説明

液体噴射装置

【課題】機能液の種類に関わらず、脱気度を一定にすることのできる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体噴射装置は、機能液を液滴として吐出する吐出ノズルを備える記録部と、記録部に供給する機能液を貯留する機能液貯留部と、記録部と機能液貯留部との間に配置され、機能液中の溶存気体を減圧除去する脱気モジュールと、脱気モジュールを制御する制御部と、を備え、制御部は、機能液の種類に関わらず、脱気モジュールにおける機能液の通過時間を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェット型のプリンターなどの液体噴射装置においては、記録ヘッドからインク滴を噴射することにより記録媒体に文字や画像などを記録するようになっている。このようにインクを噴射する記録ヘッドは微細な圧力室やノズル孔を有しており、微小気泡の発生でさえインク滴の噴射に影響をおよぼす虞がある。このため、脱気したインクを記録ヘッドに供給する必要がある。
【0003】
インクに対して脱気を行う技術としては、下記の特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、脱気されたインクを使用する旨記載されており、その脱気度は、インクが加熱される温度の飽和溶存酸素濃度の10%未満となっている。
特許文献2には、インク供給路を加熱して、脱気時のインクの温度を上昇させることにより、圧力損失を抑える技術が記載されている。
特許文献3には、脱気モジュールを加温するにより脱気効率を向上させる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−145889号公報
【特許文献2】特開2007−130907号公報
【特許文献3】特開2006−297902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脱気モジュールを利用する場合、インクの種類によって脱気度が変化してしまうことがある。特に、UVインクなどの高粘度インクを用いた場合には、脱気モジュールを通過する際の流路抵抗が増加して、加温時の温度変動、流量変動が懸念される。その結果、脱気モジュールによる脱気度が低下してしまい、後に記録ヘッドに対して行われる目詰まり防止のための吸引処理時にインク中に気泡が発生して吐出不良が改善されなくなってしまうなどのリスクが生じる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、機能液の種類に関わらず、脱気度を一定にすることのできる液体噴射装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射装置は、機能液を液滴として吐出する吐出ノズルを備える記録部と、前記記録部に供給する前記機能液を貯留する機能液貯留部と、前記記録部と前記機能液貯留部との間に配置され、前記機能液中の溶存気体を減圧除去する脱気機構部と、前記機能液の種類に関わらず、前記脱気機構部における前記機能液の通過時間を一定に保つように駆動制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、機能液の種類に関わらず脱気機構部を通過する機能液の通過時間を一定に保つことができるので、結果として、機能液の種類を変えても脱気機構部による機能液の脱気度が一定になる。これにより、液滴吐出精度を良好に維持することができる。
【0009】
また、前記脱気機構部は、前記機能液の種類に関わらず、前記脱気機構部における前記機能液の粘度を一定に保つ機能を有する構成としてもよい。
これによれば、機能液の種類に関わらず、脱気機構部における機能液の粘度を一定に保つことによって、機能液の種類を変えても脱気機構部を通過する機能液の通過時間を一定に保つことができる。これにより、機能液に関わらず、脱気機構部によって一定の脱気度が得られ、液滴吐出精度を良好に維持することができる。
【0010】
また、前記脱気機構部は、前記機能液の種類に応じて、脱気処理前あるいは脱気処理中の前記機能液の温度を所定の温度まで加温する加熱装置を有する構成としてもよい。
これによれば、機能液の種類に応じて、脱気処理前の機能液の温度を所定の温度まで加温することが可能となり、機能液の種類に関わらず一定の粘度にすることができる。これにより、機能液の種類を変えても脱気機構部を通過する機能液の通過時間を一定に保つことができる。また、脱気前、脱気中における機能液を加温することによって機能液の粘性を低下させることにより、脱気機構部での流路抵抗を低く抑えることができる。
【0011】
また、前記脱気機構部は、減圧チャンバーと、前記減圧チャンバー内に設けられ前記機能液を通過させる複数の脱気チューブと、前記減圧チャンバーに接続された減圧ポンプと、を有し、各脱気チューブの流路径は、前記脱気機構部と前記機能液貯留部とを接続する機能液供給流路の流路径よりも小さい構成としてもよい。
これによれば、減圧ポンプの作用により減圧チャンバー内を減圧する(真空にする)ことによって、各脱気チューブ内を通過する機能液の溶存気体を脱気チューブの外部に排出させることができる。また、上述したように、本発明においては機能液の粘度が一定に保持されているので、機能液供給流路を介して脱気機構部内に供給された機能液が各脱気チューブ内に分流される際の流路抵抗の上昇を抑えることができる。また、機能液を複数の脱気チューブに分流させることによって機能液の脱気処理効率が高められる。
【0012】
また、前記機能液がUVインクであって、前記加熱装置により40℃以上60℃未満まで加温される構成としてもよい。
これによれば、上記温度に加温することにより、高粘度のUVインクであっても他の種類の機能液と同様の精度で脱気処理が行われるようになる。
【0013】
また、前記機能液の流量を測定する流量計を備えており、前記制御部は、前記流量計の計測結果に基づいて、前記加熱装置による前記機能液の加温温度の制御を行う構成としてもよい。
これによれば、流量計によって機能液の流量を測定し、その測定結果に基づいて、加熱装置による機能液の加温温度の制御を行うことによって、機能液の種類に関わらず、脱気機構部内に送り込まれる機能液の粘度を一定に保つことができる。その結果、脱気機構部内における機能液の通過時間を一定に保つことができるので、機能液の種類に関わらず一定の脱気度で処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液体噴射装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図、(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図、(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図、(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図、また、ノズルプレートの側から見た図。
【図4】液滴吐出ヘッドの電気的構成と信号の流れを示す説明図。
【図5】脱気機構部およびその周辺要素を示す図。
【図6】脱気機構部の概略構成を示す図。
【図7】脱気される状態を示す脱気チューブの部分拡大断面図。
【図8】機能液の温度に関する粘度と流量との関係について示すグラフ。
【図9】機能液の温度に関する流量と溶存気体量との関係について示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、吐出検査方法、吐出検査装置、描画方法、及び描画装置について、図面を参照して説明する。本実施形態は、液滴吐出ヘッド20を備え、当該液滴吐出ヘッド20を用いて、被描画媒体上に画像を描画する液体噴射装置1における、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24の吐出検査を例に説明する。液体噴射装置1は、液滴吐出ヘッド20と被描画媒体とを相対移動させると共に、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24から機能液の液滴を吐出して、被描画媒体上の所定の位置に着弾させることによって、所定の画像を形成する装置である。液体噴射装置1装置が、描画装置に相当する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0016】
<液滴吐出法>
最初に、液状体を液滴として吐出する液滴吐出法について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。
帯電制御方式は、液伏体に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で液状体の飛翔方向を制御して吐出ノズル24から吐出させるものである。また、加圧振動方式は、液状体に30kg/cm程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に液状体を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には液状体が直進して吐出ノズル24から吐出され、制御電圧をかけると液状体間に静電的な反発が起こり、液状体が飛散して吐出ノズル24から吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエソ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって液状体を貯留した空間に可僥物質を介して圧力を与え、この空間から液状体を押し出して吐出ノズル24から吐出させるものである。
【0017】
また、電気熱変換方式は、液状体を貯留した空間内に設けたヒーターにより、液状体を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の液状体を吐出させるものである。静電吸引方式は、液状体を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズル24に液状体のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから液状体を引き出すものである。この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。
【0018】
液滴吐出法は、液状体の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の液状体を的確に配置できるという利点を有する。このうち、ピエゾ方式は、液状体に熱を加えないため、液状体の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状体選択の自由度の高さ、及び液滴の制御吐の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0019】
<UVインク>
液体噴射装置1で利用する機能液としては様々なものが利用できるが、特に、高粘度であるUVインクを用いる場合に有効である。
UVインクは、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合され、有機溶媒に溶解又は分散された状態になっている。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。したがって、インクを硬化させる目的で溶媒を揮発させることはない。ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0020】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzenemethaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N−trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2−(1−oxo−2−propenyloxy) ethyl) benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクの色等に応じて使い分けられる。
【0021】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における吐出適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0022】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。
カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0023】
フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。
フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。
縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0024】
更に、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。
重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0025】
<液体噴射装置>
次に、液滴吐出ヘッド20(図2参照)を備える液体噴射装置1の構成の全般について、図1を参照して説明する。図1は、液体噴射装置1の概略構成を示す外観斜視図である。
【0026】
図1に示すように、液体噴射装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、機能液供給部4と、保守装置部7と、脱気機構部10と、メンテナンス機構部11とを備えている。ヘッド機構部2は、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド20を有している。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド(記録部)20から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台30を有している。機能液供給部(機能液貯留部)4は、貯留タンク41と、中継タンク42と、供給チューブ(機能液供給流路)43とを有し、当該供給チューブ43が、液滴吐出ヘッド20に接続されており、供給チューブ43を介して機能液が液滴吐出ヘッド20に供給される。保守装置部7は、液滴吐出ヘッド20の検査又は保守を実施する各装置を備えている。脱気機構部10は、機能液供給部4とヘッド機構部2との間に設けられ、液滴吐出ヘッド20に供給するインクに対して脱気処理を行う。液体噴射装置1は、また、これら各機構部などを総括的に制御する吐出装置制御部6を備えている。
【0027】
さらに、液体噴射装置1は、床上に設置された複数の支持脚8と、支持脚8の上側に設置された定盤9とを備えている。定盤9の上側には、ワーク機構部3が定盤9の長手方向(X軸方向)に延在するように配設されている。ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱で支持されているヘッド機構部2が、ワーク機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在するように配設されている。また、定盤9の傍らには、ヘッド機構部2の液滴吐出ヘッド20に連通する供給管を有する機能液供給部4の機能液を貯留する貯留タンク41などが配置されている。ヘッド機構部2の一方の支特柱の近傍には、保守装置部7がワーク機構部3と並んでX軸方向に配設されている。さらに、定盤9の下側に、吐出装置制御部6が収容されている。
【0028】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を有するヘッドキャリッジ27と、ヘッドキャリッジ27が吊設された移動枠22とを備えている。ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ27と、移動枠22との組を2組備えている。ヘッド機構部2は、移動枠22をY軸方向に移動させる、Y軸走査機構も備えている。
移動枠22を、Y軸走査機構によってY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。2個の移動枠22は、それぞれ独立して移動させたり保持したりすることも、2個の移動枠22を一緒に移動させたり保持したりすることも可能である。
ワーク機構部3は、ワーク載置台30と、X軸走査機構とを備えている。ワーク機構部3は、ワーク載置台30を、X軸走査機構によって、X軸方向に移動させることで、ワーク載置台30に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0029】
液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調して、機能液を液滴として吐出する。X軸方向に移動するワークWと、Y軸方向に移動する液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する平面形状の描画を実施することが可能である。
【0030】
保守装置部7は、各種検査装置、各種保守装置、及び保守装置走査機構75を備えている。検査装置は、液滴吐出ヘッド20の吐出状態の検査を実施する吐出検査ユニット70などの、液滴吐出ヘッド20の検査を実施する装置である。保守装置は、液滴吐出ヘッド20の各種の保守を実施する装置である。保守装置走査機構75は、これらの各装置をX軸方向に移動可能であって、任意の位置に保持可能に支持する装置である。
液滴吐出ヘッド20の検査や保守を実施する際には、ヘッドユニット21(液滴吐出ヘッド20)が、Y軸走査機構を用いて保守装置部7に臨む位置に移動させられる。また、実施する検査又は保守に対応する検査装置又は保守装置が、保守装置走査機構75によって、ヘッドユニット21(液滴吐出ヘッド20)に臨む位置に移動させられる。
【0031】
吐出検査ユニット70は、検査シート載置台71と、撮像カメラ72とを備えている。
検査シート載置台71は、ワーク載置台30の載置面と略平行な載置面を有し、当該載置面に、検査シートを吸着支持可能である。検査シート載置台71は、保守装置走査機構75によって、X軸方向に移動可能であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
【0032】
保守装置走査機構75によって、検査シート載置台71をX軸方向に移動させることで、検査シート載置台71の載置面に保持された検査シートを、保守装置部7に臨む位置に移動されたヘッドユニット21(液滴吐出ヘッド20)に臨ませる。当該位置状態で、液滴吐出ヘッド20から液状体を吐出させることで、検査シート載置台71に保持された検査シートに液滴を着弾させることができる。保守装置走査機構75による検査シートのX軸方向の移動に同調させて、液滴吐出ヘッド20が備える吐出ノズル24(図2参照)から液状体を吐出させることで、X軸方向における着弾位置を調整することができる。
【0033】
撮像カメラ72は、カメラ支持部73に、図示省略した昇降機構によってZ軸方向に昇降自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。カメラ支持部73は、保守装置走査機構75の脇で、定盤9に立設されており、撮像カメラ72は、保守装置走査機構75に、略Z軸方向から臨んで支持されている。検査シート載置台71は、保守装置走査機構75によって、撮像カメラ72が臨んでおり、撮像カメラ72によって撮影可能な位置に移動可能である。保守装置走査機構75によって、検査シート載置台71を撮像カメラ72に臨む位置に移動することで、検査シート載置台71に保持された検査シートの面を、撮像カメラ72によって撮影可能である。
【0034】
脱気機構部10は、機能液供給部4の中継タンク42からヘッドユニット21に機能液を供給するための供給チューブ43上に配置されている。詳しい構成については後述するものとする。
【0035】
メンテナンス機構部11は、液滴吐出ヘッド20の各吐出ノズル24(図2)から増粘した機能液を吸引する吸引動作等に用いられるキャップ部材34と、液滴吐出ヘッド20のノズルプレート25に付着した機能液を払拭するワイピング動作に用いられるワイプ部材(不図示)と、を有しており、液滴吐出ヘッド20のホームポジションに配置されている。
キャップ部材34は、液滴吐出ヘッド20のノズルプレート25(図2)を覆うことができる枠状の部材から構成され、その上面に設けられた当接部をノズルプレート25に当接させることにより、ノズルプレート25との間に空間を形成可能である。キャップ部材34の底面には排出チューブ44を介して不図示の吸引ポンプが接続されており、この吸引ポンプが駆動されることでノズルプレート25との間に形成される空間が減圧されて、各吐出ノズル24から機能液が吸引される。また、この吸引ポンプの作用によって、キャップ部材34内に排出された機能液が排出チューブ44を経て排出タンク35へと排出されるようになっている。
また、ワイプ部材(不図示)は、例えばエラストマー等の弾性部材から構成されており、ノズルプレート25を良好に払拭可能となっている。
【0036】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッド20の概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッド20の概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッド20の構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24の部分の構造を示す断面図である。図2に示したX軸、Y軸、及びZ軸は、液滴吐出ヘッド20が液体噴射装置1に装着された状態において、図1に示したX軸、Y軸、及びZ軸と一致している。
【0037】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズルプレート25を備えている。ノズルプレート25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液Lを液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液Lを配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が液体噴射装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液Lの液滴を配置することができる。
【0038】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズルプレート25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液Lが常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズルプレート25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。機能液Lは、機能液供給部4から液滴吐出ヘッド20に供給され、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズルプレート25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0039】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液Lが供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0040】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は、電極層と圧電材料とを積層した活性部を有している。圧電素子59は、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。電極層に印加されていた駆動電圧が解除されることで、活性部が元の長さに戻る。
【0041】
電極層に駆動電圧が印加されて、圧電素子59の活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に挑む。これにより、圧力室58の容積が増加ずることがら、機能液Lが液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を抑圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液Lに圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から機能液Lが液滴となって吐出される。
【0042】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図3に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が液体噴射装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0043】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズルプレート25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズルプレート25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液体噴射装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0044】
一つのヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。
【0045】
一つのヘッド組20Aが備える3個の液滴吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍、1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約75.5mmである。液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組20Aを構成している。
【0046】
ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、それぞれが有する1本のノズル列とみなせるノズル列が、Y軸方向において、ノズル列24Aの半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。言い換えると、それぞれのヘッドユニット21は、互いに隣り合うヘッド組20Aを構成する液滴吐出ヘッド20の、一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、Y軸方向において、半ノズルピッチずれた位置に、配設されている。
【0047】
一つのヘッドユニット21が備える3つのヘッド組20Aにおける9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍、3240個の吐出ノズル24を有しY軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約226.7mmである。即ち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0048】
上述したように、液体噴射装置1は、2個のヘッドユニット21を備えており、2個のユニットノズル列240AがY軸方向に連なったノズル列を構成することができる。当該ノズル列によって、1回の走査の間に、例えば6480個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線を形成することができる。
【0049】
<機能液の吐出>
次に、液体噴射装置1における液滴吐出ヘッド20からの吐出制御方法について、図4を参照して説明する。図4は、液滴吐出ヘッド20の電気的構成と信号の流れを示す説明図である。
【0050】
上述したように、液体噴射装置1は、液体噴射装置1の各部の動作を制御する吐出装置制御部(制御部)6を備えている。吐出装置制御部6は、制御信号を出力するCPU84と、液滴吐出ヘッド20の電気的な駆動制御を行うヘッドドライバー20dとを備えている。
図4に示すように、ヘッドドライバー20dは、FFCケーブルを介して各液滴吐出ヘッド20と電気的に接続されている。また、液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)ごとに設けられた圧電素子59に対応して、シフトレジスクー(SL)85と、ラッチ回路(LAT)86と、レベルシフター(LS)87と、スイッチ(SW)88とを備えている。
【0051】
液体噴射装置1における吐出制御は次のように行われる。最初に、CPU84がワークWなどの描画対象物における機能液の配置パターンをデータ化したドットパターンデータをヘッドドライバー20dに伝送する。そして、ヘッドドライバー20dは、ドットパターンデータをデコードして吐出ノズル24ごとのON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスター85に伝送される。
【0052】
シフトレジスター85に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路86に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフター87でスイッチ88用のゲート信号に変換される。即ち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ88が開いて圧電素子59に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ88が閉じられて圧電素子59に駆動信号(COM)は供給されない。そして、「ON」に対応する吐出ノズル24からは機能液が液滴となって吐出され、吐出された機能液の液滴がワークWなどの描画対象物の上に着弾して、描画対象物の上に機能液が配置される。
【0053】
<脱気機構部>
次に、液体噴射装置1における脱気機構部10の概略構成とその周辺要素について説明する。
図5は、脱気機構部10およびその周辺要素を示す図である。図6は、脱気機構部10の概略構成を示す図である。図7は、脱気される状態を示す脱気チューブ122の部分拡大断面図である。
液体噴射装置1において、例えば、脱気されていない機能液Lを用いた場合には、機能液L中に気泡が溶存している状態のため、長時間の使用によって溶存気体Aが気泡へと成長し、機能液L中に浮遊している気泡はさらに成長することになる。これらの気泡が液滴吐出ヘッド20へ供給されると吐出不良が発生する虞がある。
そこで、本実施形態では、液滴吐出ヘッド20へ供給される前に機能液Lに対して脱気処理を行う脱気機構部10を設けた。ここで、機能液Lの溶存気体量は80〜90%とする。
【0054】
図5に示すように、脱気機構部10は、機能液L中の溶存気体Aや浮遊気体を除去するための脱気モジュール120と、脱気モジュール120へ流入する機能液Lを加温するヒーター(加熱装置)130と、機能液Lを液送する液送ポンプP1と、機能液Lの流量を測定する流量計140と、を具備し、CPU84によって、脱気モジュール120内を機能液が通過する時間が機能液の種類に関わらず一定に保つように駆動制御される。つまり、機能液の種類に関わらず、脱気処理に要する時間は一定である。
【0055】
脱気モジュール120は、図5および図6に示すように、中継タンク42とヘッドユニット21との間に配置され、真空チャンバー(減圧チャンバー)121と、真空チャンバー121内に配置される複数の脱気チューブ122とを有して構成されており、これら複数の脱気チューブ122の一端側が、流入口121Aを介して供給チューブ43に接続され、他端側が流出口121Bを介して排出チューブ44にそれぞれ接続されている。脱気チューブ122は、例えば、PMP(オイリメチルペンテン)などによって形成され、気体に対して透過性を有する中空糸である。
真空チャンバー121には真空ポンプ(減圧ポンプ)P2が接続されており、この真空ポンプP2の作用によって真空チャンバー121内の真空状態が保たれることになる。本実施形態では、常に一定の出力で駆動され、5〜10kPaの範囲内で設定される。
【0056】
複数の脱気チューブ122は水を通さず気体のみを通過させる特性を有するため、真空チャンバー121内を真空にすると、各脱気チューブ122内を流動する機能液L中の溶存気体Aが脱気チューブ122の外へと排出(吸引)されることになる(図7)。このため、液送ポンプP1の作用により、中継タンク42から供給チューブ43を介して送られてきた機能液Lは、流入口121Aから各脱気チューブ122内へと流入(分流)し、これら各脱気チューブ122内を通過する間に脱気されて、流出口121Bから排出チューブ44を介してヘッドユニット21へと送られることになる。
このようにして、脱気モジュール120では各脱気チューブ122を通過する機能液Lに対して、機能液L中に溶解した溶存気体Aを除去する脱気処理を行う。
【0057】
ヒーター130は、中継タンク42と脱気モジュール120とを接続する供給チューブ43上であって、脱気モジュール120の近傍に配置されている。このヒーター130による供給チューブ43内の機能液Lの温度制御は、制御部CPU84によって制御される。ヒーター130よりも上流側の機能液Lの温度は20〜30℃であるが、ヒーター130の作用により、中継タンク42から送液されてきた機能液Lを所定の温度Tまで加温できる。所定の温度Tとは、機能液Lの種類に関わらず一定の粘度になる温度であって、本実施形態では、40℃以上60℃未満の範囲内で設定される。ここで、機能液Lを60℃以上まで加温してしまうと、吸引処理時に液滴吐出ヘッド20において気泡が生じやすくなって吐出不良が懸念されることから、これよりも低い温度にする。
【0058】
流量計140は、脱気モジュール120と液滴吐出ヘッド20とを接続する排出チューブ44上であって液送ポンプP1よりも下流側に配置され、排出チューブ44内の機能液Lの流量を計測する。ここで測定される流量は、脱気モジュール120内を通過する機能液Lの流量とみなすことができる。この流量計140は制御部CPU84に接続されており、制御部CPU84は、流量計140による排出チューブ44内の機能液Lの流量結果に基づいて、ヒーター130による機能液Lの加温温度の制御を行う。
【0059】
供給チューブ43を介してこれよりも径(流路径)の小さい脱気チューブ122内に機能液Lが流入する際、機能液Lの流路抵抗が上昇する。特に、水溶性の機能液Lに比べて粘度の高い高粘度であるUVインクを用いる場合は、これが顕著となり、圧力変動に伴う流量変動が生じやすい。脱気チューブ122へ流入する際のインクの圧力変動を低減させるためには、脱気モジュール120内へ送り込まれる前に機能液Lを所定の温度まで加温させて粘度を低くしておく必要がある。
【0060】
本実施形態においては、中継タンク42と脱気モジュール120との間に配置されたヒーター130によって、上記した脱気モジュール120に流入する脱気処理前の機能液Lの温度を予め調整する構成となっている。機能液Lを加温した結果、機能液Lの粘度が下がり、供給チューブ43から流入口121Aを介して各脱気チューブ122内へと機能液Lがスムーズに流れ込むこととなる。また、機能液Lの圧力が低いほど機能液L中に溶存している気体は外部へと排出されやすくなる。このため、脱気処理前に機能液Lを予め加熱しておくことによって、供給チューブ43から各脱気チューブ122内へ流入する際の圧力上昇が抑えられるので脱気効率が高まる。
【0061】
図8は、機能液の温度に関する粘度と流量との関係について示すグラフであり、図9は、機能液の温度に関する流量と溶存気体量との関係について示すグラフである。
図8に示すように、一般的に、機能液Lの温度が高くなるにしたがって粘度が低下して流量が増加する。また、図9に示すように、機能液Lの温度が高くなるにしたがって溶存気体量(対飽和)も徐々に増加する。
加温する前、温度20℃、粘度16mPa・s、流量0.5cc/secであった機能液Lをヒーター130によって40℃にまで加温した場合、粘度が9mPa・sまで低下し、これに伴って流量が0.5cc/secから1cc/secまで上昇する。溶存気体量について着目すれば、加温前でも80%程度ある。
【0062】
加温することによって機能液Lの粘度が下がれば、脱気チューブ122での流路抵抗が減るため、供給チューブ43,44と脱気モジュール120との間での圧力変動が少なくなる。
【0063】
このとき、ヒーター130による機能液Lの加温温度を一定に制御したとしても、使用する機能液Lの種類によって粘度が異なるため、脱気モジュール120における機能液Lの流量が変動してしまう。つまり、流量の変動によって脱気モジュール120内を機能液Lが通過する時間が変わってしまうと、機能液Lの種類ごとに脱気度が違ってしまう。
【0064】
このため、機能液Lの種類に応じてヒーター130による機能液Lの加温温度を制御することによって、脱気モジュール120内へ送られる機能液Lの粘度が常に一定になるように調整する。具体的には、流量計140による機能液Lの計測結果に基づいてヒーター130による機能液Lの加温温度を変化させることによって、脱気モジュール120内を通過する機能液Lの流量を一定にする。これにより、機能液Lの種類に関わらず脱気モジュール120を通過する時間を一定にすることができる。その結果、機能液Lの種類に関わらず一定の脱気度が得られることになる。
【0065】
あるいは、ヒーター130による機能液Lの加温温度を一定にした状態で、流量計140の計測結果に基づいて液送ポンプP1の駆動を制御することにより、脱気モジュール120内へ供給される機能液Lの流量を一定に保つようにしてもよい。
【0066】
ここで、機能液Lの流量が低いほど脱気モジュール120内に長い時間存在することになるので脱気効率は向上する。しかしながら、ヘッドユニット21における機能液Lの噴射圧力が5〜15mPa・sであることから、機能液Lの噴射特性を維持できる範囲内の流量とすべく適宜調整を行う。
【0067】
ところで、ヘッドユニット21の吐出ノズル24の目詰まり等による吐出不良を防止するために、メンテナンス機構部11によりキャップ部材34を利用した吸引処理が行われる。吸引処理では、キャップ部材34に接続された吸引ポンプ(不図示)により液滴吐出ヘッド20とキャップ部材34との間に形成された空間内を減圧することで、各吐出ノズル24から増粘した機能液Lを強制的に吸引してキャップ部材34内へ排出させる。キャップ部材34内が減圧状態になると機能液Lの圧力も低下する。吸引処理時の減圧によって機能液L中に気泡が発生してその気泡が吐出ノズル24内に入り込んでしまうと、増粘した機能液Lは除去できても吐出不良が改善されないままになってしまう。このため、脱気モジュール120において、吸引処理時に減圧されたとしても機能液L中に気泡が発生しない程度に機能液Lを脱気しておく。
【0068】
つまり、本実施形態では、上記した脱気モジュール120による機能液Lに対する脱気度を、機能液供給部4からメンテナンス機構部11の間で最も低い圧力となる領域において、機能液L中に気泡が発生しない程度の脱気度に設定する。
【0069】
本実施形態の液体噴射装置1によれば、流量計140の計測結果に基づいてヒーター130による機能液Lの加温温度を制御することによって、機能液Lの種類に関わらず、脱気モジュール120内を通過する機能液Lの粘度を一定にすることができる。あるいは、液送ポンプP1の駆動を制御することによって、脱気モジュール120内に供給される機能液Lの流量がその種類に関わらず一定になるようにしても良い。
これにより、機能液Lの種類に関わらず、脱気チューブ122内を通過する時間を一定にすることができる。その結果、各種の機能液Lに対して所定の脱気度になるまで脱気処理を行うことができ、液滴吐出ヘッド20おける液滴の吐出精度を良好に維持することが可能になる。
【0070】
また、ヒーター130によって脱気処理前の機能液を所定の温度まで加温することによって、機能液の粘度を低下させることにより、供給チューブ43よりも流路径の小さい複数の脱気チューブ122内に機能液が分流される際の流路抵抗の上昇を抑えることができる。これにより、供給チューブ43から各脱気チューブ122内に機能液額ムーズに流れ込むことになる。また、機能液を複数の脱気チューブ122に分流させることによって機能液に対する脱気処理効率が高められ、短時間で脱気処理を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態の脱気機構部10によれば、機能液が粘性の高いUVインクであっても、他の種類の機能液(例えば、水溶性インク)と同様の精度で脱気処理を行えるようになる。
【0072】
また、本実施形態では、流量計140によって機能液の流量を測定し、その測定結果に基づいて、ヒーター130による機能液の加温温度の制御を行っており、これにより、機能液の種類に関わらず、脱気モジュール120内に送り込まれる機能液の粘度を一定に保つようになっている。その結果、脱気モジュール120内における機能液の通過時間を一定に保つことができるので、機能液の種類に関わらず一定の脱気度で処理が行えるようになる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、ヒーター130は、供給チューブ43上に配置される構成に限られず、脱気モジュール120の真空チャンバー121の内側に配置してもよいし、あるいは外側に取り付けてもよい。
また、液送ポンプP1の出力を一定に制御するとしたが、これに限られず、流量計140の計測結果に基づいて液送ポンプP1の出力を制御することにより、機能液Lの流量を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…液体噴射装置、4…機能液供給部(機能液貯留部)、6…吐出装置制御部(制御部)、A…溶存気体、L…機能液、T…温度、10…脱気機構部、20…液滴吐出ヘッド(記録部)、24…吐出ノズル、43…供給チューブ(機能液供給流路)、120…脱気モジュール、121…真空チャンバー(減圧チャンバー)、122…脱気チューブ、130…ヒーター(加熱装置)、140…流量計、P2…真空ポンプ(減圧ポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を液滴として吐出する吐出ノズルを備える記録部と、
前記記録部に供給する前記機能液を貯留する機能液貯留部と、
前記記録部と前記機能液貯留部との間に配置され、前記機能液中の溶存気体を減圧除去する脱気機構部と、
前記機能液の種類に関わらず、前記脱気機構部における前記機能液の通過時間を一定に保つように駆動制御する制御部と、を備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記脱気機構部は、前記機能液の種類に関わらず、前記脱気機構部における前記機能液の粘度を一定に保つ機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記脱気機構部は、前記機能液の種類に応じて、脱気処理前あるいは脱気処理中の前記機能液の温度を所定の温度まで加温する加熱装置を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記脱気機構部は、チャンバーと、前記チャンバー内に設けられ前記機能液を通過させる複数の脱気チューブと、前記チャンバーに接続された減圧ポンプと、を有し、
各脱気チューブの流路径は、前記脱気機構部と前記機能液貯留部とを接続する機能液供給流路の流路径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記機能液がUVインクであって、
前記加熱装置により40℃以上60℃未満まで加温される
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記機能液の流量を測定する流量計を備えており、
前記制御部は、前記流量計の計測結果に基づいて、前記加熱装置による前記機能液の加温温度の制御を行う
ことを特徴とする請求項4または5に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213741(P2012−213741A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81659(P2011−81659)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】