説明

流路開閉装置

【課題】サイフォン方式の大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、大便器に供給する洗浄水の瞬間流量を給水圧によらず略一定量に保つことを可能としながら、洗浄水の瞬間流量を調整することが可能な流路開閉装置を提供すること。
【解決手段】この流路開閉装置は、洗浄水供給段階において、弁体部材の駆動量を一次側流路からの給水圧に応じて調整することで、洗浄水の瞬間流量を所定流量に保つ洗浄水量調整手段と、洗浄水量調整手段が給水圧に応じて調整する弁体部材の駆動量を修正する調整量修正手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に洗浄水を供給する流路開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に洗浄水を供給する手段として、給水路にフラッシュバルブといった流路開閉装置を設けることが広く行われている。フラッシュバルブは、給水元である一次側流路から水を受け入れて一次側内部流路に送り出す流入口と、二次側内部流路から給水先である二次側流路へ水を送り出す流出口とが形成された本体部と、一次側内部流路と二次側内部流路との間の流路開閉を行う主バルブと、この主バルブを介さずに一次側内部流路と二次側内部流路とを連通するバイパス流路と、バイパス流路の流路開閉を行う副バルブと、を備えるものである。
【0003】
このように構成されたフラッシュバルブは、操作レバーを押し下げるといった副バルブを開く動作を行うと、バイパス流路が開かれて主バルブを構成する主弁体の背圧が低下し、一次側内部流路内の一次圧(給水圧)によって主弁体が主弁座から引き離されるように押し上げられて主バルブが開放され、流出口から水が二次側流路へと流出される。その後、操作レバーを戻すといった副バルブを閉じる動作を行うか、若しくは自動的に操作レバーが戻って副バルブが閉じられると、バイパス流路が閉じられて主弁体の背圧が上昇する。この主弁体の背圧の上昇に伴って主弁体が主弁座に近づくように降下し、やがて主弁体が主弁座に当接することで主バルブが閉じられる。従って、フラッシュバルブは、給水を開始する指示を受けることで、一定の開度となるように主弁体が主弁座から引き離され、便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置として機能するものである。
【0004】
フラッシュバルブが設置される場所は、給水圧が高いところもあれば、給水圧が低いところもある。従来のフラッシュバルブはその構造上、給水圧の高低によらずに、副バルブを開いた際の主弁体の位置を調整するものであるため、給水圧によってその吐水量が大きくばらつき、無駄水が生じてしまうという問題があった。このため、主弁体の給水量を調整するネジが設けられる場合がある。フラッシュバルブを設置するにあたっては、現場でこのネジを調整し、給水量を調整している。
【0005】
しかしながら、現場で施工者がネジを回して給水量を調整すると、個々の現場によって調整量が異なることが多く、便器に対する給水量が必ずしも適切なものとならない可能性もある。そこで、下記特許文献1に記載のフラッシュバルブでは、主弁体の上昇位置を規制する上昇位置規制手段と、給水圧を検知する圧力センサーと、圧力センサーの水圧測定値に応じて上昇位置規制手段を制御し、主弁体の上昇規制量を調整する制御手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−336753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のフラッシュバルブでは、制御手段が、圧力センサーの検知圧力に応じてモーターを駆動し、上昇位置規制手段を給水圧に応じた位置に調整する。従って、給水圧が変動しても、便器側へ流す水量を一定に制御することが出来る。このように、給水圧が高い場合も低い場合も、便器側に流す水量を一定にすることで、無駄水を低減することが可能なものとなっている。
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載のフラッシュバルブは、圧力センサーによる水圧の検知やモーターの駆動制御のために、電気エネルギーの供給を必要とするものである。省エネルギーの観点からは、電気エネルギーの消費量は少ない方が望ましい。
【0009】
そこで本発明者らは、給水圧に依存しない所定量の洗浄水を前記大便器に供給するために、流路開閉を行う主バルブとの弁体と、瞬間流量を調整する定流量バルブの弁体とを一つの弁体部材に一体化した上で、かかる弁体部材の駆動量を給水圧に応じて調整する機構を設けることに着目した。給水圧が高い場合は弁体部材の駆動量が小さくなり、定流量バルブを通過する水の流路断面積は小さくなる。一方、給水圧が低い場合は弁体部材の駆動量が大きくなり、定流量バルブを通過する水の流路断面積は大きくなる。その結果、洗浄水の瞬間流量は給水圧に起因するばらつきが抑制され、上記特許文献1に記載のフラッシュバルブのように電気エネルギーを用いた流量制御を必要とせず、給水圧に依存しない所定量の洗浄水を前記大便器に供給することが可能となる。
【0010】
しかしながら、給水圧に応じて弁体部材の駆動量を調整する機構においては、構成部品の寸法のばらつきに起因して、大便器に供給される洗浄水の水量が設計値から外れてしまうことがある。構成部品の寸法の僅かなばらつきでも洗浄水の瞬間流量を増減させ、大便器に供給される洗浄水の水量が設計値から大きく外れてしまう可能性がある。このため、弁体部材の駆動量を修正することにより、洗浄水の瞬間流量を調整する手段の検討が欠かせない。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、大便器に供給する洗浄水の供給量を給水圧によらず略一定量に保つことを可能としながら、洗浄水の瞬間流量を調整することが可能な流路開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る流路開閉装置は、給水を開始する指示を受けることで大便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置であって、給水元に繋がる一次側流路と給水先である大便器へ繋がる二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体及び主弁座を有する主バルブと、前記一次側流路から前記二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つように相互間に形成される流路断面積を調整する定流量弁体及び定流量弁座を有する定流量バルブと、を備え、前記主弁体及び前記定流量弁体は一体化された弁体部材として形成され、前記大便器を洗浄するための洗浄水を前記大便器に供給する洗浄水供給段階では、前記弁体部材を後退方向に駆動し、前記主弁体を前記主弁座から離隔させることで前記二次側流路に洗浄水を供給するものであって、前記弁体部材の駆動量を前記一次側流路からの給水圧に応じて調整することで、洗浄水の瞬間流量を所定流量に保つ洗浄水量調整手段と、前記洗浄水量調整手段が前記給水圧に応じて調整する前記弁体部材の駆動量を修正する調整量修正手段と、を備える。
【0013】
本発明によれば、一次側流路と二次側流路との間の流路開閉を行うための主弁体と、一次側流路から二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つための定流量弁体とを一体化された弁体部材として構成しているので、コンパクトな構成の流路開閉装置を提供することができる。また、洗浄水量調整手段を備えており、弁体部材の駆動量を一次側流路からの給水圧に応じて調整するため、洗浄水の瞬間流量は給水圧によって変化せず、所定流量に保たれた状態で給水を行うことができる。
【0014】
このように、洗浄水の瞬間流量は給水圧によっては変化しないが、構成部品の寸法のばらつきにより、制御されるべき瞬間流量が設計値から外れてしまうことがある。構成部品の寸法の僅かなばらつきであっても、大便器に供給される洗浄水の水量が設計値から大きく外れてしまう可能性がある。このため、構成部品の寸法ばらつきを低減することのみによって、かかる現象を完全に防止することは難しい。
【0015】
そこで本発明では、洗浄水量調整手段が給水圧に応じて調整する弁体部材の駆動量を修正する、調整量修正手段を備えている。構成部品の寸法ばらつきによって、洗浄水の供給量が設計値から外れたような場合であっても、調整量修正手段によって調整することが可能となる。従って、無駄水が生じることや、逆に給水量が不足して封水切れや洗浄不良が生じることが確実に防止される。
【0016】
本発明に係る流路開閉装置では、前記洗浄水量調整手段は、前記調整量修正手段からの距離を前記一次側流路からの給水圧に応じて変化させることにより、前記弁体部材が後退方向に駆動される際における最大変位量を規制するものであって、前記調整量修正手段は、前記弁体部材の駆動方向に沿ってその固定位置が調整されるように構成されており、その固定位置の調整によって前記駆動量を修正するものであることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、調整量修正手段の固定位置の調整によって弁体部材の駆動量を修正することにより、洗浄水の瞬間流量が調整される。このため、洗浄水の瞬間流量を調整する作業においては、調整量修正手段の位置、及びその変化の方向を目視で確認しながら、容易に調整を行うことができる。
【0018】
本発明に係る流路開閉装置では、前記調整量修正手段は、流路開閉装置に対して外部から連通した状態で固定されており、前記調整量修正手段の固定位置は外部から調整可能であることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、調整量修正手段の固定位置を、流路開閉装置の外部から調整することが可能となる。このため、流路開閉装置を分解しての調整や、調整後の再組立てが不要となるため、調整作業がさらに容易となる。
【0020】
本発明に係る流路開閉装置では、前記調整量修正手段は、その軸方向が前記弁体部材の駆動方向と一致するように配置された螺子部を有しており、前記螺子部が流路開閉装置に対して螺合した状態で固定されていることも好ましい。
【0021】
この好ましい態様では、螺子部を回転させるという簡便な方法により、調整量修正手段の固定位置を調整することが可能となる。このため、特殊な工具や専門知識を要することなく、容易に調整作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、大便器に供給する洗浄水の瞬間流量を給水圧によらず略一定量に保つことを可能としながら、洗浄水の瞬間流量を調整することが可能な流路開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。
【図2】本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【図3】図2に示すフラッシュバルブの定流量弁体を示す側面図である。
【図4】図2に示すフラッシュバルブの定流量弁体を示す斜視図である。
【図5】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図6】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図7】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図8】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図9】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図10】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作が、第二位置調整部材の位置により変化する様子を説明するための図である。
【図11】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作が、第二位置調整部材の位置により変化する様子を説明するための図である。
【図12】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作が、第二位置調整部材の位置により変化する様子を説明するための図である。
【図13】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作が、第二位置調整部材の位置により変化する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0025】
本発明の実施形態であるフラッシュバルブ(流路開閉装置)について図1に示す。図1は、本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。図1に示されるように、フラッシュバルブSV(流路開閉装置)は、大便器SBへの給水管TBの途中に取り付けられている。フラッシュバルブSVは、給水を開始する指示を受けることで、給水管TBを経由する流路を開いて大便器SBに給水を開始する。その後、フラッシュバルブSVは、所定の条件を満たすことで自律的に流路を閉じて給水を停止する。
【0026】
大便器SBは、封水部SWが設けられている。封水部SWには常時溜水がなされ、封水が形成されている。大便器SBを使用すると、封水部SWに汚物が投入される。大便器SBの使用後にフラッシュバルブSVを操作すると、フラッシュバルブSVから略一定の瞬間流量で洗浄水が供給される。この洗浄水によって、封水部SWの溜水及び汚物が流される。本実施形態の場合、大便器SBはサイフォン方式の便器であるので、サイフォン現象によって洗浄水は汚物と共に下流側へ吸引される。本実施形態のフラッシュバルブSVは、洗浄後に封水部SWにリフィル水を供給するように構成されている。
【0027】
フラッシュバルブSVは、本体部10と、電磁弁82とを備えている。本体部10内には、給水管TBに繋がる一次側内部流路20と、大便器SBに繋がる二次側内部流路30とが形成されている。本体部10内には弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うものである。電磁弁82は、バイパス流路80に設けられている。電磁弁82を開くことで、弁体部材40の背圧が下がり開弁される。本実施形態では、給水管TBにおいて、フラッシュバルブSVよりも上流側には止水栓Vが、フラッシュバルブSVよりも下流側であって大便器SBよりも上流側にはバキュームブレーカーVBが、それぞれ配置されている。
【0028】
続いて、本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブSVの内部構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、フラッシュバルブSVの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【0029】
図2に示されるように、フラッシュバルブSVは、本体部10を備えている。本体部10の内部には、一次側内部流路20と、二次側内部流路30と、背圧室14と、副背圧室12とが形成されている。一次側内部流路20は、給水元である一次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも上流側の流路)から流入水Waを受け入れて、二次側内部流路30に向けて流出させるものである。一次側内部流路20の上流端には流入口21が設けられている。流入口21は、流入水Waを受け入れて一次側内部流路20に送り出す開口部である。
【0030】
二次側内部流路30は、一次側内部流路20から流入する水を給水先である二次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも下流側の流路)に流出水Wbとして流出させるものである。二次側内部流路30の下流端には流出口31が設けられている。流出口31は、二次側内部流路30から二次側流路へ流出水Wbを送り出す開口部である。
【0031】
一次側内部流路20と二次側内部流路30との間には、弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、下流側の一端が二次側内部流路30に挿入されており、その反対側の他端が背圧室14に臨むように配置されている。弁体部材40は、二次側内部流路30の下流方向に沿って進退自在に配置されている。弁体部材40は、その上部に設けられた主弁体42と、その下部に設けられた定流量弁体44とからなり、両者が一体となって構成されている。
【0032】
主弁体42は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うためのものである。主弁体42は下流側の面において、主弁体面421を有している。弁体部材40が最も下流側に押し込まれると、主弁体面421が一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面に当接し、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の水の流通を遮断するように構成されている。従って、主弁体面421が当接する境界面は、主弁座面201(主弁座)として機能している。
【0033】
定流量弁体44は、一次側内部流路20から二次側内部流路30へ流れる水の瞬間流量を調整するためのものである。定流量弁体44は、内部に形成された空間である弁内空間445を有している。また、定流量弁体44の底面においては、二次側内部流路30と弁内空間445とを連通する孔444が形成されている。定流量弁体44はまた、その外側面441において、溝状に形成されたスリット442を有している。更に、スリット442の上部には、外部と弁内空間445とを連通する孔443が形成されている。
【0034】
この定流量弁体44の構造を、図3及び図4を参照しながら詳しく説明する。図3は、定流量弁体44の側面図であって、図4は定流量弁体44の斜視図である。定流量弁体44の外側面441には、均等な間隔で4つのスリット442が形成されている。各スリット442は、断面が矩形の有底な溝であり、外側面441の下端から中程まで形成されている。各スリット442は、スリット442の上端部に位置する水平な面である天面446と、側壁を形成する側壁面447とを有している。側壁面447は、その上部において略鉛直に形成された上部側壁面448と、その下部において傾斜状に形成された下部側壁面449、450とからなっている。このため、スリット442の上部においては、スリット442の幅は高さによらず一定である。一方、スリット442の下部においては、スリット442の幅は下方に行くほど広くなっている。
【0035】
さらに、定流量弁体44の外側面441には、天面446よりも上部において、2か所に孔443が形成されている。孔443は、鉛直方向の径よりも水平方向の径が長く、定流量弁体44の外部と弁内空間445とを連通するように形成されている。
【0036】
再び図2に戻って説明する。定流量弁体44の外側面441は、二次側内部流路30の内側壁と近接して対抗している。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、水が二次側内部流路30へと流入するが、その流路は二つ存在することとなる。
【0037】
一つ目の流路(主流路)は、二次側内部流路30の内側壁とスリット442により形成された空間を通過し、二次側内部流路30へと流入する流路である。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する。このとき、弁体部材40が上昇するほど、水はスリット442の下部に対して流入することとなる。スリット442は、下方に行くほど幅が広くなっているため、水の流路断面積は広くなり、流量を増やすように作用する。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向)し、その後下降(流出口31へ向かう方向、前進方向、閉弁方向)すると、水はスリット442の上部に対して流入することとなる。その結果、水の流路断面積は狭くなり、流量を絞るように作用する。
【0038】
二つ目の流路(副流路)は、孔443から弁内空間445に流入した後、孔444を通過して二次側内部流路30に流入する流路である。この流路は、弁体部材40の上昇及び下降によってその流路断面積がほとんど変化しない。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)した状態においては、常に一定の瞬間流量で水が流れることとなる。
【0039】
主弁体42には、その上部側において収容凹部46が設けられている。収容凹部46は、背圧室14側から後退するように凹状に形成されている。収容凹部46の背圧室14側には、副弁座465が設けられている。収容凹部46は、孔461と、凹部462と、副孔463(背圧流路)と、が形成されている。
【0040】
孔461は、一次側内部流路20と凹部462とを繋ぐ連通孔として形成されている。凹部462は、バネ50と、副弁桿48とを収容している。凹部462内には、副弁桿48の先端の大径部481が配置されている。大径部481は、バネ50と当接しており、バネ50を介して弁体部材40を流出口31に向けて付勢している。
【0041】
副弁桿48は、棒状に延びる小径部483と、小径部483の先端に設けられている大径部481とを有している。小径部483は、副弁座465に設けられた連通路464(背圧流路)を貫通している。連通路464と小径部483との間には、通水可能な隙間が形成される。従って、孔461から凹部462に流入した水は、連通路464を通って背圧室14へと流れる。また、孔461を通った水の一部は、副孔463を通って背圧室14へと流れる。尚、連通路464が閉鎖されている場合は、孔461を通った全ての水が副孔463を通って背圧室14へと流れる。
【0042】
背圧室14と副背圧室12とは、第一位置調整部材60によって仕切られて分離されている。第一位置調整部材60には凹部601が設けられている。凹部601は、背圧室14に向けてその外壁が突出する凹部として形成されている。凹部601の下端には、連通路602が形成されている。凹部601の背圧室14側には、線形特性を有するバネ70が配置されている。バネ70は、一端が凹部601内に収容され、他端は第二位置調整部材65に当接するように配置されている。
【0043】
第二位置調整部材65は、その一端側に円盤状に形成されたプレート部651を有しており、プレート部651の下面が、副弁桿48の小径部483の一端と当接したり離隔したりするように配置されている。第二位置調整部材65は、バネ70の巻き線の中心を貫通するように配置され、本体部10に固定されている。
【0044】
第二位置調整部材65の固定方法について説明する。本体部10の最上部には、その中央において上方に突出した突出部101が形成されている。突出部101の中心には、その中心軸が鉛直方向である貫通穴102が形成され、この貫通穴102に対し、円筒形状の保持部材103が挿入された状態で螺合固定されている。保持部材103の中心にはさらに、その中心軸が貫通孔102と共通である貫通孔104が形成されている。
【0045】
貫通孔104は、上から順に第一保持部104a、第二保持部104bとからなっている。第一保持部104aの内周には雌螺子部105が形成されている。第二保持部104bの内径は、第一保持部104aの内径よりも大きく形成されており、第一保持部104aと第二保持部104bとの境界部には段差面106が形成されている。
【0046】
第二位置調整部材65は、プレート部651の上方に形成された棒状の部分であるシャフト部652を有しており、シャフト部652が、第一保持部104a、第二保持部104bを貫くように配置されている。シャフト部652は、上から順に第一シャフト部652a、第二シャフト部652b、第三シャフト部652cとからなっている。
【0047】
第二シャフト部652bは、その外周に雄螺子部653を有しており、雄螺子部653が、第二保持部104bの雌螺子部105に螺合している。このため、シャフト部652の軸を中心として第二位置調整部材65を回転させると、第二位置調整部材65の位置は上下に移動することとなる。
【0048】
第三シャフト部652cは、第二保持部104bの内径よりもわずかに小さい外形を有しており、第二保持部104b内に配置されている。第三シャフト部652cはその上部においてシール溝654が形成されており、シール溝654にはOリング655を保持している。Oリング655は、シール溝654の底部と第二保持部104bの内面に当接しており、背圧室14の水が本体部10の外部に漏出することを防止している。
【0049】
第一シャフト部652aは、その断面が六角形に形成されている。このため、使用者はレンチ等の工具を用いて第一シャフト部652aを回転させることで、第二位置調整部材65の位置を上下方向に調整することが可能となっている。第二シャフト部652bと第三シャフト部652cとの境界部には、段差面656が形成されている。このため、第二位置調整部材65の位置を調整できる範囲は、段差面656が段差面106に当接する位置がその上限であり、Oリング655が第二保持部104bの下端に来る位置がその下限である。
【0050】
突出部101には、その外側面から第一保持部104aに通じる貫通孔であって、その内周面に雌螺子が形成された固定孔107が形成されている。このため、使用者は第二位置調整部材65の位置を上下方向に調整した後、固定孔107に図示しないイモ螺子を挿入することにより、それ以降において第二位置調整部材65が本体部10に対して回転してしまうことを防止することができる。
【0051】
以上のように、第二位置調整部材65はフラッシュバルブSVの本体部10に対して外部から連通した状態で固定されている。また、第二位置調整部材65の固定位置は、外部からレンチ等の工具を用いて調整することができる。
【0052】
第一位置調整部材60は、副背圧室12と背圧室14との圧力差によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力、及び第一調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって、副背圧室12を広げる(背圧室14を狭める)ように摺動したり、副背圧室12を狭める(背圧室14を広げる)ように摺動したりするように構成されている。背圧室14に入った水は、連通路602を通じてバイパス流路80側へと流れる。
【0053】
副背圧室12には一次側内部流路20にかかる一次圧と同じ圧力がかかるように構成されている。具体的には、一次側内部流路20と副背圧室12とが副一次流路22によってつながれており、一次圧が副背圧室12に伝達されている。
【0054】
背圧室14と二次側内部流路30とは、バイパス流路80によって繋がっている。バイパス流路80には電磁弁82が設けられている。電磁弁82が閉じられていれば、背圧室14の内部には一次圧がかかっている。一方、電磁弁82が開けられると、背圧室14の水がバイパス流路80から二次側内部流路30に流出し、背圧室14の内部圧力が低下する。
【0055】
続いて、フラッシュバルブSVの動作について、図5〜図9を参照しながら説明する。図5〜図9は、図2に示すフラッシュバルブSVの吐水動作を示す図である。図5〜図9それぞれの(A)は給水圧が低圧の状態を示し、図5〜図9それぞれの(B)は給水圧が高圧の状態を示し、図5〜図9それぞれの(C)は弁体部材40のリフト量と副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)と大便器SB側に流れる瞬間流量を示している。図5〜図9それぞれの(C)において、実線は給水圧が低い場合を示し、破線は給水圧が高い場合を示している。
【0056】
図5の(A)(B)(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、副弁体482と副弁座465は当接しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463のみの流路断面積となる。
【0057】
続いて、図6の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t1で電磁弁82が開かれると、まず背圧室14内の水が流出する。背圧室14内の水が流出すると、背圧室14内の圧力が低下する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。第二位置調整部材65は本体部10に固定されているため移動しない。バネ70は、移動しない第二位置調整部材65と第一位置調整部材60との間に配置されているため、第一位置調整部材60が押し下げられるとバネ70は縮んで反力を発生させる。第一位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、第一位置調整部材60が副背圧室12と背圧室14との差圧によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力、及び第一調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって定められる。すなわち、第一位置調整部材60は、第二位置調整部材65からの距離を一次圧によって変化させるものである。
【0058】
従って、図6の(A)に示されるように給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられず、図4の(B)に示されるように給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60は大きく押し下げられる。
【0059】
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、主流路(スリット442を通過する流路)を流れる流量と副流路(孔443を通過する流路)を流れる流量とを合わせた流量であって、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する個所における、スリット442の幅(流路断面積の大きさ)によって調整される。すなわち、弁体部材40の位置に応じて主流路を流れる流量のみが調整され、副流路を流れる流量は弁体部材40の位置によらず略一定である。
【0060】
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量(最大変位量)を調整するものであるから、図6の(A)のように比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、図6の(B)のように比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。また、副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。
【0061】
図6の(A)のように給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、図6の(B)のように給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
【0062】
図7の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t2で電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に水が溜まる。副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。従って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
【0063】
図8の(A)(B)(C)に示されるように、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。弁体部材40が閉弁方向に押し下げられると、副弁体482と副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。副弁体482が形成されている副弁桿48の小径部483は、固定されている第二位置調整部材65に当接しているので、副弁体482の位置は給水圧の高低によらずに略一定なものとなる。従って、弁体部材40は、給水圧の高低によらずに所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられる。副弁体482と副弁座465が当接した後は、背圧室14内への流入は副孔463からのみになる。弁体部材40は、所定の下降基準まで強制的に移動するときよりも遅い速度で更に押し下げられる。その弁体部材40の動きに伴い、バネ50を介して副弁桿48も一体的に押し下げられる。
【0064】
弁体部材40が所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられた状態においては、スリット442の天面446の高さは、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも下に位置している。このため、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する流路(主流路)は略遮断された状態となっている。一方、スリット442の天面446よりも上部に形成された孔443は、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも上に位置している。このため時刻t2以降においては、一次側内部流路20から二次側内部流路30に供給される水は、主流路を通過せず、前記副流路のみを通過することとなる。
【0065】
図9の(A)(B)(C)に示されるように、主弁体42が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、主流路及び副流路はいずれも閉じられた状態となるため、大便器SBに対する水の供給が停止される。従って、図8の(C)から図9の(C)に至るまでに大便器SBに供給される水が、大便器SBの封水部SWに供給されるリフィル水として用いられる。
【0066】
このように、リフィル水供給段階開始前に、瞬間流量を減少させることによって、リフィル水供給段階において水を供給しても大便器SBの封水部SWに溜まらずに便器洗浄が行われることを抑制することができる。とくにサイフォン式大便器の場合、リフィル水供給段階における瞬間流量が大きすぎると、サイフォン減少が発生してしまい、便器洗浄が行われる可能性が高くなる。
【0067】
このリフィル水は副流路からのみ供給されるため、弁体部材40の位置が変化しているにも関わらず、図9に示したように時刻t2以降の瞬間流量は経時的に変動しない。一次側内部流路20を流れる水の瞬間流量が変動しないため、一次側内部流路20(給水圧)も変動しない。
【0068】
給水圧が低い場合と高い場合とを比較すると、時刻t2の直後における瞬間流量は、給水圧が低い場合は、給水圧が高い場合よりも小さくなっている。これは、瞬間流量が下記式の関係となることに起因する。
Q=Cv√Δp
Q:瞬間流量、Cv:流路抵抗の逆数、Δp:入口と出口の差圧
【0069】
一方、時刻t2以降、主弁体42が主弁座面201に当接するまで(リフィル水の供給が停止するまで)に要する時間を比較すると、給水圧が低い場合の方が、給水圧が高い場合よりも長くなっている。これは、給水圧が低い場合は弁体部材40を押し下げる力が弱く、主弁体42が主弁座面201に当接するまで長時間を要するためである。
【0070】
時刻t2以降、大便器に供給されるリフィル水の総量は、図9の(C)の瞬間流量のグラフの、時刻t2以降の時間軸と各線との間に挟まれた図形の面積で表される。図9の(C)で明らかなように、給水圧が低い場合と高い場合とを比較すると、かかる図形の面積はほぼ同じとなっている。従って、給水圧が低い場合も高い場合も、所定の許容範囲内で所定量(大便器SBのタイプによって異なる)のリフィル水を供給することができる。
【0071】
次に、第二位置調整部材65の固定位置による、洗浄水の供給量の調整について、図10〜図13を参照しながら説明する。図10〜図13は、図2に示すフラッシュバルブSVの吐水動作を示している。図10〜図13それぞれの(A)は、本体部10に対する第二位置調整部材65の固定位置(プレート部651の高さ)が、これまでの説明で参照した図5等におけるものと同一の位置に調整されている場合を示している。このため、(A)の場合において大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量は、これまでの説明で参照した図5等におけるものと同一である。
【0072】
一方、図10〜図13それぞれの(B)は、プレート部651の高さが(A)に示したものよりも距離mだけ低くなるように、第二位置調整部材65の固定位置が調整されている場合を示している。
【0073】
図10〜図13それぞれの(C)は、弁体部材のリフト量と、大便器SB側に流れる洗浄水の瞬間流量のそれぞれの時間変化を示している。図10〜図13それぞれの(C)において、実線はプレート部651の高さが(A)の場合を示し、破線はプレート部651の高さが(B)の場合を示している。
【0074】
以下では、フラッシュバルブSVの動作について、及び(A)(B)それぞれの場合における洗浄水の瞬間流量について説明する。但し、フラッシュバルブSVの基本的な動作は図5〜図9を参照しながら既に説明したため、以下では重複する説明の一部を省略し、(A)と(B)との違いに重点を置いて説明する。
【0075】
図10の(A)(B)(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。この状態においては、(A)(B)いずれにおいても、第一位置調整部材60の位置は最も高い位置となっている。
【0076】
続いて、図11の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t1で電磁弁82が開かれると、まず背圧室14内の水が流出する。背圧室14内の水が流出すると、背圧室14内の圧力が低下する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。
【0077】
このとき、バネ70は縮んで反力を発生させる。図11では、第一位置調整部材60が一次圧によって押される力と、かかる反力とが釣り合った状態となっている。換言すると、第一位置調整部材60は、第二位置調整部材65からの距離を給水圧によって変化させることとなる。(A)と(B)とは給水圧が同じであるから、バネ70の長さは同じとなっている。しかし、プレート部651の位置が異なるため、第一位置調整部材60の位置は(B)の方が低くなっている。
【0078】
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の瞬間流量は、弁体部材40のリフト量によって変化する。すなわち、弁体部材40が背圧室14側に多く押し上げられる程、主流路(スリット442を通過する流路)を流れる水の流路断面積が大きくなり、瞬間流量は大きくなる。
【0079】
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整するものであるから、(A)においては弁体部材40のリフト量は大きくなり、(B)においては弁体部材40のリフト量は小さくなる。その結果、図11の(C)に示したように、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は(B)の方が小さくなっている。すなわち、(B)においては調整量修正手段である第二位置調整部材65の固定位置が低い位置に調整されているために、弁体部材40のリフト量(駆動量)が修正され、洗浄水の瞬間流量が(A)の場合よりも小さくなっている。
【0080】
その後、時刻t2で電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。図12の(A)(B)(C)に示されるように、背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられる。既に説明したように、所定の下降基準(基準位置)とは、副弁体482と副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される位置である。図12の(B)では、副弁桿48の小径部483が当接するプレート部651の位置が(A)よりも低いため、(B)の場合における所定の下降基準(基準位置)は(A)の場合よりも低い位置となる。
【0081】
弁体部材40が所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられた状態においては、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する流路(主流路)は遮断された状態となっている。このため時刻t2以降においては、一次側内部流路20から二次側内部流路30に供給される水は、主流路を通過せず、前記副流路のみを通過することとなる。副流路を通過する水の瞬間流量は、弁体部材40のリフト量によって変化しないため、時刻t2以降において大便器SBに供給される水の瞬間流量は、(A)の場合も(B)の場合も同一となっている。
【0082】
図13の(A)(B)(C)に示されるように、主弁体42が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、主流路及び副流路はいずれも閉じられた状態となるため、大便器SBに対する水の供給が停止される。時刻t2における弁体部材40の位置(下降基準)は、(B)の場合の方が低いため、主弁体42が主弁座面201に当接する時刻は(B)の場合の方が早い。従って、時刻t2以降に大便器SBに供給される水、すなわちリフィル水の量は、(A)の場合よりも(B)の場合の方が少なくなっている。
【0083】
このように、(B)の場合は第二位置調整部材65の固定位置を低い位置に調整することによって、洗浄水の瞬間流量が小さくなっていることに加え、リフィル水の量も同時に小さくなっている。
【0084】
上述したように、本実施形態の第一位置調整部材60は、本願発明の洗浄水量調整手段として機能している。本実施形態では、この洗浄水量調整手段によって、弁体部材40の駆動量を一次側内部流路20からの給水圧に応じて調整している。その結果、洗浄水供給段階における洗浄水の瞬間流量は給水圧によって変化せず、所定流量に保たれた状態で給水を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の第二位置調整部材65は、本願発明の調整量修正手段として機能している。本実施形態では、この調整量修正手段によって、洗浄水の供給量が設計値から外れたような場合であっても、調整量修正手段によって調整することが可能である。従って、無駄水が生じることや、逆に給水量が不足して封水切れや洗浄不良が生じることが確実に防止される。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
SV:フラッシュバルブ(流路開閉装置)
SB:大便器
SW:封水部
TB:給水管
V:止水栓
10:本体部
101:突出部
102:貫通穴
103:保持部材
104:貫通孔
104a:第一保持部
104b:第二保持部
105:雌螺子部
106:段差面
107:固定孔
12:副背圧室
14:背圧室
20:一次側内部流路
201:主弁座面(主弁座)
21:流入口
22:副一次流路
30:二次側内部流路
31:流出口
40:弁体部材
42:主弁体
421:主弁体面
44:定流量弁体
441:外側面
442:スリット
443:孔
444:孔
445:弁内空間
446:天面
447:側壁面
448:上部側壁面
449:下部側壁面
46:収容凹部
461:孔
462 凹部
463:副孔(背圧流路)
464:連通路(背圧流路)
465 副弁座
48:副弁桿
481:大径部
482:副弁体
483:小径部
50:バネ
60:第一位置調整部材
601:凹部
602:連通路
65:第二位置調整部材
651:プレート部
652:シャフト部
652a:第一シャフト部
652b:第二シャフト部
652c:第三シャフト部
653:雄螺子部
654:シール溝
655:リング
656:段差面
70:バネ
80:バイパス流路
82:電磁弁
Wa:流入水
Wb:流出水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を開始する指示を受けることでサイフォン方式の大便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置であって、
給水元に繋がる一次側流路と給水先である大便器へ繋がる二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体及び主弁座を有する主バルブと、
前記一次側流路から前記二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つように相互間に形成される流路断面積を調整する定流量弁体及び定流量弁座を有する定流量バルブと、を備え、
前記主弁体及び前記定流量弁体は一体化された弁体部材として形成され、
前記大便器を洗浄するための洗浄水を前記大便器に供給する洗浄水供給段階では、前記弁体部材を後退方向に駆動し、前記主弁体を前記主弁座から離隔させることで前記二次側流路に洗浄水を供給するものであって、
前記弁体部材の駆動量を前記一次側流路からの給水圧に応じて調整することで、洗浄水の瞬間流量を所定流量に保つ洗浄水量調整手段と、
前記洗浄水量調整手段が前記給水圧に応じて調整する前記弁体部材の駆動量を修正する調整量修正手段と、を備えることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項2】
前記洗浄水量調整手段は、前記調整量修正手段からの距離を前記一次側流路からの給水圧に応じて変化させることにより、前記弁体部材が後退方向に駆動される際における最大変位量を規制するものであって、
前記調整量修正手段は、前記弁体部材の駆動方向に沿ってその固定位置が調整されるように構成されており、その固定位置の調整によって前記駆動量を修正するものであることを特徴とする、請求項1に記載の流路開閉装置。
【請求項3】
前記調整量修正手段は、流路開閉装置に対して外部から連通した状態で固定されており、前記調整量修正手段の固定位置は外部から調整可能であることを特徴とする、請求項2に記載の流路開閉装置。
【請求項4】
前記調整量修正手段は、その軸方向が前記弁体部材の駆動方向と一致するように配置された螺子部を有しており、
前記螺子部が流路開閉装置に対して螺合した状態で固定されていることを特徴とする、請求項3に記載の流路開閉装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−76301(P2013−76301A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218008(P2011−218008)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】