説明

液体ポンプ

液体を分注するための液体ポンプが提供される。このポンプは、複数のシリンダーを内部に画成する本体を備え、各シリンダーは内部に配置されるそれぞれのピストンを有し、各シリンダーおよびそれぞれのピストンは、それらの間の嵌合が分注すべき液体の漏れを実質的に防止するような形状にされ、構成される。そのような液体ポンプは、カプセルなどの薬剤投薬剤形を液体薬剤成分で充填するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の容器内に液体を分注するための液体ポンプに関する。より詳しくは本発明は、本体内に収容される複数のシリンダーを備える液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
知られた液体分注ポンプは、各シリンダーとピストンの間に少なくとも1つの、通常はいくつかのシールを含む。これが多数の問題点、とりわけポンプを清掃することになるとき、およびシールが磨耗したときの液体の不正確な投与も引き起こす。
【0003】
その上、単一の本体内に形成される複数のシリンダーを備えるポンプを設けることが知られている。しかし、これらの知られたポンプは、漏れを最小限にするために各シリンダーとそのそれぞれのピストンの間に少なくとも1つのシール(およびしばしば複数のシール)を含む。
【0004】
ポンプを清掃する問題点は、ポンプが異なる液体を分注する比較的短い運転時間のために使用され、各運転時間の間に清掃する必要があるとき顕著になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、液体を分注するための液体ポンプが提供され、このポンプは、複数のシリンダーを内部に画成する本体を備え、各シリンダーは内部に配置されるそれぞれのピストンを有し、各シリンダーおよびそれぞれのピストンは、それらの間の嵌合が分注すべき液体の漏れを防止するような形状にされ、構成される。
【0006】
したがってこのピストンは、シリンダーからの液体の漏れを防止するためにシールが必要でないような形状にされ、サイズにされる。換言すれば本発明は、各ピストンとそのそれぞれのシリンダーの間の別々の機械的なシールがない液体ポンプを提供する。この文脈での用語「漏れ」は、ピストンとシリンダー壁の間を液体が移動できることから生じる損失などの、分注すべき液体のシリンダーからの意図的でないまたは所望されない損失を意味するためのものである。さらに、本発明の文脈での用語「漏れを防止する」は、かなりの漏れを防止する(すなわち、各ピストンとそのそれぞれのシリンダーの間の嵌合が実質的に漏れを防止する)として解釈すべきである。当業者は、分注運転時間の過程にわたって、液体の非常に少量の、重要ではない量の漏れがポンプから失われる可能性があることを理解するであろう。液体のどのようなそのような損失も、ポンプの正確性および再現性の点から見て重要ではなく、許容できる損失と見なされる。
【0007】
ピストンとシリンダーの間の別々の機械的なシールに対する必要性をなくすことによって、運転時間の間のポンプの清掃は極めて簡単になる。その上、ゴムのOリングなどの機械的なシールの磨耗によって導入される変動が最小限になるので、ポンプの正確性は大きく改善される。さらに、各ピストンとシリンダーの間の隙間が非常に小さいので、研磨性微粒子がこの隙間に入ることができない。したがって、本発明によるポンプのピストンおよびシリンダーは、隙間に入ることができるそのような研磨性微粒子によって引き起こされる磨耗に曝されない。したがって、それらはより長い耐用年数を有する。
【0008】
熟練者はこの本体が単一の、一体の本体であることを理解するであろう。
このシリンダーは通常、シリンダー内のピストンの軸方向の移動を可能にする開端部と、シリンダーの端部面を画成する閉端部とを備える。
【0009】
本発明の一実施形態では、各ピストンは、ピストンが分注すべき液体をシリンダー内に導入することができる第1の位置と、ピストンがこの液体をシリンダーから出口に分注することができる第2の位置とを有するバルブ部分を含み、このバルブ部分はこの第1と第2の位置の間を移動可能である。
【0010】
ピストンの一部分として形成されるバルブ部分を有することによって、ポンプが複雑なバルブ構成をシリンダーの外に含む必要性が避けられる。
このバルブ部分は、円筒状ピストンの切欠き区画を備えることができる。例えばこのピストンの遠位端(すなわち、使用の際にシリンダー内に残る端部)は、円弧形状部分を取り除くように機械加工または他の方法で形成されており、それによって平坦なまたは平らにされた表面を有するピストンの一部分を提供することができる。この実施形態では、各ピストンのこの平坦なまたは平らにされたバルブ部分は、それぞれのシリンダー壁と共に、分注すべき液体が通り流れることができる流路を画成する。したがって、第1の位置では、ピストンがシリンダーの開端部に向かって駆動されるとき、分注すべき液体をこの流路と流体連通する液体入口を介してシリンダー内に引き込むこと(すなわち、導入)ができる。次いでこのピストンは、第2の位置に移動させる(例えば、回転させる)ことができ、そこでこの液体入口はピストンの弓形部分によって閉じられ、ピストンの平坦なまたは平らにされたバルブ部分によって画成される流路は液体出口と流体連通させられ、この液体は、ピストンをシリンダー内に、その閉端部に向けて駆動することによってシリンダーから分注される。
【0011】
各ピストンバルブ部分が回転によって第1と第2の位置の間を移動可能である実施形態では、このポンプは、バルブ部分を第1と第2の位置の間で回転させることができる回転駆動システムをさらに含む。通常は、この回転駆動システムは全てのピストンを同時に回転させる。
【0012】
本発明の別の実施形態では、このピストンはセラミック材料から作られ、シリンダー壁はセラミック材料から作られる。さらに別の実施形態では、このセラミック材料は熱的に安定なセラミック材料、例えばジルコニウム酸化物ベースのセラミック材料である。換言すれば、このセラミック材料は、液体ポンプ内で通常受ける温度例えば0℃と150℃の間に曝される際に、実質的に収縮または膨張しない。したがって、ピストンおよびシリンダーの寸法および形状は加熱または冷却に際して実質的に一定のままであり、特に0℃から150℃の温度範囲で実質的一定のままである。
【0013】
以前に、単一の本体内に複数のセラミックピストンを収容することは試みられていない。液体を分注するための知られたセラミックポンプは、それら自体のそれぞれの本体内に配置されるシリンダーを備え、ピストンの破損を伴う予想される問題点のために、各本体は、単一のそれぞれのシリンダーとピストンの構成を含む。しかし、本発明の発明者らは、公差を正確に特定し、最適な設計の駆動連結を使用することによって、ピストンの破損を伴う予想される問題点が起きないことを見出した。
【0014】
1つまたは複数の別々の機械的なシールの必要性を避けるために、各ピストンとシリンダーの間の嵌合は、使用の際に分注すべき液体がシリンダーから実質的に漏れることができないようにしなければならない。その上、各ピストンとシリンダーの間の摩擦は、最小限にすべきである。セラミック材料、特に熱的に安定なセラミック材料の使用が、動作温度の所望の範囲にわたって各ピストンとシリンダーの間の最適な嵌合を維持できることが見出された。さらに、各ピストンとシリンダーの間の摩擦力は、ピストンとシリンダー壁の両方に対しセラミック材料を使用することによって最小限にすることができる。その上、セラミック材料は非常に硬く磨耗に対して抵抗性がある。したがって、ピストンおよび/またはシリンダー壁の磨耗を介したポンプの性能の劣化は、さらに最小限にすることができる。
【0015】
セラミック壁を有するシリンダーを設けるために、液体ポンプの本体は、内部にシリンダーが画成されるセラミック材料から形成することができる(すなわち、シリンダーはセラミック本体内に機械加工され、またはその他の方法で形成される)。別法として、(セラミックスリーブとしても知られる)セラミックライナーが、非セラミック本体内に形成される(すなわち、非セラミック本体によって画成される)シリンダー内に設けられる。例えば、この本体は高分子材料またはアルミニウムなどの金属から形成することができ、この本体は複数のシリンダーを画成し、それらのそれぞれはセラミックライナーを装備する。非セラミック本体内のこれらのシリンダーは、本体を形成する機械加工ステップによって、(例えば、高分子本体の場合)成型ステップによって、(例えば、金属本体の場合)鋳造ステップによって形成することができる。
【0016】
本体が非セラミックであり、内部に画成されるシリンダーのためにセラミックライナーが設けられる実施形態では、このライナーは本体に解放可能に連結することができる。本体に解放可能に連結されるセラミックライナーを有することによって、このポンプは清掃のために分解するのがより容易になり、本体全体を交換しなければならないことなく、損傷したまたは磨耗したシリンダーライナーを交換することが可能になる。
【0017】
別の実施形態では、本体は1つまたは複数の温度制御回路を含む。この温度制御回路は、本体内に埋め込まれた電気抵抗加熱器の形態であることができ、あるいは本体内に配置されるまたは本体内に画成される流体導管の形態であることができる。本体内に流体導管を含む実施形態では、この温度制御回路は温度制御流体入口および温度制御流体出口をさらに含むことができ、本体の温度は、本体を通る温度制御流体の流れによって制御される。
【0018】
ポンプの温度を制御するために温度制御流体を使用する利点は、使用される流体に応じてポンプを加熱または冷却することができることである。そのような実施形態では、液体ポンプの温度は室温以外の温度に維持することができる。例えば、加熱された流体を本体によって画成されるまたは本体内に配置される導管を通過させることによって本体を加熱することができる。当業者は、いくつかの液体の粘度はそれらを加熱することによって改変することができることを理解するであろう。通常は、液体の粘度は温度の増加と共に減少する。したがって、いつもは粘性のある液体を加熱されたポンプを使用することによってより容易に分注することができる。「より容易に」によって、この流体をシリンダー内に引き込むためにより少ない力が必要になり、この流体をシリンダーから分注するまたは吐き出させるためにより少ない力が必要になることは当業者に明らかであろう。
【0019】
別法として、冷却液流体を本体に通すことによって、本体を冷却することが有用である場合がある。例えば、分注すべき液体の粘度を増加させることが望ましい場合があり、あるいは分注すべき液体が熱に対して敏感である場合がある。
【0020】
本発明の別の実施形態では、このポンプは、ピストンをそれらのそれぞれのシリンダー内で軸方向に移動させるためにピストンに連結されるピストン駆動システムをさらに備える。
【0021】
この駆動システムは、吸入ストローク、すなわち分注すべき流体のシリンダー内への導入の速力および/または力を制御することができる。その上または別法として、それは、放出ストローク、すなわちシリンダーからの液体の分注の速力および/または力を制御することができる。本発明の一実施形態では、この駆動システムは吸入および放出ストロークの両方の速力および力を制御する。
【0022】
本発明の一実施形態では、このピストン駆動システムは、各ピストンをそのそれぞれのシリンダー内で回転させるようにも駆動する。
この駆動システムは、単一の駆動源、例えば電気モーター、サーボモーター、油圧駆動源または空圧駆動源を備えることができ、あるいは2つ以上の駆動源を備えることができる。ポンプが2つ以上の駆動源を備える実施形態では、1つの駆動源は吸入ストロークを生じさせることができ、第2の駆動源は放出ストロークを生じさせることができる。その上または別法として、1つの駆動源は、ピストンの軸方向の移動を生じさせることができ、第2の駆動源は、各ピストンのそのそれぞれのシリンダー内での回転移動を生じさせることができる。
【0023】
この駆動源は、該当する駆動源によって加えられる力、および/またはピストンがそれらのシリンダー内で移動させられる速力または速度を制御するようになされた1つまたは複数のそれぞれの制御器を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、この1つまたは複数の制御器は、分注すべき流体の流れ特性に従って該当する駆動源を制御することができる連続可変制御器である。
【0024】
この駆動システムは、それぞれがそれぞれのピストンに動作的に連結される複数の駆動シャフトを含むことができる。
本発明の別の実施形態では、各ピストンは駆動システムに解放可能に連結される。任意選択で、これは、各ピストンがそれぞれの駆動シャフトに解放可能に連結されることを含む。
【0025】
駆動システムに解放可能に連結されるピストンを有することは、それがポンプを分解し再組立てするのをより容易にし、したがって清掃するのをより迅速にかつより容易にするので、この場合も分注運転時間の間のポンプの清掃を助ける。
【0026】
本発明の一実施形態では、各ピストンは駆動システムに解放可能に連結され、この連結は、ピストンの長手方向軸に対して半径方向にピストンを移動させることによって、駆動システムからピストンを解放できるように構成される。別の実施形態では、ピストンの軸方向での駆動システムとピストンの間の遊びは実質的に許されない。用語「実質的に遊びがない(substantially no play)」は、本発明の文脈では10マイクロメートル(10μm)より少ない軸方向の相対的な移動は許されると解釈すべきである。
【0027】
横断方向でのある程度の遊びを可能にするが、軸方向で遊びを実質的に許されなくすることによって、ピストンに加えられる非軸方向の力が最小限にされ、ピストンの駆動システムとの位置合わせの小さな相違を吸収できることが見出された。これは、ピストン破損のリスクを最小限にし、複数のピストンが単一の本体内に収容されるのを可能にする。
【0028】
本発明の別の実施形態では、ポンプの本体は駆動システムに対して移動可能であり、それによってピストンは、それらのそれぞれのシリンダー内に配置されたままで駆動システムから解放することができる。この本体は通常、(シリンダーが互いに平行であるように配置される場合)シリンダーの長手方向軸に対して横断方向に移動し、駆動システムに対するこの横断方向移動は、駆動システムからピストンを切り離し、それらのそれぞれのシリンダーからのピストンの引き続く取り外しを可能にする。
【0029】
ピストンの長手方向軸に対して横断する方向での移動を可能にするが、軸方向での移動を実質的に防止する解放可能な連結を設けることによって、ポンプの正確性を維持することができる。この結果、各吸入ストロークは液体の知られた容積をシリンダー内に引き込み、各放出ストロークはその容積を分注する。このようにすると、複数の容器に液体の知られた容積を正確に、再現可能に投薬することが可能になる。
【0030】
各ピストンと駆動システムの間の解放可能な連結は、駆動システムまたはその駆動シャフトによって担持されるそれぞれのバーと協働するようになされた鉤形状の連結具を有するピストンを設けることによって達成される。この逆の配置、すなわち鉤が駆動システム上にあり、それぞれのバーがピストン上にあることも企図されている。
【0031】
この鉤とバー構成部品の位置合わせをし易くするために、この鉤はテーパの付いた開口部を含むことができる。本発明の実施形態では、この鉤は、バーの直径と実質的に等しい幅を有する溝を備えるバー接触部分をさらに備える。このバーは、使用の際に溝内に配置され、この溝は駆動システムに対する軸方向でのピストンの移動が実質的に防止されるようなサイズにされている。換言すれば、ピストンと駆動システムの間の遊びは、ピストンの軸方向で実質的に存在しない。
【0032】
この鉤とバー構成部品は、ピストンがそのそれぞれのシリンダー内で回転できるようにピストンにトルク(すなわち、回転力)をそれらが伝達することもできるように、配置することができる。
【0033】
本発明の一実施形態では、各シリンダーはそれぞれの液体分注ノズルと流体連通する液体出口を含み、それによって各シリンダーから放出される液体を分注ノズルを介してそれぞれの容器に別々に、個別に分注することができる。別法として、シリンダーの液体出口は全て、共通の分注マニホールドと流体連通することができ、それによってシリンダーから放出される液体は、マニホールド内で互いに混合される。さらに別の実施形態では、2つ以上のシリンダーの液体出口は、2つ以上のシリンダーから放出される液体が混ぜ合わされ、混合物として分注され得るように、共通の導管内で混ぜ合わせることができる。
【0034】
したがって、本発明のポンプは液体の知られた容積の複数の投薬量をそれぞれの容器内に分注するために使用することができ、あるいはそれは異なる液体の知られた容積を単一の容器内に繰り返し混合するために使用することができる。
【0035】
したがって、本発明のポンプは、全て共通の液体源と流体連通する(すなわち共通の液体源に接続された)液体入口を含むことができる。別法として、各シリンダー用の入口は、それぞれの液体源と流体連通することができる。
【0036】
本発明のポンプは、液体を極めて正確に分注するために有利に使用される。これは、ポンプの各シリンダーが液体の所望の容積を繰り返し、正確に分注することができることを意味する。この改善された正確性、再現性および清掃の容易性は、例えば、薬剤カプセルを液体剤形で充填するのに使用することができるポンプに結果としてなる。
【0037】
本発明の第2の態様によれば液体を分注する方法が提供され、この方法は、分注すべき液体を上記で定義されたような本発明の第1の態様の任意の実施形態または実施形態の組み合わせで定義されるような液体ポンプ内に引き込むステップと、それを、ポンプからの液体分注ノズルと位置合わせされる1つまたは複数のそれぞれの容器内に、ポンプから分注するステップとを含む。
【0038】
本発明の一実施形態では、各ピストンは、ピストンが液体源からシリンダー内に分注すべき液体を導入することができる第1の位置と、ピストンがシリンダーから出口に液体を分注することができる第2の位置とを有するバルブ部分を含み、この方法は、バルブ部分が分注すべき液体をそれぞれのシリンダー内に引き込むための第1の位置にある状態で各ピストンをそのそれぞれのシリンダーから部分的に抜け出させるステップと、バルブ部分が第1の位置から第2の位置に移動するように各ピストンを回転させるステップと、バルブ部分がシリンダーから出口まで液体を分注するための第2の位置にある状態で各ピストンをそのそれぞれのシリンダー内に駆動するステップとを含む。
【0039】
上記で定義されるような本発明の様々な実施形態および特徴は、そうではないと明示的に提示されない限り、本発明の1つまたは複数の他の実施形態または特徴と組み合わせることができる。したがって、用語「本発明の実施形態」は、「上文での任意の態様または実施形態で定義されるような本発明の実施形態」として解釈すべきである。同様に、本発明の1つの態様を参照して説明される実施形態は、そうではないと明示的に提示されない限り、本発明の他の態様に等しく適用可能である。したがって、本発明の第1の態様に関連して説明される実施形態は、本発明の第2の態様の実施形態も構成することができ、その逆も可能である。
【0040】
本明細書で使用されるとき、以下の用語は指示される意味を有するとして考慮すべきである。
用語「嵌合」は、ピストンの外向きに面する表面とシリンダーの内部壁の間に隙間が画成されるような、各ピストンとそのそれぞれのシリンダーの相対的な構成および寸法設定を意味する。この隙間は、シリンダーとそのそれぞれのピストンの直径(すなわち、シリンダーの内側直径とピストンの外側直径)の間の差として定義することができる。この定義を使用して、本発明の一実施形態での各ピストンとシリンダーの直径の間の差は0.5μmから5μmである。別の実施形態では、直径のこの差は0.7μmから2μmである。さらに別の実施形態では、この差は0.8μmから1.2μmである。
【0041】
分注すべき液体で充填されるシリンダーを参照して使用される用語「吸入ストローク(inlet stroke)」、「導入(induction)」、「引き込む(drawn into)」、「吸引(aspiration)」等は、同じ意味を有する(すなわち、交換可能に使用される)ことが意図されている。同様に、駆動システムに対する用語「速力(speed)」および「速度(rate)」のように、用語「吐き出させる(expel)」および「分注する(dispense)」は同義語的に使用される。
【0042】
次に本発明の一実施形態を、例示としてのみ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】それぞれのシリンダー内に配置されたピストンを有するポンプ本体の斜視図である。
【図2】ピストンの斜視図である。
【図3】図1に示すポンプのそれぞれのシリンダー内に配置されるピストンの、軸方向面内での横断面図である。
【図4】ピストンの連結端部および駆動シャフトの対応する端部の横断面図である。
【図5】分注すべき液体の吸引の第1の位置にある、図3のアセンブリの線5−5に沿った横断面図である。
【図6】液体の分注の第2の位置にある、図3のアセンブリの線5−5に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明によるポンプの本体2を図1に示す。この本体2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からワンピース構造として形成され、内部にいくつかのシリンダー4を画成する。図1に9つのシリンダー4が示されているが、当業者にはより多くのまたはより少ないシリンダー4を本体2内に形成できることは明らかであろう。
【0045】
各シリンダーは、(ドイツ国MannheimのFriatec株式会社から入手可能な)酸化マグネシウムで富化されている酸化ジルコニウムセラミック材料から形成されるスリーブからなるセラミックライナー6を含む。このライナー6は、固定キー(図示せず)によってシリンダー4内に保持される。
【0046】
シリンダー4の閉端部は、本体2に解放可能に連結される端板(図示せず)によって形成される。したがって、この端板はポンプの清掃のために取り外すことができる。
本体2は、ポンプのシリンダー4からそれぞれの容器内に液体を分注するための複数の分注ノズル8をさらに含む。
【0047】
この分注ノズル8は、ポンプ本体2内に画成される出口導管(図示せず)によってシリンダー4の出口ポート9Bに接続される。
本体2は、本体2内に画成される入口導管(図示せず)とシリンダー4内に画成される入口ポート9Aとを介して分注すべき液体をシリンダー4に供給する液体入口(やはり図示せず)をさらに含む。この液体入口は、分注すべき液体の源または貯蔵器に接続されるようになされている。
【0048】
この実施形態では、シリンダー4の全てが同じ液体を供給され、それはシリンダー4から個別の容器に個別に投薬される。しかし、各シリンダー4またはシリンダー4のグループが異なる液体を分注できるように、各シリンダー4を分注すべき液体のそれ自体のそれぞれの源に接続できることは前述から当業者に明らかであろう。
【0049】
その上、図1に示されていないが、本体2内に画成される温度制御回路が本体2内に設けられている。この温度制御回路は、温度制御流体が本体2を通り流れ、本体2を所望の温度に維持することができるように本体2内に配置されるまたは画成される、流体入口と、流体出口と、それらの間の導管とを含む。制御流体の温度は、知られた方式で制御される。
【0050】
本体内に導管を形成するまたは配置することは良く知られていることを当業者は理解するであろう。これは様々な異なる良く知られた技術によって達成することができる。
流体搬送導管を備える温度制御回路の代替として、代わりに本体内に埋め込まれる抵抗線を備えることができ、この線は本体2を加熱するために電源に接続することができる。
【0051】
ピストン10を図2および3により詳細に示す。図3に示すように、それぞれのピストン10は各シリンダー内に配置される。
ピストン10は、使用の際に本体2のシリンダー4内に残る遠位端12を有する。この遠位端の反対側(すなわち近位端)に、ピストンを(図4に示す)それぞれの駆動シャフト30に連結するための連結具部分14が存在する。
【0052】
このピストンは、(「nanocare」として知られ、ドイツ国MannheimのFriatec株式会社から入手可能な)イットリウム酸化物富化ジルコニウム酸化物セラミック材料から形成されるシャフト24を含む。シャフト24の遠位端は、平坦なバルブ部分16を提供するように形成される。これは例えば、セラミック材料の弓形の部分を取り除くようにシャフト24の遠位端を機械加工することによって達成することができる。
【0053】
シャフト24は、ピストン10の連結具部分14に接着、機械的固定またはそれらの間に任意の摩擦嵌合を設けることなどの任意の適切な手段で固定される。
連結具部分14の近位端18は鉤形状であり、テーパの付いた側面20と駆動シャフト保持溝22を有する開口部を画成する。この駆動シャフト保持溝22は、間に所定の隙間aを有する対向する側面を有する。
【0054】
駆動シャフト保持溝22は、駆動シャフト30の連結具バー32と係合するようになされている。この隙間aは、連結具バー32の直径より約1μm(1マイクロメートル)大きくなるようなサイズにされている。このようにすると、使用の際に駆動シャフト30とピストン10の間に実質的に軸方向の遊びがないが、それにもかかわらず駆動シャフト30とピストン10を容易に連結し、切り離すことが可能である。
【0055】
連結具バー32は、駆動シャフト30のU字形端部の対向する壁面34の間に固定される。
駆動シャフト30は、そのもう1つの端部のところで駆動システム(図示せず)に動作的に連結される。この駆動システムは、サーボモーター、空圧システムまたは油圧システムなどの駆動源と、吸入/放出ストロークの速度および/または力を制御するための連続可変制御器などの制御器を備える従来型の駆動システムであることができる。この駆動システムが、例えば1つが吸入ストロークを駆動するための、もう1つが放出ストロークを駆動するための別々の駆動源を備えることができることは当業者には明らかであろう。そのような構成は良く知られており、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0056】
その上、この駆動システムは、ピストン10のそれぞれをそれらのそれぞれのシリンダー4内で同時に回転させるための回転駆動源を含む。これが、各ピストン10の平坦なバルブ部分16が分注すべき流体の吸入(図5)または放出(図6)を選択的に可能にさせる。この回転移動は、それらのそれぞれの鉤とバー連結を介してピストンに伝達される。この場合も、この回転駆動源は良く知られており、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0057】
使用の際に、ピストン連結具部分14のそれぞれは、駆動シャフト保持溝22を連結具バー32と位置合わせさせ、ピストン10を駆動シャフト30に対して図4に示すX方向に移動させることによってそれぞれの駆動シャフト30に連結される。
【0058】
ピストン10がそれらのそれぞれの駆動シャフト30と係合した後、本体2の液体入口は、液体の貯蔵器などの分注すべき液体の源に連結され、温度制御流体入口および出口は温度制御流体供給システムの流出および戻り側に連結される。
【0059】
温度制御流体は、制御流体供給システムによって制御され、所望の温度が達成されるまで本体2を通過する。
ピストン10がそれらの平坦なバルブ部分16を入口位置に配置された状態で、すなわち遠位端12の弓形部分がシリンダーからの液体出口ポートを閉じ、平坦なバルブ部分16がピストン10とシリンダー4の間の流路であって、シリンダー4の液体入口ポートに隣接する流路を画成した状態で、ピストン10は、駆動システムによってそれらのシリンダー4の外に部分的に引っ張り出される。
【0060】
これによって、分注すべき液体が液体入口、入口導管および液体入口ポートを介してシリンダー4内に引き込まれる。
液体の所望の容積が各シリンダー4内に引き込まれた後、ピストン10は駆動システムによって放出位置に回転させられる。放出位置では、遠位端12の弓形部分が液体入口ポートを閉じ、平坦なバルブ部分16が液体出口ポートと流体連通する流路を画成する。次いでこのピストン10は、それらのそれぞれのシリンダー4内に押しやられ戻され、シリンダー4内に引き込まれた液体は、シリンダーから放出され、出口ポート、出口導管および分注ノズル8を介して容器内に分注される。
【0061】
ポンプを清掃するために、液体入口が液体源から切り離され、温度制御流体入口および出口が制御流体システムから切り離される。次いでピストン10は、図4に示すY方向に本体を移動させることによってそれらのそれぞれの駆動シャフト30から切り離される。次いでピストン8をそれらのシリンダー4から取り外し、清掃することができる。本体2の端板は、シリンダーライナー6が取り外し可能になるように、清掃のために取り外すことができる。
【0062】
Oリングシールなどの別々の機械的なシールがないことは、例えば清掃のために、このポンプが迅速にかつ容易に分解し、再組立てできることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダーを内部に画成する本体を備え、各シリンダーが内部に配置されるそれぞれのピストンを有する、液体を分注するための液体ポンプであって、各シリンダーおよびそれぞれのピストンが、それらの間の嵌合が分注すべき液体の漏れを防止するような形状にされ、構成される液体ポンプ。
【請求項2】
各ピストンが、前記ピストンが分注すべき液体をシリンダー内に導入することができる第1の位置と、前記ピストンが前記液体を前記シリンダーから出口に分注することができる第2の位置とを有するバルブ部分を含み、前記バルブ部分が前記第1と第2の位置の間を移動可能である、請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項3】
前記バルブ部分が、回転によって前記第1と第2の位置の間を移動させられ、前記ポンプが、前記バルブ部分を前記第1と第2の位置の間で回転させるように各ピストンに動作的に連結される回転駆動システムを含む、請求項2に記載の液体ポンプ。
【請求項4】
前記本体がセラミック本体であり、前記ピストンがセラミック材料から作られる、前記請求項1から3のいずれか一項に記載の液体ポンプ。
【請求項5】
前記本体が非セラミック材料から形成され、各シリンダーがセラミックライナーを含み、前記ピストンがセラミック材料から作られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体ポンプ。
【請求項6】
前記本体が、その内部に画成される1つまたは複数の温度制御流体導管と、温度制御流体入口と温度制御流体出口とを含み、
前記本体の温度が、前記本体を通る前記温度制御流体の流れによって制御される、前記請求項1から5のいずれか一項に記載の液体ポンプ。
【請求項7】
前記ピストンをそれらのそれぞれのシリンダー内で軸方向に移動させるために、前記ピストンに連結されるピストン駆動システムをさらに備える、前記請求項1から6のいずれか一項に記載の液体ポンプ。
【請求項8】
各ピストンが前記駆動システムのそれぞれの駆動シャフトに連結される、請求項7に記載の液体ポンプ。
【請求項9】
各ピストンが前記駆動システムに解放可能に連結される、請求項7または請求項8に記載の液体ポンプ。
【請求項10】
前記連結が、前記ピストンを前記駆動システムに対して前記ピストンの長手方向軸に対して横断方向に移動させることによって、前記駆動システムから前記ピストンを解放できるように構成され、
前記駆動システムと前記ピストンの間の遊びが軸方向で実質的に許されない、請求項9に記載の液体ポンプ。
【請求項11】
前記本体が、前記駆動システムに対して移動するようになされ、それによって前記ピストンの全てが前記駆動システムから同時に解放可能である、請求項10に記載の液体ポンプ。
【請求項12】
各ピストンが、前記駆動システムによって担持されるそれぞれのバーと解放可能に連結するようになされた鉤形状の連結具を含み、
前記鉤形状の連結具が、前記連結具内での前記バーの正しい位置合わせを可能にするためのテーパの付いた開口部を含み、バー接触部分が、使用の際に前記バーと前記鉤形状の連結具との間の軸方向遊びを防止するように前記バーの直径と等しい幅を有する、請求項10または請求項11に記載の液体ポンプ。
【請求項13】
分注すべき液体を請求項1から12のいずれかに記載の前記液体ポンプ内に引き込むステップと、前記ポンプからの液体出口と位置合わせされるそれぞれの容器内に前記液体を前記ポンプから分注するステップとを含む、液体を分注する方法。
【請求項14】
各ピストンが、前記ピストンが分注すべき液体を前記シリンダー内に導入することができる第1の位置と、前記ピストンが前記シリンダーから出口に前記液体を分注することができる第2の位置とを有するバルブ部分を含み、
前記方法が、前記バルブ部分が分注すべき前記液体を前記それぞれのシリンダー内に引き込むための前記第1の位置にある状態で各ピストンをそのそれぞれのシリンダーから部分的に抜け出させるステップと、前記バルブ部分が前記第1の位置から前記第2の位置に移動するように各ピストンを回転させるステップと、前記バルブ部分が前記シリンダーから前記出口まで前記液体を分注するための前記第2の位置にある状態で各ピストンをそのそれぞれのシリンダー内に駆動させるステップとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポンプの本体が、前記本体内に形成される1つまたは複数の導管を通り温度制御流体をポンプ輸送することによって所望の温度に維持される、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
経口投薬剤形を液体薬剤または栄養価のある成分で充填するために、請求項1から12のいずれか一項に記載の液体ポンプの使用。
【請求項17】
前記経口投薬剤形がカプセルである、請求項16に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538197(P2010−538197A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522466(P2010−522466)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002250
【国際公開番号】WO2009/027809
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】