流体噴射装置および該装置の制御方法
【課題】複数のキャップが流体噴射ヘッドに当接する際における駆動源への負荷を軽減し、良好なキャッピング状態の実現を可能とする技術の提供を目的とする。
【解決手段】流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる。
【解決手段】流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル開口から流体を噴射する流体噴射装置に関し、特に、ノズル開口からの流体噴射動作を実行しない間において、ノズル開口をキャップで囲む技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の流体噴射装置の代表的なものとして、例えば記録紙などの記録媒体に対してインク滴を吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンタ等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、各種の製造装置にも流体噴射装置が応用されている。例えば、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、有機EL(Electro
Luminescence)ディスプレー、或いはFED(面発光ディスプレー)等のディスプレー製造装置においては、色材や電極等の液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域等に対して吐出するためのものとして、流体噴射装置が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンタは、インクジェット式の記録ヘッドを備える。記録ヘッドは複数のノズルとノズル面とを有し、ノズル面において各ノズルのノズル開口が開口している。そして、記録ヘッドは、ノズル開口からインクを噴射して、記録材に画像を記録する。また、記録材への画像記録動作を行なわない非印字時には、インクの乾燥を抑制するとともに塵や埃等の付着を防止すべく、キャップがノズル開口に対して装着される。具体的には、特許文献1に記載のプリンタは、6個のキャップが記録ヘッドに対して設けられている。そして、非印字時には、これら6個のキャップが記録ヘッドに当接して、各キャップがノズル開口を囲う(キャッピング状態)。つまり、同文献に記載のプリンタは、記録ヘッドから離間している6個のキャップを、流体噴射ヘッドに向けて移動させて、流体噴射ヘッドに当接させている。
【0004】
また、良好なキャッピング状態を実現すべく、キャップを記録ヘッドに当接させるだけでなく押圧する技術が従来から知られている。特に、キャッピング状態においてキャップ内部を吸引することでキャップ内部に負圧を発生させてノズルの目詰まり等を除去するような場合、キャップを流体噴射ヘッドに押圧して、キャップを流体噴射ヘッドに密着させることが好適である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−268563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数のキャップの流体噴射ヘッド(記録ヘッド)への移動押圧は、例えばステッピングモータ等の駆動源から供給される駆動力により実行することができる。しかしながら、複数のキャップが同時に流体噴射ヘッドへ当接した場合、駆動源への負荷が過大となって、次のような問題が招来される可能性がある。つまり、駆動源に対する大きな負荷が複数のキャップの当接時に瞬間的に発生し、駆動源が停止してしまう場合があった。その結果、キャップの流体噴射ヘッドへの当接・押圧が適切に実行されず、良好なキャッピング状態が実現されない場合があった。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数のキャップが流体噴射ヘッドに当接する際における駆動源への負荷の変動を軽減し、良好なキャッピング状態の実現を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる流体噴射装置は、上記目的を達成するため、ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して流体噴射ヘッドから離間及び流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、流体噴射ヘッドへの当接状態においてノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群と、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動手段と、Q個のキャップを移動させるための駆動力をキャップ移動手段に供給する駆動源とを備え、Q個のキャップは、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、キャップの当接タイミングとしたとき、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させることを特徴としている。
【0009】
また、ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して流体噴射ヘッドから離間及び流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、流体噴射ヘッドへの当接状態においてノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群とを備えた流体噴射装置の制御方法であって、上記目的を達成するために、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、駆動源から供給される駆動力によりQ個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動工程を備え、Q個のキャップは、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、キャップの当接タイミングとしたとき、キャップ移動工程では、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる。ここで、キャッピング動作とは、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧する動作である。また、当接タイミングとは、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングである。つまり、上記発明は、Q個のキャップ全てを同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させるのではなく、Q個のうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接さている。したがって、Q個のキャップ全てを同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる場合と比較して、上記発明では、キャップの流体噴射ヘッドへの当接時に発生する駆動源への負荷が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動源が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップの流体噴射ヘッドへの当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。
【0011】
ところで、キャップ当接時にはキャップから流体噴射ヘッドに対して負荷が掛かることとなるが、上記発明のように2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる場合、流体噴射ヘッドに偏った負荷が発生する場合がある。その結果、流体噴射ヘッドに過度な変形が生じる。そして、このような過度な変形は、流体噴射ヘッドの疲労・磨耗を引き起こし、流体噴射ヘッドの短命化の原因となる。これに対して、上記発明は、Q個のキャップを、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置している。そして、上記発明は、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる。したがって、キャップの当接により発生する流体噴射ヘッドに対する負荷は、対称軸に対して対称に該流体噴射ヘッドに掛かる。よって、キャップ当接時に発生する流体噴射ヘッドに対する負荷の偏りが抑制される。その結果、流体噴射ヘッドの長寿命化が図られており、上記発明は好適である。
【0012】
ところで、流体噴射ヘッドは自重により撓み、かかる撓みの程度は対称軸付近に行くほど大きくなる傾向にある。換言すれば、流体噴射ヘッドは、対称軸付近を極大として撓んむ傾向にある。そこで、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち対称軸に最も近いキャップを最も早い当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させても良い。なんとなれば、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際しては、対称軸に最も近いキャップを最初に当接させて、対称軸付近における撓みを抑制しておくことが好適であるからである。
【0013】
また、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸に近いキャップほど早い当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させても良い。なんとなれば、このように構成することで、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、上述のような対称軸付近を極大とする流体噴射ヘッドの撓みの問題を抑制することが可能となるからである。
【0014】
また、キャップ移動手段は、Q個のキャップそれぞれに対して、その一方端部が流体噴射ヘッドの逆側から該キャップに接続されたバネ部材と、該バネ部材の他方端部に接続されるとともに駆動源の駆動力によりキャップ移動方向に移動するスライダとを有し、キャップに対するキャッピング動作において、スライダを流体噴射ヘッドに向けて移動させることで、スライダにバネ部材を介して接続されたキャップを流体噴射ヘッドに当接させるとともに、キャップの当接状態で更にバネ部材の付勢力に抗してスライダを流体噴射ヘッドに向けて移動させてキャップを流体噴射ヘッドに押圧してもよい。ところで、この場合、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作が完了してQ個のキャップ全てが流体噴射ヘッドに押圧された状態において、各キャップに接続されたバネ部材の付勢力に対応する負荷が、各キャップから流体噴射ヘッドに掛かることとなる。したがって、各キャップによって付勢力が異なると、流体噴射ヘッドに掛かる負荷に偏りが発生し、流体噴射ヘッドが過度に変形する可能性がある。
【0015】
そこで、Q個のキャップのそれぞれは、該キャップに対するキャッピング動作が完了した状態において、キャップ移動手段により互いに等しい付勢力でもって流体噴射ヘッドに押圧されることが好適である。なんとなれば、このように構成することで、Q個のキャップの押圧時において、各キャップから流体噴射ヘッドに掛かる負荷を等しくすることが可能となり、流体噴射ヘッドの変形が抑制されるからである。
【0016】
また、Q個のキャップの全てについてキャッピング動作が完了した状態において、Q個のキャップそれぞれに接続されたバネ部材の長さは互いに等しくてもよい。なんとなれば、このように構成した場合、Q個のキャップ全てが流体噴射ヘッドに押圧された状態において、Q個のキャップそれぞれに対応する付勢力を等しくするにあたり、Q個のキャップそれぞれに接続されたバネ部材を同一の構成とすれば足り、構成の簡素化が図ることが可能となるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について説明するに先立って、本発明の適用対象である流体噴射装置の基本構成について説明する。かかる説明の後に、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
基本構成
図1は、流体噴射装置としてのプリンタの概略を表す斜視図である。図2は、メンテナンスユニットの概略を表す斜視図である。図1に示すように、流体噴射装置としてのプリンタ1は、略直方形状のフレーム2を備えている。このフレーム2には、その長手方向(x方向)にプラテン3が配設され、このプラテン3上には、紙送りモータ4を備えた図示しない紙送り機構によって記録用紙Pが給送されるようになっている。
【0019】
フレーム2には、プラテン3と平行となるようにガイド部材5が架設されている。このガイド部材5には、同ガイド部材5に沿って移動可能なキャリッジ6が挿通支持されている。また、フレーム2には、キャリッジモータ7が取着され、このキャリッジモータ7には、一対のプーリP1、P2に掛け装されたタイミングベルト8を介してキャリッジ6が駆動連結されている。このように構成することによって、キャリッジ6は、キャリッジモータ7が駆動すると、その駆動力がタイミングベルト8を介して伝達される。この駆動力を受けてキャリッジ6は、ガイド部材5に案内されてプラテン3と平行に主走査方向(+x方向及び−x方向)に往復移動するようになっている。
【0020】
キャリッジ6の下面には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド9が設けられている。この記録ヘッド9は平面状のノズル形成面を有する。そして、該ノズル形成面には記録用紙Pと対向するように図示しない複数のノズルが形成されている。つまり、ノズル形成面が本発明のノズル開口平面に相当する。そして、各ノズルはノズル開口平面で開口している。
【0021】
また、図1に示すように、キャリッジ6には、流体貯留部としてのインクカートリッジ10が着脱可能に装填されている。このインクカートリッジ10は、複数に区画された貯留室を備えており、各貯留室には、それぞれ流体としてのインク(例えば、顔料インクおよび反応性インク)が貯留されている。即ち、プリンタ1は、いわゆるオンキャリッジタイプである。そして、インクカートリッジ10に貯留されているインクは、それぞれ対応する記録ヘッド9のノズルに供給されるようになっている。このように構成することによって、キャリッジ6にインクカートリッジ10が装填されると、インクカートリッジ10に貯留されているインクは、記録ヘッド9に流入する。そして、記録ヘッド9に流入したインクは、図示しない圧電素子によって加圧され、ノズルのノズル開口からインク滴として記録用紙Pに向けて噴射されることによってドットを形成する。
【0022】
また、記録ヘッド9は、ブラックインク又はカラーインク(顔料インク)を吐出した後に反応インクを吐出するように駆動される。反応インクは、記録用紙P上のカラーインクに対して付着することでカラーインクと凝集反応し、カラーインクの発色性・光沢性を高めるようになっている。また、記録ヘッド9は、ブラックインク及びカラーインクを吐出しない紙面上にも、光沢性を高めるために吐出するように駆動制御されている。
【0023】
プリンタ1では、キャリッジ6を往復移動させながらインク滴を記録用紙Pに吐出させて印刷するための領域を噴射領域としての印刷領域としている。さらに、プリンタ1には、非印刷時にノズルをキャッピングするための非印刷領域が設けられ、その非印刷領域には、図1に示すように、メンテナンスユニット11が設けられている。このメンテナンスユニット11は、記録ヘッド9のメンテナンスを適宜行なうことによって、各ノズルからの吐出状態を良好に維持するためのものである。
【0024】
図2に示すように、メンテナンスユニット11には、その本体ケースCにスライダ12がバネ部材SP1(図3又は図4参照)を介して、左右方向(+x方向及び−x方向)に往復移動可能に取り付けられている。このスライダ12には、記録ヘッド9のノズルをキャッピングするための、略直方形上に形成されたキャップ部材13が設けられている。このメンテナンスユニット11は、後述する移動機構を介して、キャップ部材13を水平移動させ記録ヘッド9の真下に位置させることや、キャップ部材13を上下移動させ記録ヘッド9に密着させることによって、記録ヘッド9の各ノズルをキャッピングするようになっている。
【0025】
また、キャップ部材13は、その内部が2つに区画され、それぞれ吸収体131、132が載置されている。そして、キャップ部材13の底部(図示しない)には、同キャップ部材13の区画とそれぞれ連通する2本のチューブ(図示しない)及び吸引ポンプ(図示しない)を介して、図1に示すプラテン3の下側に設けられた廃インクタンク(図示しない)が接続されている。この廃インクタンクは、その内部が2つに区画されていて、それぞれキャップ部材の2つの区画に接続されるようになっている。
【0026】
つまり、上述のように構成することで、インクカートリッジ10に貯留される顔料インク及び反応インクは、吸収体131、132によって別々に吸収され、それぞれ廃インクタンクに破棄する、いわゆるクリーニングが実行できる。
【0027】
また、図2に示すように、このメンテナンスユニット11は、記録ヘッド9のノズル形成面に付着したインクを拭き取るためのワイパ部材Wを備えている。このワイパ部材Wは、図示しない駆動機構を介して移動することによって、本体ケースC内に収納可能となるように設けられている。
【0028】
次に、上記したメンテナンスユニット11の構成を図3〜図8に従って説明する。図3及び図4はメンテナンスユニット11の構成を説明するための平面図である。図5は、スライダ12の駆動機構の構成を説明するための斜視図である。
【0029】
図3に示すように、メンテナンスユニット11は、その本体ケースCにスライダ12をガイドするスライダガイド16を備えている。このスライダガイド16は、スライダ12の挿入口17に挿入されるようになっている。また、スライダ12には、この挿入口17内に、支持棒18が右方向(+x方向)に延出形成されている。そして、スライダガイド16には、支持棒18に対応するように支持溝19が形成されている。この支持溝19は、支持棒18を挿入支持するとともに、支持棒18が左右方向(+x方向及び−x方向)に移動可能となるように貫通形成されている。さらに、この支持溝19は、支持棒18が上下方向(+z方向及び−z方向)に移動可能となるように縦長に形成されている。また、支持溝19は、その上端部において、支持棒18と当接し、支持棒18の上方向(+z方向)への移動を規制するようになっている。
【0030】
このように構成することによって、スライダ12は、本体ケースCに対して、上下方向(+z方向及び−z方向)および左右方向(+x方向及び−x方向)へ移動が可能となっている。
【0031】
また、上述したようにスライダ12は、バネ部材SP1を介して本体ケースCに取り付けられている。これによって、スライダ12は、本体ケースCに対して左方向(−x方向)に付勢されている。従って、スライダ12に何も力が作用していない場合には、スライダ12の挿入口17は、図3に示すように、本体ケースCのスライダガイド16の右側面に当接した状態となっている。なお、このような状態を基準位置ということとする。
【0032】
図5に示すように、スライダ12には、バネ部材SP2を介してキャップ部材13が取り付けられている。このキャップ部材13は、図3または図4に示すように、可撓性を有し記録ヘッド9に当接するシール部材S、及び同記録ヘッド9に当接する支持部材としての爪部Tを備えている。さらに、このキャップ部材13は、前方向(+y方向)に延出した支持棒20、後方向(−y方向)に延出した支持棒21、及び位置決め手段として前方向(+y方向)に延出した位置決め棒22を備えている。
【0033】
一方、スライダ12には、図3又は図4に示すように、これら支持棒20,21及び位置決め棒22に対応するように、支持溝23,24及びガイド手段としてのガイド溝25が形成されている。支持溝23,24及びガイド溝25は、それぞれ支持棒20,21及び位置決め棒22を挿入支持するとともに、支持棒20,21及び位置決め棒22が上下方向(+z方向及び−z方向)に移動可能となるように縦長に形成されている。支持溝23,24及びガイド溝25は、その上端部において、それぞれ支持棒20,21及び位置決め棒22に当接し、その上方向(+z方向)への移動を規制するようになっている。また、支持棒20,21及び位置決め棒22の+x方向及び−x方向に移動も、支持溝23,24及びガイド溝25により規制される。支持溝23,24及びガイド溝25の溝の深さは、キャップ部材13が前方向(+y方向)及び後方向(−y方向)に移動した際に、支持棒20,21及び位置決め棒22が外れないように形成されている。
【0034】
このように構成することによって、キャップ部材13はスライダ12に対して、上下(+z方向及び−z方向)移動が可能となっている。さらに、キャップ部材13は、バネ部材SP2によって上方向(+z方向)に付勢されるとともに、支持棒20,21及び位置決め棒22によって、その上方向(+z方向)の移動が規制されている。これによって、通常、キャップ部材13は、スライダ12に対して上方向(+z方向)に最も離間している状態であって、下方向(−z方向)に押圧されると、その押圧に応じて下方向(−z方向)に移動するようになっている。
【0035】
また、図3又は図4に示すように、スライダ12と、キャップ部材13の右側面との間には、バネ部材SP3が取り付けられている。このバネ部材SP3は、キャップ部材13をスライダ12側に右前方向(+x方向及び+y方向の合成方向)に付勢するものであって、これによって、キャップ部材13は、スライダ12に対して、常に右前方向に付勢されている。このキャップ部材13のスライダ12に対しての左右方向(+x方向及び−x方向)の移動は、上述したように、支持溝23,24によって規制されている。従って、キャップ部材13には、スライダ12に対して前方向(+y方向)に付勢されることとなる。
【0036】
他方、本体ケースCは、図3又は図4に示すように、案内部として略台形状の突起部26を備えている。この突起部26は、本体ケースCから後方向(−y方向)に突出形成されており、キャップ部材13の位置決め棒22に対向して当接する。
【0037】
そして、図3に示すように、スライダ12が基準位置にある場合、キャップ部材13の位置決め棒22は、突起部26の端部27に当接するようになっている。この状態において、キャップ部材13は、位置決め棒22を介して突起部26によって支持されるとともに、その移動が規制されるようになっている。
【0038】
さらに、スライダ12が基準位置から右方向(+x方向)に移動した場合、スライダ12に取り付けられたキャップ部材13は、バネ部材SP3によってスライダ12に対して前方向(+y方向)に付勢されていることから、その位置決め棒22は、突起部26の傾斜部28に沿って右前方向(+x方向及び+y方向の合成方向)に移動する。そして、図4に示すように、位置決め棒22は、突起部26の傾斜部28によって、支持された状態となる。このとき、キャップ部材13は、図3に示す状態と比べて、若干だけ前方(+y方向)に移動した状態となって静止している。このような図4に示す状態を、設定位置というものとする。
【0039】
このように構成することによって、例えば、記録ヘッド9が、スライダ12から延出形成された当接部29に当接し、スライダ12を右方向(+x方向)に押圧すると、スライダ12は、右方向(+x方向)に移動し、これに伴って、キャップ部材13は設定位置に移動するようになっている。このとき、キャップ部材13の設定位置への移動によって、キャップ部材13の爪部Tは、前方向(+y方向)に移動し記録ヘッド9に当接するようになっている。つまり、設定位置とは、キャップ部材13が記録ヘッド9のノズルと直接対応する位置となっている。また、基準位置とは、記録ヘッド9の主走査線方向+x方向及び−x方向の進路上からキャップ部材13が退避している位置となっている。
【0040】
なお、スライダ12に設けられたガイド溝25は、キャップ部材13の位置決め棒22の約1.2倍の大きさに形成されている。これによって、位置決め棒22がこのガイド溝25に当接した場合における磨耗を低減することができ、かつ、キャップ部材13の+y方向及び−y方向の動きがこの磨耗により悪くなるのを避けることができるようになっている。
【0041】
次に、スライダ12の駆動機構の構成について、上述した図5及び図6〜図8に従って説明する。図6〜図8は、スライダ12を駆動するカム機構の構成を説明するための側面図である。また、図6〜図8は、スライダ12を−x方向から見た側面図である。図9は、カム機構に駆動力を供給する機構を示すブロック図である。
【0042】
図5に示すように、スライダ12には、その側面31の下部に軸32が、右方向(−x方向)に延出形成されている。この軸32は、本体ケースCの側面33(図10参照)に上下方向(+z方向及び−z方向)縦長に形成されたガイド手段としてのガイド溝34(図10参照)に挿入支持されるようになっている。また、この軸32は図4に示したようにスライダ12が左右方向(+x方向及び−x方向)に移動した際に、ガイド溝34から外れない長さとなっている。
【0043】
また、スライダ12の底部35には、板状に形成された2枚の板部36,37が形成されていて、この板部36、37には、それぞれ、図5における右方向(−x方向)に摺動軸38,39及び当接軸U1,U2が延出形成されている。
【0044】
一方、本体ケースC内には、図5に示すように、スライダ12の下に位置するように駆動機構としてのカム機構40が備えられている。このカム機構40は、軸部41、歯車42及びカム部43,44から構成されていて、この軸部41には、その中央に歯車42が固着さている。さらに、この歯車42を中央とする軸部41の両端部には、カム部43,44がそれぞれ固着されている。従って、歯車42が駆動力を受けて回転すると、これに伴って、カム部43,44も同方向に回転するようになっている。そして、このカム機構40は、その軸部41の両端部が、それぞれ本体ケースCの側面に設けられた支持穴45(図10参照)及び本体ケースC内に設けられた支持穴(図示しない)に挿入し回転可能に支持されるようになっている。これによって、カム機構40は、軸部41を回転中心として回転することができる。また、カム機構40は、図5に示すように、カム部43,44内にそれぞれ形成された摺動溝46,47に、板部36,37の摺動軸38,39が挿入されることによって、スライダ12に取り付けられるようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43の側面431、カム部44の側面441に、それぞれ摺接するようになっている。
【0045】
従って、このカム機構40が軸部41を回転中心として回転した場合、カム部43,44は回転するので、摺動軸38,39は、摺動溝46,47に沿って摺動する。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に摺接し支持される。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、軸部41の回転に伴って、離間又は接近する。つまり、カム機構40の軸部41は、上述したように、本体ケースCに支持されていることから、スライダ12は、その軸32を本体ケースCのガイド溝34に案内されながら本体ケースCに対して、上下方向(+z方向及び−z方向)に移動するようになっている。
【0046】
そして、このカム機構40の歯車42は、駆動機構401を介して駆動モータ402(駆動源)から供給される駆動力により、駆動される。なお、駆動モータ402は正逆回転可能である。これによって、例えば、カム部43,44の摺動溝46,47と、摺動軸38,39との位置関係が、図6に示すような状態(軸部41と当接軸U1,U2との相対距離が相対距離d1)となっているとき、駆動モータ402が正回転した場合、歯車42は、駆動モータ402からの駆動力を受け矢印48方向(時計回り)に回転する。そして、摺動軸38,39は、摺動溝46,47内を摺動するとともに案内され、摺動溝46,47内を図7に示す位置まで移動するようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に沿って摺動するとともに支持されるようになっている。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、相対距離d2となっている。また、相対距離d1から相対距離d2への変動に伴って、スライダ12及び該スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13は、キャップ移動方向+13Dに移動する。なお、キャップ移動方向13Dのうち、図6〜図8において上側に向く方向をキャップ移動方向+13Dとし、図6〜図8において下側に向く方向をキャップ移動方向−13Dとする。
【0047】
また、摺動溝46,47と、摺動軸38,39との位置関係が、図6に示すような状態(軸部41と当接軸U1,U2との相対距離が相対距離d1)となっているとき、駆動モータ402が逆回転した場合、歯車42は、駆動モータ402からの駆動力を受け矢印49方向(反時計回り)に回転する。そして、摺動軸38,39は、摺動溝46,47内を摺動するとともに案内され、摺動溝46,47内を図8に示す位置まで移動するようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に沿って摺動するとともに支持されるようになっている。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、相対距離d3となっている。また、相対距離d1から相対距離d3への変動に伴って、スライダ12及び該スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13は、キャップ移動方向+13Dに移動する。
【0048】
これら相対距離d1,d2,d3の大小関係は、相対距離d1<相対距離d2<相対距離d3となっている。なお、図6に示す状態(相対距離d1)を待機状態、図7に示す状態をフラッシング状態(相対距離d2)、図8に示す状態(相対距離d3)をキャッピング状態というものとする。そして、駆動モータ402は、プリンタ1内に設けられた図示しない制御回路からの制御信号に応じて、正逆回転し、さらにその駆動を停止することによって、待機状態、フラッシング状態、キャッピング状態のそれぞれの状態を維持できるようになっている。つまり、カム部43(44)の回転に伴って(換言すれば相対距離の変動に伴って)、キャップ部材13はキャップ移動方向13Dに移動する。そこで、上記構成は、カム部43(44)の回転を制御することで、各状態に対応する位置にキャップ部材13を移動させている。
【0049】
ここで、本明細書において、カム部43(44)の側面431(441)のうち、待機状態で当接軸U1(U2)が当接する位置を特に下死点BPと称することとする(図6)。また、本明細書において、カム部43(44)の側面431(441)のうち、キャッピング状態で当接軸U1(U2)が当接する位置を特に上死点TPと称することとする(図8)。
【0050】
また、ワイパ部材Wは、スライダ12が待機状態(図6に示す状態)となっているときには、本体ケースC内にあって、同スライダ12がフラッシング状態(図7に示す状態)へと移動する際には、これに応じて同本体ケースC内から移動し、記録ヘッド9の当接可能となるように位置するようになっている。
【0051】
次に、上記のように構成したメンテナンスユニット11の動作について図10〜図12に従って説明する。図10は、スライダ12の待機状態を説明するための側面図である。図11は、スライダ12のフラッシング状態を説明するための側面図である。図12はスライダ12のキャッピング状態を説明するための側面図である。
【0052】
図10に示すように、メンテナンスユニット11は、スライダ12が待機状態(相対距離d1)となっている際には、図3に示したようにスライダ12は、基準位置に位置している。
【0053】
そして、図1に示すプリンタ1が、記録ヘッド9のノズルからキャップ部材13に対してインクを空吐出させるフラッシング動作を行う場合には、キャリッジ6を非印刷領域に移動させ、その記録ヘッド9をスライダ12の当接部29に当接させる。そして記録ヘッド9が当接部29に当接すると、図4に示すように、スライダ12は設定位置に移動するので、これに伴って、爪部Tは前方向(+y方向)に移動し、記録ヘッド9に当接し支持する。そして、キャップ部材13は記録ヘッド9に直接対向することができる。
【0054】
また、このときプリンタ1は、記録ヘッド9をスライダ12の当接部29に当接させる際に、スライダ12を待機状態からフラッシング状態に移動させる。これに伴って、ワイパ部材Wは、本体ケースC内から移動し、記録ヘッド9に当接可能な位置に移動する。そして、記録ヘッド9がスライダ12の当接部29に当接するためにワイパ部材W上を通過することによって、記録ヘッド9のノズル形成面に付着したインクは拭き取られる。そして、スライダ12が、フラッシング状態に移動したとき、駆動モータ402は停止し、図11に示すように、フラッシング状態を維持する。このとき、キャップ部材13は記録ヘッド9に対して、隙間L1を開けた状態で対向している。そして、プリンタ1は、この状態にてフラッシング動作を行なうことによって、記録ヘッド9のノズルのメンテナンスを行なうことができる。
【0055】
さらに、この状態から記録ヘッド9をキャッピングする場合には、プリンタ1は、スライダ12をフラッシング状態から待機状態に移動し、さらに、キャッピング状態に移動させる。これによって、図12に示すように、スライダ12はさらに上方向(+z方向)に移動するので、キャップ部材13のシール部材Sは、記録ヘッド9に当接し、そのノズル形成面をキャッピングし、そのノズルにおけるインクの乾燥を防止する。
【0056】
また、キャップ部材13が記録ヘッド9をキャッピングした状態で、吸引ポンプを駆動することにより、キャップ部材13を介して記録ヘッド9内の流体としてのインク、気泡、塵埃或いはノズルの目詰まり等を吸引する、いわゆるクリーニングを行なうことができる。以上が、本発明の適用対象である流体噴射装置の基本構成である。次に、本発明の実施形態について説明する。
【0057】
第1実施形態
図13は、第1実施形態における記録ヘッドとキャップとの関係を示す図である。同図が示すように、第1実施形態では、Q個(Qは3以上の整数)のキャップ部材13を有するキャップ群13Gが、ノズル形成面91に対向して配置されている。具体的には、5個のキャップ部材13a〜13eが記録ヘッド9のノズル形成面91に対向して配置されている。そして、キャップ部材13a〜13eのそれぞれに対して、スライダ12とカム機構40が設けられている。各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12及びカム機構40は、上述で図6〜図8を用いて示した構成と同様の構成を有する。また、本明細書においては、キャップ部材13a〜13eのうち何れのキャップに対して設けられた部材であるかを明示するために、各部材の符号に続いて、該部材が対応するキャップ部材13のアルファベットを記すこととする。つまり、各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたカム機構40のそれぞれを、特に、カム機構40a〜40eと称する。また、各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12のそれぞれを、特に、スライダ12a〜12eと称する。
【0058】
図13が示すように、5個のキャップ部材13a〜13eは、ノズル形成面91に垂直な対称軸13SAを挟んで、ノズル形成面91に平行な配列方向13ADにおいて対称に配置されている。つまり、キャップ部材13aとキャップ部材13eは対称軸13SAに対して対称関係にあるとともに、キャップ部材13bとキャップ部材13dは対称軸13SAに対して対称関係にある。また、カム機構40a〜40eは、軸部41を共通にする。そして、軸部41は、駆動モータ402からの駆動力を受けて回転する。したがって、駆動モータ402の回転に伴って、全てのカム機構40a〜40eのカム部43,44が回転する。
【0059】
なお、図13では、各キャップ部材13a〜13eは待機状態にあり、記録ヘッド9のノズル形成面91から離間している。そして、各キャップ部材13a〜13eは、キャッピング動作が実行されて、待機状態からキャッピング状態へと移行する。かかるキャッピング動作の詳細は、後述する。
【0060】
図14は、カム機構のそれぞれが有するカム部の構成を示す図である。第1実施形態において、キャップ部材13a〜13eに対して設けられたカム機構40a〜40eの構成は、カム部43、44についてのみ異なり、カム部43、44以外については互いに等しい。また、キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12の構成は、互いに等しい。さらに、対称軸13SAに対して対称関係にある各キャップ部材13に設けられたカム機構40の構成は、カム部43、44についても互いに等しい。
【0061】
図14の「カム機構40a,40e」の欄に示すカム部CM1は、カム機構40a,40eが有するカム部である。つまり、カム部CM1は、カム部43a,44a,43e,44eに相当する。同欄が示すように、カム部CM1の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV1が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d31である。つまり、カム機構40a,40eでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d31となる。
【0062】
図14の「カム機構40b,40d」の欄に示すカム部CM2は、カム機構40b,40dが有するカム部である。つまり、カム部CM2は、カム部43b,44b,43d,44dに相当する。同欄が示すように、カム部CM2の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV2が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d32である。つまり、カム機構40b,40dでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d32となる。
【0063】
図14の「カム機構40c」の欄に示すカム部CM3は、カム機構40cが有するカム部である。つまり、カム部CM3は、カム部43c,44cに相当する。同欄が示すように、カム部CM3の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV3が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d33である。つまり、カム機構40cでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d33となる。
【0064】
図14の「全カム機構」の欄は、カム部CM1,CM2,CM3を重ねて示している。同欄が示すように、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでのカム部側面の形状については、カム部CM1〜CM3は互いに異なる。つまり、曲面CV1〜CV3の形状は互いに異なる。より詳しくは、時計回りに向いて、分離点SEP以降の各曲面CV1〜CV3の形状が異なる。ここで、分離点SEPは、各曲面CV1〜CV3に対して、時計回りに向いて、下死点BPから上死点TPまでの間に設けられた点である。つまり、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通る。また、各カム部CM1〜CM3に対応する相対距離d31〜d33の大小関係は、相対距離d33>相対距離d32>相対距離d31である。
【0065】
図15は、第1実施形態におけるキャッピング動作を示す図である。ここで、キャッピング動作は、記録ヘッド9から離間しているキャップ部材13をキャップ移動方向13Dに記録ヘッド9へ向けて移動させて記録ヘッド9に当接させるとともにキャップ部材13の当接状態で更にキャップ部材13を記録ヘッド9に押圧する動作である。そして、第1実施形態は、全てのキャップ部材13a〜13eに対してキャッピング動作を実行する(キャップ移動工程)。
【0066】
ステップM11では、全てのカム機構40a〜40eにおいて、当接軸U1,U2は下死点BPでカム部CM1〜CM3に当接する。したがって、全てのキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、離間距離va1〜ve1を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va1〜veは互いに等しい。なお、当接軸U1と当接軸U2の構成動作は互いに同様であるので、図示は当接軸U1のみ行なうとともに、以後の構成動作の説明は当接軸U1についてのみ行なう。
【0067】
ステップM11のように全てのキャップ部材13a〜13eが離間している状態から、駆動モータ402が軸部41の回転駆動を開始して、全てのキャップ部材13a〜13eについてキャッピング動作が開始される。具体的には、図15において、軸部41及び該軸部41に固定されたカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転を開始する。
【0068】
カム部CM1が回転すると、スライダ12a,12eの当接軸U1は、カム部CM1の曲面CV1に摺接しながらキャップ移動方向+13Dに移動する(図15において上方向に移動する)。その結果、スライダ12a,12eは上方向に移動する。また、スライダ12a,12eの移動に伴って、これらスライダ12a,12eにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13a,13eは、上方向に移動してノズル形成面91に近づく。
【0069】
また、カム部CM2が回転すると、スライダ12b,12dの当接軸U1は、カム部CM2の曲面CV2に摺接しながらキャップ移動方向+13D(上方向)に移動する。その結果、スライダ12b,12dは上方向に移動する。また、スライダ12b,12dの移動に伴って、これらスライダ12b,12dにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13b,13dは、上方向に移動してノズル形成面91に近づく。
【0070】
また、カム部CM3が回転すると、スライダ12cの当接軸U1は、カム部CM3の曲面CV3に摺接しながらキャップ移動方向+13D(上方向)に移動する。その結果、スライダ12cは図15において上方向に移動する。また、スライダ12cの移動に伴って、これらスライダ12cにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13cが図15において上方向に移動して、ノズル形成面91に近づく。
【0071】
ところで、上述の通り、曲面CV3は、曲面CV1〜CV3のうち最も軸部41との距離が遠い位置を通る。したがって、スライダ12cの当接軸U1が最も早くキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM12において、キャップ部材13cが、5個のキャップ部材13a〜13eの内で最初にノズル形成面91に当接する。なお、ステップM12において、キャップ部材13aは離間距離va2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13bは離間距離vb2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13dは離間距離vd2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13eは離間距離ve2を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va2と離間距離ve2は互いに等しく、離間距離vb2と離間距離vd2は互いに等しい。
【0072】
ステップM12の状態から更にカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転すると、キャップ部材13a,13b,13d,13eは更にキャップ移動方向(図15において上方向)に移動する。一方、キャップ部材13cは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。しかしながら、カム部CM3の反時計回りへの回転は継続し、スライダ12cはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。したがって、スライダ12cは、該スライダ12cとキャップ部材13cとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13cは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される。
【0073】
ところで、上述の通り、曲面CV2は、曲面CV1〜CV3のうち、曲面CV3に次いで軸部41との距離が遠い位置を通る。したがって、スライダ12cの当接軸U1に次いで、スライダ12b,12dがキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM12におけるキャップ部材13cのノズル形成面91への当接の次に、キャップ部材13b,13dがノズル形成面91に当接する(ステップM13)。なお、ステップM13において、キャップ部材13aは離間距離va3を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13eは離間距離ve3を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va3と離間距離ve3は互いに等しい。
【0074】
ステップM13の状態から更にカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転すると、キャップ部材13a,13eは更にキャップ移動方向(上方向)に移動する。一方、キャップ部材13b,13c,13dは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。しかしながら、カム部CM2,CM3の反時計回りへの回転は継続し、スライダ12b,12c,12dはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。したがって、スライダ12b,12c,12dは、各スライダ12b,12c,12dと、それぞれが対応するキャップ部材13b,13c,13dとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13b,13c,13dは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される。
【0075】
ところで、上述の通り、曲面CV1は、曲面CV1〜CV3のうち、軸部41との距離が最も近い位置を通る。したがって、スライダ12a,12eの当接軸U1が最も後からキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM13におけるキャップ部材13b,13dのノズル形成面91への当接の次に、キャップ部材13a,13eがノズル形成面91に当接する(ステップM14)。
【0076】
ステップM14の状態から更にカム部CM1〜CM3は反時計回りに回転し、その結果、スライダ12a〜12eはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。しかしながら、キャップ部材13a〜13eは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。したがって、スライダ12a〜12eは、各スライダ12a〜12eと、それぞれが対応するキャップ部材13a〜13eとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13a〜13eは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される(ステップM15)。また、ステップM15において、各スライダ12a〜12eの当接軸U1は、何れも対応するカム部CM(CM1〜CM3)に上死点TPで当接する。そして、ステップM15の動作が完了して、全てのキャップ部材13a〜13eについてキャッピング動作が完了する。
【0077】
このように第1実施形態では、記録ヘッド9が本発明の「流体噴射ヘッド」に相当し、ノズル形成面91が本発明の「ノズル開口平面」に相当し、キャップ部材13(13a〜13e)のそれぞれが本発明の「キャップ」に相当する。また、カム機構40(40a〜40e)及びスライダ12(12a〜12e)が本発明の「キャップ移動手段」に相当する。
【0078】
上述の通り、第1実施形態は、記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13e全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち2個以上のキャップ部材13を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9へ当接させる。ここで、当接タイミングは、キャッピング動作においてキャップ部材13が記録ヘッド9に当接するタイミングである。つまり、例えば、キャップ部材13cはステップM12において記録ヘッド9に当接するのに対して、キャップ部材13b(13d)はステップM13において記録ヘッド9に当接しており、キャップ部材13cとキャップ部材13b(13d)とで当接タイミングが異なっている。更に、キャップ部材13a(13e)はステップM14において記録ヘッド9に当接しており、キャップ部材13a(13e)の当接タイミングはキャップ部材13b〜13dのいずれの当接タイミングとも異なる。
【0079】
つまり、第1実施形態は、5個のキャップ部材13a〜13eの全てを同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させるのではなく、5個のうち2個以上のキャップ部材13(例えば、キャップ部材13cとキャップ部材13b)を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9に当接さている。したがって、5個のキャップ部材13a〜13eの全てを同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる場合と比較して、第1実施形態では、キャップ部材13の記録ヘッドへの当接時に発生する駆動モータ402(駆動源)への負荷の変動が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動モータ402(駆動源)が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップ部材13の記録ヘッド9への当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。
【0080】
ところで、キャップ当接時には各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に対して負荷が掛かることとなるが、第1実施形態のように2個以上のキャップ部材13を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる場合、記録ヘッド9に偏った負荷が発生する場合がある。その結果、記録ヘッド9に過度な変形が生じる。そして、このような過度な変形は、記録ヘッド9の疲労・磨耗を引き起こし、記録ヘッドの短命化の原因となる。
【0081】
これに対して、第1実施形態は、5個のキャップ13a〜13eを、ノズル形成面91に垂直な対称軸13SAを挟んで、ノズル形成面に平行な配列方向13ADにおいて対称に配置している。そして、第1実施形態は、5個のキャップ13a〜13eのうち対称軸13SAに対して対称関係にあるキャップ部材13については互いに同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる。具体的には、キャップ部材13bとキャップ部材13dとが同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接するとともに、キャップ部材13aとキャップ部材13eとが同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接する。したがって、キャップ部材13a〜13eの当接により発生する記録ヘッド9に対する負荷は、対称軸13SAに対して対称に該記録ヘッド9に掛かる。よって、キャップ部材当接時に発生する記録ヘッド9に対する負荷の偏りが抑制される。その結果、記録ヘッドの長寿命化が図られており、第1実施形態は好適である。
【0082】
ところで、記録ヘッド9は自重により撓み、かかる撓みの程度は対称軸13SA付近に行くほど大きくなる傾向にある。換言すれば、記録ヘッド9は、対称軸13SA付近を極大として撓んむ傾向にある。そこで、第1実施形態は、記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッドに当接させている(ステップM12)。つまり、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、第1実施形態は、対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最初に当接させて、対称軸13SA付近における撓みを抑制しており、好適である。
【0083】
また、第1実施形態は記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。つまり、このように当接タイミングを設定することで、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、上述のような対称軸13SA付近を極大とする記録ヘッド9の撓みの問題を抑制することが可能となっている。
【0084】
ところで、上記第1実施形態におけるプリンタ1は、5個のキャップ部材13a〜13eそれぞれに対して、その一方端部が記録ヘッド9の逆側から該キャップ部材13に接続されたバネ部材SP2と、該バネ部材SP2の他方端部に接続されるとともに駆動モータ402の駆動力によりキャップ移動方向+13Dに移動するスライダ12とを有している(図6、図15等)。そして、第1実施形態は、キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作において、スライダ12を記録ヘッド9に向けて移動させることで、スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13を記録ヘッド9に当接させる。更に、第1実施形態は、キャップ部材13の当接状態で更にバネ部材SP2の付勢力に抗してスライダ12を記録ヘッド9に向けて移動させてキャップ部材13を記録ヘッド9に押圧している。そして、この場合、上死点TPにおいてバネ部材SP2の付勢力は最大となる。ここで、5個のキャップ部材13a〜13eを当接させるタイミングを変える方法として、カム部の形状を全て同じにして、それぞれのカムを回転方向に少しずつずらしてタイミングを変える方法が考えられる。しかし、この場合、バネ部材SP2の付勢力が最大となってからもさらに回転させる必要があり、カムが摩耗する不具合となりやすい。上記第1実勢形態は、5個のキャップ部材が当接するタイミングは異なるが、上死点に達するタイミングは同じため、上死点の状態からさらにカム部を回転して摩耗する不具合を抑制できる。
【0085】
また、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作が完了して5個のキャップ部材13a〜13eの全てが記録ヘッド9に押圧された状態において、各キャップ部材13a〜13eに接続されたバネ部材SP2の付勢力に対応する負荷が、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かることとなる。したがって、各キャップ部材13a〜13eによって付勢力が異なると、記録ヘッド9に掛かる負荷に偏りが発生し、記録ヘッド9が過度に変形する可能性がある。
【0086】
そこで、5個のキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、該キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作が完了した状態において、互いに等しい付勢力でもって記録ヘッドに押圧されることが好適である。なんとなれば、このように構成することで、5個のキャップ部材13a〜13eの押圧時において、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かる負荷を等しくすることが可能となり、記録ヘッド9の変形が抑制されるからである。
【0087】
しかしながら、図14を用いて説明したとおり、上死点TPの位置はカム部CM1〜CM3毎に異なり、キャッピング状態(ステップM15)における当接軸U1(U2)と軸部41との相対距離は、カム部CM1〜CM3毎に異なる。その結果、キャッピング状態において、キャップ部材13a〜13eによって、接続されたバネ部材SP2の長さが異なる。したがって、全てのバネ部材SP2を同一の構成とすると、キャップ部材13a〜13eそれぞれを押圧する付勢力に差異が生じる場合がある。また、かかる付勢力の差異に対応すべく、バネ部材SP2をカム部CMに応じて異ならせることも可能であるが、かかる手法は構成の複雑化を招来して好適でない。そこで、次の第2実施形態では、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SPの構成を同一としつつ、キャッピング状態においてキャップ部材13a〜13eのそれぞれを押圧する付勢力を等しくする技術について説明する。
【0088】
第2実施形態
図16は、第2実施形態におけるカム部の構成を示す図である。なお、第1実施形態と第2実施形態の主な違いはカム部であり、カム部以外の構成は第1・第2実施形態で同様であるので、以下では、主としてカム部の構成について説明し、カム部以外の構成については説明を省略する。
【0089】
図16の「カム機構40a,40e」の欄に示すカム部CM1は、カム機構40a,40eが有するカム部である。つまり、カム部CM1は、カム部43a,44a,43e,44eに相当する。同欄が示すように、カム部CM1の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV1が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d31である。つまり、カム機構40a,40eでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d31となる。
【0090】
図16の「カム機構40b,40d」の欄に示すカム部CM2は、カム機構40b,40dが有するカム部である。つまり、カム部CM2は、カム部43b,44b,43d,44dに相当する。同欄が示すように、カム部CM2の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV2が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d32である。つまり、カム機構40b,40dでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d32となる。
【0091】
図16の「カム機構40c」の欄に示すカム部CM3は、カム機構40cが有するカム部である。つまり、カム部CM3は、カム部43c,44cに相当する。同欄が示すように、カム部CM3の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV3が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d33である。つまり、カム機構40cでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d33となる。
【0092】
図16の「全カム機構」の欄は、カム部CM1,CM2,CM3を重ねて示している。同欄が示すように、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでのカム部側面の形状については、カム部CM1〜CM3は互いに異なる。つまり、曲面CV1〜CV3の形状は互いに異なる。より詳しくは、時計回りに向いて、分離点SEP以降の各曲面CV1〜CV3の形状が異なる。ここで、分離点SEPは、各曲面CV1〜CV3に対して、時計回りに向いて、下死点BPから上死点TPまでの間に設けられた点である。つまり、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通る。但し、上死点TPにおいて、各曲面CV1〜CV3は一致する。したがって、各カム部CM1〜CM3に対応する相対距離d31〜d33の大小関係は、相対距離d33=相対距離d32=相対距離d31となる。つまり、カム部CM1〜CM3によらず、相対距離は等しくなる。
【0093】
このように第2実施形態は、第1実施形態と同様に、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通るように、カム部CM1〜CM3を構成している。したがって、図15を用いて説明したステップ11〜ステップ15の動作を実行することで、キャップ部材13cは最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接し、キャップ部材13b,13dはキャップ部材13cの次の当接タイミングで記録ヘッド9に当接し、キャップ部材13a,13eは最も遅い当接タイミングで記録ヘッド9に当接する。
【0094】
したがって、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、キャップ部材13の記録ヘッドへの当接時に発生する駆動モータ402(駆動源)への負荷が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動モータ402(駆動源)が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップ部材13の記録ヘッド9への当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。また、第2実施形態においても、5個のキャップ13a〜13eのうち対称軸13SAに対して対称関係にあるキャップ部材13については互いに同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。したがって、キャップ部材13a〜13eの当接により発生する記録ヘッド9に対する負荷は、対称軸13SAに対して対称に該記録ヘッド9に掛かる。よって、キャップ部材当接時に発生する記録ヘッド9に対する負荷の偏りが抑制される。その結果、記録ヘッドの長寿命化が図られている。
【0095】
さらに、第2実施形態では、上死点TPにおいて、各曲面CV1〜CV3は一致している。したがって、キャッピング状態(ステップM15)において、カム部CM1〜CM3によらず相対距離は等しくなる。その結果、キャッピング状態において、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SP2の長さは互いに等しい。つまり、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SP2の構成を同一とすることで、5個のキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、該キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作が完了した状態において、互いに等しい付勢力でもって記録ヘッド9に押圧される。このように、第2実施形態は、全てのバネ部材SP2を同一の構成とするだけで、5個のキャップ部材13a〜13eの押圧時において、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かる負荷を等しくすることが可能である。よって、第2実施形態は、簡素な構成により記録ヘッド9の変形を抑制することを可能としており、好適である。
【0096】
また、5個のキャップ部材13a〜13eを当接させるタイミングを変える方法として、カム部の形状を全て同じにして、それぞれのカムを回転方向に少しずつずらしてタイミングを変える方法が考えられる。しかし、この場合、バネ部材SP2の付勢力が最大となってからもさらに回転させる必要があり、カムが摩耗する不具合となりやすい。上記第2実勢形態は、5個のキャップ部材が当接するタイミングは異なるが、上死点に達するタイミングは同じため、上死点の状態からさらにカム部を回転して摩耗する不具合を抑制できる。
【0097】
その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態ではキャップ部材13の個数を5個としたが、キャップ部材の個数は5個に限られない。要は、Q個以上(Qは3以上の整数)のキャップ部材13を用いる構成であれば、本発明は適用可能である。
【0098】
また、上記実施形態では、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている(ステップM12)。しかしながら、対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させることは、本発明に必須の構成ではない。但し、このように構成することで、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SA付近における撓みを抑制できて好適である点については、上述の通りである。
【0099】
また、上記実施形態は記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。しかしながら、、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させるとの構成は、本発明に必須ではない。但し、このように構成することで、対称軸13SA付近を極大とする記録ヘッド9の撓みの問題を抑制することが可能であり好適である点は、上述の通りである。
【0100】
さらに、本発明の適用対象は、上記プリンタ1に限らず、ディスプレー製造装置、電極製造装置、チップ製造装置、マイクロピペット等の流体噴射装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】流体噴射装置としてのプリンタの概略を表す斜視図。
【図2】メンテナンスユニットの概略を表す斜視図。
【図3】メンテナンスユニットの構成を説明するための平面図。
【図4】メンテナンスユニットの構成を説明するための平面図。
【図5】スライダの駆動機構の構成を説明するための斜視図。
【図6】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図7】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図8】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図9】カム機構に駆動力を供給する機構を示すブロック図。
【図10】スライダの待機状態を説明するための側面図。
【図11】スライダのフラッシング状態を説明するための側面図。
【図12】スライダのキャッピング状態を説明するための側面図。
【図13】第1実施形態における記録ヘッドとキャップとの関係を示す図。
【図14】カム機構のそれぞれが有するカム部の構成を示す図。
【図15】第1実施形態におけるキャッピング動作を示す図。
【図16】第2実施形態におけるカム部の構成を示す図。
【符号の説明】
【0102】
1…プリンタ(流体噴射装置)、 9…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、 91…ノズル形成面(ノズル開口平面)、 12,12a,12b,12c,12d,12e…スライダ(キャップ移動手段)、 13,13a,13b,13c,13d,13e…キャップ部材(キャップ)、 13G…キャップ群、 13D…キャップ移動方向、 13SA…対称軸、 13AD…配列方向、 40,40a,40b,40c,40d,40e…カム機構(キャップ移動手段)、 402…駆動モータ(駆動源)、 SP2…バネ部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル開口から流体を噴射する流体噴射装置に関し、特に、ノズル開口からの流体噴射動作を実行しない間において、ノズル開口をキャップで囲む技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の流体噴射装置の代表的なものとして、例えば記録紙などの記録媒体に対してインク滴を吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンタ等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、各種の製造装置にも流体噴射装置が応用されている。例えば、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、有機EL(Electro
Luminescence)ディスプレー、或いはFED(面発光ディスプレー)等のディスプレー製造装置においては、色材や電極等の液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域等に対して吐出するためのものとして、流体噴射装置が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンタは、インクジェット式の記録ヘッドを備える。記録ヘッドは複数のノズルとノズル面とを有し、ノズル面において各ノズルのノズル開口が開口している。そして、記録ヘッドは、ノズル開口からインクを噴射して、記録材に画像を記録する。また、記録材への画像記録動作を行なわない非印字時には、インクの乾燥を抑制するとともに塵や埃等の付着を防止すべく、キャップがノズル開口に対して装着される。具体的には、特許文献1に記載のプリンタは、6個のキャップが記録ヘッドに対して設けられている。そして、非印字時には、これら6個のキャップが記録ヘッドに当接して、各キャップがノズル開口を囲う(キャッピング状態)。つまり、同文献に記載のプリンタは、記録ヘッドから離間している6個のキャップを、流体噴射ヘッドに向けて移動させて、流体噴射ヘッドに当接させている。
【0004】
また、良好なキャッピング状態を実現すべく、キャップを記録ヘッドに当接させるだけでなく押圧する技術が従来から知られている。特に、キャッピング状態においてキャップ内部を吸引することでキャップ内部に負圧を発生させてノズルの目詰まり等を除去するような場合、キャップを流体噴射ヘッドに押圧して、キャップを流体噴射ヘッドに密着させることが好適である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−268563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数のキャップの流体噴射ヘッド(記録ヘッド)への移動押圧は、例えばステッピングモータ等の駆動源から供給される駆動力により実行することができる。しかしながら、複数のキャップが同時に流体噴射ヘッドへ当接した場合、駆動源への負荷が過大となって、次のような問題が招来される可能性がある。つまり、駆動源に対する大きな負荷が複数のキャップの当接時に瞬間的に発生し、駆動源が停止してしまう場合があった。その結果、キャップの流体噴射ヘッドへの当接・押圧が適切に実行されず、良好なキャッピング状態が実現されない場合があった。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数のキャップが流体噴射ヘッドに当接する際における駆動源への負荷の変動を軽減し、良好なキャッピング状態の実現を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる流体噴射装置は、上記目的を達成するため、ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して流体噴射ヘッドから離間及び流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、流体噴射ヘッドへの当接状態においてノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群と、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動手段と、Q個のキャップを移動させるための駆動力をキャップ移動手段に供給する駆動源とを備え、Q個のキャップは、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、キャップの当接タイミングとしたとき、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させることを特徴としている。
【0009】
また、ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して流体噴射ヘッドから離間及び流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、流体噴射ヘッドへの当接状態においてノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群とを備えた流体噴射装置の制御方法であって、上記目的を達成するために、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、駆動源から供給される駆動力によりQ個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動工程を備え、Q個のキャップは、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、キャップの当接タイミングとしたとき、キャップ移動工程では、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる一方、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドへ当接させる。ここで、キャッピング動作とは、流体噴射ヘッドから離間しているキャップをキャップ移動方向に流体噴射ヘッドへ向けて移動させて流体噴射ヘッドに当接させるとともにキャップの当接状態で更にキャップを流体噴射ヘッドに押圧する動作である。また、当接タイミングとは、キャッピング動作においてキャップが流体噴射ヘッドに当接するタイミングである。つまり、上記発明は、Q個のキャップ全てを同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させるのではなく、Q個のうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接さている。したがって、Q個のキャップ全てを同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる場合と比較して、上記発明では、キャップの流体噴射ヘッドへの当接時に発生する駆動源への負荷が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動源が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップの流体噴射ヘッドへの当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。
【0011】
ところで、キャップ当接時にはキャップから流体噴射ヘッドに対して負荷が掛かることとなるが、上記発明のように2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる場合、流体噴射ヘッドに偏った負荷が発生する場合がある。その結果、流体噴射ヘッドに過度な変形が生じる。そして、このような過度な変形は、流体噴射ヘッドの疲労・磨耗を引き起こし、流体噴射ヘッドの短命化の原因となる。これに対して、上記発明は、Q個のキャップを、ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置している。そして、上記発明は、Q個のキャップのうち対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させる。したがって、キャップの当接により発生する流体噴射ヘッドに対する負荷は、対称軸に対して対称に該流体噴射ヘッドに掛かる。よって、キャップ当接時に発生する流体噴射ヘッドに対する負荷の偏りが抑制される。その結果、流体噴射ヘッドの長寿命化が図られており、上記発明は好適である。
【0012】
ところで、流体噴射ヘッドは自重により撓み、かかる撓みの程度は対称軸付近に行くほど大きくなる傾向にある。換言すれば、流体噴射ヘッドは、対称軸付近を極大として撓んむ傾向にある。そこで、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、Q個のキャップのうち対称軸に最も近いキャップを最も早い当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させても良い。なんとなれば、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際しては、対称軸に最も近いキャップを最初に当接させて、対称軸付近における撓みを抑制しておくことが好適であるからである。
【0013】
また、キャップ移動手段は、流体噴射ヘッドから離間しているQ個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸に近いキャップほど早い当接タイミングで流体噴射ヘッドに当接させても良い。なんとなれば、このように構成することで、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、上述のような対称軸付近を極大とする流体噴射ヘッドの撓みの問題を抑制することが可能となるからである。
【0014】
また、キャップ移動手段は、Q個のキャップそれぞれに対して、その一方端部が流体噴射ヘッドの逆側から該キャップに接続されたバネ部材と、該バネ部材の他方端部に接続されるとともに駆動源の駆動力によりキャップ移動方向に移動するスライダとを有し、キャップに対するキャッピング動作において、スライダを流体噴射ヘッドに向けて移動させることで、スライダにバネ部材を介して接続されたキャップを流体噴射ヘッドに当接させるとともに、キャップの当接状態で更にバネ部材の付勢力に抗してスライダを流体噴射ヘッドに向けて移動させてキャップを流体噴射ヘッドに押圧してもよい。ところで、この場合、Q個のキャップ全てについてキャッピング動作が完了してQ個のキャップ全てが流体噴射ヘッドに押圧された状態において、各キャップに接続されたバネ部材の付勢力に対応する負荷が、各キャップから流体噴射ヘッドに掛かることとなる。したがって、各キャップによって付勢力が異なると、流体噴射ヘッドに掛かる負荷に偏りが発生し、流体噴射ヘッドが過度に変形する可能性がある。
【0015】
そこで、Q個のキャップのそれぞれは、該キャップに対するキャッピング動作が完了した状態において、キャップ移動手段により互いに等しい付勢力でもって流体噴射ヘッドに押圧されることが好適である。なんとなれば、このように構成することで、Q個のキャップの押圧時において、各キャップから流体噴射ヘッドに掛かる負荷を等しくすることが可能となり、流体噴射ヘッドの変形が抑制されるからである。
【0016】
また、Q個のキャップの全てについてキャッピング動作が完了した状態において、Q個のキャップそれぞれに接続されたバネ部材の長さは互いに等しくてもよい。なんとなれば、このように構成した場合、Q個のキャップ全てが流体噴射ヘッドに押圧された状態において、Q個のキャップそれぞれに対応する付勢力を等しくするにあたり、Q個のキャップそれぞれに接続されたバネ部材を同一の構成とすれば足り、構成の簡素化が図ることが可能となるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について説明するに先立って、本発明の適用対象である流体噴射装置の基本構成について説明する。かかる説明の後に、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
基本構成
図1は、流体噴射装置としてのプリンタの概略を表す斜視図である。図2は、メンテナンスユニットの概略を表す斜視図である。図1に示すように、流体噴射装置としてのプリンタ1は、略直方形状のフレーム2を備えている。このフレーム2には、その長手方向(x方向)にプラテン3が配設され、このプラテン3上には、紙送りモータ4を備えた図示しない紙送り機構によって記録用紙Pが給送されるようになっている。
【0019】
フレーム2には、プラテン3と平行となるようにガイド部材5が架設されている。このガイド部材5には、同ガイド部材5に沿って移動可能なキャリッジ6が挿通支持されている。また、フレーム2には、キャリッジモータ7が取着され、このキャリッジモータ7には、一対のプーリP1、P2に掛け装されたタイミングベルト8を介してキャリッジ6が駆動連結されている。このように構成することによって、キャリッジ6は、キャリッジモータ7が駆動すると、その駆動力がタイミングベルト8を介して伝達される。この駆動力を受けてキャリッジ6は、ガイド部材5に案内されてプラテン3と平行に主走査方向(+x方向及び−x方向)に往復移動するようになっている。
【0020】
キャリッジ6の下面には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド9が設けられている。この記録ヘッド9は平面状のノズル形成面を有する。そして、該ノズル形成面には記録用紙Pと対向するように図示しない複数のノズルが形成されている。つまり、ノズル形成面が本発明のノズル開口平面に相当する。そして、各ノズルはノズル開口平面で開口している。
【0021】
また、図1に示すように、キャリッジ6には、流体貯留部としてのインクカートリッジ10が着脱可能に装填されている。このインクカートリッジ10は、複数に区画された貯留室を備えており、各貯留室には、それぞれ流体としてのインク(例えば、顔料インクおよび反応性インク)が貯留されている。即ち、プリンタ1は、いわゆるオンキャリッジタイプである。そして、インクカートリッジ10に貯留されているインクは、それぞれ対応する記録ヘッド9のノズルに供給されるようになっている。このように構成することによって、キャリッジ6にインクカートリッジ10が装填されると、インクカートリッジ10に貯留されているインクは、記録ヘッド9に流入する。そして、記録ヘッド9に流入したインクは、図示しない圧電素子によって加圧され、ノズルのノズル開口からインク滴として記録用紙Pに向けて噴射されることによってドットを形成する。
【0022】
また、記録ヘッド9は、ブラックインク又はカラーインク(顔料インク)を吐出した後に反応インクを吐出するように駆動される。反応インクは、記録用紙P上のカラーインクに対して付着することでカラーインクと凝集反応し、カラーインクの発色性・光沢性を高めるようになっている。また、記録ヘッド9は、ブラックインク及びカラーインクを吐出しない紙面上にも、光沢性を高めるために吐出するように駆動制御されている。
【0023】
プリンタ1では、キャリッジ6を往復移動させながらインク滴を記録用紙Pに吐出させて印刷するための領域を噴射領域としての印刷領域としている。さらに、プリンタ1には、非印刷時にノズルをキャッピングするための非印刷領域が設けられ、その非印刷領域には、図1に示すように、メンテナンスユニット11が設けられている。このメンテナンスユニット11は、記録ヘッド9のメンテナンスを適宜行なうことによって、各ノズルからの吐出状態を良好に維持するためのものである。
【0024】
図2に示すように、メンテナンスユニット11には、その本体ケースCにスライダ12がバネ部材SP1(図3又は図4参照)を介して、左右方向(+x方向及び−x方向)に往復移動可能に取り付けられている。このスライダ12には、記録ヘッド9のノズルをキャッピングするための、略直方形上に形成されたキャップ部材13が設けられている。このメンテナンスユニット11は、後述する移動機構を介して、キャップ部材13を水平移動させ記録ヘッド9の真下に位置させることや、キャップ部材13を上下移動させ記録ヘッド9に密着させることによって、記録ヘッド9の各ノズルをキャッピングするようになっている。
【0025】
また、キャップ部材13は、その内部が2つに区画され、それぞれ吸収体131、132が載置されている。そして、キャップ部材13の底部(図示しない)には、同キャップ部材13の区画とそれぞれ連通する2本のチューブ(図示しない)及び吸引ポンプ(図示しない)を介して、図1に示すプラテン3の下側に設けられた廃インクタンク(図示しない)が接続されている。この廃インクタンクは、その内部が2つに区画されていて、それぞれキャップ部材の2つの区画に接続されるようになっている。
【0026】
つまり、上述のように構成することで、インクカートリッジ10に貯留される顔料インク及び反応インクは、吸収体131、132によって別々に吸収され、それぞれ廃インクタンクに破棄する、いわゆるクリーニングが実行できる。
【0027】
また、図2に示すように、このメンテナンスユニット11は、記録ヘッド9のノズル形成面に付着したインクを拭き取るためのワイパ部材Wを備えている。このワイパ部材Wは、図示しない駆動機構を介して移動することによって、本体ケースC内に収納可能となるように設けられている。
【0028】
次に、上記したメンテナンスユニット11の構成を図3〜図8に従って説明する。図3及び図4はメンテナンスユニット11の構成を説明するための平面図である。図5は、スライダ12の駆動機構の構成を説明するための斜視図である。
【0029】
図3に示すように、メンテナンスユニット11は、その本体ケースCにスライダ12をガイドするスライダガイド16を備えている。このスライダガイド16は、スライダ12の挿入口17に挿入されるようになっている。また、スライダ12には、この挿入口17内に、支持棒18が右方向(+x方向)に延出形成されている。そして、スライダガイド16には、支持棒18に対応するように支持溝19が形成されている。この支持溝19は、支持棒18を挿入支持するとともに、支持棒18が左右方向(+x方向及び−x方向)に移動可能となるように貫通形成されている。さらに、この支持溝19は、支持棒18が上下方向(+z方向及び−z方向)に移動可能となるように縦長に形成されている。また、支持溝19は、その上端部において、支持棒18と当接し、支持棒18の上方向(+z方向)への移動を規制するようになっている。
【0030】
このように構成することによって、スライダ12は、本体ケースCに対して、上下方向(+z方向及び−z方向)および左右方向(+x方向及び−x方向)へ移動が可能となっている。
【0031】
また、上述したようにスライダ12は、バネ部材SP1を介して本体ケースCに取り付けられている。これによって、スライダ12は、本体ケースCに対して左方向(−x方向)に付勢されている。従って、スライダ12に何も力が作用していない場合には、スライダ12の挿入口17は、図3に示すように、本体ケースCのスライダガイド16の右側面に当接した状態となっている。なお、このような状態を基準位置ということとする。
【0032】
図5に示すように、スライダ12には、バネ部材SP2を介してキャップ部材13が取り付けられている。このキャップ部材13は、図3または図4に示すように、可撓性を有し記録ヘッド9に当接するシール部材S、及び同記録ヘッド9に当接する支持部材としての爪部Tを備えている。さらに、このキャップ部材13は、前方向(+y方向)に延出した支持棒20、後方向(−y方向)に延出した支持棒21、及び位置決め手段として前方向(+y方向)に延出した位置決め棒22を備えている。
【0033】
一方、スライダ12には、図3又は図4に示すように、これら支持棒20,21及び位置決め棒22に対応するように、支持溝23,24及びガイド手段としてのガイド溝25が形成されている。支持溝23,24及びガイド溝25は、それぞれ支持棒20,21及び位置決め棒22を挿入支持するとともに、支持棒20,21及び位置決め棒22が上下方向(+z方向及び−z方向)に移動可能となるように縦長に形成されている。支持溝23,24及びガイド溝25は、その上端部において、それぞれ支持棒20,21及び位置決め棒22に当接し、その上方向(+z方向)への移動を規制するようになっている。また、支持棒20,21及び位置決め棒22の+x方向及び−x方向に移動も、支持溝23,24及びガイド溝25により規制される。支持溝23,24及びガイド溝25の溝の深さは、キャップ部材13が前方向(+y方向)及び後方向(−y方向)に移動した際に、支持棒20,21及び位置決め棒22が外れないように形成されている。
【0034】
このように構成することによって、キャップ部材13はスライダ12に対して、上下(+z方向及び−z方向)移動が可能となっている。さらに、キャップ部材13は、バネ部材SP2によって上方向(+z方向)に付勢されるとともに、支持棒20,21及び位置決め棒22によって、その上方向(+z方向)の移動が規制されている。これによって、通常、キャップ部材13は、スライダ12に対して上方向(+z方向)に最も離間している状態であって、下方向(−z方向)に押圧されると、その押圧に応じて下方向(−z方向)に移動するようになっている。
【0035】
また、図3又は図4に示すように、スライダ12と、キャップ部材13の右側面との間には、バネ部材SP3が取り付けられている。このバネ部材SP3は、キャップ部材13をスライダ12側に右前方向(+x方向及び+y方向の合成方向)に付勢するものであって、これによって、キャップ部材13は、スライダ12に対して、常に右前方向に付勢されている。このキャップ部材13のスライダ12に対しての左右方向(+x方向及び−x方向)の移動は、上述したように、支持溝23,24によって規制されている。従って、キャップ部材13には、スライダ12に対して前方向(+y方向)に付勢されることとなる。
【0036】
他方、本体ケースCは、図3又は図4に示すように、案内部として略台形状の突起部26を備えている。この突起部26は、本体ケースCから後方向(−y方向)に突出形成されており、キャップ部材13の位置決め棒22に対向して当接する。
【0037】
そして、図3に示すように、スライダ12が基準位置にある場合、キャップ部材13の位置決め棒22は、突起部26の端部27に当接するようになっている。この状態において、キャップ部材13は、位置決め棒22を介して突起部26によって支持されるとともに、その移動が規制されるようになっている。
【0038】
さらに、スライダ12が基準位置から右方向(+x方向)に移動した場合、スライダ12に取り付けられたキャップ部材13は、バネ部材SP3によってスライダ12に対して前方向(+y方向)に付勢されていることから、その位置決め棒22は、突起部26の傾斜部28に沿って右前方向(+x方向及び+y方向の合成方向)に移動する。そして、図4に示すように、位置決め棒22は、突起部26の傾斜部28によって、支持された状態となる。このとき、キャップ部材13は、図3に示す状態と比べて、若干だけ前方(+y方向)に移動した状態となって静止している。このような図4に示す状態を、設定位置というものとする。
【0039】
このように構成することによって、例えば、記録ヘッド9が、スライダ12から延出形成された当接部29に当接し、スライダ12を右方向(+x方向)に押圧すると、スライダ12は、右方向(+x方向)に移動し、これに伴って、キャップ部材13は設定位置に移動するようになっている。このとき、キャップ部材13の設定位置への移動によって、キャップ部材13の爪部Tは、前方向(+y方向)に移動し記録ヘッド9に当接するようになっている。つまり、設定位置とは、キャップ部材13が記録ヘッド9のノズルと直接対応する位置となっている。また、基準位置とは、記録ヘッド9の主走査線方向+x方向及び−x方向の進路上からキャップ部材13が退避している位置となっている。
【0040】
なお、スライダ12に設けられたガイド溝25は、キャップ部材13の位置決め棒22の約1.2倍の大きさに形成されている。これによって、位置決め棒22がこのガイド溝25に当接した場合における磨耗を低減することができ、かつ、キャップ部材13の+y方向及び−y方向の動きがこの磨耗により悪くなるのを避けることができるようになっている。
【0041】
次に、スライダ12の駆動機構の構成について、上述した図5及び図6〜図8に従って説明する。図6〜図8は、スライダ12を駆動するカム機構の構成を説明するための側面図である。また、図6〜図8は、スライダ12を−x方向から見た側面図である。図9は、カム機構に駆動力を供給する機構を示すブロック図である。
【0042】
図5に示すように、スライダ12には、その側面31の下部に軸32が、右方向(−x方向)に延出形成されている。この軸32は、本体ケースCの側面33(図10参照)に上下方向(+z方向及び−z方向)縦長に形成されたガイド手段としてのガイド溝34(図10参照)に挿入支持されるようになっている。また、この軸32は図4に示したようにスライダ12が左右方向(+x方向及び−x方向)に移動した際に、ガイド溝34から外れない長さとなっている。
【0043】
また、スライダ12の底部35には、板状に形成された2枚の板部36,37が形成されていて、この板部36、37には、それぞれ、図5における右方向(−x方向)に摺動軸38,39及び当接軸U1,U2が延出形成されている。
【0044】
一方、本体ケースC内には、図5に示すように、スライダ12の下に位置するように駆動機構としてのカム機構40が備えられている。このカム機構40は、軸部41、歯車42及びカム部43,44から構成されていて、この軸部41には、その中央に歯車42が固着さている。さらに、この歯車42を中央とする軸部41の両端部には、カム部43,44がそれぞれ固着されている。従って、歯車42が駆動力を受けて回転すると、これに伴って、カム部43,44も同方向に回転するようになっている。そして、このカム機構40は、その軸部41の両端部が、それぞれ本体ケースCの側面に設けられた支持穴45(図10参照)及び本体ケースC内に設けられた支持穴(図示しない)に挿入し回転可能に支持されるようになっている。これによって、カム機構40は、軸部41を回転中心として回転することができる。また、カム機構40は、図5に示すように、カム部43,44内にそれぞれ形成された摺動溝46,47に、板部36,37の摺動軸38,39が挿入されることによって、スライダ12に取り付けられるようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43の側面431、カム部44の側面441に、それぞれ摺接するようになっている。
【0045】
従って、このカム機構40が軸部41を回転中心として回転した場合、カム部43,44は回転するので、摺動軸38,39は、摺動溝46,47に沿って摺動する。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に摺接し支持される。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、軸部41の回転に伴って、離間又は接近する。つまり、カム機構40の軸部41は、上述したように、本体ケースCに支持されていることから、スライダ12は、その軸32を本体ケースCのガイド溝34に案内されながら本体ケースCに対して、上下方向(+z方向及び−z方向)に移動するようになっている。
【0046】
そして、このカム機構40の歯車42は、駆動機構401を介して駆動モータ402(駆動源)から供給される駆動力により、駆動される。なお、駆動モータ402は正逆回転可能である。これによって、例えば、カム部43,44の摺動溝46,47と、摺動軸38,39との位置関係が、図6に示すような状態(軸部41と当接軸U1,U2との相対距離が相対距離d1)となっているとき、駆動モータ402が正回転した場合、歯車42は、駆動モータ402からの駆動力を受け矢印48方向(時計回り)に回転する。そして、摺動軸38,39は、摺動溝46,47内を摺動するとともに案内され、摺動溝46,47内を図7に示す位置まで移動するようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に沿って摺動するとともに支持されるようになっている。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、相対距離d2となっている。また、相対距離d1から相対距離d2への変動に伴って、スライダ12及び該スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13は、キャップ移動方向+13Dに移動する。なお、キャップ移動方向13Dのうち、図6〜図8において上側に向く方向をキャップ移動方向+13Dとし、図6〜図8において下側に向く方向をキャップ移動方向−13Dとする。
【0047】
また、摺動溝46,47と、摺動軸38,39との位置関係が、図6に示すような状態(軸部41と当接軸U1,U2との相対距離が相対距離d1)となっているとき、駆動モータ402が逆回転した場合、歯車42は、駆動モータ402からの駆動力を受け矢印49方向(反時計回り)に回転する。そして、摺動軸38,39は、摺動溝46,47内を摺動するとともに案内され、摺動溝46,47内を図8に示す位置まで移動するようになっている。このとき、当接軸U1,U2は、カム部43,44の側面431,441に沿って摺動するとともに支持されるようになっている。これによって、軸部41と当接軸U1,U2との相対距離は、相対距離d3となっている。また、相対距離d1から相対距離d3への変動に伴って、スライダ12及び該スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13は、キャップ移動方向+13Dに移動する。
【0048】
これら相対距離d1,d2,d3の大小関係は、相対距離d1<相対距離d2<相対距離d3となっている。なお、図6に示す状態(相対距離d1)を待機状態、図7に示す状態をフラッシング状態(相対距離d2)、図8に示す状態(相対距離d3)をキャッピング状態というものとする。そして、駆動モータ402は、プリンタ1内に設けられた図示しない制御回路からの制御信号に応じて、正逆回転し、さらにその駆動を停止することによって、待機状態、フラッシング状態、キャッピング状態のそれぞれの状態を維持できるようになっている。つまり、カム部43(44)の回転に伴って(換言すれば相対距離の変動に伴って)、キャップ部材13はキャップ移動方向13Dに移動する。そこで、上記構成は、カム部43(44)の回転を制御することで、各状態に対応する位置にキャップ部材13を移動させている。
【0049】
ここで、本明細書において、カム部43(44)の側面431(441)のうち、待機状態で当接軸U1(U2)が当接する位置を特に下死点BPと称することとする(図6)。また、本明細書において、カム部43(44)の側面431(441)のうち、キャッピング状態で当接軸U1(U2)が当接する位置を特に上死点TPと称することとする(図8)。
【0050】
また、ワイパ部材Wは、スライダ12が待機状態(図6に示す状態)となっているときには、本体ケースC内にあって、同スライダ12がフラッシング状態(図7に示す状態)へと移動する際には、これに応じて同本体ケースC内から移動し、記録ヘッド9の当接可能となるように位置するようになっている。
【0051】
次に、上記のように構成したメンテナンスユニット11の動作について図10〜図12に従って説明する。図10は、スライダ12の待機状態を説明するための側面図である。図11は、スライダ12のフラッシング状態を説明するための側面図である。図12はスライダ12のキャッピング状態を説明するための側面図である。
【0052】
図10に示すように、メンテナンスユニット11は、スライダ12が待機状態(相対距離d1)となっている際には、図3に示したようにスライダ12は、基準位置に位置している。
【0053】
そして、図1に示すプリンタ1が、記録ヘッド9のノズルからキャップ部材13に対してインクを空吐出させるフラッシング動作を行う場合には、キャリッジ6を非印刷領域に移動させ、その記録ヘッド9をスライダ12の当接部29に当接させる。そして記録ヘッド9が当接部29に当接すると、図4に示すように、スライダ12は設定位置に移動するので、これに伴って、爪部Tは前方向(+y方向)に移動し、記録ヘッド9に当接し支持する。そして、キャップ部材13は記録ヘッド9に直接対向することができる。
【0054】
また、このときプリンタ1は、記録ヘッド9をスライダ12の当接部29に当接させる際に、スライダ12を待機状態からフラッシング状態に移動させる。これに伴って、ワイパ部材Wは、本体ケースC内から移動し、記録ヘッド9に当接可能な位置に移動する。そして、記録ヘッド9がスライダ12の当接部29に当接するためにワイパ部材W上を通過することによって、記録ヘッド9のノズル形成面に付着したインクは拭き取られる。そして、スライダ12が、フラッシング状態に移動したとき、駆動モータ402は停止し、図11に示すように、フラッシング状態を維持する。このとき、キャップ部材13は記録ヘッド9に対して、隙間L1を開けた状態で対向している。そして、プリンタ1は、この状態にてフラッシング動作を行なうことによって、記録ヘッド9のノズルのメンテナンスを行なうことができる。
【0055】
さらに、この状態から記録ヘッド9をキャッピングする場合には、プリンタ1は、スライダ12をフラッシング状態から待機状態に移動し、さらに、キャッピング状態に移動させる。これによって、図12に示すように、スライダ12はさらに上方向(+z方向)に移動するので、キャップ部材13のシール部材Sは、記録ヘッド9に当接し、そのノズル形成面をキャッピングし、そのノズルにおけるインクの乾燥を防止する。
【0056】
また、キャップ部材13が記録ヘッド9をキャッピングした状態で、吸引ポンプを駆動することにより、キャップ部材13を介して記録ヘッド9内の流体としてのインク、気泡、塵埃或いはノズルの目詰まり等を吸引する、いわゆるクリーニングを行なうことができる。以上が、本発明の適用対象である流体噴射装置の基本構成である。次に、本発明の実施形態について説明する。
【0057】
第1実施形態
図13は、第1実施形態における記録ヘッドとキャップとの関係を示す図である。同図が示すように、第1実施形態では、Q個(Qは3以上の整数)のキャップ部材13を有するキャップ群13Gが、ノズル形成面91に対向して配置されている。具体的には、5個のキャップ部材13a〜13eが記録ヘッド9のノズル形成面91に対向して配置されている。そして、キャップ部材13a〜13eのそれぞれに対して、スライダ12とカム機構40が設けられている。各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12及びカム機構40は、上述で図6〜図8を用いて示した構成と同様の構成を有する。また、本明細書においては、キャップ部材13a〜13eのうち何れのキャップに対して設けられた部材であるかを明示するために、各部材の符号に続いて、該部材が対応するキャップ部材13のアルファベットを記すこととする。つまり、各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたカム機構40のそれぞれを、特に、カム機構40a〜40eと称する。また、各キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12のそれぞれを、特に、スライダ12a〜12eと称する。
【0058】
図13が示すように、5個のキャップ部材13a〜13eは、ノズル形成面91に垂直な対称軸13SAを挟んで、ノズル形成面91に平行な配列方向13ADにおいて対称に配置されている。つまり、キャップ部材13aとキャップ部材13eは対称軸13SAに対して対称関係にあるとともに、キャップ部材13bとキャップ部材13dは対称軸13SAに対して対称関係にある。また、カム機構40a〜40eは、軸部41を共通にする。そして、軸部41は、駆動モータ402からの駆動力を受けて回転する。したがって、駆動モータ402の回転に伴って、全てのカム機構40a〜40eのカム部43,44が回転する。
【0059】
なお、図13では、各キャップ部材13a〜13eは待機状態にあり、記録ヘッド9のノズル形成面91から離間している。そして、各キャップ部材13a〜13eは、キャッピング動作が実行されて、待機状態からキャッピング状態へと移行する。かかるキャッピング動作の詳細は、後述する。
【0060】
図14は、カム機構のそれぞれが有するカム部の構成を示す図である。第1実施形態において、キャップ部材13a〜13eに対して設けられたカム機構40a〜40eの構成は、カム部43、44についてのみ異なり、カム部43、44以外については互いに等しい。また、キャップ部材13a〜13eに対して設けられたスライダ12の構成は、互いに等しい。さらに、対称軸13SAに対して対称関係にある各キャップ部材13に設けられたカム機構40の構成は、カム部43、44についても互いに等しい。
【0061】
図14の「カム機構40a,40e」の欄に示すカム部CM1は、カム機構40a,40eが有するカム部である。つまり、カム部CM1は、カム部43a,44a,43e,44eに相当する。同欄が示すように、カム部CM1の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV1が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d31である。つまり、カム機構40a,40eでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d31となる。
【0062】
図14の「カム機構40b,40d」の欄に示すカム部CM2は、カム機構40b,40dが有するカム部である。つまり、カム部CM2は、カム部43b,44b,43d,44dに相当する。同欄が示すように、カム部CM2の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV2が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d32である。つまり、カム機構40b,40dでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d32となる。
【0063】
図14の「カム機構40c」の欄に示すカム部CM3は、カム機構40cが有するカム部である。つまり、カム部CM3は、カム部43c,44cに相当する。同欄が示すように、カム部CM3の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV3が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d33である。つまり、カム機構40cでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d33となる。
【0064】
図14の「全カム機構」の欄は、カム部CM1,CM2,CM3を重ねて示している。同欄が示すように、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでのカム部側面の形状については、カム部CM1〜CM3は互いに異なる。つまり、曲面CV1〜CV3の形状は互いに異なる。より詳しくは、時計回りに向いて、分離点SEP以降の各曲面CV1〜CV3の形状が異なる。ここで、分離点SEPは、各曲面CV1〜CV3に対して、時計回りに向いて、下死点BPから上死点TPまでの間に設けられた点である。つまり、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通る。また、各カム部CM1〜CM3に対応する相対距離d31〜d33の大小関係は、相対距離d33>相対距離d32>相対距離d31である。
【0065】
図15は、第1実施形態におけるキャッピング動作を示す図である。ここで、キャッピング動作は、記録ヘッド9から離間しているキャップ部材13をキャップ移動方向13Dに記録ヘッド9へ向けて移動させて記録ヘッド9に当接させるとともにキャップ部材13の当接状態で更にキャップ部材13を記録ヘッド9に押圧する動作である。そして、第1実施形態は、全てのキャップ部材13a〜13eに対してキャッピング動作を実行する(キャップ移動工程)。
【0066】
ステップM11では、全てのカム機構40a〜40eにおいて、当接軸U1,U2は下死点BPでカム部CM1〜CM3に当接する。したがって、全てのキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、離間距離va1〜ve1を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va1〜veは互いに等しい。なお、当接軸U1と当接軸U2の構成動作は互いに同様であるので、図示は当接軸U1のみ行なうとともに、以後の構成動作の説明は当接軸U1についてのみ行なう。
【0067】
ステップM11のように全てのキャップ部材13a〜13eが離間している状態から、駆動モータ402が軸部41の回転駆動を開始して、全てのキャップ部材13a〜13eについてキャッピング動作が開始される。具体的には、図15において、軸部41及び該軸部41に固定されたカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転を開始する。
【0068】
カム部CM1が回転すると、スライダ12a,12eの当接軸U1は、カム部CM1の曲面CV1に摺接しながらキャップ移動方向+13Dに移動する(図15において上方向に移動する)。その結果、スライダ12a,12eは上方向に移動する。また、スライダ12a,12eの移動に伴って、これらスライダ12a,12eにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13a,13eは、上方向に移動してノズル形成面91に近づく。
【0069】
また、カム部CM2が回転すると、スライダ12b,12dの当接軸U1は、カム部CM2の曲面CV2に摺接しながらキャップ移動方向+13D(上方向)に移動する。その結果、スライダ12b,12dは上方向に移動する。また、スライダ12b,12dの移動に伴って、これらスライダ12b,12dにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13b,13dは、上方向に移動してノズル形成面91に近づく。
【0070】
また、カム部CM3が回転すると、スライダ12cの当接軸U1は、カム部CM3の曲面CV3に摺接しながらキャップ移動方向+13D(上方向)に移動する。その結果、スライダ12cは図15において上方向に移動する。また、スライダ12cの移動に伴って、これらスライダ12cにバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13cが図15において上方向に移動して、ノズル形成面91に近づく。
【0071】
ところで、上述の通り、曲面CV3は、曲面CV1〜CV3のうち最も軸部41との距離が遠い位置を通る。したがって、スライダ12cの当接軸U1が最も早くキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM12において、キャップ部材13cが、5個のキャップ部材13a〜13eの内で最初にノズル形成面91に当接する。なお、ステップM12において、キャップ部材13aは離間距離va2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13bは離間距離vb2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13dは離間距離vd2を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13eは離間距離ve2を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va2と離間距離ve2は互いに等しく、離間距離vb2と離間距離vd2は互いに等しい。
【0072】
ステップM12の状態から更にカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転すると、キャップ部材13a,13b,13d,13eは更にキャップ移動方向(図15において上方向)に移動する。一方、キャップ部材13cは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。しかしながら、カム部CM3の反時計回りへの回転は継続し、スライダ12cはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。したがって、スライダ12cは、該スライダ12cとキャップ部材13cとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13cは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される。
【0073】
ところで、上述の通り、曲面CV2は、曲面CV1〜CV3のうち、曲面CV3に次いで軸部41との距離が遠い位置を通る。したがって、スライダ12cの当接軸U1に次いで、スライダ12b,12dがキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM12におけるキャップ部材13cのノズル形成面91への当接の次に、キャップ部材13b,13dがノズル形成面91に当接する(ステップM13)。なお、ステップM13において、キャップ部材13aは離間距離va3を隔ててノズル形成面91から離間し、キャップ部材13eは離間距離ve3を隔ててノズル形成面91から離間している。また、離間距離va3と離間距離ve3は互いに等しい。
【0074】
ステップM13の状態から更にカム部CM1〜CM3が反時計回りに回転すると、キャップ部材13a,13eは更にキャップ移動方向(上方向)に移動する。一方、キャップ部材13b,13c,13dは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。しかしながら、カム部CM2,CM3の反時計回りへの回転は継続し、スライダ12b,12c,12dはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。したがって、スライダ12b,12c,12dは、各スライダ12b,12c,12dと、それぞれが対応するキャップ部材13b,13c,13dとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13b,13c,13dは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される。
【0075】
ところで、上述の通り、曲面CV1は、曲面CV1〜CV3のうち、軸部41との距離が最も近い位置を通る。したがって、スライダ12a,12eの当接軸U1が最も後からキャップ移動方向+13Dに移動する。その結果、ステップM13におけるキャップ部材13b,13dのノズル形成面91への当接の次に、キャップ部材13a,13eがノズル形成面91に当接する(ステップM14)。
【0076】
ステップM14の状態から更にカム部CM1〜CM3は反時計回りに回転し、その結果、スライダ12a〜12eはキャップ移動方向+13Dへの移動を継続する。しかしながら、キャップ部材13a〜13eは、既にノズル形成面91に当接しており、それ以上のキャップ移動方向+13Dへの移動は無い。したがって、スライダ12a〜12eは、各スライダ12a〜12eと、それぞれが対応するキャップ部材13a〜13eとの間に介挿されたバネ部材SP2の付勢力に抗して、キャップ移動方向+13Dへ移動することとなる。その結果、キャップ部材13a〜13eは、バネ部材SP2の付勢力でもって、ノズル形成面91に押圧される(ステップM15)。また、ステップM15において、各スライダ12a〜12eの当接軸U1は、何れも対応するカム部CM(CM1〜CM3)に上死点TPで当接する。そして、ステップM15の動作が完了して、全てのキャップ部材13a〜13eについてキャッピング動作が完了する。
【0077】
このように第1実施形態では、記録ヘッド9が本発明の「流体噴射ヘッド」に相当し、ノズル形成面91が本発明の「ノズル開口平面」に相当し、キャップ部材13(13a〜13e)のそれぞれが本発明の「キャップ」に相当する。また、カム機構40(40a〜40e)及びスライダ12(12a〜12e)が本発明の「キャップ移動手段」に相当する。
【0078】
上述の通り、第1実施形態は、記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13e全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち2個以上のキャップ部材13を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9へ当接させる。ここで、当接タイミングは、キャッピング動作においてキャップ部材13が記録ヘッド9に当接するタイミングである。つまり、例えば、キャップ部材13cはステップM12において記録ヘッド9に当接するのに対して、キャップ部材13b(13d)はステップM13において記録ヘッド9に当接しており、キャップ部材13cとキャップ部材13b(13d)とで当接タイミングが異なっている。更に、キャップ部材13a(13e)はステップM14において記録ヘッド9に当接しており、キャップ部材13a(13e)の当接タイミングはキャップ部材13b〜13dのいずれの当接タイミングとも異なる。
【0079】
つまり、第1実施形態は、5個のキャップ部材13a〜13eの全てを同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させるのではなく、5個のうち2個以上のキャップ部材13(例えば、キャップ部材13cとキャップ部材13b)を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9に当接さている。したがって、5個のキャップ部材13a〜13eの全てを同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる場合と比較して、第1実施形態では、キャップ部材13の記録ヘッドへの当接時に発生する駆動モータ402(駆動源)への負荷の変動が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動モータ402(駆動源)が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップ部材13の記録ヘッド9への当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。
【0080】
ところで、キャップ当接時には各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に対して負荷が掛かることとなるが、第1実施形態のように2個以上のキャップ部材13を互いに異なる当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる場合、記録ヘッド9に偏った負荷が発生する場合がある。その結果、記録ヘッド9に過度な変形が生じる。そして、このような過度な変形は、記録ヘッド9の疲労・磨耗を引き起こし、記録ヘッドの短命化の原因となる。
【0081】
これに対して、第1実施形態は、5個のキャップ13a〜13eを、ノズル形成面91に垂直な対称軸13SAを挟んで、ノズル形成面に平行な配列方向13ADにおいて対称に配置している。そして、第1実施形態は、5個のキャップ13a〜13eのうち対称軸13SAに対して対称関係にあるキャップ部材13については互いに同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させる。具体的には、キャップ部材13bとキャップ部材13dとが同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接するとともに、キャップ部材13aとキャップ部材13eとが同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接する。したがって、キャップ部材13a〜13eの当接により発生する記録ヘッド9に対する負荷は、対称軸13SAに対して対称に該記録ヘッド9に掛かる。よって、キャップ部材当接時に発生する記録ヘッド9に対する負荷の偏りが抑制される。その結果、記録ヘッドの長寿命化が図られており、第1実施形態は好適である。
【0082】
ところで、記録ヘッド9は自重により撓み、かかる撓みの程度は対称軸13SA付近に行くほど大きくなる傾向にある。換言すれば、記録ヘッド9は、対称軸13SA付近を極大として撓んむ傾向にある。そこで、第1実施形態は、記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッドに当接させている(ステップM12)。つまり、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、第1実施形態は、対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最初に当接させて、対称軸13SA付近における撓みを抑制しており、好適である。
【0083】
また、第1実施形態は記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。つまり、このように当接タイミングを設定することで、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、上述のような対称軸13SA付近を極大とする記録ヘッド9の撓みの問題を抑制することが可能となっている。
【0084】
ところで、上記第1実施形態におけるプリンタ1は、5個のキャップ部材13a〜13eそれぞれに対して、その一方端部が記録ヘッド9の逆側から該キャップ部材13に接続されたバネ部材SP2と、該バネ部材SP2の他方端部に接続されるとともに駆動モータ402の駆動力によりキャップ移動方向+13Dに移動するスライダ12とを有している(図6、図15等)。そして、第1実施形態は、キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作において、スライダ12を記録ヘッド9に向けて移動させることで、スライダ12にバネ部材SP2を介して接続されたキャップ部材13を記録ヘッド9に当接させる。更に、第1実施形態は、キャップ部材13の当接状態で更にバネ部材SP2の付勢力に抗してスライダ12を記録ヘッド9に向けて移動させてキャップ部材13を記録ヘッド9に押圧している。そして、この場合、上死点TPにおいてバネ部材SP2の付勢力は最大となる。ここで、5個のキャップ部材13a〜13eを当接させるタイミングを変える方法として、カム部の形状を全て同じにして、それぞれのカムを回転方向に少しずつずらしてタイミングを変える方法が考えられる。しかし、この場合、バネ部材SP2の付勢力が最大となってからもさらに回転させる必要があり、カムが摩耗する不具合となりやすい。上記第1実勢形態は、5個のキャップ部材が当接するタイミングは異なるが、上死点に達するタイミングは同じため、上死点の状態からさらにカム部を回転して摩耗する不具合を抑制できる。
【0085】
また、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作が完了して5個のキャップ部材13a〜13eの全てが記録ヘッド9に押圧された状態において、各キャップ部材13a〜13eに接続されたバネ部材SP2の付勢力に対応する負荷が、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かることとなる。したがって、各キャップ部材13a〜13eによって付勢力が異なると、記録ヘッド9に掛かる負荷に偏りが発生し、記録ヘッド9が過度に変形する可能性がある。
【0086】
そこで、5個のキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、該キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作が完了した状態において、互いに等しい付勢力でもって記録ヘッドに押圧されることが好適である。なんとなれば、このように構成することで、5個のキャップ部材13a〜13eの押圧時において、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かる負荷を等しくすることが可能となり、記録ヘッド9の変形が抑制されるからである。
【0087】
しかしながら、図14を用いて説明したとおり、上死点TPの位置はカム部CM1〜CM3毎に異なり、キャッピング状態(ステップM15)における当接軸U1(U2)と軸部41との相対距離は、カム部CM1〜CM3毎に異なる。その結果、キャッピング状態において、キャップ部材13a〜13eによって、接続されたバネ部材SP2の長さが異なる。したがって、全てのバネ部材SP2を同一の構成とすると、キャップ部材13a〜13eそれぞれを押圧する付勢力に差異が生じる場合がある。また、かかる付勢力の差異に対応すべく、バネ部材SP2をカム部CMに応じて異ならせることも可能であるが、かかる手法は構成の複雑化を招来して好適でない。そこで、次の第2実施形態では、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SPの構成を同一としつつ、キャッピング状態においてキャップ部材13a〜13eのそれぞれを押圧する付勢力を等しくする技術について説明する。
【0088】
第2実施形態
図16は、第2実施形態におけるカム部の構成を示す図である。なお、第1実施形態と第2実施形態の主な違いはカム部であり、カム部以外の構成は第1・第2実施形態で同様であるので、以下では、主としてカム部の構成について説明し、カム部以外の構成については説明を省略する。
【0089】
図16の「カム機構40a,40e」の欄に示すカム部CM1は、カム機構40a,40eが有するカム部である。つまり、カム部CM1は、カム部43a,44a,43e,44eに相当する。同欄が示すように、カム部CM1の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV1が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d31である。つまり、カム機構40a,40eでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d31となる。
【0090】
図16の「カム機構40b,40d」の欄に示すカム部CM2は、カム機構40b,40dが有するカム部である。つまり、カム部CM2は、カム部43b,44b,43d,44dに相当する。同欄が示すように、カム部CM2の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV2が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d32である。つまり、カム機構40b,40dでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d32となる。
【0091】
図16の「カム機構40c」の欄に示すカム部CM3は、カム機構40cが有するカム部である。つまり、カム部CM3は、カム部43c,44cに相当する。同欄が示すように、カム部CM3の側面には、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでにかけて、曲面CV3が形成されている。また、上死点TPに当接する当接軸U1,U2と軸部41との相対距離は、相対距離d33である。つまり、カム機構40cでは、キャッピング状態において相対距離が相対距離d33となる。
【0092】
図16の「全カム機構」の欄は、カム部CM1,CM2,CM3を重ねて示している。同欄が示すように、時計回りに向いて下死点BPから上死点TPまでのカム部側面の形状については、カム部CM1〜CM3は互いに異なる。つまり、曲面CV1〜CV3の形状は互いに異なる。より詳しくは、時計回りに向いて、分離点SEP以降の各曲面CV1〜CV3の形状が異なる。ここで、分離点SEPは、各曲面CV1〜CV3に対して、時計回りに向いて、下死点BPから上死点TPまでの間に設けられた点である。つまり、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通る。但し、上死点TPにおいて、各曲面CV1〜CV3は一致する。したがって、各カム部CM1〜CM3に対応する相対距離d31〜d33の大小関係は、相対距離d33=相対距離d32=相対距離d31となる。つまり、カム部CM1〜CM3によらず、相対距離は等しくなる。
【0093】
このように第2実施形態は、第1実施形態と同様に、分離点SEP以降において、曲面CV1〜CV3の順番に、各曲面CV1〜CV3は内側(換言すれば、軸部41との距離がより近い位置)を通るように、カム部CM1〜CM3を構成している。したがって、図15を用いて説明したステップ11〜ステップ15の動作を実行することで、キャップ部材13cは最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接し、キャップ部材13b,13dはキャップ部材13cの次の当接タイミングで記録ヘッド9に当接し、キャップ部材13a,13eは最も遅い当接タイミングで記録ヘッド9に当接する。
【0094】
したがって、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、キャップ部材13の記録ヘッドへの当接時に発生する駆動モータ402(駆動源)への負荷が軽減されている。よって、当接タイミングに発生する過大な負荷により駆動モータ402(駆動源)が停止してしまうといった状況の発生が抑制されている。その結果、キャップ部材13の記録ヘッド9への当接・押圧が適切に実行され、良好なキャッピング状態が実現されており好適である。また、第2実施形態においても、5個のキャップ13a〜13eのうち対称軸13SAに対して対称関係にあるキャップ部材13については互いに同じ当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。したがって、キャップ部材13a〜13eの当接により発生する記録ヘッド9に対する負荷は、対称軸13SAに対して対称に該記録ヘッド9に掛かる。よって、キャップ部材当接時に発生する記録ヘッド9に対する負荷の偏りが抑制される。その結果、記録ヘッドの長寿命化が図られている。
【0095】
さらに、第2実施形態では、上死点TPにおいて、各曲面CV1〜CV3は一致している。したがって、キャッピング状態(ステップM15)において、カム部CM1〜CM3によらず相対距離は等しくなる。その結果、キャッピング状態において、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SP2の長さは互いに等しい。つまり、キャップ部材13a〜13eそれぞれに接続されたバネ部材SP2の構成を同一とすることで、5個のキャップ部材13a〜13eのそれぞれは、該キャップ部材13a〜13eに対するキャッピング動作が完了した状態において、互いに等しい付勢力でもって記録ヘッド9に押圧される。このように、第2実施形態は、全てのバネ部材SP2を同一の構成とするだけで、5個のキャップ部材13a〜13eの押圧時において、各キャップ部材13a〜13eから記録ヘッド9に掛かる負荷を等しくすることが可能である。よって、第2実施形態は、簡素な構成により記録ヘッド9の変形を抑制することを可能としており、好適である。
【0096】
また、5個のキャップ部材13a〜13eを当接させるタイミングを変える方法として、カム部の形状を全て同じにして、それぞれのカムを回転方向に少しずつずらしてタイミングを変える方法が考えられる。しかし、この場合、バネ部材SP2の付勢力が最大となってからもさらに回転させる必要があり、カムが摩耗する不具合となりやすい。上記第2実勢形態は、5個のキャップ部材が当接するタイミングは異なるが、上死点に達するタイミングは同じため、上死点の状態からさらにカム部を回転して摩耗する不具合を抑制できる。
【0097】
その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態ではキャップ部材13の個数を5個としたが、キャップ部材の個数は5個に限られない。要は、Q個以上(Qは3以上の整数)のキャップ部材13を用いる構成であれば、本発明は適用可能である。
【0098】
また、上記実施形態では、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、5個のキャップ部材13a〜13eのうち対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている(ステップM12)。しかしながら、対称軸13SAに最も近いキャップ部材13cを最も早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させることは、本発明に必須の構成ではない。但し、このように構成することで、5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SA付近における撓みを抑制できて好適である点については、上述の通りである。
【0099】
また、上記実施形態は記録ヘッド9から離間している5個のキャップ部材13a〜13eの全てについてキャッピング動作を実行するに際して、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させている。しかしながら、、対称軸13SAに近いキャップ部材13ほど早い当接タイミングで記録ヘッド9に当接させるとの構成は、本発明に必須ではない。但し、このように構成することで、対称軸13SA付近を極大とする記録ヘッド9の撓みの問題を抑制することが可能であり好適である点は、上述の通りである。
【0100】
さらに、本発明の適用対象は、上記プリンタ1に限らず、ディスプレー製造装置、電極製造装置、チップ製造装置、マイクロピペット等の流体噴射装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】流体噴射装置としてのプリンタの概略を表す斜視図。
【図2】メンテナンスユニットの概略を表す斜視図。
【図3】メンテナンスユニットの構成を説明するための平面図。
【図4】メンテナンスユニットの構成を説明するための平面図。
【図5】スライダの駆動機構の構成を説明するための斜視図。
【図6】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図7】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図8】スライダの駆動機構の構成を説明するための側面図。
【図9】カム機構に駆動力を供給する機構を示すブロック図。
【図10】スライダの待機状態を説明するための側面図。
【図11】スライダのフラッシング状態を説明するための側面図。
【図12】スライダのキャッピング状態を説明するための側面図。
【図13】第1実施形態における記録ヘッドとキャップとの関係を示す図。
【図14】カム機構のそれぞれが有するカム部の構成を示す図。
【図15】第1実施形態におけるキャッピング動作を示す図。
【図16】第2実施形態におけるカム部の構成を示す図。
【符号の説明】
【0102】
1…プリンタ(流体噴射装置)、 9…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、 91…ノズル形成面(ノズル開口平面)、 12,12a,12b,12c,12d,12e…スライダ(キャップ移動手段)、 13,13a,13b,13c,13d,13e…キャップ部材(キャップ)、 13G…キャップ群、 13D…キャップ移動方向、 13SA…対称軸、 13AD…配列方向、 40,40a,40b,40c,40d,40e…カム機構(キャップ移動手段)、 402…駆動モータ(駆動源)、 SP2…バネ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、
キャップ移動方向に移動して前記流体噴射ヘッドから離間及び前記流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、前記流体噴射ヘッドへの当接状態において前記ノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群と、
前記流体噴射ヘッドから離間している前記キャップを前記キャップ移動方向に前記流体噴射ヘッドへ向けて移動させて前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに前記キャップの当接状態で更に前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、前記Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動手段と、
前記Q個のキャップを移動させるための駆動力を前記キャップ移動手段に供給する駆動源と
を備え、
前記Q個のキャップは、前記ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、前記ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、
キャッピング動作において前記キャップが前記流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、前記キャップの当接タイミングとしたとき、
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで前記流体噴射ヘッドへ当接させる一方、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に最も近いキャップを最も早い当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させる請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記対称軸に近い前記キャップほど早い当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させる請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ移動手段は、前記Q個のキャップそれぞれに対して、その一方端部が前記流体噴射ヘッドの逆側から該キャップに接続されたバネ部材と、該バネ部材の他方端部に接続されるとともに前記駆動源の駆動力により前記キャップ移動方向に移動するスライダとを有し、前記キャップに対するキャッピング動作において、前記スライダを前記流体噴射ヘッドに向けて移動させることで、前記スライダに前記バネ部材を介して接続された前記キャップを前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに、前記キャップの当接状態で更に前記バネ部材の付勢力に抗して前記スライダを前記流体噴射ヘッドに向けて移動させて前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧し、
前記Q個のキャップのそれぞれは、該キャップに対するキャッピング動作が完了した状態において、前記キャップ移動手段により互いに等しい付勢力でもって前記流体噴射ヘッドに押圧される請求項1乃至3のいずれかに記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記Q個のキャップの全てについてキャッピング動作が完了した状態において、前記Q個のキャップそれぞれに接続された前記バネ部材の長さは互いに等しい請求項4記載の流体噴射装置。
【請求項6】
ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して前記流体噴射ヘッドから離間及び前記流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、前記流体噴射ヘッドへの当接状態において前記ノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群とを備えた流体噴射装置の制御方法であって、
前記流体噴射ヘッドから離間している前記キャップを前記キャップ移動方向に前記流体噴射ヘッドへ向けて移動させて前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに前記キャップの当接状態で更に前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、駆動源から供給される駆動力により前記Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動工程を備え、
前記Q個のキャップは、前記ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、前記ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、
キャッピング動作において前記キャップが前記流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、前記キャップの当接タイミングとしたとき、
前記キャップ移動工程では、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで前記流体噴射ヘッドへ当接させる一方、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させることを特徴とする流体噴射装置の制御方法。
【請求項1】
ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、
キャップ移動方向に移動して前記流体噴射ヘッドから離間及び前記流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、前記流体噴射ヘッドへの当接状態において前記ノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群と、
前記流体噴射ヘッドから離間している前記キャップを前記キャップ移動方向に前記流体噴射ヘッドへ向けて移動させて前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに前記キャップの当接状態で更に前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、前記Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動手段と、
前記Q個のキャップを移動させるための駆動力を前記キャップ移動手段に供給する駆動源と
を備え、
前記Q個のキャップは、前記ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、前記ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、
キャッピング動作において前記キャップが前記流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、前記キャップの当接タイミングとしたとき、
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで前記流体噴射ヘッドへ当接させる一方、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に最も近いキャップを最も早い当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させる請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記キャップ移動手段は、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記対称軸に近い前記キャップほど早い当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させる請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ移動手段は、前記Q個のキャップそれぞれに対して、その一方端部が前記流体噴射ヘッドの逆側から該キャップに接続されたバネ部材と、該バネ部材の他方端部に接続されるとともに前記駆動源の駆動力により前記キャップ移動方向に移動するスライダとを有し、前記キャップに対するキャッピング動作において、前記スライダを前記流体噴射ヘッドに向けて移動させることで、前記スライダに前記バネ部材を介して接続された前記キャップを前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに、前記キャップの当接状態で更に前記バネ部材の付勢力に抗して前記スライダを前記流体噴射ヘッドに向けて移動させて前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧し、
前記Q個のキャップのそれぞれは、該キャップに対するキャッピング動作が完了した状態において、前記キャップ移動手段により互いに等しい付勢力でもって前記流体噴射ヘッドに押圧される請求項1乃至3のいずれかに記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記Q個のキャップの全てについてキャッピング動作が完了した状態において、前記Q個のキャップそれぞれに接続された前記バネ部材の長さは互いに等しい請求項4記載の流体噴射装置。
【請求項6】
ノズル開口平面でノズル開口が開口して該ノズル開口から流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、キャップ移動方向に移動して前記流体噴射ヘッドから離間及び前記流体噴射ヘッドに当接自在に設けられて、前記流体噴射ヘッドへの当接状態において前記ノズル開口を囲うキャップをQ個(Qは3以上の整数)有するキャップ群とを備えた流体噴射装置の制御方法であって、
前記流体噴射ヘッドから離間している前記キャップを前記キャップ移動方向に前記流体噴射ヘッドへ向けて移動させて前記流体噴射ヘッドに当接させるとともに前記キャップの当接状態で更に前記キャップを前記流体噴射ヘッドに押圧するキャッピング動作を、駆動源から供給される駆動力により前記Q個のキャップそれぞれについて実行するキャップ移動工程を備え、
前記Q個のキャップは、前記ノズル開口平面に垂直な対称軸を挟んで、前記ノズル開口平面に平行な配列方向において対称に配置され、
キャッピング動作において前記キャップが前記流体噴射ヘッドに当接するタイミングを、前記キャップの当接タイミングとしたとき、
前記キャップ移動工程では、前記流体噴射ヘッドから離間している前記Q個のキャップ全てについてキャッピング動作を実行するに際して、前記Q個のキャップのうち2個以上のキャップを互いに異なる当接タイミングで前記流体噴射ヘッドへ当接させる一方、前記Q個のキャップのうち前記対称軸に対して対称関係にあるキャップについては互いに同じ当接タイミングで前記流体噴射ヘッドに当接させることを特徴とする流体噴射装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−272977(P2008−272977A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117257(P2007−117257)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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