説明

海苔の処理方法及び海苔作業船

【課題】海苔の養殖において、人体および環境へ悪影響をおよぼすことなく、低コストで、人体に安全に、かつ短時間で、しかも連続作業で効率よく海苔の病害の状況にあわせて臨機応変に雑藻や病害の駆除、予防処理をすることを可能とした海苔の処理方法を提供すること、ならびに前記の海苔の処理方法を好適に使用できる海苔作業船を提供すること。
【解決手段】海苔もしくは海苔が付着した養殖具を酸を含む処理液に接触させ、次いで水処理液に接触させる工程、または海苔もしくは海苔が付着した養殖具を水処理液に浸漬し、次いで酸を含む処理液に接触させる工程を有すること特徴とする海苔の処理方法、並びに水処理液が収容される処理槽と、酸を含む処理液が収容される処理槽とが、海苔または海苔が付着した養殖具を各処理槽に連続して接触させ得るように配置されていることを特徴とする、海苔作業船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の養殖に関し、詳しくは養殖の過程で発生する、海苔以外の藻類や赤腐れ病、白腐れ病等の病害を駆除もしくは予防する海苔の処理方法及び海苔作業船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海苔の養殖における海苔の処理方法や海苔用処理液としては、例えば特許文献1には炭素数1ないし4の飽和脂肪族モノカルボン酸、炭素数2ないし4の飽和または不飽和ジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸からなる群から選ばれた有機カルボン酸の1種または2種以上を有効成分とし、これらの有機カルボン酸を0.03〜1.0%の濃度となるように海水に溶解したものを干出した藻類群落に直接散布するか、あるいはこれに浸漬することが記載されている。さらに特許文献2の海苔養殖法には、海苔を付着した海苔養殖具をシュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、および安息香酸から選ばれた有機酸を海水に0.3〜5重量%溶解しpH1.0〜4.0に調整された処理液に5〜60分浸漬させることが、特公昭60−31647号の海苔養殖法には、海苔を付着した養殖具をクエン酸0.3〜5.0重量%を含み、pHが1.0〜6.0の処理液に60分以内の間浸漬することが、夫々記載されている。また、特許文献3には塩化アンモニウムを0.7〜4重量%含有する溶液にアマノリを浸漬することにより、選択的に良質海苔を育成させる海苔の養殖方法が記載されている。
【0003】
ところが、前記のような従来の殺藻剤あるいは海苔養殖法においては、アオノリ、珪藻等の雑藻や、赤腐れ病、白腐れ病等の病害を駆除、予防するためには処理時間が5〜60分、短いものでも3〜30分と比較的長時間を要する。前記の処理は、具体的には海苔網を船上に引き上げて船内で殺藻剤を含む処理液調製槽に浸漬したのち、海苔網を再び海中に戻すのであるが、前記のように従来はこの処理液調製槽中に海苔網を5〜30分間以上も浸漬しておかなければならず、その間の待ち時間が必要となり、バッチ処理のため作業の効率は極めて悪いものであった。
【0004】
そこで、乳酸や酢酸などを主体とした短時間処理剤が開発され、30〜120秒程度の短時間で、それなりの成果は得られるようになったが、その後従来の処理剤では駆除しがたい、タビュラリア珪藻と呼ばれる珪藻が蔓延するようになった。
この珪藻を駆除したり、他の病害の駆除効果を向上するためや、より一層の処理時間短縮を目的として、種々の物質が検索され、ヨウ素化合物(特許文献4)やパラオキシ安息香酸エステル類(特許文献5)、またはカプリル酸などの脂肪酸(特許文献6)を含んだ処理剤が開発され、現在に至っている。
これらの処理剤は、タビュラリアなどの病害駆除に対してより強い効果を発揮するが、従来の処理剤と比較して、海苔葉体に対する影響も強いため、タビュラリア珪藻を駆除する場合や、特に病害が多い海苔葉体以外への使用については、海苔葉体への悪影響が懸念される現状がある。
そこで、本件出願人は、前記特殊な成分は海苔という自然食品のイメージから鑑みると避けた方がよいという観点から、処理液の媒体として真水を特定量用いることで、短時間でも優れた殺藻性、病害の駆除および予防効果を発揮する海苔用処理液(特許文献7)を開発した。
この処理方法でも一般的な処理方法と比較すれば、海苔葉体への影響は出易いという傾向は見られるため、限定した使用がベターであると考えられる。
ところで、海上において処理を実施する場合、処理する海苔葉体の珪藻付着量や珪藻の種類および病害の状況は一様ではなく、場所によって異なることはよく起こることであり、また、1日の内で処理する場所が2箇所以上となることも通常である。したがって、海苔葉体の状態に合わせて、よりベストな処理をしようとする場合、時には処理の途中で処理剤を変更した方がよい状況が発生する。しかし、変更作業に伴なう時間的なロスやコストの問題などにより、珪藻や病害の駆除効果を優先した強めの処理を実施せざるをえないのが現状であり、強い処理をすることでかえって海苔葉体に障害を与え、成長が悪くなって生産性の低減を引き起こすなどの問題が発生する場合もある。
【0005】
【特許文献1】特公昭56−12601号公報
【特許文献2】特公昭60−31451号公報
【特許文献3】特開昭50−10233号公報
【特許文献4】特開2001−86889号公報
【特許文献5】特開平11−286407号公報
【特許文献6】特開2002−10717号公報
【特許文献7】特開平10−243751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、上記の点に鑑み、海苔の養殖において、人体および環境へ悪影響をおよぼすことなく、低コストで、人体に安全に、かつ短時間で、しかも連続作業で効率よく海苔の病害の状況にあわせて臨機応変に雑藻や病害の駆除、予防処理をすることを可能とした海苔の処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記の海苔の処理方法を好適に使用できる海苔作業船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、
〔1〕 海苔もしくは海苔が付着した養殖具を酸を含む処理液に接触させ、次いで水処理液に接触させる工程、または海苔もしくは海苔が付着した養殖具を水処理液に接触させ、次いで酸を含む処理液に接触させる工程を有することを特徴とする海苔の処理方法、
〔2〕 前記水処理液が、水道水、地下水、雨水および精製水からなる群の中から選ばれた1種または2種以上を20重量%以上含有する前記〔1〕記載の海苔の処理方法、
〔3〕 前記酸を含む処理液が海苔の養殖海域の海水に酸を加えてpHを0.5〜5.0に調整したものである、前記〔1〕または〔2〕記載の海苔の処理方法、
〔4〕 前記酸が、無機酸、カルボン酸、有機リン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである前記〔3〕記載の海苔の処理方法、
〔5〕 前記無機酸が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである前記〔4〕記載の海苔の処理方法、
〔6〕 前記カルボン酸が、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、マレイン酸、マロン酸、蟻酸、酒石酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである前記〔4〕記載の海苔の処理方法、
〔7〕 前記有機リン酸が、フィチン酸、ホスホン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種である前記〔4〕記載の海苔の処理方法、
〔8〕 少なくとも2艘の海苔作業船を用いる海苔の処理方法であって、一方の海苔作業船において海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理した後、該海苔もしくは海苔が付着した養殖具が海水に接触するまでに他方の海苔作業船で海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理する、前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の海苔の処理方法、
〔9〕 水処理液が収容される水処理槽と、酸を含む処理液が収容される酸処理槽とが、海苔または海苔が付着した養殖具を各処理槽に連続して接触させ得るように配置されていることを特徴とする、海苔作業船、
〔10〕 複数の処理槽が船首部から船尾部にかけて直列に配置されている、前記〔9〕記載の海苔作業船、
〔11〕 槽内に収容された水処理液の循環ができるように水処理槽と水処理液調製槽とが配管で接続され、該水処理液調製槽に水処理液が供給できるように水タンクが配管で接続され、かつ、槽内に収容された酸を含む処理液の循環ができるように酸処理槽と酸処理液調製槽とが配管で接続され、該酸処理液調製槽に酸を含む処理液が供給できるように酸液タンクが配管で接続され、前記水処理液調製槽および酸処理液調製槽に海水を供給できる構成を有している、前記〔9〕または〔10〕記載の海苔作業船、
〔12〕 各処理液調製槽内の液体のpHまたは塩分濃度を測定できるようにpHセンサーまたは塩分センサーが各処理液調製槽に具備され、前記pHセンサーまたは塩分センサーからの電気信号により、前記水タンクまたは酸液タンクから処理液調製槽へ水処理液または酸性海苔用処理液の供給を調節する制御系を有する前記〔11〕記載の海苔作業船
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の海苔の処理方法および海苔作業船によれば、短時間の処理で、雑藻や赤グサレ病、壺状菌病に対して駆除または予防することが可能となり、冬季の荒れた海などでも、効率良く処理することができる。また、成分としても、海水、真水、公知の酸類を併用しているのでpHの使用域が広く、人体への悪影響も懸念することなく取り扱うことができる。また、一般の食品中に含まれ、食品添加物として認められている有機酸を主体とした処理剤であり、食品としての海苔の品質に問題はなく、消費者へ安心した海苔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の海苔の処理方法は、海苔もしくは海苔が付着した養殖具を酸を含む処理液に接触させ、次いで水処理液に接触させる工程、または海苔もしくは海苔が付着した養殖具を水処理液に接触させ、次いで酸を含む処理液に接触させる工程を有することを特徴とする。この処理方法によれば、海苔の養殖において、人体および環境へ悪影響をおよぼすことなく、低コストで、広いpH領域で使用でき、人体に安全に、かつ短時間で、しかも連続作業で効率よく雑藻や病害の駆除、予防処理をするすることができる。特に、本発明では、海苔葉体の状況に合わせて臨機応変に処理することができる。例えば、海苔や網などの養殖具を低比重の水処理液で処理する必要がない場合には容易に避けることが可能である。したがって、通常の1段階処理に比べて、処理できる網枚数が増加し、また、処理に必要な追加用の真水量を低減することができる。
【0010】
前記酸を含む処理液としては、海苔の養殖海域の海水に酸を加えてpHを0.5〜5.0に調整したものが好ましい。
【0011】
前記酸は、雑藻や赤グサレ病、壺状菌病に対して駆除または予防する効果の加えて、処理液のpHを調整するpH調整剤の役割を担うものである。酸としては、無機酸、カルボン酸、有機リン酸からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。そして、その具体的な無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものを用いることができる。またカルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、マレイン酸、マロン酸、蟻酸、酒石酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸に加えて、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、モノクロル酢酸等が挙げられるが、これらの中から選ばれた1種または2種以上のものを用いることができる。さらに有機リン酸としては、フィチン酸、ホスホン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種を用いることができる。
【0012】
これらの中でも好ましいのは、前記無機酸として塩酸またはリン酸を用いた場合や、前記カルボン酸としてリンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、マロン酸、蟻酸、酒石酸、クロトン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものを用いた場合や、前記有機リン酸としてフィチン酸を用いた場合である。なお、カルボン酸としては、海苔の自然食品的なイメージより食品添加物の酸味料が望ましいこと及び海苔葉体への影響の観点から、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものがより好ましい。
【0013】
そして、酸としては、処理液pHを0.5〜5.0に調整する量であれば適当量添加することができ、好ましくは無機酸としては0.005〜5.0重量%を、有機酸としては0.01〜5.0重量%を含ませることができる。
【0014】
なお、本発明で言う海水としては、養殖場付近の海水が用いられるのが一般的であるが特に限定はない。
【0015】
酸を含む処理液に用いられる媒体としては、海水、あるいは海水と真水との混合物であってもよい。海水の比率としては、前記処理液の媒体中、20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0016】
酸を含む処理液は、前記酸と海水、必要であれば真水を混合することで調製することができる。
【0017】
前記酸を含む処理液のpHとしては、0.5〜5.0が好ましく、病害駆除効果と海苔葉体への影響のバランスや環境への影響の観点から、1.3〜3.0がより好ましい。処理液のpHはpHメーターなどで測定することができる。
【0018】
前記酸を含む処理液の比重は、処理液中のミネラルに代表される塩分濃度として測定することができる。比重の測定には、導電率計、浮秤などを用いることができる。
【0019】
また、本発明において、酸を含む海水、真水の順に連続処理する場合、真水の比重がしだいに高くなり、酸も増加する状況になるため、真水の比重を制御することが必要になる。したがって、酸を含む海水、真水の順で処理する場合、真水の比重は、1.019以下、好ましくは1.016以下に調整することが望ましい。
また、真水、酸を含む海水の順に連続処理する場合、真水の比重が上昇するので、この比重を制御することが必要になる。したがって、真水の比重を1.016以下、好ましくは1.013以下に調整することが望ましい。
なお、前記のpHおよび比重は、処理時の値を示す。
【0020】
また、本発明では、前記の酸を含む処理液の他に、水処理液を用いた処理を施す点に一つの大きな特徴を有する。かかる水処理液に海苔などを接触させることで、酸性の処理液のみで処理していた従来方法に比べて、病原菌や珪藻、特にタビュラリアなどの除去し難いことで知られる珪藻の除去性が向上し、かつ酸を含む処理液による海苔への障害性も軽減するという利点がある。
【0021】
本発明において、水処理液を用いることで、上記のように病原菌や珪藻の除去率が高くなりかつ酸を含む処理液による海苔への障害性が軽減する理由としては明確ではないが、水処理液として海水のみを用いて処理した場合では病原菌や珪藻の除去効果の向上がほとんど見られないことから、真水により海苔の外部環境の浸透圧が低くなり、その結果、病原菌や珪藻類への酸の浸透力が大きくなり、病原菌や珪藻の駆除率が高くなると考えられる。海苔葉体への酸の浸透力も同時に大きくなるが、海苔細胞の方が酸の浸透に対して抵抗力が高いため、病原菌や珪藻より処理に耐えることができる。また、処理液そのものを低比重とした場合と比較して、低比重の酸液にさらされる状況が穏やかであるために、処理液を直接低比重とする1段階での処理より海苔葉体への障害が軽減されるものと思われる。ただ、病原菌や珪藻類は海苔より、浸透圧の変化に弱いため、1段階での低比重処理よりも穏やかな、本発明の処理でも駆除率が高いものと思われる。
【0022】
前記水処理液は、真水を含むものである。本発明に用いられる真水としては、水道水、地下水、雨水、精製水からなる群の中から選ばれた1種または2種以上の塩分を含まない水全般が挙げられる。水処理液としては、前記水道水、地下水、雨水、精製水の中から選ばれた1種または2種以上の真水を20重量%以上含有したものが好ましい。前記処理液中における水道水、地下水、雨水、精製水の含有量は、珪藻などの除去効果向上の観点から、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。なお、前記水処理液の媒体について、真水以外の残部は海水である。
【0023】
前記水処理液は、前記真水、必要であれば海水を混合することで調製される。
【0024】
水処理液の比重(塩分濃度)としては、病害駆除効果と海苔葉体へのバランスの観点から、1.019〜1.006が好ましく、1.016〜1.000がより好ましい。
【0025】
水処理液のpHとしては、病害駆除効果と海苔葉体へのバランスの観点から、1.0〜3.5が好ましく、1.5〜3.0がより好ましい。
【0026】
なお、水処理液の組成、比重およびpHは、処理時のものである。
【0027】
本発明の処理方法では、海苔または海苔が付着した養殖具が前記酸を含む処理液に接触させ、次いで水処理液に接触させる、あるいは前記海苔または海苔が付着した養殖具を水処理液に接触させ、次いで前記酸を含む処理液に接触させる。
【0028】
一般に、海苔養殖業者にとって、養殖場では海中の環境が変化し易く、養殖場付近の潮流の具合によっては、同じ養殖場内であっても珪藻などの分布や海苔の成長度が大きく変化することは周知である。そこで、従来の処理方法では、できるだけ広い範囲の養殖場で効果が得られるように処理液の酸の種類やその濃度を詳細に検討した上で対応しているが、より品質のよい海苔を養殖するためには、養殖環境により適切に対応した処理が必要である。
【0029】
これに対して、本発明の処理方法は、前記のように、水処理液に海苔を接触させる工程を有することで、海苔葉体への障害を抑えながら、酸を含む処理液の効果を向上することができるので、酸を含む処理液に用いる酸の種類や濃度を事前に検討する煩雑さが軽減され、しかも短時間でも優れた処理効果を示すことができる。
【0030】
本発明において、各処理液と海苔とを接触させる手段としては、浸漬、噴霧など公知の手段であれば特に限定はないが、確りと接触させやすい観点から、海苔を処理液中に浸漬させることが好ましい。
【0031】
また、本発明の処理方法では、酸を含む処理液や水処理液のpH、比重の調整を行うことで安定な連続処理をすることができる。
【0032】
例えば、前処理に水処理液を用いた場合、海水が持ち込まれることで、水処理液の塩分が増えて徐々に比重が上昇するので、水処理液に真水を添加して比重の調整を行う必要がある。後処理で用いる酸を含む処理液に真水が持ち込まれた場合、比重の低下が生じるので、比重の調整は必要であるが、比重としてかなり低く(例えば、1.006)ならなければ調整の必要はない。また、通常の処理に戻る場合は、前処理を停止し、塩類(例えば、食塩、塩化マグネシウム、塩化カリウム)を添加溶解して後処理液の比重を通常の比重まで戻して、処理を開始すればよい。
また、後処理に水処理液を用いた場合、前処理で用いる海苔用処理液は従来どおりの酸(pH)の調整を行えばよい。この場合、水処理液には酸の持込によるpHの低下と塩分の持込による比重の上昇が生じ易いため、真水を追加することでpHと比重の調整を行う。そして、通常の処理に戻る場合は、後処理を停止するだけでよい。
【0033】
本発明においては、前処理または後処理とも、海苔または海苔が付着した養殖具を接触させる時間として5〜30秒程度で十分な効果が奏される。酸を含む処理液、水処理液への接触時間を適宜調整することで、1段階で処理していた従来の処理方法よりも、海苔の養殖状態により適切に対応することができる。
【0034】
また、本発明において、海苔または海苔が付着した養殖具は、容器状の処理槽内に収容された処理液中に接触させる。また、モグリ船等のように、海苔の養殖網の下に船を潜らせて、処理液を網の下に素通ししながら処理をする場合、平面状の処理槽上で養殖具などを処理液と接触させることもできる。
【0035】
上記のような本発明の処理方法は、例えば、図1に示すような構成を有する海苔作業船1で実施できる。海苔作業船1は、処理槽2aと処理槽2bのように2つの独立した処理槽を有している。これらの処理槽には、水処理液または酸を含む処理液が収容され、この2つの処理槽内には海苔が付着した養殖具を連続して接触させることができる。なお、水処理液を収容されるものを水処理槽、酸を含む処理液が収容されるものを酸処理槽という。
【0036】
処理槽の数は、必要であれば、3つ以上にすることもできる。また、処理槽の位置については、海苔または海苔が付着した養殖具を連続して接触させるように配置されていればよい。例えば、連続処理がし易い観点から、図1に示すように、船首部から船尾部にかけて処理槽が直列に配置されていることが好ましい。また、処理槽は、図1では船体3の甲板上に設けられているが、船体3中に設けられていてもよい。
【0037】
また、海苔作業船1には、養殖具を海中から掬い上げ(引き揚げ)処理槽2aと処理槽2bまで移動させて接触させる運搬装置が配設されている(図示せず)。このような運搬装置としては、海苔作業船の形態に応じたものであればよい。
【0038】
例えば海苔網を海中から引き上げて船体上または船体内の処理槽中で接触させる海苔作業船の場合、クレーン、ウインチ、滑車などの運搬装置が用いられる。
【0039】
また、モグリ船といわれる、船体を海苔網の下に潜らせて処理液を網の下に素通ししながら処理をする海苔作業船の場合、海面に浮かんでいる海苔網を船体の前進に伴ない、円滑に掬い上げ得る先端形状を有する海苔網用ガイドが船体の船首端から船尾端の後方まで伸びて配設されている。この場合、処理槽は平坦面からなり、その平坦面には船幅方向に延びる処理液噴射管が設置されて平坦面の表面が処理液で覆われるようになっている。海苔網は平坦面上を通過する際に処理液と接触した状態になる。その後、海苔網は、海苔網用ガイドに沿って、船尾方向に移動し、最後は海中に戻される。なお、前記平面状の処理槽には処理液の回収口が設けられ、処理液の再利用が行われる構成となっていることが好ましい。
【0040】
また、海苔作業船には、海苔網から海苔を回収するための装置が配設されていてもよい。この場合、1段目または2段目の処理槽の前に該海苔網から海苔を刈り取るなどして回収する装置が配設されているのが好ましい。
【0041】
なお、前記処理槽、船体などの構成材料は、公知の海苔作業船と同じものであればよい。
【0042】
また、本発明の別の実施態様として、図1の構成に加えて、図2に示すように、処理槽2a、2bが、配管4a、a’、4b、4b’にて処理液調製槽5a、5bと接続されている海苔作業船1’が挙げられる。かかる構成の海苔作業船1’では、海苔網を接触させる処理槽と処理液が供給される処理液調製槽とが別れているため、常に調整された処理液が新たに供給されるので、処理槽内の処理液の組成が均一に保たれ易く、効果にムラが出難くなり、連続的な処理を行っても安定な効果が維持できる。
【0043】
前記処理槽2aは、処理液調製槽5aと配管4a、4a’により接続されている。同様に、処理槽2bは、処理液調製槽5bと配管4b、4b’により接続されている。そして、処理槽2aと処理液調製槽5aとの間、および処理槽2bと処理液調製槽5bとの間は前記配管を通じて槽内に収容された液体が循環できる構造となっている。したがって、配管で接続された処理槽と処理液調製槽とに収容されている処理液の組成は実質的に同じものとなる。なお、前記配管には液体の循環を容易にするため、ポンプが設置されていることが好ましい(図示せず)。
【0044】
前記処理液調製槽5a、5bには水処理液または酸を含む処理液が収容される。このため、水を収容した水タンク6と酸性の処理液に用いる酸液を収容したタンク(酸液タンク7)とがポンプ(図中、「P」)を備えた配管4c、4c’により処理液調製槽5a、5bと接続されていることが好ましい。水タンク6と酸液タンク7とは共に水処理液、酸液を処理液調製槽5a、5bに供給し易い位置に設置されていればよい。なお、前記処理液調製槽の数としては、処理槽の数と同じであればよい、また、処理液調製槽5a、5bに海水をくみ上げて、タンク内に導入できる構造がよい。
【0045】
また、前記処理液調製槽5a、5bには、pHセンサー及び/又は塩分センサーが設置されていることが好ましい(図示せず)。pHセンサ−は少なくとも酸液を添加する槽に設置すればよい。塩分センサ−は少なくとも酸液を添加しない方の槽に設置すればよい。
【0046】
作業者は、前記pHセンサー、塩分センサーが接続されたpHメーター、塩分計(図示せず)で数値を確認することができる。例えば、処理液調製槽5a内に酸を含む処理液が収容されている場合、連続処理を続けると、海苔用処理液のpHが上昇して、所定のpH範囲を超えるようになる。この場合、所定のpH範囲を超える前に酸液タンク7のポンプを作動させて、酸液を処理液調製槽5a内に補充することで、酸を含む処理液のpHを調整することができる。
一方、処理液調製槽5b内に水処理液が収容されている場合、連続処理を続けると、比重を示す塩分濃度が上昇して所定の範囲を超えるようになる。この場合、所定の範囲を超える前に水タンク6のポンプを作動させて、水処理液を処理液調製槽5b内に補充することで処理液の塩分濃度(比重)を調整することができる。
【0047】
なお、海苔作業船1’の他の構成は前記図1に示す海苔作業船1と同じであればよい。
【0048】
また、本発明の別の実施態様として、図2の構成に加えて、図3に示すように、処理液のpH調整と塩分調整とを自動で行うことができるタイプの海苔作業船1’’が挙げられる。海苔作業船1’’は、前記処理液調製槽内の液体のpHまたは塩分濃度を測定できるようにpHセンサーまたは塩分センサーが前記処理液調製槽に具備され、前記pHセンサーまたは塩分センサーからの電気信号により、前記水タンクまたは酸液タンクから処理液調製槽へ水処理液または酸性海苔用処理液の供給を調節する制御系を有する。
【0049】
具体的には、海苔作業船1’’では、pHセンサーと塩分センサーは、pHメーター8と塩分計9とそれぞれ電気的に接続されている。そして、pHメーター8は酸液タンク7のポンプPと電気的に接続し、塩分計9は水タンク6のポンプPと電気的に接続している。この場合、pHメーター8と塩分計9は、予め設定した範囲のpHや塩分濃度を超えると前記ポンプに電気的な信号が送られて、ポンプが作動するように設定されている。
例えば、処理液調製槽5a内に酸を含む処理液が収容されている場合、所定のpH範囲を超えたことをpHセンサーが感知すると、pHメーター8から酸液タンク7のポンプに電気的な信号が送られて、所定のpH範囲になるまでポンプを作動させて、酸液が処理液調製槽5a内に補充される。
一方、処理液調製槽5b内に水処理液が収容されている場合、所定の範囲を超えたことを塩分センサーが感知すると、塩分計9から水タンク6のポンプに電気的な信号が送られて、所定の塩分濃度になるまでポンプを作動させて、水処理液が処理液調製槽5b内に補充される。
【0050】
海苔作業船1’’において、真水や酸液の供給量については、前記pHメーターや塩分計に接続したコンピュータなど制御装置に酸濃度や供給速度などの条件を入力して制御させることもでき、必要であれば、ポンプなどの作動を手動で行うことも可能である。
また、処理を続けると養殖環境の変化に応じて処理液の比率を調整したり、必要であれば、前記のような2段階処理を行う必要がなくなる場合もある。その場合では、適宜処理槽への酸液や真水の供給量を調整したり、接触させないなど処理条件を適宜変更することで、処理現場でも調整することができる。
【0051】
本発明の海苔作業船は、前記のように、海苔用処理液の酸液と真水の供給を必要に応じて自由に調整できるため、従来のような1つの処理槽を有する海苔作業船に比べて、連続処理をより長く行うことができるだけでなく、多様な状況にある海苔の養殖環境下でも適切に対応でき、かつ処理を速やかに施すことが可能となる。
【0052】
前記のような構成を有する本発明の海苔作業船を用いることで、連続処理した場合に、各処理液調製槽中の処理液を処理に適した状態に維持することができる。
【0053】
また、本発明の処理方法は、1つの処理槽を有する公知の海苔作業船を用いて行うこともできる。例えば、少なくとも2艘の海苔作業船のうち一方の海苔作業船では酸を含む処理液を用い、他方の海苔作業船では水処理液を用い、一方の海苔作業船において海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理した後、該海苔もしくは海苔が付着した養殖具が海水に接触するまでに他方の海苔作業船で海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理する処理方法が挙げられる。海苔作業船がモグリ船であれば、図4に示すように、一方の海苔作業船Aで海苔もしくは海苔が付着した養殖具10を処理した後、該海苔もしくは海苔が付着した養殖具10が海水に接触するまでに他方の海苔作業船Bで海苔もしくは海苔が付着した養殖具10を処理すればよい。なお、前記海苔作業船A、Bは、海苔の状態、処理液に用いる酸の種類、濃度に応じて、各作業船における操作条件、特に海苔の処理液への接触時間を調整する必要がある。
【0054】
上記のように海苔作業船を少なくとも2隻を連続して用いることで、海苔作業船に特別な修理・改装を施すことなく、本発明の処理方法を実施することができる。
【0055】
また、前記のように、少なくとも2隻の海苔作業船を用いて処理する場合、海苔の処理効果を維持する観点から、2隻の作業船の間にある海苔や海苔養殖具は海水に接触しないように各作業船を操作する必要がある。例えば、図4に示すように、海苔網の端から端まで一方の作業船と他方の作業船とを続けて前進させることを繰り返してもよい。また、クレーンなどの運搬装置を用いて海苔養殖網を処理槽に浸漬させるタイプの作業船では一方の作業船の処理槽から他方の作業船の処理槽まで海苔などを運搬できる範囲に配置されていればよい。
【実施例】
【0056】
(実施例I)
表1に示す酸濃度、pHの処理液を調製した。
ついで、表1に示すように前処理液および後処理液を用いて珪藻(タビュラリア珪藻も含む)が多数付着した海苔葉体の処理を行い、海苔葉体への影響および珪藻駆除効果を調べた。
酸を含まない前処理液に海苔葉体を5秒間浸漬し、酸を含む後処理液に10秒間浸漬後、45秒間放置して、通常の海水で洗浄して新たな通常海水中に海苔葉体を戻した。処理温度はともに10℃とした。
【0057】
(海苔葉体への影響および珪藻駆除効果の評価方法)
処理後の海苔葉体を0.2W/V%エリスロシン溶液で染色し、顕微鏡で観察した。海苔葉体への影響は、細胞の染色率(死滅率)といたみ具合で評価し、珪藻の駆除効果は染色率(死滅率)と除去率の両方で評価した。
海苔葉体への影響の評価基準は、以下のとおり。
「○」:検鏡した海苔葉体の細胞のうち、染色(死滅した)されたり、いたんだ細胞が5%未満である。
「○〜△」:検鏡した海苔葉体の細胞のうち、染色(死滅した)されたり、いたんだ細胞が5%〜10%未満である。
「△」:検鏡した海苔葉体の細胞のうち、染色(死滅した)されたり、いたんだ細胞が10%〜20%未満である。
「△〜×」:検鏡した海苔葉体の細胞のうち、染色(死滅した)されたり、いたんだ細胞が20%〜50%未満である。
「×」:検鏡した海苔葉体の細胞のうち、染色(死滅した)されたり、いたんだ細胞が50%を超える。
して行った。
珪藻の駆除効果の評価基準は、以下のとおり。
「◎」:非常に良好で、駆除効果は80%以上
「○」:十分な効果で、駆除効果は50〜80%
「△」:効果は不十分で、駆除効果は20〜50%
「×」:効果は弱く、駆除効果は20%未満
【0058】
【表1】

【0059】
表1の結果より、実施例I−1〜16で行った2段階の処理は、比較例I−2〜I−4と同等またはそれ以上の効果が得られているが海苔葉体への影響は少ないことがわかる。特に、実施例I−8〜I−16での処理を見ると、水処理液中の真水の濃度が上昇するにつれて、海苔葉体への影響は若干見られるものの、珪藻駆除効果が顕著になることがわかる。また、実施例I−1〜7での処理を見ると、比較例1−5〜I−7より、タビュラリアのような駆除が困難な珪藻でも駆除できることがわかる。
【0060】
(実施例II)
表2に示す酸濃度、pHの処理液を調製した。
ついで、表2に示すように前処理液および後処理液を用いて珪藻(タビュラリアを含む)が多数付着した海苔葉体の処理を行い、海苔葉体への影響および珪藻駆除効果を調べた。
酸を含む前処理液に海苔葉体を10秒間浸漬し、酸を含まない後処理液に5秒間浸漬後、45秒間放置して、通常の海水で洗浄して新たな通常海水中に海苔葉体を戻した。処理温度はともに10℃とした。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果より、実施例II−1〜17で行った2段階の処理は、海苔葉体への影響が少なく、かつタビュラリアを含む珪藻駆除効果に優れることがわかる。
また、比較例II−2〜II−7のような通常の処理に比べて、珪藻駆除効果が向上しつつ、海苔葉体への影響は維持されていることがわかる。
【0063】
(実施例III)
表3に示す酸濃度、pHの処理液を調製した。
ついで、表3に示すように前処理液および後処理液を用いて珪藻(タビュラリアを含む)が多数付着した海苔葉体の処理を行い、海苔葉体への影響および珪藻駆除効果を調べた。
酸を含まない前処理液に海苔葉体を5秒間浸漬し、酸を含む後処理液に10秒間浸漬後、45秒間放置して、通常の海水で洗浄して新たな通常海水中に海苔葉体を戻した。処理温度はともに10℃とした。
【0064】
【表3】

【0065】
表3の結果より、実施例III−1〜10で行った2段階の処理は、海苔葉体への影響が少なく、かつタビュラリアを含む珪藻駆除効果に優れることがわかる。また、通常の処理である比較例III−2の処理に比べて、珪藻駆除効果が向上し、海苔葉体への影響もあまり強くなっていないことがわかる。
【0066】
(実施例4)
表4に示す酸濃度、pHの処理液を調製した。
ついで、表4に示すように前処理液および後処理液を用いて珪藻(タビュラリアを含む)が多数付着した海苔葉体の処理を行い、海苔葉体への影響および珪藻駆除効果を調べた。
酸を含まない前処理液に海苔葉体を5秒間浸漬し、酸を含む後処理液に10秒間浸漬後、45秒間放置して、通常の海水で洗浄して新たな通常海水中に海苔葉体を戻した。処理温度はともに10℃とした。
なお、使用した酸液の組成は以下のとおりである。
「ブラック5000」(商品名、扶桑コーポレーション製)の組成:
有機酸40%(クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、
リン酸塩、塩化アンモニウム、その他成分
「WダッシュII」(商品名、扶桑化学工業株式会社製)の組成:
有機酸52%(乳酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸)、リン酸塩、塩化アンモニウム、その他成分
【0067】
【表4】

【0068】
表4の結果より、実施例IV−1〜IV−7で行った2段階の処理は、比較例IV−2のような通常の処理に比べて、珪藻駆除効果が向上し、海苔葉体への影響も比較例IV−3よりも抑制されていることがわかる。
【0069】
(実施例V)
表5に示す酸濃度、pHの処理液を調製した。
ついで、表5に示すように前処理液および後処理液を用いて珪藻(タビュラリアを含む)が多数付着した海苔葉体の処理を行い、海苔葉体への影響および珪藻駆除効果を調べた。
酸を含む前処理液に海苔葉体を10秒間浸漬し、酸を含または後処理液に5秒間浸漬後、45秒間放置して、通常の海水で洗浄して新たな通常海水中に海苔葉体を戻した。処理温度はともに10℃とした。
【0070】
【表5】

【0071】
表5の結果より、実施例V−1〜4および実施例V−5〜8で行った2段階の処理では、後処理に用いる水処理液中の真水濃度が高いほどタビュラリアを含む珪藻駆除効果に優れる傾向があることがわかる。
【0072】
また、実施例I−8〜I−15、II−15〜II〜17、III−1〜III−10、IV−1〜IV−7、V−5〜V−8に示す処理は、pH調整をしながら連続処理した場合を想定しているが、海苔葉体への影響は抑制され、珪藻駆除効果については優れた結果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の海苔作業船の一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】本発明の海苔作業船の一実施態様を示す概略説明図である。
【図3】本発明の海苔作業船の一実施態様を示す概略説明図である。
【図4】モグリ船を用いた場合の本発明の海苔処理方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 1’ 1’’ 海苔作業船
2a 2b 処理槽
3 船体
4a 4a’ 4b 4b’ 4c、4c’ 配管
5a 5b 処理液調製槽
6 水タンク
7 酸液タンク
8 pHメーター
9 塩分計
10 海苔または海苔が付着した養殖具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔もしくは海苔が付着した養殖具を酸を含む処理液に接触させ、次いで水処理液に接触させる工程、または海苔もしくは海苔が付着した養殖具を水処理液に接触させ、次いで酸を含む処理液に接触させる工程を有することを特徴とする海苔の処理方法。
【請求項2】
前記水処理液が、水道水、地下水、雨水および精製水からなる群の中から選ばれた1種または2種以上を20重量%以上含有する請求項1記載の海苔の処理方法。
【請求項3】
前記酸を含む処理液が海苔の養殖海域の海水に酸を加えてpHを0.5〜5.0に調整したものである、請求項1または2記載の海苔の処理方法。
【請求項4】
前記酸が、無機酸、カルボン酸、有機リン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである請求項3記載の海苔の処理方法。
【請求項5】
前記無機酸が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである請求項4記載の海苔の処理方法。
【請求項6】
前記カルボン酸が、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、マレイン酸、マロン酸、蟻酸、酒石酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種以上のものである請求項4記載の海苔の処理方法。
【請求項7】
前記有機リン酸が、フィチン酸、ホスホン酸からなる群の中から選ばれた1種または2種である請求項4記載の海苔の処理方法。
【請求項8】
少なくとも2艘の海苔作業船を用いる海苔の処理方法であって、一方の海苔作業船において海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理した後、該海苔もしくは海苔が付着した養殖具が海水に接触するまでに他方の海苔作業船で海苔もしくは海苔が付着した養殖具を処理する、請求項1〜7いずれか記載の海苔の処理方法。
【請求項9】
水処理液が収容される水処理槽と、酸を含む処理液が収容される酸処理槽とが、海苔または海苔が付着した養殖具を各処理槽に連続して接触させ得るように配置されていることを特徴とする、海苔作業船。
【請求項10】
複数の処理槽が船首部から船尾部にかけて直列に配置されている、請求項9記載の海苔作業船。
【請求項11】
槽内に収容された水処理液の循環ができるように水処理槽と水処理液調製槽とが配管で接続され、該水処理液調製槽に水処理液が供給できるように水タンクが配管で接続され、かつ、槽内に収容された酸を含む処理液の循環ができるように酸処理槽と酸処理液調製槽とが配管で接続され、該酸処理液調製槽に酸を含む処理液が供給できるように酸液タンクが配管で接続され、前記水処理液調製槽および酸処理液調製槽に海水を供給できる構成を有している、請求項9または10記載の海苔作業船。
【請求項12】
各処理液調製槽内の液体のpHまたは塩分濃度を測定できるようにpHセンサーまたは塩分センサーが各処理液調製槽に具備され、前記pHセンサーまたは塩分センサーからの電気信号により、前記水タンクまたは酸液タンクから処理液調製槽へ水処理液または酸性海苔用処理液の供給を調節する制御系を有する請求項11記載の海苔作業船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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