説明

液面状態検出装置、自動分析装置および液面状態検出方法

【課題】コンタミネーションの発生を抑制することができ、液状物質における気泡等の液面状態の検出具合の正確性を増大させることができる液面状態検出装置および自動分析装置、液面状態検出方法を提供する。
【解決手段】液状物質1010が収納された容器101および液状物質1010の液面に対して光を照射する光照射部102と、光照射部102が照射した容器101および液状物質1010からの光の色情報を少なくとも有する映像を取得する撮影部103と、撮影部103で撮影した映像の中の色情報を用いて液面の状態を検出する検出部104とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体などの液状物質の液面又は/及び液体内の泡の有無などを検出する液面状態検出装置、自動分析装置および液面状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野をはじめとして各種の自動分析装置が提案されている。この自動分析装置とは、一般的に、血液や尿等の生体試料を試薬と混合して反応液を自動測定することにより試料の被検項目を分析するものである。
【0003】
特に、生体試料と試薬の混合は、試料容器,試薬容器のそれぞれからの試料,試薬を、分注装置(分注プローブ)等を用いて必要量を吸引分取し、反応容器に供給して反応させるのが一般的である。
【0004】
分取するとき、分取対象の試料や試薬の液体に分注プローブの先端を入れるが、深く入れるほどプローブ外壁へ液体が付着し、異なる試料間や試薬間でのコンタミネーションが大きくなってしまう。そのため、分注プローブの先端をわずかにのみ入れるために液面の高さを検知し、その高さに合わせて分注プローブの位置制御を行っている。
【0005】
この液面の高さを検知する技術に関して、液面上に気泡が発生している場合には気泡の表面を液面の高さと誤認して吸引に失敗する問題が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1では気泡を検知して対処する方法の検討例が示されている。一方、液体表面上ではなく透明物体中の気泡の検出方法として、特許文献2では検査対象の上部斜め方向から照明を当ててカメラで撮像した際の検査画像に対して、明るさ(輝度)を用いて気泡の二次元外形や上下位置を計測する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−271328号公報
【特許文献2】特開平4−359106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の検討例では、プローブ先端が液体に触れたのか、気泡に触れたのかを所定の接触信号、離脱信号により検出するにあたって、プローブの動作を複雑にしなければならないという問題があった。また、接触信号、離脱信号等の電気信号を液面検知回路に送るというセンサ等が具体的にどのようなものか示されておらず、気泡の検知のための「接触信号」や「離脱信号」もいかにして得られるのか、そしてその性能も不明であり、気泡検知方法についての記載が不十分である。
【0009】
また、特許文献2に記載の検出方法では、物体が透明でなければ気泡を検出できず、しかも、明るさ(輝度)を用いる手法では、液体の場合は容器からの反射光がないなど、ごく限られた撮像条件のもとでなければ正確性に欠けるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、コンタミネーションの発生を抑制することができ、液状物質における気泡等の液面状態の検出具合の正確性を増大させることができる液面状態検出装置および自動分析装置、液面状態検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面に対して光を照射する光照射部と、該光照射部が照射した前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を撮影する撮影部と、該撮影部で撮影した映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する検出部とを有する液面状態検出装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面に対して光を照射する光照射部と、該光照射部が照射した前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を撮影する撮影部と、該撮影部で撮影した映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する検出部とを有する自動分析装置が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の態様によれば、容器および該容器に収納された液状物質の液面に対して光を照射し、前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を撮影し、該映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する液面状態検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液面状態検出装置、自動分析装置および液面状態検出方法によれば、コンタミネーションの発生を抑制することができ、液状物質における気泡等の液面状態の検出具合の正確性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出装置の構成図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法のフローチャート図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で画像情報を取得した際を説明する図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で画像にマスクした際を説明する図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で照明色の領域を抽出した際を説明する図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で照明色の領域を計数した際を説明する図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る液面状態検出装置が撮影した液状物質に気泡がないときの映像を説明する図である。
【図8】液状物質に気泡がないときの映像を第二の実施形態に係る液面状態検出方法で照明色領域を計数した際を説明する図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係る自動分析装置の概略図である。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る液面状態検出装置における画像処理装置の構成図である。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る液面状態検出装置が撮影した映像内の気泡が小さい場合を説明する図である。
【図12】本発明の第二の実施形態に係る液面状態検出装置が撮影した映像内の気泡が大きい場合を説明する図である。
【図13】本発明の第三の実施形態に係る液面状態検出装置における画像処理装置の構成図である。
【図14】本発明の第三の実施形態に係る液面状態検出装置が撮影した映像内の映り込んだ照明の形状が歪んでいる場合を説明する図である。
【図15】本発明の第三の実施形態に係る試験管と液状物質、単一膜の図である。
【図16】図3の画像情報を取得した際の試験管と試験管内部の様子を示す図である。
【図17】図16の状態の試験管と液面付近の断面図である。
【図18】本発明の第四の実施形態に係るリング照明の図である。
【図19】本発明の第四の実施形態に係る液面状態検出装置における画像処理装置の構成図である。
【図20】本発明の第四の実施形態に係る液面状態検出装置が撮影した映像内に気泡がある箇所と無い箇所それぞれがある場合を説明する図である。
【図21】凹面鏡に倒立像が映る様子を説明する図である。
【図22】凸面鏡に正立像が映る様子を説明する図である。
【図23】リング形状の一部が欠けた照明射出部からの照明光が試験管内部の液面を照らす様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明の第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態を図面に即して説明する。なお、この実施形態は例示として挙げるものであり、これにより本発明を限定的に解釈するものではない。
【0017】
まず、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出装置について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出装置の構成図である。
【0019】
本実施形態に係る液面状態検出装置は、図1に示されているように、液状物質1010が、容器としての試験管101に収納されている。
【0020】
試験管101は、各種樹脂材料や各種ガラス材料などから構成された実質的に透明な上下方向に細長い有底筒状であって、円筒状あるいはテーパ状の容器である。なお、液状物質1010としては、血液や尿等の生体試料、試薬、当該生体試料と試薬とを混合した混合液、これらが反応した反応液等が挙げられる。
【0021】
試験管101は、試験管保持部1011に保持されている。なお、試験管101が、試験管保持部(試験管ホルダ)1011に保持された状態でなくても、例えば、試験管101単独で本発明の液面状態検出装置にて、液面状態を検出することができる。試験管101の上方には、試験管101と、試験管101内に収納された液状物質1010の液面に対して光を照射する光照射部としての照明102が設けられている。
【0022】
照明102は、一般に「リング照明」と呼ばれるもので、中空部1021を有し、リング状に複数の白色LED(青色発光ダイオードなどに蛍光体を組み合わせた疑似白色)を密に配して構成されている。
【0023】
照明102の上方には、試験管101および試験管101内に収納された液状物質1010からの光の色情報を少なくとも有する映像(以下、画像とも言う。)を撮影する撮影部としてのカメラ103が設けられている。
【0024】
カメラ103のレンズ1031は、照明102の中空部1021に配置され、この中空部1021から下方が覗きこめるように構成されている。
【0025】
カメラ103は、少なくとも光の色情報を少なくとも有する映像を撮影するものであり、例えば、カラー映像を撮影できるカメラとして、CCDやCMOSイメージセンサを応用したもので構成されている。カメラ103には、カメラ103が撮影した映像の中の色情報を用いて液面の状態を検出する検出部としての画像処理装置104が電気的に接続されている。
【0026】
画像処理装置104は、例えば、マイクロプロセッサやメモリ等で構成されたコンピュータとして構成されている。
【0027】
画像処理装置104には、不要な周辺領域の色情報を取り除いて信頼性を上げるため、中央の容器の内部のみに検出範囲を設定しマスク処理可能に構成されるマスク処理部としてのマスク処理手段1041が設けられている。
【0028】
さらに、画像処理装置104には、液体表面で鏡面反射している照明色の領域を、照明色に対応する予め定めた色相の所定範囲で画素を選択する色相選択部としての色相選択手段1042が設けられている。
【0029】
色相選択手段1042は、試験管101または、液状物質1011の液面からの鏡面反射でなく試験管101の底部で反射した光も撮影されることが多々あるが、このような反射光は液状物質1011の色成分に染まるため、鏡面反射のものとは色合い(色相)が異なり、区別することができる。例えば、青色発光ダイオードと蛍光体による一般的な疑似白色LED照明の色は純白ではなく青白いものである。液状物質としての血液成分や尿の色あい(赤〜黄)と異なることを利用する。
【0030】
なお、画像処理で具体的に照明色の領域を抽出する方法は、照明色に対応する予め定めた色相(Hue)の範囲の画素を選択する方法以外に、RGB[赤緑青]の値の範囲で選択する方法など、他の表色法の値によっても可能である。
【0031】
さらに、画像処理装置104には、カメラ103が撮影した映像の中の色情報を用いて照明色の領域を計数する計数部としての計数手段1043が設けられている。
【0032】
さらに、画像処理装置104には、計数手段1043が計数した所定の色領域の数が1より大きいか否かを判定する判定部としての判定手段1044が設けられている。
【0033】
判定手段1044は、所定の色領域の数が1より大きい場合に、気泡が発生していると判定し、所定の色領域の数が1より大きい場合に、気泡が発生していないと判定するように構成されている。
【0034】
画像処理装置104には、カメラ103が撮影した光の色情報を少なくとも有する映像や、当該映像を処理した処理結果等を記憶する記憶部としての記憶装置105が電気的に接続されている。
【0035】
記憶装置105は、例えば、ハードディクやフラッシュメモリなどで構成されている。
【0036】
また、画像処理装置104には、その他の装置、機器等の入出力部と電気的に接続可能なようにインタフェース部としてのインタフェース装置106が接続されている。
【0037】
また、画像処理装置104には、カメラ103が撮影した光の色情報を少なくとも有する映像や、当該映像を処理した処理結果等を表示する表示部としての表示装置107が電気的に接続されている。
【0038】
表示装置107は、例えば、液晶モニタ等で構成されている。
【0039】
また、画像処理装置104には、画像処理装置104に対し、外部から情報を入力可能なように入力部としての入力装置108が電気的に接続されている。
【0040】
入力装置108は、例えば、キーボードやマウス等で構成されている。
【0041】
なお、検出部としての画像処理装置104と、記憶装置105、インタフェース装置106、表示装置107、入力装置108とは、個別の装置であるように説明したが、それぞれが個別の装置として構成されていても、全部、または一部が一体として構成されていても良い。例えば、画像処理装置104と、記憶装置105、インタフェース装置106、表示装置107、入力装置108全部、または一部が一体として検出部として構成されても良い。
【0042】
本発明の一実施形態においては、照明102とカメラ103は、試験管101の液面に対して垂直上方の方向に設置して、照明の光が液面で鏡面反射してカメラで撮像できるように構成されている。照明自身の鏡面反射による映り込みを避けるため、例えば、特許文献2のように上部斜め方向から照明を当てたりすることが一般的な手法だが、本発明の一実施形態においては照明102の映り込みを積極的に利用することに一つの特徴を有する。カメラ103は、画像処理装置104に接続し、撮影した画像情報を画像処理装置104で処理することができるものである。また、画像処理装置104は記憶装置105に接続して撮影した画像情報や処理結果を格納することができるものである。また、処理の過程や記憶装置105に格納した情報を表示装置107に表示することができる。さらに、入力装置108は画像処理装置104の調整設定や実行指示に用いることができるものである。
【0043】
次に、上述の液面状態検出装置100により実施される液面状態検出工程の一例としての気泡検出工程を、図2〜図6に沿って簡単に説明する。
【0044】
以下の説明において、液面状態検出装置の各部の動作は画像処理装置104によって制御される。図2は図1に示した画像処理装置104が実施する気泡検知処理を示すフローチャート図である。図3は、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で画像情報取得した際の図である。図4は、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で画像にマスク処理した際の図である。図5は、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で照明色の領域を抽出した際の図である。図6は、本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出方法で照明色の領域を計数した際の模式図である。
【0045】
図2に示すように、最初に、カメラ103が撮影した、試験管101および試験管101内に収納された液状物質1010からの反射光等の光の色情報を少なくとも有する画像情報を画像処理装置104が取得する。(S201)
【0046】
なお、(S201)を開始するにあたって、試験官101および試験管101に収納された液状物質1010の液面に対して照明102が光を照射した状態であって、カメラ103が、試験管101および試験管101内に収納された液状物質1010からの反射光等の光の色情報を少なくとも有する映像情報を撮影している状態で実施される(S200)。次に、不要な周辺領域の情報を取り除いて信頼性を上げるため、マスク処理部としてのマスク処理手段1041が、中央の容器の内部のみに検出範囲(有効範囲ともいう)を設定し不要な領域の色相を無効にするマスク処理を行う。(S202)
【0047】
具体的には、ここでのマスク処理とは照明色の色相と異なる一定値で不要領域を埋める処理であり、不要領域を照明色の色相とは異なる色相に変える処理である。例えば、照明色が橙色の時に、緑色に対応する情報で埋めれば良い。不要な領域を埋めることによって、隣り合う試験管が複数同時に撮影されても良く、また撮影時点での色合いは試験管保持部1011など周辺の部品については考慮する必要がなくなる。
【0048】
なお、設定する検出範囲はカメラ103が撮影する時点で、対象とする試験管101が画像内の中央位置など予定した場所にあるようにすれば、中央位置の座標と試験管の内径から決定できるものである。もし撮影する時点での試験管101の位置を正確に固定できない状況であれば、試験管101の丸い形状や、液状物質1010の液面の丸い色のありかを画像で検知することによって画像内の位置を求めることができる。
【0049】
次に、色相選択部としての色相選択手段1042が、液体表面で鏡面反射して映り込んでいる照明色の領域を抽出する。(S203)
【0050】
具体的に照明色の領域を抽出する方法は、前述のように照明色に対応するあらかじめ定めた色相(Hue)の範囲の画素を選択する方法である。撮影した画像の各画素の色相を算出し、その値があらかじめ定めた色相の所定範囲にあれば有効画素として選択する。
【0051】
色相によって照明色の領域を選ぶ方法は試験管101の底部で反射した光と区別しやすいだけではない。カメラや照明から液面までの距離の違いによって、映り込んだ照明の輝度は変化してしまうが、色相によって選択すれば、距離に関わらずに液体表面で鏡面反射した照明を選択できる。
【0052】
次に、計数手段1043が、色相選択手段1042によって選択された照明色の領域の数を計数する。(S204)
【0053】
照明色の領域の数とは画素数や面積ではない。S203で選択した画素の集合で、画像内で互いに接することなく孤立した領域の数である。
【0054】
具体的には画像処理技術において一般に知られる「ラべリング(Labeling,Image-labeling)」の処理手順によって実現できる。カメラから液面までの距離の違いや気泡の大きさによって映り込んだ照明の大きさは変化するが、領域の数に基づけばそれらの影響を受けることはない。
【0055】
最後に、判定手段1044が、計数手段1043によって得られた照明色の領域数が1より大きいか、を判定する。(S205)
【0056】
判定手段1044は、照明色の領域数が1より大きい場合に、気泡が発生していると判定(S207)し、照明色の領域数が1以下の場合に、気泡が発生していないと判定する(S206)。
【0057】
気泡がない場合は液体表面に照明が1つ映り込むだけだが、気泡が発生している場合は液体の表面だけでなく、気泡の一つ一つの各表面に照明が映りこんで数が増えるため、このような方法で気泡の有無を判定できる。
【0058】
図3は、(S201)において、取得した画像である。液面に2つの気泡が浮いている場合のものである。
【0059】
図3に示されているように、中央の試験管の内部では液状物質の液面に2つの気泡の形や照明の映り込みがあることがわかる。中空のリング照明であるため、照明の映り込みも中空の丸い形になる。
【0060】
図16は図3の画像が得られた時の中央の試験管101の様子を斜め上方から見たときの図である。液状物質1010の上部液面に気泡161が浮かんでいる状態である。このときの液面付近の拡大断面図が図17である。液面160に気泡161が浮いているとき、気泡がない場所は縁の付近が盛り上がって凹面を成す。一方、気泡161の上部表面は凸面をなす。凹面、凸面のそれぞれが凹面鏡、凸面鏡の作用を生じる。そのため撮影した時に、気泡がない凹面には一つの照明の形が映り込む(170)。一方、一つの気泡の上部の凸表面には一つの照明の形が映り込む(171)。
【0061】
図4は、(S202)において、マスク処理された後の画像である。図4に示されているように、左右端に隣り合って並んでいた試験管や試験管保持部の情報を無効にしていることがわかる。
【0062】
図5は、(S203)において、色相の所定範囲で画素を選択した領域抽出後の画像を示す。
【0063】
図5に示されているように、液体の色味を帯びた気泡の輪郭や液体の縁付近の情報などは除き、照明の鏡面反射による映り込み領域だけを抽出したことがわかる。
【0064】
図6は、(S204)において、計数手段1043が照明色の領域を計数した後の模式図を示す。(模式的に示したもので画像に数字を書き込む必要はない。)
【0065】
図6に示されているように、領域の計数状況として、照明色領域を3つと数えたことを表現している。
【0066】
一方、(S201)において、気泡が発生していない場合に取得した画像を図7に示す。
【0067】
図7に示されているように、液状物質の液面に1つだけ照明の形が映り込んでいることがわかる。
【0068】
また、図2と同様の一連の処理を行い、気泡が発生していない場合の(S204)において、計数手段1043が照明色の領域を計数後の模式図を図8に示す。図8に示されている通り計数した数は‘1’となる。それ故、判定手段1044が気泡は無いと判断することができる。
【0069】
次に、本発明の第一の実施形態に係る自動分析装置を説明する。図7は、本発明の第一の実施形態に係る自動分析装置の概略図である。
【0070】
なお、ここでは、特に、自動分析装置として、血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を自動で行う自動分析装置に係わり、一方の容器から他方の容器へ分注プローブにより液体を分注する機能を備えた自動分析装置について説明する。自動分析装置501には試薬ディスク502、反応ディスク503、分注プローブ504と505、攪拌装置506、光度計512、搬送機構513が配置されている。
【0071】
試薬ディスク502は回転自在で円周状に複数の試薬の容器を備える。同様に反応ディスク503には複数の反応容器を備える。搬送機構513は複数の試料容器(101)を納めた試料ホルダ510、511を搬送している。分注プローブ504は回転と上下動が可能であり、所定の位置に運ばれた試料ホルダ511の試料を反応ディスク503の反応容器に分注する。分注プローブ505も回転と上下動が可能であり、試薬ディスク502の試薬を反応ディスク503の反応容器に分注する。攪拌装置506は反応容器内の混合液を攪拌する。光度計512は攪拌後の混合液を分析する。
【0072】
本発明の第一の実施形態に係る液面状態検出装置におけるカメラ103や照明102は搬送機構の上部(508)や試料ディスクの上部(507)に設置し、それぞれ分注を行う前に容器内の液体の気泡の発生を検知する。表示装置107や入力装置108は装置の外部に設置するが、他の構成要素は装置の内部に設置する。
【0073】
また、本発明の拡張として、反応ディスク503の上部(509)に設置し、液面を撮影して、分注後や攪拌後の異常を検知しても良い。
【0074】
本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す(a)〜(f)のうち一つ又は複数の効果を奏する。
(a)液状物質と非接触状態にて撮影部が撮影した映像につき、当該映像の中の色情報を用いて液面の状態を検出することができるので、コンタミネーションの発生を抑制することができ、また、液状物質における気泡等の液面状態の検出具合の正確性を増大させることができる。
(b)試験管内の液状物質の液面に対して垂直上方の方向に設置した照明とカラーカメラを用いて画像処理により正確に気泡を検出することができる。
(c)試験管のような細長い形状のものを液体の容器に用いることができ、また、それらを密に並べ、スペース確保が難しい装置にも設置することができる。
(d)自動分析装置に用いることで、試料や試薬の分注精度を高めることができ、最終的に装置の分析精度を向上できる。
(e)輝度情報を用いて検出する場合と異なり、液体容器の底面反射の影響や対象物とカメラ、照明との距離について高いロバスト性を備える。
(f)本発明により、容器の液面上の気泡の有無を検知でき、また、気泡が発生していたときには時間をおくなどして気泡を解消させた後に正しく液面の高さ検知を行うことができる。
【0075】
<本発明の第二の実施形態>
以下に、本発明の第二の実施形態について図10〜図12を参照しながら説明する。
【0076】
図10に示されている通り、上述した本発明の第一の実施形態と構成としては、ほぼ同様であり、異なる点としては、画像処理装置10401が、マスク処理手段1041、色相選択手段1042、計数手段1043、判定手段1044に加え、液面の状態の一つである液面高さを検出する液面高さ検出部としての液面高さ検出手段1045を備えている点であり、その他は同様である。
【0077】
判定手段1044が気泡は無いと判断した時に、液面高さ検出手段1045は、液面上に映り込んだ照明のサイズ(外周の上下長や左右幅)を基に液面高さを判断する。
【0078】
液面高さ検出手段1045は、予め設定された照明色の領域サイズよりも、照明色の領域サイズが小さい場合には、予め設定された液面高さよりも低いと判断し、予め設定された照明色の領域サイズよりも、照明色の領域サイズが大きい場合には、予め設定された液面高さよりも高いと判断する。一方、予め設定された照明色の領域サイズと、照明色の領域サイズが同じである場合には、予め設定された液面高さと同様であると判断する。
【0079】
図11に、液面高さ検出手段1045が予め設定された液面高さよりも低いと判断する場合の照明色の領域を抽出した後の画像を示す。
【0080】
図12に、液面高さ検出手段1045が予め設定された液面高さよりも高いと判断する場合の照明色の領域を抽出した後の画像を示す。
【0081】
図11、図12からも照明がカメラから遠くにあるように映るため照明色の領域は小さくなり液面が高いときはカメラから近くにあるように映るため照明色の領域は大きくなることがわかる。
【0082】
本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、第一実施形態に記載の効果、若しくは、以下に示す(a),(b)のうち一つ又は複数の効果を奏する。
(a)取得した画像から照明色の領域サイズを計測することによって、液面の高さを知ることができる。この情報を利用することで液面状態の検知の信頼性をより一層高めることができる。
(b)液状物質と非接触状態にて撮影部が撮影した映像につき、当該映像の中の色情報を用いて液面の高さを検出することができるので、コンタミネーションの発生を抑制することができる。なお、液面高さ検出手段1045に代えて、単に抽出した照明色の領域の大きさを計測する照明色の領域サイズ検出部としての領域サイズ検出手段を備えるようにしても良い。
【0083】
<本発明の第三の実施形態>
以下に、本発明の第三の実施形態について図13、図14を参照しながら説明する。
【0084】
図13に示されている通り、上述した本発明の第一の実施形態と構成としては、ほぼ同様であり、異なる点としては、画像処理装置10402が、マスク処理手段1041、色相選択手段1042、計数手段1043、判定手段1044に加え、液面の状態の一つとして液面の均衡状態を検出する均衡状態検出部としての均衡状態検出手段1046を備えている点であり、その他は同様である。
【0085】
判定手段1044が気泡は無いと判断した時に、均衡状態検出手段1046は、液面上に映り込んだ照明の形状を基に液面の均衡状態を判断する。
【0086】
均衡状態検出手段1046は、予め設定された照明色の領域の形状に比べ、照明色の領域が変形している場合には、凝固などによる液面不均衡であると判断する。一方、予め設定された照明色の領域の形状と、照明色の領域の形状が同じである場合には、均衡状態は正常であると判断する。
【0087】
図14に、均衡状態検出手段1046が予め設定された照明色の領域の形状に比べ、変形している場合の照明色の領域を抽出した後の画像を示す。
【0088】
また、液面の稀な異常ケースとして、液面上部に単一膜が形成される可能性がある。図15に、単一膜が形成された場合の様子を示す。液状物質1010が、試験管101に収納されていて、液状物質1010上部の液面151より、高い位置に単一の膜150が形成されている。液面151と単一膜150の間には液状物質1010はなく、大気が納まっている。このような場合にも、判定手段1044が気泡は無いと判断するが、均衡状態検出手段1046は、単一膜150の表面に映り込んだ照明の形状を基に単一膜150のわずかな不均衡状態を判断し、すなわち単一膜形成の異常を検知できる。
【0089】
本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、第一の実施形態、第二の実施形態に記載の効果、若しくは、以下に示す(a),(b)のうち一つ又は複数の効果を奏する。
(a)照明色の領域のサイズを取得した画像から計測することによって、凝固などによる液面不均衡を知ることができる。この情報を利用することで液面異常を検知することができ、液面状態の検知の信頼性をより一層高めることができる。
(b)液面不均衡だけではなく、単一膜が形成された場合の異常も検知することができる。なお、均衡状態検出手段1046に代えて、単に抽出した照明色の領域の形状を計測する照明色の領域形状検出部としての領域形状検出手段を備えるようにしても良い。
【0090】
<本発明の第四の実施形態>
以下に、本発明の第四の実施形態について図18〜図23を参照しながら説明する。
【0091】
図18は上述した本発明の第一の実施形態と同様のリング照明102である。ただし、遮光部1800を備え、リング形状の照明射出部の一部分を覆う。これによって、液面や気泡の上部に映り込む形もリングの一部が欠けたものになる。
【0092】
図17で示したように気泡のない液面では凹面鏡の作用で照明が映り込む。このため映り込んだ照明の映像は倒立像になる。一方、気泡の上部表面では凸面鏡の作用であり倒立像にはならない。このような物理現象の利用により、気泡がある場合に、リング形状の欠けた方向を見れば気泡の所在位置、非所在位置を判定することができる。
【0093】
画像処理装置については図19に示されている通り、上述した本発明の第一の実施形態と構成としては、ほぼ同様であり、異なる点としては、画像処理装置10403が、マスク処理手段1041、色相選択手段1042、計数手段1043、判定手段1044に加え、気泡か液面かを判別する気泡判別部としての気泡判別手段1047を備えている点であり、その他は同様である。
【0094】
判定手段1044が、気泡があると判断した時に、気泡判別手段1047は、各々の映り込んだ照明のリング形状の欠け方向を基に気泡か液面かを判別する。気泡判別手段1047は、照明色の領域のリング形状が倒立して下方にて欠けている場合には、気泡の無い液面での映り込みと判断し、照明色の領域のリング形状が上方にて欠けている場合には、気泡の表面での映り込みと判断する。
【0095】
図20に、気泡判別手段1047が気泡の無い液面での映り込みと気泡の表面での映り込みの両者一つずつを判別する場合の、照明色の領域を抽出した後の画像を示す。
【0096】
図20からも照明の欠けたリング形状が倒立して映り込んだ箇所は気泡が無い箇所であり、倒立せずに映り込んだ箇所は気泡がある箇所であることがわかる。
【0097】
次に、図21〜図23を用いて、気泡判別手段1047が、気泡の表面での映り込気泡の無い液面での映り込みかを判断する際に利用する凹面鏡と凸面鏡の作用について補足説明する。
【0098】
図21は、人物2101が凹面鏡2102の前に立っている様子を示す。凹面鏡2102には人物2101が小さく映って見えるが、凹面鏡2102の焦点距離よりも離れた距離で人物2101が立っていれば、人物像2103は上下が逆になった倒立像(180°回転)になる。
【0099】
図22は、人物2101が凸面鏡2201の前に立っている様子を示す。凸面鏡2201には人物2101が小さく映って見えるが、凹面鏡2102の場合と異なり、人物像2202は上下が逆転することの無い正立鏡像(上下はそのままで左右が反転)になる。
【0100】
図21と図22で示した凹面鏡と凸面鏡の作用と同様の作用が液面で起きることを本実施形態は利用するものである。
【0101】
図23はリング形状の一部が欠けた照明射出部2301からの照明光が試験管101の内部の液面2303を照らしている様子を示すものである。液面2303に気泡2305が存在している。気泡が無い液面には凹面鏡と同様の作用で照明射出部2301の倒立像2304が映り、気泡2305の表面には凸面鏡の作用と同様の作用で照明射出部2301の正立鏡像2306が映る。
【0102】
本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、第一〜第三の実施形態に記載の効果、若しくは、以下に示す(a),(b)のうち一つ又は複数の効果を奏する。
(a)取得した画像から照明色の領域形状を計測することによって、気泡の所在する位置、所在しない位置を知ることができる。この情報を利用することで液面の気泡発生状況をより一層詳しく知ることができる。
(b)自動分析装置に用いることで、気泡が発生していても気泡が所在しない箇所であれば問題なく分注プローブを挿入することができるので、装置の処理スループットを向上できる。
【0103】
なお、リング照明の一部を遮蔽するのではなく、一部のLEDを消灯させる方法によっても良いし、一部のLEDを設置しない方法によっても良い。また、倒立像と非倒立像の違いが判別できれば良く、照明はリング形状ではなく例えばU字形、正五角形であっても良い。
【0104】
<本発明の更に他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0105】
例えば、照明の色は分析対象の液状物質としての液体にあてた際に鏡面反射光が異なる色合いとなって区別できるものであればよく、青色発光ダイオードと蛍光体によるLED照明に限定されるものではない。例えばRGBの3原色を発光・混合できるLEDを使用し、分析対象の液体の色合いに対して鏡面反射光の区別が容易な色合いに調整し、照明色領域抽出の際にはその調整した色合いに適合する範囲の色相を選択するよう設定すればよい。
【0106】
また、照明としては、リング型の照明に限定しない。リング型が照射方向に対して均等性があり最適と考えられるが、例えば中空部を有する四角型や六角型等多角型でもよい。また、上述した均等性を考慮する必要がない場合には、リング型、多角型の全部でなく、その一部に照明を設置するようにしても良いし、色合いが区別できるのであれば、豆電球、蛍光灯等の一般的な光照射機にて代用しても良い。
【0107】
また、マスク処理手段1041があったほうが、余計な映像を照明の映り込みと誤認しにくくなり、正確性が向上するため、設けたほうが良いが、設けなくても誤認の可能性がなく所望の目的を達成することができるのであれば、特に設けなくても良い。
【符号の説明】
【0108】
101 試験管
102 照明
103 カメラ
104 画像処理装置
105 記憶装置
106 インタフェース装置
107 表示装置
108 入力装置
501 自動分析装置
502 試薬ディスク
503 反応ディスク
504、505 分注プローブ
506 攪拌装置
507、508、509 カメラと照明
510、511 試料ホルダ
1010 液状物質
1021 中空部
1031 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面の状態を検出する液面状態検出装置であって、
液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面に対して光を照射する光照射部と、
該光照射部が照射した前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を取得する撮影部と、
該撮影部で撮影した映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する検出部とを有する液面状態検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として気泡の有無を検出する請求項1の液面状態検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として液面高さを検出する請求項1の液面状態検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として液面の均衡状態を検出する請求項1の液面状態検出装置。
【請求項5】
液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面の状態を検出する自動分析装置であって、
液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面に対して光を照射する光照射部と、
該光照射部が照射した前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を取得する撮影部と、
該撮影部で撮影した映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する検出部とを有する自動分析装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として気泡の有無を検出する請求項5の自動分析装置。
【請求項7】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として液面高さを検出する請求項5の自動分析装置。
【請求項8】
前記検出部は、
前記色情報を用いて前記液面の状態として液面の均衡状態を検出する請求項5の自動分析装置。
【請求項9】
液状物質が収納された容器および前記液状物質の液面の状態を検出する液面状態検出方法であって、
容器および該容器に収納された液状物質の液面に対して光を照射し、
前記容器および前記液状物質からの光の色情報を少なくとも有する映像を取得し、該映像の中の前記色情報を用いて前記液面の状態を検出する液面状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−88114(P2013−88114A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225437(P2011−225437)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】