説明

液体分注装置

【課題】隣接間隔を同一に維持して移動される複数のノズル保持体にそれぞれ保持されるノズルのピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整可能にする。
【解決手段】水平方向に移動可能に隣接配置された複数のノズル保持体と、各ノズル保持体に保持されるノズルと、各ノズル保持体を隣接間隔を実質的に同一に維持しながら同方向に移動させる駆動手段とを備えた液体分注装置において、前記ノズル保持体に保持される各ノズルに対し、移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整するノズル調整機構を、ノズルに突設された上下2本のピン32A、32Bと、それぞれ嵌入可能な、固定部1Fの上下に配設された横方向の長穴34及び遊嵌穴36と、長穴に螺入される2本のピッチ調整ねじ38A、38Bと、遊嵌穴に螺入される2本の傾斜調整ねじ40A、40Bと、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体分注装置に関し、特に搭載された複数の分注ノズルに保持されるノズルのピッチ間隔と傾きを調整する機構を備えた液体分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNA鑑定や血液検査等の医療分野における検体検査、あるいは化学的、生物学的な種々の試料分析において、試験管内の液体状の検体(試料)を吸入採取(以下、分取という)すると共に、分取された検体をマイクロプレート等の容器の検査用凹部に所定量分注する分注システムが用いられている。この分注システムには、複数の検体を同時に分取、分注するためにノズルを複数(例えば、8つ)備えた分注ヘッドが備えられている。
【0003】
ところで、例えば試験管からの検体の分取時や、分取された検体の検査用凹部等への分注時等に、それぞれの間隔に合わせることができるようにノズル同士のピッチが変更自在となっている。そのため、各分注ノズルは、基準ピッチとして、マイクロプレート等の容器のウェルの間隔長さを基準として、分注ヘッドに組み付けられている。
【0004】
このように、ピッチが変更自在なノズルが組み付けられている分注ヘッド(装置)としては、例えば特許文献1に、図19に示すような8個の分注ヘッド台103a〜103hにそれぞれ設けられた駆動軸107a〜107hを、分注ヘッドの移動面を挟む2つの平行面に配置し、更に該駆動軸107a〜107hを機枠102a、102bに設けた軸受108によりヘッド台駆動域より突出させ、所定の比例配分された位置で駆動腕100a、100bと係合させることにより、各分注ヘッド台103a〜103hにそれぞれ支持されている各ノズル104の均一なピッチを等間隔で微小な範囲まで可変できるようにしたものが開示されている。
【0005】
又、特許文献2には、図20に示すようなモータとピニオン歯車を一体化し、コンパクトにしたZ軸駆動装置200a〜200hを、それぞれノズル114を保持した状態で各々分注ヘッド115に直接設け、且つ上下方向にオフセットさせて配置するようにしたものが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−91339号公報
【特許文献2】特開2004−69664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1や2等に開示されている分注ヘッドにおいては、ノズルのピッチを変更自在にする工夫をしてはいるが、ノズルを高精度に基準ピッチに組み付けるための特別な配慮をしていない。
【0008】
一般に、分注ヘッドでは、ピッチ間隔を96ウェル(8×12)マイクロプレートの規格である9mmとした場合、この基準ピッチを満足させる必要がある。又、ノズルにチップを装着する場合も、チップラックにはマイクロプレートと同様に、9mmピッチ間隔でチップが挿入保持されているため、ノズル間隔を規制する機構が如何に優れていても、ノズルが基準ピッチに精度良く組み付けられていなければ、ノズルにチップを装着する際の装着ミスや、廃棄する際の廃棄ミス等の不具合が発生し、最悪の場合はノズルやヘッドに損傷を引き起こす恐れがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、隣接間隔を実質的に同一に維持しながら移動される複数のノズル保持体にそれぞれ保持され、移動方向に一列に配列されるノズルに対し、移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれ(傾き)を高精度に調整することができる分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水平方向に移動可能に隣接配置された複数のノズル保持体と、各ノズル保持体に保持され、移動方向に一列状態に配列されるノズルと、隣接間隔を実質的に同一に維持しながら各ノズル保持体を同方向に移動させる駆動手段とを備えた液体分注装置において、前記ノズル保持体に保持される各ノズルに対し、移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整するノズル調整機構を備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
本発明は、又、前記各ノズルが、ノズル保持体が有する上下動可能な固定部に、接合部を介してそれぞれ保持され、前記ノズル調整機構が、前記ノズルの接合部に突設された上下2本のピンと、該2本のピンがそれぞれ嵌入可能な、前記固定部の上下に配設された横方向の長穴及び遊嵌穴と、前記長穴に横方向両側からそれぞれ螺入される2本のピッチ調整ねじと、前記遊嵌穴に横方向両側からそれぞれ螺入される2本の傾斜調整ねじと、を備えているようにしてもよい。
【0012】
本発明は、又、前記複数のノズル保持体が、平行に対向配置された第1ガイド軸及び第2ガイド軸にそれぞれ案内され、前記駆動手段が、各ノズル保持体をそれぞれに保持される各ノズルが各ガイド軸毎に交互に配列された状態で、各軸方向に移動させると共に、前記第1ガイド軸に案内される各ノズル保持体は、その1つが基準位置に固定され、且つ、隣接間隔をそれぞれ同一に維持する第1リンク機構により連結され、前記第2ガイド軸に案内される各ノズル保持体は、隣接間隔をそれぞれ前記第1リンク機構と同一に維持する第2リンク機構により連結され、且つ、第2リンク機構の1箇所が、前記基準位置の反対側に固定された位置規制手段により、軸方向の動きが規制されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水平方向に移動される複数のノズル保持体にそれぞれ保持される各ノズルに対して、移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整することが可能となることから、高精度な分注作業を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態の分注ヘッド(液体分注装置)は、例えば複数の試験管(図示せず)内の液体状の検体をそれぞれ分取すると共に、分取された各検体をマイクロプレート(図示せず)等の容器の検査用凹部等に所定量ずつ同時に分注可能な分注システム(図示せず)に備えられている。
【0016】
この分注ヘッドは、検体の分取時や分注時等にノズル同士を互いに近接又は離間させるように移動させることにより所望の間隔に調整することができると共に、例えば図示しないXY駆動源により分注システムに対してXY移動(水平移動)自在となっている。
【0017】
図1は分注ヘッドに搭載される、ノズルが保持されている1つのノズル保持体を拡大して示す側面図、図2は本発明に係る一実施形態の分注ヘッドを示す平面図、図3はその要部を示す側面図、図4はその前方斜視図、図5はその後方斜視図、図6は分注ヘッドを示す後方斜視図、図7はその要部を示す後方斜視図である。なお、図1以外のノズルには、
先端部にチップが装着されている。
【0018】
図1のノズル保持体1は、検体等の液体を自動吸引・排出する機構を有するノズル2を所定の位置関係に保持する機能を有している。具体的には、このノズル保持体1では、上部に固定されている駆動モータ1Aによりベルト1Bとプーリ1Cを介して送りねじ1Dを回転させることにより、該ねじ1Dが螺入されている送りナット1Eを固定する保持部1Fが上下動され、これに保持されているノズル2が昇降動作可能になっている。
【0019】
又、このノズル保持体1は、上下2箇所にガイド孔1Gが形成され、この2つの該ガイド孔1Gを介して後述するスライド軸に案内され、軸方向の移動が可能になっており、又、上下のガイド孔1Gの中間位置には、後述する送りねじが挿通される遊嵌孔1Hが形成されている。なお、符号21A(21)は、送りナットであり、後述するように、第1、第2送りねじ毎にそれぞれ1つのノズル保持体に固定され、それ以外は遊嵌孔1Hのままである。
【0020】
本実施形態の分注ヘッドは、図1と図2及び図6にその外観の概要を示すように、周囲に位置するフレーム3で全体が支持されていると共に、該フレーム3には対向する位置に平行に配置された第1スライド軸(ガイド軸)4及び第2スライド軸5が、それぞれ固定されている。
【0021】
これら第1、第2スライド軸4、5により図中符号6〜13で示す第1〜第8の8個のノズル保持体がそれぞれ案内されるようになっている。即ち、第1スライド軸4に案内される第1〜第4の各ノズル保持体6〜9と、第2スライド軸5に案内される第5〜第8の各ノズル保持体(以下、単に保持体ともいう)10〜13とを、それぞれに保持されている第1〜第4の各ノズル6A〜9Aと、第5〜第8の各ノズル10A〜13Aとが、交互に配列された状態で、各スライド軸4、5に沿って移動させるパルスモータ(駆動手段)14とを備えている。
【0022】
本実施形態の分注ヘッドについて詳述すると、前記第1スライド軸4及び第2スライド軸5は、それぞれ上下2本で構成されている。又、第1、第2スライド軸4、5にそれぞれ案内される第1〜第8の各保持体6〜13は、前記駆動モータ1Aの配置位置がそれぞれ若干異なっているだけで、基本的な機能は前記図1に示したノズル保持体1と実質的に同一であり、第1〜第8の各ノズル6A〜13Aは全て前記図1に示したノズル2と同一である。
【0023】
次に図4と図5を用いてリンク機構について説明する。
【0024】
第1スライド軸4に案内される第1〜第4保持体6〜9の中で、第1保持体6がフレーム3の所定位置に固定され、他の全ての保持体の動作の基準位置となっている。この第1保持体6以外の第1スライド軸4に案内される第2〜第4の各保持体7〜9は、隣接間隔をそれぞれ同一に維持して伸縮する第1リンク機構15により連結されている。
【0025】
この第1リンク機構15は、回動軸15Aが第1〜第4保持体6〜9にそれぞれ軸支され、第1スライド軸4に沿って伸縮可能に連結された複数のリンク部材により構成されている。
【0026】
又、前記第2スライド軸5に案内される第5〜第8の各保持体10〜13は、隣接間隔をそれぞれ同一に維持する第2リンク機構16により連結されている。
【0027】
この第2リンク機構16は、上記第1リンク機構15と実質的に同一の構成であるが、第5保持体10に連結されているリンク部材が、回動軸16Aより先に更に延長されており、この延長端部に突設されている凸部16Bが、前記基準位置の第一保持体6に対向する側のフレーム3に固定された規制ガイド(位置規制手段)17に形成されている上下方向のガイド孔17Aに案内されることにより、該ガイド孔17Aを基準位置に軸方向の動きが規制されている。
【0028】
この規制ガイド17は、前記図6と後述する図8、図10の背面図から分るように、ガイド孔17Aが前記第1スライド軸4側の基準位置に固定されている第1保持体6のほぼ反対側(裏側)に位置するように、前記フレーム3にねじで固定されている。
【0029】
本実施形態においては、前記第1スライド軸4に案内される保持体の1つを軸方向に移動させる第1送りねじ(駆動軸)18が、上下2つの第1スライド軸4の中間位置に配設されている。同様に、前記第2スライド軸5に案内される保持体の1つを軸方向に移動させる第2送りねじ(駆動軸)19が上下2つの第2スライド軸5の中間位置に配設されている。
【0030】
これら第1送りねじ18と第2送りねじ19の駆動側端部には、それぞれ第1プーリ18Aと第2プーリ19Aが連結され、これら両タイミングプーリ18A、19Aは、前記パルスモータ14のタイミングプーリ14Aにより時計方向・反時計方向に回転送りされるタイミングベルト20を介して同方向に回転可能になっている。
【0031】
又、第1スライド軸4側では、駆動側の第4保持体9にその遊嵌孔(前記図1の1H)に一致するように送りナット21が取付けられており、該送りナット21に螺入され、他の第2、第3保持体7、8では遊嵌孔に挿通されている前記第1送りねじ18が回転することにより、第4保持体9が軸方向に移動される。この第4保持体の移動により、第1リンク機構15を介して連結されている他の第2、第3保持体7、8が連動して軸方向に移動するようになっている。
【0032】
同様に、第2スライド軸5側では、第8保持体13のみに送りナット21Aが取付けられ、第2送りねじ19の回転により該第8保持体13が軸方向に移動されることにより、第2リンク機構16により他の第5、第6、第7保持体10、11、12が連動して軸方向に移動するようになっている。
【0033】
又、第5保持体10は、前記フレーム3に固定されている規制ガイド17により、基準位置にある第1保持体6に対する移動量が、前記第2、第3、第4の各保持体7、8、9の移動量の1/2となるように構成されている。
【0034】
従って、第6、第7、第8の各保持体11、12、13は、第2、第3、第4の各保持体7、8、9の移動量と同一の移動量を得るためには、第5保持体10の移動量を加算した移動量が必要となる。
【0035】
そのために、第1送りねじ18の第1プーリ18Aは、パルスモータ14のタイミングプーリ14Aと同一径にしてあるが、第2送りねじ19の第2プーリ19Aの径を、両プーリ14A、18Aより小さくしてある。これによって、第1送りねじ18と第2送りねじ19の回転量は、両者のプーリ18A、19Aの径の違いにより、第1送りねじ18に対して、第2送りねじ19の方が回転量が大きくなり、第8保持体13の移動量が大きくなっている。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、前記パルスモータ14に駆動される第1送りねじ18、第2送りねじ19の回転により、それぞれ移動される第1保持体6〜第4保持体9、第5保持体10〜第8保持体13とが千鳥配列に配置されている。これにより、第1ノズル6Aと第2ノズル7Aの間に第5ノズル10Aが、第2ノズル7Aと第3ノズル8Aの間に第6ノズル11Aが、第3ノズル8Aと第4ノズル9Aの間に第7ノズル12Aがそれぞれ同列上に配列されると共に、第8ノズル13Aが第4ノズル9Aの外側に配置された状態で、各ノズルの近接と離間の動作が可能となっている。
【0037】
そして、ノズル間隔を前記図2に示した最大から、図7の後方斜視図と図8の背面図に示す最小までの間で任意に調整することが可能となっている。最大間隔はフォトインターラプタ等の原点センサ22により、最小間隔は各保持体に付設されている規制ピン(間隔
規制手段)23により、それぞれ規定されている。因みに、最大ノズル間隔は23mm(
各軸上の保持体間隔は46mm)で、最小のノズル間隔は9mm(保持体間隔は18mm)である。
【0038】
本実施形態においては、他の特徴として前記第1〜第8ノズル保持体6〜13にそれぞれ保持されている各ノズル6A〜13Aに対し、第1、第2ガイド軸4、5に沿った移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整するノズル調整機構を備えている。
【0039】
このノズル調整機構について、ノズル保持体1とノズル2の関係を示した前記図1と、その左右方向の拡大部分斜視図である図11、図12を参照して説明すると、ノズル2を固定するノズル固定部は送りナット1Eが固定されているナットホルダ1Fの垂直部により構成され、このナットホルダ(固定部)1Fに、ノズル2が接合部2Aを介して着脱自在に固定され、保持されている。
【0040】
具体的には、ノズル2は、ナットホルダ1Fの上下に配設されている2つのノズル固定ねじ30A、30Bで、前記接合部2Aを締め付けることにより固定されるようになっている。その結果、前述したようにノズル2は、送りナット1Eに螺入されている送りねじ
(ボールねじ)1Dの回転に伴って、ナットホルダ1Fと一体で上下動可能になっている。
【0041】
本実施形態で使用されるノズル2は、図13の側面図と図14の斜視図に特徴を示すように、前記接合部2Aに上下2本のピン32A、32Bが突設されている。
【0042】
前記ノズル調整機構は、この2本のピン32A、32Bと、これらがそれぞれ嵌入可能な、前記ナットホルダ(固定部)1Fの上下に配設された横方向の長穴34及び遊嵌穴36と、前記長穴34に横方向両側からそれぞれ螺入される2本のピッチ調整ねじ38A、
38Bと、前記遊嵌穴36に、同じく横方向両側からそれぞれ螺入される2本の傾斜調整ねじ40A、40Bとを備えた構成になっている。
【0043】
図15には、このノズル調整機構の特徴を示す。これは、ナットホルダ1Fを正面から見た状態を拡大した図に相当し、上記固定ねじ30Aの上方には、ピン32Aが嵌入された長穴34が、下部固定ねじ30Bの下方には、ピン32Bが嵌入された遊嵌穴36が、配設されている。
【0044】
この図に示されるように、長穴34の縦径はピン32Aにほぼ一致し、該ピン32Aは
横方向にのみ移動可能になっており、遊嵌穴36は、縦横ともピン32Bの径より十分に大きい径で形成されている。
【0045】
又、ノズル固定ねじ30A、30Bによるノズル2の固定範囲は、図中左右方向(移動方向)にある程度の自由度があるように設計されている。
【0046】
従って、図16に示すように、上方のピッチ調整ねじ38A、38Bによりピン32Aを、下方の傾斜調整ねじ40A、40Bによりピン32Bを、ノズルホルダ1Fの横方向に同寸法移動させることにより、隣接するノズルに対する移動方向のピッチ間隔を微調整することが可能であり、図17に示すように、上方のピン32Aを位置決めした後、下方の傾斜調整ねじ40A、40Bによりピン32Bを横方向に移動させることにより、ノズル2の垂直方向からのずれを微調整することが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態の作用を説明する。ノズル間隔を前記図7、図8に示した最小寸法から大きくする場合は、ノズルの間隔を広げる方向の時計回りに前記パルスモータ14を回転させることにより、第1送りねじ18、第2送りねじ19は、第4ノズル保持体9、第8ノズル保持体13にそれぞれ付設されている送りナット21、21Aを介して、両保持体9、13をそれぞれ第1スライド軸4、第2スライド軸5上を移動させることになる。
【0048】
第1スライド軸4側の第4保持体9の軸方向の移動により、フレーム3に固定されている第1保持体6を基準にして、該保持体9に連結されている第1リンク機構15の伸長方向の回動により、第3、第2の各保持体8、7が等間隔で移動する。
【0049】
一方、第2スライド軸5側では、第8保持体13の移動により、これに連結されている第2リンク機構16の伸長方向の回動により、第7、第6、第5の各保持体12、11、10が、第1スライド軸4側と同一の等間隔で移動する。
【0050】
これにより、前記図7、図8に示したノズル間隔が最小寸法の状態から、図9、図10にそれぞれ正面図、背面図を示すような、リンク機構が伸びた最大寸法の状態まで任意に変更することが可能となる。
【0051】
又、このノズル間隔が最大の状態から、パルスモータ14を反時計回りの方向に回転することにより、前記図7、図8に示した最小寸法の状態にすることが可能となる。
【0052】
又、本実施形態においては、ノズル2をノズル保持体1に以下のように固定し、保持する。予め第1〜第8ノズル保持部6〜13に対し、各ノズル2(6A〜13A)は、最も下降した図1に示したように保持する。この状態で、各列のノズル2は、ノズル固定ねじ30A、30Bにより、ほぼ基準ピッチ間寸法に仮固定する。
【0053】
次いで、図18に1CH〜8CHでそれぞれ第1〜第8の各ノズル保持部2を示すように、各ノズルの先端(チップ装着部)が一致する孔が規定の寸法で配列形成されているノズル初期位置確認ゲージを使用し、各ノズルピッチ間隔と垂直方向からのずれ(傾き)を、前記ピッチ調整ねじ38A、38Bと傾斜調整ねじ40A、40Bを使用して調整する。
【0054】
この図に示されるように、規定ピッチで配列されている各孔に第1〜第8のノズル1CH〜8CHに位置決め調整ができた時点で、前記ノズル固定ねじ30A、30Bによりノズル2を正式に固定する。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
(1)第1ガイド軸4及び第2ガイド軸5にそれぞれ案内される各別のノズルが、その移動方向のピッチ間隔と、垂直方向からの傾き(ずれ)を微調整できることから、装着されるチップが試験管やマイクロプレート等の凹部等の寸法に正確に合うように各ノズルの位置調整が可能となり、正確な検体の分取や分注等の分注動作が可能となる。
【0057】
(2)同様に、チップが保持されているチップラック等のチップ挿入部の寸法に合わせて、ノズルの位置調整が可能となることから、ノズル先端部に対する正確なチップの装着が可能となる。
【0058】
(3)ノズル調整機構を、ノズル2を垂直上下方向に移動するノズル保持体に設けたことにより、ノズルのピッチ間隔や垂直方向に対する傾きの補正を任意の高さで行なうことが可能となり、試験管やマイクロプレート等の凹部等の異なる高さに合わせたノズル調整が可能となることから、正確な分注動作が可能となる。
【0059】
(4)同様に、チップラック等のチップ挿入部の高さに合わせたノズル調整が可能となることから、正確なチップの装着が可能となる。
【0060】
以上本発明について具体的に説明したが、本発明の分注ヘッドは、前記実施形態に示したものに限定されない。
【0061】
例えば、ノズル調整機構としては、前記実施形態に示したものに限らず、長穴34を下にし、遊嵌穴36を上に設けるようにしても良く、又上下2本のピン32A、32Bを、逆にノズル保持体1に設け、長穴34、遊嵌穴36や調整ねじ等をノズル2に設けるようにしても良い。
【0062】
又、ノズル間の間隔を実質上等寸法で移動可能とする機構として、各列のノズル保持体に連結された回動可能なリンク機構を示したが、ノズル保持体間の間隔が実質上等寸法で移動可能とするものであれば他の機構であっても良い。
【0063】
又、ノズル間最小寸法が9mmである場合を示したが、マイクロプレート等の検査用凹部の寸法に合わせて任意に変更可能であり、又、ノズル間最大寸法も23mm以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る一実施形態の分注ヘッドが備えるノズルとノズル保持体を示す側面図
【図2】本実施形態の分注ヘッド全体を示す平面図
【図3】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す側面図
【図4】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す前方斜視図
【図5】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す後方斜視図
【図6】本実施形態の分注ヘッド全体を示す後方斜視図
【図7】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す他の後方斜視図
【図8】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す背面図
【図9】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す正面図
【図10】本実施形態の分注ヘッドの要部を示す他の背面図
【図11】ノズル保持体とノズルの関係を拡大して示す左方向の部分斜視図
【図12】ノズル保持体とノズルの関係を拡大して示す右方向の部分斜視図
【図13】ノズルの特徴を示す側面図
【図14】ノズルの特徴を示す斜視図
【図15】ノズル調整機構の特徴を示すナットホルダの拡大正面図
【図16】本実施形態の作用を示すノズルホルダの拡大正面図
【図17】本実施形態の他の作用を示すノズルホルダの拡大正面図
【図18】ノズル組付けに使用するノズルとノズル初期位置確認ゲージの関係を示す正面図
【図19】従来の分注ヘッドの概要を示す斜視図
【図20】従来の他の分注ヘッドの概要を示す斜視図
【符号の説明】
【0065】
1…ノズル保持体
1F…ナットホルダ(ノズル固定部)
2…ノズル
2A…接合部
3…フレーム
4…第1スライド(ガイド)軸
5…第2スライド(ガイド)軸
6〜13…第1〜第8(ノズル)保持体
6A〜13A…第1〜第8ノズル
14…パルスモータ
15…第1リンク機構
16…第2リンク機構
17…規制ガイド(位置規制手段)
17A…ガイド孔
18…第1送りねじ(駆動軸)
19…第2送りねじ(駆動軸)
20…タイミングベルト
21、21A…送りナット
22…原点センサ
23…規制ピン(間隔規制手段)
30A、30B…ノズル固定ねじ
32A、32B…ピン
34…長穴
36…遊嵌穴
38A、38B…ピッチ調整ねじ
40A、40B…傾斜調整ねじ
42…ノズル初期位置確認ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動可能に隣接配置された複数のノズル保持体と、各ノズル保持体に保持され、移動方向に一列状態に配列されるノズルと、隣接間隔を実質的に同一に維持しながら各ノズル保持体を同方向に移動させる駆動手段とを備えた液体分注装置において、
前記ノズル保持体に保持される各ノズルに対し、移動方向のピッチ間隔と垂直方向からのずれを調整するノズル調整機構を備えたことを特徴とする液体分注装置。
【請求項2】
前記各ノズルが、ノズル保持体が有する上下動可能な固定部に、接合部を介してそれぞれ保持され、
前記ノズル調整機構が、
前記ノズルの接合部に突設された上下2本のピンと、
該2本のピンがそれぞれ嵌入可能な、前記固定部の上下に配設された横方向の長穴及び遊嵌穴と、
前記長穴に横方向両側からそれぞれ螺入される2本のピッチ調整ねじと、
前記遊嵌穴に横方向両側からそれぞれ螺入される2本の傾斜調整ねじと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体分注装置。
【請求項3】
前記複数のノズル保持体が、平行に対向配置された第1ガイド軸及び第2ガイド軸にそれぞれ案内され、前記駆動手段が、各ノズル保持体をそれぞれに保持される各ノズルが各ガイド軸毎に交互に配列された状態で、各軸方向に移動させると共に、
前記第1ガイド軸に案内される各ノズル保持体は、その1つが基準位置に固定され、且つ、隣接間隔をそれぞれ同一に維持する第1リンク機構により連結され、
前記第2ガイド軸に案内される各ノズル保持体は、隣接間隔をそれぞれ前記第1リンク機構と同一に維持する第2リンク機構により連結され、且つ、第2リンク機構の1箇所が、前記基準位置の反対側に固定された位置規制手段により、軸方向の動きが規制されていることを特徴とする請求項1に記載の液体分注装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2007−212203(P2007−212203A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30454(P2006−30454)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】