説明

流量計測装置

【目的】 計測データにスクランブルをかけることによりシステムの誤動作等を防ぐ流量計測装置に関するもので、データの秘密性を守ることを目的としたものである。
【構成】 演算手段A4は記憶手段A5に記憶されている疑似ランダム符号と保存手段3から出力される検針データの排他的論理和演算を行いその結果を送信する。受信側では、受信データと記憶手段B9に記憶されている疑似ランダム符号の排他的論理和演算を演算手段B8で行い、結果をデータ収集手段10に送る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電話回線を利用したガスメータ等の自動検針システムにおいて、計測データにスクランブルをかけることによりデータの秘密性を守る流量計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電話回線等を利用して遠隔よりメータで計測した積算値を吸い上げるいわゆる自動検針システムが導入されてきている。さらに電話回線とメータとの間を無線回線により接続するこころみもなされている。図5に従来の流量計測装置を用いた自動検針システムのブロック図を示し説明する。1は家庭に配管されたガス配管、2はガス配管1の途中に設けられ対象家庭でのガスの使用量を計測するガス流量計(いわゆるガスメータとよばれる)である。3は保存手段、6は信号送信手段である。7は信号受信手段である。13は公衆電話回線、12は公衆電話回線13に接続されるノーリンギング網制御手段(以下T−NCU:Terminal-Network Control Unitと呼ぶ)、11はインターフェース手段である。ここではインターフェイス手段11やT−NCU12を含む一連の電話回線接続部をデータ収集手段10と呼ぶ。
【0003】まず、流量計2ではガス配管1に流れるガスの流量を測定しその積算値を電子的に保存手段3に保存する。保存手段3は保存された積算値を信号送信手段6に出力する。信号送信手段6はその出力データをあらかじめ定めた送信フォーマットに変換して信号受信手段7に送信する。ここで、メータ側(流量データを送信するまでの各手段)とT−NCU側(メータ側からのデータを受信し電話回線に送るまでの各手段)の間を無線通信で結ぶ場合、信号送信手段6は検針データにより発振信号を周波数変調した後、信号を増幅してアンテナより空間に電波として放射する。放射される電波は、例えば近年小電力無線として利用が認められている400MHz帯の電波である。信号受信手段7は信号送信手段6からの送信データを受信するとそのデータに基づいてインターフェイス手段11を介してT−NCU12を起動し、電話回線13に積算データを送出する。ここでメータ側とT−NCU側の間が無線通信の場合は、信号受信手段7は信号送信手段6からの400MHz帯の受信信号を増幅し、復調することにより検針データを出力する。
【0004】なお、ここではメータ側からT−NCU側への検針データの送信を中心として動作を説明したが、メータ側に信号受信手段7、T−NCU側に信号送信手段6を設け電話回線13に接続されている検針データを管理する管理装置(図5には図示せず)から電話回線13を介してT−NCU12を呼び出しメータ側に検針データの送信を要求する構成とすることもできる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の構成では、メータ側からT−NCU側への送信データ(流量計の積算データ)が外部に漏れる恐れがある。特にメータ側とT−NCU側の間の通信を無線で行う場合、有線の場合よりも伝送路での信号が外部に漏れる割合が高い。すなわち、メータ側で送信したデータを他のシステムで受信される可能性がある。検針データが外部に漏れると、そのデータが悪用される恐れがある。また、他のシステムからデータを書き換えられるという課題があった。
【0006】本発明は上記課題を解決するもので、送信側でデータにスクランブルをかけることにより、データの機密性を保ち信頼性のある自動検針システムを提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、メータでの計測データを電子的に保存する保存手段と、疑似ランダム符号を記憶し出力する記憶手段Aと、前記記憶手段Aからの出力と前記保存手段からの計測データの排他的論理和演算を行いその演算結果を出力する演算手段Aと、前記演算手段Aからの出力を送信する信号送信手段と、前記信号送信手段から送信された信号を受信する信号受信手段と、疑似ランダム符号を記憶し出力する記憶手段Bと、前記記憶手段Bからの出力と前記信号受信手段からの出力の排他的論理和演算を行いその演算結果を出力する演算手段Bと、前記演算手段Bからの出力を収集するデータ収集手段を設けた構成としてある。
【0008】
【作用】本発明は上記構成によって、データが外部に漏れにくくなりデータの秘密性が高まるようになる。
【0009】
【実施例】以下本発明の実施例を図1〜図4を参照して説明する。図1において、1は家庭に配管されたガス配管、2はガス配管1の途中に設けられ対象家庭でのガスの使用量を計測するガス流量計(いわゆるガスメータとよばれる)である。3は保存手段である。4は演算手段Aである。5は記憶手段Aである。6は信号送信手段である。7は信号受信手段である。8は演算手段Bである。9は記憶手段Bである。13は公衆電話回線、12は公衆電話回線13に接続されるノーリンギング網制御手段(以下T−NCU:Terminal-Network Control Unitと呼ぶ)、11はインターフェース手段である。ここではインターフェイス手段11やT−NCU12を含む一連の電話回線接続部をデータ収集手段10と呼ぶ。
【0010】まず、流量計2ではガス配管1に流れるガスの流量を測定しその積算値を電子的に保存手段3に保存する。保存手段3は保存された積算値(2進数)を演算手段A4に出力する。一方、記憶手段A5にはあらかじめ疑似ランダム符号が2進数で記憶されており、その疑似ランダム符号は演算手段A4に送られる。演算手段A4は保存手段3からの積算データと記憶手段A5からの疑似ランダム符号の排他的論理和演算を行う。これはEXOR(エクスクルシブオア)演算と呼ばれるもので2つの符号が同符号の場合は”0”、異符号の場合は”1”を出力する演算である。すなわち、図4(a)のようにデータ(1)と疑似ランダム符号(2)のEXOR演算を行うと(3)のような信号になる。この信号(3)を演算手段A4は信号送信手段6に出力する。信号送信手段6はその出力データをあらかじめ定めた送信フォーマットに変換して信号受信手段7に送信する。ここで、メータ側(流量データを送信するまでの各手段)とT−NCU側(メータ側からのデータを受信し電話回線に送るまでの各手段)の間を無線通信で結ぶ場合、信号送信手段6は検針データにより発振信号を周波数変調した後、信号を増幅してアンテナより空間に電波として放射する。放射される電波は、例えば近年小電力無線として利用が認められている400MHz帯の電波である。信号受信手段7は信号送信手段6からの送信データを受信するとそのデータを演算手段B8に出力する。ここでメータ側とT−NCU側の間が無線通信の場合は、信号受信手段7は信号送信手段6からの400MHz帯の受信信号を増幅し、復調することにより検針データを出力する。記憶手段B9にはあらかじめ記憶手段A5と同じ疑似ランダム符号が2進数で記憶されており、その疑似ランダム符号は演算手段B8に送られる。ここで演算手段B8は信号受信手段7から送られてくる信号と記憶手段B9からの疑似ランダム符号の排他的論理和演算(EXOR演算)を行う。すなわち、図5(b)のように受信信号(3){図4(a)の(3)と同じ}と疑似ランダム符号(2){図4(a)の(2)と同じ}のEXORを行うと(1)のような信号になる。この信号(1)は図4(a)の(1)と同じものである。つまり、排他的論理和演算は2度行うことにより元の信号が復元できる。演算手段B8はこの出力データ(3)に基づいてインターフェイス手段11を介してT−NCU12を起動し、電話回線13に積算データを送出する。なお、ここではメータ側からT−NCU側への検針データの送信を中心として動作を説明したが、メータ側に信号受信手段7、T−NCU側に信号送信手段6を設け電話回線13に接続されている検針データを管理する管理装置(図1には図示せず)から電話回線13を介してT−NCU12を呼び出しメータ側に検針データの送信を要求する構成とすることもできる。
【0011】上記構成において、仮に他のシステムが伝送路においてこの通信データを受信してもこのシステムに利用されている疑似ランダム符号を知らない限り受信した通信データから積算データを解読することはできない。よって信頼性の高いシステムとなる。
【0012】一方、上記構成に次のような付加機能を付けることによりより効率化がはかれ、さらに信頼性の高いシステムを作ることもできる。伝送路が無線の場合、記憶手段A5、B8に記憶しておく疑似ランダム符号としてフレーム同期信号を用いる方法が考えられる。このフレーム同期信号とは小電力無線として利用が認められている400MHz帯の電波を用いた無線通信において情報の先頭を識別するためのもので31ビットM系列符号の疑似ランダム符号である。無線送信の際に必要なこのフレーム同期信号を記憶手段A5、B8に記憶しておく疑似ランダム符号として用いることにより、新たに疑似ランダム符号を用意することが無く回路の簡素化、効率化を図ることができる。この時、送信しようとするデータはフレーム同期信号の31ビットにあわせて31ビットづつのパケットに区切って送信すればよい。
【0013】さらに、次のような構成として疑似ランダム符号の秘密性を高めることもできる。すなわち、伝送路が無線の場合であるが、図2においてメータ側の信号送信手段6の内部に搬送波記憶手段16と搬送波選択手段15を設ける。また、記憶手段A5の内部には符号選択手段14を設ける。一方、T−NCU側では信号受信手段7の内部に周波数制御手段17を設ける。また、記憶手段B9の内部には符号選択手段14を設ける。まず、搬送波記憶手段16の内部には複数の異なった周波数が記憶されている。搬送波選択手段15はその搬送波記憶手段16の中の1つの周波数についての信号を記憶手段A5の内部の符号選択手段14に出力する。つまり、搬送波記憶手段16には複数の送信チャネルが記憶されていると考えてよい。複数の周波数の中から1つを選ぶ方法としては、スイッチ等で選択してもよいし、装置内部でチャネル切換の順序をあらかじめ決めておき、通信時に空いているチャネルをその順序に従って選ぶような構成にしてもよい。記憶手段A5にはあらかじめ送信チャネルと同数の複数の疑似ランダム符号が記憶されている。符号選択手段14はその複数の疑似ランダム符号の中から搬送波選択手段15からの出力に合わせて1つの疑似ランダム符号を選択し演算手段A4に出力する。次にT−NCU側の動作を説明する。周波数制御手段17では信号受信手段7での受信周波数に合わせたデータ(チャネルデータ)を記憶手段B9の内部の符号選択手段14に出力する。ここで、信号送信手段6の送信周波数と信号受信手段7の受信周波数を等しくするには、あらかじめ設けたチャネル(制御チャネル)で受信側にデータを送る構成でもよいし、送信側と受信側であらかじめ設けた規則(送信チャネルが空いていない場合は送信側、受信側とも自動的に次のチャネルに移る)等で調整してもよい。記憶手段B9の内部には記憶手段A5の内部と等しい複数の疑似ランダム符号があらかじめ記憶されており、符号選択手段14は周波数制御手段17からの出力に合わせてその中の1つの疑似ランダム符号を選択し演算手段B8に出力する。このような構成とすることで、チャネル毎に疑似ランダム符号が変わるので疑似ランダム符号が外部に漏れにくくなり、データが解読されにくくなる。
【0014】疑似ランダム符号を変える方法として、次のような構成を考えることもできる。すなわち、図3において18はタイマー手段である。このタイマー手段18は時間を計測し一定時間毎に出力信号を出すものである。このタイマー手段18からの出力信号によって符号選択手段14は疑似ランダム符号を選択する。このタイマー手段18は伝送路が無線の場合送信側と受信側で1つずつ持つ構成が考えられるが、この時のお互いのタイマー手段18の同期合わせの方法としては一定回数の通信時に同期を合わせる等の方法が考えられる。また、タイマー手段18の出力は、例えば一か月ごととした場合記憶手段A5並びに記憶手段B9は12個の疑似ランダム符号をあらかじめ用意しておき、1年経過すれば最初の疑似ランダム符号に戻るような構成とすることもできる。
【0015】この実施例の構成によれば、データと疑似ランダム符号の演算(排他的論理和演算)により、データが解読されにくくなりデータの信頼性が高まるという効果がある。また、より一層の信頼性を得るために疑似ランダム符号を定期的に変える構成とすることもできる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明の流量計測装置は、計測データ等の信頼性が高まることにより、無線を利用した自動検針システムの普及を高めるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における流量計測装置のブロック図
【図2】(a)上記図1のブロック図の要部詳細図
(b)上記図1のブロック図の要部詳細図
【図3】上記図1のブロック図の要部詳細図
【図4】上記図1のブロック図の演算装置A、Bの動作説明図
【図5】従来の流量計測装置のブロック図
【符号の説明】
1 ガス配管
2 流量計
3 保存手段
4 演算手段A
5 記憶手段A
6 信号送信手段
7 信号受信手段
8 演算手段B
9 記憶手段B
10 データ収集手段
11 インターフェイス手段
12 T−NCU
13 電話回線
14 符号選択手段
15 搬送波選択手段
16 搬送波記憶手段
17 周波数制御手段
18 タイマー手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】メータでの計測データを保存する保存手段と、疑似ランダム符号を記憶し出力する記憶手段Aと、前記記憶手段Aからの出力と前記保存手段からの計測データの排他的論理和演算を行いその演算結果を出力する演算手段Aと、前記演算手段Aからの出力を送信する信号送信手段と、前記信号送信手段から送信された信号を受信する信号受信手段と、疑似ランダム符号を記憶し出力する記憶手段Bと、前記記憶手段Bからの出力と前記信号受信手段からの出力の排他的論理和演算を行いその演算結果を出力する演算手段Bと、前記演算手段Bからの出力を収集するデータ収集手段とで構成された流量計測装置。
【請求項2】演算手段Aからの信号を搬送波に乗せてアンテナから送信する信号送信手段と、前記信号送信手段から送信された搬送波信号をアンテナから受信し信号を復調する信号受信手段を有する請求項1記載の流量計測装置。
【請求項3】情報の先頭を識別するためのフレーム同期符号を記憶手段A並びに記憶手段Bに記憶されている疑似ランダム符号とすることを特徴とする請求項1記載の流量計測装置。
【請求項4】複数の搬送波信号の周波数を記憶する搬送波記憶手段と、前記搬送波記憶手段に記憶してある搬送波信号を選択し出力する搬送波選択手段を有する信号送信手段と、前記搬送波選択手段からの出力信号に応じて疑似ランダム符号を選択する符号選択手段を有する記憶手段Aと、受信した搬送波信号の周波数を出力する周波数制御手段を有する信号受信手段と、前記周波数制御手段からの出力信号に応じて疑似ランダム符号を選択する符号選択手段を有する上記記憶手段Bを備えた請求項1記載の流量計測装置。
【請求項5】時間を計測し一定周期毎に信号を出力するタイマー手段と、前記タイマー手段からの出力信号に応じて疑似ランダム符号を選択する符号選択手段を有する記憶手段A及び記憶手段Bを有することを特徴とする請求項1記載の流量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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