説明

流体の移送法

本発明は、供給物質として化学反応に用いられる流体を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって連続的に移送するための方法において、前記振り子ラインに、化学反応の生成物又は出発材料であり、且つ、移送されるべき流体の融点より低い融点を有するか若しくは飽和温度より低い融点を有する補助流体が存在していることを特徴とする方法に関する。本発明の更なる対象は、芳香族化合物の水素化によって形成された生成物を、芳香族化合物を移送するための補助流体として使用すること、並びにアルコール又はアルコールとカルボン酸からのエステルを、カルボン酸又はカルボン酸誘導体を移送するための補助流体として使用することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、供給物質として化学反応に用いられる流体の連続的な移送法に関する。さらに本発明は、芳香族化合物、殊に芳香族アミンの水素化法、並びにエステルの製造法に関し、その際、供給物質は、流体を連続的に移送するための本発明による方法によって反応器に供給される。本発明の更なる対象は、芳香族化合物の水素化によって形成された生成物を、芳香族化合物を移送するための補助流体として使用すること、並びにアルコール又はアルコールとカルボン酸からのエステルを、カルボン酸又はカルボン酸誘導体を移送するための補助流体として使用することである。
【0002】
高温且つ殊に融解した物質の圧力系への連続的な移送については、専門文献に、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,High−Pressure Technology(Electronic Release DOI:10.1002/14356007.b04_587)に様々の可能性が挙げられる。
【0003】
遠心ポンプ及び回転ポンプが用いられる場合、必要とされる高い差圧を達成するために、多数のポンプ段が連続して接続されなければならないか、でなければ非常に高い回転数が使用されなければならない。ポンプ内で生成物が凝固することを防ぐために、煩雑な、それにより費用の掛かる構造が、生成物と接触した全ての構成部品の完全な加熱のために用いられなければならない。それゆえ、このポンプ仕様は、通例、なかでも大きい容積流が移送される適用においてのみ用いられる
比較的小さい容積流の移送のために、例えば、加熱可能なギヤーポンプが使用されることができる。このポンプ型の場合の欠点はしかし、歯車の駆動のために、外へ向かう、シールされた駆動軸が用いられなければならず、それによりシール剤及び潤滑剤による移送媒体の汚れが生じるか又は移送媒体が外へ漏れ出る可能性がある。
【0004】
高圧ダイヤフラムポンプにより、この欠点は解消され、それというのも、駆動がハーメチックダイヤフラムによって行われ、ひいてはシール剤及び潤滑剤による汚れが生じることも、移送媒体が外へ漏れ出る可能性もないからである。しかしながら、ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラム材料(例えばポリエチレン(PE)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE))の僅かな温度安定性及び完全には実現されない加熱に基づき、高温流体若しくは溶融物の移送のために用いられることはできない。このために、そのとき、完全に加熱可能なポンプヘッドを有する金属製ダイヤフラムか又はいわゆる"振り子ポンプ系(Pendel-Pumpsysteme)"のいずれかが使用されなければならない。
【0005】
振り子ポンプ系は、例えば、DE−A−1453576、DE−A−1528547、EP−A1−048535、DE−A1−3021851、DE−T5−19782185、DE−A−2553794、WO−A−80/01706、DE−A−4124290又はEP−B1−36945に開示される。
【0006】
DE−A−1453576は、腐食作用する流体、例えばカルバミン酸アンモニウム溶液を、二つのエレメントに区分されている振り子ポンプユニットによって注入するための装置を記載する。第一のエレメント("主ポンプ")は、腐食性でない補助流体、例えば水を行程運動させ、それにより連結ライン("振り子ライン")を介して、腐食性流体を移送するための2つの弁付きトラップを有する第二のポンプエレメントを動かす。補助流体は、小型の補助ポンプを介して常に連結ラインに供給される。
【0007】
DE−A−1528547は、振り子ラインに中性の補助流体を常に計量供給することを伴う、ほぼ同じポンプ構想を記載している。
【0008】
EP−A1−048535は、高温の石炭懸濁液を移送するための振り子ポンプ系を記載し、その際、石炭懸濁液と混和しうる油が補助流体として用いられる。
【0009】
DE−A1−3021851には、振り子ポンプ系が記載され、その際、補助流体は、好ましくは、移送されるべき流体と混和しえず、その際、振り子ラインは空間的に非常にコンパクトに配置されている。
【0010】
DE−T5−19782185は、DE−A−1453576におけるのと類似のポンプを用いて高温媒体並びに固体/流体混合物("スラリー")を注入するための振り子ポンプ系を記載し、その際、振り子ラインは、主ポンプの過熱を防ぐために水平部分において冷却されている。この場合、補助流体の添加は省かれる。
【0011】
同様にWO−A−80/01706も、高温流体を注入するための振り子ポンプ系を記載し、その際、連結ラインは、水平部分と鉛直部分から成り、且つ同様に冷却される。類似の系が、DE−A−4124290に記載される。
【0012】
DE−A−2553794は、垂直に取り付けられた振り子ラインを有する振り子ポンプ系を開示し、その際、冷却によって、高温流体と主ポンプ間の温度勾配が維持される。
【0013】
EP−B1−36945は、同様のポンプ装置を記載し、その際、可動式ピストンが、移送流体と補助流体間でそれらが混合することを防ぐとされる。
【0014】
高温流体が移送される場合、従来技術に記載されるポンプ系は欠点を有する。
【0015】
高圧ダイヤフラムポンプの場合、移送媒体の最大許容温度は、例えば、PEダイヤフラム又はPTFEダイヤフラムのようなプラスチックダイヤフラムが使用される場合、一般的にダイヤフラム材料の耐久性によって制限されている。
【0016】
金属ダイヤフラムの使用は、その非常に僅かな可撓性に基づき、非常に大きな、それにより高価なポンプヘッドにつながると考えられる。
【0017】
さらに、ダイヤフラムポンプのポンプヘッドは、特にダイヤフラムモーター及びダイヤフラムそのもので、完全には加熱可能ではないため、溶融物が注入される場合、固体形成(結晶化)及び、それによりダイヤフラムの機械的破壊が生じる可能性がある。
【0018】
ピストン高圧ポンプが使用される場合、通例、ピストンの潤滑のために、潤滑油又は類似の流体が必要とされる。これは、移送されるべき流体と混合しえ、それにより該流体は汚される可能性がある。ピストンポンプの加熱も同様に、一般的に完全には可能ではないため、ここでも同様にポンプの加熱されなかった箇所で付着物が形成しうる。
【0019】
振り子ラインと、空間的にそれとは独立したポンプボディを有する、吸込弁及び移送弁を有する高圧ダイヤフラムポンプが、原則的に、高温溶融物の移送のために適している。しかしながら、この種のポンプ配置には、ダイヤフラムポンプから、移送されるべき溶融物へのポンプ運動を伝えるための補助流体の使用が不可欠である。補助流体の一部は、移送されるべき溶融物と混ざる可能性がある。これにより、移送されるべき流体が補助流体で汚染される可能性がある。
【0020】
振り子ラインの冷却は、通例、短時間後には、溶融物の部分が振り子ラインを通って主ポンプの方向に向かって拡散し、そこで凝固し、且つポンプの閉塞をもたらすことにつながる。同様に、振り子ラインにおける補助ピストンの使用は、凝固する溶融物によるピストンの急速な閉塞をもたらすと考えられる。
【0021】
したがって、流体を高い温度で、例えば溶媒又は封止剤による汚染なしに高圧反応器中に移送するという課題があった。殊に、課題というのは、付着物を形成する傾向にある流体の移送に際しての、ポンプ系における付着物及び残留物の形成を軽減することにあった。付着物及び残留物を形成しうる流体とは、例えば、それ自体が又はその内容成分が、最低温度を下回った場合に凝固、結晶化又は沈殿しうる流体である。殊に、本発明の課題というのは、有機溶融物及び有機化合物の濃縮された溶液、特に有機溶融物を移送するための方法を発展させることにあって、その際、資本費及び運転費を可能な限り低く維持するために、生成物と接触した構成部品、殊にダイヤフラムポンプのダイヤフラムの完全な加熱のための費用の掛かる構成部品が省かれるべきである。
【0022】
本発明が基礎とする課題は、供給物質として化学反応に用いられる流体を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって連続的に移送するための方法において、振り子ラインに、化学反応の生成物又は出発材料であり、且つ、移送されるべき流体の融点より低い融点を有するか若しくは飽和温度より低い融点を有する補助流体が存在していることを特徴とする方法によって解決された。
【0023】
本発明による方法の実施のために、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ("主ポンプ")並びに容積式ポンプと移送弁間の振り子ラインを包含するポンプ系が使用される。
【0024】
移送弁は、一般的にケーシング内に収容されている。その内部に存在する移送弁とともにケーシングは、以下で"弁体"と呼ばれる。
【0025】
弁体は、一般的に、そのつど吸込側での入口及び圧送側での出口を有する。入口若しくは出口は、通常、移送されるべき流体が移送される吸込側のフィードライン若しくは圧送側の排出ラインと連結されている。移送弁は、移送されるべき流体が弁に送られるように、通常、弁体の入口及び出口に取り付けられている。弁は、一般的に、移送されるべき流体が弁を吸込側からのみ圧送側の方向に向かって通過することができるように組み立てられている。逆方向への流れ(圧送側から吸込側)は、一般的に遮断される。例えば、弁は、逆止弁として、好ましくはボール逆止弁として形作られていてよい。
【0026】
弁間には、弁体内で、移送されるべき流体が貫流する空隙が通常存在している。この空間は、通常、好ましくは円筒形状を有するパイプラインとして形が整えられており、その際、該形状は、円筒形状から逸脱していてもよく、且つ、例えば球状に形が整えられていてもよい。
【0027】
有利な実施形態において、弁体は鉛直に若しくは垂直に配置されており、すなわち、移送弁と移送弁間の空間をよぎることができる軸は垂直に延びている。
【0028】
移送弁は、振り子ラインによって容積式ポンプとは空間的に分けられている。
【0029】
振り子ラインは、有利には"L"状形状を有し、すなわち、振り子ラインは、この形状においては、水平に延びる領域と垂直に延びる部分とを有する。この形状からの逸脱が、例えば、容積式ポンプと弁体間の連結を可能にするために、容積式ポンプ及び弁体の配置が構造上の現実に基づきあくまで"L"状形状を許容しない場合に可能である。弁体が垂直に配置されている場合に、通常、振り子ラインの水平部分は、弁ケーシング、双方の移送弁間の空隙に通じている。振り子ラインの水平部分に続く振り子ラインの垂直領域は、通例、容積式ポンプのポンプ室と直接連結されているか、又は必ずしも垂直に配置されている必要のない振り子ラインの更なる領域を介して連結されている。
【0030】
弁体が水平に配置されている場合に、通常、振り子ラインの垂直部分は、双方の移送弁間の弁体の空隙に合流する。振り子ラインの垂直部分に続く振り子ラインの水平領域は、通例、容積式ポンプのポンプ室と直接連結されているか、又は必ずしも水平に配置されている必要のない振り子ラインの更なる領域を介して連結されている。
【0031】
有利な実施形態において、弁体と連結されている振り子ラインの部分、及び弁体そのものが、移送されるべき流体の融点より高い温度若しくは飽和温度より高い温度に加熱される。
【0032】
振り子ラインの加熱された部分及び弁ケーシングの加熱は、通常、蒸気又は伝熱油により行ってよい。
【0033】
振り子ラインの加熱された部分は、有利には、双方の移送弁間の弁体内の空隙と一緒に、容積式ポンプの行程容積の約3〜20倍、有利には5〜15倍、及び特に有利には7〜12倍に相当する少なくとも1つの容積が包含されるほど大きい。それにより、一般的に、移送されるべき流体が振り子ラインの加熱された部分とのみ接触することが保証される。
【0034】
振り子ラインは、容積式ポンプ("主ポンプ")の圧送側と連結されている。
【0035】
好ましくは、容積式ポンプ("主ポンプ")はピストンポンプ又はダイヤフラムポンプであり、その際、ダイヤフラムポンプが、移送されるべき流体を汚染しうると考えられるシール剤及び潤滑剤を必要としないので、特に有利にである。
【0036】
ダイヤフラム材料として、エラストマー材料、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(MVO、VMO)、フルオロシリコーンゴム(MFO、FVMO)、フルオロゴム(FPM、FKM)、パーフルオロゴム(FFKM、FFPM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリエステルウレタンゴム(AU、EU)、ブチルゴム(IIR)及び天然ゴム(NR)が適している。使用される補助流体に対して耐化学性であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)又は他のプラスチックダイヤフラムからのポリマーダイヤフラムも用いられることができる。その際、コーティングされたダイヤフラム、例えばPTFEでコーティングされたエラストマーダイヤフラム、又は種々の材料からの多層に形作られたダイヤフラムを使用することも可能である。
【0037】
有利なダイヤフラム材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリエチレン(PE)であり、その際、PTFE及びPTFEでコーティングされたエラストマーダイヤフラムが、芳香族化合物及びカルボン酸若しくはカルボン酸誘導体の移送のために特に有利である。
【0038】
主ポンプは、吸込側でパイプライン("連結ライン")と連結されており、そこを通って補助流体は供給されることができる。
【0039】
連結ラインを通しての補助流体の供給は、有利には更に別の容積式ポンプ("補助ポンプ")によって行われる。
【0040】
該補助ポンプは、好ましくはピストンポンプ又はダイヤフラムポンプとして、特に有利にはダイヤフラムポンプとして形が整えられている容積式ポンプである。ダイヤフラム材料として、上述の材料、例えば、そのつどの補助流体に対して耐久性をもつPTFE及びPTFEでコーティングされたダイヤフラムが適している。
【0041】
連結管には、好ましくは逆止弁が取り付けられており、これは流体が主ポンプから補助ポンプの方向に向かって流れることができることを防ぐ。
【0042】
逆止弁と主ポンプ間には、通例、主ポンプのポンプ室を脱気するための弁が存在している。この弁は、完全な脱気を可能にするために、ポンプ系の最も高い場所に一般的に取り付けられている。
【0043】
一般的に、補助ポンプのポンプヘッドに直接、移送弁が吸込側及び圧送側で取り付けられる。
【0044】
移送弁は、一般的に、移送されるべき流体が弁を吸込側からのみ圧送側の方向に向かって通過することができるように組み立てられている。逆方向への流れ(圧送側から吸込側)は、一般的に遮断される。例えば、弁は、逆止弁として、好ましくはボール逆止弁として形作られていてよい。
【0045】
圧送側の移送弁と連結ラインにおける逆止弁間の最も高い箇所には、通例、パイプラインのこの部分の脱気に利用される更に別の弁が取り付けられている。
【0046】
補助ポンプの吸込側は、リザーバ、例えば容器又はタンクと連結されており、そこに補助流体が存在している。
【0047】
補助流体は、補助ポンプのポンプ室内への導入前に、例えば熱交換器によって又は装入容器の加熱によって加熱されることができ、その際、温度は、主ポンプも補助ポンプも、殊にダイヤフラムポンプのダイヤフラム材料も損傷されるほど高くあるべきではない。
【0048】
振り子ラインは、通例、流体で充填されている。
【0049】
有利には、振り子ライン、及び移送弁間に存在している弁体内部の空間は、流体を移送するための本発明による方法の開始前に−すなわち、ポンプ作業の開始前に−完全に又はほぼ完全に補助流体で充填されている。少なくとも振り子ラインの加熱されなかった部分が補助流体で充填されている場合に好ましく、それというのも、補助流体は、移送されるべき流体より低い融点を有しており、且つ液状であり続けるために、加熱される必要がないか若しくはそれほど強く加熱される必要がないからである。それにより、ポンプ系における固体の付着物の形成は更に軽減されることができる。
【0050】
移送作業を始めるために、通例、まず主ポンプ及び弁体内の補助流体が、主ポンプの行程運動(移送行程)によってポンプ系から注出される。吸込側での弁体内の移送弁は、移送されるべき流体の装入タンクの方向に向かう逆流を防ぎ、且つ連結ラインにおける逆止弁は、主ポンプから注出された補助流体が補助ポンプに環流しうることを防ぐ。
【0051】
主ポンプの吸込行程によって、移送されるべき流体は、吸込側でのフィードラインによって弁体に移送され、且つ部分的に振り子ラインに移送される。
【0052】
その際、移送されるべき流体は、通例、振り子ラインの全部分には達せず、それというのも、補助流体が、通例、移送されるべき流体が振り子ラインに広がることを阻む流体バリアーを形成するからである。そのようにして、一般的に、容積式ポンプ、殊にダイヤフラムポンプのダイヤフラムも、移送されるべき流体と接触するのではなく、むしろ一般的に補助流体により取り囲まれている。
【0053】
しかしながら、通例、補助流体は理想的な流体バリアーではないため、例えば、加熱された弁体と主ポンプのポンプヘッド間で高い温度勾配がある場合に、移送されるべき流体の一部が、補助流体と混ざり合い、且つ主ポンプの方向に向かって拡散する。移送されるべき流体の拡散によって、主ポンプ及び振り子ラインの部分の非加熱部分の領域において付着物が生じる可能性がある。
【0054】
ポンプ系の非加熱部分の領域でこれらの付着物が形成することを軽減するために、本発明により補助流体が振り子ライン内に導入される。補助流体の導入は、移送されるべき流体の対流又は拡散による広がりを一般的に阻止する主ポンプの弁体の方向に向かう流れを引き起こす。
【0055】
導入は、有利には連続的に行われる。
【0056】
有利な実施形態において、補助流体は容積式ポンプ("補助ポンプ")によって連結ラインを通して主ポンプのポンプ室内に導入される。連結ラインにおける逆止弁は、一般的に、流体が主ポンプの方向にのみ向かって流れることができるようにする。
【0057】
補助流体の容積流対移送されるべき流体の容積流は、好ましくは、1:100〜1:10の範囲、特に有利には1:80〜2:10の範囲、殊に有利には1:50〜5:10の範囲にある。
【0058】
主ポンプの振動運動によって、移送行程及び吸込行程が繰り返し行われ、その際、ポンプ運動は、補助流体によって、移送されるべき流体に伝えられるため、移送されるべき流体は、連続的に弁体の入口を通って出口の方向に向かって移送されることができる。
【0059】
有利な実施形態において、主ポンプと補助ポンプのコネクティングロッドは機械的に互いに結合されている。その際、機械的な結合部は、主ポンプが吸込行程にある場合にちょうど補助ポンプが移送行程にあるのと、その逆もあるように形作られている。しかしながら、双方のポンプを別個のモーターによって駆動し、且つ電子装置による手法で、例えば可変周波数コンバータによって行程運動の同期を実施することも可能である。
【0060】
主ポンプのポンプヘッド、殊にダイヤフラムポンプのダイヤフラム、及び振り子ラインの大部分は、たいてい補助流体とのみ接触するので、この領域中での温度は比較的低く設定されることができ、それというのも単に、ポンプヘッドの領域中及び振り子ラインの加熱されなかった部分における温度が、補助流体が流動性の状態であり続け、且つ付着物の形成が十分に回避されるだけ高い必要があるに過ぎないからである。有利な実施形態において、主ポンプのポンプヘッド及び振り子ラインの加熱されなかった部分は付加的には加熱されず、且つ周囲温度より低い融点を有する補助流体が使用される。この実施形態により、ポンプ系の特に経済的な態様が可能になる。補助流体と移送されるべき流体間の温度差を軽減するために、例えば、移送されるべき流体が補助流体に拡散することを減少させるために、補助流体は、一方で、補助ポンプのポンプ室内への導入前に上記の通り加熱されることができる。
【0061】
ポンプ系の幾何学的配置は、一般的に、移送されるべき物質に依存して形作られる。移送されるべき流体の密度が、そのつど運転温度にて、補助流体の密度より高い場合に、弁体は、通常、主ポンプより低く配置される。相応して、弁体は、移送されるべき流体が補助流体より僅かな密度を有する場合に、通例、主ポンプより高く配置される。
【0062】
添付の略図(図1)を引き合いに出しながら、しかしながら、これに制限されるという意味ではなく、流体を移送するための本発明による方法の実施形態を下に記載する:
図面の簡単な説明図1には、溶融物用の本発明による振り子ポンプ系が概略的に示されている。その際、(1)は溶融物のフィード流(吸込側)であり、且つ(2)は、溶融物の化学プロセスへの排出流(圧送側)を表す。弁体(6)は、溶融物の吸込側(10)での弁及び圧送側(11)での弁を有し、該弁は、(1)から(2)に向かう流方向に限って通過させ、しかしながら、逆方向の流れは遮断する。
【0063】
弁(10)と(11)間には、パイプライン、いわゆる振り子ライン(7)が取り付けられており、該ライン(7)は完全に流体で充填されている。弁体(6)並びに振り子ライン(7)の下部は、弁体内又は振り子ライン内で溶融物が凝固することを防ぐために、高温媒体、例えば蒸気又は伝熱油により加熱されている位置(8)及び(9)は、高温媒体の流入部並びに流出部を示す。
【0064】
振り子ライン(7)は、主ダイヤフラムポンプ(12)と連結されている。ダイヤフラムは、ギヤーボックス(17)を有するモーターによりコネクティングロッドを介して駆動される。ダイヤフラムポンプ(12)は、補助流体を計量供給するための第二のパイプライン(連結ライン)(5)と連結されている。補助流体用のこの供給ラインには、逆止弁(14)が取り付けられており、該逆止弁(14)は、流体が主ポンプ(12)から補助ポンプ(16)の方向に向かって流れることができること防ぐ。逆止弁(14)とダイヤフラムポンプ(12)間には、最も高い場所に、弁(13)が、ポンプ室(5)、(12)、(7)を完全に脱気するために存在している。
【0065】
補助流体は、小型のダイヤフラム計量型ポンプ、補助ポンプ(16)によって、主ポンプ(12)に供給される。その際、(3)は、補助ポンプ(16)への補助流体の供給ライン(吸込側)であり、且つ接続部(4)は、補助ポンプの圧送側を表す。この補助ポンプ(16)の場合、移送弁(18)及び(19)は、吸込側及び圧送側のダイヤフラムポンプヘッドに直接取り付けられている。補助流体の圧送側と逆止弁(14)間の連結ラインの最も高い場所には、弁(15)が、このパイプラインを完全に脱気するために存在している。補助ポンプ(16)は、機械的に電動機及びギヤーボックス(17)によってコネクティングロッドを介して駆動される。この有利な実施形態において、主ポンプ(12)及び補助ポンプ(16)のコネクティングロッドは機械的に互いに結合されている。その際、機械的な結合部は、ちょうど、主ポンプ(12)が吸込行程にある場合にちょうど補助ポンプ(16)が移送行程にあるのと、その逆もあるように形作られている。
【0066】
本発明による方法により、供給物質として化学反応に用いられる流体が移送されることができる。
【0067】
本発明による方法により、例えば、水素化、酸化、エステル化及び重合のような反応用の供給物質が反応装置に移送されることができる。
【0068】
その際、供給物質は、供給物質の溶融物として又は濃縮された溶液として用いられることができる。
【0069】
特に有利には、移送されるべき流体は、溶融物として、特に有利には市販の純粋な物質の溶融物として用いられる。
【0070】
溶融物の使用は、一般的に、移送されるべき化合物が、移送されるべき流体を得るために、別個の工程段階において溶解される必要がないという利点を有する。加えて供給物質は溶媒によっては希釈されないため、反応器には、通例、比較的高い量の出発材料を入れることができ、且つ反応の終了後の溶媒の煩雑な分離は一般的に必要ではない。
【0071】
あるいは供給物質は、供給物質の溶液として用いられることもできる。
【0072】
供給物質用の溶媒として、好ましくは、相応する方法、若しくはそれぞれの反応に用いられる溶媒が一般的に使用される。この実施形態は、例えば、供給物質が溶融に際して変色又は副反応を生じる傾向にある場合に好ましい。供給物質の濃縮された溶液の製造によって、供給物質を流動性の状態に変えるための温度を下げることができる。可能な限り高い反応器稼働率を達成するために、一般的に可能な限り濃縮された溶液が製造される。本発明による方法によって、高い飽和温度を有する濃縮された溶液の移送が可能であり、それというのも、補助流体の連続的な供給によって、濃縮された溶液が主ポンプのポンプヘッドの領域に達することを十分に防ぐことができる。
【0073】
この理由から、供給物質をスラリーとして補助流体中で使用することも可能である。それにより、本発明による方法は、不融性の供給物質、例えばテレフタル酸の移送、例えば、供給物質エチレングリコール中のテレフタル酸のスラリーを移送するためにも適している。
【0074】
特に有利には、本発明による方法によって、20℃以上の融点、好ましくは50℃以上の融点、特に有利には75℃以上の融点、及び極めて有利には100℃以上の融点を有する溶融物が移送されることができる。
【0075】
さらに、有利には供給物質の溶液が移送されることができ、その際、溶液の飽和温度は、20℃以上の温度、有利には50℃以上の温度、特に有利には75℃以上の温度、及び極めて有利には100℃以上の温度である。
【0076】
飽和温度として、ある一定の濃度を有する供給物質の溶液が飽和状態に到達し、且つ供給物質が溶液から沈殿し始める温度と解される。
【0077】
移送されるべき流体が移送される温度は、その融点より高いか若しくはその飽和温度より高い。
【0078】
好ましくは、移送温度は、移送されるべき流体の融点若しくは飽和温度より1℃〜100℃、好ましくは5℃〜80℃、及び特に有利には10℃〜50℃高い。
【0079】
通例、移送されるべき流体の温度は、300℃を上回るべきではなく、有利には250℃を上回るべきではなく、且つ特に有利には200℃を上回るべきではない。ポンプヘッドの領域中での補助流体の温度は、通例、以下に記載されるように、ダイヤフラムの熱安定性によって制限されているので、弁体とポンプ室間の高い温度勾配が、移送されるべき流体と補助流体との完全混合を強めることにつながりうる。通例、補助流体の容積流対移送されるべき流体の容積流の比は、弁体とポンプ室間の温度勾配が高ければ高いほど、それだけ一層高く選択されるべきである。
【0080】
補助流体は、本発明によれば、化学反応の生成物又は化学反応の出発材料である。
【0081】
補助流体として化学反応の生成物が用いられる場合、好ましくは、そのつどの化学反応の条件下で有利には形成する主生成物が補助流体として用いられる。補助流体として化学反応の出発材料又は生成物のいずれかが使用されることによって、移送されるべき流体が異種物質によって汚染されることが防がれる。
【0082】
補助流体の融点は、本発明によれば、移送されるべき流体の融点より低いか若しくは飽和温度より低い。特別な実施形態において、補助流体の融点は、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムが安定である温度より低いことから、ダイヤフラムは熱的に損傷されない。
【0083】
特に有利な実施形態において、補助流体の融点は、150℃以下、特に有利には100℃以下、極めて有利には50℃以下、及び殊に有利には25℃以下である。これらの温度の場合、通例、ダイヤフラムポンプの安全な運転が可能である。
【0084】
補助流体が連結ラインに導入される温度は、その融点より高い。
【0085】
好ましくは、補助流体が連結ラインに導入される温度は、補助流体の融点より1℃〜100℃高く、好ましくは5℃〜80℃高く、及び特に有利には10℃〜50℃高い。
【0086】
極めて有利には、補助流体が連結ラインに導入される温度は、0℃〜150℃の範囲、好ましくは10℃〜100℃の範囲、特に有利には20℃〜80℃の範囲、及び殊に有利には20℃〜50℃の範囲にある。
【0087】
補助流体の沸点は、好ましくは、移送されるべき流体の移送温度を超えるべきではなく、それというのも、さもなければ、振り子ラインの領域における補助流体と移送されるべき流体間の境界面で不所望のガス形成が生じる可能性があるからである。
【0088】
特別な実施形態において、補助流体は化学反応の生成物である。
【0089】
この特に有利な実施形態は、有利には、水素化用の供給物質として用いられる芳香族化合物の移送のために適している。
【0090】
有利には用いられる供給物質は:
芳香族アミン、例えばアニリン、ベンジジン、異性体のトルイジン、異性体のキシリジン、異性体のキシリレンジアミン、1−若しくは2−アミノナフタリン、TDA異性体(2,4/2,6/2,3/3,4−トルエンジアミン)又はMDA異性体(4,4'−メチレンジアニリン、2,4'−メチレンジアニリン、2,2'−メチレンジアニリン、ポリマーMDA)並びにそれらの混合物;
置換されたMDA化合物、例えば3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン及び2,2',3,3'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン;
芳香族ジニトリル、例えば異性体のフタロジニトリル;
芳香族ヒドロキシ化合物、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF又は置換されたビスフェノール;
芳香族酸無水物、例えばフタル酸無水物;又は
芳香族酸、例えば安息香酸
である。
【0091】
特に有利には、芳香族アミンが供給物質として水素化に移送される。
【0092】
芳香族供給物質の移送のために、ここに記載される実施形態によれば、芳香族供給物質の水素化の生成物が補助流体として用いられる。芳香族供給物質の水素化に際して複数の水素化生成物が形成しうる場合、有利には、そのつどの反応条件にて主生成物となる水素化生成物が用いられる。例えば、2,4−トルエンジアミンの移送のために、2,4−ジアミノ−1−メチル−シクロヘキサンが補助流体として用いられることができる。
【0093】
補助流体として化学反応の生成物が用いられる、特に有利な実施形態は、エステル若しくはポリエステルの製造に際してのカルボン酸又はカルボン酸誘導体の移送にも適している。
【0094】
有利には用いられるカルボン酸は:
芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、殊に芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又は異性体のナフタリンジカルボン酸;又は
脂肪族カルボン酸、殊に脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、コハク酸、グルタル酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸又はフマル酸である。
【0095】
カルボン酸は、その際、単独でも、互いに混合しても使用されることができる。
【0096】
この有利な実施形態において、カルボン酸の相応するカルボン酸誘導体、例えば相応するカルボン酸無水物又はそのエステル、例えば上述のカルボン酸のC1〜C4−エステルが供給物質として用いられることができる。好ましくは、上述のカルボン酸の相応するカルボン酸無水物、殊にフタル酸無水物、マレイン酸無水物又はコハク酸無水物が用いられる。
【0097】
カルボン酸若しくはカルボン酸誘導体とアルコールのエステル化に際して、ここに記載される実施形態によれば、カルボン酸とアルコールからのエステルが、カルボン酸若しくはカルボン酸誘導体を移送するための補助流体として用いられる。
【0098】
例えば、安息香酸メチルエステルが、安息香酸及びメタノールからの安息香酸メチルエステルの製造に際して安息香酸を移送するための補助流体として用いられることができる。
【0099】
供給物質の化学反応に際して取得された生成物を、供給物質の移送のための補助流体として使用することによって、異種物質による、移送されるべき流体の不所望の汚れが生じない。さらに、例えば溶媒の最終生成物を精製するための付加的な費用が掛からない。
【0100】
更なる有利な実施形態において、流体を移送するための本発明による方法における補助流体は、化学反応の出発材料である。
【0101】
この特に有利な実施形態によって、有利には、エステル化用の供給物質として用いられるカルボン酸若しくはカルボン酸誘導体が移送される。
【0102】
有利には用いられるカルボン酸は:
芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、殊に芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又は異性体のナフタリンジカルボン酸;又は
脂肪族カルボン酸、殊に脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、コハク酸、グルタル酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸又はフマル酸である。
【0103】
カルボン酸は、その際、単独でも、互いに混合しても使用されることができる。
【0104】
この実施形態において、カルボン酸の相応するカルボン酸誘導体、例えば相応するカルボン酸無水物又はそのエステル、例えば上述のカルボン酸のC1〜C4−エステルも供給物質として用いられることができる。好ましくは、上述のカルボン酸の相応するカルボン酸無水物、殊にフタル酸無水物、マレイン酸無水物又はコハク酸無水物が用いられる。この実施形態において、補助流体として化学反応の出発材料が用いられる。
【0105】
供給物質としてエステル化に用いられるカルボン酸若しくはカルボン酸誘導体が移送される場合、補助流体は、本発明によれば、カルボン酸若しくはカルボン酸誘導体が反応することになるアルコールである。
【0106】
アルコールとして、例えば:
脂肪族アルコール、例えばC120−アルコール、有利にはC1〜C4−アルコール、例えばメタノール、エタノール、異性体のプロパノール又は異性体のブタノール;エチルヘキサノール、
脂肪族ジオール、例えばC2〜C20−ジオール、好ましくは1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール又はネオペンチルグリコール;
脂肪族ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセリン及びポリテトラヒドロフラン;
脂環式ポリオール、例えば単糖類及び二糖類及び多糖類及びそれらの水溶液;又は
糖アルコール、例えばソルビトール、グルシトール又はヘキサンヘキサオール及びそれらの水溶液
が用いられることができる。
【0107】
その際、アルコールは、どのエステル若しくはポリエステルが使用されるべきかに依存して、単独でも、互いに混合しても使用されることができる。
【0108】
上記の通り、本発明による方法は、有利には、水素化に用いられる芳香族化合物の移送のために用いられる。
【0109】
それにしたがって、本発明は、芳香族化合物を水素化するための方法において、芳香族化合物又は芳香族化合物の溶液を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって反応器に供給し、その際、振り子ラインに、芳香族化合物の水素化の生成物である補助流体が存在し、且つ、その際、補助流体が、芳香族化合物の融点より低い融点を有するか若しくは芳香族化合物の溶液の飽和温度より低い融点を有することを特徴とする方法に関する。
【0110】
水素化は、通常、適した圧力及び温度で実施される。温度は、一般的に50〜300℃の範囲にあり、その際、120〜280℃の温度範囲が有利とされ、且つ、圧力は、通常1〜500bar、好ましくは50〜325bar、特に有利には150〜250barである。
【0111】
水素化法は、連続的に又はバッチ法に倣って実施されることができる。
【0112】
連続的な処理操作の場合、水素化のために準備される化合物の量は、好ましくは、ほぼ0.01〜ほぼ3kg/触媒(1リットル)/時(h)、更に有利にはほぼ0.05〜ほぼ1kg/触媒(1リットル)/時(h)である。
【0113】
水素化ガスとして、水素を含有し、且つ、例えばCOのような触媒毒の有害な量を有さない任意のガスが使用されることができる。例えば、改質オフガスが使用されることができる。好ましくは、純水素が水素化ガスとして使用される。
【0114】
水素化は、通例、水素化に適している均一系触媒又は不均一系触媒の存在において行われる。好ましくは、水素化は、不均一系触媒の存在において実施される。
【0115】
均一系触媒として、流動性及び/又は可溶性の水素化触媒、例えば、ウィルキンソン触媒、クラブトリー触媒又はリンドラー触媒が考慮に入れられる。
【0116】
例えば、均一系触媒として、貴金属、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム及びロジウム又は他の遷移金属、例えばモリブデン、タングステン、クロム、特に一方では鉄、コバルト及びニッケルが、単独で又は混合してのいずれかで使用される。その際、触媒金属は、金属又は無機金属化合物の形態で直接用いられることができるか、又は触媒金属は、不活性の無機担体材料、例えば、アルミニウム酸化物、SiO2、TiO2及び活性炭に施与される。
【0117】
水素化は、溶媒なしで又は溶媒の存在において実施されることができる。溶媒として、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール又はt−ブタノール、若しくはエーテル、例えばジエチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフランが使用されることができる。溶媒として、あるいは反応に際して形成する最終生成物が用いられることもできる。溶媒として、上述の溶媒の混合物も考慮に入れられる。
【0118】
芳香族化合物を水素化するための本発明による方法には、有利には、下に挙げられる芳香族化合物が用いられる。
【0119】
有利には用いられる供給物質は:
芳香族アミン、例えばアニリン、ベンジジン、異性体のトルイジン、異性体のキシリジン、異性体のキシリレンジアミン、1−若しくは2−アミノナフタリン、TDA異性体(2,4/2,6/2,3/3,4−トルエンジアミン)又はMDA異性体(4,4'−メチレンジアニリン、2,4'−メチレンジアニリン、2,2'−メチレンジアニリン、ポリマーMDA)並びにそれらの混合物;
置換されたMDA化合物、例えば3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン及び2,2',3,3'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン;
芳香族ジニトリル、例えば異性体のフタロジニトリル;
芳香族ヒドロキシ化合物、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF又は置換されたビスフェノール;
芳香族酸無水物、例えばフタル酸無水物;又は
芳香族酸、例えば安息香酸
である。
【0120】
特に有利には、芳香族アミンが供給物質として水素化に移送される。芳香族アミンの水素化法は、例えばDE−A1−2132547に開示されている。
【0121】
補助流体として、本発明によれば、芳香族化合物の水素化の生成物が用いられる。好ましくは、水素化の条件下で有利には形成する主生成物が補助流体として用いられる。
【0122】
本発明による方法は、前で説明したように、有利には、例えばエステル化又はエステル交換反応による、エステル若しくはポリエステルの製造法に用いられるカルボン酸若しくはカルボン酸誘導体の移送のためにも適している。
【0123】
それにしたがって、本発明は、エステルの製造法において、カルボン酸又はカルボン酸誘導体若しくはカルボン酸又はカルボン酸誘導体の溶液を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって反応器に供給し、その際、振り子ラインに、エステル製造の生成物又は出発材料として使用されるアルコールである補助流体が存在し、且つ、その際、補助流体が、カルボン酸又はカルボン酸誘導体の融点より低い融点を有するか若しくはカルボン酸又はカルボン酸誘導体の溶液の飽和温度より低い融点を有することを特徴とする方法に関する。
【0124】
エステルの製造のために、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,Polyesters(Electronic Release DOI:10.1002/14356007.a21_227)に記載されるように、上述のカルボン酸若しくはカルボン酸誘導体と上述のアルコールは、触媒不含で又は、好ましくはエステル化触媒の存在において、適切には、不活性ガス、例えば窒素、一酸化炭素、ヘリウム、アルゴンからの雰囲気中で、なかでも溶融物中で150〜250℃の温度、好ましくは180〜220℃の温度で、場合により減圧下で、有利には10未満、好ましくは2未満の所望の酸価になるまで縮合されることができる。
【0125】
ポリエステルポリオオールの製造のために、有機ポリカルボン酸及び/又は有機ポリカルボン酸誘導体と多価アルコールが、有利には、1:1〜1.8のモル比で、好ましくは1:1.05〜1.2のモル比で用いられる。
【0126】
触媒として、塩基性又は酸性の触媒、有利には酸性の触媒、例えばトルエンスルホン酸、好ましくは有機金属化合物、殊にチタン又はスズをベースとするもの、例えばチタンテトラブトキシド又はオクタン酸スズ(II)が用いられることができる。
【0127】
有利には用いられるカルボン酸は:
芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、殊に芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又は異性体のナフタリンジカルボン酸;又は
脂肪族カルボン酸、殊に脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、コハク酸、グルタル酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸又はフマル酸である。
【0128】
カルボン酸は、その際、単独でも、互いに混合物としても使用されることができる。
【0129】
この実施形態において、カルボン酸の相応するカルボン酸誘導体、例えば相応するカルボン酸無水物又はそのエステル、例えば上述のカルボン酸のC1〜C4−エステルも供給物質として用いられることができる。好ましくは、上述のカルボン酸の相応するカルボン酸無水物、殊にフタル酸無水物、マレイン酸無水物又はコハク酸無水物が用いられる。
【0130】
補助流体として、本発明によれば、エステル製造の生成物又は、エステルの製造における出発材料として使用されるアルコールが用いられる。
【0131】
本発明による方法は、高い融点を有するか、又は濃縮された溶液の形態で存在し、且つ高い飽和温度を有する化合物を移送するために特に適している。かかる物質は−高い融点若しくはそれらの高い飽和温度ゆえに−十分には加熱されなかった移送ポンプの箇所で付着物を形成する可能性がある。とはいっても、移送ポンプの加熱は技術的に煩雑であることが明らかになっており、それというのも、一方では、ポンプの組み立てに使用される全ての慣例の材料が耐熱性というわけではなく、殊にダイヤフラム及びシールが耐熱性ではないからである。それにより、高温ポンプの製造は、周囲温度で運転されることができる従来のポンプと比較して性能が削られるにも関わらず、比較的高価である。
【0132】
本発明による方法により、慣例のポンプを用いて高融点の化合物若しくは高濃縮された溶液を移送することができ、その際、ポンプ系の領域中での付着物の形成する傾向が軽減される。これにより、メンテナンス間隔間の長期の隔たりを伴って長期の運転期間が可能になる。さらに、ポンプの摩耗が軽減されるため、寿命が高められる。
【0133】
更なる利点は、反応混合物が、反応とは無関係の、他の点では、煩雑な工程において有価生成物から分離されなければならないとされる物質によっては汚されないことにある。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】溶融物用の本発明による振り子ポンプ系を概略的に示す図
【0135】
本発明を、下の実施例によって詳細に説明する。
【0136】
実施例
実施例1:トルエンジアミンを水素化して脂環式ジアミンを得る工程
【化1】

【0137】
【表1】

【0138】
実施例2:場合により置換されたMDAを水素化して脂環式アミンを得る工程
【化2】

【0139】
【表2】

【0140】
実施例3:芳香族ジニトリルを水素化して脂環式ジアミンを得る工程
【化3】

【0141】
【表3】

【0142】
実施例4:場合により置換されたビスフェノールを水素化して脂環式ジオールを得る工程
【化4】

【0143】
【表4】

【0144】
実施例5:酸無水物及び芳香族酸を水素化して相応する脂環式化合物を得る工程
【化5】

【0145】
【表5】

【0146】
実施例6:安息香酸を種々のアルコールでエステル化して、相応する安息香酸のエステルを得る工程
【化6】

【0147】
【表6】

【0148】
実施例7:ジカルボン酸を種々のアルコールでエステル化して、相応するアジピン酸のエステルを得る工程
【化7】

【0149】
【表7】

【0150】
実施例8:ジカルボン酸及びジオールからのポリエステルの製造
【化8】

【0151】
【表8】

【符号の説明】
【0152】
1 溶融物のフィード流、 2 排出流、 3 供給ライン、 4 接続部、 5 連結ライン、 6 弁体、 7 振り子ライン、 8、9 加熱されている位置、 10 吸込側、 11 圧送側、 12 ダイヤフラムポンプ、 13 弁、 14 逆止弁、 15 弁、 16 補助ポンプ、 17 ギヤーボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給物質として化学反応に用いられる流体を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって連続的に移送するための方法において、該振り子ラインに、該化学反応の生成物又は出発材料であり、且つ、該移送されるべき流体の融点より低い融点を有するか若しくは該移送されるべき流体の飽和温度より低い融点を有する補助流体が存在することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記流体が有機化合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機化合物が芳香族化合物であり、前記化学反応が水素化であり、且つ補助流体として前記芳香族化合物の水素化の生成物が用いられることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族化合物が芳香族アミンであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記有機化合物がカルボン酸又はカルボン酸誘導体であり、前記化学反応がエステルの製造法であり、且つ補助流体として、前記反応に際して形成されるエステル又は出発材料として使用されるアルコールが用いられることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記流体が、50〜300℃の融点又は飽和温度を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記補助流体の融点が50℃以下であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記容積式ポンプがダイヤフラムポンプであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記補助流体が連続的に前記振り子ラインに計量供給されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記補助流体の容積流対前記移送されるべき流体の容積流が、1:10〜1:100の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記補助流体の計量供給をダイヤフラムポンプを用いて行うことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記補助流体を移送するためのポンプと容積式ポンプのモーターが機械的又は電子的に互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
芳香族化合物を水素化するための方法において、芳香族化合物又は芳香族化合物の溶液を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって反応器に供給し、その際、該振り子ラインに、該芳香族化合物の水素化の生成物である補助流体が存在し、且つ、その際、該補助流体が、該芳香族化合物の融点より低い融点を有するか若しくは該芳香族化合物の溶液の飽和温度より低い融点を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
エステルの製造法において、カルボン酸又はカルボン酸誘導体若しくはカルボン酸又はカルボン酸誘導体の溶液を、空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインによって反応器に供給し、その際、該振り子ラインに、該エステル製造の生成物又は出発材料として使用されるアルコールである補助流体が存在し、且つ、その際、該補助流体が、該カルボン酸又は該カルボン酸誘導体の融点より低い融点を有するか若しくは該カルボン酸又は該カルボン酸誘導体の溶液の飽和温度より低い融点を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインを包含するポンプ系によって芳香族化合物を移送するための、補助流体としての、芳香族化合物の水素化によって形成された生成物の使用。
【請求項16】
空間的に分けられた移送弁を備えた容積式ポンプ並びに容積式ポンプと移送弁間の流体充填された振り子ラインを包含するポンプ系によってカルボン酸又はカルボン酸誘導体若しくはカルボン酸又はカルボン酸誘導体の溶液を移送するための、補助流体としての、アルコール又はカルボン酸エステルの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−533011(P2012−533011A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518966(P2012−518966)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059627
【国際公開番号】WO2011/003899
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】