説明

浸漬プローブ

【課題】改善した、効果的なスラグのサンプリングを可能にする浸漬プローブを提供する。
【解決手段】本発明は縦軸線を囲む外面を有するプローブ本体を備える浸漬プローブであって、前記外面の一部がサンプル採集要素を有し、前記サンプル採集要素が前記縦軸の周りに周方向に延在しているとともに半径方向の寸法を有する浸漬プローブを提供することによって上述の課題を解決する。本発明はまた、前記サンプル採集要素の周囲に溶融鋼鉄またはスラグ中で溶解または燃焼する保護層が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縦軸線を囲む外面を有するプローブ本体を備える浸漬プローブであって、前記外面の一部がサンプル採集要素を有し、前記サンプル採集要素が半径方向(または、放射方向)の寸法を有し、前記縦軸線の周りに周方向に延在(または、拡張)している浸漬プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬プローブの例は、例えば、特許文献1等に開示されている。そこにおいて、プローブはスラグ(または、鉱滓)を採集するためのものとして記載されている。この文献のプローブ本体は支持管を有し、支持管の周囲には撚線から成るリング構造が配置されている。そして、リング構造は縦軸方向に可動である。溶融金属表面のスラグはプローブが溶融金属内に浸漬されたときに、リング構造に付着したままの状態となる。そして、プローブを溶融金属から引き出した後、スラグを分析することができる。スラグの付着の量はスラグの粘性に依存して変化し、条件によっては分析のために必要なスラグを採集できない場合がある。
【0003】
また、特許文献2には、ロッド形のサンプル部材が記載されており、そこにおいて、スラグサンプルはロッドの外表面に付着したままの状態となる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5435196号明細書
【特許文献2】米国特許第5131633号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はこれらの周知の浸漬プローブを改善し、効果的なスラグのサンプル採集を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサンプル採集要素の周囲には溶融鋼鉄またはスラグ内で溶解または燃焼できる保護層が配置されているので、例えば、溶融鋼鉄上に横たわっているスラグ層は所定の遅延時間後に初めてサンプル採集要素に到達する。驚くべきことに、この構成により、これらの手段によって十分な量のスラグが捕獲され、分析のために利用可能な十分な量のサンプルを採集することができることが判明した。また、保護層は、プローブ本体が溶融スラグから引き出される前に溶融スラグが急速にサンプル採集要素に到達し、これらのサンプル採集要素に損傷を与えることを防止する。このことは、特に、浸漬後の測定またはサンプル採集がスラグサンプルの除去よりも数秒間長く続く、付加的なセンサー及び/またはサンプルチャンバーを備えた浸漬プローブに対して有益である。保護層は好ましくは、厚紙(または、ボール紙)または紙から作製される。好ましくは、保護層は管状の形状を有してもよい。
【0007】
サンプル採集要素はプローブ本体の浸漬側の端部に対して反対側に面している平らなまたは凹状の表面を有してもよい。ここで、平らなまたは凹状の形状は半径方向(または、放射方向)に拡張する。サンプル採集要素は縦軸の周りに拡張する円板型に形成されてもよいし、または、縦軸の周りに巻かれた帯から構成される螺旋状に形成されてもよい。平らなまたは凹状の表面はプローブ本体の浸漬端に対して反対側の方向に向かって、縦軸に対して傾斜していてもよい。表面と縦軸の間に形成される角度は好ましくは、45〜90°の間である。浸漬後、または保護層が溶解した後、スラグはこれらのサンプル採集要素まで流れていき、そこに付着し、そして浸漬プローブが溶融金属から引き出された後に除去されてもよい。この目的のために、サンプル採集要素はスラグを落下させるために互いに押し付けられてもよい。その後、スラグは粒状化され、分析装置に供給されてもよい。
【0008】
好ましくは、サンプル採集要素は1mm未満の壁厚を有する鋼鉄から作製される。サンプル採集要素は好ましくは、プローブ本体とは別個の部品として形成され、プローブ本体の残りの部分とは異なる材料から構成される。例えば、プローブ本体の他の部分が厚紙等から作製されるのに対し、サンプル採集要素は鋼鉄から作製されてもよい。プローブ本体は好ましくは、管状の形状を有する。プローブ本体には少なくとも1つのセンサーまたは溶融金属のためのサンプル採集部材が配置されている。サンプル採集要素を互いに縦軸方向に前後して配置された1つまたは複数のリング部材として形成することが可能であり、それにより、プローブの組立てが容易になる。
【0009】
本発明の第2の実施例は、プローブの浸漬端に対し反対側に面する平らなまたは凹状の表面を有するサンプル採集要素によって特徴付けられる。この表面はプローブ本体の浸漬端に対して反対側の端部の方向に向かって縦軸に対して傾斜している。この実施例のサンプル採集要素もまた、好ましくは、鋼鉄から作製されてもよく、それらはプローブ本体の他の部分と異なる材料からプローブ本体の別個の部品として形成されてもよい。特に、それらは互いに縦軸方向に前後して配置された1つまたは複数のリング部材として形成されてもよい。プローブ本体の残りの部分は厚紙から作製されてもよい。また、この実施例において、プローブ本体は好ましくは、管状の形状を有する。
【0010】
以下に本発明の1つの実施例を図面への参照とともに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の浸漬プローブは互いに重畳して固定された2つの厚紙管2、2'から形成されたプローブ本体1を有する。外側の厚紙管2'は互いに縦軸方向に前後して配置され、それらの間に空間を有し、それによってプローブ本体1の周囲に幅の広い溝3を形成する2つの部分から構成されている。この溝3の内部にはサンプル採集要素4が配置されている。サンプル採集要素4はスラグがそこに採集されるように上方に向かって角度付けられた平らなリングとして形成されている。サンプル採集要素4の周囲には厚紙から作製された1〜5mm厚の保護層5が配置されている。保護層5は浸漬プローブが溶融金属内に浸漬されたときに溶解するので、スラグはサンプル採集要素3に到達し、そこに付着した状態のままとなる。プローブ本体1は浸漬端を有し、浸漬端には浸漬ヘッド6が配置されている。浸漬ヘッド6には、スラグ層の下の溶融鋼鉄のサンプルを採集するためのサンプルチャンバー7が配置されている。溶融鋼鉄は入口管8を通ってサンプルチャンバー7の中に流れ込む。入口管8の開口は厚紙キャップ9によって保護されている。厚紙キャップ9は(それが溶解または燃焼したとき)入口管8の入口開口を溶融鋼鉄に対して開いた状態にする。
【0012】
図2にはサンプル採集要素4が詳細に示されている。サンプル採集要素は鋼鉄管10上に互いに前後して配置されたリング型の形状で構成されている。サンプル採集要素4自体も同様に鋼鉄から作製されている。サンプル採集要素4及び鋼鉄管10の厚さ(壁厚)は約1mmまたは1mm未満である。サンプル採集要素4は上方に、すなわち、浸漬端に対して反対側に向かって傾斜している。それらはプローブ本体1の縦軸に対して約60°の角度を形成する。サンプル採集の後、プローブ本体1は溶融金属から引き出される。そして、サンプル採集要素4を押しつぶすために半径方向の圧力が加えられる。これにより、非常に脆いスラグは粗い粒状の形態でサンプル採集要素から落下する。スラグは大きさが縮小された後、分析装置に供給される。図3はサンプル採集要素4の断面図を示している。
【0013】
図4はサンプル採集要素4のもう1つの可能な構造を示している。サンプル採集要素4は底部の比較的短い金属製スリーブとして、管状の平らなリングの形状で形成される。すなわち、それらは金属製スリーブ11を折り返すことによって作製される。折り曲げ位置には環状の溝12が形成されている。この溝12は下側に配置された金属製スリーブ11の上端部上に配置され、そして、複数の区分を積み重ねることによって図2に示されているサンプル採集要素と同様なサンプル採集要素を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従った浸漬プローブの断面図である。
【図2】本発明に従ったサンプル採集要素の詳細な図である。
【図3】本発明に従ったサンプル採集要素の断面図である。
【図4】本発明に従ったサンプル採集要素の構造の例を示している。
【符号の説明】
【0015】
1 プローブ本体
2 外側の厚紙管
2’ 内側の厚紙管
3 幅の広い溝
4 サンプル採集要素
5 保護層
6 浸漬ヘッド
7 サンプルチャンバー
8 入口管
9 厚紙キャップ
10 鋼鉄管
11 金属製スリーブ
12 環状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸線を囲む外面を有するプローブ本体を備える浸漬プローブであって、前記外面の一部が前記縦軸線の周りに周方向に延在しているとともに半径方向の寸法を有するサンプル採集要素を有しており、サンプル採集要素(4)の周囲に溶融鋼鉄またはスラグ中で溶解または燃焼することができる保護層(5)が配置されていることを特徴とする浸漬プローブ。
【請求項2】
前記保護層(5)が厚紙または紙から作製されている、請求項1に記載の浸漬プローブ。
【請求項3】
前記保護層(5)が環状の形状を有する、請求項1または2に記載の浸漬プローブ。
【請求項4】
プローブ本体(1)が浸漬端を有し、サンプル採集要素(4)が前記浸漬端に対して反対側に面する平らなまたは凹状の表面を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項5】
前記表面が前記プローブ本体(1)の前記浸漬端に対して反対側の端部の方向に向かって縦軸に対して傾斜している、請求項4に記載の浸漬プローブ。
【請求項6】
前記サンプル採集要素(4)が鋼鉄から作製されている、請求項1から5のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項7】
前記サンプル採集要素(4)が前記プローブ本体(1)の残りの部分とは異なる材料から前記プローブ本体(1)の別個の部品として形成されている、請求項1から6のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項8】
前記サンプル採集要素(4)が互いに縦軸方向に前後して配置された1つまたは複数のリング部材として形成されている、請求項7に記載の浸漬プローブ。
【請求項9】
前記プローブ本体(1)の前記残りの部分が厚紙から作製されている、請求項7または8に記載の浸漬プローブ。
【請求項10】
前記プローブ本体(1)が環状の形状である、請求項1から9のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項11】
前記プローブ本体(1)に少なくとも1つのセンサーまたはサンプルチャンバー(7)が配置されている、請求項1から10のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項12】
縦軸線を囲む外面を有するプローブ本体を備える浸漬プローブであって、前記外面の一部が前記縦軸の周りに周方向に延在しており、半径方向の寸法を有するサンプル採集要素を有しており、前記サンプル採集要素(4)が前記浸漬端に対して反対側に面する平らなまたは凹状の表面を有し、前記サンプル採集要素(4)が前記プローブ本体(1)の前記浸漬端に対して反対側の端部の方向に向かって、前記縦軸に対して傾斜していることを特徴とする浸漬プローブ。
【請求項13】
前記サンプル採集要素(4)が鋼鉄から作製されている、請求項12に記載の浸漬プローブ。
【請求項14】
前記サンプル採集要素(4)が前記プローブ本体(1)の残りの部分とは異なる材料から前記プローブ本体(1)の別個の部品として形成されている、請求項12または13に記載の浸漬プローブ。
【請求項15】
前記サンプル採集要素(4)が互いに縦軸方向に前後して配置された1つまたは複数のリング部材として形成されている、請求項12から14のいずれかに記載の浸漬プローブ。
【請求項16】
前記プローブ本体(1)の前記残りの部分が厚紙から作製されている、請求項12から15のいずれかにに記載の浸漬プローブ。
【請求項17】
前記プローブ本体(1)が環状の形状である、請求項12から16のいずれかに記載の浸漬プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−77503(P2007−77503A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245473(P2006−245473)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】