説明

液体収集具

【課題】埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集具を提供する。
【解決手段】被検体の皮膚1001からの汗成分を収集するための液体収集具2000は、液体収集具2000は、吸収手段としての上述したセンサーチップ100と、バンド状の巻き付け部材としての薄いテープ状部材2001を有し、このテープ状部材2001は、センサーチップ100を指1000の皮膚1001に対して着脱可能に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収集具に関し、特に汗成分などの液体を収集するための液体収集具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液中のグルコース値(血糖値)は、糖尿病疾患において非常に重要な指標であり、医療現場では、針を用いて採血を行っている。この採血をする際に、被験者の指には針を刺す必要があるので被験者には苦痛を伴う。
【0003】
このため、被験者に対して針を刺さないで、いわゆる非侵襲でグルコース値が得られる方法が検討されている。例えば、指に対して霧吹きにより水分を与えることで、指の皮膚表面の汗成分を容器内に落下させて、その汗成分中に含まれるグルコース値を測定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−315340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示されているグルコースの測定では、被験者に対する負荷を軽減できるが、指を外気に露出させた状態で指に小型の噴霧器から水溶液を噴霧して、指に付着した水滴を、外気に露出した状態で筒状の容器内に落下させる必要がある。このため、指に水溶液を噴霧して指に付着した水滴を落下させる際に埃などの異物が混入するおそれがある。しかもこの筒状の容器は、必ず指の下方に配置させる必要がある。このため、指からたれてくる水滴が容器の外にこぼれてしまうおそれがある。
【0005】
このように、指に噴霧器から水溶液を噴霧した状態で指から水滴が容器内に落下するのを待たなければならないので、指や水滴に埃など異物が付着してしまうおそれがある。従って、従来のグルコース測定方法では、異物を排除して指の汗成分を確実に容器内に収集することが難しい。さらに、少量の汗成分を用いてグルコース量を測定するためには、例えば遠心分離装置を用いて前記汗成分中のグルコース濃度を高めなくてはいけない。従って、収集された汗を効率良く収容するカセット容器が必要である。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するために、本発明の液体収集具は、被検体の皮膚に巻き付けて前記皮膚からの汗成分を収集するための液体収集具であって、
前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収手段と、
前記吸収手段の前記汗成分を集める部分を前記被検体の前記皮膚に直接接触させた状態で前記皮膚に対して前記吸収手段を着脱可能に巻き付けて一定時間固定するためのバンド状の巻き付け部材と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体収集具は、好ましくは前記吸収手段は、スポンジ部材であることを特徴とする。
本発明の液体収集具は、好ましくは前記吸収手段は、前記皮膚に熱を与える加熱部材を有することを特徴とする。
本発明の液体収集具は、好ましくは前記バンド状の巻き付け部材は、前記被検体の指先に対して前記スポンジ部材を巻き付けて固定する着脱可能な薄いテープであることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体収集具は、好ましくは前記吸収手段は、前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収部と、前記吸収部に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力する電極を有する変換部からなるカセット容器であることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体収集具は、好ましくは前記バンド状の部材は、前記被検体の指先に対して前記カセット容器を巻き付けて固定する着脱可能な薄いテープであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
次に、本発明の液体収集具の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の液体収集具の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図1に示す液体収集具2000は、図1に示す例えば被験者の手の指1000の皮膚1001からの汗成分を試料として収集するための小型で携帯することができる液体収集具である。
【0012】
汗成分は、塩化ナトリウム、窒化酸化物、乳酸、カルシウム、尿素、アンモニア、糖類などを含んだ水で構成されている。この汗の成分は、血液から作り出され、血液中の血漿と呼ばれる液体成分が汗として使われている。汗は汗腺から分泌されるが、この汗腺は全身に約200万個〜500万個ある。一番密に汗腺が存在しているのは、手掌であり、その次に密なのは足の裏、額である。
そこで、本発明の実施形態の液体収集具2000は、被験者の手の指または足の指に着目して、指からの汗成分を確実に簡単に効率良く収集する。
【0013】
図1の液体収集具2000は、吸収手段としてのセンサーチップ100と、バンド状の巻き付け部材としての薄いテープ状部材2001を有している。このテープ状部材2001は、センサーチップ100を指1000の皮膚1001に対して着脱可能に保持することができる。テープ状部材2001は、例えば薄い紙又はプラスチック製の伸縮可能なテープであり、粘着材2001を用いて、指1000に対して巻き付けることにより、センサーチップ100を指1000の皮膚1001に直接接触させて保持する。センサーチップ100はカセット容器の一例である。
【0014】
図2は、液体収集具2000のセンサーチップ100の内部構造例を示している。
図1と図2に示すように、センサーチップ100は、ケース60を有しており、このケース60は、テープ状部材2001の粘着層2003により着脱可能に固定されている。吸収手段としてのセンサーチップ100は、試薬が含まれており汗成分を吸収する吸収室80と、吸収室80に連通して汗成分を電気信号に変換する試薬と電気信号を出力する電極70,71を有する変換部と、を有する。
【0015】
図1と図2に示すように、センサーチップ100は、直方体形状の薄型のケース60と、
吸収室80と、電極70,71を有している。このケース60は、例えばプラスチックにより作られており、ケース60の内部空間64は、吸収室80を有している。吸収室80には、電極70,71が収容されている。吸収室80は、第1吸収部材61と第2吸収部材62により構成されている。
【0016】
図1と図2に示す第1吸収部材61は、汗成分を毛細管現象を用いて吸収して採取することができる材質、多孔質材料例えば板状のスポンジである。ケース60は、吸収部材61に対応する部分に、開口部63を有している。しかし、第1吸収部材61は、多孔質材料以外に不織布などであっても良い。
一方、第2吸収部材62は、第1吸収部材61で採取された汗成分を遠心分離作用により、電極70,71側にグルコース濃度を高めて分離吸着させるための管路構造を有している。
【0017】
このセンサーチップ100の第1吸収部材61に指1000から汗成分が吸収されると、遠心分離装置のディスク40に配置されて、図2に示すR方向に沿って遠心力を加える。これにより、第1吸収部材61内の汗成分は、第1吸収部材61内から第2吸収部材62内に移動して分離しようとする例えばグルコースを分離する。
【0018】
第1吸収部材61と第2吸収部材62内には、予めグルコースを吸着する薬液が注入されている。第1吸収部材61にグルコースを含む液体、例えば血液や汗成分が注入され、センサーチップ100を連続回転して遠心力を与えると、第1吸収部材61から第2吸収部材62側にグルコースを含む液体が遠心力により移動して、第2吸収部材62の端部には比重差によりグルコースが電極に付着する。これにより、グルコースの量を電気信号の測定値は、この電極から得ることができる。この電極からの電気信号は、遠心分離装置の処理回路により変換処理される。
【0019】
グルコース(血中糖分)は、酵素層(バイオ層)で過酸化水素層に変換して、白金の電極で電子を取り出し、血液中の糖分濃度を表示する。一例として示すこの測定方法は、GOD(glucose oxidase)固定化酵素電極による最大反応加速解析法であり、以下の通りである。
測定原理(GOD電極法)
G0Dを固定化した酵素膜と、金陰電極、および銀塩化銀陽電極を組み合わせて、GOD反応により消費される酸素量を測定する。
(1)酵素の作用により電極表面で、下記のGOD反応が起こる。
グルコース+O2+H2O→グルコン酸+H
この反応で、反応液中の酸素が消費される。
【0020】
(2)この酸素消費量を金陰極と銀塩化銀陽極からなる電極により、電流量として測定する。電極内部では、下記の反応が起こり、電流が流れ、この電流量は酸素分圧に比例する。酸素消費量は検体中のグルコース濃度に比例する。
金陰極 :O+2HO+4e−→ 4OH−
銀−塩化銀陽極 :4Ag+4Cl→ 4AgCl+4e−
さらに、本測定方法では、酸素消費量の変化を二次微分することによって反応加速度を求め、この加速度の最大値を検知して、グルコースを測定する。反応加速度もまた検体中のグルコース濃度に比例する。
【0021】
次に、図1〜図3を参照して、液体収集具2000を用いて汗成分の収集方法の例を説明する。
まず、図1に示すセンサーチップ100は、図1と図2に示すテープ状部材2001の粘着層2003によりテープ状部材2001に対して着脱可能に固定されている。この固定状態では、開口部63は指1000に接触できるようにするために、開口部63側にはテープ状部材2001はない。
【0022】
被験者は、指1000を消毒した後に、ケース60の開口部63側を指1000に押し付けるようにして、センサーチップ100はテープ状部材2001を用いて指1000に対して固定される。この際に、図1に示すテープ状部材2001の一端部2004側は、粘着部2002を介して、テープ状部材2001の他端部2005側に固定される。これにより、センサーチップ100は指1000に対して確実に固定することができる。
【0023】
図2に示すように、ケース60の開口部63側が指1000の皮膚1001に接するようにセンサーチップ100が指100に固定されるので、皮膚1001から生じる汗成分は、開口部63を通じて第1吸収部61により直接吸収できる。第1吸収部61の表面61Fは開口部63を通じて皮膚1001に直接接するので、汗成分は確実に第1吸収部61に吸収できる。
【0024】
図1に示すようにセンサーチップ100が所定時間だけ指1000に固定された後に、テープ状部材2001を指1000から取り除いて、センサーチップ100がテープ状部材2001から取り外される。そして、図3に示すようにセンサーチップ100は、図3に示すディスク40の開口部70を通じてディスク40内に投入する。投入されたセンサーチップ100の状態では、ケース60の開口部63が開口部70側に向くように、すなわち開口部63が上向きになるように配置されている。
【0025】
その後、図4に示すようにセンサーチップ100は、ディスク40の回転中心軸CL近傍からT方向に移動して、センサーチップ100はディスク40の外周部付近においてストッパー40Sにより位置決めされる。ディスク40を高速連続回転することでセンサーチップ100に対して遠心力を与えると、第1吸収部材61から第2吸収部材62側にグルコースを含む液体が遠心力により移動して、第2吸収部材62の端部には比重差によりグルコースが電極に付着する。
これにより、液体収集具2000は、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
【0026】
図5は、上述したセンサーチップ100が複数連続して形成されている例を示している。各センサーチップ100は、切れ目2002によりそれぞれ切り分けて、図1に示すテープ状部材2001により指1000に対して固定することができる。
【0027】
次に、図6と図7を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図6と図7に示す液体収集具2200は、吸収手段としての吸収部材2300と、バンド状の巻き付け部材としてのテープ状部材2201を有している。このテープ状部材2201は、センサーチップ100を指1000に対して着脱可能に保持する。テープ状部材2201は、例えば薄い紙又はプラスチック製の伸縮可能なテープであり、粘着材2202を用いて、指1000に対して巻き付けることにより、吸収部材2300を指1000に保持することができる。
【0028】
粘着材2202はテープ状部材2201の一端部2204側に形成されており、一端部2204と他端部2205は粘着剤2202により着脱可能に固定できる。吸収部材2300は、紙やプラスチックなどで作られた吸収材であり、図8に示すように、吸収部材2300はテープ状部材2201の粘着層2310により着脱可能に固定されている。
【0029】
図7に示すように、吸収部材2300は、例えば四角い枠状の加熱部材2230を有している。この加熱部材2230は、皮膚1001に対して発汗を促すために熱を発生する。加熱部材2230としては、例えば使い捨てカイロと同様に容器の中に鉄粉と水、活性炭と塩、保水剤が入れてあり、液体収集具2200を振ることで鉄粉と活性炭と食塩水が容器で混ざりあって鉄粉が発熱する。
【0030】
図6に示すように吸収部材2300がテープ状部材2201により指1000に保持された後に、加熱部材2230が発熱することで発汗を促して、汗成分は吸収部材2300に吸収される。その後、図8に示すように吸収部材2300はテープ状部材2201から剥がして、図9に示すように吸収部材2300は、センサーチップ100のケース60の第1吸収室81内に開口部63を通じて挿入すればよい。そして、センサーチップ100はすでに説明した要領で、遠心力が与えられて例えばグルコースが測定できる。なお、加熱部材2230は無くても良い。
【0031】
これにより、液体収集具2200は、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
なお、本発明の実施形態において、使用したセンサーチップは、ディスポータブルタイプであり廃棄される。
【0032】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
本発明は、図示した実施形態に限らず、上述した各実施形態における特徴的な要素は、相互に組み合わせて構成することができる。テープ状部材2001、2201は、指の周りを一周する長い帯状の薄い部材であるが、これに限らず例えば正方形などの形状の物であっても良い。ケース60は、薄い直方体形状の容器であるが、他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の液体収集具の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】液体収集具のセンサーチップの内部構造例を示す図である。
【図3】センサーチップがディスクの回転中心軸近傍に投入された状態を示す図である。
【図4】センサーチップがディスクの回転中心軸近傍から外周部付近移動された状態を示す図である。
【図5】複数のセンサーチップが配列されている例を示す図である。
【図6】本発明の液体収集具の別の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図7】図6の液体収集具の別の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図8】テープ状部材から吸収部材が取り外された状態を示す図である。
【図9】取り外された吸収部材がセンサーチップのケース内に挿入される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
100 センサーチップ(カセット容器、吸収手段の一例)
1000 指(被検体)
2000 液体収集具
2001 テープ状部材
2003 粘着層
2200 液体収集具
2300 吸収部材(汗成分回収部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の皮膚に巻き付けて前記皮膚からの汗成分を収集するための液体収集具であって、
前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収手段と、
前記吸収手段の前記汗成分を集める部分を前記被検体の前記皮膚に直接接触させた状態で前記皮膚に対して前記吸収手段を着脱可能に巻き付けて一定時間固定するためのバンド状の巻き付け部材と、
を備えることを特徴とする液体収集具。
【請求項2】
前記吸収手段は、スポンジ部材であることを特徴とする請求項1に記載の液体収集具。
【請求項3】
前記吸収手段は、前記皮膚に熱を与える加熱部材を有することを特徴とする請求項2に記載の液体収集具。
【請求項4】
前記バンド状の巻き付け部材は、前記被検体の指先に対して前記スポンジ部材を巻き付けて固定する着脱可能な薄いテープであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体収集具。
【請求項5】
前記吸収手段は、前記被検体の前記皮膚を当てることで前記汗成分を吸収する吸収部と、前記吸収部に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力する電極を有する変換部からなるカセット容器であることを特徴とする請求項1に記載の液体収集具。
【請求項6】
前記バンド状の部材は、前記被検体の指先に対して前記カセット容器を巻き付けて固定する着脱可能な薄いテープであることを特徴とする請求項5に記載の液体収集具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−47616(P2009−47616A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215370(P2007−215370)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】