説明

流路プレート及びそれを備えたカラムユニット

【課題】流路と流路との間にごく微量の漏れも生じないようにした流路プレートの提供。
【解決手段】 上面に溝31a、31bが形成された第一基板31と、第一基板31の上面に接合された第二基板32とを備え、第二基板32の下面で溝31a、31bの上方を密封することにより中空の流路31a、31bが形成された流路プレート30であって、流路31a、31bは、両端が外部に開放された第一流路31aと、両端が外部に開放された第二流路31bとを有し、第一流路31aと第二流路31bとは並行して走らせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路プレート及びそれを備えたカラムユニットに関し、さらに詳しくは、ガスクロマトグラフ装置にカラムユニットとして用いられる流路プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ装置では、分離カラムを用いて混合物中に存在する様々な化合物と、分離カラム内に存在する固定相(保持相)との吸着の度合いによって、混合物を個々の化合物に分離する。例えば、ヘリウムガス等の不活性ガス(移動相)を定常的に分離カラム内に流し、分析したい混合ガス(混合物)を分離カラム内に導入する。分離カラム内には、化合物を吸着する性質を持つ吸着剤(固定相)が存在する。このため、分離カラム内を混合ガスが通過する際、混合ガス中に存在する様々な化合物はそれぞれの性質により、吸着剤(固定相)と不活性ガス(移動相)との間で吸脱着が繰り返される。このとき、固有の化合物における吸脱着のしやすさにより、分離カラム内を混合ガスが移動する際、吸着性のよい化合物は移動速度が遅く、吸着性のよくない化合物は移動速度が速くなり、固有の化合物における速度差が生じる。その結果、分離カラム出口において、吸着性の悪い化合物から順に排出されていくので、混合ガスをそれぞれ固有の化合物に分離することができる。
【0003】
このような分離カラムには、大別すると管内に吸着剤を詰めて使用する充填カラムと、管の内壁に吸着剤を塗布して使用するキャピラリカラムとがある。近年、クロマトグラフ装置においてキャピラリカラムがよく使用されている。キャピラリカラム構造にすると、流路抵抗が小さく、分離カラム内を通り抜ける時間が短くて済むので、高速なクロマトグラフ分析が可能になる。また、キャピラリカラムの製造方法としては、中空の管状の流路を作製した後、流路内に有機溶媒に溶かした固定相材質を通して、流路の内壁に塗布することが行われている。
【0004】
さらに、近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やマイクロTAS(Total Analysis Systems)と呼ばれる半導体微細加工技術を用いて、微細な加工を施した微細構造体が作製されている。特に、このような半導体微細加工技術は半導体技術を発端としていることから、材料としてシリコンが用いられることが多い。シリコンは、アルカリ溶液を用いたウェットエッチングやプラズマエッチング等により溝構造を基板表面に形成することが容易であり、さらに陽極接合によりガラス基板と接合することで、溝構造の上方を密封した流路構造を容易に形成することができる。
【0005】
また、樹脂材料を用いた微細構造体についても多くの研究がなされており、樹脂材料は、射出成形等により溝構造を基板表面に形成することが可能であり、さらに熱融着等により他部材と貼り合わせを行うことで、流路構造を形成することができる。また、金属も、ウェットエッチング等により溝構造を基板表面に形成することが可能であり、さらに拡散接合により他部材と貼り合わせを行うことで、流路構造を形成することができる(例えば、特許文献1参照)。このように様々な材料において、微細な溝形成の技術や貼り合わせの技術が開発され、微細な流路構造を形成することが可能になっている。
【0006】
一方、クロマトグラフの分離分析は、一般的に流路長さが長い方がより確実に成分分離が可能になる。また、電気泳動等の分析は、複数の試薬を混合し反応を行う際には、流路長さが長い方がより確実に反応を進めることができる。つまり、分離カラム等には、より長い流路を形成することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−241543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一の基板の表面に溝を形成し、一の基板の表面と他の基板の表面との貼り合わせを行うことで、流路を形成する場合を考えると、長い流路をとるには、一の基板の表面において溝と溝との間隔を狭くする必要がある。しかし、溝と溝との間隔を狭くして流路を形成すると、クロマトグラフの分離分析を実行する際に、隣り合う流路と流路との間で流体(混合ガス等)の漏れのリスクを高めることになる。
【0009】
よって、微細な長い流路を形成した場合は、一度検査として流路内に流体を流し、流体の流量と印加圧力との関係を調べることにより、漏れ量を測定する測定方法が実行されている。しかしながら、流路と流路との間にごく微量の漏れが生じている場合、この測定方法では漏れを検出することは難しかった。
またガラスの様な透明な材料を用いた場合は、顕微鏡等により貼り合わせ不具合部分を確認することが可能であるが、金属等の不透明な材料を用いる場合は非破壊検査を行う必要がある。平板状の微小なボイドを検出する非破壊検査としては超音波顕微鏡が代表的な手法である。
図6に超音波顕微鏡での観察像、図3に同一サンプルの断面顕微鏡観察像を示す。図6の結果からは貼り合わせ不良の様子が確認できないが、図3からは基板貼り合わせ界面に数μm以下のわずかな貼り合わせ不良がみられる。このことから超音波顕微鏡のような非破壊検査ではわずかな貼り合わせ不良を確認することが難しいといえる。
そこで、本発明は、流路と流路との間でのごく微量の漏れを検出することができ、その結果、流路と流路との間にごく微量の漏れも生じない流路プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の流路プレートは、上面に溝が形成された第一基板と、前記第一基板の上面に接合された第二基板とを備え、前記第二基板の下面で溝の上方を密封することにより中空の流路が形成された流路プレートであって、前記流路は、両端が外部に開放された第一流路と、両端が外部に開放された第二流路とを有し、前記第一流路と前記第二流路とは並行して走っているようにしている。
【0011】
本発明の流路プレートによれば、第一基板の上面には、第一溝と第二溝とが並行して走っている。そして、第一基板の上面に第二基板の下面が接合されている。よって、第二基板の下面で第一溝の上方が密封されることにより形成された中空の第一流路と、第二基板の下面で第二溝の上方が密封されることにより形成された中空の第二流路とが独立に並行して走ることになる。そして、例えば、第一流路の一方の末端を封止し、第一流路のもう一方の末端から第一流路内にヘリウムガスを導入する。また、第二流路の一方の末端にヘリウムリークディテクタを接続する。これにより、第一基板の上面と第二基板の下面との接合が不充分である箇所があれば、第一流路から第二流路へ一部のヘリウムガスが移動し、その結果、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスが検出される。一方、第一流路と第二流路との間に漏れが生じなければ、第二流路内にはヘリウムガスが全く流れないので、ヘリウムリークディテクタでヘリウムガスが検出されない。すなわち、第一基板の上面と第二基板の下面との接合が充分であることがわかる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の流路プレートによれば、第一流路と第二流路との間でのごく微量の漏れを検出することができる。その結果、第一流路と第二流路との間にごく微量の漏れも生じない流路プレートを作製することができる。
【0013】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の流路プレートにおいて、前記第一基板と前記第二基板とは、同じ種類の金属製のものであり、前記第一基板と前記第二基板とは、拡散接合されているようにしてよい。
また、本発明の流路プレートにおいて、前記第一流路の一端部と前記第二流路の一端部とを流通可能となるように連結する管状の連結部材を備えるようにしてもよい。
本発明の流路プレートによれば、漏れの確認を行った後、第一流路の一端部と第二流路の一端部とを流体が流通可能となるように連結することで、1本の流路構造とすることができる。
【0014】
そして、本発明の流路プレートにおいて、上面に溝が形成された第三基板を備え、前記第一基板の下面で溝の上方を密封することにより中空の流路が形成され、前記流路は、両端が外部に開放された第三流路と、両端が外部に開放された第四流路とを有し、前記第三流路と前記第四流路とは並行して走っており、前記第一流路の一端部と前記第三流路の一端部とを流通可能となるように連結されるとともに、前記第二流路の一端部と前記第四流路の一端部とを流通可能となるように連結されるようにしてもよい。
本発明の流路プレートによれば、両端が外部に側面で開放された第一流路及び第三流路と、両端が外部に側面で開放された第二流路及び第四流路とを形成することができる。よって、例えば、流路プレートにカラムヒータを容易に接続することができるとともに、第一流路と第二流路と第三流路と第四流路との温度を容易に制御することができる。
【0015】
そして、本発明のカラムユニットは、上述したような流路プレートを備えるカラムユニットであって、前記流路内には、保持相が形成されているようにしてもよい。
さらに、本発明のカラムユニットは、前記流路プレートの温度を制御するカラムヒータと、前記流路プレート及び前記カラムヒータの周囲に形成された断熱材とを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施形態に係るカラムユニットの一例の概略構成図。
【図2】図1における流路プレートの概略構成図。
【図3】流路プレートの断面の一例の顕微鏡写真。
【図4】第二実施形態に係る流路プレートの平面図。
【図5】第三実施形態に係る流路プレートの斜視図。
【図6】超音波顕微鏡での観察像。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0018】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係るカラムユニットの一例の概略構成図である。また、図2は、図1における流路プレートの概略構成図である。図2において、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すA−A線の断面図であり、(c)は斜視図である。なお、図2(a)では、第二基板を除去したものを示す。
カラムユニット1は、内部空間が形成される直方体形状の器壁を有する筐体10と、2本の不活性化処理済キャピラリ管20とを有する。
【0019】
筐体10の内部には、流路プレート30と、流路プレート30の温度を制御するカラムヒータ41と、流路プレート30及びカラムヒータ41の周囲に形成された断熱材42とを備える。
流路プレート30は、第一基板31と、第二基板32と、不活性化処理済キャピラリ管(連結部材)33とを備える。
【0020】
第一基板31は、例えば、厚さ0.3mm、前後100mm、左右100mmの平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。第一基板31の上面には、第一溝31aと第二溝31bとが形成されている。
第一溝31aは、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで一直線に伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで一直線に伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで一直線に伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで一直線に伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
【0021】
第二溝31bも、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで一直線に伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで一直線に伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで一直線に伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで一直線に伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
第一溝31aと第二溝31bとは、並行して走っており、第一溝31aと第一溝31aとの間に第二溝31bが形成されており、第二溝31bと第二溝31bとの間に第一溝31aが形成されている。つまり、前方側面から後方側面に向かって、第一溝31aと第二溝31bとが交互に200μm間隔で形成されている。また、右側面から左側面に向かって、第一溝31aと第二溝31bとが交互に200μm間隔で形成されている。
【0022】
第二基板32は、例えば、第一基板31と同じ形状の平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。そして、第二基板32の下面は、第一基板31の上面に接合されている。これにより、第二基板32の下面で第一溝31aの上方を密封することにより中空の第一流路31aが形成されるとともに、第二基板32の下面で第二溝31bの上方を密封することにより中空の第二流路31bが形成されている。
また、第二基板32には、上面の中央部と下面の中央部を連結するように2個の貫通孔32a、32bが形成されている。これにより、第一溝31aの末端部(中央部側)と1個の貫通孔32aとが連結されるとともに、第二溝31bの末端部(中央部側)と1個の貫通孔32bとが連結されている。つまり、第一溝31aの末端部が貫通孔32aを介して外部に上面で開放されるとともに、第二溝31bの末端部が貫通孔32bを介して外部に上面で開放されている。
【0023】
不活性化処理済キャピラリ管33は、管状であり、貫通孔32aと貫通孔32bとの間に流体が流通可能となるように接続されている。つまり、第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33とで、1本の流路構造となっている。
第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33との内壁には、保持相が塗布されており、混合ガス(混合物)が第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33との内部を通過する際には、各化合物の分配係数若しくは溶解度に応じた速度で各化合物が移動していき、化合物が出口端から順次排出されるようになっている。
【0024】
また、筐体10には、2本の不活性化処理済キャピラリ管20を貫通させる開口部が形成されている。これにより、1本の不活性化処理済キャピラリ管20が筐体10の内部の第一流路31aの一端部(前方側面側)と耐熱性接着剤等を用いて接続されるとともに、別の1本の不活性化処理済キャピラリ管20が、筐体31aの内部の第二流路31bの一端部(前方側面側)と、耐熱性接着剤等を用いて接続されている。
【0025】
上記第一基板及び上記第二基板の材質としては、金属、ガラス等が挙げられ、特に塩化第二鉄でエッチング可能な金属やアルカリエッチング可能な金属であれば好ましく、例えば、鉄系合金、純鉄、ステンレス(SUS316L等)、インバー合金、コバール、チタン、アルミニウム等が挙げられる。
上記第一流路、第二流路及び不活性化処理済キャピラリ管の内壁には、保持相が塗布される前に、例えば、耐食性を付加するために、耐食性皮膜としてポリシラザンを焼成してなるSiOを主成分とするものが形成されていることが好ましい。
【0026】
ここで、流路プレート30を作製する作製方法について説明する。流路プレート30を作製する作製方法は、第一基板31の上面に第一溝31aと第二溝31bとを形成する溝形成工程(A)と、第二基板32を第一基板31の上面に接合する接合工程(B)と、第一流路31aと第二流路31bとの間に漏れがあるか否かを検出する確認工程(C)と、第一流路31aと第二流路31bと連結する連結工程(D)と、第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33との内部に保持相を塗布する塗布工程(E)とを含む。
【0027】
(A)溝形成工程
第一基板31の上面に第一溝31aと第二溝31bとを形成する。例えば、ウェットエッチングやめっき等の化学的加工、プレスや切削やブラスト等の機械加工、放電加工等により溝構造を第一基板31の上面に形成する。このとき、第一溝31aと第二溝31bとは、並行して走るように形成する。
また、第二基板32の上面の中央部と下面の中央部を連結するように2個の貫通孔32a、32bを形成する。例えば、プレスや切削やブラスト等の機械加工等により2個の貫通孔32a、32bを第二基板32に形成する。
【0028】
(B)接合工程
第一基板31の上面と第二基板32の下面とを貼り合わせを行うことで、第一流路31aと第二流路31bとを形成する。例えば、拡散接合、陽極接合、熱融着等により第一基板31の上面と第二基板32の下面とを貼り合わせる。
【0029】
(C)確認工程
第一流路31aの一方の末端(前方側面側若しくは中央部側)を封止し、第一流路31aのもう一方の末端から第一流路31a内にガスを例えば200kPaで導入する。また、第二流路31bの一方の末端(前方側面側若しくは中央部側)にガス検出器を接続する。これにより、第一流路31aと第二流路31bとの間に漏れが生じれば、ガス検出器でガスが検出される。すなわち、第一基板31の上面と第二基板32の下面との接合が不充分である箇所があることがわかる。一方、第一流路31aと第二流路31bとの間に漏れが生じなければ、第二流路31b内にはガスが全く流れないので、ガス検出器でガスが検出されない。すなわち、第一基板31の上面と第二基板32の下面との接合が充分であることがわかる。
上記ガスとしては、ヘリウムガス等が挙げられ、ガス検出器として、最小検出感度が1.0×10−5atm/sec以上であるヘリウムリークディテクタ等が挙げられる。
【0030】
(D)連結工程
第一流路31aの一方の末端(前方側面側若しくは中央部側)と第二流路31bの一方の末端(前方側面側若しくは中央部側)とを不活性化処理済キャピラリ管33で耐熱性接着剤等を用いて連結する。
(E)塗布工程
第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33との内壁に有機溶媒に溶かした固定相材質を通して、第一流路31aと第二流路31bと不活性化処理済キャピラリ管33との内壁に塗布する。
【0031】
以上のように、本発明のカラムユニット1によれば、流路プレート30を作製する際に、第一流路31aと第二流路31bとの間にごく微量の漏れを検出することができる。その結果、第一流路31aと第二流路31bとの間にごく微量の漏れも生じないカラムユニット1を作製することができる。
【0032】
<第二実施形態>
図4は、第二実施形態に係る流路プレートの平面図である。なお、第二基板を除去した状態のものを示す。
流路プレート130は、第一基板131と、第二基板とを備える。
【0033】
第一基板131は、例えば、厚さ0.3mm、前後100mm、左右100mmの平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。第一基板131の上面には、第一溝131aと第二溝131bとが形成されている。
第一溝131aは、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。その後、第一溝131aは、中央部でS字形状を描いてUターンすることにより、先ほどの溝と並行して200μm間隔で走るようにして前方側面の左部に戻る。つまり、第一溝131aの両端が外部に前方側面で開放されている。
【0034】
第二溝131bは、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の右部から後方側面に向かって少し伸びた後、左側面に向かって第一溝131aの手前まで伸びて、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びて、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。その後、第二溝131bは、中央部でS字形状を描いてUターンすることにより、先ほどの溝と並行して200μm間隔で走るようにして前方側面の右部に戻る。つまり、第二溝131bの両端が外部に前方側面で開放されている。
第一溝131aと第二溝131bとは、並行して走っており、前方側面から後方側面に向かって、第一溝131aと第一溝131aと第二溝131bと第二溝131bとがこの順番を繰り返すように形成されている。また、右側面から左側面に向かって、第一溝131aと第一溝131aと第二溝131bと第二溝131bとがこの順番を繰り返すように形成されている。
【0035】
第二基板は、例えば、第一基板131と同じ形状の平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。そして、第二基板の下面は、第一基板131の上面に接合されている。これにより、第二基板の下面で第一溝131aの上方を密封することにより中空の第一流路131aが形成されるとともに、第二基板132の下面で第二溝131bの上方を密封することにより中空の第二流路131bが形成される。
【0036】
以上のように、本発明の流路プレート130によれば、流路プレート130を作製する際に第一実施形態と同様な確認工程を実行すれば、第一流路131aと第二流路131bとの間でのごく微量の漏れを検出することができる。その結果、第一流路131aと第二流路131bとの間にごく微量の漏れも生じない流路プレート130を作製することができる。また、両端が外部に側面で開放された第一流路131aと第二流路131bとを形成しているので、流路プレート130にカラムヒータを容易に接続することができるとともに、第一流路131aと第二流路131bとの温度を容易に制御することができる。
【0037】
<第三実施形態>
図5は、第三実施形態に係る流路プレートの斜視図である。
流路プレート230は、第一基板231と、第二基板232と、第三基板233とを備える。
【0038】
第一基板231は、例えば、厚さ0.3mm、前後100mm、左右100mmの平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。第一基板231の上面には、第一溝231aと第二溝231bとが形成されている。
第一溝231aは、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
また、第一基板231の中央部には、第一溝231aが下面に突き抜けるように貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0039】
第二溝231bも、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
また、第一基板231の中央部には、第二溝231bが下面に突き抜けるように貫通孔(図示せず)が形成されている。
第一溝231aと第二溝231bとは、並行して走っており、第一溝231aと第一溝231aとの間に第二溝231bが形成されており、第二溝231bと第二溝231bとの間に第一溝231aが形成されている。つまり、前方側面から後方側面に向かって、第一溝231aと第二溝231bとが交互に200μm間隔で形成されている。また、右側面から左側面に向かって、第一溝231aと第二溝231bとが交互に200μm間隔で形成されている。
【0040】
第二基板232は、例えば、第一基板231と同じ形状の平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。そして、第二基板232の下面は、第一基板231の上面に接合されている。これにより、第二基板232の下面で第一溝231aの上方を密封することにより中空の第一流路231aが形成されるとともに、第二基板232の下面で第二溝231bの上方を密封することにより中空の第二流路231bが形成されている。
【0041】
第三基板233は、例えば、厚さ0.3mm、前後100mm、左右100mmの平板形状であり、上面と下面と左側面と右側面と前方側面と後方側面とを有する。第三基板233の上面には、第三溝233aと第四溝233bとが形成されている。
第三溝233aは、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
【0042】
第四溝233bも、例えば、幅200μm、深さ100μmの溝であり、前方側面の左部から後方側面に向かって後方側面の手前まで伸びた後、右側面に向かって右側面の手前まで伸びて、さらに前方側面に向かって前方側面の手前まで伸びて、そして左側面に向かって先ほどの溝の手前まで伸びるようにして、中央部に向かう渦巻状に形成されている。
第三溝233aと第四溝233bとは、並行して走っており、第三溝233aと第三溝233aとの間に第四溝233bが形成されており、第四溝233bと第四溝233bとの間に第三溝233aが形成されている。つまり、前方側面から後方側面に向かって、第三溝233aと第四溝233bとが交互に200μm間隔で形成されている。また、右側面から左側面に向かって、第三溝233aと第四溝233bとが交互に200μm間隔で形成されている。
【0043】
そして、第三基板233の上面は、第一基板231の下面に接合されている。これにより、第一基板231下面で第三溝233aの上方を密封することにより中空の第三流路233aが形成されるとともに、第一基板231下面で第四溝233bの上方を密封することにより中空の第四流路233bが形成されている。
このとき、第一溝231aの末端部(中央部側)と第三溝233aの末端部(中央部側)とが貫通孔(図示せず)を介して連結されるとともに、第二溝231bの末端部(中央部側)と第四溝233bの末端部(中央部側)とが貫通孔(図示せず)を介して連結されている。そして、第一溝231aの末端部(前方側面側)と第三溝233aの末端部(前方側面側)とが外部に前方側面で開放されるとともに、第二溝231bの末端部(前方側面側)と第四溝233bの末端部(前方側面側)とが外部に前方側面で開放されている。
【0044】
以上のように、本発明の流路プレート230によれば、流路プレート230を作製する際に第一実施形態と同様な確認工程を実行すれば、第一流路231aと第二流路231bとの間でのごく微量の漏れを検出することができる。また、第三流路233aと第四流路233bとの間でのごく微量の漏れを検出することができる。その結果、第一流路231aと第二流路231bとの間や第三流路233aと第四流路233bとの間にごく微量の漏れも生じない流路プレート230を作製することができる。また、両端が外部に側面で開放された流路231a、231b、233a、233bを形成しているので、流路プレート230にカラムヒータを容易に接続することができるとともに、流路231a〜233bの温度を容易に制御することができる。
<他の実施形態>
上述したような第一実施形態では、第一流路31aの中央部側末端と第二流路31bの中央部側末端とを連結するために、不活性化処理済キャピラリ管33を用いる構成としたが、第一流路31aの中央部側末端と第二流路31bの中央部側末端に相当する位置に両端を持つ溝が形成された第三基板を貼り合わせるような構成としてもよい。これにより、平板構造で1本の流路を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ガスクロマトグラフ装置のカラムユニット等に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
30 流路プレート
31 第一基板
31a 第一溝(第一流路)
31b 第二溝(第二流路)
32 第二基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に溝が形成された第一基板と、
前記第一基板の上面に接合された第二基板とを備え、
前記第二基板の下面で溝の上方を密封することにより中空の流路が形成された流路プレートであって、
前記流路は、両端が外部に開放された第一流路と、両端が外部に開放された第二流路とを有し、
前記第一流路と前記第二流路とは並行して走っていることを特徴とする流路プレート。
【請求項2】
前記第一基板と前記第二基板とは、同じ種類の金属製のものであり、
前記第一基板と前記第二基板とは、拡散接合されていることを特徴とする請求項1に記載の流路プレート。
【請求項3】
前記第一流路の一端部と前記第二流路の一端部とを流通可能となるように連結する管状の連結部材を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流路プレート。
【請求項4】
上面に溝が形成された第三基板を備え、
前記第一基板の下面で溝の上方を密封することにより中空の流路が形成され、
前記流路は、両端が外部に開放された第三流路と、両端が外部に開放された第四流路とを有し、
前記第三流路と前記第四流路とは並行して走っており、
前記第一流路の一端部と前記第三流路の一端部とを流通可能となるように連結されるとともに、前記第二流路の一端部と前記第四流路の一端部とを流通可能となるように連結されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の流路プレート。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の流路プレートを備えるカラムユニットであって、
前記流路内には、保持相が形成されていることを特徴とするカラムユニット。
【請求項6】
前記流路プレートの温度を制御するカラムヒータと、
前記流路プレート及び前記カラムヒータの周囲に形成された断熱材とを備えることを特徴とする請求項5に記載のカラムユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88182(P2013−88182A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226987(P2011−226987)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムに係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)