5重量%である。本発明の好ましい態様において、この組成物はポリアクリル酸を含有しない。
本発明の好ましい態様において、ゲル骨格形成因子に加えて、ポリマーマトリックスは増粘剤としてセルロース誘導体を含有するが、また、セルロース誘導体は存在しないことができる。
【0093】
好ましいセルロース誘導体として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびフタル酸メチルヒドロキシプロピルセルロースまたはそれらの混合物を挙げることができる。エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは特に好ましく、特にエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースは好ましく、ここでヒドロキシプロピルセルロースは最も好ましい。
【0094】
本発明に従い好ましいセルロース誘導体は、一般式 (VI) のサブユニットを有する化合物である:
【化8】

【0095】
式中R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、各場合において互いに独立して、水素または直鎖状または分枝鎖状C1-C61アルキル基であり、ここでアルキル基の炭素鎖は酸素原子で20回まで中断されることができ、そして必要に応じて1または2個のヒドロキシル基、カルボキシル基またはアシロキシ基で置換されることができ、ここでアシロキシ基は必要に応じてC1-C7カルボン酸またはC1-C7ジカルボン酸から誘導される。R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、各場合において互いに独立して、好ましくは水素または直鎖状または分枝鎖状C1-C19アルキル基であり、ここでアルキル基の炭素鎖は酸素原子で6回まで中断されることができ、そして必要に応じて1または2個のヒドロキシル基で置換されることができる。
【0096】
一般式 (VI) の個々のサブユニットは、セルロース誘導体内において種々の方法で置換することができる。こうして、例えば、第1サブユニットにおいて、R12、R13、R14、R15およびR16は-CH2CH3であり、そしてR17は-Hであるが、他のサブユニットにおいて、R13、R14、R15、R16およびR17は-CH2CH3であり、そしてR12は-Hであることができる。
本発明に従い好ましいセルロース誘導体は、セルロースのヒドロキシル基に関して高度の置換を示すことが好ましい。モル置換 (MS) として表した置換度は好ましくは2.0〜6.0、より好ましくは3.0〜6.0、より好ましくは3.0〜5.0、特に3.4〜4.4である。
【0097】
特に好ましい置換基R12、R13、R14、R15、R16およびR17は次の通りである: -H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3、-CH2CH2OH、-CH2CH(CH3)OH、-[CH2CH(CH3)O]xH、-CH2CH(CH3)OCH3および-[CH2CH(CH3)O]x CH3、ここで各場合においてxは2〜20、好ましくは2〜6、特に2、3または4である。
【0098】
本発明によれば、一般式 (VI) のサブユニットは好ましくはヒドロキシプロピルセルロースのサブユニットであり、すなわち、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、好ましくは、互いに独立して、-H、-CH2CH(CH3)OHまたは-[CH2CH(CH3)O]xHであり、ここで各場合においてxは2〜20、好ましくは2〜6である。ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースのアルカリ金属塩をプロピレンオキシドと反応させ、次いでアルコキシ基を中和することによって製造することができる。この反応においてセルロースのヒドロキシル基の1つがプロピレンオキシドと反応しない場合、R12、R13、R14、R15、R16またはR17はこうして-Hである。
【0099】
この反応においてセルロースのヒドロキシル基の1つが1当量のプロピレンオキシドと反応する場合、R12、R13、R14、R15、R16またはR17はこうして-CH2CH(CH3)OHである。この反応においてセルロースのヒドロキシル基の1つが1当量のプロピレンオキシドと反応し、そしてこれから生成するアルコキシドが他の当量のプロピレンオキシドと反応する場合、R12、R13、R14、R15、R16またはR17はこうして-[CH2CH(CH3)O]xHである。理論的にはこの場合において、指標xはどれだけの当量がプロピレンオキシドをオリゴメリゼーションするかに依存して任意の数であることができる。指標xは2〜20、好ましくは2〜6、特に2、3または4である。
【0100】
R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、各場合において互いに独立して、特に好ましくは下記の意味の1つを有する: -H、-CH2CH(CH3)OH、-[CH2CH(CH3)O]2Hまたは-[CH2CH(CH3)O]3H。
本発明によれば、各場合において、3.0〜6.0、より好ましくは3.0〜5.0、特に3.4〜4.4のモル置換 (MS) を有するメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースおよび特にヒドロキシプロピルセルロースは特に好ましい。
【0101】
好ましいセルロース誘導体は当業者に知られている。エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、例えば、下記の表示で商業的に入手可能である: Klucel(商標)、Klucel(商標) EXF (Aqualon(商標)) 、Lucel(商標) HFおよびTylopur(商標) MH 1000。Klucel(商標) HFは本発明に従い特に好ましい。他の情報に関して、例えば、下記の文献を参照のこと: Fiedler、Lexikon der Hilfsstoffe 、ECU Aulendorf 1996、第4版、およびHunnius Studienausgabe 、de Gruyter 1993、第7版。Klucel(商標)型ヒドロキシプロピルセルロースの他の情報に関して、下記の文献を参照のこと: Hercules, Aqualon, Klucel(商標) - Physical and Chemical Properties, Produkt - spezifikation [Product Specification] , Hercules Incorporated 2001。
【0102】
セルロース誘導体の重量平均分子量Mwは、好ましくは50,000〜2,000,000/グラムモルの範囲、より好ましくは300,000〜1,500,000/グラムモルの範囲、なおより好ましくは750,000〜1,250,000/グラムモルの範囲、特に850,000〜1,150,000/グラムモルの範囲である。
25℃、1%の濃度における水中のセルロース誘導体のブルックフィールド粘度は、好ましくは1,000〜4,000 mPas、より好ましくは1,275〜3,500 mPas、特に1,500〜3,000 mPasである。測定は、4スピンドルおよび4速度を有するブルックフィールド粘度計LVF型を使用して実施し、0〜100,000の範囲をカバーすることができる。
【0103】
セルロース誘導体/医薬組成物の重量比率は好ましくは0〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、なおより好ましくは0.1〜1.5重量%、特に0.3〜1.0重量%である。
本発明によれば、ゲル骨格形成因子としてアクリルポリマーに加えて、ポリマーマトリックスは選択的に増粘剤としてポリアクリル酸またはセルロース誘導体を含んでなることが好ましい。ゲル骨格形成因子としてアクリルポリマーと増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロースとの組み合わせは特に好ましい。
【0104】
本発明による医薬組成物は、12より多い炭素原子を有する脂肪酸またはそれらのエステルまたはこれらの脂肪酸から誘導される脂肪族アルコールまたは第一級アミンおよび/またはモノ-、ジ-またはテトラエチレングリコールのC1-C18アルキルエーテル、特にジエチレングリコールモノエーテルエーテル、および/またはテルペンを含有することができる。これらの化合物は、本発明による医薬組成物の不必要な成分であるが、本発明による医薬組成物はこれらの化合物を含有しないことが好ましい。
特に好ましい態様において、医薬組成物は下記の成分を下記の重量比率で含有する:
【0105】
【表1】

【0106】
本発明による医薬組成物は薬剤として適当である。治療すべき適応症は投与すべき活性成分を決定する。ステロイドを含有する本発明による処方物は、例えば、種々のステロイド欠乏症候群を予防および/または治療するために使用できる。典型的な適用として、アンドロゲン置換療法、避妊、一次および二次性機能低下症、睾丸機能障害、毛髪喪失、老化、骨物質の喪失、筋萎縮、勃起機能障害、良性前立腺肥大、および前立腺癌を挙げることができる。特に、MENT、eF-MENT、MENTAcまたはeF-MENTAcを含有する本発明による組成物は、一次および二次性機能低下症の治療または予防に適する。
【0107】
アンドロゲンの薬理学、生物学および臨床的適用に関して、下記の文献を参照のこと: Mutschler Arzneimittelwirkungen - Lehrbuch der Pharmakologie und Toxikologie、2001、S. Bhasin 他、Pharmacology, Biology, and Clinical Applications of Androgens: Current Status and Future Prospects, John Wiley & Sons、第1版、1996、Ch. Chawnshang、Androgens and Androgen Receptor: Mechanisms, Functions, and Clinical Applications, Kluwer Academic Publishers、2002、およびM. Carruthers、Androgen Deficiency in the Aging Male、CRC Press - Parthenon Publishers、第1版、2002。
【0108】
本発明による医薬組成物は、皮膚への局所適用により活性成分を全身的に投与するために処方される。この組成物は手または適当なアジュバントにより、例えば、スパチュラで皮膚上に広げることによって適用することができるが、また、この組成物をスプレーの形態で皮膚に適用することができる。
【0109】
本発明は、また、ヒドロゲルの形態の医薬組成物中の活性成分の経皮的透過を改良するために炭酸ジエステルを使用することに関する。ここでこの組成物はさらにC2-C4アルキルアルコール、好ましくはエタノール、およびポリマーマトリックスを含んでなることが好ましい。好ましい成分 (すなわち、活性成分、C2-C4アルキルアルコール、炭酸ジエステル、ポリマーマトリックス、アジュバント、緩衝化物質、およびその他) に関して、そして医薬組成物中のこれらの成分の好ましい定量的比に関して、前述の態様を参照することができる。こうして、本発明は、ヒドロゲルの形態の医薬組成物中の1種または2種以上の活性成分の経皮的透過を改良するために、炭酸ジエステル、好ましくは一般式 (I) の化合物、より好ましくは一般式 (II) の化合物、特にプロピレンカーボネートを使用することに関し、ここでこのヒドロゲルは好ましくはポリマーマトリックスおよびC2-C4アルキルアルコールを含んでなり、好ましくは上に定義した通りである。
【0110】
本発明によれば、また、十分に驚くべきことには、アクリルポリマーをセルロース誘導体と組み合わせて含んでなる、ヒドロゲルの形態の医薬組成物は、ゲル骨格が破壊されるという問題、および発汗で湿潤する皮膚にゲルを適用する場合におけるゲルの流出をもはや示さない (耐汗性組成物) ことが発見された。この効果を達成するために、処方物中の炭酸ジエステルの存在は不必要である。
【0111】
本発明によれば、このような医薬組成物 (耐汗性組成物) はアクリルポリマーとセルロース誘導体との組み合わせを含んでなる。
セルロース誘導体として、このような医薬組成物 (耐汗性組成物) は、好ましくは、セルロース誘導体 (上に定義した) 、特にエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群から選択される化合物を含有する。エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースは特に好ましく、ここでヒドロキシプロピルセルロースはより好ましい。セルロース誘導体のモル置換は、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜6、特に3〜5、例えば、3.4〜4.4である。
【0112】
アクリルポリマーとして、このような医薬組成物 (耐汗性組成物) は、好ましくは、アクリルポリマー (上に定義した) 、特にアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-C1-C30アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸-C1-C30アルキルエステルから誘導されるホモポリマーまたはコポリマーを含有する。アクリル酸およびアクリル酸-C1-C30アルキルエステルから成る混合物から誘導されるコポリマーは特に好ましい。特に好ましい態様において、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートはクロスポリマーである。
【0113】
医薬組成物 (耐汗性組成物) 中のアクリルポリマー/セルロース誘導体の相対重量比は、好ましくは0.1〜10.0、より好ましくは0.2〜5.0、なおより好ましくは0.5〜2.0、特に0.75〜1.75である。
医薬組成物 (耐汗性組成物) 中のアクリルポリマー/セルロース誘導体の全比率は、好ましくは0.01〜20.0重量%、より好ましくは0.1〜10.0重量%、なおより好ましくは0.3〜5.0重量%、特に1.0〜2.0重量%である。
【0114】
好ましい態様において、医薬組成物 (耐汗性組成物) は、0.5〜1.0重量%のアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーと0.2〜0.8重量%のヒドロキシプロピルセルロースとの組み合わせを含有する。
本発明による医薬組成物 (耐汗性組成物) は好ましくはヒドロゲルである。ヒドロゲルの水分は、好ましくは5.0〜90.0重量%、より好ましくは10.0〜70.0重量%、なおより好ましくは20.0〜50.0重量%、特に25.0〜40.0重量%である。
【0115】
本発明による医薬組成物 (耐汗性組成物) は好ましくはC2-C4アルキルアルコールを含有し、ここでエタノールは特に好ましい。この場合において、医薬組成物 (耐汗性組成物) は、好ましく29.0〜73.0重量%のエタノールおよび5.0〜50.0重量%の水、より好ましくは34.0〜68.0重量%のエタノールおよび10.0〜45.0重量%の水、なおより好ましくは39.0〜63.0重量%のエタノールおよび15.0〜40.0重量%の水、特に好ましくは44.0〜58.0重量%のエタノールおよび20.0〜35.0重量%の水、特に54.8〜57.5重量%のエタノールおよび27.2〜30.8重量%の水を含有する。
【0116】
アクリルポリマーおよびセルロース誘導体に加えて、医薬組成物 (耐汗性組成物) は、必要に応じて、少なくとも1種の活性成分および追加の内容物、例えば、スキンケアー生成物、溶媒、透過エンハンサー、およびその他を含有する。活性成分、必要に応じて存在する追加の内容物および組成物中のそれらの好ましい比率 (百分率) は上に定義した通りである。
【0117】
こうして、ヒドロゲルの形態の医薬組成物 (耐汗性組成物) は、好ましくは、上に定義した活性成分および/または炭酸ジエステルおよび/またはC2-C4アルキルアルコールおよび/またはポリマーマトリックスを含んでなる。組成物に対する好ましい重量比率 (%) および互いにに対するおよび個々の成分の相対重量比の両方、および好ましい活性成分、好ましい炭酸ジエステルおよび好ましいC2-C4アルキルアルコールは上に定義した通りである。
【0118】
炭酸ジエステルの代わりに、または炭酸ジエステルを補助するために、医薬組成物 (耐汗性組成物) は透過エンハンサーを含有することができ、これは下記のものから成る群から選択される:
(i) 10〜30個の炭素原子を含有し、かつ必要に応じて1〜2個のヒドロキシル基、カルボキシル基またはC1-C4アシロキシ基で置換された脂肪酸および脂肪族エステル;
(ii) 10〜30個の炭素原子を含有し、かつ必要に応じて1〜2個のヒドロキシル基、カルボキシル基またはC1-C4アシロキシ基で置換された脂肪族アルコール;または
(iii)一般式 (VII) の化合物:
HO-(CH2CH2-O)n-R18 (VII)
式中R18はC1-C12アルキル、C1-C12アルケニル、C1-C12アルカノイルまたはC1-C12アルケノイルであり、そして指標nは1〜10の数である。
【0119】
医薬組成物 (耐汗性組成物) は、好ましくは、一般式 (VII) の化合物を含有し、式中R18はC1-C4アルキルであり、そして指標nは1〜3の数である。
一般式 (VII) の好ましい化合物は次の通りである: HO-CH2CH2O-CH3、HO-CH2CH2O-CH2CH3、HO-CH2CH2O-CH2CH2CH3、HO-CH2CH2O-CH2CH2CH2CH3、HO-(CH2CH2O)2-CH3、HO-(CH2CH2O)2-CH2CH3、HO-(CH2CH2O)2-CH2CH2CH3、HO-(CH2CH2O)2-CH2CH2CH2CH3、HO-(CH2CH2O)3-CH3、HO-(CH2CH2O)3-CH2CH3、HO-(CH2CH2O)3-CH2CH2CH3、HO-(CH2CH2O)3-CH2CH2CH2CH3、HO-(CH2CH2O)4-CH3、HO-(CH2CH2O)4-CH2CH3、HO-(CH2CH2O)4-CH2CH2CH3およびHO-(CH2CH2O)4-CH2CH2CH2CH3
医薬組成物 (耐汗性組成物) について、式中R18がエチルであり、そして指標nが2である、一般式 (VII) の化合物を含有する態様は特に好ましい。
【実施例】
【0120】
下記の実施例により、本発明をさらに説明する。
実施例1
本発明による2つの医薬組成物 (A型およびB型) を通常の方法で製造した。組成物の成分を表2に記載する:
【0121】
【表2】

【0122】
実施例2
セルロース誘導体と組み合わせてアクリルポリマーを含んでなる、ヒドロゲルの形態の医薬組成物 (耐汗性組成物、C型) を通常の方法で製造し、ここで活性成分を使用しなかった。組成物の成分を表3に記載する:
【0123】
【表3】

【0124】
下記の製造方法を実施した:
Pemulen TR-1およびHPC (Klucel HF) を96%エタノール中に浸漬した。次いで、イソプロピルミリステートを添加し、再び混合した。ゲル形成因子および膨潤する物質は溶媒混合物中で膨潤し始めた。ホッパーを介して混合物全体をミキサー/ホモジナイザーシステム (Becomix RW 2.5) 中に導入し (Becomix RW 2.5中に抜き出し) 、20 rpmにおいて短時間攪拌した。
【0125】
次いで、それを2000〜3500 rpmにおいて1分間均質化した (例えば、ローター-ステイター型ホモジナイザーを使用して) 。また完全に浸漬されていない凝集物を含まない、均質な、透明ゲルが得られた。86%グリセロールおよび全量の精製水をいくつかの部分的ステップで無ストリーク混合物として添加し (導入) 、そしてゲルは再びかなり膨潤した。ゲルの有意な透明化が可視となるまで、それを攪拌した (約5分) 。水/グリセロールの各添加で、ゲル骨格はよりよく形成し、また、同時にいっそう透明化を増した。rpmは50であった。
【0126】
次いで、攪拌しながらシクロメチコンを混合物に添加した。こうして水/グリセロール混合物ならびにシクロメチコンの均一な分布が保証され、そして添加の終わりにおいて、それを1分間4000 rpmにおいてさらに均質化した。次いで、3つの部分的区分で50 rpmにおいて攪拌しながら、10%のトロメタミン水溶液を中和のために添加した。この場合においてゲルはかなり透明になり、そしてゲル構造はさらに構築された。添加の終わりにおいて、それを再び2700 rpmにおいて2分間均質化した。
【0127】
実施例3
1系列の試験において、3つの異なるヒドロゲルの形態の医薬組成物を皮膚適合性に関して検査した。処方物は次の通りであった:
比較処方物1 (VB1) (EP-A 817 621に従う実施例):
70.2%のエタノール、20%のエチルヘキシルエチルヘキサノエート、1%のセテアリールオクタノエート; 1.5%のヒドロキシプロピルセルロース; 3.6%の水。
比較処方物2 (VB2); アンドロゲル (市販されている製品):
68.9%のエタノール; イソプロピルミリステート、ポリアクリル酸、水、NaOH。
【0128】
本発明による処方物3 (EB3) 、実施例2の方法に従い製造した:
45%のエタノール、10%のプロピレンカーボネート、2.0%のPEG 400、0.6%のアクリルポリマー、4.0%のグリセロール、37.25%の水、適量のジイソプロピルアミン。
無傷の皮膚上において2週にわたって0.25 g/適用部位を1日1回皮膚に適用した (合計14回の適用) 後、ウサギにおける局所的適合性を検査した。この研究はEMEAガイドライン (CPMP/SWP/2145/00) に従って実施した。この研究は6匹の雄の動物 (白色New Zealand/conv.) について実施した。
【0129】
陰性対照として、水道水を使用した; 陽性対照として、テストゲル/アンドロゲルを使用した。暴露時間は4時間であった。治療残留物を微温水で除去した。読みおよび反応の評価は各場合において暴露時間の終わりにおいて実施した後、物質残留物を除去した。最後の治療 (第15日) 後の日に、動物を殺し、解剖した。SOP TX ME No. 382.4の情報に従い、サンプリングならびに組織学的精密検査を実施した。
結果を第1図に示し、ここでX軸は適用の数を示し、そして処方物はY軸に示す。
【0130】
比較試験が示すように、本発明による組成物は、先行技術の普通に使用される組成物よりも優れる。比較処方物1および2 (VB1およびVB2) が示すように、エタノール含有率が高いゲルは有意な副作用を示す。この場合において、副作用はエタノールにより独占的に引き起こされないが、また、明らかなように使用する透過エンハンサーのタイプに依存することが明らかである。70重量%のエタノール含有率において、市販されている製品 (アンドロゲル) は比較処方物1 (VB1) よりもかなり低い副作用を示し、ここでエチルヘキシルエチルヘキサノエートは透過エンハンサーとして働く(参照、P-A 817 621に従う生成物) 。
【0131】
実施例4
ポリアクリル酸 (例えば、カルボポル) に基づくゲル系/ヒドロキシプロピルセルロースとPemulen TR-1との組み合わせに基づくゲル系 (耐汗性組成物) の電解質耐性の流動学的特性決定。
試験の構成は、皮膚上の記載したゲル系の 「耐汗性」 をシミュレートする。この目的に対して、選択した電解質調製物を組成物に添加し、そして流動学的パラメーターを測定した。未処理試料を電解質添加試料と比較することによって、電解質耐性を特性決定した。
【0132】
調製物を0.01%の結晶形NaClと混合し、そして適度に攪拌しながら、この塩を添加した。次いで、流動学的測定を直ちに実施した。測定装置は、ペィティエル (Peltier) サーモスタットを有する回転粘度計RC 20 (Europhysics Company) から成っていた。測定温度は25℃であり、そして剪断応力 (t) のプリセット値は150パスカルであった。C50-1測定コーンを使用した。
【0133】
1. ポリアクリル酸 (Carbopol) に基づくアンドロゲル (市販されているアンドロゲル)
2. ヒドロキシプロピルセルロース (Klucel HF)/Pemulen TR-1に基づく本発明によるベヒクル、実施例2に従うヒドロゲル。
出発値の約17%に電解質を添加したために、アンドロゲルの降伏点は低下した。しかしながら、ヒドロキシプロピルセルロース/ Pemulen TR-1に基づく本発明による変種の降伏点は出発値のわずかに89%に減少した。
【0134】
【表4】

【0135】
本発明によるヒドロキシプロピルセルロース/ Pemulen TR-1に基づく系について、結果はかなり高い電解質耐性を示す。この挙動は現実の生活の適用経験と相関する。本発明による調製物は、皮膚から流出および滴下しないで、適用することができる。しかしながら、市販されている製品は流出しかつ滴下し、ここで流出および滴下は降伏点の強い減少により引き起こされる。
【0136】
実施例5
55重量%のエタノールおよび10重量%のプロピレンカーボネートを含有し、そして実施例2に従い製造された、本発明による組成物の活性成分eF-MENTに関する透過挙動を、市販されている製品の組成物にほぼ対応する組成物からの透過挙動と比較した。
この実験は、Franzの拡散セル (参照: T. J. Franz、Invest. Dermatol. 1975、64、191) を使用して実施した。このモデルは拡散セルから成り、このセルはドナー隔室とアクセプター隔室とに再分割することができる。このシステムにおいて、皮膚はこれらの隔室間のバリヤーとして作用する。この場合において、皮膚側がアクセプター隔室の溶液でフラッシュされるように、皮膚を隔室間に導入する。拡散セルのアクセプター隔室をHPLCユニットに接続し、これによりこの溶液のアリコートの自動分析が可能である。
【0137】
本発明による試験したヒドロゲルの実際の組成を表5に記載する:
【表5】

【0138】
無毛ヌードマウス (HsdCpb NMRI-nude/nude、Harlan Bioservice、Walsrode) の皮膚を検査した。
アクセプター隔室中の溶液は下記の組成を有した:
塩化カリウム 0.4 g
リン酸二水素カリウム 0.06 g
塩化ナトリウム 7.27 g
リン酸水素ナトリウム二水和物 0.06 g
HEPES 5.96 g
硫酸ゲンタマイシン 0.05 g
γ-シクロデキストリン 5.0 g
アクアプリフィカタ (Aqua purificata) 1000 g
【0139】
この実験において、試料の250 μlのアリコートを皮膚の表皮側の表面 (45 cm2) 上に注射器により適用した。手袋で保護した指先で、試料を皮膚表面上に軽度にこする。ゲルを適用してから5分後に、皮膚の一部分を拡散セル中に導入した。Franzセルのアクセプター溶液を連続的に均質化した。有効な透過表面積は1.5 cm2であった。特定した時間間隔 (3、6、9、12、15および18時間) 後、アクセプター溶液のアリコートを取出し、HPLCユニット中に注入し、自動的に分析した。試料中のeF-MENT含有率を標準溶液で定量し、ここで標準溶液を平行にかつ同一HPLC条件下に測定した。
【0140】
HPLC:
カラム: 前カラムを有するベルテックス (Vertex) 、ヌクレオシル (Nuclesil) - 100 C18、5 μm、125×3 mm
移動相: アセトニトリル/水 (39/61)
流速: 0.700 ml/分
温度: 40℃
注入体積: 200 μl
検出波長: 244 nm
保持時間: eF-MENT 4.8分。
【0141】
研究結果を第2図に図解する (経皮的ゲル#09W-140を比較例として使用する; 経皮的ゲル#09W-141は本発明による実施例である) 。
これらの実験において、本発明による組成物 (#09W-141) は、改良された適合性および改良された適用比率を有すると同時に、経皮的に投与すべき活性成分に関して非常にすぐれた透過効率を示すことが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ジエステル、C2-C4アルキルアルコール、少なくとも1種の活性成分およびポリマーマトリックスを含有するヒドロゲルの形態の医薬組成物。
【請求項2】
前記炭酸ジエステルが、一般式 (I):
【化1】

(式中、
(i) R1およびR2は、互いに独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C4-C6シクロアルキル、C1-C6ヘテロシクロアルキル、フェニル、C1-C6ヘテロアリール、フェニル-C1-C4アルキルまたはC2-C10ヘテロアリールアルキルであり、ここでアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は必要に応じて各場合において酸素原子および/または硫黄原子で3回まで中断されることができ、あるいは
(ii) R1およびR2は、互いに独立して、前述の意味の1つを有し、そしてC-C結合を介して互いに接続されている)
の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭酸ジエステルが、一般式 (II):
【化2】

(式中、指標mは1〜3の数であり、そしてR3は水素またはC1-C4アルキルである)
の化合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
mが1であり、そしてR3がメチルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記C2-C4アルキルアルコールがエタノールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性成分がステロイドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ステロイドがアンドロゲンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ステロイドが一般式 (III):
【化3】

〔式中、
R4は水素、フッ素、塩素、C1-C3アルキルまたは必要に応じてアセチル化されたヒドロキシル基であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、互いに独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
点線は、互いに独立して、任意の結合であり、そして
AおよびBは、互いに独立して、カルボニル基または下記式:
【化4】

(式中、Xはヒドロキシル基または1〜8個の炭素原子を有するカルボン酸とのそのエステルであり、そしてYは水素またはC1-C3アルキルである)
の基である〕
の化合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
R7、R8およびR9が水素である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ステロイドが一般式 (IV):
【化5】

(式中、Xはヒドロキシル基または1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸とのそのエステルであり、R4は水素、フッ素またはヒドロキシル基であり、R5およびR6は、互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであり、そして点線は任意の結合である)
の化合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記ステロイドが、一般式 (V):
【化6】

(式中、R4はフッ素または水素であり、そしてXはヒドロキシル基またはそのアセテートである)
の化合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
Xがヒドロキシル基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ステロイドが、少なくとも1種の他の活性成分と組み合わせて存在する、請求項6〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックスがアクリルポリマーである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アクリルポリマーがアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーマトリックスがセルロース誘導体を含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
0.01〜5.0重量%のeF-MENT、0.1〜1.5重量%のアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、0〜1.0重量%のポリアクリル酸、0〜2.0重量%のセルロース誘導体、5.0〜20.0重量%のプロピレンカーボネート、0.01〜5.0重量%のグリセロール、0.01〜5.0重量%のシクロメチコン、0.01〜5.0重量%のイソプロピルミリステート、20.0〜50.0重量%の精製水、30.0〜60.0重量%のエタノールおよびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンpH 5〜7を含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
ステロイド欠乏症候群を治療する薬剤を製造するための請求項6〜16のいずれか1項に記載のヒドロゲルの使用。
【請求項19】
ヒドロゲル中の薬学的物質の経皮透過性を改良するためのカルボン酸ジエステルの使用。
【請求項20】
前記ヒドロゲルが請求項1〜17のいずれか1項に記載のヒドロゲルである、請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241824(P2010−241824A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−152291(P2010−152291)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2006−505217(P2006−505217)の分割
【原出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】