説明

液体塩化物の輸送方法

【課題】液体塩化物の輸送効率を高くできる輸送方法を提供する。
【解決手段】液体塩化物の充填・取出し可能な輸送袋1と、輸送袋1を荷役するための吊上げ部材6とからなり、輸送袋1は、液体塩化物に対する耐性と強靭性と折畳み可能な柔軟性とを有しており、荷役時には、輸送袋1を吊上げ部材6に入れて行い、輸送時には、輸送袋1のみを、輸送船や陸上輸送手段に積載する。鋼製のタンクやポンプ、配管等に直接接触しないので、これらの設備の腐食やひび割れ等を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塩化物の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体塩化物とは、塩素を含む化合物で液体状のものをいう。このような液体塩化物の一種に、脱臭素苦汁があり、これは苦汁から臭素を取り除いたものであって、塩化マグネシウムに分類される。ただし、脱臭素苦汁以外の液体塩化物にも本発明は適用される。
以上のような液体塩化物は、ステンレス鋼等の鋼材を腐食させたり、ひび割れを発生させやすい性質があるため、タンカー、タンクローリ、荷役用タンク設備の利用を敬遠される。なお、FRPでタンク内部をライニング処理した専用船も存在するが、数が少ないため、手配が困難である。
【0003】
上記の事情から、液体塩化物の輸送には、つぎのような問題がある。
1)液体塩化物の輸送が可能なケミカルタンカーの数が少ないため、手配が困難であり、納入先(化学製品メーカー)への製品の安定供給が困難であること。
2)ケミカルタンカーのチャーター費用が高額であること。また、納入先の1回の受入ロットにタンカーの積載量が適合しないこと。
3)タンクローリー車は塩化物を輸送することを嫌うため、陸送手配が困難であること。
4)液体貨物取扱い専用港からでなければ積み出しが出来ないこと。また、専用港積出し用タンクは塩化物を入れられることを嫌うため、タンク手配が困難であること。
5)荷吊り可能なパッキングをしなければ一般貿易港から液体貨物の輸出ができないこと。
6)液体貨物の荷役設備のない港への輸送が必要であること。
7)高い既存の液体輸送用のコンテナを使用し、固体貨物用バラ積み船にて輸送する場合、液体輸送用コンテナ本体の価格が高額であること。
8)液体輸送用コンテナ返送する際の輸送効率が著しく悪いこと。
【0004】
ところで、液体貨物の海上輸送方法としては、特許文献1の従来技術がある。
この従来技術は、液体貨物を充填袋に収容し、その充填袋を輸送船の船倉に積載して輸送する方法である。また、その目的は、船体破損時の原油等の流出を防止することにある。
【0005】
したがって、上記従来技術は、液体塩化物に特有の上記諸問題について、解決できるものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−308179号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、液体塩化物の輸送効率を高くできる輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の液体塩化物の輸送方法は、液体塩化物の充填・取出し可能な輸送袋と、該輸送袋を荷役するための吊上げ部材とからなり、前記輸送袋は、液体塩化物に対する耐性と強靭性と折畳み可能な柔軟性とを有しており、荷役時には、輸送袋を吊上げ部材に入れて行い、輸送時には、輸送袋のみを、輸送船や陸上輸送手段に積載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
第1に、液体塩化物を輸送袋に充填して輸送するので、鋼製のタンクやポンプ、配管等に直接接触せず、これらの設備の腐食やひび割れ等を防止できる。このため、つぎの利点が生ずる。
1)ケミカルタンカーを使用せず、一般貨物船を使えるため、輸送費が安くなり、納入先への安定供給が可能となる。
2)液体貨物取扱い専用港を使用しないでも、一般貿易港での積出し、積降しが可能となる。
3)液体輸送用のコンテナやタンクを用いる必要がなく輸送費が安くなる。また、コンテナは返送する際も大きなスペースをとるので、輸送効率が悪い。
4)タンクローリを使わなくてよいので、陸上輸送が容易となる。
第2に、輸送袋と吊上げ部材とを別体としているので、吊上げ部材は荷役場所で使用する数だけあれば足り、輸送袋と共に移動しないので、経済的である。また、別体であるが故に、吊上げる部材は強度的に充分強いものを採用でき、荷役時の事故も防止しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の輸送方法に使用する輸送袋を吊上げ部材に入れた状態の斜視図である。図2の(A)図は輸送袋の斜視図、同(B)は吊上げ部材の斜視図である。図3は本発明の輸送方法(前半)の説明図である。図4は本発明の輸送方法(後半)の説明図である。
【0011】
図2の(A)図は液体塩化物の輸送袋1である。概ね四角い立方体状であるが、角や縁は丸みをもった形状にしてもよい。積込みの容積効率からは立方体に近い方がよく、強度確保の面からは球体に近い方がよいが、立方体から球体の間で、任意の形状を採用すればよい。
大きさは、とくに制限ないが、大きいほど荷役効率が高くなる。但し、余り大きすぎると人手によって動かし難い。そこで、一辺が1m前後が扱いやすいのであるが、それより小さくても大きくてもよい。なお、トラックとかタンカーの荷室に納まりやすい外形寸法にすると、より輸送効率が高くなる。
【0012】
この輸送袋1には、液体塩化物の充填用のバルブ2と取出し用のバルブ3が取付けられる。これらのバルブ2,3は水密性と開閉の容易さがあれば、どのようなバルブを用いてもよい。
【0013】
輸送袋1の材料は、液体塩化物に対する耐性を有することが必須である。
また、輸送の便宜を考えると、つぎの条件を満たすことも重要である。
1)折畳みが可能な柔軟性があること
2)耐圧性に優れていること
3)耐摩耗性に優れていること
4)軽量であること(持ち運びが可能な重量)
5)気密性に優れること
これらの条件を満たす材料であれば、どのような材料を用いてもよい。
【0014】
図2の(B)図は吊上げ部材6である。この吊上げ部材6は、前記輸送袋1を入れて吊上げる機能を有していればよい。このため、輸送袋1より多少大きい寸法に作られる。図示のような紐を格子状に組んだものでもよく、袋状のものでもよい。要は、輸送袋1を支える支持部材7と引掛ける引掛け部分8があればよい。
【0015】
図1は液体塩化物を充填した輸送袋1を吊上げ部材6に収容した状態を示している。この状態で、引掛け部分8をクレーンフックF等に引掛けると、機械力による荷役ができる。
なお、複数個の吊上げ部材6の引掛け部分8にワイヤー等を通して、そのワイヤー等をクレーンフックFに引掛けると、一度に複数個の輸送袋1を吊上げることができる。
【0016】
第2に、輸送袋と吊上げ部材とを別体としているので、吊上げ部材は荷役場所で使用する数だけあれば足り、輸送袋と共に移動しないので、経済的である。また、別体であるが故に、吊上げる部材は強度的に充分強いものを採用でき、荷役時の事故も防止しやすい。
【0017】
つぎに、図3および図4に基づき、本発明の輸送方法の一例を説明する。
A)輸出側メーカーの貨物出荷
輸送袋1に液体塩化物を充填しておき、これをフォークリフトやクレーン等の任意の荷役手段で、トラックや鉄道等の陸上輸送手段に積み込む。
B)陸上輸送
トラックや貨車で輸送する。タンクローリを用いる必要がないので、手配が容易であり費用も安くつく。
【0018】
C)輸出港荷役
港湾でトラック等から輸送船に輸送袋1を積み込む。このとき吊上げ部材6を使用すると、クレーン等の機械力を使用できるので能率がよい。
輸送船は一般のバラ積み船でよく、手配が容易で費用も安くなる。港湾も液体貨物専用港である必要はなく、一般貿易港が使えるので、選択の範囲が広い。
D)バラ積み船による海上輸送
ケミカルタンカーを使う必要がなく、一般バラ積み船を用いるので、費用が安くなる。また、積載量は輸送袋1の数を加減することで、任意に調整することができる。
【0019】
E)輸入港での荷役
前記C)と同様に効率よく荷役ができる。
F)陸上輸送
前記B)と同様に安価に行える。
G)輸入側メーカーの荷役
前記A)と同様
H)納入完了
輸入メーカーは、自社内で液体塩化物をバルブ2,3を開閉して取り出す。
【0020】
I)液体貨物搬送用容器10
液体塩化物を抜き取ったあとの空の輸送袋1は、折畳み、数枚分をまとめて、専用の搬送用容器10に入れ、返送の準備をする。
J)返送用容器のコンテナ積込み
フォークリフト等の任意の荷役手段で行う。輸送袋1は小さく折畳まれコンテナに収容されているので、輸送効率は高くなる。
K)陸上輸送
陸上輸送も任意のトラック便が使える。
L)コンテナ船海上輸送
一般のコンテナ船が使えるので、船価が安くなる。
M)陸上輸送
前記K)と同様
【0021】
N)輸入メーカー着
フォークリフト等で荷降しをする。
O)出荷準備
再び輸送袋1に液体塩化物を充填すると、出荷できる。
【0022】
本発明の輸送方法の利点をまとめると、以下のとおりである。
1)比較的手配が容易である固体貨物用バラ積み船による海上輸送を行える。
2)輸出側、輸入側共に固体貨物と同様、クレーンにて港湾荷役を行える。
3)輸出側、輸入側共に陸上輸送を固体貨物用トラックにて行える。
4)容器については、小さく折畳むことが可能であるから、返送時の輸送効率が高い。
5)クレーンでの荷役作業が可能であるから、荷役効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の輸送方法に使用する輸送袋を吊上げ部材に入れた状態の斜視図である。
【図2】(A)図は輸送袋の斜視図、(B)は吊上げ部材の斜視図である。
【図3】本発明の輸送方法(前半)の説明図である。
【図4】本発明の輸送方法(後半)の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 輸送袋
6 吊上げ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体塩化物の充填・取出し可能な輸送袋と、
該輸送袋を荷役するための吊上げ部材とからなり、
前記輸送袋は、液体塩化物に対する耐性と強靭性と折畳み可能な柔軟性とを有しており、
荷役時には、輸送袋を吊上げ部材に入れて行い、
輸送時には、輸送袋のみを、輸送船や陸上輸送手段に積載する
ことを特徴とする液体塩化物の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−30912(P2007−30912A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215228(P2005−215228)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(505282798)日豊産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】