説明

消音処理用パネル

本発明の対象は、外方から内方に向かって、耐久性消音多孔質層、少なくとも1の蜂窩状構造体および反射性すなわち不浸透性層を含んでおり、同耐久性消音多孔質層が、航空力学的気流と接触する可能性のある外面のレベルで、音波を通過させる開放区域(14)と、音波を通過させておかない充実区域(16)を含むシートすなわち薄板を含んでおり、耐久性消音層のシートすなわち薄板が微小穿孔(18)の集合体を含んでおり、各微小穿孔の集合体が開放区域(14)を形成しており、微小穿孔の諸集合体が、少なくとも充実区域の一連の間隔が空いている帯状で相互に仕切られていることを特徴とする、航空機の表面のレベルに取り付ける消音処理のためのパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の表面のレベルに取り付けるための音響処理用パネル、とりわけ同パネルの耐久性消音層に関する。
【背景技術】
【0002】
空港の近隣の騒音の影響を抑制すべく、国際規定は、音響の発生についてますます厳しくなっている。
【0003】
航空機が発生する騒音、とりわけ推進用集合体が発生する騒音を減少させるために、とりわけヘルムホルツ共鳴の定理を利用して、騒音エネルギーの一部を減らすことを狙いとする被覆材をダクトの壁面のレベルに配置することによる技術が開発された。既知の方法で、消音パネルとも呼ばれている、消音処理のための被覆材が、外方から内方に向かって、耐久性消音多孔質層、少なくとも1の蜂窩状構造体および反射性すなわち不浸透性層を含んでいる。
【0004】
耐久性消音層は、同層を通過する音波の音響エネルギーの一部を熱に変換する分散役割を有する。同層は、音波を通過させることのできる、開放的と呼ばれている区域および音波を通さないが、同層の機械的抵抗力を保証するための閉鎖的または充実区域と呼ばれている区域を含んでいる。この耐久性消音層は、とりわけ同層を構成している構成要素の開放的面積の比率が、主としてエンジンに関連して、異なることを特徴としている。
【0005】
抵抗力のある消音層は、いろいろな応力を受ける。航空力学的気流と接触する抵抗力のある消音層は、強力な応力を受ける。
【0006】
抵抗力のある消音層は、とりわけ仏国特許第2.844.304号および仏国特許第2.821.788号に叙述されている。
【0007】
抵抗力のある消音層に設てある孔は、抵抗力のある消音層の表面を流れる航空力学的気流のレベルで擾乱を発生させて、それによって航空機の航空力学的特性を低下させる。ところで、この擾乱は、孔の断面積にほぼ比例している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許第2.844.304号
【特許文献2】仏国特許第2.821.788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、孔の断面積を縮小すれば、等しい開放率を得るには、孔の数を著しく増加させざるを得ない。ところが、孔を多くすれば、一般に、抵抗力のある消音層をもろくさせ、そして製造費を高めかねない。
【0010】
それ故、本発明は、抵抗力のある消音層が、最適な機械的および航空力学的特性を有する層のある、消音処理のためのパネルを提案することを狙いとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明は、外方から内方に向かって、耐久性消音多孔質層、少なくとも1の蜂窩状構造体および反射性すなわち不浸透性層を含んでおり、同耐久性消音多孔質層が、航空力学的気流と接触する可能性のある外面のレベルで、音波を通過させる開放区域と、音波を通過させておかない充実区域を含むシートすなわち薄板を含んでおり、耐久性消音層のシートすなわち薄板が微小穿孔の集合体を含んでおり、各微小穿孔の集合体が開放区域を形成しており、微小穿孔の諸集合体が、少なくとも充実区域の一連の間隔の空いている帯状で相互に仕切られている、航空機の表面のレベルに取り付けてある消音処理のためのパネルを対象としている。
【発明の効果】
【0012】
この解決法は、航空力学的特性にとって、微小穿孔の存在のおかげで最適であり、機械的特性にとって、応力の処理を保証する帯状の形の充実区域のおかげで最適である。
【0013】
それ以外の特性と利点は、添付図を参照しながら、単に実例として提示した記述に照らすことによって明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による耐久性消音層の立面図である。
【図2】穿孔の側面の変形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
とりわけヘルムホルツ共鳴の定理を利用して、騒音エネルギーの一部を減らすことを狙いとする被覆材をダクトの壁面のレベルに配置することによって、航空機が発生する騒音、とりわけ推進用集合体が発生する騒音を減少させる技術が開発された。既知の方法で、消音パネルとも呼ばれている、消音処理のための被覆材が、外方から内方に向かって、耐久性消音多孔質層、少なくとも1つの蜂窩状構造体および反射性すなわち不浸透性層を含んでいる。
【0016】
層とは、同一性質または異なる性質の1のまたは複数の層を指す。
【0017】
蜂の巣状の構造が蜂窩状構造体を形成する上で利用されている。
【0018】
不浸透性反射層を形成するために、通常、薄板が使用されている。
【0019】
蜂窩状構造体と反射性薄板に、いろいろな種類の材料を使用できる。
【実施例】
【0020】
図1に、蜂窩状構造体の側方壁面12を点線で表した、耐久性消音層を10で示した。
【0021】
既知の実施態様では、蜂窩状構造体は、蜂の巣状を基にして製作されている。
【0022】
最適な実施態様では、蜂窩状構造体は、一方では、ナセルの長手方向軸が含まれる軸方向面に配置してある、長手方向帯状部と呼ばれている複数の第1帯状部、および他方では、軸方向面に対する交差状横断方向帯状部と呼ばれている複数の第2帯状部を含んでいる。好ましいことに、横断方向帯状部との各交差点のレベルにおいて、各長手方向帯状部は、対象地点で、各横断方向帯状部の接線において、ほぼ直角に交わっている。
【0023】
この実施態様法の重要な1の利点では、帯状部は、必用があれば、集合に先立って配置が整えられて、集合された後、あるいは反射層または耐久性消音層が配置された後、変形されることがない。
【0024】
このように形成した消音パネルは、処理すべき表面の形状に適合する形状を有するので、設置するときに変形されることが無い。したがって、蜂窩状構造体と反射性層または耐久性消音層間の連結は、損傷を受ける恐れがなくなり、横断方向帯状部と長手方向帯状部で画定される導管の側方壁面12の位置は、完全に知られる。
【0025】
抵抗力のある消音層10は、同層を通過する音波の騒音エネルギーの一部を熱に変換することによって消散させる役割を有する。同層は、音波を通過させるいわゆる開放区域14と、音波を通過させておかないが、同層の機械的抵抗力を保証するための閉鎖区域16すなわち充実区域を含んでいる。この耐久性消音層10は、とりわけ同層を構成している構成要素の開放的面積の比率が、主としてエンジンに関連して、異なることを特徴としている。
【0026】
抵抗力のある開放区域14は、側方壁面12にまたがる方法ではなく、側方壁面12で画定されている凹部内に口を開けるように、蜂窩状構造体の側方壁面12の位置に應じて配置される。
【0027】
耐久性消音層10は、航空力学的気流と接触する可能性のある外面のレベルに、充実区域16で隔離されている開放区域14を含むシートすなわち薄板を含んでおり、同充実区域16は、応力の処理を可能にする組織網を明確にしている。
【0028】
場合に應じて、抵抗力のある消音層は、単一のシートすなわち薄板を含んでいるか、あるいは少なくとも1の薄板すなわちシートおよび少なくとも1の織布または不織布を含んでいる。
【0029】
本発明では、充実区域16は、開放区域14を画定するように間隔が空いている少なくとも1群の帯状部を画定している。1の実施態様では、充実区域16は、帯状部を明確にしており、同帯状部の第1群は第1の方向に配置してあり、第2群は、第1の方向に対して交差する方向に配置してあって(図示の例では、ほぼ直角に交わる)、各群の帯状部は、開放区域14を画定するように間隔が空いている。充実区域16を形成している帯状部は、側方壁面12に直角に配置してある。変形態様では、帯状部を2群以上予定できるだろう。
【0030】
有利なことに、充実区域の帯状部の巾は、下記の数値以下である。
― 10ミリ、
― 開放区域14の巾の30%。
【0031】
充実区域16は、とりわけ第1の方向および第2の方向で、構造上の機能および応力の処理を保証するように適合している。変形態様では、充実区域16は、熱風による除霜回路または電気型除霜回路を通すことがあり得る。
【0032】
本発明では、開放区域14は、複数の微小穿孔18を含んでおり、同微小穿孔の最大寸法は、2ミリ未満であり、1.2ミリ未満が好ましい。
【0033】
本発明では、抵抗力のある消音層のシートすなわち薄板は、微小穿孔18の集合体を含んでおり、微小穿孔の各集合体は、開放区域14を形成しており、微小穿孔の集合体は、間隔の開いている少なくとも1群の充実区域16の帯状部で相互に隔離されている。
【0034】
1の実施態様では、微小穿孔18は、細長い形状を呈しており、同微小穿孔の最大寸法は、抵抗力のある消音層の表面のレベルで、気流の方向20に方向づけられている。この形状は、微小穿孔18の効力を高めることを可能にする。
【0035】
微小穿孔18は、同一開放区域に数列並んでおり、列と列は5の目型に配置されることが好ましい。
【0036】
1の実施態様では、微小穿孔18は、少なくとも1の平面のレベルでラッパ状に開いている形状を呈する。1の実施態様では、微小穿孔は、図2に明らかにしたような形状を呈している。したがって、微小穿孔18は、狭い断面がその上下で広がって、表面でもっと広い断面を有する鼓状の形状を呈する。この型の輪郭は、航空力学的機能では注目に値する。
【0037】
抵抗力のある消音層は、蜂窩状構造体の細胞状区画の内部を外部に通じるための穿孔または微小穿孔を含むことができ、したがって、一部の穿孔または微小穿孔は、消音処理に、他の穿孔または微小穿孔は、霜の処理用に当てられる。
【0038】
有利なことに、少なくとも霜の処理のために予定されている穿孔または微小穿孔は、処理すべき外面のレベルで、熱い空気を層状に排除するために、抵抗力のある消音層の外面で傾斜していて、標準的ではない。この形状は、とりわけ汚染による孔部(穿孔または微小穿孔)の封鎖の危険を減らすことも可能にする。
【0039】
第1の実施態様では、微小穿孔18は、エレクトロンの電子ビーム、すなわち、連続パルス式機能モードまたは衝撃型または転移型多重パルス式機能モードによる穿孔で実施される。
【0040】
別の実施態様では、抵抗力のある消音処理層のレベルで行なわれる穿孔は、化学的工場加工で実施できる。しかしながら、本発明は、この実施態様に限定されていない。
【0041】
変形態様では、機械的耐性を保証するために、穿孔されていないもっと分厚い区域を残しながら、微小穿孔を実施する区域のレベルにおいて、化学的工場加工で、もっと薄い区域をあらかじめ作成することが可能である。
【0042】
第1段階では、穿孔すべきでない部分を覆う隠蔽材をぴったり当てる。次に、表面に、腐食剤の溶液を付けて、隠蔽材に保護されていない区域と直角に、電気化学的に、金属を溶解させて、穿孔を生ずる。穿孔すべき薄板を腐食剤の溶液中に浸漬する方が好ましい。
【0043】
薄板は金属性であると有利であり、チタン製であることが好ましく、穿孔が得られるように、同材料の腐食現象を生ずるために、薄板の材料に適合する腐食剤にする。
【0044】
一例として、工場加工の段階は、次のようであり得る。
― 隠蔽材がより良く付着し、単純に剥がせるように表面の準備をし、
― 隠蔽材を全面に設置し、
― 加工すべき区域を露出させるために隠蔽材の一部を外し、
― 腐食剤に浸漬し、
― 洗浄し、
― 場合によっては中和を行い、
― 洗浄し、
― 乾燥させ、
― 最終的に隠蔽材を外す。
【0045】
穿孔を得るための溶液は、レーザービームによる工場加工が起し得る残留応力を発生させる可能性のある、薄板に対する局部的加熱がかからず、あるいは従来型の工場加工で起り得る材料の剥がし取りを薄板に起こさない利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
したがって、この溶液で発生する残留応力の程度がより低く、したがって、部材の寿命が延びて、保守作業を軽減できる。この事実により、点検および保守作業の間隔を長くすることでき、それによって航空機の停止時間を短縮できる。
【0047】
もうひとつの利点として、この溶液は、穿孔のときに、部材を変形させることがない。
【0048】
有利なことに、この工場加工作業は、蜂窩状構造体の形状に應じて既に整形された薄板に対して実施されている。その次に、耐久性消音層は、溶接で蜂窩状構造体に連結される。
【0049】
化学的工場加工は、薄板の結晶網の中に異物(イオン)を閉じ込めることがあり得る。集合のときに、溶接作業による温度の上昇が引き起されるので、この異物は解放されることができる。したがって、この作業は、残留応力を更に減少できる。
【符号の説明】
【0050】
10. 耐久性消音層
12. 側方壁面
14. 開放区域
16. 閉鎖区域
18. 微小穿孔
20. 気流の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方から内方に向かって、耐久性消音多孔質層、少なくとも1の蜂窩状構造体および反射性すなわち不浸透性層を含んでおり、同耐久性消音多孔質層が、航空力学的気流と接触する可能性のある外面のレベルで、音波を通過させる開放区域(14)と、音波を通過させておかない充実区域(16)を含むシートすなわち薄板を含んでおり、耐久性消音層のシートすなわち薄板が微小穿孔(18)の集合体を含んでおり、各微小穿孔の集合体が開放区域(14)を形成しており、微小穿孔の諸集合体が、少なくとも充実区域(16)の一連の間隔が空いている帯状で相互に仕切られていることを特徴とする、航空機の表面のレベルに取り付ける消音処理のためのパネル。
【請求項2】
充実区域(16)が帯状部を画定しており、第1群が第1の方向に配置してあり、第2群が第1の方向に対して交差する方向に配置してあって、各群の帯状部が微小穿孔(18)の各集合体を画定するように間隔が空いていることを特徴とする、請求項1に記載の消音処理のためのパネル。
【請求項3】
充実区域の帯状部の巾が下記数値、すなわち、
― 10ミリ、
― 開放区域(14)の巾の30%
以下であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の消音処理のためのパネル。
【請求項4】
微小穿孔(18)の寸法が2ミリ未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の消音処理のためのパネル。
【請求項5】
微小穿孔(18)が細長い形状を呈しており、同微小穿孔の最大寸法が抵抗力のある消音層の表面のレベルで流れる気流の方向に方向づけられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つの請求項に記載の消音処理のためのパネル。
【請求項6】
微小穿孔(18)が同一集合体(14)において数列並んでおり、列と列が5の目型に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の消音処理のためのパネル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの請求項に記載の消音処理用パネル。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの請求項に記載の消音処理用パネルを含む航空機。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519103(P2010−519103A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549846(P2009−549846)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050273
【国際公開番号】WO2008/113931
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)