説明

液体充填装置及び液体充填方法

【課題】電動機を用いて気泡の巻き込みを生じさせることなく迅速な充填を実現できる液体充填装置を提供する。
【解決手段】容器PBに対する液体の充填方向の相対位置が維持されながら、前記容器PBに向けて前記液体を供給する充填ノズル1と、充填ノズル1の流量を調整する電動シリンダと、充填ノズル1から容器PBへ供給される液体の充填量を計測するロードセル21と、計測された充填量に基づいて容器PB内の液体の液位を特定し、かつ特定された液位に対応する充填流量が得られるように電動シリンダの動作を制御する制御部50と、を備える液体充填装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトル、瓶に代表される各種容器PBに、お茶、ミネラルウォータなどの飲料、その他の液体を定量充填する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種容器PBに液体を充填するための充填装置として、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。
特許文献1の充填装置は、容器PB内の下端近傍の下限位置まで充填ノズルを下降させ、この後、充填ノズルを上昇させながら充填ノズルから液体を送出することを前提としている。そして特許文献1は、開口径が上部ほど狭くなる上窄まり口が形成されたペットボトルやガラス瓶に液状物を定量充填する際に、充填ノズルが上窄まり口の下端位置に達した後の充填流量を低流量に絞ると、容器PB内に定量の液体を充填し終わるまでの所要時間が長くなる、という課題を解決することを目的としてなされたものである。つまり、特許文献1は、容器PBの上部に形成されている上窄まり口の下端位置に充填ノズルが達した以後は、液状物の充填流量を調整しないで充填ノズルの上昇速度を、充填ノズルと容器PB内液体の液面との相対位置関係が略一定になるように調整する。そうすることにより、所定量の液体を充填し終わるまでの所要時間を短くできる、とされている。
しかるに、特許文献1のように充填ノズルを容器PB内に挿入する充填方法は、液面から充填ノズルまでの距離を略一定に制御できるので、充填された液体に気泡が巻き込まれるのを防止するのに好ましい。しかし、衛生面の配慮から、充填ノズルを容器PB内に挿入する充填方法はあまり、採用されないのが実状である。
【0003】
従来この種の充填装置としては、エアー駆動の流量調整弁が用いられていたが、エアー駆動による流量調整弁は、細やかな開度調整が難しく、開閉の精度が劣るという問題があった。また、充填液タンクからの給液圧力が一定範囲以上変動すると、液面レベルの制御が不能となり、充填液に気泡の巻き込みや液不足が生じるという問題があった。この問題を解決するために、特許文献2は、電動機(サーボモータ)を用いフィードバック制御の一種であるPID制御により流量調整弁の開閉量を調整することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−37203号公報
【特許文献2】特開2010−126230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料業界において、例えば500mlの容器PBに対して4秒以内と非常に短時間で充填することが要求されている。充填を短時間で終了させるためには液体の充填流量を増やせばよいが、充填流量の増大は気泡の巻き込みの発生要因となる。したがって、単純に充填流量を増やすことはできない。
特許文献2のようにフィードバック制御を用いることは適切な充填流量を得るための一手段ではあるが、500mlの容器PBに対する4秒以内という短時間充填では、電動機をフィードバック制御する時間的余裕がないのが実状である。したがって、特許文献2による充填装置は、このような短時間充填には不向きである。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、電動機を用いて短時間充填を実現できる液体充填装置及び方法を提供することを目的とする。本発明は、そのような液体充填装置及び方法において、さらに気泡の巻き込みを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
容器PBへの充填量に基づいて算出された液位に基づいて充填流量を制御するフィードフォワード的な制御を採用することを本発明者が検討したところ、本発明が志向する短時間充填に十分に対応することができることを確認した。
また本発明者は、容器PB内に充填ノズルを挿入するのではなく、容器PB外に配置される充填ノズルと容器PBの相対的な位置関係を維持しながら液体を容器PBに定量充填すること(以下、ノズル定置充填、称する)を前提にし、本発明の目的を達成するべく検討を行なった。その結果、ノズル定置充填において、充填流量が同じでも、充填された液体の容器PB底部からの液面の高さ(液位)によって気泡の巻き込みの発生有無が相違すること、具体的には、液位が低いほど充填流量が少なくても気泡の巻き込みが生じやすい傾向があり、逆に、液位が高いほど充填流量が多くても気泡の巻き込みが生じにくい傾向があること、を知見した。したがって、この傾向に基づいて液位に応ずる液体の充填流量を設定することにより、気泡の巻き込みを生じさせることなく短時間充填を実現することができる。
【0007】
以上の検討結果に基づく本発明の液体充填装置は、充填ノズルと、電動機と、充填量計測部と、制御部と、を備えている。
充填ノズルは、容器PBに対する液体の充填方向の相対位置が維持されながら、流量調整弁を介して容器PBに向けて液体を供給する。
電動機は、充填ノズルの流量調整弁を動作させる。
充填量計測部は、充填ノズルから容器PBへ供給される液体の充填量を計測する。
制御部は、計測された充填量に基づいて容器PB内の液体の液位を特定する。制御部は、特定された液位に対応する充填流量が得られるように電動機の動作を制御する。
なお、本発明において、充填流量とは単位時間当たりに供給される液体の量をいい、充填量とは当該容器PBに供給された液体の総量をいうものとする。両者の量自体は、体積として捉えることもできるし、質量(重さ)として捉えることもできる。
【0008】
本発明において、制御部が液位を特定する方法として少なくとも以下の2つが掲げられる。
1つ目の方法は、計測された充填量と容器仕様データとに基づいて、容器PBに液体を供給しながら液位を求める。ここでいう容器仕様データは、例えば、液体を収容する容器PBの形状、寸法を少なくとも含んでいればよい。例えば、充填量として重量を計測するものとすれば、重量が既知であれば容器PBの形状、寸法に基づいて、液位を演算により求めることができる。
2つ目の方法は、当該容器PBにおける充填量と液位とが関連付けられた充填量−液位データを予め保持する。制御部は、充填量計測部から液体の充填量を取得すると、充填量−液位データを参照して当該充填量における液位を特定することができる。
1つ目の方法および2つ目の方法のいずれにおいても、制御部は、特定された液位に対応する液体の充填流量が得られるように電動機の動作を制御する。
【0009】
本発明の液体充填装置において、制御部は、以下のようにして充填流量を特定することができる。
制御部は、液位と、当該液位において気泡の巻き込みを生じさせることなく液体を充填できる充填流量と、が対応付けられた液位−充填流量データを保持する。制御部は、求められた液位と、液位−充填流量データと、を対比することにより、容器PBに充填する液体の充填流量を特定する。
この液体充填装置は、液位−充填流量データに基づく充填流量に従って液体の充填が行なわれるので、気泡の巻き込みを生じさせることなく迅速な充填をより確実に実現できる。
【0010】
本発明の液体充填装置は、異なる仕様を有する複数種の容器PBに対応することができる。
この場合の制御部は、複数種の容器PB毎に容器仕様データと液位−充填流量データが対応付けて保持される。制御部は、複数種の容器PBの中から選択された容器PBに対応する容器仕様データと液位−充填流量データに基づいて、当該容器PBについての充填流量を制御する。
この本発明によれば、液体が充填される容器PBが仕様の異なるものに変更されても、複数種の容器PB毎に容器仕様データを備えているので、当該容器PBにおける液位を正確に求めることができる。
同様に、本発明の液体充填装置は、異なる種類の液体に対応することができる。
この場合の制御部は、複数種の液体毎に液位−充填流量データが対応付けて保持される。制御部は、複数種の液体の中から選択された液体に対応する液位−充填流量データに基づいて、当該液体についての充填流量を制御する。
この本発明によれば、異なる種類の液体に変更されても、複数種の液体毎に液位−充填流量データを備えているので、当該液体における液位を正確に求めることができる。
【0011】
本発明は、容器PBに対する液体の充填方向の相対位置が維持された充填ノズルから容器PBに向けて液体を供給する液体充填方法も提供する。この液体充填方法は、充填ノズルの流量調整弁は電動機により開閉が調整されるものであり、充填ノズルから容器PBへ供給される液体の充填量を計測し、計測された充填量に基づいて容器PB内の液体の液位を特定し、かつ特定された液位に対応する充填流量が得られるように電動機の動作を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液位に応じる液体の充填流量を設定することにより、気泡の巻き込みを生じさせることなく迅速な充填を実現することができる。また、本発明は、演算により求められた液位に対応する液体の充填流量が得られるように電動機の動作を制御するので、500mlの容器PBに対する充填時間が4秒以内という迅速な充填に対応した充填流量の制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態における飲料充填設備の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態における液体充填装置の概略構成を示す図である。
【図3】本実施の形態における充填ノズルを示す図である。
【図4】演算部で容器PBに充填されている液体の液位を求める演算式を示す。
【図5】図4に示す演算式が適用される容器PBを示す。
【図6】データ保持部に保持される液位−充填流量データの一例を示す。
【図7】液位−充填流量データを得る実験方法を示す。
【図8】気泡巻き込みの有無を、充填流量を増加した液位及び増加した充填流量に対応付けて纏めた表である。
【図9】液体充填装置による容器PBへの液体の充填の手順を示すフローチャートである。
【図10】データ保持部に保持される容器仕様データ及び液位−充填流量データの一例を示す。
【図11】保持部に保持される充填量−液位データの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態における飲料充填設備は、供給コンベア01、転送ホイール02、液体充填装置03、転送ホイール04、キャッパ05、排出ホイール06、排出コンベア07を構成要素として備えてなる。
この飲料充填設備では、容器PB(例えばペットボトル)を把持しつつ搬送することができるように、転送ホイール02、液体充填装置03、転送ホイール04、キャッパ05、排出ホイール06のそれぞれは、外周部分に円周方向に沿い等間隔でホルダを備えている。これにより、転送ホイール02〜排出ホイール06は回転しつつ、容器PBを把持して搬送し受け渡しするようになっている。
【0015】
このため、供給コンベア01により搬送されてきた容器PBは、位置Aにて転送ホイール02のホルダにより把持されて、位置Aから位置Bにまで搬送される。位置Bでは、容器PBは転送ホイール02から液体充填装置03に受け渡され液体充填装置03のホルダで把持されて位置Bから位置Cにまで搬送される。位置Bから位置Cにまで搬送される際に、液体充填装置03が備える充填ノズルを介して容器PBには液体が充填される。
【0016】
更に、容器PBは位置Cにて液体充填装置03から転送ホイール04に、位置Dにて転送ホイール04からキャッパ05に、位置Eにてキャッパ05から排出ホイール06に、位置Fにて排出ホイール06から排出コンベア07に受け渡されて搬送される。キャッパ05では、容器PBに蓋をするキャッピングが行われる。
【0017】
以下、飲料充填装置の特徴部分である液体充填装置03について、図2以降を参照しながら説明する。
図2に示す液体充填装置03は、旋回テーブルTが旋回軸心Cを中心として水平面内で回転する。この旋回テーブルTの外周縁には、周方向に沿って等間隔に、複数の充填ノズル1と複数のホルダ20とが対になって配置されている。
充填ノズル1の上方位置には、貯液タンク30が配置されている。この貯液タンク30は、充填ノズル1及び旋回テーブルTと一体となって同期回転する。貯液タンク30と各充填ノズル1は、液体供給管40により接続されている。充填ノズル1は、容器PBに対する液体Lの充填方向、つまり鉛直方向の相対的な位置関係が維持されながら、その下端から流下する液体Lを容器PB内に注ぐ。貯液タンク30の配置は任意であり、旋回テーブルTと分離された位置に置くことを本発明はもちろん許容する。なお充填ノズル1の詳細は後述する。
ホルダ20は旋回テーブルTに固定されており、容器PBを充填ノズル1の下方位置に保持する。ホルダ20には、ロードセル21(充填量計測部)が組み付けられており、充填される液体Lの重量を計測することができる。液体Lの重量の測定は、容器PBの重量をキャリブレーションによりゼロリセットして行なうことができる。ロードセル21で得られた計測データは、制御部50(演算部51)に向けて出力される。なお、ロードセル21の代わりに、通過する液体Lの体積を計測する流量計41により充填量を計測することを本発明は許容する。
貯液タンク30の内部には、容器PBに充填すべき飲料等の液体Lが貯留されている。また貯液タンク30の内部のうち、貯留している液体Lの上側の空間には、炭酸飲料であれば炭酸ガス、非炭酸飲料であれば窒素ガスなどの気体が貯えられており、液体Lの劣化を防止する。
液体供給管40は、その上端が貯液タンク30に連通しており、その下流端が充填ノズル1の給液パイプ11cに連通して、貯液タンク30と充填ノズル1とを接続している。
【0018】
図3に示すように、充填ノズル1は、結合構造体2並びに軸継手17により、バルブ本体11が電動シリンダ3(電動機)に連結されており、かつ貯液タンク30からの液体供給管40が給液パイプ11cに接続されている。
充填ノズル1は、バルブ本体11の下部の弁吐出口11a、上部の弁軸ガイド11d、中間部の弁取付フランジ11b、並びに給液パイプ11cを備えており、内部には弁軸10、弁体ロッド13、絞り14、可動弁体15が軸方向に移動可能に組み込まれている。なお、弁軸10の上端は、軸継手17により、電動シリンダ3のロッド軸32と緊密に連結されている。
【0019】
電動シリンダ3は、種々の構成が公知であるのでここでの詳細は省略するが、例えばサーボモータなどの電動機の回転運動をボールねじにより直線運動に変換するもの、中空の電動機を使うことでナット側を回転させてネジ式の軸(ロッド)を直線運動に変換するもの、が一般的である。
電動シリンダ3は、シリンダ本体31と、ロッド軸32と、を備えている。シリンダ本体31内には例えば上述したサーボモータが設けられ、このサーボモータの回転運動を直線運動に変換するボールねじとロッド軸32とが緊密に連結される。この電動シリンダ3は、サーボモータの回転位置、速度を制御することにより、ロッド軸32の進退位置、進退速度を制御できる。可動弁体15は弁軸10などを介してロッド軸32に連結されているので、電動シリンダ3は、可動弁体15の進退位置、進退速度を制御できる。後述する制御部50により電動シリンダ3の駆動が制御される。
【0020】
可動弁体15は、弁吐出口11aの直上に設けられた固定弁座11eに密着或いは隙間を隔てて対峙することにより、給液パイプ11c経由で飲料などの充填液が供給される充填液通路18の開度を調整する流量調整弁5の機能を備えている。
また、弁体ロッド13は、下端に可動弁体15が、また、上端部には絞り14を備えた軸状の部品であり、例えばねじ止めによって弁軸10に、緊密に連結されている。
【0021】
充填ノズル1は、電動シリンダ3を駆動することにより可動弁体15の固定弁座11eに対する位置を制御することができる。充填液の充填を行なう場合には、可動弁体15を固定弁座11eから離なす。その中で、充填流量を少なくする場合には可動弁体15を固定弁座11eに近づけ、充填流量を多くする場合には可動弁体15を固定弁座11eから遠ざける。本実施形態は、可動弁体15から固定弁座11eまでの距離を液体Lの液位に対応して変化させることを主旨とするが、容器PBに充填される液体L(液種)の粘度によっても調整される。つまり、同じ充填流量を得る場合、粘度の低い充填液は可動弁体15を固定弁座11eに近づけ、粘度の高い充填液は可動弁体15を固定弁座11eから遠ざける。そのために、可動弁体15から固定弁座11eまでの距離が調整される。このように、充填ノズル1は、可動弁体15の位置を適宜調整しながら液体Lの充填を行なう。
【0022】
可動弁体15の駆動源を電動シリンダ3とする充填ノズル1によると、可動弁体15の駆動速度が容易に変更できるので、任意の充填流量の設定を迅速に行なうことができる。また、任意の位置で可動弁体15を容易に停止できるので、充填流量を多段階に設定することができる。したがって、充填ノズル1は様々な充填条件に対応するのが容易かつ迅速に行えるのであって、このことが後述する液位による充填流量の制御の実現を可能にする。
また、空気圧シリンダを用いた従来の充填ノズルは、バルブ個々に応答遅れが発生し、かつフレキシブルに充填流量を制御することが難しい。また長時間使用すると空気圧シリンダ内のオリフィスにゴミが混入するなどして可動弁体15の駆動に支承がでることがある。そうすると、規定量の充填液が充填されないまま容器PBが充填装置から排出されるおそれもある。これに対して充填ノズル1は、電動シリンダ3を可動弁体15の駆動源としており空気の供給設備が不要なため、ゴミの混入による上述した充填不良がなくなる。
【0023】
液体充填装置03は、制御部50を備えている。
制御部50は、可動弁体15の駆動源である電動シリンダ3の動作を調整することで、充填ノズル1から容器PBに充填する液体Lの流量を制御する。この制御を実行する制御部50は、演算部51と、データ保持部52と、指示部53と、を備えている。
【0024】
演算部51は、容器PBに充填された液体Lの液位を演算により求める。演算部51(制御部50)は、ロードセル21から出力される容器PBの重量に関するデータ(液体重量データ)を取得する。また、演算部51は、データ保持部52から、容器PBについて、容器仕様データ及び液位−充填流量データを取得する。
【0025】
演算部51は、容器PBに充填されている液体L表面の容器PB底面からの位置、つまり液位をhとすると、演算部51は液位hを図4に示す式(1)により求めることができる。
ここで、容器PBを図5に示すように、容器PBを高さ方向に微小間隔Δhを置いてn等分に分割し、各分割断面を容器PBの下方から、d1、d2、…、dnとする。各断面d1、d2、…、dnは円形の開口を有しており、この開口の面積をa1、a2、…、anとする。そうすると、容器PBの最下面から断面d1までに充填される液体Lの重量W1は図4に示す式(2)により求められ、また、容器PBの最下面から最上位の断面dnまでに充填される容器PBに充填される液体Lの総重量Wは図4に示す式(3)により求められる。Δhは、H/nであるから、容器PBの底面から高さ方向の任意の位置(液位)h(t)までに充填される液体Lの重量W(t)は、図4に示す式(4)により求めることができる。式(4)より、当該位置h(t)は図4に示す式(5)により表されるところ、容器PBに充填された液体Lの重量W(t)が既知であれば、容器PBにおける液体Lの液位を求めることができる。式(5)において、重量W(t)は式(1)におけるロードセル21からの計測データと等価であり、容器PBに関する部分は図4に示す式(6)のように式(1)の容器仕様データAと等価である。この容器仕様データAは、データ保持部52に予め保持されている。
以上のように、演算部51は、ロードセル21から容器PBに充填される液体Lの液体重量データ(充填量)を取得することで、データ保持部52が保持している容器仕様データAを用いることにより、当該重量に対応する液位の推定値を式(1)に基づいて演算により求めることができる。
【0026】
本実施形態の飲料充填設備が、異なる仕様を有する複数種の容器PBに液体Lを充填する場合には、容器PB毎の容器仕様データをデータ保持部52に保持させておく。そして、液体Lの充填を行なうのに先立って、液体Lが充填される容器PBに対応する容器仕様データを選択することで、演算部51は当該容器仕様データをデータ保持部52から取得して、液位を求めることができる。この点については、容器仕様データの例を後述する。
【0027】
次に、演算部51は、以上のようにして得られた液位と液位−充填流量データに基づいて、当該液位に対応する充填流量を特定する。
データ保持部52に保持される液位−充填流量データの一例を図6に示している。液位−充填流量データは、液位と、当該液位において気泡の巻き込みが生じない液体Lの充填流量と、を対応付けたデータである。図6の液位−充填流量曲線よりもハッチングが施されている下方の領域の充填流量で液体Lを充填すれば、気泡の巻き込みは生じない。特に、液位−充填流量曲線上の充填流量を採用すれば、気泡の巻き込みを生じさせることなく、かつ、最短で充填を完了させることができることになる。
演算部51は、式(1)に基づいて液位が得られたならば、図6に示す液位−充填流量データと対比し、当該液位に対応する充填流量を特定する。
【0028】
指示部53は、演算部51で特定された充填流量に基づいて、電動シリンダ3を介して可動弁体15を動作させる。具体的には、指示部53は充填流量に対応する充填ノズル1の開度データを保持しており、演算部51で特定された充填流量を取得することで、当該充填流量に対応する充填ノズル1の開度を特定するとともに、この開度に基づいて電動シリンダ3を動作させる。
また、指示部53は、1つの容器PBに最終的に充填されるべき液体Lの総重量(設定充填量)に関するデータを保持するとともに、ロードセル21からの液体重量データを取得する。指示部53は、液体重量データを設定充填量と照合することで、容器PBへの液体Lの充填が設定充填量に達するまで行なわれたことを検知すると、電動シリンダ3を動作させて充填ノズル1が所定の時間で閉じるように指示する。
【0029】
ここで、液位−充填流量データを得るのに有効な手法の一例を、図7を参照して紹介する。
[条件]
容器PB(例えば、容量500mlのペットポトル)に下記する規定の液位までは液面が揺動しない程度の充填流量(例えば、50ml)で液体L(例えば、ミネラル水)を充填する。
規定の液位=30,50,60,80,100,120mm
規定の液位に達したら、下記する所定の充填流量に増加させる。
所定の充填流量=100〜300ml/secの範囲で25ml/sec刻み
[評価方法]
充填流量を増加させた直後の液位の最大値と最小値を読み取り、下記により液位変動量を求めた。
液位変動量=液位最大値−液位最小値
その結果、液位が低いほど液面変動量が大きくなること、また、増加する充填流量が大きいほど液面変動量が大きくなること、が確認された。例えば、液位が30mmのときに、充填流量を100ml/secに増加させると液面変動量は25mm、充填流量を150ml/secに増加させると液面変動量は50mmであった。
【0030】
また、充填流量を増加させた直後の気泡巻き込み状況を観察した。
図8に、気泡巻き込みの有無を、充填流量を増加した液位及び増加した充填流量に対応付けて纏めた。図8に示されるように、充填流量を増加した液位及び増加した充填流量について、気泡の巻き込みが生じない境界が存在する。そして、図8は、気泡の巻き込みを生じさせることなく液体Lの充填を最短で完了させるには、当該液位において気泡の巻き込みが生じない最大の充填流量(臨界充填流量)で液体Lを充填すればよいことを示唆している。例えば、液位が30mmの場合には充填流量を100mlとし、液位が60mmの場合には充填流量を150mlとし、さらに液位が100mmの場合には充填流量を175mlとする、という具合に充填流量を制御すれば、気泡の巻き込みを生じさせることなく液体Lの充填を最短で完了させることができる。このようにして、図8より、液位−充填流量データを得ることができ、この液位−充填流量データは、制御部50のデータ保持部52に保持される。なお、臨界充填流量に対応する液位変動量、つまり臨界液位変動量は図8に示されている通りであり、これを尺度として充填流量を制御することもできる。
【0031】
なお、液位−充填流量データは、液体Lの種類、液体Lが充填される容器PBの仕様によって変動し得る。したがって、本実施形態の飲料充填設備が、異なる種類の液体L、異なる仕様の容器PBに対応する場合には、液体Lの種類、容器PBの仕様に対応する液位−充填流量データをデータ保持部52に保持させることが必要である。そして、演算部51は、当該液位−充填流量データに基づいて充填流量を特定する。
【0032】
次に、液体充填装置03による容器PBへの液体Lの充填の手順を、図9を参照して説明する。
液体充填装置03の所定の充填位置(図1 位置B)に容器PBが搬送されことを条件に、液体Lの充填が開始される(図9 S101)。
液体Lの充填が始まると、制御部50の演算部51は、ロードセル21から出力される液体重量データを取得するとともに、データ保持部52から容器仕様データ及び液位−充填流量データを取得する(図9 S103,S105,S107)。
【0033】
演算部51は、取得した液体重量データ及び容器仕様データを用いて、当該液体重量における液位を演算により求める(図9 S109)。この演算は、図4に示した式(1)〜式(6)に基づいて行なわれる。
【0034】
次いで演算部51は、得られた液位と液位−充填流量データに基づいて、当該液位に対応する充填流量を特定する(図9 S111)。この充填流量に関するデータは演算部51から指示部53に送られる。指示部53は、充填ノズル1から容器PBに向けて吐出される液体Lの流量が演算部51で特定された充填流量に一致するように、電動シリンダ3を動作させて、固定弁座11eに対する可動弁体15の位置、つまり充填ノズル1の開度を調整する(図9 S113)。
【0035】
以上の手順(S103〜S113)は、設定された充填重量に達するまで継続的に行なわれる(図9 S115 No)。そうすることで、気泡の巻き込みを生じさせることなく液体充填を短時間で行なうことができる。
一方、設定された充填重量に達したならば、指示部53は、充填ノズル1を閉じるように電動シリンダ3に指示する(図9 S115 Yes,図9 S117)。
こうして液体充填装置03の所定の充填位置(図1 位置C)まで液体Lが充填された容器PBが搬送されると、液体Lの充填処理が終了する(図9 S119)。
【0036】
以上説明した実施形態によると、容器PBへの液体Lの充填量に基づいて算出された液位に応じて充填流量を制御するフィードフォワード的な制御を採用するので、容器PBへの液体Lの充填を迅速に完了させることができる。
また、本実施形態は、計測された充填量と容器仕様データとに基づいて、容器PBに液体Lを供給しながら液位を演算によって求めるので、充填される容器PBが変更されたとしても、それに対応する容器仕様データを保持しておき、それを選択するだけで、液位を正確に求めることができる。
さらに本実施形態は、液位と、気泡の巻き込みを生じさせることなく液体Lを充填できる充填流量と、が対応付けられた液位−充填流量データに基づいて容器PBに充填する液体Lの充填流量を特定するので、気泡の巻き込みを生じさせることなく迅速な充填をより確実に実現できる。
【0037】
上記実施形態は、1種類の容器PB及び1種類の液体Lを対象に説明したが、本発明は容器PB及び液体Lともに複数種であっても対応することができる。
仮に、処理される容器PBが容器A、容器B、…、容器Nであり、充填される液体Lが液体α、液体β及び液体γとする。データ保持部52は、図10に示すように、容器A、容器B、…、容器Nに対応する容器仕様データを保持する。また、データ保持部52は、液体L(液種)ごとに、容器A、容器B、…、容器Nに対応する液位−充填流量データを保持する。そして、制御部50に容器PB及び液体Lを選択する機能を持たせる。そうすれば、飲料充填装置による処理を行うのに先立って、液体Lが充填される容器PBを容器A、容器B、…、容器Nから選択し、また、充填される液体Lを液体α、液体β、液体γから選択することで、演算部51が取得する容器仕様データ及び液位−充填流量データを容器種、液種に応じて特定することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、計測された充填量と容器仕様データに基づいて液位を特定するが、本発明はこれに限定されない。例えば、液体Lが充填される容器PBの充填量と液位とが関連付けられた充填量−液位データをデータ保持部52が予め保持する。充填量−液位データは、例えば図11に示されるように、容器PB毎に、充填量と液位が対応付けられている。演算部51がロードセル21から充填量を取得すると、充填量−液位データを対比して当該充填量における液位を特定することもできる。
計測された充填量と容器仕様データに基づいて液位を演算により特定する方法はデータ保持部52に保持されるデータ量が少なく済む利点があり、一方、充填量−液位データを参照して液位を特定する方法は、データテーブル(例えば図11)から参照するため、演算を行なわなくて済むので液位の特定を迅速に行なえる利点がある。
【0039】
また、上記実施形態では、図6に示すように、液位に応じて充填流量を連続的に変化させる例を示したが、本発明はこれに限定されず、充填流量を段階的に変化させることを許容する。ただし、充填流量を連続的に変化させる方が、臨界充填流量を反映する充填流量で液体Lの充填を行なうのに有利である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
PB 容器
01 供給コンベア
02 転送ホイール
03 液体充填装置
04 転送ホイール
05 キャッパ
06 排出ホイール
07 排出コンベア
1 充填ノズル
2 結合構造体
3 電動シリンダ
5 流量調整弁
T 旋回テーブル
10 弁軸
11 バルブ本体
11a 弁吐出口
11b 弁取付フランジ
11c 給液パイプ
11d 弁軸ガイド
11e 固定弁座
13 弁体ロッド
15 可動弁体
17 軸継手
18 充填液通路
20 ホルダ
21 ロードセル
30 貯液タンク
31 シリンダ本体
32 ロッド軸
40 液体供給管
50 制御部
51 演算部
52 データ保持部
53 指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器PBに対する液体の充填方向の相対位置が維持されながら、流量調整弁を介して前記容器PBに向けて前記液体を供給する充填ノズルと、
前記流量調整弁を動作させる電動機と、
前記充填ノズルから前記容器PBへ供給される液体の充填量を計測する充填量計測部と、
計測された前記充填量に基づいて前記容器PB内の前記液体の液位を特定し、かつ特定された液位に対応する充填流量が得られるように電動機の動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする液体充填装置。
【請求項2】
計測された前記充填量と容器仕様データとに基づいて、前記容器PBに前記液体を供給しながら前記液位を求める、
請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項3】
計測された前記充填量と、前記容器PBの充填量と液位とが関連付けられた充填量−液位データとに基づいて、前記容器PBに前記液体を供給しながら前記液位を求める、
請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記液位と、当該液位において気泡の巻き込みを生じさせることなく前記液体を充填できる充填流量と、が対応付けられた液位−充填流量データを保持し、
求められた前記液位と、前記液位−充填流量データと、を対比することにより、前記充填流量を特定する、
請求項2又は3に記載の液体充填装置。
【請求項5】
前記制御部は、
複数種の前記容器PB毎に前記容器仕様データと前記液位−充填流量データを対応付けて保持し、
複数種の前記容器PBの中から選択された容器PBに対応する前記容器仕様データと前記液位−充填流量データに基づいて、当該容器PBについての充填流量を制御する、
請求項4記載の液体充填装置。
【請求項6】
前記制御部は、
複数種の前記液体毎に前記液位−充填流量データを対応付けて保持し、
複数種の前記液体の中から選択された液体に対応する前記液位−充填流量データに基づいて、当該液体についての充填流量を制御する、
請求項4又は請求項5に記載の液体充填装置。
【請求項7】
容器PBに対する液体の充填方向の相対位置が維持された充填ノズルから前記容器PBに向けて前記液体を供給する液体充填方法であって、
前記充填ノズルの流量調整弁は電動機により開閉が調整され、
前記充填ノズルから前記容器PBへ供給される液体の充填量を計測し、
計測された前記充填量に基づいて前記容器PB内の前記液体の液位を特定し、かつ特定された液位に対応する充填流量が得られるように電動機の動作を制御する、
ことを特徴とする液体充填方法。
【請求項8】
計測された前記充填量と容器仕様データとに基づいて、前記容器PBに前記液体を供給しながら前記液位を求める、
請求項7に記載の液体充填方法。
【請求項9】
計測された前記充填量と、前記容器PBの充填量と液位とが関連付けられた充填量−液位データとに基づいて、前記容器PBに前記液体を供給しながら前記液位を求める、
請求項7に記載の液体充填方法。
【請求項10】
前記液位と、当該液位において気泡の巻き込みを生じさせることなく前記液体を充填できる充填流量と、が対応付けられた液位−充填流量データを保持し、
求められた前記液位と、前記液位−充填流量データと、を対比することにより、前記充填流量を特定する、
請求項8又は9に記載の液体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−1417(P2013−1417A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133907(P2011−133907)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】