流路切り替えバルブ
【課題】 配管作業やメンテナンスが容易に行なえる流路切り替えバルブを提供すること。
【解決手段】 少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、を備えた流路切り替えバルブであって、前記ロータが、第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、を設けたロータである流路切り替えバルブにより、前記課題を解決した。
【解決手段】 少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、を備えた流路切り替えバルブであって、前記ロータが、第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、を設けたロータである流路切り替えバルブにより、前記課題を解決した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の流路を切り替える流路切り替えバルブに関するものである。特に本発明の流路切り替えバルブは、液体クロマトグラフの試料注入装置やカラムの切り替え装置として使用可能である。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフにおいて、高圧下で流路を切り替えるバルブが種々の用途に使用されている。第一の用途として、試料注入装置において流路切り替えバルブが使用されている。図1および図2にその構成を示す。この場合、流路切り替えバルブ30は60度間隔で3ヶ所設けられた溝38を有するロータ37と、6つの流路と接続可能なステータ31で構成される。試料ロード工程(状態1)では、溶離液12は直接分析カラム60に流れ、試料50は試料計量ループ40に保持される。流路切り替えバルブ30の状態を、試料ロード工程(状態1)から試料注入工程(状態2)に切り替えると、試料計量ループ40に保持された試料は溶離液12により押し出されることで分析カラム60に導入され、分析が行なわれる。
【0003】
第二の用途として、希薄試料の濃縮や夾雑物の排除のために使用する前処理カラムを切り替えることを目的として流路切り替えバルブが使用されている。図3および図4にその構成を示す。この場合、流路切り替えバルブ30は60度間隔で3ヶ所設けられた溝38を有するロータ37と、6つの流路と接続可能なステータ31で構成される。前処理工程(状態1)では、前処理液11が試料を保持する前処理カラム100に流れることで試料の濃縮や夾雑物の排除が行なわれ、溶離液12は直接分析カラム60に流れる。流路切り替えバルブ30の状態を、前処理工程(状態1)から分析工程(状態2)に切り替えると、前処理カラム100に保持された試料成分は溶離液12により押し出されることで分析カラム60に導入され、分析が行なわれる。
【0004】
図1から4で用いる、従来の流路切り替えバルブ30は、図2および図4に示すように、ステータ31およびロータ37が形成する内部流路の構成により、流路の接続口は片側面に集約される構造になる。そのため、流路切り替えバルブ30をカラムオーブン120に設置する場合は、全ての流路の接続口がカラムオーブン120槽内に位置する(図15b参照)。よって、流路切り替えバルブ30において流路接続配管を変更する場合、一方向から(図15bの場合はカラムオーブン内側から)しか作業を行なうことができない。また、従来の流路切り替えバルブ30は、消耗品であるロータ37の交換は配管接続側からしか行なうことができない。そのため、図15bに示すようにカラムオーブン120に設置されている場合は、カラムオーブン120のドアを開け内部から作業を行なう必要がある。このように、従来の流路切り替えバルブ30はメンテナンスを行なう際、不便が伴うことが多かった。
【0005】
前記課題を解決する流路切り替えバルブとして、試料計量ループを内蔵するロータの両側面を2つのステータ(保持部)で挟んで保持する構造からなる、微量試料注入装置が開示されている(特許文献1および2参照)。しかしながら、前記注入装置は、ロータ内部に設けられた貫通孔に試料を満たしてキャピラリーカラムなどに導入する構造であるため、試料量がロータの大きさに依存し、また、試料も数nL程度しか導入することができない。さらに、送液溶媒の出口側の流路は二つしか設けられていないため、一般的な試料計量ループやカラムの切り替え目的で使用することを想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3763012号公報
【特許文献2】特公平6−023731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一般的な試料計量ループやカラムを切り替える目的で使用可能な流路切り替えバルブであって、カラムオーブンなどに設置した際、配管作業やメンテナンスが容易に行なえる流路切り替えバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、流路の接続口を従来の片側から、対面に分散配置するためのステータおよびロータの構造を検討し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち第一の発明は、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブである。
【0010】
また第二の発明は、第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔が3つである、第一の発明に記載の流路切り替えバルブである。
【0011】
また第三の発明は、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔A1、A2、A3とする)を設けた第1のステータと、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔B1、B2、B3とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3、A1とA2、B2とB3、A3とB1とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを(a+b+c)度回転することにより、
(1)貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A1とA2、B2とB3、A3とB1とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ(ただし、(2a+2b+c)は360より小さく、(a+b+c)は180以下である)である。
【0012】
また第四の発明は、aとbとが同じ値である、第三の発明に記載の流路切り替えバルブである。
【0013】
また第五の発明は、
0度、60度および180度の位置に貫通孔(以下貫通孔A4、A5、A6とする)を設けた第1のステータと、
120度、240度および300度の位置に貫通孔(以下貫通孔B4、B5、B6とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5、A4とA5、B5とB6、A6とB4とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを60度回転することにより、
(1)貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A4とA5、B5とB6、A6とB4とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブである。
【0014】
また、第六の発明は、
第一から第五の発明のいずれかに記載の流路切り替えバルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料を分離する分析カラムと、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた、液体クロマトグラフである。
【0015】
また、第七の発明は、
試料注入バルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料の濃縮や夾雑物の排除を行なう前処理カラムと、
前処理カラムから導入された試料を分離する分析カラムと、
前処理カラムに導入する前処理液が流れる流路と前処理カラムとを接続可能で、試料を溶出させる溶離液が流れる流路と前処理カラムと分離カラムとを接続可能な流路切り替え手段と、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた液体クロマトグラフであって、
試料注入バルブおよび/または流路切り替え手段が第一から第五の発明のいずれかに記載の流路切り替えバルブである、液体クロマトグラフである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータであることを特徴としている。前記第1のステータおよび第2のステータに設ける貫通孔は少なくとも3つあればよいが、試料計量ループやカラムを切り替える目的で使用する流路切り替えバルブとして従来から6方バルブまたは8方バルブが多く用いられることから、前記貫通孔は3つまたは4つが好ましく、特に3つが好ましい。
【0018】
以降、本発明の流路切り替えバルブのうち、前記第1のステータおよび第2のステータに貫通口を3つ設けた場合について、より詳細に説明する。
【0019】
本発明の流路切り替えバルブの一態様を図5に示す。図5の流路切り替えバルブ30では、ロータ37を180度回転することにより、第1の流路状態(図5a)と第2の流路状態(図5b)とを切り替える。図5の流路切り替えバルブは、
円周上の0度の位置に貫通孔34cを、60度の位置(基準の位置(0度の位置)から右回りに60度の位置、以下同様)に貫通孔34bを、120度の位置に貫通孔34aを設けた第1のステータ33と、
回転可能なロータ37と、
円周上の0度の位置に貫通孔36cを、60度の位置に貫通孔36bを、120度の位置に貫通孔36aを設けた第2のステータ35と、
を備えている。また、ロータ37は、
ロータ上面から下面まで貫通する貫通孔39d・39e・39fと、
ロータ37上面から中間位置までの流路39aと、
前記中間位置にある流路39aの先から円周に沿って水平方向に掘り進んだ溝38bと、
前記掘り進んだ溝38bの先から下方にロータの下面まで達する流路39cと、
貫通孔34bと貫通孔34cとを連通させるためにロータ37上面に設けられた溝38aと、
貫通孔36aと貫通孔36bとを連通させるためにロータ37下面に設けられた溝38cと、
を設けている。なお、本説明で、ロータ上面、ロータ下面と記載しているが、当該記載は図5を説明するためのものであり、ステータおよびロータの構成が図5とは逆の構成となっても、本発明の流路切り替えバルブに含まれる。
【0020】
図5の流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態(図5a)では、ロータ37に設けた貫通孔39fが0度の位置に、貫通孔39eが60度の位置に、貫通孔39dが120度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0021】
第1の流路状態からロータ37を180度回転すると、第2の流路状態(図5b)となる。第2の流路状態(図5b)では、流路39cが0度の位置に、流路39aが120度の位置に、溝38aが0度から60度の位置に、溝38bが0度から120度の位置に、溝38cが60度から120度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36c、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと貫通孔36b、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0022】
図5の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の一例を図6に示す。図6の方法では、溝38bの箇所で上下2分割した部材37a・37bを作製後、互いに密着させることでロータ37を作製している。部材37aの下面には溝38baを、部材37bの上面には溝38bbをそれぞれ設けており、互いの溝を合わせることで溝38bを形成する。なお、部材37aと部材37bを密着させるときには、貫通孔39d・39e・39fがそれぞれ上下に連通するように位置決めすればよい。
【0023】
図5の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の別の例を図7に示す。図7の方法では、厚めの円板状ディスク2枚(図7の(2)および(4))と薄い円板状のスペーサ3枚(図7の(1)、(3)および(5))とを組み合わせることでロータ37を作製している。第1のステータ33に設けた貫通孔34cおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36cはともに円周上の0度の位置にあり、第1のステータ33に設けた貫通孔34bおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36bはともに円周上の60度の位置にあり、第1のステータ33に設けた貫通孔34aおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36aはともに円周上の120度の位置にある。また、前記二つのステータ33・35に設けた貫通孔34・36およびロータ37を構成するディスクおよびスペーサに設けた貫通孔は円板面に対し垂直である。
【0024】
図7の方法でロータ37を作製した場合、第1の流路状態では、ロータ37は下記(1)から(5)の順にスペーサまたはディスクを重ね合わせた構造体、または同等の構造を有する構造体となる。
(1)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の180度の位置にある貫通孔から210度の位置にある貫通孔までの間は溝38aを設けている。なお、前記溝は第1のステータ33の下面、および(2)ディスクに接している。
(2)ディスク:円周上の0度、60度、120度、300度の位置に貫通口を設けている。
(3)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の180度の位置にある貫通孔から240度の位置にある貫通孔を経由し300度の位置にある貫通孔までの間は溝38bを設けている。
(4)ディスク:円周上の0度、60度、120度、180度の位置に貫通口を設けている。
(5)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の240度の位置にある貫通孔から300度の位置にある貫通孔までの間は溝38cを設けている。なお、前記溝は第2のステータ35の上面、および(4)ディスクに接している。
【0025】
図7のロータ37の作製方法において、前記(2)および(4)のディスクは円板面に垂直な貫通孔を開けるのみでよい。また、前記(1)、(3)および(5)のスペーサは円板面に垂直な貫通孔を開け、さらに必要な領域をくり抜いて溝を設けるだけでよい。そのため、図7のロータ37の作製方法により、ロータ37の製造工程を単純化することができる。また、図7に示すロータ37の作製方法は、ロータ部材の表面に特定の溝を設ける工程は不要である。
【0026】
図5の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図8に示す。図8において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34cは試料50の導入口となり、貫通孔34bは試料50の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは試料計量ループ40への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0027】
図8において試料ロード工程(状態1、図8a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた貫通孔39d、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、試料計量ループ40、ステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた貫通孔39e、第1のステータ33に設けた流路34bを通過することで、試料計量ループ40内に試料50が保持される。
【0028】
試料ロード工程(状態1)からロータ37を180度回転することで、分析工程(状態2、図8b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた流路34a、ロータ37に設けた流路39a−溝38b−流路39c、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、試料計量ループ40、ステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた溝38c、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、試料計量ループ40に満たされた試料50が分析カラム60へ導入される。一方、試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた溝38a、第1のステータ33に設けた貫通孔34aを通過し、廃液80へ流れる。
【0029】
図5の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図9に示す。図9において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、流路34cは前処理液11の導入口となり、流路34bは前処理液11の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは前処理カラム100への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0030】
図9において前処理工程(状態1、図9a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた貫通孔39d、ステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、前処理液11は第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた流路36b、ロータ37のに設けた貫通孔39e、第1のステータ33に設けた貫通孔34bを通過し、廃液80へ流れる。前処理工程(状態1)において、前処理液11が流れる流路に試料を一定量注入すると、試料は前処理カラム100に保持され、さらに前処理液11を数分間流すことで、試料の濃縮や夾雑物の排除などが行なわれる。
【0031】
前処理工程(状態1)からロータ37を180度回転することで、分析工程(状態2、図9b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた流路39a−溝38b−流路39c、第2のステータ35に設けた流路36c、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた溝38c、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、前処理カラム100に保持された試料が分析カラム60に導入される。一方、前処理液11は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた溝38a、第1のステータに設けた貫通孔34bを通過し、廃液80へ流れる。
【0032】
本発明の流路切り替えバルブの第二の態様を、図10bに示す。図10bの流路切り替えバルブは、
第一のステータ33が円周上の0度の位置(図10b中のCの位置)に貫通孔34cを、a度の位置(図10b中のBの位置)に貫通孔34bを、(a+b)度の位置(図10(b)中のAの位置)に貫通孔34aを設けたステータであり、
第二のステータ35が円周上の0度の位置に貫通孔36cを、a度の位置に貫通孔36bを、(a+b)度の位置に貫通孔36aを設けたステータである、
ほかは図5(図10a)の流路切り替えバルブと同様の構成である(ただし、(2a+2b+c+d)は360であり、(a+b+c)は180以下である)。
【0033】
図10bの流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態では、ロータに設けた貫通孔39fが0度の位置に、貫通孔39eがa度の位置に、貫通孔39dが(a+b)度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。第1の流路状態からロータを逆方向(左回り)に(a+b+c)度回転すると、第2の流路状態となる。第2の流路状態では、流路39cが0度の位置に、流路39aが(a+b)度の位置に、溝38aが0度からa度の位置に、溝38bが0度から(a+b)度の位置に、溝38cがa度から(a+b)度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36c、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと貫通孔36b、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0034】
本発明の流路切り替えバルブの第三の態様を、図10cに示す。図10cの流路切り替えバルブは、前述した図10bの切り替えバルブと比較しaおよびbを小さく(角度を狭く)している。図10cの流路切り替えバルブは、図10aおよび図10bの流路切り替えバルブと比較し、第1の流路状態から第2の流路状態に切り替えるときの回転角度((a+b+c)度)が小さいため、より迅速に流路状態を切り替えることができる点で好ましい。なお、a、bおよびcの値はステータおよびロータに設けた貫通孔同士または貫通孔と溝とが接触せず、かつ外部配管との接続に支障ない範囲で小さくすることができる。
【0035】
また、図10bおよび図10cの流路切り替えバルブにおいて、aとbが同じ値であると、ステータおよびロータを作製する際加工が容易であり、外部配管と接続する際作業が容易であるため、好ましい。
【0036】
本発明の流路切り替えバルブの第四の態様を図11に示す。図11の流路切り替えバルブ30では、ロータ37を60度回転することにより、第1の流路状態(図11a)と第2の流路状態(図11b)とを切り替える。図11の流路切り替えバルブは、
円周上の0度の位置に貫通孔34cを、60度の位置に貫通孔34bを、180度の位置に貫通孔34aを設けた第1のステータ33と、
回転可能なロータ37と、
円周上の120度の位置に貫通孔36bを、240度の位置に貫通孔36aを、300度の位置に貫通孔36cを設けた第2のステータ35と、
を備えている。また、ロータ37は、第1の流路状態(図11a)において、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、をそれぞれ連通させるための、
ロータ37上面から下面まで貫通する6本の貫通孔39a・39b・39c・39d・39e・39fと、
ロータ上面に設けられた溝38a・38b・38cと、
が設けられている。なお、本説明で、ロータ上面、ロータ下面と記載しているが、当該記載は図11を説明するためのものであり、ステータおよびロータの構成が図11とは逆の構成となっても、本発明の流路切り替えバルブに含まれる。
【0037】
図11の流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態(図11a)では、ロータに設けた貫通孔39cが0度の位置に、貫通孔39bが60度の位置に、貫通孔39aが120度の位置に、貫通孔39fが180度の位置に、貫通孔39eが240度の位置に、貫通孔39dが300度の位置に、溝38aが60度から120度の位置に、溝38cが180度から240度の位置に、溝38bが300度から0度(360度)の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a,貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0038】
第1の流路状態からロータ37を右回りに60度回転すると、第2の流路状態(図11b)となる。第2の流路状態(図11b)では、貫通孔39dが0度の位置に、貫通孔39cが60度の位置に、貫通孔39bが120度の位置に、貫通孔39aが180度の位置に、貫通孔39fが240度の位置に、貫通孔39eが300度の位置に、溝38bが0度から60度の位置に、溝38aが120度から180度の位置に、溝38cが240度から300度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36b、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと36c、とがそれぞれ連通した状態となっている。
【0039】
図11の流路切り替えバルブで用いるロータ37は、構造が簡単であるため、例えば、樹脂製ディスクの円周上に60度の間隔で貫通孔を6箇所あけ、隣り合う貫通口(例えば、0度の位置にある貫通孔と60度の位置にある貫通孔、120度の位置にある貫通孔と180度の位置にある貫通孔、240度の位置にある貫通孔と300度の位置にある貫通孔)を結ぶ三つの溝を前記ディスクの片方の表面に設けることで、比較的容易に作製することができる。
【0040】
図11の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の別の例を図12に示す。
図12の方法では、厚めの円板状ディスク1枚(図11の(2))と薄い円板状のスペーサ1枚(図11の(1))とを組み合わせて、ロータ37を作製している。第1のステータ33に設けた貫通孔34cは0度の位置に、貫通孔34bは60度の位置に、貫通孔34aは180度の位置に、それぞれあり、第2のステータ35に設けた貫通孔36bは120度の位置に、貫通孔36aは240度の位置に、貫通孔36は300度の位置に、それぞれある。また、第1のステータ33、第2のステータ35およびロータ37内の貫通孔34・36・39は円板面に対し垂直である。
【0041】
図12の方法でロータ37を作製した場合、第1の流路状態では、ロータ37は下記(1)、(2)の順にスペーサまたはディスクを重ね合わせた構造体、または同等の構造を有する構造体となる。
(1)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の60度の位置にある貫通孔から120度の位置にある貫通孔までの間に溝38aを、円周上の180度の位置にある貫通孔から240度の位置にある貫通孔までの間に溝38cを、円周上の300度の位置にある貫通孔から0度(360度)の位置にある貫通孔までの間に溝38bを、それぞれ設けている。なお、前記溝は第1のステータ33の下面、および(2)ディスクに接している。
(2)ディスク:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けている。
【0042】
図12のロータ37の作製方法において、前記(2)のディスクは円板面に垂直な貫通孔を開けるのみでよい。また、前記(1)のスペーサは円板面に垂直な貫通孔を開け、さらに必要な領域をくり抜いて溝を設けるだけでよい。そのため、図12の方法でロータ37を作製する場合、ロータ部材の表面に特定の溝を設ける工程は不要となる。
【0043】
図11の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図13に示す。図13において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34bは試料50の導入口となり、貫通孔34cは試料50の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは試料計量ループ40への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0044】
図13において、試料ロード工程(状態1、図13a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38c−貫通孔39e、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、試料50は第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39a、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、試料計量ループ40、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39d−溝38b、第1のステータ33に設けた流路34cを通過し、試料計量ループ40内に試料50が保持される。
【0045】
試料ロード工程(状態1)からロータ37を右回りに60度回転することで、分析工程(状態2、図13b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39b、第2のステータ35に設けた流路36b、試料計量ループ40、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39e−溝38c−貫通孔39f、第2のステータ35に設けた流路36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、試料計量ループ40に満たされた試料50は分析カラム60に導入される。一方試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38b、
第1のステータ33に設けた流路34cを通って、廃液80へ流れる。
【0046】
図11の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図14に示す。図14において、第一のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34bは前処理液11の導入口となり、貫通孔34cは前処理液11の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは前処理カラム100との接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0047】
図14において、前処理工程(状態1、図14a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38c−貫通孔39e、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、前処理液11は第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39a、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39d−溝38b、第1のステータ33に設けた貫通孔34cを通過し、廃液80へ流れる。前処理工程(状態1)において、前処理液11の流路に試料を一定量注入すると、試料は前処理カラム100に保持され、さらに前処理液11を数分間流すことで試料の濃縮や夾雑物の排除などが行なわれる。
【0048】
前処理工程(状態1)からロータ37を右回りに60度回転することで、分析工程(状態2、図14b)に切り替えることができる。分析状態(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39b、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39e−溝38c−貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、前処理カラム100に保持された試料成分が分析カラム60に導入される。一方、前処理液11は、第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38b、第1のステータ33に設けた貫通孔34cを通過し、廃液80へ流れる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の流路切り替えバルブは、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブである。
【0050】
本発明のバルブを液体クロマトグラフ用流路切り替えバルブとして用いることで、従来の流路切り替えバルブと同様な機能および性能を維持したまま、実際に分離に寄与する配管類とその他の導入配管とを対面に分散配置することが可能となる。特に、試料注入手段における試料注入バルブとして本発明のバルブを使用する場合は、試料の入口配管、出口配管および溶離液の入口配管と、分析カラムの配管および試料計量ループ配管とを対面に配置することが可能となる。また、前処理カラムの切り替えバルブとして本発明のバルブを使用する場合は、試料および/または前処理液の入口配管、出口配管および溶離液の入口配管と、分析カラムの配管および前処理カラムとを対面に配置することが可能となる。
【0051】
カラムオーブン等に本発明のバルブを設置する場合は、分離に直接寄与する配管類のみをカラムオーブン槽内に配置し、その他の配管はカラムオーブンの槽外に配置することが可能となる。また、消耗品であるロータの交換も、従来はカラムオーブンのドアを開け内部から作業を行なうしかなかったが、本発明のバルブではドアを開けなくても、カラムオーブンの槽外から作業が行なえる(図15a参照)ため、カラムオーブンの開閉を最小限にできる。そのため、ゲル排除クロマトグラフィーなど温度の影響を受け易い液体クロマトグラフに対し本発明のバルブを適用すると、カラムの温度変化が少なく分析精度に優れた液体クロマトグラフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける試料注入装置90に使用した場合の、液体クロマトグラフ全体の流路図である。図1aは試料ロード工程(状態1)、図1bは試料注入工程(状態2)での流路図を示す。
【図2】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける試料注入装置90に使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図2aは試料ロード工程(状態1)、図2bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図3】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、液体クロマトグラフ全体の流路図である。図3aは前処理工程(状態1)、図3bは分析工程(状態2)での流路図を示す。
【図4】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図4aは前処理工程(状態1)、図4bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図5】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の回転による流路の変化を示した図である。図5aは第1の流路状態、図5bは第2の流路状態(図5aからロータ37を180度回転させた状態)の図を示す。
【図6】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の作製方法の一態様を示した図である。本図では溝38bの位置で上下2分割した部材37a・37bを密着させてロータ37を作製している。
【図7】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の作製方法の別の態様を示した図である。本図では2枚の円板状ディスク(2)・(4)と3枚の円板状スペーサ(1)・(3)・(5)とを組み合わせてロータ37を作製している。また、第1および第2の流路状態における溝38の位置も示している。
【図8】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図8aは試料ロード工程(状態1)、図8bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図9】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図9aは前処理工程(状態1)、図9bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図10】本発明の流路切り替えバルブ30の第一から第三の態様の上面図を示した図である。図10aが第一の態様を、図10bが第二の態様を、図10cが第三の態様をそれぞれ示す。
【図11】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様における、ロータ37の回転による流路の変化を示した図である。図11aは第1の流路状態、図11bは第2の流路状態(図5aからロータ37を右回りに60度回転させた状態)の図を示す。
【図12】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様における、ロータ37の作製方法の一態様を示した図である。本図では1枚の円板状のディスク(2)と1枚の円板状のスペーサ(1)とを組み合わせてロータ37を作製している。また、第1および第2の流路状態における溝38の位置も示している。
【図13】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図13aは試料ロード工程(状態1)、図13bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図14】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図14aは前処理工程(状態1)、図14bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図15】流路切り替えバルブ30をカラムオーブンに取り付けたときの模式図である。図15aは本発明の流路切り替えバルブを、図15bは従来の流路切り替えバルブをそれぞれ取り付けたときの図である。
【図16】実施例1で使用した液体クロマトグラフ全体の流路図である。図16aは試料ロード工程(状態1)、図16bは試料注入工程(状態2)での流路図を示す。
【図17】実施例1の液体クロマトグラフで得られたクロマトグラムである。図17aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図17bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【図18】実施例1の液体クロマトグラフにおける再現性を示したクロマトグラムである。図18aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図18bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【図19】実施例2で使用した液体クロマトグラフ全体の流路図である。図19aは前処理工程(状態1)、図19bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図20】実施例2の液体クロマトグラフで得られたクロマトグラムである。図20aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図20bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
図5に示す本発明の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置90における試料注入バルブとして使用した。本実施例で使用する液体クロマトグラフ全体の流路図を図16に示す。
【0055】
図16において、分析カラム60および試料注入装置90中の試料計量ループ40はカラムオーブン120内に収容されている。流路切り替えバルブ30中のロータの回転により、試料ロード工程(状態1、図16a)と分析工程(状態2、図16b)とを切り替えることができる。試料計量ループ40は容量31μL用のものを使用した。溶離液12はアセトニトリル/水(40/60)を使用した。分析カラム60は逆相クロマトグラフィーカラムである東ソー社製TSK−GEL ODS−80Ts(粒径:5μm、内径:4.6mm、長さ:150mm)を使用した。溶離液12を毎分0.8mLで送液し、紫外検出器70(波長:280nm)で検出を行なった。試料50は、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチルをそれぞれ0.001%含んだ溶液を使用した。なお、比較のために、従来の流路切り替えバルブとしてレオダイン社製7010を使用し、同様の測定を実施した。
【0056】
結果を図17に示す。図17aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムであり、図17bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムである。表1および2に、各ピークの理論段数および非対称係数を示した。なお、表1および2のうち、P1はp−ヒドロキシ安息香酸メチルを、P2はp−ヒドロキシ安息香酸エチルを、P3はp−ヒドロキシ安息香酸プロピルを、P4はp−ヒドロキシ安息香酸ブチルを、それぞれ示す。図17に示すように、本発明の流路切り替えバルブを使用しても、従来の流路切り替えバルブを使用したときと同等な理論段数、非対称係数が得られた。よって、本発明の流路切り替えバルブ内での不規則な流れなどによる影響がないことを示している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
また、液体クロマトグラフにおける試料注入バルブとして、本発明の流路切り替えバルブを使用したときと、従来の流路切り替えバルブを使用したときとで、結果の再現性に差が生じるか確認した結果を図18に示す。なお、当該再現性試験において、試料は0.001%のp−ヒドロキシ安息香酸メチルを含んだ溶液、測定回数は10回である。図18aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られた代表的なクロマトグラムであり、図18bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られた代表的なクロマトグラムである。表3に、溶出時間およびピーク面積の値を示した。面積値の変動係数(Cv%)は、本発明の流路切り替えバルブを使用したときが0.668、従来の流路切り替えバルブを使用したときが0.771と、ほぼ同等の値を示していた。よって、本発明の流路切り替えバルブを使用しても注入再現性に問題がないことがわかる。
【0059】
【表3】
実施例2
図5に示す本発明の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した。本実施例で使用する液体クロマトグラフ全体の流路図を図19に示す。
【0060】
本実施例では、希薄試料を前処理カラム100に大量に注入して濃縮後、流路切り替えバルブ30を切り替え、溶離液12にて前処理カラム100に保持された試料を分析カラム60に導入し分離を行なう。分析カラム60および前処理カラム100はカラムオーブン120中に収納されている。流路切り替えバルブ30中のロータの回転により、前処理工程(濃縮工程)(状態1、図19a)と分析工程(状態2、図19b)とを切り替えることができる。前処理液(濃縮液)11はアセトニトリル/水(5/95)を使用した。前処理カラム(濃縮カラム)100は逆相クロマトグラフィーカラムである東ソー社製TSK−GEL ODS−120A(粒径:5μm、内径:4.6mm、長さ:10mm)を使用した。前処理液(濃縮液)11は毎分0.4mLで送液した。試料50は実施例1の1/100希釈品を1.78mL注入した。溶離液12の組成および流速、分析カラム60、検出条件は実施例1と同様に実施した。
(1)前処理工程(濃縮工程)(状態1)(前処理カラム(濃縮カラム)に前処理液(濃縮液)が流れる)で、希薄試料50を注入後、前処理液11を5分間流すことで、前処理カラム(濃縮カラム)100に全量を保持させ、試料を濃縮した。
(2)流路切り替えバルブ30中のロータを回転することにより、分析工程(状態2)(前処理カラム(濃縮カラム)100と分析カラム60とが接続)に切り替えて、溶離液12を用いて前処理カラム(濃縮カラム)100に保持された試料成分を分析カラム60に押し出し、分離を行ない、紫外検出器70(波長:280nm)で検出を行なった。なお、比較のために、従来の流路切り替えバルブとしてレオダイン社製7010を使用し、同様の測定を実施した。
【0061】
結果を図20に示す。図20aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラム、図20bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムである。表4および5は、各ピークの理論段数および非対称係数を示した表である。なお、表4および5のうち、P1はp−ヒドロキシ安息香酸メチルを、P2はp−ヒドロキシ安息香酸エチルを、P3はp−ヒドロキシ安息香酸プロピルを、P4はp−ヒドロキシ安息香酸ブチルを、それぞれ示す。図20に示すように、本発明の流路切り替えバルブを使用しても、従来の構造の流路切り替えバルブを使用したときと同等な理論段数、非対称係数が得られた。よって、本発明の流路切り替えバルブ内での不規則な流れなどによる影響がないことを示している。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
表6は、前処理操作を行なわない場合(実施例1)と、前処理操作を行なった場合(実施例2)の各ピーク面積と、両者の比率を示す。なお、表6のうち比率とは前処理操作を行なったときのピーク面積を前処理操作を行なわなかったときのピーク面積で割った値を示す。前処理操作を行なわない場合(実施例1)の注入量は、
(31[μL]×10−3)÷100=3.1×10−4[μg]
である。前処理操作を行なった場合(実施例2)の注入量は、
(1.78[μL]×10−2)÷100=1.78×10−4[μg]
である。したがって、理論上、前処理操作を行なった場合の面積の値は、下式のように濃縮操作を行なわない場合の0.574倍の値を示すはずである。
【0064】
(1.78×10−4[μg])÷(3.1×10−4[μg])=0.574
表4から、各ピークの面積比は、本発明のバルブを使用した場合で0.531から0.574、従来のバルブを使用した場合で0.464から0.567であり、両者とも理論値とほぼ同じ値を示しており、濃縮操作が確実に行なわれていることを明示している。
【0065】
【表6】
【符号の説明】
【0066】
11:前処理液
12:溶離液
21、22:ポンプ
30:流路切り替えバルブ
31、33、35:ステータ
32、34、36:ステータの貫通孔
37:ロータ
38:ロータの溝
39:ロータの貫通孔または流路
40:試料計量ループ
50:試料
60:分離カラム
70:検出器
80:廃液
90:試料注入装置
100:前処理カラム
110:ハンドル
120:カラムオーブン
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の流路を切り替える流路切り替えバルブに関するものである。特に本発明の流路切り替えバルブは、液体クロマトグラフの試料注入装置やカラムの切り替え装置として使用可能である。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフにおいて、高圧下で流路を切り替えるバルブが種々の用途に使用されている。第一の用途として、試料注入装置において流路切り替えバルブが使用されている。図1および図2にその構成を示す。この場合、流路切り替えバルブ30は60度間隔で3ヶ所設けられた溝38を有するロータ37と、6つの流路と接続可能なステータ31で構成される。試料ロード工程(状態1)では、溶離液12は直接分析カラム60に流れ、試料50は試料計量ループ40に保持される。流路切り替えバルブ30の状態を、試料ロード工程(状態1)から試料注入工程(状態2)に切り替えると、試料計量ループ40に保持された試料は溶離液12により押し出されることで分析カラム60に導入され、分析が行なわれる。
【0003】
第二の用途として、希薄試料の濃縮や夾雑物の排除のために使用する前処理カラムを切り替えることを目的として流路切り替えバルブが使用されている。図3および図4にその構成を示す。この場合、流路切り替えバルブ30は60度間隔で3ヶ所設けられた溝38を有するロータ37と、6つの流路と接続可能なステータ31で構成される。前処理工程(状態1)では、前処理液11が試料を保持する前処理カラム100に流れることで試料の濃縮や夾雑物の排除が行なわれ、溶離液12は直接分析カラム60に流れる。流路切り替えバルブ30の状態を、前処理工程(状態1)から分析工程(状態2)に切り替えると、前処理カラム100に保持された試料成分は溶離液12により押し出されることで分析カラム60に導入され、分析が行なわれる。
【0004】
図1から4で用いる、従来の流路切り替えバルブ30は、図2および図4に示すように、ステータ31およびロータ37が形成する内部流路の構成により、流路の接続口は片側面に集約される構造になる。そのため、流路切り替えバルブ30をカラムオーブン120に設置する場合は、全ての流路の接続口がカラムオーブン120槽内に位置する(図15b参照)。よって、流路切り替えバルブ30において流路接続配管を変更する場合、一方向から(図15bの場合はカラムオーブン内側から)しか作業を行なうことができない。また、従来の流路切り替えバルブ30は、消耗品であるロータ37の交換は配管接続側からしか行なうことができない。そのため、図15bに示すようにカラムオーブン120に設置されている場合は、カラムオーブン120のドアを開け内部から作業を行なう必要がある。このように、従来の流路切り替えバルブ30はメンテナンスを行なう際、不便が伴うことが多かった。
【0005】
前記課題を解決する流路切り替えバルブとして、試料計量ループを内蔵するロータの両側面を2つのステータ(保持部)で挟んで保持する構造からなる、微量試料注入装置が開示されている(特許文献1および2参照)。しかしながら、前記注入装置は、ロータ内部に設けられた貫通孔に試料を満たしてキャピラリーカラムなどに導入する構造であるため、試料量がロータの大きさに依存し、また、試料も数nL程度しか導入することができない。さらに、送液溶媒の出口側の流路は二つしか設けられていないため、一般的な試料計量ループやカラムの切り替え目的で使用することを想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3763012号公報
【特許文献2】特公平6−023731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一般的な試料計量ループやカラムを切り替える目的で使用可能な流路切り替えバルブであって、カラムオーブンなどに設置した際、配管作業やメンテナンスが容易に行なえる流路切り替えバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、流路の接続口を従来の片側から、対面に分散配置するためのステータおよびロータの構造を検討し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち第一の発明は、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブである。
【0010】
また第二の発明は、第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔が3つである、第一の発明に記載の流路切り替えバルブである。
【0011】
また第三の発明は、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔A1、A2、A3とする)を設けた第1のステータと、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔B1、B2、B3とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3、A1とA2、B2とB3、A3とB1とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを(a+b+c)度回転することにより、
(1)貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A1とA2、B2とB3、A3とB1とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ(ただし、(2a+2b+c)は360より小さく、(a+b+c)は180以下である)である。
【0012】
また第四の発明は、aとbとが同じ値である、第三の発明に記載の流路切り替えバルブである。
【0013】
また第五の発明は、
0度、60度および180度の位置に貫通孔(以下貫通孔A4、A5、A6とする)を設けた第1のステータと、
120度、240度および300度の位置に貫通孔(以下貫通孔B4、B5、B6とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5、A4とA5、B5とB6、A6とB4とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを60度回転することにより、
(1)貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A4とA5、B5とB6、A6とB4とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブである。
【0014】
また、第六の発明は、
第一から第五の発明のいずれかに記載の流路切り替えバルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料を分離する分析カラムと、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた、液体クロマトグラフである。
【0015】
また、第七の発明は、
試料注入バルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料の濃縮や夾雑物の排除を行なう前処理カラムと、
前処理カラムから導入された試料を分離する分析カラムと、
前処理カラムに導入する前処理液が流れる流路と前処理カラムとを接続可能で、試料を溶出させる溶離液が流れる流路と前処理カラムと分離カラムとを接続可能な流路切り替え手段と、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた液体クロマトグラフであって、
試料注入バルブおよび/または流路切り替え手段が第一から第五の発明のいずれかに記載の流路切り替えバルブである、液体クロマトグラフである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータであることを特徴としている。前記第1のステータおよび第2のステータに設ける貫通孔は少なくとも3つあればよいが、試料計量ループやカラムを切り替える目的で使用する流路切り替えバルブとして従来から6方バルブまたは8方バルブが多く用いられることから、前記貫通孔は3つまたは4つが好ましく、特に3つが好ましい。
【0018】
以降、本発明の流路切り替えバルブのうち、前記第1のステータおよび第2のステータに貫通口を3つ設けた場合について、より詳細に説明する。
【0019】
本発明の流路切り替えバルブの一態様を図5に示す。図5の流路切り替えバルブ30では、ロータ37を180度回転することにより、第1の流路状態(図5a)と第2の流路状態(図5b)とを切り替える。図5の流路切り替えバルブは、
円周上の0度の位置に貫通孔34cを、60度の位置(基準の位置(0度の位置)から右回りに60度の位置、以下同様)に貫通孔34bを、120度の位置に貫通孔34aを設けた第1のステータ33と、
回転可能なロータ37と、
円周上の0度の位置に貫通孔36cを、60度の位置に貫通孔36bを、120度の位置に貫通孔36aを設けた第2のステータ35と、
を備えている。また、ロータ37は、
ロータ上面から下面まで貫通する貫通孔39d・39e・39fと、
ロータ37上面から中間位置までの流路39aと、
前記中間位置にある流路39aの先から円周に沿って水平方向に掘り進んだ溝38bと、
前記掘り進んだ溝38bの先から下方にロータの下面まで達する流路39cと、
貫通孔34bと貫通孔34cとを連通させるためにロータ37上面に設けられた溝38aと、
貫通孔36aと貫通孔36bとを連通させるためにロータ37下面に設けられた溝38cと、
を設けている。なお、本説明で、ロータ上面、ロータ下面と記載しているが、当該記載は図5を説明するためのものであり、ステータおよびロータの構成が図5とは逆の構成となっても、本発明の流路切り替えバルブに含まれる。
【0020】
図5の流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態(図5a)では、ロータ37に設けた貫通孔39fが0度の位置に、貫通孔39eが60度の位置に、貫通孔39dが120度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0021】
第1の流路状態からロータ37を180度回転すると、第2の流路状態(図5b)となる。第2の流路状態(図5b)では、流路39cが0度の位置に、流路39aが120度の位置に、溝38aが0度から60度の位置に、溝38bが0度から120度の位置に、溝38cが60度から120度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36c、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと貫通孔36b、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0022】
図5の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の一例を図6に示す。図6の方法では、溝38bの箇所で上下2分割した部材37a・37bを作製後、互いに密着させることでロータ37を作製している。部材37aの下面には溝38baを、部材37bの上面には溝38bbをそれぞれ設けており、互いの溝を合わせることで溝38bを形成する。なお、部材37aと部材37bを密着させるときには、貫通孔39d・39e・39fがそれぞれ上下に連通するように位置決めすればよい。
【0023】
図5の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の別の例を図7に示す。図7の方法では、厚めの円板状ディスク2枚(図7の(2)および(4))と薄い円板状のスペーサ3枚(図7の(1)、(3)および(5))とを組み合わせることでロータ37を作製している。第1のステータ33に設けた貫通孔34cおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36cはともに円周上の0度の位置にあり、第1のステータ33に設けた貫通孔34bおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36bはともに円周上の60度の位置にあり、第1のステータ33に設けた貫通孔34aおよび第2のステータ35に設けた貫通孔36aはともに円周上の120度の位置にある。また、前記二つのステータ33・35に設けた貫通孔34・36およびロータ37を構成するディスクおよびスペーサに設けた貫通孔は円板面に対し垂直である。
【0024】
図7の方法でロータ37を作製した場合、第1の流路状態では、ロータ37は下記(1)から(5)の順にスペーサまたはディスクを重ね合わせた構造体、または同等の構造を有する構造体となる。
(1)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の180度の位置にある貫通孔から210度の位置にある貫通孔までの間は溝38aを設けている。なお、前記溝は第1のステータ33の下面、および(2)ディスクに接している。
(2)ディスク:円周上の0度、60度、120度、300度の位置に貫通口を設けている。
(3)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の180度の位置にある貫通孔から240度の位置にある貫通孔を経由し300度の位置にある貫通孔までの間は溝38bを設けている。
(4)ディスク:円周上の0度、60度、120度、180度の位置に貫通口を設けている。
(5)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の240度の位置にある貫通孔から300度の位置にある貫通孔までの間は溝38cを設けている。なお、前記溝は第2のステータ35の上面、および(4)ディスクに接している。
【0025】
図7のロータ37の作製方法において、前記(2)および(4)のディスクは円板面に垂直な貫通孔を開けるのみでよい。また、前記(1)、(3)および(5)のスペーサは円板面に垂直な貫通孔を開け、さらに必要な領域をくり抜いて溝を設けるだけでよい。そのため、図7のロータ37の作製方法により、ロータ37の製造工程を単純化することができる。また、図7に示すロータ37の作製方法は、ロータ部材の表面に特定の溝を設ける工程は不要である。
【0026】
図5の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図8に示す。図8において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34cは試料50の導入口となり、貫通孔34bは試料50の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは試料計量ループ40への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0027】
図8において試料ロード工程(状態1、図8a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた貫通孔39d、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、試料計量ループ40、ステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた貫通孔39e、第1のステータ33に設けた流路34bを通過することで、試料計量ループ40内に試料50が保持される。
【0028】
試料ロード工程(状態1)からロータ37を180度回転することで、分析工程(状態2、図8b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた流路34a、ロータ37に設けた流路39a−溝38b−流路39c、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、試料計量ループ40、ステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた溝38c、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、試料計量ループ40に満たされた試料50が分析カラム60へ導入される。一方、試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた溝38a、第1のステータ33に設けた貫通孔34aを通過し、廃液80へ流れる。
【0029】
図5の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図9に示す。図9において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、流路34cは前処理液11の導入口となり、流路34bは前処理液11の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは前処理カラム100への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0030】
図9において前処理工程(状態1、図9a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた貫通孔39d、ステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、前処理液11は第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた流路36b、ロータ37のに設けた貫通孔39e、第1のステータ33に設けた貫通孔34bを通過し、廃液80へ流れる。前処理工程(状態1)において、前処理液11が流れる流路に試料を一定量注入すると、試料は前処理カラム100に保持され、さらに前処理液11を数分間流すことで、試料の濃縮や夾雑物の排除などが行なわれる。
【0031】
前処理工程(状態1)からロータ37を180度回転することで、分析工程(状態2、図9b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた流路39a−溝38b−流路39c、第2のステータ35に設けた流路36c、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、ロータ37に設けた溝38c、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、前処理カラム100に保持された試料が分析カラム60に導入される。一方、前処理液11は、第1のステータ33に設けた貫通孔34c、ロータ37に設けた溝38a、第1のステータに設けた貫通孔34bを通過し、廃液80へ流れる。
【0032】
本発明の流路切り替えバルブの第二の態様を、図10bに示す。図10bの流路切り替えバルブは、
第一のステータ33が円周上の0度の位置(図10b中のCの位置)に貫通孔34cを、a度の位置(図10b中のBの位置)に貫通孔34bを、(a+b)度の位置(図10(b)中のAの位置)に貫通孔34aを設けたステータであり、
第二のステータ35が円周上の0度の位置に貫通孔36cを、a度の位置に貫通孔36bを、(a+b)度の位置に貫通孔36aを設けたステータである、
ほかは図5(図10a)の流路切り替えバルブと同様の構成である(ただし、(2a+2b+c+d)は360であり、(a+b+c)は180以下である)。
【0033】
図10bの流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態では、ロータに設けた貫通孔39fが0度の位置に、貫通孔39eがa度の位置に、貫通孔39dが(a+b)度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。第1の流路状態からロータを逆方向(左回り)に(a+b+c)度回転すると、第2の流路状態となる。第2の流路状態では、流路39cが0度の位置に、流路39aが(a+b)度の位置に、溝38aが0度からa度の位置に、溝38bが0度から(a+b)度の位置に、溝38cがa度から(a+b)度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36c、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと貫通孔36b、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0034】
本発明の流路切り替えバルブの第三の態様を、図10cに示す。図10cの流路切り替えバルブは、前述した図10bの切り替えバルブと比較しaおよびbを小さく(角度を狭く)している。図10cの流路切り替えバルブは、図10aおよび図10bの流路切り替えバルブと比較し、第1の流路状態から第2の流路状態に切り替えるときの回転角度((a+b+c)度)が小さいため、より迅速に流路状態を切り替えることができる点で好ましい。なお、a、bおよびcの値はステータおよびロータに設けた貫通孔同士または貫通孔と溝とが接触せず、かつ外部配管との接続に支障ない範囲で小さくすることができる。
【0035】
また、図10bおよび図10cの流路切り替えバルブにおいて、aとbが同じ値であると、ステータおよびロータを作製する際加工が容易であり、外部配管と接続する際作業が容易であるため、好ましい。
【0036】
本発明の流路切り替えバルブの第四の態様を図11に示す。図11の流路切り替えバルブ30では、ロータ37を60度回転することにより、第1の流路状態(図11a)と第2の流路状態(図11b)とを切り替える。図11の流路切り替えバルブは、
円周上の0度の位置に貫通孔34cを、60度の位置に貫通孔34bを、180度の位置に貫通孔34aを設けた第1のステータ33と、
回転可能なロータ37と、
円周上の120度の位置に貫通孔36bを、240度の位置に貫通孔36aを、300度の位置に貫通孔36cを設けた第2のステータ35と、
を備えている。また、ロータ37は、第1の流路状態(図11a)において、貫通孔34aと貫通孔36a、貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、をそれぞれ連通させるための、
ロータ37上面から下面まで貫通する6本の貫通孔39a・39b・39c・39d・39e・39fと、
ロータ上面に設けられた溝38a・38b・38cと、
が設けられている。なお、本説明で、ロータ上面、ロータ下面と記載しているが、当該記載は図11を説明するためのものであり、ステータおよびロータの構成が図11とは逆の構成となっても、本発明の流路切り替えバルブに含まれる。
【0037】
図11の流路切り替えバルブにおいて、第1の流路状態(図11a)では、ロータに設けた貫通孔39cが0度の位置に、貫通孔39bが60度の位置に、貫通孔39aが120度の位置に、貫通孔39fが180度の位置に、貫通孔39eが240度の位置に、貫通孔39dが300度の位置に、溝38aが60度から120度の位置に、溝38cが180度から240度の位置に、溝38bが300度から0度(360度)の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36a,貫通孔34bと貫通孔36b、貫通孔34cと貫通孔36c、がそれぞれ連通した状態となっている。
【0038】
第1の流路状態からロータ37を右回りに60度回転すると、第2の流路状態(図11b)となる。第2の流路状態(図11b)では、貫通孔39dが0度の位置に、貫通孔39cが60度の位置に、貫通孔39bが120度の位置に、貫通孔39aが180度の位置に、貫通孔39fが240度の位置に、貫通孔39eが300度の位置に、溝38bが0度から60度の位置に、溝38aが120度から180度の位置に、溝38cが240度から300度の位置に、それぞれあり、貫通孔34aと貫通孔36b、貫通孔34bと貫通孔34c、貫通孔36aと36c、とがそれぞれ連通した状態となっている。
【0039】
図11の流路切り替えバルブで用いるロータ37は、構造が簡単であるため、例えば、樹脂製ディスクの円周上に60度の間隔で貫通孔を6箇所あけ、隣り合う貫通口(例えば、0度の位置にある貫通孔と60度の位置にある貫通孔、120度の位置にある貫通孔と180度の位置にある貫通孔、240度の位置にある貫通孔と300度の位置にある貫通孔)を結ぶ三つの溝を前記ディスクの片方の表面に設けることで、比較的容易に作製することができる。
【0040】
図11の流路切り替えバルブで用いるロータ37の作製方法の別の例を図12に示す。
図12の方法では、厚めの円板状ディスク1枚(図11の(2))と薄い円板状のスペーサ1枚(図11の(1))とを組み合わせて、ロータ37を作製している。第1のステータ33に設けた貫通孔34cは0度の位置に、貫通孔34bは60度の位置に、貫通孔34aは180度の位置に、それぞれあり、第2のステータ35に設けた貫通孔36bは120度の位置に、貫通孔36aは240度の位置に、貫通孔36は300度の位置に、それぞれある。また、第1のステータ33、第2のステータ35およびロータ37内の貫通孔34・36・39は円板面に対し垂直である。
【0041】
図12の方法でロータ37を作製した場合、第1の流路状態では、ロータ37は下記(1)、(2)の順にスペーサまたはディスクを重ね合わせた構造体、または同等の構造を有する構造体となる。
(1)スペーサ:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けており、円周上の60度の位置にある貫通孔から120度の位置にある貫通孔までの間に溝38aを、円周上の180度の位置にある貫通孔から240度の位置にある貫通孔までの間に溝38cを、円周上の300度の位置にある貫通孔から0度(360度)の位置にある貫通孔までの間に溝38bを、それぞれ設けている。なお、前記溝は第1のステータ33の下面、および(2)ディスクに接している。
(2)ディスク:円周上の0度、60度、120度、180度、240度、300度の位置に貫通口を設けている。
【0042】
図12のロータ37の作製方法において、前記(2)のディスクは円板面に垂直な貫通孔を開けるのみでよい。また、前記(1)のスペーサは円板面に垂直な貫通孔を開け、さらに必要な領域をくり抜いて溝を設けるだけでよい。そのため、図12の方法でロータ37を作製する場合、ロータ部材の表面に特定の溝を設ける工程は不要となる。
【0043】
図11の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図13に示す。図13において、第1のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34bは試料50の導入口となり、貫通孔34cは試料50の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは試料計量ループ40への接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0044】
図13において、試料ロード工程(状態1、図13a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38c−貫通孔39e、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、試料50は第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39a、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、試料計量ループ40、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39d−溝38b、第1のステータ33に設けた流路34cを通過し、試料計量ループ40内に試料50が保持される。
【0045】
試料ロード工程(状態1)からロータ37を右回りに60度回転することで、分析工程(状態2、図13b)に切り替えることができる。分析工程(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39b、第2のステータ35に設けた流路36b、試料計量ループ40、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39e−溝38c−貫通孔39f、第2のステータ35に設けた流路36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、試料計量ループ40に満たされた試料50は分析カラム60に導入される。一方試料50は、第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38b、
第1のステータ33に設けた流路34cを通って、廃液80へ流れる。
【0046】
図11の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を図14に示す。図14において、第一のステータ33に設けた貫通孔34aは溶離液12の導入口となり、貫通孔34bは前処理液11の導入口となり、貫通孔34cは前処理液11の排出口(廃液80への流路に接続)となる。また、第2のステータ35に設けた貫通孔36b・36cは前処理カラム100との接続口となり、貫通孔36aは分析カラム60への接続口となる。
【0047】
図14において、前処理工程(状態1、図14a)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38c−貫通孔39e、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。一方、前処理液11は第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39a、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39d−溝38b、第1のステータ33に設けた貫通孔34cを通過し、廃液80へ流れる。前処理工程(状態1)において、前処理液11の流路に試料を一定量注入すると、試料は前処理カラム100に保持され、さらに前処理液11を数分間流すことで試料の濃縮や夾雑物の排除などが行なわれる。
【0048】
前処理工程(状態1)からロータ37を右回りに60度回転することで、分析工程(状態2、図14b)に切り替えることができる。分析状態(状態2)では、溶離液12は第1のステータ33に設けた貫通孔34a、ロータ37に設けた溝38a−貫通孔39b、第2のステータ35に設けた貫通孔36b、前処理カラム100、第2のステータ35に設けた貫通孔36c、ロータ37に設けた貫通孔39e−溝38c−貫通孔39f、第2のステータ35に設けた貫通孔36aを通過し、分析カラム60に流れる。これにより、前処理カラム100に保持された試料成分が分析カラム60に導入される。一方、前処理液11は、第1のステータ33に設けた貫通孔34b、ロータ37に設けた溝38b、第1のステータ33に設けた貫通孔34cを通過し、廃液80へ流れる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の流路切り替えバルブは、
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブである。
【0050】
本発明のバルブを液体クロマトグラフ用流路切り替えバルブとして用いることで、従来の流路切り替えバルブと同様な機能および性能を維持したまま、実際に分離に寄与する配管類とその他の導入配管とを対面に分散配置することが可能となる。特に、試料注入手段における試料注入バルブとして本発明のバルブを使用する場合は、試料の入口配管、出口配管および溶離液の入口配管と、分析カラムの配管および試料計量ループ配管とを対面に配置することが可能となる。また、前処理カラムの切り替えバルブとして本発明のバルブを使用する場合は、試料および/または前処理液の入口配管、出口配管および溶離液の入口配管と、分析カラムの配管および前処理カラムとを対面に配置することが可能となる。
【0051】
カラムオーブン等に本発明のバルブを設置する場合は、分離に直接寄与する配管類のみをカラムオーブン槽内に配置し、その他の配管はカラムオーブンの槽外に配置することが可能となる。また、消耗品であるロータの交換も、従来はカラムオーブンのドアを開け内部から作業を行なうしかなかったが、本発明のバルブではドアを開けなくても、カラムオーブンの槽外から作業が行なえる(図15a参照)ため、カラムオーブンの開閉を最小限にできる。そのため、ゲル排除クロマトグラフィーなど温度の影響を受け易い液体クロマトグラフに対し本発明のバルブを適用すると、カラムの温度変化が少なく分析精度に優れた液体クロマトグラフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける試料注入装置90に使用した場合の、液体クロマトグラフ全体の流路図である。図1aは試料ロード工程(状態1)、図1bは試料注入工程(状態2)での流路図を示す。
【図2】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける試料注入装置90に使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図2aは試料ロード工程(状態1)、図2bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図3】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、液体クロマトグラフ全体の流路図である。図3aは前処理工程(状態1)、図3bは分析工程(状態2)での流路図を示す。
【図4】従来の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図4aは前処理工程(状態1)、図4bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図5】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の回転による流路の変化を示した図である。図5aは第1の流路状態、図5bは第2の流路状態(図5aからロータ37を180度回転させた状態)の図を示す。
【図6】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の作製方法の一態様を示した図である。本図では溝38bの位置で上下2分割した部材37a・37bを密着させてロータ37を作製している。
【図7】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様における、ロータ37の作製方法の別の態様を示した図である。本図では2枚の円板状ディスク(2)・(4)と3枚の円板状スペーサ(1)・(3)・(5)とを組み合わせてロータ37を作製している。また、第1および第2の流路状態における溝38の位置も示している。
【図8】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図8aは試料ロード工程(状態1)、図8bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図9】本発明の流路切り替えバルブ30の第一の態様を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図9aは前処理工程(状態1)、図9bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図10】本発明の流路切り替えバルブ30の第一から第三の態様の上面図を示した図である。図10aが第一の態様を、図10bが第二の態様を、図10cが第三の態様をそれぞれ示す。
【図11】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様における、ロータ37の回転による流路の変化を示した図である。図11aは第1の流路状態、図11bは第2の流路状態(図5aからロータ37を右回りに60度回転させた状態)の図を示す。
【図12】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様における、ロータ37の作製方法の一態様を示した図である。本図では1枚の円板状のディスク(2)と1枚の円板状のスペーサ(1)とを組み合わせてロータ37を作製している。また、第1および第2の流路状態における溝38の位置も示している。
【図13】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様を、液体クロマトグラフの試料注入装置における試料注入バルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図13aは試料ロード工程(状態1)、図13bは試料注入工程(状態2)での詳細図を示す。
【図14】本発明の流路切り替えバルブ30の第四の態様を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した場合の、流路構成の詳細を示した図である。図14aは前処理工程(状態1)、図14bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図15】流路切り替えバルブ30をカラムオーブンに取り付けたときの模式図である。図15aは本発明の流路切り替えバルブを、図15bは従来の流路切り替えバルブをそれぞれ取り付けたときの図である。
【図16】実施例1で使用した液体クロマトグラフ全体の流路図である。図16aは試料ロード工程(状態1)、図16bは試料注入工程(状態2)での流路図を示す。
【図17】実施例1の液体クロマトグラフで得られたクロマトグラムである。図17aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図17bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【図18】実施例1の液体クロマトグラフにおける再現性を示したクロマトグラムである。図18aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図18bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【図19】実施例2で使用した液体クロマトグラフ全体の流路図である。図19aは前処理工程(状態1)、図19bは分析工程(状態2)での詳細図を示す。
【図20】実施例2の液体クロマトグラフで得られたクロマトグラムである。図20aは本発明の流路切り替えバルブを使用したときのクロマトグラムであり、図20bは従来の流路切り替えバルブ(レオダイン社製7010)を使用したときのクロマトグラムである。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
図5に示す本発明の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフの試料注入装置90における試料注入バルブとして使用した。本実施例で使用する液体クロマトグラフ全体の流路図を図16に示す。
【0055】
図16において、分析カラム60および試料注入装置90中の試料計量ループ40はカラムオーブン120内に収容されている。流路切り替えバルブ30中のロータの回転により、試料ロード工程(状態1、図16a)と分析工程(状態2、図16b)とを切り替えることができる。試料計量ループ40は容量31μL用のものを使用した。溶離液12はアセトニトリル/水(40/60)を使用した。分析カラム60は逆相クロマトグラフィーカラムである東ソー社製TSK−GEL ODS−80Ts(粒径:5μm、内径:4.6mm、長さ:150mm)を使用した。溶離液12を毎分0.8mLで送液し、紫外検出器70(波長:280nm)で検出を行なった。試料50は、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチルをそれぞれ0.001%含んだ溶液を使用した。なお、比較のために、従来の流路切り替えバルブとしてレオダイン社製7010を使用し、同様の測定を実施した。
【0056】
結果を図17に示す。図17aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムであり、図17bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムである。表1および2に、各ピークの理論段数および非対称係数を示した。なお、表1および2のうち、P1はp−ヒドロキシ安息香酸メチルを、P2はp−ヒドロキシ安息香酸エチルを、P3はp−ヒドロキシ安息香酸プロピルを、P4はp−ヒドロキシ安息香酸ブチルを、それぞれ示す。図17に示すように、本発明の流路切り替えバルブを使用しても、従来の流路切り替えバルブを使用したときと同等な理論段数、非対称係数が得られた。よって、本発明の流路切り替えバルブ内での不規則な流れなどによる影響がないことを示している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
また、液体クロマトグラフにおける試料注入バルブとして、本発明の流路切り替えバルブを使用したときと、従来の流路切り替えバルブを使用したときとで、結果の再現性に差が生じるか確認した結果を図18に示す。なお、当該再現性試験において、試料は0.001%のp−ヒドロキシ安息香酸メチルを含んだ溶液、測定回数は10回である。図18aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られた代表的なクロマトグラムであり、図18bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られた代表的なクロマトグラムである。表3に、溶出時間およびピーク面積の値を示した。面積値の変動係数(Cv%)は、本発明の流路切り替えバルブを使用したときが0.668、従来の流路切り替えバルブを使用したときが0.771と、ほぼ同等の値を示していた。よって、本発明の流路切り替えバルブを使用しても注入再現性に問題がないことがわかる。
【0059】
【表3】
実施例2
図5に示す本発明の流路切り替えバルブ30を、液体クロマトグラフにおける前処理カラムの切り替えバルブとして使用した。本実施例で使用する液体クロマトグラフ全体の流路図を図19に示す。
【0060】
本実施例では、希薄試料を前処理カラム100に大量に注入して濃縮後、流路切り替えバルブ30を切り替え、溶離液12にて前処理カラム100に保持された試料を分析カラム60に導入し分離を行なう。分析カラム60および前処理カラム100はカラムオーブン120中に収納されている。流路切り替えバルブ30中のロータの回転により、前処理工程(濃縮工程)(状態1、図19a)と分析工程(状態2、図19b)とを切り替えることができる。前処理液(濃縮液)11はアセトニトリル/水(5/95)を使用した。前処理カラム(濃縮カラム)100は逆相クロマトグラフィーカラムである東ソー社製TSK−GEL ODS−120A(粒径:5μm、内径:4.6mm、長さ:10mm)を使用した。前処理液(濃縮液)11は毎分0.4mLで送液した。試料50は実施例1の1/100希釈品を1.78mL注入した。溶離液12の組成および流速、分析カラム60、検出条件は実施例1と同様に実施した。
(1)前処理工程(濃縮工程)(状態1)(前処理カラム(濃縮カラム)に前処理液(濃縮液)が流れる)で、希薄試料50を注入後、前処理液11を5分間流すことで、前処理カラム(濃縮カラム)100に全量を保持させ、試料を濃縮した。
(2)流路切り替えバルブ30中のロータを回転することにより、分析工程(状態2)(前処理カラム(濃縮カラム)100と分析カラム60とが接続)に切り替えて、溶離液12を用いて前処理カラム(濃縮カラム)100に保持された試料成分を分析カラム60に押し出し、分離を行ない、紫外検出器70(波長:280nm)で検出を行なった。なお、比較のために、従来の流路切り替えバルブとしてレオダイン社製7010を使用し、同様の測定を実施した。
【0061】
結果を図20に示す。図20aは本発明の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラム、図20bは従来の流路切り替えバルブを使用して得られたクロマトグラムである。表4および5は、各ピークの理論段数および非対称係数を示した表である。なお、表4および5のうち、P1はp−ヒドロキシ安息香酸メチルを、P2はp−ヒドロキシ安息香酸エチルを、P3はp−ヒドロキシ安息香酸プロピルを、P4はp−ヒドロキシ安息香酸ブチルを、それぞれ示す。図20に示すように、本発明の流路切り替えバルブを使用しても、従来の構造の流路切り替えバルブを使用したときと同等な理論段数、非対称係数が得られた。よって、本発明の流路切り替えバルブ内での不規則な流れなどによる影響がないことを示している。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
表6は、前処理操作を行なわない場合(実施例1)と、前処理操作を行なった場合(実施例2)の各ピーク面積と、両者の比率を示す。なお、表6のうち比率とは前処理操作を行なったときのピーク面積を前処理操作を行なわなかったときのピーク面積で割った値を示す。前処理操作を行なわない場合(実施例1)の注入量は、
(31[μL]×10−3)÷100=3.1×10−4[μg]
である。前処理操作を行なった場合(実施例2)の注入量は、
(1.78[μL]×10−2)÷100=1.78×10−4[μg]
である。したがって、理論上、前処理操作を行なった場合の面積の値は、下式のように濃縮操作を行なわない場合の0.574倍の値を示すはずである。
【0064】
(1.78×10−4[μg])÷(3.1×10−4[μg])=0.574
表4から、各ピークの面積比は、本発明のバルブを使用した場合で0.531から0.574、従来のバルブを使用した場合で0.464から0.567であり、両者とも理論値とほぼ同じ値を示しており、濃縮操作が確実に行なわれていることを明示している。
【0065】
【表6】
【符号の説明】
【0066】
11:前処理液
12:溶離液
21、22:ポンプ
30:流路切り替えバルブ
31、33、35:ステータ
32、34、36:ステータの貫通孔
37:ロータ
38:ロータの溝
39:ロータの貫通孔または流路
40:試料計量ループ
50:試料
60:分離カラム
70:検出器
80:廃液
90:試料注入装置
100:前処理カラム
110:ハンドル
120:カラムオーブン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブ。
【請求項2】
第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔が3つである、請求項1に記載の流路切り替えバルブ。
【請求項3】
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔A1、A2、A3とする)を設けた第1のステータと、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔B1、B2、B3とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3、A1とA2、B2とB3、A3とB1とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを(a+b+c)度回転することにより、
(1)貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A1とA2、B2とB3、A3とB1とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ(ただし、(2a+2b+c)は360より小さく、(a+b+c)は180以下である)。
【請求項4】
aとbとが同じ値である、請求項3に記載の流路切り替えバルブ。
【請求項5】
0度、60度および180度の位置に貫通孔(以下貫通孔A4、A5、A6とする)を設けた第1のステータと、
120度、240度および300度の位置に貫通孔(以下貫通孔B4、B5、B6とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5、A4とA5、B5とB6、A6とB4とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを60度回転することにより、
(1)貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A4とA5、B5とB6、A6とB4とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の流路切り替えバルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料を分離する分析カラムと、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた、液体クロマトグラフ。
【請求項7】
試料注入バルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料の濃縮や夾雑物の排除を行なう前処理カラムと、
前処理カラムから導入された試料を分離する分析カラムと、
前処理カラムに導入する前処理液が流れる流路と前処理カラムとを接続可能で、試料を溶出させる溶離液が流れる流路と前処理カラムと分離カラムとを接続可能な流路切り替え手段と、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた液体クロマトグラフであって、
試料注入バルブおよび/または流路切り替え手段が請求項1から5のいずれかに記載の流路切り替えバルブである、液体クロマトグラフ。
【請求項1】
少なくとも3つの貫通孔を設けた第1のステータと、
第1のステータと同じ数の貫通孔を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔を連通可能なロータと、
を備えた流路切り替えバルブであって、
前記ロータが、
第1のステータに設けた貫通孔と第2のステータに設けた貫通孔とをそれぞれ連通させるための貫通孔と、
第1のステータに設けた貫通孔同士および第2のステータに設けた貫通孔同士を連通させるための溝と、
を設けたロータである、流路切り替えバルブ。
【請求項2】
第1のステータおよび第2のステータに設けた貫通孔が3つである、請求項1に記載の流路切り替えバルブ。
【請求項3】
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔A1、A2、A3とする)を設けた第1のステータと、
0度、a度および(a+b)度の位置に貫通孔(以下貫通孔B1、B2、B3とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3、A1とA2、B2とB3、A3とB1とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを(a+b+c)度回転することにより、
(1)貫通孔A1とB1、A2とB2、A3とB3とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A1とA2、B2とB3、A3とB1とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ(ただし、(2a+2b+c)は360より小さく、(a+b+c)は180以下である)。
【請求項4】
aとbとが同じ値である、請求項3に記載の流路切り替えバルブ。
【請求項5】
0度、60度および180度の位置に貫通孔(以下貫通孔A4、A5、A6とする)を設けた第1のステータと、
120度、240度および300度の位置に貫通孔(以下貫通孔B4、B5、B6とする)を設けた第2のステータと、
第1ステータおよび第2のステータにより液密に挟まれ、かつ貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5、A4とA5、B5とB6、A6とB4とを連通可能なロータと、
を備え、ロータを60度回転することにより、
(1)貫通孔A4とB6、A5とB4、A6とB5とがそれぞれ連通する状態と、
(2)貫通孔A4とA5、B5とB6、A6とB4とがそれぞれ連通する状態と、
を切り替え可能な、流路切り替えバルブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の流路切り替えバルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料を分離する分析カラムと、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた、液体クロマトグラフ。
【請求項7】
試料注入バルブおよび試料計量ループを設けた試料注入手段と、
注入した試料の濃縮や夾雑物の排除を行なう前処理カラムと、
前処理カラムから導入された試料を分離する分析カラムと、
前処理カラムに導入する前処理液が流れる流路と前処理カラムとを接続可能で、試料を溶出させる溶離液が流れる流路と前処理カラムと分離カラムとを接続可能な流路切り替え手段と、
分離した試料を検出する手段と、
を備えた液体クロマトグラフであって、
試料注入バルブおよび/または流路切り替え手段が請求項1から5のいずれかに記載の流路切り替えバルブである、液体クロマトグラフ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図9】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−117821(P2011−117821A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275242(P2009−275242)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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