説明

液体充填設備及びその運転方法

【課題】高温殺菌充填において、大量のブロー等の無駄をせずに運転停止時の温度降下を効率的に補償する方法、装置の提供。
【解決手段】液体貯蔵タンク2からフィラ7へ液体を送液して容器に充填する液体充填設備であって、充填停止後にフィラタンク7内の液体を液体貯蔵タンク2に還流させる手段を有し、前記還流の際に液体貯蔵タンク2からフィラタンク7への送液経路の少なくとも一部でフィラタンク7内の液体を逆流させて液体貯蔵タンク2に還流させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料充填設備及びその運転方法に関し、より詳しくは、例えばジュース等の高温の飲料のような飲料を容器内に充填する設備において、充填する飲料の品質劣化を防止しつつ充填設備停止後の飲料の廃棄ロスを低減させる飲料充填設備及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の飲料製造設備においては、中味液としての飲料を貯蔵する貯蔵タンクから飲料充填装置(以下フィラと呼ぶ)への飲料の供給は一方向の流れであり、ボトル等の容器の不具合等によりフィラが停止して飲料の受入ができなくなれば、センサーが感知してフィラへの飲料の送液を停止するようになっている。送液が停止すると、フィラのフィラタンク内の中味液すなわち飲料は自然冷却もしくは無菌エアの流れにより冷却されるため一定時間以上設備が停止すると容器を殺菌可能な温度以下となる。この場合充填を再開する際にはフィラタンク内の冷えた液を廃棄し、更に、フィラの構成要素であるフィラタンク、充填ノズル等の温度を上げるために加熱した飲料をブロー(フィラタンク、充填ノズル等に流して捨てる)する必要があり、また、充填が停止した場合に加熱した飲料をフィラを除く設備の一部をバイパスさせて循環させるシステムも開発されていた(特公平2−27236号公報)が、この場合もフィラタンク内の飲料の温度が低下し、フィラの昇温ブロー(飲料をフィラタンク及び充填バルブ等に流してそれらを昇温させた後廃棄すること)が必要であり、廃棄ロスが生じるという問題があった。これらのロスを低減するために、充填設備が停止した場合に第1戻り経路の分岐点からフィラへの分岐点までの経路内の飲料を回収して製品タンクに戻し、再度加熱して充填する方法(特開平2001−72189号公報)や、フィラタンク内の飲料を再加熱して循環させる方法(特開2002−337988号公報)等が開発されている。しかしながら、いずれの場合も設備が大がかりになり、既存設備の改修では設計が困難である。さらにメインテナンスを加増するものである。また、製品タンク、加熱殺菌装置、充填バルブを含む設備を常時循環させる系も開発されている(特開昭59−74097号公報)が、この系においても、前述の装置、設備と同様の問題がある。
【0003】
一方、飲料を高温で充填する場合、上記のような、フィラが停止するとセンサにより送液が停止するシステム、或いはダイバート循環経路で循環させる経路を有するシステムにしても、フィラの動作停止時にはフィラタンクに高温の充填液が供給されなくなるため、フィラ内の飲料の温度が徐々に低下する。特に、雑菌汚染を避けるために無菌エアの流れのある環境でフィラを運転する場合もあり、その場合はさらに温度低下が起こりやすい。この温度低下は極めて早く1分程度フィラが動作停止した場合でも充填の規定温度よりも低下する場合がある。これに対して通常フィラ停止時間は1分間よりも長い。
【0004】
温度低下が早い原因の一つはフィラ、フィラ周辺の配管等が冷却されやすいためである。従来の製造設備では冷却を受けやすい一部のバルブ、配管等について部分的に保温手段が用いられていた。従って、保温手段が設けられた部分は高温がより長時間維持されるがそれ以外の部分については短時間でも温度を維持することができていなかった。ある部分では温度保持できていても、一部の部分では温度を保持できていない状態となることは全ての液体を廃棄または再加熱することを余儀なくする。そこで充填が停止した場合にも全製造設備にわたって温度低下を防止するシステムの開発が求められていた。
【特許文献1】特開2001−72189号公報
【特許文献2】特開2002−337988号公報
【特許文献3】特開昭59−74097号公報
【特許文献4】特許平2−27236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題に鑑みなされたものであって、運転停止時に液温の低下したフィラタンク内の飲料を迅速に循環受タンクに流入させ、かつ運転再開時のリードタイムを短くする液体充填設備及びその運転方法並びに保温方法を提供することを目的とする。
本発明の目的は、また、設備全体を効率良く保温し廃棄ロスを低減できる液体充填設備の運転方法、保温方法及び液体充填方法並びにこれに用いる設備を提供することである。
本発明の目的は、また、既存の液体充填ラインに簡易な改造を施すことによりフィラタンク内の充填液の廃棄量を低減できる液体充填設備及びその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備であって、充填停止後にフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる手段を有し、前記還流の際に液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部でフィラタンク内の液体を逆流させて液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備が提供される。
【0007】
本発明によれば、フィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させることによりフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させ、再度充填に使用することができる。そのため、ホット充填の際にフィラが停止し、液温が規定温度以下になった場合でも再度加熱して充填に用いることができる。また、沈殿や浮遊しやすい成分を含む液体についてもフィラ停止後フィラ内の液体を液体貯蔵タンクに還流させ、送液、還流を繰り返すことにより沈殿や浮遊による成分の分離を少なくすることができ、より均一な充填が可能になるという効果を有する。この均一充填を目的とする場合には送液経路の全てを逆流させることもできる。また、加熱により変質しにくい飲料(例えば、パスツーリゼーションにより加熱殺菌を行う日本酒等)や、常温、低温充填の場合にも送液経路の全部を逆流させることができる。さらに、同じ熱交換器で加熱と冷却を行うような場合には、送液経路は加熱、逆流経路は冷却するように配管を設置すれば送液経路の一部を逆流させて往復循環させることも可能である。
【0008】
請求項2の発明によれば、還流させる手段がポンプであることを特徴とする請求項1に記載の液体充填設備が提供される。
【0009】
本発明によれば、ポンプによりフィラ内の液体を還流させるため、より効率よく還流させることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、還流させる手段が気体の圧力であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体充填設備が提供される。
【0011】
本発明によれば気体の圧力によりフィラ内の液体を押し出して還流させることができる。この場合、気体の温度を液温に近い温度にすることにより、フィラ、配管の温度低下を低減することもできる。
【0012】
請求項4の発明によれば、空検知手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の液体充填設備が提供される。
【0013】
本発明によれば、空になったことを検知することにより、気体による加圧やポンプによる還流を停止するタイミングを正確に決定することができる。空検知手段の設置場所としては、ポンプ27bの直前が好ましいがこれに限定されない。例えば、ダイバートバルブからフィラタンクにいたる配管中に空検知手段を設けることで、ダイバートリターンラインに空の部分が生じるのを少なくすることもできる。あるいはフィラタンク内にレベル計を設置することにより空検知することも可能である。
【0014】
請求項5の発明によれば、還流経路としてダイバート経路を利用することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の液体充填設備が提供される。
【0015】
本発明によれば、通常のダイバート経路を有する液体充填ラインを用いることによりフィラ内の液体を還流させることができ、既存の配管を利用できるため、新たに還流用の配管を増設する必要がないという効果を有する。
【0016】
請求項6の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備であって、液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0017】
本発明によればフィラタンク内の液体を既存の送液経路を逆流させることにより液体貯蔵タンクに還流させるため、既存の設備を大幅に変更することなく運転方法を変えるだけで還流させることができるという効果を有する。
【0018】
請求項7の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる際にポンプ及び/又は気体の圧力を利用することを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0019】
本発明によればポンプ及び/又は気体の圧力を利用することにより、より効率よくフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることができるという効果を有する。
【0020】
請求項8の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる際にポンプ及び/又は気体の圧力を利用し、空検知手段及び/又はタイマにより還流を制御することを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0021】
本発明によれば還流の終了をより確実に設定でき、次の送液のタイミングをより正確なものにできるという効果を有する。また、これにより、より迅速に送液を開始できるという効果も有する。
【0022】
請求項9の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、送液経路の一部を逆流させるとともにダイバートリターン経路を介してフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0023】
本発明によれば、送液経路の一部とダイバートリターン経路を介してフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることができ、既存の設備を有効に利用できるという効果を有する。
【0024】
請求項10の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、フィラの充填停止後に少なくとも一部の送液経路を逆流させる工程と、フィラ内の液体を気体の圧力及び/またはポンプにより送液経路を逆流させて還流させる工程と、空検知手段及び/又はタイマーにより、気体による加圧及び/またはポンプを停止させる工程と、を有することを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0025】
本発明によればフィラタンク内の液体の還流の終了をより正確に検知することができ、ポンプにエア等の気体を巻き込むことや、フィラタンク内に多くの液体が残った状態で還流を停止するという危険性を低減することが出来る。
【0026】
請求項11の発明によれば、液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、充填停止後還流を開始することを特徴とする運転方法が提供される。
【0027】
本発明によれば、充填が停止すると還流を開始することから液温が低下することが少なく、フィラタンク内の液体の温度を充填可能温度に保つことが容易になるという効果を有する。この際、充填停止後直ちに還流を開始することにより、より効率よく温度低下を防止することができる。また、沈殿や浮遊しやすい成分を含む液体を充填する場合でもフィラの充填停止後に還流を開始するため、液体と沈殿や浮遊しやすい成分の分離を少なくでき、また、還流、送液による攪拌効果により、液体の状態をより均一に保つことができる。この場合もフィラの充填停止後直ちに還流を開始すればより効率よく攪拌することができる。
【0028】
請求項12の発明によれば、充填停止後還流を開始し、還流の終了後、フィラへの送液を開始し、充填開始まで還流、送液を交互に繰り返すことを特徴とする液体充填装置の運転方法が提供される。
【0029】
本発明によれば還流、送液を交互に繰り返すことにより、フィラタンク内の液温の低下が低減できるために液体の廃棄量を低減できる。また、沈殿や浮遊しやすい液体の場合でも攪拌効果により、より均一な状態で充填できるという効果を有する。
【0030】
また、充填停止後直ちに還流を開始し、還流の終了後直ちに送液を開始し、送液修了後直ちに還流を開始するというように、還流と送液を連続的に充填再開まで繰り返すこともできる。これにより、保温効果、攪拌効果をより高めることができる。
【0031】
請求項13の発明は少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の液体充填設備を提供する。
【0032】
本発明によれば少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することから往復循環の保温効率を高めることができる。また、往復循環をせずに液体の温度を充填可能に保持できる時間が長くなるという効果を有する。保温の部位はダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクに限られず、例えば、ポンプ26からダイバートバルブまでの経路などを保温することもできる。
【0033】
請求項14の発明によれば、保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温された請求項13に記載の液体充填設備が提供される。
本発明によれば、保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温設計されるため、保温効果がより高まる。
【0034】
請求項15の発明によれば、少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することを特徴とする請求項6ないし請求項12の何れか1項に記載の液体充填方法が提供される。
【0035】
本発明によれば少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することから往復循環の保温効率を高めることができる。また、往復循環をせずに液体の温度を充填可能に保持できる時間が長くなるという効果を有する。
【0036】
請求項16の発明によれば、保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温された請求項15に記載の液体充填方法が提供される。
【0037】
本発明によれば、保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温設計されるため、保温効果がより高まる。
【0038】
以上の他、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備の運転方法であって、前記フィラの運転停止後、前記液体を、前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラタンクまでの充填経路内及びフィラタンク内に存在する液体を流入させるための循環受タンクに流入させることを特徴とする液体充填設備の運転方法と、
液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備であって、前記フィラの運転停止後に前記送液経路と前記循環経路との分岐点から前記フィラタンクまでの経路内及びフィラタンク内に存在する液体を流入するための循環受タンクを設けたことを特徴とする液体充填設備と、が提供される。
【0039】
上記発明によればフィラの運転が何らかの原因により停止した際に、フィラ内及び分岐点からフィラまでの配管、バルブ等の内部の液体を循環受タンクに流入させ、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路と連結することにより、分岐点からフィラに至る配管、バルブ、フィラ等の内部の液体を液体貯蔵タンクに循環させることができる。既存の設備にタンク、経路を付加するため、新たな工事が最低限で済み、かつノズルから液体を回収するよりも迅速にフィラタンク内の液体を循環受タンクに回収することができる。なお、本明細書においては、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路をダイバート循環経路という。
【0040】
また、前記フィラタンク内の液体の温度が所定値以下になったとき前記循環受タンクへの流入を行う運転方法が提供される。
【0041】
この発明によれば、フィラタンクの温度が低下し、充填に適さなくなった場合にフィラタンク内の液体を循環受タンクに流入させ、循環経路により貯蔵タンクに戻すことにより、再度加熱して充填に用いることができ、フィラタンク内の液体の廃棄ロスを低減することができる。
【0042】
また、前記充填経路及びフィラタンク内に滞留する液体が実質的に無くなったら、送液経路を介して液体を前記フィラタンクに送って液体の充填を開始することを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0043】
この発明によれば、フィラタンク内の液体が実質的になくなってから充填用の送液を開始するため、フィラタンク内の温度低下した液体と新たに加熱して送液した液体とが混合しないため、混合による温度低下を防止することができる。「実質的になくなったら」とは、フィラ内の液体ほぼ全量が循環受タンクに流入され、フィラ内には痕跡程度の液体が残っているだけの状態をいう。この際、フィラタンク内の液体が実質的になくなった直後に送液を開始すれば設備稼働率をより高めることができる。
【0044】
また、前記送液経路を介して液体を前記フィラタンクに送って液体の充填を開始する際に、前記液体の温度を、フィラ運転停止後のフィラの温度降下を考慮に入れて通常運転時の送液温度より高い温度に加熱することを特徴とする液体充填設備の運転方法が提供される。
【0045】
この発明によれば、通常よりも高温の液体がフィラに送液されるため、フィラの昇温効果が得られ、フィラ昇温ブローを低減することができる。この際、フィラの温度に応じてフィラを充填温度に昇温できる送液温度を計算して送液の温度を最適化することにより、フィラ昇温ブロー量を極小化することができる。
【0046】
また、前記循環受タンクを、前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラタンクまでの充填経路の途中から分岐して前記循環経路と連結する新たな循環経路に設けたものである液体充填設備が提供される。
【0047】
この発明によれば、循環経路から更にフィラに近い経路から分岐して循環経路を設け、そこに循環受タンクを設けることができる。そのため、元の循環経路の分岐点より貯蔵タンク側に圧力調整タンクや脱気タンク等が設けられている場合は、よりフィラに近い新たな経路を設けることにより、これらの圧力調整タンクや脱気タンク等を循環させながら、循環受タンクにフィラ内の液体を流入でき、圧力調整タンクや脱気タンク内の液体の温度低下を防止することができる。
【0048】
また、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備の保温方法であって、前記送液経路と前記循環経路との分岐点から下流側の配管及びフィラまでを保温することを特徴とする液体充填設備の保温方法と、
液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備であって、前記送液経路と前記循環経路との分岐点から下流側の配管及びフィラまでを保温することを特徴とする液体充填設備と、が提供される。
【0049】
本発明によればダイバート循環経路の分岐バルブから下流側の配管及び機器部分について保温することができ、これにより、ダイバート循環経路の分岐からフィラまでの温度低下を遅延させることができ、より長時間にわたって液体を充填可能温度に保つことができる。そのため、運転停止後にそのまま充填を再開できる頻度が増す。これらにより設備の稼働率を高め、生産性を上げることもできる。
【0050】
また、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備の保温方法であって、前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラまでの全経路の温度低下速度が各部位間で同一になるように保温することを特徴とする液体充填設備の保温方法と、
液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備であって、前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラまでの全経路の温度低下速度が各部位で同一になるように保温したことを特徴とする液体充填設備と、が提供される。
【0051】
本発明によればダイバート循環経路の分岐点からフィラまでの全経路の温度低下速度を同一にすることができ、全体として保温効率がよくなり、一部の温度低下により全部を廃棄することがなくなる。また、部材的にも過剰な保温を防止することができるため保温部材を節約できる。さらに充填可能温度を維持できる時間が長くなることからフィラ運転停止後直ちに充填を再開できる頻度が増し、設備稼働率が高まる。
【0052】
また、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備の保温方法であって、前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラまでの液体充填設備における冷える部分全ての部位の温度低下勾配が一定に設定されていることを特徴とする液体充填設備の保温方法が提供される。
【0053】
この発明によれば分岐点から冷える部分全ての部位の温度低下勾配が一定に設定されるため、より保温効率を高め、温度低下による液体廃棄と昇温ブローの頻度が少なくなり、破棄ロスが低減できるとともに設備の稼働率を高めることができる。
【0054】
また、上記液体充填設備を用いることを特徴とする液体充填方法が提供される。
この発明によれば、フィラまでの温度低下速度が各部位間で同一であることから、より長時間所定の充填可能温度を保つことができ、または、充填規定温度以下になった場合でも循環受タンクにフィラ、配管内の液体を流入させることにより廃棄ロスが低減できる。そのため、フィラ停止後でも再開時にフィラ内の液体をそのまま充填できる回数が増え、また、そのまま充填できない温度にまで液温が低下した場合でも循環受タンクに受け、液体貯蔵タンクに還流させることにより、再度加熱して使用でき、フィラ内液体の廃棄ロスが無くなるという効果がある。
【0055】
また、液体貯蔵タンクと液体を容器に充填するフィラとの間の送液経路の途中から分岐して液体を前記液体貯蔵タンクに循環させる循環経路を有する液体充填設備であって、前記フィラの運転停止後に前記送液経路と前記循環経路との分岐点から前記フィラまでの経路内及びフィラタンク内に存在する液体を流入させる循環受タンクと、前記送液経路と前記循環経路の分岐点から下流側の配管及びフィラまでを保温する保温手段が設けられていることを特徴とする液体充填設備が提供される。
【0056】
この発明によれば、高温の液体が循環していない、分岐点から下流側の配管およびフィラまでを保温し、かつフィラタンク内の液体を流入させる循環受タンクが存在する設備が提供されることから、保温により、充填停止時の温度低下速度を遅延させることにより再開時にフィラ内の液体をそのまま充填できる頻度が高まり、設備稼働率を上げることができるとともに、より長時間充填が停止したために液体の温度が充填可能温度を下回った場合には、廃棄するのではなく、循環受タンクに流入させ再度加熱したのち充填に使用するため、廃棄ロスが無くなり、全体としてコストダウンできるという効果が得られる。
【0057】
また、前記循環受タンクを前記送液経路と前記循環経路との分岐点からフィラタンクまでの充填経路の途中から分岐して前記循環経路と連結する新たな循環経路内に設けたものである液体充填設備が提供される。
【0058】
この発明によれば、よりフィラ近傍までがダイバート循環経路に入るため、温度低下しない部位が増えるという効果が得られる。
【0059】
また、還流の間、液体貯蔵タンクから送液された液体を貯留させる手段を備えることを特徴とする液体充填設備が提供される。
【0060】
本発明によれば、フィラからの液体の還流の間、液体貯蔵タンクから送液される液体を貯留手段に貯留することにより、ダイバート経路にこの液体を流さないことから、還流経路としてダイバート経路を全て利用できるという効果を有する。そのため、より短時間で還流させることができる。この貯留手段としては、典型的にはヘッドタンク、デアレーションタンク等のタンクが用いられる。これらのタンクには通常保温手段が施されていることと、フィラタンクから液体貯蔵タンクへの液体の還流は通常短時間に設定されるので、還流中に充填可能温度(フィラに送液した場合にフィラタンク内の液温が充填可能である温度を意味する)以下に貯留手段内の液体の温度が低下することは考えにくい。しかし、還流時間を長く設定する場合等には、還流中に、液体の温度が低下してフィラに送液した際に充填可能温度以下にならないように、保温を設計する必要がある。フィラに送液した場合に充填可能温度以下になるレベルまで貯留手段内の液体の温度が低下した場合には、通常のダイバート循環を行い、充填可能温度まで貯留手段内の液体温度を上昇させることも可能である。
【0061】
また、逆流させる経路がフィラタンクの流入口からフィラに最も近いダイバートバルブまでの送液経路である液体充填設備が提供される。
【0062】
本発明によれば、逆流させる送液経路はフィラタンクの流入口からフィラに最も近いダイバートバルブまでであるので、既存の経路をそのまま利用することが出来るという効果を有する。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(イ)フィラ停止時に、ダイバートバルブ以降の液体を循環させることにより、加熱充填 製品の充填後温度補償のための液体ブロー量を大幅に削減できる。また、その循環 (往復循環)は既存設備の大幅な改造を行うことなく可能である。
(ロ)フィラ停止により、フィラに高温液体が送液されない状態になったとしても保温効 果によりダイバートバルブ以降のフィラタンク内、配管内、バルブ内の液体をより 長時間充填可能温度に保つことができる。
(ハ)全ての部位の温度勾配を保証することにより、廃棄を低減させ、安定した充填が可 能となる。
(ニ)フィラ内の液体を還流後、送液、充填を行うことにより沈殿又は浮遊しやすい成分を含有する飲料についてもより均一な充填が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例について、液体として飲料を充填する場合で説明する。なお、ここでは循環受けタンクがある場合とない場合の2通りについて説明を行う
循環受タンクのある場合
図1において本発明の1例(循環受タンクあり)を実施する飲料充填設備1が示されている。同図において、2は飲料を貯蔵するクッションタンクすなわち液体貯蔵タンクであり、3は飲料を加熱殺菌する加熱殺菌装置であり、4は切換バルブであり、5はヘッドタンクであり、6はダイバートバルブであり、7はフィラのフィラタンクであり、それらは送液設備12により直列に接続され、送液経路11を構成している。ダイバートバルブ6にはダイバートリターンライン14が接続され、飲料を送液経路11から液体貯蔵タンク2に戻すダイバート循環経路13を構成している。ダイバートリターンライン14にはダイバート循環経路13を介して貯蔵タンク2に戻される飲料を冷却する冷却装置15が設けられている。上記経路及び各構成機器の構造及び機能は従来の飲料充填設備のものと同じであるから詳細な説明は省略する。本発明を実施するために、送液ライン12のダイバートバルブ6より下流側の位置に切換バルブ16を設け、そのバルブをライン18及び循環受タンク17を介してダイバートバルブ6に接続し、ダイバートリターンライン14に接続可能にしている。なお、切換バルブ16及び循環受タンク17の構造及び機能も公知のものでよいので、詳細な説明は省略する。
【0065】
上記構成の飲料充填設備1において、飲料を容器b内に充填する充填運転時は、クッションタンクすなわち貯蔵タンク2内の飲料は、ポンプ25により送液経路11の加熱殺菌装置3により加熱殺菌された後ヘッドタンク5内に送られ、そのヘッドタンク5からダイバートバルブ6及び新設の切換バルブ16を介して旋回するフィラタンク7内に送られる。フィラタンクが旋回しながらその中の飲料が充填バルブ8を介して容器b内に充填される。ダイバートバルブ6からフィラタンク7までの経路は、この実施例では充填経路20を構成する。
(充填停止時)
充填停止時の運転としてはダイバート循環と往復循環の2通りが考えられる。ダイバート循環とは従来からある考え方で、クッションタンクすなわち飲料貯蔵タンク2から送液された液体をフィラ手前に設けたダイバートバルブから還流させダイバートリターンライン14を通し、再び貯蔵タンク2へ循環させる。当然ダイバート循環ではダイバートバルブ以降の液体は滞留し、温度は低下する。これに対し本発明の往復循環ではダイバート循環では滞留してしまうダイバートバルブより下流側(循環経路で見て)の液体も循環される。この往復循環を行うタイミングについては特に指定しない。滞留している液体の温度により実施しても良いし、予めタイマーを設定することもできる。また温度条件が満たされるのであれば、充填直前に1回だけ実施することも考えられるし、その逆に充填が停止した瞬間から往復循環を実施し続けても良い。
(ダイバート循環)
循環受タンク17が設置されているため、微生物的に心配であれば、循環受タンクがダイバート循環経路に入るようにダイバート循環経路を設計する。もし少量の残液に対して微生物などの心配がないのであれば、あえて循環受タンクをダイバート循環経路内に含める必要はない。ここでは、一例として循環受タンクがダイバート循環経路内に入っている場合を説明する。
【0066】
充填運転の停止時には、切換バルブ16が切り換えられ、ダイバートバルブ6とフィラタンク7との接続が断たれ、ダイバートバルブ6が循環受タンク17と接続される。したがって、貯蔵タンク2から送られた飲料は、加熱殺菌装置3、ヘッドタンク5、ダイバートバルブ6及び切換バルブ16を介して循環受タンク17に流れる。循環受タンク17内の飲料は、ダイバートバルブ6、冷却装置15を通り貯蔵タンク2に戻る。以上がフィラの充填運転停止時のダイバート循環ルートとなる。
(往復循環)
往復循環時には切換バルブ16を切り換えて循環受タンク17とフィラタンク7とを接続する。この時、フィラの充填バルブ8は閉じた状態にある。そしてこの状態でフィラタンク7内に図示しない窒素ガスの供給源より窒素ガスの圧力を加えて加圧する。(この場合、加圧に用いるガスは窒素ガスに限らず、空気や炭酸ガス等の気体でもよい。ガスの種類は充填する液体の性質等により選択される。)すると切換バルブ16より下流側の配管21、22及びフィラタンク7内に滞留している飲料は循環受タンク17に回収される。またこの時ポンプ26により送られた液体はダイバートバルブ6からダイバートリターンライン14を通り貯蔵タンク2へ循環されている。なお、循環受タンク内に回収されるのはフィラタンク内の液体の温度が所定値以下に下がったときとして、その温度が所定値より高い場合には回収しないで一部を充填用ノズルからブローさせた後容器内への充填を開始してもよい。そして、切換バルブ16より下流側の配管21、22及びフィラタンク7内に滞留している飲料が実質的になくなったら、再び切換バルブ16を切り換え、ダイバートバルブ6とフィラタンク7とを接続し、貯蔵タンク2内の飲料をフィラタンク7に送る。この時フィラタンク7、配管21、22で失われる熱量を考慮して、熱交換機すなわち加熱殺菌装置3の設定温度を通常より高めに設定しても良い。
【0067】
循環受タンク内17に回収された液体は、回収終了後、直ちにクッションタンクすなわち液体貯蔵タンク2へ送られる。特に、往復循環を繰り返す場合は早急に循環受タンク17を液体を受け容れる余裕がある状態にする必要がある。循環受タンク17から貯蔵タンク2への送液は、ヘッドタンク5からフィラタンク7へ送液している最中(充填中)でも可能である。この場合、バルブ6では貯蔵タンク2からフィラ7への経路と、循環受タンク17から貯蔵タンク2へ還流する経路の両方の経路を開放した状態になる。この場合にはこれらの二つの経路は合流しない。このような機能を果たすバルブとしては例えば弁体が上下に移動するダブルシートバルブ等を用いればよい。循環受タンク17から貯蔵タンク2への送液方法としては、気体の圧力、例えば、窒素ガス等による圧力で送液することができる。この場合、循環受タンクを密閉状態にできるので衛生面で優れている。この際、循環受タンクに気体を流入させる手段を設けると、圧力により循環受タンク内の液体を液体貯蔵タンク2に還流させると同時に、液体貯蔵タンク2からフィラへの送液を行うことができる。他の送液手段としては、ポンプを用いてもよい。ポンプは還流ライン18内に設けることが好ましいが、ダイバートリターンライン14内や還流経路13内に設けても良い。ポンプを用いる場合には循環受けタンク17は開放系もしくは半開放系にすればよい。また、気体の圧力とポンプの両方を用いてもよい。
【0068】
この実施例によれば経路の途中にタンク5のようなタンクがある場合でもタンク内の液温を低下させることなく液体をダイバート循環でき、また、温度が低下したフィラ内の液体を循環受タンクに流入させ、貯蔵タンクに還流させることにより、フィラ内液体等の廃棄ロスを減少させることができる。また、工事も最小限で済むという効果も得られる。
【0069】
なお、上記実施例では循環受タンク17を切換バルブ16に接続したが、ダイバートバルブ6から分岐するダイバートリターンライン14の途中に循環受タンクを設けてもよい。この場合、循環受タンクに分岐バルブ6からフィラタンク7内部等の液体を流入させる際には、貯蔵タンク2から送液された液はバルブ4から13のライン、15の冷却機を経由して貯蔵タンクに循環させる。すなわち、循環受タンクに分岐点16からフィラタンク7内までの液体が流入中は、貯蔵タンク2から送液された液体はタンク5、バルブ6、ライン14を経由せずに、4,13,15の経路で循環する。
【0070】
この場合、フィラからの液体受け入れの際は、バルブ6を切り替えてタンク5との通路を遮断し、フィラからバルブ6を介して経路14にある循環受タンクとを連通させ、バルブ6からフィラまでの液体及びバルブ6から循環受タンクまでの経路内の液体を循環受タンクに流入させる。この場合にも循環受タンクへの流入手段、循環受タンクから液体貯蔵タンクへの還流手段として気体による加圧及び/又はポンプ等を用いることができる。この実施形態の場合には、タンク5内の液体の温度が低下するおそれがあるが、バルブ4からタンク5を介してバルブ6に至る経路に保温手段を設けることにより、より効率的に充填設備を運転できる。この際、全ての冷える部分の温度勾配を同一にすることでさらに保温効率を高めることもできる。この経路を用いた場合には既存のダイバート経路の途中にタンクを設けるだけでよいので設備が単純になり、工事の負担も少なくなる。
【0071】
図2において、本発明の保温方法を実施する飲料充填設備1aが示されている。この図において、図1の飲料充填設備1の構成要素と共通の要素は同じ参照番号に接尾語aを付して表す。この飲料充填設備の最大のポイントは冷える部分を部位毎に分けて考えている点であり、これら全ての部位の温度勾配を保証する事により、初めて廃棄量の大幅削減が可能となる。つまり、冷える部分個々が部位毎に温度低下の勾配が違うため、それぞれの部位に適切な保温を設計する必要がある。そして保温後は各部位の温度勾配が一様となるように設計する。例えば、フィラタンク7aの部位(e)の温度勾配が改善されたとしても、ダイバートバルブ6aとデアレーションタンク25aとの間の部位(a)が改善されていなければ結局この滞液量を全て廃棄しなければならない。なお、(b)はデアレーションタンク25aの部位であり、(c)及び(d)は配管21a及び22aの部位である。
【0072】
そこで以下の方針に基づいて保温条件を設定した。
【0073】
ア.温度低下時の温度勾配が等しいであろう部位毎にダイバートバルブ以降を部位分 けする。
【0074】
イ.それぞれの部位の保温後の目標温度勾配を一定とし保温を設計する。
各部位の保温条件を表1から表3に示した。
その結果、表4の保温条件であればグラスウール程度の断熱材を保温材として用いた場合にダイバートバルブ以降の配管、タンク、バルブ、フィラの温度低下速度を同一にしつつ保温することができる。これにより、大部分が規定温度以上で一部分が規定温度以下になるという温度ムラによる不都合を回避し、より保温効率を上げることができる。
【0075】
上述の条件を満たす限り保温の方法については特に限定はしないが、
1.微生物の巣とならない、
2.脱落により保温材が容器内に混入しない(特にフィラー保温において)、
事に留意し選定することが必要である。すなわち保温材の材料は、飲料を殺菌状態で充填することから微生物管理が容易でかつ容易に脱落しない保温材が望ましい。例えば、二重管を用いて、外管部分を真空にする。もしくは、外管部分にグラスウール、発泡ポリウレタン、高温用ガラス繊維などの保温材を詰めると言った方法が考えられるが、これらに限られない。要するに上述の特性を満たすものであれば良い。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
充填再開時には攪拌部材を取り付けたフィラタンクを用いることにより、固形成分を含む液体の攪拌効果を高めることができる。特にフィラ停止後、保温効果によりフィラタンク内の液体を廃棄せずにそのまま充填する場合にはフィラタンク内の固形成分と液体の分離が問題となる。この場合、フィラタンクを、液体を容器に充填しない状態で回転させ内部の液体を攪拌することもできるが、回転により温度低下がより起こりやすい。そこで、内部に攪拌部材を取り付けて回転させると攪拌部材の攪拌効果により、回転時間を大幅に短縮できる。これにより、フィラタンクの温度低下が抑制され、容器への充填温度を規定温度に保つことが可能となる。この攪拌部材の形態としては、例えば、板状体であって、厚さが2mmないし5mmで横幅がフィラ内部を水平方向に横断することができ、フィラタンク内周の外側面と外周の内側面に取り付け可能な幅であり、縦幅は液体の深さの20%ないし90%程度、最も望ましくは70%程度の長さを有し、水平面に対して20度ないし40度程度の角度を有する、液体を上方から下方もしくは下方から上方へと押し下げることのできる攪拌板等が考えられる。かかる攪拌部材の形状は典型的には板状体が考えられるが、これに限られず、例えば、断面が流線形、楕円形、長円形、三角形、台形、その他の多角形の柱状の形状等が考えられるがこれらに限られず、液体を上方から下方もしくは下方から上方に押し下げもしくは押し上げることにより、浮き上がった固形成分及び/または沈降した固形成分を攪拌できる機能を有するものであればよい。
循環受タンクなしの場合
図3において本発明の別の実施形態である、循環受タンクの無い液体充填設備1bが示されている。この実施例において、図1に示された液体充填装置すなわち設備1の構成要素と同じ構成要素には同じ参照番号に接尾語bを付して表し、それらの機能の詳細な説明は省略する。この実施例では図1に示されるバルブ16、循環受けタンク17及びライン18は設置されず、ダイバートリターンライン14bにはダイバートバルブ6bと切換バルブ28bとの間にポンプ27bが設けられている。その他の構成要素については循環受タンクありの場合と同様である。
【0081】
次に上記実施例の液体充填設備1bの運転動作について説明する。
(充填運転時)
循環受タンクが省略されたため、ダイバートバルブ16なくなっているが、その他の運転方法については循環受タンクありの場合と同じである。
(充填停止時)
充填停止時の運転としては循環受タンクありの場合と同様に、ダイバート循環と往復循環の2通りが考えられる。またこの2通りの運転の考え方についても同様である。
充填停止時には、フィラタンク内の液体の温度を低下させないために以下のような往復循環又はダイバート循環を行う。往復循環を常時繰り返すのが、本発明の最も好ましい実施形態である。すなわち、
(往復循環時)
(1)ポンプ26bを停止し、フィラタンク7bに圧力を掛け、ポンプ27bを動作させ、ダイバートバルブ6bより下流側の配管21b、22b及びフィラタンク7bに滞留している液体を、ダイバート循環経路13bを介して、貯蔵タンク2bに流入させる。この時フィラタンク内は密閉状態にする必要があるのでフィラの大気開放弁(図示せず)、充填バルブ8bなどは閉とする。またこの時ダイバートバルブ6bにより液体はダイバートバルブ6b→ポンプ27b→切換バルブ28bの方向のみ通過可能となっており、ダイバートバルブ6bからヘッドタンク5bに向かう流れは阻止されている。そして切換バルブ28bによりそのバルブから→冷却装置15b→貯蔵タンク2bの方向のみ通過可能となっており、切換バルブ28bからダイバートリターンライン29bを介して切換バルブ4bの方向の流れは阻止されている。そしてまた、切換バルブ4bにより加熱殺菌装置3b→切換バルブ4b→ヘッドタンク5bの方向のみ液体は通過可能となっており、切換バルブ4b→切換バルブ28b→冷却装置15bの方向の流れは阻止されている。なお、フィラタンクに圧力をかけず、ポンプ27bのみによりフィラタンク内の液体を貯蔵タンクに還流させてもよい。この場合にはフィラタンク内を密閉状態にする必要はない。
【0082】
(2)ポンプ27bの直前に設置している図示しない空検知器により、液のない事を確認したらポンプ27bの動作を停止する。この場合、空検知手段を用いず、タイマーによりポンプ27bの動作時間を制御してもよい。ポンプ27bが停止したらダイバートバルブ6bによりダイバートリターンライン14bへの接続を遮断し、ヘッドタンク5b→ポンプ26b→フィラタンク7bの方向のみ液体が通過できる状態とする。一方、ポンプ27b停止直前もしくは以降、空検知以降、又はタイマーで設定された時間経過後フィラタンクへの加圧を停止し(フィラタンクを加圧した場合)、これと同時にフィラの大気開放弁(図示せず)を開とし液体受入が可能な状態とする。タイマーで設定された時間とは配管21b、22b及びフィラタンク7b内に滞留していた液体が空になる程度の時間に設定する。フィラの液体受入が可能となり、ヘッドタンク5b→ダイバートバルブ6b→フィラタンク7bの方向のみに液体が通過可能な状態となったら、ポンプ26bを回転させ、フィラタンク7bに液体を導入する。
【0083】
(3)配管21b、22b及びフィラタンク7bに滞留した液体を貯蔵タンク2bに流入させている間は、ポンプ26bが停止し、ポンプ25bと27bが動作している。よって、この間にポンプ25bから送られてくる液体の量が全て受け入れられる程度の余裕量をもって、充填運転時のヘッドタンク5bの液面制御を行う必要がある。必要であればヘッドタンク5bの容量を大きくする。
【0084】
ポンプ27bの吐出量はポンプ25bの吐出量以下であることが望ましい。ポンプ27bの吐出量がポンプ25bの吐出量以上となる場合は、ポンプ27bを動作させる前に貯蔵タンク2bの液面を下げるなどの工夫が必要である。
【0085】
上記実施形態のポイントはダイバートバルブ以降の液体を送られてきたルートと同じルートで逆流させ、途中でタンクに受けるような事はせずに、一気に貯蔵タンク2bに送液してしまうという発想と方法である。一般的な充填ラインであれば新設部分はダイバート循環経路のダイバートリターンラインに設置するポンプのみで済み、既設充填ラインに容易に適用可能である。なお、必要によりタンクを増設ないし置換する場合もある。
【0086】
充填運転再開時のフィラへの送液温度はフィラタンク7b、配管21b、22bで失われる熱量を考慮して、通常より高めに設定してもよい。具体的には、充填運転が停止した直後から加熱殺菌装置3bの設定温度を上げ始め、充填運転再開時には必要な送液温度になっているというような制御方法が考えられる
季節、内容物の温度等によっては、常時往復循環を繰り返す必要の無い場合もある。フィラ停止の原因によっては早期に運転再開できることが明らかな場合もある。このような場合にまで往復循環を行うと却って次の充填までのリードタイムが長くなる場合も生じ得る。また、運転エネルギーの無駄となる場合もある。
【0087】
そこでそのような場合にはフィラ停止中に通常のダイバート循環を行わせることにより、よりエネルギーロスの少ない運転方法が可能となる。すなわち、例えば予め短時間とわかっている停止の場合等には往復循環を行わず、以下のダイバート循環により運転を行い、停止の原因が取り除かれ充填可能になり次第充填を再開すればよい。あるいはフィラ停止後一定時間後やフィラ内液体が一定温度以下になった場合に往復循環を開始させることもできる。
【0088】
フィラの運転が停止し、往復循環を直ちに行わない場合は以下のダイバート循環を行う。ダイバートバルブ6bがその連通状態を切り換え、ポンプ26bをダイバート循環経路13bのダイバートリターンライン14bと接続する。したがってポンプ26bにより送られた液体はダイバートバルブ6b及びダイバートリターンライン14bを介して切換バルブ28bに送られ、その切換バルブから貯蔵タンク2b内に送られる。したがって、ポンプ26bから送られた液体がフィラタンク7b内に送られることはない。このときポンプ27bにより液体をダイバート循環経路13bに戻すのではないので、ポンプ27bは液体の通過を許容できる程度に動作していればよい。このとき配管21b、22b、フィラタンク7b及び充填バルブ8b内には液体が滞留しその温度が低下する。
【0089】
なお、上記ダイバート循環中も通常運転時と同じく、ポンプ26bよりポンプ25bの送液量が多いため、そのままではヘッドタンク5bの液面レベルは上昇し続けてしまう。これを避けるための制御としては、基本的にはヘッドタンクの液面レベルが上昇した場合に、ヘッドタンクへの流入量を減少させ、流出量を増やす制御手段を設ければよい。例えば、ポンプ26bの送液量を液面レベルにより制御し、液面レベル上昇時にはダイバートバルブ6b、ダイバートリターンライン14b及び切換バルブ28bを介して貯蔵タンク2bに流れる流量をより多くすればよい。又は、液体貯蔵タンクからの送液を切換バルブ、ダイバートリターンライン29b及び切換バルブ28bを介して液体貯蔵タンクに還流させ、ヘッドタンクへの流入量をより少なくしてもよい。要するに、ヘッドタンクへの流入量を減少させ、流出量を増加させる手段であればいかなる手段でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の運転方法を実施する飲料充填設備を示す図である。
【図2】本発明の保温方法の実施を説明する飲料充填設備を示す図である。
【図3】本発明の運転方法を実施する飲料充填設備の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1、1a、1b 飲料充填設備 2、2a、2b 貯蔵タンク
3、3a、3b 加熱殺菌装置 4、4b 切換バルブ
5、5b ヘッドタンク 6、6a、6b ダイバートバルブ
7、7a、7b フィラタンク 8、8b 充填バルブ
11、11b 送液経路 13、13b ダイバート循環経路
15、15b 冷却装置 16 切換バルブ
17 循環受タンク 21、22、21b、22b 配管
25a デアレーションタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備であって、
充填停止後にフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる手段を有し、
前記還流の際に液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部でフィラタンク内の液体を逆流させて液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備。
【請求項2】
還流させる手段がポンプであることを特徴とする請求項1に記載の液体充填設備。
【請求項3】
還流させる手段が気体の圧力であることを特徴とする請求項1に記載の液体充填設備。
【請求項4】
空検知手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の液体充填設備。
【請求項5】
還流経路としてダイバート経路を利用することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の液体充填設備。
【請求項6】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項7】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる際にポンプ及び/又は気体の圧力を利用することを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項8】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
液体貯蔵タンクからフィラタンクへの送液経路の少なくとも一部を逆流させてフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させる際にポンプ及び/又は気体の圧力を利用し、空検知手段及び/又はタイマにより還流を制御することを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項9】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
送液経路の一部を逆流させるとともに既存のダイバート経路を介してフィラタンク内の液体を液体貯蔵タンクに還流させることを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項10】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
フィラの充填停止後に少なくとも一部の送液経路を逆流させる工程と、
フィラ内の液体を気体の圧力及び/またはポンプにより送液経路を逆流させて還流させる工程と、
空検知手段及び/又はタイマーにより、気体による加圧及び/またはポンプを停止させる工程と、
を有することを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項11】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、
充填停止後還流を開始することを特徴とする運転方法。
【請求項12】
液体貯蔵タンクからフィラへ液体を送液して容器に充填する液体充填設備の運転方法であって、充填停止後還流を開始し、還流の終了後、フィラへの送液を開始し、充填開始まで還流、送液を交互に繰り返すことを特徴とする液体充填設備の運転方法。
【請求項13】
少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の液体充填設備。
【請求項14】
保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温された請求項13に記載の液体充填設備。
【請求項15】
少なくともダイバートバルブからフィラタンクにいたる経路及びフィラタンクを保温することを特徴とする請求項6ないし請求項12の何れか1項に記載の液体充填設備の運転方法。
【請求項16】
保温される各部位の温度低下勾配が同一になるように保温された請求項15に記載の液体充填設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−290781(P2008−290781A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232858(P2008−232858)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【分割の表示】特願2003−279211(P2003−279211)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】