説明

海藻類の陸上養殖装置、および海藻類の陸上養殖方法

【課題】海藻類の養殖に必要な動力エネルギを最小化すると共に、海藻類の生長率向上と設備面積軽減により単位面積当たりの海藻類の生産性向上と設備費軽減を図ることができる海藻類の陸上養殖装置、および海藻類の陸上養殖方法を提供することを課題とする。
【解決手段】養殖用海水を貯留し、少なくとも底部に湾曲壁面を有する養殖水槽と、養殖水槽内に新たな養殖用海水を供給する養殖用海水供給装置とを備える海藻類の陸上養殖装置を使用して、養殖水槽の湾曲壁面に沿うように養殖用海水を旋回させて攪拌することにより、低コストでありながら、省エネルギで効率よく海藻類を生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の陸上養殖装置および海藻類の陸上養殖方法に関し、詳しくは、地下海水、海洋深層水などの養殖用海水を用いてアオノリ等の海藻類を陸上にて養殖するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海苔などの海藻類の生産・栽培は、海上で行われていた。しかし、海上での生産・栽培は、天候・気温・海水温・海水中の養分などによる影響を受けやすく、毎年安定した生産・栽培を維持することが困難であった。
一方、陸上養殖では、管理された環境下で海藻類を育成することができ、自然環境の影響を受けにくく安定した生産を期待できる。一方、陸上養殖では、大規模な設備と広い用地を必要とするため、生産コストの面で課題があった。
【0003】
このような課題を解決するために、特許文献1および2で開示されるように、高密度での海藻類の栽培が可能な非着床型栽培方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−176866号公報
【特許文献2】特開平7−203789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案されている非着床型栽培方法では、水槽内でエアレーションを行うことで、海藻類を流動させ均等な光照射が行われている。
また、特許文献2で提案されている陸上栽培方法では、角型水槽(タテ6.2m×横4m×深さ0.5m)が使用され、水平方向に屈曲した水平噴出部より海水が供給されている。
しかしながら、これらの方法では、海藻類の生産性は必ずしも実用上満足いくものではなく、更なる生産性の改良が必要であった。
【0006】
さらに、海上養殖では海水の流動は自然にもたらされるのに対して、陸上養殖では、通常、海水の供給および流動に対して動力が必要とされる。そのため、製造コストの点では、この動力エネルギを最小化しつつ、海藻類の生長速度を高めて、海藻類の生産性を高める必要がある。
【0007】
そこで本発明は、上記実情に鑑みて、海藻類の養殖に必要な動力エネルギを最小化すると共に、海藻類の生長率向上と設備面積軽減により単位面積当たりの海藻類の生産性向上と設備費軽減を図ることができる、海藻類の非着床型栽培に使用される海藻類の陸上養殖装置、および、海藻類の陸上養殖方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の問題点について検討した結果、まず、従来技術では、養殖水槽が深くになるにつれて、光が届きにくい下部にある海藻と、光が強く照射される上部の海藻との位置を置き換える循環が十分には進行しないことを見出した。また、従来技術では、海藻類の表面に酸素の気泡が付着して、海藻類への光合成に必要な二酸化炭素などの供給が十分に行われていないことを見出した。
そこで、本発明者らは、上記知見に基づき検討を行った結果、所定の形状を有する養殖水槽を用いて海藻類の生育に必要な養殖用海水の供給を行うことにより、養殖用海水の供給を養殖水槽内の攪拌エネルギとして利用して攪拌効率を高めることができ、結果として必要な動力エネルギを抑制しつつ海藻類の生長性が高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、この発明に係る海藻類の陸上養殖装置は、海藻類を養殖するための養殖用海水を貯留する養殖水槽と、該養殖水槽内に新たな養殖用海水を供給する養殖用海水供給装置とを備え、該養殖水槽は、少なくとも底部に湾曲壁面を有し、横断面形状がU字状または半円状であり、該養殖用海水供給装置は、該養殖水槽内に貯留された該養殖用海水に対し、上方から該新たな養殖用海水を噴流状に流下させることにより、該養殖水槽内の該養殖用海水を該湾曲壁面に沿うように旋回させて攪拌するものである。
【0010】
また、養殖水槽は、2つの側壁部と、該2つの側壁部間に位置し、少なくとも該湾曲壁面の一部をなす底壁部とを備え、該養殖用海水供給装置は、該新たな養殖用海水を上方から略垂直方向に噴流状に流下させる注水管を備え、該注水管の先端部は、該養殖水槽内に貯留された該養殖用海水の水面下に配置されることが好ましい。
【0011】
また、注水管は、該養殖水槽の該2つの側壁部の一方または両方の上端部近傍に配置され、該養殖水槽内の該養殖用海水に対し、該新たな養殖用海水を該側壁部に沿って噴流状に流下させることが好ましい。
【0012】
また、注水管は、該2つの側壁部の略中心位置に配置され、該新たな養殖用海水を該養殖水槽内の該養殖用海水の略中心位置に噴流状に流下させることが好ましい。
【0013】
また、注水管の先端は、該養殖水槽内の該養殖用海水の水面位置から該養殖水槽の最底部までの深さの1/2以内の深さ位置に配置されることが好ましい。
【0014】
この発明に係る海藻類の陸上養殖装置は、さらに、該養殖水槽内の該養殖用海水中に、該養殖用海水の攪拌を促進する気泡を供給する気体供給装置を備えることが好ましい。
【0015】
また、養殖水槽は、その上部の所定の位置に該養殖水槽内の該養殖用海水をオーバーフローさせるオーバーフロー用開口を備え、該養殖水槽内に貯留された該養殖用海水の水面位置を規定することが好ましい。
【0016】
この発明に係る海藻類の陸上養殖装置は、さらに、該オーバーフロー用開口からオーバーフローした該養殖用海水を該養殖水槽に循環させる養殖用海水循環装置を備えることが好ましい。
【0017】
また、養殖用海水循環装置は、該オーバーフロー用開口からオーバーフローした該養殖用海水を溜めると共に、溜められた養殖用海水と供給された補給用の養殖用海水とを混合して該新たな養殖用海水とする養殖用海水循環槽を備え、該養殖用海水循環槽の該新たな養殖用海水を該養殖水槽に戻すことが好ましい。
【0018】
この発明に係る海藻類の陸上養殖装置は、さらに、該養殖水槽の所定の位置に該養殖水槽内の海藻類を回収するための回収口を備えることが好ましい。
【0019】
また、この発明に係る海藻類の陸上養殖方法は、少なくとも底部に湾曲壁面を有し、横断面形状がU字状または半円状である養殖水槽内に貯留された養殖用海水中で海藻類の養殖を行う海藻類の陸上養殖方法であり、予め、該養殖水槽内に該養殖用海水を貯留しておき、該養殖水槽内に貯留された該養殖用海水に対し、上方から新たな養殖用海水を噴流状に流下させ、該養殖水槽内の該養殖用海水を湾曲壁面に沿うように旋回させて攪拌する。
【0020】
また、本発明の海藻類の陸上養殖方法においては、該養殖水槽内の該養殖用海水を旋回させるための流速は、1〜10cm/sであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の海藻類の陸上養殖方法においては、該新たな養殖用海水の流下は、該養殖水槽の2つの側壁部の一方または両方の上端部近傍の該養殖用海水の水面下に、該新たな養殖用海水を、直接供給して、噴流状に流下させるものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の海藻類の陸上養殖方法においては、該新たな養殖用海水の流下は、該養殖水槽の2つの側壁部の上端部近傍の略中心位置の該養殖用海水の水面下に、該新たな養殖用海水を、直接供給して、該養殖水槽内の該養殖用海水の略中心位置に噴流状に流下させるものであることが好ましい。
【0023】
また、本発明の海藻類の陸上養殖方法においては、該養殖水槽内を旋回している該養殖用海水中に、該養殖用海水の攪拌を促進する気泡を供給することが好ましい。
【0024】
また、本発明の海藻類の陸上養殖方法においては、該新たな養殖用海水の供給量(l/min)と、該気泡の供給量(l/min)との比(気泡供給量/養殖用海水供給量)が1〜5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、養殖水槽の湾曲壁面に沿うように養殖用海水を旋回させて攪拌することにより、養殖に必要な養殖用海水の流入エネルギを効率的に養殖水槽内の攪拌エネルギに変換することができ、低コストでありながら、省エネルギで効率よく海藻類を生産することができる。つまり、本発明においては、養殖水槽内での養殖用海水の効率的な攪拌が行われることにより、養殖水槽内で海藻類が上下に移動して効率的に光吸収を行うことができると共に、攪拌によって海藻類の表面に付着した酸素が洗い流され、結果として海藻類の効率的な光合成を行うことができる。さらに、本発明においては、養殖水槽の深さを深くすることができ、装置設置面積当たりの海藻類の収量を大きくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る海藻類の陸上養殖装置の概略構成図である。
【図2】養殖水槽中の養殖用海水の流れを示す養殖水槽の横断面図である。
【図3】養殖水槽中の養殖用海水の流れを示す養殖水槽の横断面図である。
【図4】この発明の第2の実施形態に係る海藻類の陸上養殖装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の海藻類の陸上養殖装置について、図面を参照して説明する。
【0028】
<海藻類の陸上養殖装置(第1の実施形態)>
まず、以下に、本発明の海藻類の陸上養殖装置の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の海藻類の陸上養殖装置10の概略構成図である。
海藻類の陸上養殖装置10は、海藻類の非着床型栽培に使用されるものであって、養殖水槽12と、養殖用海水供給装置14と、気体供給装置16と、オーバーフロー水受け樋20と、回収管22と、回収カゴ24とを備える。養殖水槽12は、オーバーフロー用開口18を備える。
【0029】
陸上養殖装置10で養殖される海藻類の種類は特に制限されないが、例えば、海苔類(なかでも、スジアオノリまたはホソエダアオノリが好ましい)が挙げられる。
なお、海藻類の複数の胞子が連結した胞子集塊、もしくはそれら胞子が発芽した発芽体が絡みあった発芽体集塊を、もしくはそれら発芽体集塊を別の小型水槽で数日間養殖し、適正なサイズに育成させた後、陸上養殖装置10に供給してもよい。該胞子集塊および発芽体集塊は、直径5mm以下の小集塊に粉砕して使用されることが好ましい。なお、該胞子集塊および発芽体集塊は、例えば、特許文献1に記載の方法で製造される。
【0030】
また、陸上養殖装置10で使用される養殖用海水Wとしては、海藻類の養殖に使用できる海水であれば特にその海水の種類は制限されないが、例えば、地下海水、海洋深層水などが使用される。なお、一般海水も使用することができるが、不純物が多く含まれている場合が多く、海藻類の生長が阻害されるおそれがある。このため、一般海水を使用する場合には、含まれる不純物をろ過して用いるのが好ましい。
【0031】
養殖水槽12は、養殖用海水Wが貯留され、海藻類を養殖するための水槽である。
養殖水槽12は、少なくとも底部に湾曲壁面を有し、その横断面形状がU字状である。より具体的には、養殖水槽12は、平行に対向して配置される2つの平板状の側壁部36と、該2つの側壁部36間に位置し、湾曲壁面をなす断面半円形状の底壁部38と、該2つの側壁部36の両端に配置された2つの端壁部40とから構成される。なお、平板状の側壁部36は、半円筒状の底壁部38から中心軸方向に平行に延びる。また、該養殖水槽12の半円筒状の底壁部38の中心軸に垂直な方向での断面形状を意味し、図1中のyz平面での断面形状を意味する。
【0032】
横断面形状は、以下の理由よりU字状であることが好ましい。まず、横断面形状をU字状にして養殖水槽の高さを高くして容積を増やす方式とすれば、単位面積当たりの養殖用海水の増加につながると共に、海藻類の量も増やすことができ、結果として単位面積当たりの海藻類の生産性を向上させることができる。また、装置の設置面積の減少により、設備費の低減にもつながる。
なお、養殖水槽12の形状は、図1の形状に限られず、その横断面形状が半円状であってもよい。この場合、湾曲壁面の上部側を側壁部、湾曲壁面の底部を底壁部と呼ぶ。
【0033】
養殖水槽12の大きさは特に制限されず、使用される養殖用海水Wの透明度、海藻類の密度、養殖期間等に応じて適宜最適な大きさが選択される。例えば、海苔類の養殖を行う場合、光合成の進行のしやすさや、取扱いやすさの点で、端壁部40間の長さは2〜5m程度(好ましくは2〜4m程度)であり、側壁部36の上端部間の長さは10〜30m程度である。また、養殖水槽12内の養殖用海水Wの水面位置から養殖水槽12の最底部までの水深(図1中、深さHに該当)は、通常、1〜2.5m程度である。
また、養殖水槽12の容量は、通常、10〜200t程度(好ましくは20〜200t程度)である。
【0034】
なお、通常、養殖用海水中における光合成のための光の深さ方向への到達度は、水深1m程度までであり、それ以降の水深には光が効率的に到達できない。特に、海藻類が密集する場合、水深の浅い位置にある海藻類が光を遮るため、水深の深い位置にある海藻には光が届きにくい。つまり、水深1m超にある海藻には光が届きにくく、光合成が進行しにくい。
一方、本発明においては、上記のように養殖水槽12内の養殖用海水Wの水深を深くした場合でも、養殖用海水の旋回による攪拌によって、海藻類を光が到達できる範囲まで移動させることができ、海藻類に均等に光照射を行うことができる。結果として、養殖水槽12の設置面積を小さくしつつ、養殖水槽12中の養殖用海水Wの水深を高め、海藻類の収穫量を増大させることができる。
【0035】
養殖水槽12の湾曲壁部の曲率半径の大きさは、養殖される海藻類の種類や養殖水槽12の大きさなどにより適宜選択されるが、後述する注水管28からの噴流の有効流速到達距離、および、養殖水槽12深さの点から、1〜2.5m程度が好ましく、1〜2m程度がより好ましい。
【0036】
養殖用海水給水装置14は、上記養殖水槽12内に新たな養殖用海水Wを供給する装置であって、給水配管26と注水管28とを備える。給水配管26は図示しない養殖用海水供給源と注水管28とを接続し、養殖用海水供給源から供給される養殖用海水Wは、給水配管26を通って注水管28に送液され、注水管28の先端部より養殖水槽12内に貯留されている養殖用海水Wに噴出される。なお、養殖用海水Wは、通常、図示しない給水用ポンプにより、給水配管26を通って送液される。
養殖用海水供給装置14は、新たな養殖用海水Wを供給する機能と共に、養殖水槽12内の養殖用海水Wを攪拌する機能を有する。なお、本発明の攪拌とは、養殖水槽12内で養殖用海水Wを全体として旋回させることを意味する。
【0037】
注水管28は、養殖水槽12内の養殖用海水Wに対して、新たな養殖用海水Wを上方から略垂直方向に噴流状に流下させる管である。
図1中、注水管28の先端部は、養殖水槽12内に貯留された養殖用海水Wの水面下に配置される。
なお、注水管28の先端部は、養殖水槽12内に貯留された養殖用海水Wの水面上に配置されていてもよいが、水面上から新たな養殖用海水Wを噴出すると水面での衝突による波動や跳ね返り等によりエネルギ損失が生じるためやや不利となる。
【0038】
注水管28の先端部の好ましい配置高さとしては、注水管28の先端部が養殖水槽12内の養殖用海水Wの水面位置から養殖水槽12の最底部までの深さ(図1中、深さHに該当)の1/2以内の深さ範囲が挙げられる。注水管28の先端部の位置が深さHの1/2超の範囲の場合、攪拌速度がやや低下する。これは先端部の位置が深すぎると、注入流による流れが周辺の幅方向にも拡大して養殖水槽12の湾曲壁面に沿って加速していく過程で、加速距離が短くなるので攪拌エネルギを有効に使用できず、攪拌速度が低下してしまうためと推測される。
【0039】
注水管28の配置位置は、図1においては、養殖水槽12の一方の側壁部36の上端部近傍に配置されているが、その配置位置は特に制限されない。
例えば、2つの側壁部36の両方の上端部近傍に配置されていてもよく、また、2つの側壁部36の略中心位置に配置されていてもよい。なお、2つの側壁部36の略中心位置の場合、養殖水槽12への光を遮ることがあるため、側壁部36の上端部近傍に注水管28が配置されることが好ましい。
【0040】
図1において、注入管28は3つ使用されているが、注水管28の本数は特に制限されず、4つ以上の注水管28を配置してもよい。なお、養殖水槽12内の養殖用海水Wの攪拌流速をより均一にする点で、0.5〜1m程度の間隔をあけて注入管28を配置することが好ましい。
注入管28からの新たな養殖用海水Wの吐出流速は、養殖水槽12内の養殖用海水Wの流速を海藻生育に適正な流速に制御する点で、0.2〜1.5m/s程度が好ましい。
注入管28の先端開口のサイズは、注入管28からの新たな養殖用海水Wの吐出流速の点で、直径10〜20mm程度が好ましく、直径12〜15mm程度がより好ましい。
注入管28の1本当たりの単位時間当たりの注水量(l/min)は、注入管28からの新たな養殖用海水Wの吐出流速の点で、2〜20が好ましい。
注入管28から供給される新たな養殖用海水Wの供給量は、養殖される海藻の種類や海水の栄養分によって異なるが、通常、一日当たり養殖水槽12容量の2〜5倍/日(2〜5回転/日)程度である。
【0041】
気体供給装置16は、養殖水槽12内の養殖用海水W中に、該養殖用海水Wの攪拌を促進する気泡を供給する装置である。気体供給装置16は、エアポンプ30と、エア配管32と、気体吹込管34とを備える。該装置16では、エアポンプ30からエア配管32を通って気体吹込み管34に送られる気体が、気体吹込管34の放出孔から気泡として放出される。
上述した注水管28からの新たな養殖用海水Wの噴出だけにより養殖水槽12内の養殖用海水Wの攪拌を行う場合、海藻類の生長に有効な攪拌速度を得るために、海藻類の生長に必要な栄養分に相当する水量の数倍以上の水量が必要となり、エネルギ面から必ずしも効率的でない。そこで、気体供給装置16から気体を養殖水槽12内の養殖用海水W中に供給することにより、新たな養殖用海水Wの供給量を海藻類の生長に必要最小限の量としつつ、養殖用海水Wの攪拌速度を高めることができ、好ましい。
【0042】
気体供給装置16より供給される気体は、通常、エアが使用される。海藻類の光合成をより促進する目的で、エアとCO2とを混合して使用することが好ましい。
【0043】
気体吹込管34は、気泡を供給することができる放出孔(図示しない)を有する管であれば、その形状は特に制限されない。なお、放出孔は気体吹込管34上に複数(2以上)設けられていてもよい。また、養殖用海水Wの均一な攪拌効果を得るためには、気体吹込管34上に細孔(直径1〜2mm)を多数設けることが好ましい。
気体吹込管34以外にも気泡を供給することができるバブリング部であれば、本発明で用いることができる。例えば、気体吹込管34の代わりに、エアストーンのような多孔質物質を使用してもよい。
【0044】
気体吹込管34より供給される気体圧力は養殖水槽12の水圧以上が必要であり、養殖用海水Wの水深が1〜2.5mの場合、0.1〜0.25気圧以上であることが好ましい。
また、気体吹込管34より供給される気泡供給量(l/min)と、上記注水管28より供給される養殖用海水Wの供給量(l/min)とは、攪拌効果と消費エネルギの点から、その比(気泡供給量/養殖用海水Wの供給量)が1〜5であることが好ましい。
【0045】
オーバーフロー用開口18は、養殖水槽12の上部の所定の位置に配置され、養殖水槽12内の養殖用海水Wをオーバーフローさせる開口である。該開口18を養殖水槽12に設けることにより、養殖水槽12内に貯留された養殖用海水Wの水面位置を所定の位置に規定することができ、好ましい。
図1において、オーバーフロー用開口18は2つの側壁部36上に設けられているが、その配置位置は特に制限されず、端壁面40上であってもよい。
【0046】
図1において、オーバーフロー用開口18の形状は矩形状であるが、その形状は特に制限されない。なお、オーバーフロー用開口18下端が養殖水槽12内の養殖用海水Wの水位を決めるため、該開口18の下部形状は直線状が好ましい。
図1において、オーバーフロー用開口18は一方の側壁部36上に3個ずつ合計6個設けられているが、その数は特に制限されず7個以上であってもよい。また、それぞれ側壁部36には、異なる数のオーバーフロー用開口18が設けられていてもよい。なお、養殖水槽12内の養殖用水槽Wの流動を乱さないように、オーバーフロー用開口18の数および位置を決めることが好ましい。例えば、多くの該開口18を集中させずに、分散して配置することが好ましい。
オーバーフロー用開口18の大きさは特に制限されないが、養殖水槽12内の養殖用海水Wの噴流状態を乱さないためにも大きい方が好ましい。より具体的には、養殖水槽12の強度を確保する点から、数100mm程度の幅の矩形状のオーバーフロー用開口を複数設けることが好ましい。
【0047】
オーバーフロー水受け樋20は、オーバーフロー用開口18よりオーバーフローした養殖用海水Wを回収する樋である。オーバーフロー水受け樋20を設けることにより、該水受け樋20で回収された養殖用海水を後述する養殖用海水循環槽46などに送液して、再利用することができ、好ましい。
図1において、オーバーフロー水受け樋20は、オーバーフロー用開口18の下部で側壁部36上の全幅にわたって設けられ、その底部に該水受け樋20内の養殖用海水を排出する排水配管42が接続している。なお、オーバーフローした養殖用海水Wは、排水配管42を通って後述する養殖用海水循環槽46内に供給されてもよい。
なお、通常、養殖水槽12内の養殖用海水Wの栄養分は、該栄養分の成分と海藻類によっては大部分が吸収されるため、オーバーフロー水受け樋20を設けずに、オーバーフロー用開口18よりオーバーフローした養殖用海水Wをそのまま排水してもよい。
【0048】
回収管22は、養殖水槽12の所定の位置に配置され、養殖水槽12内の海藻類を回収するための管である。該回収管22は、本発明の回収口を構成している。
海藻類の回収・収穫は、網等を用いて行うこともできるが、効率的ではない。また、養殖水槽12の壁面に付着する異種の海藻類を除去するためには、定期的に養殖水槽12を空にして清掃を行う必要がある。そこで、この回収管22を用いることにより、養殖水槽12内の養殖用海水Wを排出しつつ、海藻類を効率よく回収することができ、好ましい。
【0049】
図1においては、回収管22は端壁部40の最底部近傍に配置されているが、養殖用海水Wおよび海藻類を全量抜き取るために、養殖水槽12の最底部近傍に設けられることが好ましい。
また、回収管22は、図1に示すように、開閉弁を有している。
【0050】
回収カゴ24は、回収管22の先端部付近に配置され、養殖水槽12内から回収管22を通って出てくる海藻類を回収するカゴである。該回収カゴ24を使用することにより、効率よく回収管22より出てくる海藻類を回収することができ、好ましい。なお、回収カゴ24は、図1に示すように、養殖用海水W中の海藻類を効率よく分離回収できることから、メッシュ状であることが好ましい。
【0051】
次に、上記陸上養殖装置10を用いた養殖方法について詳述する。
まず、養殖水槽12内に、海藻類(例えば、海苔類)を含む養殖用海水Wを貯留する。図1に示すように、オーバーフロー用開口18が設けられている場合、該開口18が設けられている高さまで養殖用海水Wが予め貯留される。
【0052】
次に、養殖水槽12内に貯留された養殖用海水Wに対して、養殖用海水供給装置14を用いて上方から新たな養殖用海水Wを噴流状に流下させることにより、養殖水槽12内の養殖用海水Wを養殖水槽12の湾曲壁面に沿うように旋回させて攪拌する。養殖水槽12内の養殖用海水Wを湾曲壁部に沿うように旋回させることにより、流動抵抗が低下し、養殖用海水Wの供給エネルギを効率よく攪拌力に変換することができ、少ないエネルギで効率よく養殖水槽12内を攪拌することができる。結果として、効率的に海藻類を養殖水槽12内で上下移動させ、含まれる海藻類に満遍なく光を照射することができ、海藻類の生産性向上がもたらされる。
【0053】
より具体的には、図1に示される養殖水槽12内における養殖用海水Wの噴流状態について図2(A)に示す。図2(A)に示されるように、一方の側壁部36の上端部近傍に配置された注水管28の先端部より新たな養殖用海水Wを略垂直方向に側壁部36に沿って噴流状に流下させることにより、矢印に示すように、養殖水槽12内の養殖用海水Wが養殖水槽12の湾曲壁面に沿って旋回する。結果として、1つの攪拌渦が養殖水槽12内で生じ、養殖水槽12内の養殖用海水Wが効率よく攪拌される。
【0054】
また、他の例として、両方の側壁部36の上端部近傍に注水管28を設けた場合の養殖水槽12内における養殖用海水Wの噴流状態について図2(B)に示す。
図2(B)に示されるように、それぞれの注水管28の先端部より新たな養殖用海水Wを略垂直方向に側壁部36に沿って噴流状に流下させることにより、矢印に示すように、養殖水槽12内の養殖用海水Wが養殖水槽12の湾曲壁面に沿って旋回する。結果として、2つの攪拌渦が養殖水槽12内に生じる。
【0055】
さらに、他の例として、側壁部36間の略中心位置に注水管28を設けた場合の養殖水槽12内における養殖用海水Wの噴流状態について図2(C)に示す。
図2(C)に示されるように、注水管28の先端部より新たな養殖用海水Wを養殖水槽12内の養殖用海水Wの略中心位置に噴流状に流下させることにより、矢印に示すように、反転流により2つの対称形攪拌渦が養殖水槽12内に生じる。
【0056】
攪拌効率の点では、上記図2(A)または図2(B)に示すような攪拌渦を生じさせることが好ましく、図2(A)に示すような攪拌渦を生じさせることが特に好ましい。
【0057】
また、気体供給装置16を使用する場合は、養殖水槽12内の養殖用海水Wの攪拌をより効率的に行える点から、養殖水槽12内で生じる養殖用海水Wの旋回流(流動)が上昇流になる位置近傍(位置P)で気泡を供給することが好ましい。つまり、位置P近傍の養殖水槽12の壁面上に、気体吹込管34を設置することが好ましい。
より具体的には、図2(A)に示した攪拌渦が生じている場合は、図3(A)に示すように、養殖水槽12の最底部を通る鉛直面で分けられた養殖水槽12内の2つ壁面のうち、注水管28が設けられていない側の養殖水槽12の壁面上に気体吹込管34を設置することが好ましい。
【0058】
また、図2(B)に示した攪拌渦が生じている場合は、図3(B)に示すように、養殖水槽12の最底部近傍に気体吹込管34を設置することが好ましい。
さらに、図2(C)に示した攪拌渦が生じている場合は、図3(C)に示すように、養殖水槽12の最底部よりも高い位置の養殖水槽12の壁面上に気体吹込管34を設置することが好ましい。図3(C)中では、2つの気体吹込管34が、養殖水槽12の最底部を通る鉛直面を挟んで配置されている。
なお、より少ないエネルギで養殖水槽12内の養殖用海水Wを攪拌でき、海藻類の生長がより優れる点から、上記図3(A)に示すように攪拌渦を生じさせることが好ましい。
【0059】
養殖水槽12内における養殖用海水Wを旋回させるための流速は、海藻類の生長の点から、1〜10cm/sであることが好ましく、3〜5cm/sであることがより好ましい。流速が遅すぎると、養殖水槽12内の養殖用海水Wの攪拌が遅くなり、海藻類に光が均等に照射されにくくなり海藻の成長率が低下し、流速が速すぎると、無駄なエネルギ消費により生産コストをあげ、また海藻類に余分なストレスを与え生長が阻害される場合がある。
【0060】
<海藻類の陸上養殖装置(第2の実施形態)>
以下に、本発明の海藻類の陸上養殖装置の第2の実施形態を図面を参照して説明する。
図4は、本発明の海藻類の陸上養殖装置100の概略構成図である。
図4に示すように、海藻類の陸上養殖装置100は、養殖水槽12と、養殖用海水供給装置14と、気体供給装置16と、オーバーフロー水受け樋20と、回収管22と、回収カゴ24と、養殖用海水循環装置44とを備える。養殖水槽12は、オーバーフロー用開口18を備える。
図4に示す海藻類の陸上養殖装置100は、養殖用海水循環装置44を備える点を除いて、図1に示す海藻類の陸上養殖装置10と同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、主として養殖用海水循環装置44について説明する。
養殖用海水循環装置44は、養殖用海水循環槽46と、循環配管48と、流量調節弁50と、循環ポンプ52とを備える。
【0061】
養殖用海水循環装置44は、オーバーフロー用開口18からオーバーフローした養殖用海水Wを養殖水槽12に循環させる装置である。養殖用海水循環装置44を設けることにより、養殖用海水Wの使用量をより少なくすることができ、より低コストで海藻類の養殖を行うことができる。
【0062】
養殖用海水循環槽46は、オーバーフロー用開口18からオーバーフローした養殖用海水Wを溜める槽である。図4に示すように、オーバーフロー用開口18からオーバーフローした養殖用海水Wは、オーバーフロー水受け樋20の底部に接続した排出配管42を通って、養殖用海水循環槽46に戻される。
なお、通常、養殖用海水W中の栄養分は海藻類によって一部吸収される。そこで、オーバーフローした養殖用海水Wの栄養分の減少分を補うために、図1に示すように、新たな補給用の新海水を給水配管26から養殖用海水循環槽46に供給し、オーバーフローした養殖用海水Wと新海水とを混合して新たな養殖用海水Wとしてもよい。
【0063】
養殖用海水循環槽46は、その上部の所定の位置に養殖用海水循環槽46内の養殖用海水Wをオーバーフローさせるオーバーフロー用開口54を備える。オーバーフロー用開口54が設けられることにより、養殖用海水循環槽46内に貯留された養殖用海水Wの水面位置を所定の位置に規定することができ、好ましい。
【0064】
養殖用海水循環槽46は、その底部に開閉弁56を有する排水配管58を備える。開閉弁56の開閉状態を制御することにより、養殖用海水循環槽46内の養殖用海水の量を調整することができ、好ましい。
なお、該排水配管58は、図4に示すように、上述したオーバーフロー用開口54に接続している。
【0065】
循環配管48は、養殖用海水循環槽46から養殖水槽12へ養殖用海水Wを送液するための配管である。図1では、循環配管48は給水配管26に接続しているが、直接養殖水槽12に接続していてもよい。
また、循環配管48は、その途中に流量調整弁50を備える。該流量調整弁50によって、循環される養殖用海水の量を調整でき、好ましい。
さらに、循環配管50は、その途中に循環ポンプ52を備える。該循環ポンプ52により、養殖用海水Wが送液される。
【実施例】
【0066】
本発明を、以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0067】
本発明の実施例および比較例の実施条件と結果を表1にまとめて示す。
本実施例では、図1に示す陸上養殖装置10を使用した。
具体的には、養殖水槽の横断面形状はU字状であり、その容量は15tであり、側壁部の高さが1mであり、円筒状の底壁部の曲率半径は1.5mであった。また、図3(A)に示すように、気体供給装置より気泡を供給した(表1中、パターンA’と表記)。また、注水管の先端は水深0.3mの位置に配置した。
【0068】
一方、従来例(1)で使用した陸上養殖装置の養殖水槽は、実施例で使用した養殖水槽とほぼ同じ開口面積を有し、養殖水槽内の養殖用海水の水深が1mである、角型水槽を用いた。また、従来例(1)においては、気体吹込管を角型水槽の底部に配置して気泡を供給することのみによって、養殖水槽の攪拌を行った。なお、従来例(1)においては、養殖水槽の端部に注水管を配置し、養殖用海水を供給した。
従来例(2)で使用した陸上養殖装置は、従来例(1)の陸上養殖装置と比較して、養殖水槽内の養殖用海水の水深が2.5mである点で相違する。
【0069】
実施例並びに従来例(1)および(2)において、養殖する海藻としてはスジアオノリを用いた。具体的には、種苗(複数の胞子が連結した胞子集塊)を別途小型水槽にて1週間培養した後、養殖水槽で養殖するのに適したサイズとして養殖水槽に投入した。
【0070】
【表1】

【0071】
上記表1中、「海水供給量」は、上段に時間当たりの海水供給量(L/min)を、下段に一日当たりの海水供給量(回転/日、t/日)を表す。なお、「回転/日」は一日に水槽容量の何倍の水を供給したかを表す。
「バブリング風量」は、左側に時間当たりの気泡供給量(L/min)を、右側に供給した気体の種類を表す。
【0072】
上記表1中、「海藻収穫量(湿重量)」は、養殖期間経過後に収穫された海藻類の全収穫量を表す。「海藻生長量(湿重量)」は、左側に養殖期間の間に生長した海藻類の量(kg)を表し(「海藻収穫量」から「海藻投入量」を引いた量に該当)、右側に生長した海藻類の量(kg)を「養殖期間」で除して得られる、一日当たりの海藻類の生長量(kg/日)を表す。
表1中の「生産能力(単位面積当たり)」は、一日当たりの海藻類の生長量(kg/日)を使用した養殖水槽の設置面積で除して得られる数値(kg/m2・日)である。実施例の場合の「設置面積」は、幅3m×長さ2.34m≒7m2であり、従来例(1)および(2)の場合の「設置面積」は、幅1m×長さ7m=7m2である。
「生産能力従来比」は、左側に実施例と従来例(1)との生産能力比(実施例の生産能力(単位面積当たり)/従来例(1)の生産能力(単位面積当たり))、右側に実施例と従来例(2)との生産能力比(実施例の生産能力(単位面積当たり)/従来例(2)の生産能力(単位面積当たり))を表す。
【0073】
表1中、「海水ポンプの消費動力」「エアポンプの消費動力」は、それぞれポンプを一日使用した際の消費動力を表す。「合計(消費動力)」は、「海水ポンプの消費動力」と「エアポンプの消費動力」とを足した値である。
なお、表1中の「エネルギ原単位」は、「合計(消費動力)」を「一日当たりの海藻類の生長量(kg/日)」で除して得られる数値(kwh/kg)である。
「エネルギ従来比」は、左側に実施例と従来例(1)とのエネルギ原単位比(実施例のエネルギ原単位/従来例(1)のエネルギ原単位)、右側に実施例と従来例(2)とのエネルギ原単位比(実施例のエネルギ原単位/従来例(2)のエネルギ原単位)を表す。
【0074】
表1の生産性の結果を参照すると、単位面積当たりの生産能力に関して、実施例では0.303kg/m2・日であるのに対して、従来例(1)では0.145kg/m2・日、従来例(2)では0.156kg/m2・日であった。該結果より、本発明の陸上養殖装置を使用すると、養殖水槽内における海藻類の上下入れ替えが円滑に行われるので、より生産性よく海藻類を養殖できることが確認された。
【0075】
なお、養殖水槽内における海藻類の密度が所定の値に達すると、海藻類の生長が鈍る。そのため、養殖水槽の容量は、海藻類の収穫時に海藻類の密度が所定の値になるように選定される。
そのため、従来例(1)の養殖水槽にスジアオノリを2倍入れても、スジアオノリの密度が過大となり、スジアオノリの生長性が劣り、結果として単位面積当たりの生産能力が落ちる。
また、従来例(1)と(2)との比較から分かるように、従来例(2)で水位が2.5mとより深い角型水槽を使用して、スジアオノリの密度を実施例と等価にしても、養殖水槽内の養殖用海水の攪拌・循環が不十分なため、大きな生産能力の向上は見られなかった。
【0076】
また、表1の消費エネルギの結果を参照すると、エネルギ原単位に関して、実施例では4.33kwh/kgであるのに対して、従来例(1)では10.5kwh/kg、従来例(2)では24.2kwh/kgであった。該結果より、本発明の陸上養殖装置を使用すると、より省エネルギで海藻類を養殖できることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
10,100 海藻類の陸上養殖装置
12 養殖水槽
14 養殖用海水供給装置
16 気体供給装置
18,54 オーバーフロー用開口
20 オーバーフロー水受け樋
22 回収管
24 回収カゴ
26 給水配管
28 注水管
30 エアポンプ
32 エア配管
34 気体吹込管
36 側壁部
38 底壁部
40 端壁部
42,58 排水配管
44 養殖用海水循環装置
46 養殖用海水循環槽
48 循環配管
50 流量調節弁
52 循環ポンプ
56 開閉弁
W 養殖用海水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻類を養殖するための養殖用海水を貯留する養殖水槽と、
前記養殖水槽内に新たな養殖用海水を供給する養殖用海水供給装置とを備える海藻類の陸上養殖装置であって、
前記養殖水槽は、少なくとも底部に湾曲壁面を有し、横断面形状がU字状または半円状であり、
前記養殖用海水供給装置は、前記養殖水槽内に貯留された前記養殖用海水に対し、上方から前記新たな養殖用海水を噴流状に流下させることにより、前記養殖水槽内の前記養殖用海水を前記湾曲壁面に沿うように旋回させて攪拌することを特徴とする海藻類の陸上養殖装置。
【請求項2】
前記養殖水槽は、2つの側壁部と、前記2つの側壁部間に位置し、少なくとも前記湾曲壁面の一部をなす底壁部とを備え、
前記養殖用海水供給装置は、前記新たな養殖用海水を上方から略垂直方向に噴流状に流下させる注水管を備え、
前記注水管の先端部は、前記養殖水槽内に貯留された前記養殖用海水の水面下に配置される、請求項1に記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項3】
前記注水管は、前記養殖水槽の前記2つの側壁部の一方または両方の上端部近傍に配置され、前記養殖水槽内の前記養殖用海水に対し、前記新たな養殖用海水を前記側壁部に沿って噴流状に流下させる、請求項2に記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項4】
前記注水管は、前記2つの側壁部の略中心位置に配置され、前記新たな養殖用海水を前記養殖水槽内の前記養殖用海水の略中心位置に噴流状に流下させる、請求項2に記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項5】
前記注水管の先端は、前記養殖水槽内の前記養殖用海水の水面位置から前記養殖水槽の最底部までの深さの1/2以内の深さ位置に配置される、請求項2〜4のいずれかに記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項6】
さらに、前記養殖水槽内の前記養殖用海水中に、前記養殖用海水の攪拌を促進する気泡を供給する気体供給装置を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項7】
前記養殖水槽は、その上部の所定の位置に前記養殖水槽内の前記養殖用海水をオーバーフローさせるオーバーフロー用開口を備え、前記養殖水槽内に貯留された前記養殖用海水の水面位置を規定する、請求項1〜6のいずれかに記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項8】
さらに、前記オーバーフロー用開口からオーバーフローした前記養殖用海水を前記養殖水槽に循環させる養殖用海水循環装置を備える、請求項7に記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項9】
前記養殖用海水循環装置は、前記オーバーフロー用開口からオーバーフローした前記養殖用海水を溜めると共に、溜められた養殖用海水と供給された補給用の新海水とを混合して前記新たな養殖用海水とする養殖用海水循環槽を備え、前記養殖用海水循環槽の前記新たな養殖用海水を前記養殖水槽に戻す、請求項8に記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項10】
さらに、前記養殖水槽の所定の位置に前記養殖水槽内の海藻類を回収するための回収口を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の海藻類の陸上養殖装置。
【請求項11】
少なくとも底部に湾曲壁面を有し、横断面形状がU字状または半円状である養殖水槽内に貯留された養殖用海水中で海藻類の養殖を行う海藻類の陸上養殖方法であって、
予め、前記養殖水槽内に前記養殖用海水を貯留しておき、
前記養殖水槽内に貯留された前記養殖用海水に対し、上方から新たな養殖用海水を噴流状に流下させ、
前記養殖水槽内の前記養殖用海水を前記湾曲壁面に沿うように旋回させて攪拌することを特徴とする海藻類の陸上養殖方法。
【請求項12】
前記養殖水槽内の前記養殖用海水を旋回させるための流速は、1〜10cm/sである請求項11に記載の海藻類の陸上養殖方法。
【請求項13】
前記新たな養殖用海水の流下は、前記養殖水槽の2つの側壁部の一方または両方の上端部近傍の前記養殖用海水の水面下に、前記新たな養殖用海水を、直接供給して、噴流状に流下させるものである請求項11または12に記載の海藻類の陸上養殖方法。
【請求項14】
前記新たな養殖用海水の流下は、前記養殖水槽の2つの側壁部の上端部近傍の略中心位置の前記養殖用海水の水面下に、前記新たな養殖用海水を、直接供給して、前記養殖水槽内の前記養殖用海水の略中心位置に噴流状に流下させるものである請求項11〜13のいずれか1項に記載の海藻類の陸上養殖方法。
【請求項15】
前記養殖水槽内を旋回している前記養殖用海水中に、前記養殖用海水の攪拌を促進する気泡を供給する、請求項11〜14のいずれか1項に記載の海藻類の陸上養殖方法。
【請求項16】
前記新たな養殖用海水の供給量(l/min)と、前記気泡の供給量(l/min)との比(気泡供給量/養殖用海水供給量)が1〜5である、請求項15に記載の海藻類の陸上養殖方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−213351(P2012−213351A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80383(P2011−80383)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)
【出願人】(593065556)芙蓉海洋開発株式会社 (7)
【Fターム(参考)】