説明

液体噴射装置

【課題】本願は、メインタンク、サブタンク、ヘッド間の流路を、間違えて組み立てしまうことを防止することを目的とする。
【解決手段】本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するヘッドと、前記液体を貯留し交換可能なメインタンクと、前記メインタンクと連通する流入流路と、前記流入流路と連通するサブタンクと、前記サブタンクと連通する流出流路と、を一組とする供給ユニットを複数有し、前記複数の供給ユニットは前記ヘッドに接続される液体噴射装置であって、複数の前記サブタンクのうち少なくとも2つは異なる色の部材で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインタンク、サブタンク、ヘッドを有する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載されているように、メインタンクから一旦、サブタンクにインクを供給し、サブタンクからヘッドへインクを供給して、ヘッドからインクを噴射する液体噴射装置が知られていた。
また、特許文献2に記載されているように、ヘッドからサブタンクへさらにインクを流す液体噴射装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−199084号公報
【特許文献2】特開平10−337884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、メインタンクからサブタンクへの流路と、サブタンクからヘッドへの流路を有している。特許文献2に記載の液体噴射装置では、メインタンクからサブタンクへの流路と、サブタンクからヘッドへの流路と、ヘッドからサブタンクへの流路を有している。特許文献1、2では1つの色の流路を示しているが、例えば4色の液体を噴射する液体噴射装置では、その4倍の流路が必要となる。そのため、複数の流路が複雑に入り乱れることになる。そして、組み立ての際に間違えて異なるサブタンクに流路を接続してしまうことが考えられる。
本願は、間違えて組み立てしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するヘッドと、前記液体を貯留し交換可能なメインタンクと、前記メインタンクと連通する流入流路と、前記流入流路と連通するサブタンクと、前記サブタンクと連通する流出流路と、を一組とする供給ユニットを複数有し、前記複数の供給ユニットは前記ヘッドに接続される液体噴射装置であって、複数の前記サブタンクのうち少なくとも2つは異なる色の部材で形成されている。
異なる色のサブタンクがあることで、サブタンクに接続する流路を間違えずに接続することができる。
【0006】
この液体噴射装置において、前記異なる色は、視認による識別可能な色である。
異なる色を視認により識別可能な程度の色であるため、サブタンクの色着けを正確に行う必要がない。
【0007】
この液体噴射装置は、複数の前記サブタンクのうち少なくとも3つは異なる色の部材で形成されている。
異なる色のサブタンクが少なくとも3つあることで、サブタンクに接続する流路を間違えずに接続することができる。
【0008】
この液体噴射装置は、複数の前記サブタンクの全ては異なる色の部材で形成されている。
全てのサブタンクが異なる色のため、サブタンクに接続する流路を間違えずに接続することができる。
【0009】
この液体噴射装置において、前記サブタンクは、開口部を有する本体部と、前記開口部を覆う蓋部を有し、少なくとも前記蓋部が異なる色である。
蓋部の色が異なれば、上から見たときに視認できる。
【0010】
この液体噴射装置において、前記サブタンクは、開口部を有する本体部と、前記開口部を覆う蓋部を有し、少なくとも前記本体部が異なる色である。
本体部の色が異なれば、流路を取り付けるときに視認できる。
【0011】
この液体噴射装置において、前記本体部には、前記流出流路と接続する流出接続部が備えられている。
本体部に流路接続部があれば、流路を流路接続部に接続するときに間違えずに接続できる。
【0012】
この液体噴射装置において、前記サブタンクの色は、その中に貯留する液体と同系色である。
サブタンクの色と貯留する液体の色が同系色であるので、サブタンクに液体を入れたときに接続が正しいかどうかを確認できる。
【0013】
この液体噴射装置において、前記同系色の色は、視認により同じ色と認識可能な色である。
サブタンクと液体は視認可能な程度の同じ色であればよいので、サブタンクの色着けを正確に行う必要が無い。
【0014】
この液体噴射装置は、前記一組の供給ユニットにおいて、少なくとも前記サブタンクと前記流出流路は同系色の部材で形成されている。
サブタンクと流出流路が同系色の部材で形成されているので、間違えずに接続することができる。
【0015】
この液体噴射装置は、前記一組の供給ユニットにおいて、前記流入流路、前記サブタンク、前記流出流路の全てが同系色の部材で形成されている。
流入流路とサブタンクと流出流路が同系色の部材で形成されているので、確実に間違えずに接続することができる。
【0016】
この液体噴射装置において、前記同系色の色は、視認により同じ色と認識可能な色である。
視認により認識できる程度の色でよいため、それぞれの部材を正確に同じ色にする必要がなくなる。
【0017】
この液体噴射装置において、前記流出流路は、途中に接続部材を介して分割され、前記接続部材と前記流出流路は同系色の部材である。
流出流路が途中で分割していても、接続部材を同系色で作ることで間違えずに接続することができる。
【0018】
この液体噴射装置において、前記流出流路はチューブにより形成されている。
チューブにより形成されているので容易に色を着けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係るプリンターの正面図。
【図2】実施形態1に係る詳細図。
【図3】実施形態1に係る詳細図。
【図4】変形例1を示すプリンターの正面図。
【図5】変形例2を示すプリンターの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式プリンター(以下、プリンターと呼ぶ)に具体化した実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異なっている。また、図1、5に示す方向のうち、上下は鉛直方向の上下を示し、前後は媒体の搬送方向を前、搬送方向と逆方向を後とし、左右は上下、前後と直交する方向である。ここで、各図は見易さを優先し、上下左右前後の位置関係はサブタンク10を除いては、必ずしも正確ではない。位置関係が記載の内容と異なっている場合は記載の内容を正しいものとする。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態のプリンターを前からみたときの概略を示した正面図である。図1に示すように、プラテン2に下から支持され、搬送される媒体としての紙3に対して、ヘッド1から液体としてのインクを噴射する。紙3は前へと搬送され、ヘッド1からはインクが下に向かって噴射され、紙3に画像や文字を形成する。ヘッド1は紙3の左右方向の幅よりも大きいラインヘッドである。紙3を搬送する機構は省略する。
【0022】
プリンターにはインクを貯留する4つのメインタンク6が交換可能に載置されている。メインタンク6はブラックBk、マゼンタM、シアンC、イエローYの4つのインクがそれぞれ異なるメインタンク6に収容されている。本願では4つのインクとしたが、5以上でもよいし、3以下でもよい。また、同じ色のインクが2つ以上あってもよい。なお、メインタンク6およびサブタンク10は左右方向に沿って鉛直方向で同じ高さに配置されている。つまり、紙3の搬送方向と交差する方向に配置されている。
【0023】
各メインタンク6には流入流路8の一端が接続されている。流入流路8の他端はサブタンク10に接続されている。メインタンク6側からサブタンク10へ流入流路8を介して色毎にインクが流れて供給される。図1において、流入流路8を示す1本の線はチューブを示している。また、流入流路8の他端の矢印はインクの流れる方向を示している。
【0024】
サブタンク10にはさらに流出流路20の一端が接続されている。流出流路20の他端はヘッド1に接続されている。サブタンク10からヘッド1へ流出流路20を介してインクが流れる。つまり、サブタンク10とヘッド1と流出流路20は連通している。また、ヘッド1とメインタンク6の間にサブタンク10を配置することになる。図1において、流出流路20を示す1本の線はチューブを示している。また、流出流路20の他端の矢印はインクの流れる方向を示している。流出流路20の途中には流出弁22が配置されている。流出弁22は、チューブを押しつぶすことによって、サブタンク10からのインクの流れを禁止し、チューブを押しつぶさないことによって、サブタンクからのインクの流れを許容する。流出弁22は4本のチューブを同時に押しつぶしてもよい。チューブを押しつぶす機構は省略する。
【0025】
ヘッド1とサブタンク10はさらに導入流路21によっても接続されている。導入流路21の途中にはポンプ25が配置されている。このポンプ25によって、ヘッド1からサブタンク10に向かってインクは流れる。図1において、導入流路21を示す1本の線はチューブを示している。また、導入流路21の端の矢印はインクの流れる方向を示している。ポンプ25は一例としてチューブを押しつぶしながら回転するチューブポンプが用いられる。チューブポンプは4本のチューブを同時につぶしながら回転する。別の例としてはダイヤフラムポンプでもよい。
【0026】
流出流路20において、流出弁22とヘッド1の間には、流出流路20を大気に連通することが可能な大気連通路30が接続されている。大気連通路30は、一端が流出流路20に接続し、他端が大気と連通されている。大気連通路30の途中には、流出流路20に対して大気との連通を許容または禁止する大気弁31を備える。図1において、大気連通路30を示す1本の線はチューブを示している。大気弁31はチューブを押しつぶすことによって、大気との連通を禁止し、チューブを押しつぶさないことによって、大気との連通を許容する。流出弁22と大気弁31は同じ部材を用いて、チューブを同時に押しつぶすことにより、それぞれ許容または禁止してもよい。
【0027】
図1に示すように、サブタンク10はヘッド1より下の位置に配置されている。サブタンク10は後述するように大気に連通している。ヘッド1と連通するサブタンク10がヘッド1より下に位置するため、ヘッド1内のインクは大気圧より小さい負圧状態となる。ヘッド1内を負圧にすることで、噴射するインク滴を正確に制御できる。ヘッド1でインクが消費されると、サブタンク10から流出流路20を介してヘッド1へインクが流れる。このとき、流出弁22は流出流路20のチューブをつぶさず、サブタンク10からのインクの流れを許容する。また、大気弁31は大気連通路30のチューブをつぶし、流出流路20が大気に連通するのを禁止する。サブタンク10からヘッド1へインクは自然に流れるため、流出流路20には、インクを流すためのポンプを備えていない。
【0028】
また、メインタンク6はサブタンク10より上の位置に配置されている。メインタンク6内のインクは、水頭差による圧力によりサブタンク10へ流入流路8を介して流れる。水頭圧によりインクは流れるので、メインタンク6に対する加圧機構や、流入流路8の途中にポンプを有していない。サブタンク10内には後述する供給制御弁23が備えられている。供給制御弁23は、サブタンク10内のインクの量に応じて、メインタンク6からサブタンク10へのインクの流れを許容または禁止する。
【0029】
ポンプ25はヘッド1内からインクを排出するときに駆動される。例えば、ヘッド1をプリンターから取り外す場合や、長時間にわたってヘッド1からインクが噴射されず、ヘッド1内でインクが乾燥したり沈降したりするのを防ぐ場合が想定される。このとき、流出弁22で流出流路20のチューブを押しつぶしてサブタンク10からインクが流れるのを禁止し、大気弁31で大気連通路30のチューブを押しつぶさないようにして、流出流路20が大気に連通した状態でポンプ25を駆動する。すると、大気連通路30の先端から空気を取り込むので、大気連通路30との接続部よりヘッド側の流出流路20内、ヘッド1内、導入流路21内に大気を供給することで、インクが空気と置換され、インクはサブタンク10に排出される。ポンプ25は、流入流路8と、導入流路21と、流出流路20のうち、導入流路21にのみポンプ25を備えていることになる。
【0030】
図2、3は1つの色について、メインタンク6、サブタンク10、ヘッド1、各流路を示す。図1に示すように、メインタンク6、サブタンク10、流入流路8、流出流路20、導入流路21、大気連通路30は各色ごとに1つずつ有し、ヘッド1は4色で1つである。ただし、ヘッド1は、その中で各色ごとにインクを噴射するノズルと流路を有している。なお、メインタンク6と流入流路8とサブタンク10と流出流路20を一組とするユニットを、ヘッド1にインクを供給する部材の集まりである供給ユニットと呼ぶ。本願では供給ユニットを複数(4つ)有し、それぞれの供給ユニットがヘッド1に接続される。
メインタンク6、サブタンク10の形状は各色で同じである。各流路に用いられるチューブは、各色によって同じ長さでもよいし、接続される部材の位置によって長さを変えてもよい。サブタンク10は貯留されたインクや内部の部材が視認可能なように透明部材で形成されるのがよい。
【0031】
図2において、メインタンク6は、インクを収容する可撓性のインク収容体7を有する。メインタンク6には、流入流路8の一端が接続されている。流入流路8は途中に流入弁9を有している。流入弁9は、メインタンク6が装着されているときは、流入流路8のチューブを押しつぶさずにメインタンク6からのインクの流れを許容する。メインタンク6が装着されていないときには、流入弁9は流入流路8のチューブを押しつぶすことで流入流路8内のインクの移動を禁止する。流入流路8の他端はサブタンク10の流入接続部11に接続される。これにより、メインタンク6とサブタンク10と流入流路8は連通する。
【0032】
サブタンク10は、中空の略直方体形状をしており、上側が開口した開口部を有している。開口部は蓋部26によって覆われている。蓋部26は平板形状で、一面側に溝27を有しており、他面側には溝27から貫通する孔を有する。蓋部26の溝27は封止部28によって覆われている。封止部28は大気連通孔29を有している。サブタンク10は、蓋部26の孔、溝27、大気連通孔29を介して大気に連通している。
サブタンク10は、流入流路8が接続される流入接続部11を有する。流入接続部11は、サブタンク10の中から外に向けて突出する突起であり、サブタンク10の中と外を連通する貫通孔を有している。この貫通孔のうち、サブタンク10の中側に位置する流入口12からインクはサブタンク10内部に流入する。流入されたインクはサブタンク10内で貯留される。メインタンク6と流入口12は流入流路8によってつながれている。
【0033】
サブタンク10内部で支点36を中心に回動可能に支持されたフロート部材35が配置されている。フロート部材35はインクに対して浮く部材である。
【0034】
サブタンク10内には、サブタンク10内で支点を中心に回動する供給制御弁23を有する。供給制御弁23には環状のシール部があり、付勢バネ24により供給制御弁23が付勢されると、シール部が流入口12の周囲に密着する。このようにして、流入口12からインクがサブタンク10内に流入するのを禁止している。メインタンク6はサブタンク10より上の位置にあるため、水頭差によりメインタンク6からサブタンク10へ自然にインクは流れる。サブタンク10へのインクの流れが常に続くと、サブタンク10内がインクで一杯になり、大気連通孔29からインクがあふれ出てしまう。供給制御弁23によりサブタンク10内へのインクの流れを止めることでこれを防止する。
【0035】
そして、ヘッド1でインクが消費され、サブタンク10内に貯留されているインクが少なくなり、インクの液面が低下すると、フロート部材35は支点36を中心に下方向に回転する。さらに、インクが少なくなると、図3に示すように、フロート部材35が供給制御弁23のレバー部に当接し、付勢バネ24の付勢力に抗して、供給制御弁23を回動させる。供給制御弁23が回動し、シール部が流入口12の周囲の密着状態を解除すると、流入口12からインクが流入する。
このようにして、サブタンク10内のインクの量や液面の高さに応じて、フロート部材35の位置が変わり、その位置に応じて供給制御弁23が流入口12からのインクの通過を許容したり禁止したりする。つまり、供給制御弁23はメインタンク6からインクがサブタンク10に流入するのを制御している。また、供給制御弁23の動きによりインクが流入してサブタンク10内にインクが貯留される。
【0036】
サブタンク10は、流出流路20が接続される流出接続部13を有する。流出接続部13は、サブタンク10の中から外に向けて突出する突起であり、サブタンク10の内部と外を連通する貫通孔を有している。この貫通孔のうち、サブタンク10の内部側に位置する流出口14からインクが流出する。
【0037】
流出流路20はヘッド1の供給口1bと接続している。これによって、サブタンク10とヘッド1は流出流路20を介してつながれている。サブタンク10の流出口14からインクはヘッド側に向けて流出する。ヘッド1と流出口14も流出流路20によってつながれている。流出流路20の途中には流出弁22を有する。
流出流路20は、流出弁22とヘッド1との間において、大気連通路30と接続している。言い換えると、流出流路20のおける大気連通路30との接続部と、流出口14の間に流出弁22が配置されている。図2では、流出流路20と大気連通路30が一体となっている。しかし、継ぎ手などを用いて接続してもよい。大気連通路30は、流出流路20と反対側に気体透過部32を有する。気体透過部32は気体は通過するが液体は通過しないような微小の孔を複数有する部材である。これによって、気体透過部32からインクが漏れ出すことを防止する。なお図2では、大気連通孔29の気体透過部32側が下を向いているが、これに限らず、どの方向を向いていてもよい。また、気体透過部32を無くてもよい。この場合は、チューブの先端が開放されているため、チューブの先端は上を向いているのがよい。これによりインクが漏れにくくなる。
【0038】
ヘッド1は供給口1bから供給されたインクをノズル1aから噴射する。ヘッド1は排出口1cを有している。排出口1cには導入流路21が接続されている。
【0039】
サブタンク10は、導入流路21が接続される導入接続部15を有する。導入接続部15は、サブタンク10の中から外に向けて突出する突起であり、サブタンク10の内部と外を連通する貫通孔を有している。この貫通孔のうち、サブタンク10の内部側の導入口16からインクが導入される。ヘッド1と導入口16は導入流路21によってつながれている。
導入流路21の途中にはポンプ25を有する。ポンプ25を駆動することでヘッド1側からサブタンク10内部に向かって導入流路21内をインクが流れる。
【0040】
ここで、流出弁22をサブタンク10からのインクの流れを許容する状態とし、大気弁31を流出流路20が大気に連通することを禁止した状態として、ポンプ25を駆動する。このとき、サブタンク10、流出流路20、ヘッド1、導入流路21、サブタンク10の順にインクは流れるので、循環することになる。これにより、サブタンク10内に貯留されたインクの成分が沈降し、インクの濃度差が発生するのを防止したり、ヘッド1内のインクが蒸発して、インクの粘度が増大することを防止したりする。
【0041】
また、流出弁22をサブタンク10からのインクの流れを禁止する状態とし、大気弁31を流出流路20が大気に連通するのを許可する状態として、ポンプ25を駆動する。この場合、大気連通路30の気体透過部32から大気を取り込むことになる。このため、流出流路20における大気連通路30との接続部からヘッド1までの流出流路20内のインク、ヘッド1内のインク、導入流路21内のインクが取り込まれた大気と置換され、インクはサブタンク10に排出される。本願においては、「インクをサブタンク10に排出する」とは、インクが空気によって置換された状態、つまりインクが無くなるように流れる状態を言う。
【0042】
図2に示すようにサブタンク10にインクを貯留した状態において、サブタンク10内にはサブタンクを構成する部材であるフロート部材35や供給制御弁23と、インクを除いた部分に空間部19を有する。
ポンプ25を駆動し、サブタンク10にインクを排出するとき、排出されるインクの体積より空間部19の体積のほうが大きい。これにより、ポンプ25を駆動し始めるときにサブタンク10内に液体が貯留されている状態で、サブタンク10にインクが排出されても、大気連通孔29からインクが漏れ出すことはない。
なお、ポンプ25を駆動し、インクをサブタンク10に排出しているとき、導入流路21内のインクを全て排出してしまうと、その後は空気がサブタンク10内に流れることになる。サブタンク10内に流れた空気は、大気連通孔29から流れ出るため、サブタンク10内に貯留することはない。
【0043】
サブタンク10には、底部から突出する壁などはない。この壁によってサブタンク10の内部を区画することはしていない。
【0044】
ここで、大気連通孔29は溝27を介してサブタンク10内と連通している。溝27は幅1〜2mm、深さ1〜2mmの小さい溝にすることで、サブタンク10内に貯留されているインクが蒸発するのを防ぎながら、サブタンク10内が大気に連通する。溝27の形状を上から見た状態は図示していないが、直線状でもよいし、湾曲して距離を長くするようにした蛇道状にしてもよい。
【0045】
また、サブタンク10内に空気を排出した場合、例えば図2では、導入口16が液面より下に位置しているため、インクの中を空気が通過する。これにより泡が発生することがある。そこで、導入口16、流入口12、流出口14のうち、導入口16を最も上の位置、つまり鉛直方向において最も高い位置に配置している。2つの位置関係では、導入口16は流入口12より鉛直方向において高い位置にあり、導入口16は流出口14より鉛直方向において高い位置にある。これにより、サブタンク10内に空気が排出されても、インク内を通る距離が短くなり、泡となる可能性を低減できる。
なお、流入口12からはインクは流入するが、空気が流入する可能性は低い。そのため、流入口12は導入口16より鉛直方向で低い位置にあっても問題ない。また、流出口14の位置は、流出口14、導入口16、流入口12の中で鉛直方向において最も低い位置が望ましい。流出口14が最も低いことで、サブタンク10内のインクを最も多く消費しやすくなる。
【0046】
図2、3において、流出口14、導入口16、流入口12は全て、サブタンク10の本体部18の側面に設けられている。しかし、これに限ったことではなく、前述した高さの関係を守れば、底面側に設けてもよい。
図2において、ヘッド1の下側には、ノズル1aを囲うようにしてヘッドに当接可能なキャップ4が配置されている。キャップ4は、ヘッド1が紙3にインクを噴射していないときにヘッド1に当接して、ノズル1aからインクが蒸発することを防ぐ。
【0047】
以上のように、本願では、図2に示すようなメインタンク6、流入流路8、サブタンク10、流出流路20、導入流路21を各色ごとに有している。ここで、流入流路8、流出流路20、導入流路21を各色ごとに1本のチューブとした場合、図1に示す線のように複雑に入り乱れることになる。例えば、組み立ての際に間違えて異なるサブタンク10にチューブを差してしまうことが考えられる。従来から、ユーザーが交換するメインタンク6は誤挿入しないよう、色を示すシールなどが貼られている。しかし、サブタンク10や各流路のチューブにはそのような工夫がされていなかった。
【0048】
そこで本願では、サブタンク10、流入流路8、流出流路20、導入流路21は、その中を流れたり貯留したりするインクの色と同系色の色で形成した。つまり、サブタンク10、流入流路8、流出流路20、導入流路21を、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4種類の色の部材とした。しかし。サブタンク10は硬い樹脂で形成され、チューブは可撓性のゴムやエラストマで形成されている。これらとインクの色を全く同じ色に合わせるのは難しい。本願では同系色の色とは、組み立ての際に同じ色として視認により識別可能な色である。例えば、マゼンタを流すサブタンク10やチューブは赤色であっても、マゼンタに近い色のため、同系色と識別できる。
これは、他の色とは異なる色であると視認により識別可能でもよい。本願ではブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクを用いている。樹脂やゴムなどによっては、これらの色が着けにくい場合や識別しにくい場合もある。そこで、インクと同系色の色ではなく、無色にしたり、白色にしたりしてもよい。もともと、組み立ての際には、サブタンク10やチューブ内にはインクは入っていない。そのため、サブタンク10やチューブの色と、インクの色を合わせる必要は無い。同じ供給ユニットにおいて、サブタンク10と各チューブの色が同系色であれば、同系色同士で接続ができる。異なる供給ユニット間では、他の供給ユニットとの違いが判ればよい。
【0049】
また、チューブの長さも識別する要素となる。例えば、メインタンク6とサブタンク10の間の長さが長い流路に、短いチューブは接続できない。このため、流入流路8を色着けしなくても、サブタンク10だけ色が着いていれば識別して接続できる。本願においては、少なくともサブタンク10は色が着いていればよい。そして、サブタンク10は、蓋部26と本体部18を有している。このとき、蓋部26と本体部18の両方に色を着けてもよいし、どちらか一方でもよい。蓋部26に色が着いていれば、上から見たときに識別ができる。本体部18に色が着いていれば、流入接続部11、流出接続部13、導入接続部15にチューブを接続するときに識別ができる。
【0050】
なお、図1に示しているように、サブタンク10からヘッド1までの流出流路20は、色によってチューブの長さが異なる。このため、流出流路20は色を着けなくてもよい。ただ、流出流路20にサブタンク10と同系色の色を着けておけば、長さを見ることなく、接続が可能である。導入流路21も同様であり、導入流路21は、サブタンク10と同系色の色を着けてもよいし、着けなくてもよい。なお、図示はしていないが、流出流路20が途中で接続部材を介して分割している場合は、接続部材も流出流路20と同系色であることが望ましい。
また、チューブの長さが同じだとしても、メインタンク6には通常、色ごとに識別する表示があるため、サブタンク10にだけ色着けして、流入流路8に色着けしなくても、同系色同士のメインタンク6とサブタンク10をつなぐことは可能である。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0052】
(変形例1)
図4は、変形例1に係るプリンターの正面図である。
変形例1と実施形態1の異なる点はサブタンク10の高さである。それ以外は実施形態1と同一の構成であるので、異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0053】
本変形例1では、4つのサブタンク10は、鉛直方向における高さが異なる。図4に示すように、ブラックが最も低く、マゼンタとシアンが同じ高さで、イエローが最も高い。前述したように、ヘッド1とサブタンク10の水頭差により、ヘッド1内は負圧となっている。また、ヘッド1からインクを噴射し消費することによって、サブタンク10からヘッド1へインクが流れる。インクが流出流路20内を流れるとき、流出流路20の長さによって流路抵抗(動圧)が異なる。流出流路20の長さが長いほど流路抵抗は大きくなる。流路抵抗が大きくなると、流出流路20内をインクが流れにくくなり、ヘッド1からのインクの噴射が正確にコントロールできなくなる。図4においては、イエローのサブタンク10からヘッド1までの流出流路20距離が最も長く、シアン、マゼンタ、ブラックの順に長い。
【0054】
本変形例1では、流出流路20の長さが長いサブタンク10を、流出流路が短いサブタンクより高い位置に配置する。こうすると流路抵抗の大きさは変わらないが、ヘッド1とサブタンク10の水頭差を小さくし負圧を大きくすることで、インクがより流れやすくしている。
図4では、ブラック、マゼンタとシアン、イエローの3種類の高さを異ならせた。しかし、4種類全てのサブタンク10の高さを変えてもよいし、例えばブラックとマゼンタ、シアンとイエローの2種類で高さを変えてもよい。
ここで、各サブタンク10は同じ形状である。そのため、サブタンク10の高さを変えるということは、蓋部26やフロート部材35、流入口12、流出口14の高さも変わることになる。
【0055】
(変形例2)
図5は、変形例2に係るプリンターの平面図である。
変形例2と実施形態1の異なる点はサブタンク10の高さ及び前後左右方向の位置である。それ以外は実施形態1と同一の構成であるので、異なる点について説明し、重複する説明は省略する。なお、変形例2は変形例1と同じ課題、技術思想、効果を有する。
【0056】
図1では、サブタンク10は紙3のよりも下にあり、左右方向に沿って配置されている。また、図示はされていないが前後方向では同じ位置にある。変形例2は、図5に示すように、破線で示した搬送される紙3を挟んで両側にサブタンク10が配置されている。具体的には、左側の前側にマゼンタ、左側の後側にブラック、右側の前側にイエロー、右側の後側にシアンのサブタンク10が配置されている。言い換えると、マゼンタとブラック、イエローとシアンはそれぞれ、紙3の搬送方向(図5に図示)に沿って配置されている。
【0057】
このような配置のサブタンク10の場合、前側に配置されたサブタンク10の方が後側に配置されたサブタンク10より流出流路20の長さが長くなる。そのため、前側のサブタンク10を後側のサブタンク10より鉛直方向で高い位置としている。言い換えると、搬送方向に沿って配置された複数のサブタンク10のうち、ヘッド1から離れた側に配置されたサブタンク10の方が、ヘッド1に近いサブタンク10よりも鉛直方向で高い位置に配置される。
【0058】
また、紙3の左側のサブタンク10より右側のサブタンク10の方が流出流路20の長さが長くなる。そのため、紙3の左側のサブタンク10より、紙3の右側のサブタンク10の方が鉛直方向で高い位置に配置される。これは、ヘッド1の供給口1bが右側にあるためである。言い換えると、紙3を挟んで両側に配置されたサブタンク10のうち、ヘッド1の供給口1bに遠い側のサブタンク10の方が、ヘッド1の供給口1bに遠い側のサブタンク10より鉛直方向で高い位置に配置される。
このようにしても、流出流路20の長さの違いによる流路抵抗の違いを、ヘッド1とサブタンク10の水頭差により吸収して、インクを流しやすくする。
【0059】
なお、図5の場合、サブタンク10の色を前側と後側の2種類としてもよい。紙3の左右に分かれているので、流出流路20の長さは明らかに異なるので、前後においてサブタンク10の違いが識別できればよい。つまり、複数のサブタンク10のうち2つは異なる色の部材で形成されていることになる。
また、図5からさらに変形し、マゼンタのサブタンク10を右側に配置してもよい。この場合はマゼンタ、イエロー、シアンの3つのサブタンク10が識別可能な色になっていればよい。つまり、複数のサブタンク10のうち3つは異なる色の部材で形成されていることになる。
【0060】
本発明は、インクジェット式プリンターとしての上記実施形態や変形例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
各実施形態において、流入流路8、流出流路20、導入流路21、大気連通路30を1本のチューブのように記載したが、特に1本には限定されない。途中に接続部材(継ぎ手)を用いて複数本のチューブを直列につないでもよい。
各実施形態において、サブタンク10に備えられた流入接続部11、流出接続部13、導入接続部15を、サブタンクから突出する突部とし、流入流路8、流出流路20、導入流路21を各突部に嵌めている。しかし、本願ではサブタンクと各流路が接続できていればよく、どのように接続するかは任意である。
【0061】
各実施形態において、ヘッド1の左側に流出流路20が接続し、ヘッド1の右側に導入流路21が接続している。しかし、本願ではヘッド1と、流出流路20および導入流路21がどのように接続するかは任意である。ヘッド1内での流路によって、様々な接続が可能であり、ノズル1aからインクを噴射できれば、接続の位置や向きは問題ない。
各実施形態において、ヘッド1を4色共通の1つのラインヘッドとしたが、各色ごとにヘッドを有してもよい、また、複数のヘッドを千鳥状に配置してラインヘッドのようにしてもよい。その場合は各ヘッドの流路を連結するのが望ましい。
図1、4において、メインタンク6の色の順番とサブタンク10の色の順番が異なるが、同じ色の順番としてもよい。メインタンク6とサブタンク10の色の順は任意である。図5においても同様である。
【0062】
上記実施例は、インクジェット式のプリンターが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
また、ここでいう液体とは、液体噴射ヘッドが噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。
【0063】
また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0064】
他の液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…ヘッド、3…紙(媒体)、6…メインタンク,8…流入流路、10…サブタンク、11…流入接続部、12…流入口、13…流出接続部、14…流出口、15…導入接続部、16…導入口、18…本体部、19…空間部、20…流出流路、21…導入流路、22…流出弁、23…供給制御弁、25…ポンプ、26…蓋部、27…溝、30…大気連通路、31…大気弁、32…気体透過部、35…フロート部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッドと、
前記液体を貯留し交換可能なメインタンクと、前記メインタンクと連通する流入流路と、前記流入流路と連通するサブタンクと、前記サブタンクと連通する流出流路と、を一組とする供給ユニットを複数有し、前記複数の供給ユニットは前記ヘッドに接続される液体噴射装置であって、
複数の前記サブタンクのうち少なくとも2つは異なる色の部材で形成されている液体噴射装置。
【請求項2】
前記異なる色は、視認による識別可能な色である請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
複数の前記サブタンクのうち少なくとも3つは異なる色の部材で形成されている請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
複数の前記サブタンクの全ては異なる色の部材で形成されている請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記サブタンクは、開口部を有する本体部と、前記開口部を覆う蓋部を有し、
少なくとも前記蓋部が異なる色である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記サブタンクは、開口部を有する本体部と、前記開口部を覆う蓋部を有し、
少なくとも前記本体部が異なる色である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記本体部には、前記流出流路と接続する流出接続部が備えられている請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記サブタンクの色は、その中に貯留する液体と同系色である請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記同系色の色は、視認により同じ色と認識可能な色である請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記一組の供給ユニットにおいて、少なくとも前記サブタンクと前記流出流路は同系色の部材で形成されている請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記一組の供給ユニットにおいて、前記流入流路、前記サブタンク、前記流出流路の全てが同系色の部材で形成されている請求項10に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記同系色の色は、視認により同じ色と認識可能な色である請求項11に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記流出流路は、途中に接続部材を介して分割され、前記接続部材と前記流出流路は同系色の部材である請求項12に記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記流出流路はチューブにより形成されている請求項13に記載の液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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