説明

混合装置、流延ドープの製造方法及び溶液製膜方法

【課題】混合ムラ及び液漏れを防ぎつつ、添加剤液が添加された原料ドープの攪拌を行う。
【解決手段】ストックタンク51に貯留する原料ドープ14を、配管53へ通し、ダイナミックミキサ52へ送る。ダイナミックミキサ52は、中空部に原料ドープ14及び前記添加剤液が導入されるパイプと、パイプの中空部を貫通し、パイプの外で軸支された駆動軸と、パイプの両端部に設けられ液のシールをおこなうシール部と、駆動軸に設けられた攪拌羽とを有する。配管53には、上流側から順次、添加部57及びプレ混合部58が設けられる。添加部57には、原料ドープ14中で添加剤液を噴出するノズル70が配される。プレ混合部58には、液を分割混合するためのスタティックミキサが配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置、流延ドープの製造方法及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有する熱可塑性フィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である光学フィルム(例えば、位相差フィルムや偏光板保護フィルム等)に用いられている。
【0003】
このようなフィルムは、溶液製膜方法によりつくられる。溶液製膜方法は、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、流延ドープと称する)を流し、支持体上に流延膜を形成する。次に、流延膜が搬送可能になった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとする。そして、この湿潤フィルムを乾燥室へ送る。乾燥室では、湿潤フィルムをローラに巻きかけて搬送しながら、湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする。
【0004】
この溶液製膜方法では、製造しようとするフィルムの光学特性等に応じて、流延ドープの成分を適宜調節する。この流延ドープの成分の調節方法としては、ポリマー及び溶剤を含む原料ドープに所定の添加剤を加えることが知られている。
【0005】
特許文献1〜2には、原料ドープに所定の添加剤を含む液(以下、添加剤液と称する)を混合することにより、流延ドープをつくる方法が開示されている。更に、原料ドープに添加剤液を添加する方法として、原料ドープが流れる配管内に配されたノズルを用いて、原料ドープ中で添加剤液を添加する方法が開示されている。しかしながら、原料ドープに添加剤液を添加しただけでは、粘度比の大きい原料ドープ及び添加剤液は容易に混合しない。そこで、特許文献1〜2では、ミキサを用いて、添加剤液が添加された原料ドープを混合し、流延ドープをつくっている。
【0006】
このミキサは、ダイナミックミキサとスタティックミキサとに大別される。ダイナミックミキサは、攪拌羽を有する駆動軸の回転により、原料ドープ及び添加剤液を攪拌するものである。一方、スタティックミキサは、配管内に固定されたエレメントを用いて、原料ドープ及び添加剤液を分割し、または捻転するものである(特許文献1〜2)。
【0007】
ダイナミックミキサでは、駆動軸に起因する液のシーリングが問題となる。ミキサに送られる原料ドープや添加剤液には溶剤が含まれる。このため、ダイナミックミキサから原料ドープや添加剤液が外部に漏れてしまうと、溶剤を回収する設備を別途用意しなければならない。こうした経緯から、溶剤の漏れが懸念されるダイナミックミキサは敬遠され、溶剤の漏れが起こらないスタティックミキサが流延ドープの調製用のミキサとして用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−283762号公報
【特許文献2】特開2010−100042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年の技術開発により、TN方式やVA方式などさまざま方式の液晶表示装置が登場している。これに伴い、各方式の液晶表示装置に応じた光学フィルムが求められるようになった。したがって、多品種のフィルムを効率よく製造することのできる製造方法の確立が求められている。
【0010】
スタティックミキサでは、配管内におけるエレメントの数、配置方法等の各条件(以下、攪拌条件と称する)を調整して、攪拌の最適化が行われる。したがって、スタティックミキサを用いる場合には、原料ドープや添加剤液の組成が変更される度に、混合の最適化のための調整を行わなければならない。この結果として、多品種のフィルムを効率よく製造することができない。
【0011】
また、光学フィルムの多品種化により、添加剤液に含まれる添加剤として、様々な化合物が用いられるようになり、更に、原料ドープに対する添加量が従前に比べ高くなるケースが多くなった。このようなケースにおいて、従来のスタティックミキサによる捻転や分割のみを行っても、十分に混合させることができない。
【0012】
こうした背景から、原料ドープ及び添加剤液の混合のために、ダイナミックミキサを用いることが検討されている。しかしながら、原料ドープ及び添加剤液の混合のために、ダイナミックミキサを用いた場合には、前述した溶剤等の漏れに加えて、ダイナミックミキサから送り出された液において、混合ムラが生じていた。溶液製膜方法において混合ムラの生じた液をそのまま用いると、製造されたフィルムの光学特性や機械特性にムラが生じてしまう結果、均質なフィルムを製造することができない。
【0013】
発明者は、鋭意検討の結果、この原料ドープ等の漏れの問題及び混合ムラの問題が、いずれも、原料ドープへ添加剤液を添加する工程、及び添加剤液が添加された原料ドープを攪拌する工程に起因することをつきとめた。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、溶剤の漏れを防ぎつつ、原料ドープと添加剤液とを均一に効率よく混合して、流延ドープをつくる混合装置及び流延ドープの製造方法を提供するものである。更に、本発明は、多品種のフィルムを、品質を落とさずに製造することができる溶液製膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の混合装置は、ポリマー及び溶媒を含む原料ドープの流路を備えた配管と、前記流路内に設けられ、前記原料ドープの流れ方向の下流側に向けて添加剤液を流出するスリット出口を有するノズルと、前記ノズルよりも前記流れ方向の下流側に配され、前記流れ方向に直交する面において互いに平行となるように前記流路内に固定された仕切板を備えたスタティックミキサと、前記スタティックミキサよりも前記流れ方向の下流側に設けられ、攪拌羽を備える駆動軸の回転により、前記添加剤液が添加された前記原料ドープをパイプの中空部内で攪拌するダイナミックミキサとを有し、前記駆動軸は、前記中空部内に設けられた1対のシール部、及び前記中空部のうち前記1対のシール部の間に設けられ、前記配管と接続するパイプ内流路をそれぞれ貫通することを特徴とする。
【0016】
前記ノズルは前記スリット出口の長手方向が前記仕切板と交差するように配され、この交差角度が40°以上50°以下であることが好ましい。また、前記スタティックミキサと前記ダイナミックミキサとの間に、前記原料ドープ又は前記添加剤液の拡散部を設けたことが好ましい。更に、前記流路における前記原料ドープの流速をVaとし、前記流路における前記添加剤液の流速をVbとするときに、Vb/Vaの値が1.2以上1.8以下となるように前記原料ドープ又は前記添加剤液の流速を調節する流量調節部を有することが好ましい。
【0017】
前記ダイナミックミキサには前記ドープ及び前記添加剤液を混合してなる流延ドープの出口が設けられ、この出口が前記流延ドープを支持体上に流延する流延ダイと接続することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、ポリマー及び溶媒を含む原料ドープ及び添加剤液の混合によりなる流延ドープの製造方法において、流路を流れる前記原料ドープ中にて、前記原料ドープの流れ方向の下流側を向くスリット出口から前記添加剤液を流出する添加工程と、前記流れ方向に直交する面において互いに平行となるように前記流路内に固定された仕切片を備えたスタティックミキサへ前記添加工程を経た前記ドープ及び前記添加剤液を通すプレ混合工程と、パイプの中空部に設けられた1対のシール部の間に前記添加工程を経た前記原料ドープを導入し、前記1対のシール部を貫通する駆動軸を回転し、前記駆動軸に設けられた攪拌羽を用いて前記添加工程を経た前記原料ドープを攪拌する混合工程とを有することを特徴とする。
【0019】
前記ノズルは前記スリット出口の長手方向が前記仕切板と交差するように配され、この交差角度が40°以上50°以下であることが好ましい。また、前記原料ドープ及び前記添加剤液からなる液において、前記原料ドープ又は前記添加剤液の拡散を行う拡散工程を、前記プレ混合工程及び前記混合工程の間で行うことが好ましい。更に、前記流路における前記原料ドープの流速をVaとし、前記流路における前記添加剤液の流速をVbとするときに、Vb/Vaの値が1.2以上1.8以下となるように前記原料ドープ又は前記添加剤液の流速を調節することが好ましい。加えて、前記ポリマーがセルロースアシレートであることが好ましい。
【0020】
本発明の溶液製膜方法は、前記原料ドープ及び前記添加剤液を混合してなる流延ドープを支持体上に流出し、前記流延ドープからなる膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、前記膜を前記支持体から剥ぎ取る剥取工程と、この剥取工程を経た前記膜から前記溶媒を蒸発させる乾燥工程とを有し、上記混合工程と前記膜形成工程とを連続して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原料ドープ中で添加剤液を噴出するノズル、及びダイナミックミキサの間に、所定の混合手段を設けたため、溶剤の漏れを防ぎつつ、原料ドープと添加剤液とを均一に効率よく混合して、流延ドープをつくることができる。更に、本発明によれば、多品種のフィルムを、品質を落とさずに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】混合装置及び溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図2】添加部及びプレ混合部の概要を示す斜視図である。
【図3】配管の概要を示すIII−III線断面図である。
【図4】ダイナミックミキサの概要を示す斜視図である。
【図5】ダイナミックミキサの概要を示す断面図である。
【図6】ステータ及びタービンの概要を示す斜視図である。
【図7】ステータ及びタービンの概要を示す斜視断面図である。
【図8】第1の流延ドープ製造方法の概要を示すフロー図である。
【図9】ダイナミックミキサの入口部分の概要を示す拡大断面図である。
【図10】ダイナミックミキサの出口部分の概要を示す拡大断面図である。
【図11】第2の流延ドープ製造方法の概要を示すフロー図である。
【図12】添加部、プレ混合部及び拡散部の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、溶液製膜設備10は、混合装置12と接続する。混合装置12は、原料ドープ14及び添加剤液から流延ドープ16をつくるものである。溶液製膜設備10は、流延ドープ16からフィルム18をつくるものである。
【0024】
(原料ドープ)
原料ドープ14は、原料となるポリマー及び溶剤が含まれる。原料ドープ14において、ポリマーは溶剤に溶解していてもよいし、分散していてもよい。また、原料ドープ14におけるポリマーの濃度は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、17質量%以上25質量%以下であることが最も好ましい。ポリマー及び溶剤の詳細については後述する。
【0025】
原料ドープ14には、添加剤が含まれていてもよい。原料ドープ14に含まれる添加剤としては、可塑剤やマット剤などがある。原料ドープ14における可塑剤の含有量は、0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。原料ドープ14におけるマット剤の含有量は、0.01質量%以上0.05質量%以下であることが好ましい。
【0026】
(添加剤液)
添加剤液は、用途に応じた種々の添加剤と溶剤とを含む。添加剤としては、用途に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤(UV剤)、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、レターデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤などを用いることができる。また、添加剤液に含まれる溶剤としては、原料ドープ14に含まれる溶剤と同一であることが好ましい。
【0027】
(粘度比)
原料ドープ14の粘度の下限は10Pa・s以上であることが好ましく、20Pa・s以上であることがより好ましい。原料ドープ14の粘度の上限は200Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下であることがより好ましい。また、添加剤液の粘度の下限は0.8mPa・s以上であることが好ましく、1mPa・s以上であることがより好ましい。添加剤液の粘度の上限は0.1Pa・s以下であることが好ましく、0.05Pa・s以上であることがより好ましい。原料ドープ14の粘度ηdと、添加剤液の粘度ηtとの粘度比ηd/ηtは、いずれの範囲でもよいが、特に、粘度比ηd/ηtが100以上150000以下であることが好ましく、100以上10000以下であることがより好ましい。なお、原料ドープ14、添加剤液、流延ドープ16の粘度は、JIS K 7117により求める値である。
【0028】
(流延ドープ)
原料ドープ14と添加剤液とから流延ドープ16をつくることができる。なお、流延ドープ16中の固形分全体を100質量%とした場合の流延ドープ16における添加剤液の濃度の上限は、55質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。流延ドープ16における添加剤液の濃度の下限は、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
(溶液製膜設備)
溶液製膜設備10は、流延室21とピンテンタ22と乾燥室23と巻取室24とを有する。流延室21には、流延ドープ16を流出する流延ダイ30、流延ダイ30から流出した流延ドープ16から流延膜31を形成する流延ドラム32、及び流延膜31を剥ぎ取る剥取ローラ34が設置されている。流延ドラム32は図示を省略した駆動装置により軸を中心に、方向Z1へ回転する。流延室21内及び流延ドラム32は、図示しない温調装置によって、流延膜31を冷却する温度に設定されている。
【0030】
流延ダイ30は、回転する流延ドラム32に向けて、流延ドープ16を連続的に流出する。その後、流延ドラム32上には、流延ドープ16からなる帯状の流延膜31が形成される。冷却により、流延ドラム32上の流延膜31は、自立して搬送可能な状態となる。自立して搬送可能な状態となった流延膜31は、剥取ローラ34によって流延ドラム32から剥ぎ取られ、帯状の湿潤フィルム36となる。
【0031】
流延室21とピンテンタ22との間の渡り部38では、搬送ローラ39が、湿潤フィルム36をピンテンタ22に導入する。ピンテンタ22は、湿潤フィルム36の両側縁部を貫通して保持する多数のピンプレートを有する。移動するピンプレートにより保持された湿潤フィルム36には乾燥風が送られる。これにより、湿潤フィルム36は乾燥し、帯状のフィルム18となる。
【0032】
ピンテンタ22の下流には耳切装置40が設けられている。耳切装置40はフィルム18の両側縁部を裁断する。この裁断した両側縁部は、送風によりクラッシャに送られて、粉砕される。粉砕された両側縁部が溶剤に溶解したものを、原料ドープ14または流延ドープ16に用いても良い。
【0033】
乾燥室23には、多数のローラ41が設けられており、これらにフィルム18が巻き掛けられて搬送される。乾燥室23内の雰囲気の温度や湿度などは、図示しない空調機により調節されており、乾燥室23の通過によりフィルム18の乾燥処理が行われる。
【0034】
乾燥室23と巻取室24との間には、フィルム18を冷却する冷却室42、フィルム18を除電する強制除電装置(除電バー)、及びフィルム18の両側縁部にナーリングを付与するナーリング付与ローラ等が設けられる。巻取室24には、プレスローラを有する巻取機43が設置されており、フィルム18が巻き芯に巻き取られる。
【0035】
(混合装置)
混合装置12は、原料ドープ14のストックタンク51と、添加剤液が添加された原料ドープ14を攪拌するダイナミックミキサ52とを有する。
【0036】
ストックタンク51は、モータ51aで回転する攪拌翼51bとジャケット51cとを備える。ストックタンク51には原料ドープ14が貯留されている。ストックタンク51内の原料ドープ14は、ジャケット51cにより温度が略一定となるように調整される。また、攪拌翼51bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、原料ドープ14の均質な状態を維持している。
【0037】
ストックタンク51及びダイナミックミキサ52は配管53により接続される。配管53には、ストックタンク51からダイナミックミキサ52に向かって、ポンプ55とフィルタ56と添加部57とプレ混合部58とが設けられる。なお、配管53は、水平に配されることが好ましい。
【0038】
ポンプ55は、原料ドープ14をストックタンク51からダイナミックミキサ52へ送り出すものである。フィルタ56は、原料ドープ14内の異物を取り除くものである。
【0039】
添加部57は、原料ドープ14に添加剤液を添加するものである。第1添加剤液15aを貯留する第1タンク60aと第2添加剤液15bを貯留する第2タンク60bとは、添加部57に、それぞれ配管62により接続される。配管62には、三方弁64と各添加剤液を添加部57へ送り出すポンプ65とが設けられる。また、ダイナミックミキサ52及び流延ダイ30は配管66により接続される。
【0040】
(添加部)
図2に示すように、添加部57において、配管62と接続するノズル70は、配管53(図1参照)に設けられた流路71内に配される。ノズル70は添加剤液15を流出するスリット出口72を備える。ノズル70は、スリット出口72が原料ドープ14の流れ方向下流側へ向くように配される。
【0041】
(プレ混合部)
プレ混合部58の流路71内には、第1エレメント76〜第2エレメント77が、原料ドープ14の流れ方向上流側から下流側へ順次設けられる。第1エレメント76は、複数の細長い第1仕切板76aを備える。原料ドープ14の流れ方向に直交する面において、複数の第1仕切板76aは、互いに平行となるように並べられる(図3参照)。第1仕切板76aの並び方向に直交する面において、複数の第1仕切板76aは、互いに交差するように配される(図2参照)。同様にして、第2エレメント77は、複数の細長い第2仕切板77aを備える。原料ドープ14の流れ方向に直交する面において、複数の第2仕切板77aは、互いに平行となるように並べられる(図3参照)。第2仕切板77a並び方向に直交する面において、複数の第2仕切板77aは、互いに交差するように配される(図2参照)。
【0042】
図2において、図中には、流路71に第1エレメント76を2個並べているが、本発明はこれに限られない。例えば、流路71に設ける第1エレメント76の数は、1個または3個以上でもよい。同様に、流路71に設ける第2エレメント77の数は、2個に限られず、1個または3個以上でもよい。
【0043】
また、図3に示すように、原料ドープ14の流れ方向に直交する面において、第1エレメント76〜第2エレメント77は、第1仕切板76aと第2仕切板77aとが交差するように配される。更に、第1仕切板76aとスリット出口72の長手方向とは交差し、第2仕切板77aとスリット出口72の長手方向とは交差する。第1仕切板76aと長手方向との交差角度θ1は、40°以上50°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。第2仕切板77aと長手方向との交差角度θ2は、40°以上50°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。交差角度θ1と交差角度θ2とは等しいことが好ましい。こうして、配管53内に設けられた第1エレメント76〜第2エレメント77により、スタティックミキサ80が構成される。
【0044】
なお、原料ドープ14等の流れ方向に直交する断面において、スリット出口72は、流路71の中心と重なっていても良いし、流路71の中心から外れていても良い。
【0045】
(ダイナミックミキサ)
図4に示すように、ダイナミックミキサ52は、パイプ85と駆動軸86とを有する。駆動軸86は、パイプ85の軸線上に配される。駆動軸86は、パイプ85の中空部を貫通するように配され、パイプ85の外に配された軸受部87により軸支される。駆動軸86は、モータ88に接続する。制御部89は、モータ88を介して、駆動軸86を一の方向へ回転する。
【0046】
(シール部)
パイプ85の両端の中空部にはシール部90が設けられる。図5に示すように、シール部90は、駆動軸86に設けられたラビリンス部材91と、パイプ85内に配され、ラビリンス部材91を覆うように設けられたシール部材92とを備える。
【0047】
ラビリンス部材91は、円筒状に形成され、駆動軸86に嵌着されるラビリンス本体91aと、ラビリンス本体91aの外周面に設けられる螺旋凸条91bとを備える。螺旋凸条91bは、駆動軸86の回転方向に向かうに従って、パイプ85の中央側から両端側へ延びるように形成される。
【0048】
駆動軸86が貫通するシール部材92は、螺旋凸条91bと近接するように設けられる筒状の第1シール具92aと、駆動軸86と近接するように設けられ、第1シール具92aよりもパイプ85中央側に隣接する筒状の第2シール具92bとを備える。第1シール具92aと第2シール具92bとは一体となって形成されることが好ましい。
【0049】
パイプ85は、対となるシール部90の間に、入口95及び出口96を有する。入口95は配管53と接続し、出口96は配管66と接続する。こうして、パイプ85の中空部のうち対となるシール部90の間には、駆動軸86が貫通する流路97が形成される。この流路97の長さは、混合に必要な長さ以上有ればよく、例えば1m以上であることが好ましい。流路97の長さの上限は、設置場所に応じて決定すればよく、例えば、2m以下であることが好ましい。
【0050】
(攪拌部)
図4に示すように、流路97には攪拌部98が設けられる。図中には、流路97に4つの攪拌部98を並べているが、本発明はこれに限られず、流路97に設ける攪拌部98の数は、1〜3個、または5個以上でもよい。
【0051】
図5及び図6に示すように、攪拌部98は、パイプ85に固定されたステータ99と、駆動軸86に取り付けられたタービン100とを備える。
【0052】
(ステータ)
図6及び図7に示すように、ステータ99は円柱状に形成される。ステータ99の中心線上には、駆動軸86が挿通する貫通孔88aが形成される。この貫通孔99aは、原料ドープ14等の流れ方向上流側の開口端99xから原料ドープ14等の流れ方向下流側の開口端99yに向かって順次設けられるテーパ孔99aaと、挿通孔99abとを備える。
【0053】
テーパ孔99aaの径は、開口端99xから開口端99yに向かうに従って漸減する。挿通孔99abの径は、駆動軸86の径と略等しい。また、ステータ99には、貫通孔99aを囲むように、液通孔99cが設けられる。液通孔99cの上流端はテーパ孔99aaにて開口し、液通孔99cの下流端は開口端99yにて開口する。テーパ孔99aaと液通孔99cとは空間的に接続する。
【0054】
タービン100は、タービン環部100aと、タービン環部100aに設けられた攪拌羽100bとを有する。タービン環部100aに設けられた孔100cにより、タービン環部100aは駆動軸86(図4または図5参照)と軸着する。攪拌羽100bは、タービン100が駆動軸86を中心に回転したときに、テーパ孔99aaと近接するような、形状及び大きさとなっている。
【0055】
図1に戻って、制御部89は、ポンプ55、65の操作により、添加剤液及び原料ドープ14の流速比が所定の範囲内となるように調節する。添加部57における原料ドープ14の流速Vaと、添加部57における添加剤液の流速Vbとの比(=Vb/Va)の値は、1以上15以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1.2以上1.8以下であることが特に好ましい。流速Vaは、ポンプ55による原料ドープ14の流量をQaとし、流路71の断面積をSaとするときに、Qa/Saで表される。流速Vbは、ポンプ65による添加剤液の流量をQbとし、スリット出口72の断面積をSbとするときに、Qb/Sbで表される。
【0056】
(流延ドープ製造方法)
この混合装置12では、図8に示す流延ドープ製造方法110が行われる。流延ドープ製造方法110は、添加工程111と、プレ混合工程112と、混合工程113とを有する。混合工程113の後、溶液製膜設備において溶液製膜方法が行われ、フィルムがつくられる。混合工程113と溶液製膜方法とは連続して行われることが好ましい。
【0057】
次に、流延ドープ製造方法110の詳細について説明する。
【0058】
(添加工程)
図1において、ポンプ55は、ストックタンク51から添加部57へ所定の流量の原料ドープ14を送り出す。また、ポンプ65は、第1タンク60aから添加部57へ所定の流量の第1添加剤液15aを送り出す。図2に示すように、添加部57において、ノズル70は、配管53中を流れる原料ドープ14中で、第1添加剤液15aを噴出する。これにより、添加工程111が行われる(図8参照)。
【0059】
(プレ混合工程)
第1添加剤液15aが添加された原料ドープ14は、プレ混合部58へ送られる。プレ混合部58では、スタティックミキサ80が、第1仕切板76aを用いて、第1添加剤液15aが添加された原料ドープ14を分割した後、第2仕切板77aを用いて、更なる分割を行う。第1仕切板76aとスリット出口72の長手方向とが交差しているため、第1添加剤液15aと原料ドープ14との混合が進む。同様にして、第2仕切板77aとスリット出口72の長手方向とが交差しているため、第1添加剤液15aと原料ドープ14との混合が進む。こうして、各仕切板76a、77aによる分割により、第1添加剤液15aと原料ドープ14とが混合されるプレ混合工程112が行われる(図8参照)。
【0060】
(混合工程)
図5に示すように、プレ混合工程112を経た第1添加剤液15aと原料ドープ14とは、ダイナミックミキサ52へ送られる。制御部89の制御の下、ラビリンス部材91及びタービン100が、所定の回転数で回転する。ラビリンス部材91の回転により、螺旋凸条91bは、シール部90にある原料ドープ14及び第1添加剤液15aを流路97側へ押し出す。これにより、シール部90における液の圧力(シール圧)を増大させることができるため、原料ドープ14及び第1添加剤液15aの漏れを防ぐ。また、タービン100の回転により、テーパ孔99aaの壁面と攪拌羽100bとの間では、第1添加剤液15a及び原料ドープ14にせん断方向の力が加わる。このため、原料ドープ14及び第1添加剤液15aの混合が進む。こうして、ダイナミックミキサ52では、混合工程113が行われ(図8参照)、第1の流延ドープ16をつくることができる。
【0061】
ここで、第1添加剤液15aが添加されたままの原料ドープ14を、ダイナミックミキサ52へ送り、攪拌しようとすると、第1添加剤液15aが入口95側の流路97に滞留する(図9参照)、または、入口95や出口96近傍のシール部90に流入しやすくなる(図9または図10参照)。
【0062】
図9に示すように、第1添加剤液15aが、入口95側の流路97に滞留すると、入口95側のシール部90における液の粘度が下がるため、シール圧が低下する。この結果、シール部90から外部へ第1添加剤液15aが漏れてしまう。また、第1添加剤液15aが入口95近傍のシール部90へ流入しても、同様にして、シール部90における液の粘度が下がるため、シール部90から外部へ第1添加剤液15aが漏れてしまう。
【0063】
図10に示すように、第1添加剤液15aが出口96近傍のシール部90へ流入すると、シール部90における液の粘度が下がるため、シール圧が低下する。この結果、シール部90から外部へ第1添加剤液15aが漏れてしまう。加えて、第1添加剤液15aが出口96側のシール部まで到達した場合には、第1添加剤液15aが十分に混合されないまま出口96から送り出される。このようにしてダイナミックミキサ52から送り出された流延ドープ16には、ゲル状異物が存在し、いわゆる混合ムラが生じてしまう。このように混合ムラの生じた流延ドープ16を用いてフィルム18をつくろうとすると、フィルムの光学特性や機械特性にムラが生じてしまう他、ゲル状異物に起因する異物がフィルムに混入することとなり、いずれのフィルムも製品として用いることができない。
【0064】
本発明では、ダイナミックミキサ52による混合工程113の前に、スタティックミキサ80によるプレ混合工程112を行うため、第1添加剤液15aが添加されたままの原料ドープ14が、そのままダイナミックミキサ52へ送り出されることを防止できる。この結果、ダイナミックミキサ52における液の漏れや、混合ムラを回避することができる。
【0065】
同一の溶液製膜設備10において、品種の異なるフィルムの製造への切り替えは次のようにして行う。図1に示すように、第1に、制御部89による三方弁64の操作により、第1添加剤液15aの添加部57への供給を停止し、第2添加剤液15bの添加部57への供給を開始する。その後、第1の流延ドープ16をつくる場合と同様にして、添加工程111、プレ混合工程112及び混合工程113(図8参照)を順次行う。こうして、原料ドープ14及び第2添加剤液15bからなる第2の流延ドープをつくることができる。その後、第2の流延ドープを用いた溶液製膜方法を混合工程113に続けて行うことにより、品種の異なるフィルムの製造へ切り替えることができる。
【0066】
上記実施形態では、図8のように、添加工程111及び混合工程113の間にプレ混合工程112を行ったが、本発明はこれに限られず、添加工程111及び混合工程113の間にて、プレ混合工程112及び拡散工程114を行っても良い(図11参照)。すなわち、図11に示すように、添加工程111、プレ混合工程112、拡散工程114、混合工程113の順に行なう流延ドープ製造方法116でもよい。
【0067】
添加工程111及び混合工程113の間にて、プレ混合工程112及び拡散工程114を行うために、流路71において、流れ方向上流側から下流側に向かって、添加部57、プレ混合部58、及び拡散部120を順次設けることが好ましい(図12参照)。拡散部120では、プレ混合部58を経た液において、原料ドープ14や添加剤液の拡散を促すものである。拡散部120では、原料ドープ14と添加剤液とのうちいずれか一方のみの拡散を促すものでも良いし、両方の拡散を促すものでもよい。拡散部120内の液の温度を調節するために、図示しないジャケットを配管53(図1参照)に設けても良い。拡散部120における流路は、直線状でも曲線状でもよい。また、流路71の断面形状は一定でも良いし、上流側から下流側に向かって拡開していてもよい。
【0068】
なお、流れ方向における、添加部57、プレ混合部58の長さをL1、L2とするときに、L1は50mm以上300mm以下であることが好ましく、L2は300mm以上1000mm以下であることが好ましい(図2及び図12参照)。また、また、流れ方向における、拡散部120の長さL3は、適宜決定すればよい(図12参照)。ここで、拡散部120の長さは、プレ混合部58及びダイナミックミキサ52の間における配管53の長さとしてもよい。
【0069】
本発明の溶液製膜方法において、2種類以上の流延ドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させることもできる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。そして、それぞれの流延ドープをつくる場合に、本発明を適用することができる。
【0070】
上記実施形態では、支持体として、流延ドラム32を用いたが、本発明はこれに限られず、流延バンドを用いてもよい。軸方向が水平となるように配されたローラに、流延バンドを掛け渡し、ローラを回転させることにより、流延バンドを移動させることができる。
【0071】
上記実施形態では、支持体上の流延膜を冷却する冷却ゲル化方式により、流延膜を剥ぎ取り可能な状態にしたが、本発明はこれに限られず、支持体上の流延膜を乾燥する乾燥方式により、流延膜を剥ぎ取り可能な状態にしてもよい。
【0072】
本発明により得られるフィルム18は、特に、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
【0073】
フィルム18の幅は、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、フィルム18の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。またフィルム18の膜厚は、30μm以上120μm以下であることが好ましい。
【0074】
また、フィルム18の面内レターデーションReは、0nm以上300nm以下であることが好ましく、フィルム18の厚み方向レターデーションRthは、−100nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0075】
面内レターデーションReの測定方法は次の通りである。面内レターデーションReは、サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値を用いる。なおReは以下式で表される。
Re=|n1−n2|×d
n1は遅相軸の屈折率,n2は進相軸2の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す
【0076】
厚み方向レターデーションRthの測定方法は次の通りである。サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、エリプソメータ(M150 日本分光(株)製)で632.8nmにより垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出することができる。
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
【0077】
(ポリマー)
本発明に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0078】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たすものであることが好ましい。下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。セルロースアシレートの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0079】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0080】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0081】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0082】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶剤を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0083】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0084】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0085】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0086】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0087】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。
【0088】
(可塑剤)
可塑剤としては、リン酸エステルやポリエステル系ポリマーが用いられる。
【0089】
リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートが挙げられ、いずれも本発明に用いることができる。
【0090】
ポリエステル系ポリマーとしては、ポリエステルジオールが好ましく、ジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)および/またはヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主原料として、縮合反応することにより得られるものが挙げられる。
【0091】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸は2種類以上用いてもよい。また、ジカルボン酸の炭素数は4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、6が特に好ましい。炭素数が少ない方が、セルロースアシレートフィルムの透湿度を下げることができ、また、相溶性の点からも好適であり、コストやポリエステルジオールの取り扱い性から、6が好ましい。
【0092】
また、ジオールとしては脂肪族グリコール、すなわち、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ブチレングリコール(例えば、1,4−ブタンジオール)、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオールは2種類以上用いてもよい。また、ジオールの炭素数は2〜20であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2が特に好ましい。炭素数が少ない方がセルロースエステルドープもしくはセルロースエステルフィルムとの相溶性に優れ、また湿熱サーモによるブリードアウト(泣き出し)耐性に優れるため好ましいためである。
【0093】
これらの重合体ないしは共重合体の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(ナフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレン(テレフタレート/イソフタレート)ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)などが挙げられる。その他、表1に示すポリエステルジオール(可塑剤A〜D)も、本発明において可塑剤として用いることができる。
【0094】
【表1】

【0095】
表1中、二塩基酸の欄において、AAはアジピン酸(C6)、CAはコハク酸(C4)を示し、グリコールの欄において、EGはエチレングリコール(C2)を、PGは1,2−プロピレングリコール(C3)を示す。なお、表1に示す可塑剤A〜Dについて、水酸基価に特に制限はないが、例えば、表1に示す水酸基価であることが好ましい。
【0096】
本発明に用いることのできるポリエステルジオールは、セルロースアシレートドープおよびセルロースアシレートフィルムと相溶するものを、所望の光学特性を満たすよう、その構造や分子量、添加量を選択する。ポリエステルジオールは、主鎖の両末端がアルコール性の水酸基であることがセルロースアシレートドープおよびセルロースアシレートフィルムとの相溶性と光学特性制御の両立の点から好ましい。特に添加量を、セルロースアシレートに対して5質量%以上とすることが必要であり、9〜40質量%とすることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0097】
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、光学異方性の制御に対してはポリエステルジオールの水酸基価(OHV)および分子量を一定範囲に抑えることが、品質を一定に保つために重要である。特に水酸基価は品質管理にとっても好ましい。水酸価の測定は、日本工業規格JIS K 1557−1:2007に記載の無水酢酸法等を適用できる。
【0098】
水酸基価は、40mgKOH/g以上170mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が更に好ましく、90mgKOH/g以上140mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0099】
水酸基価が大きすぎると、分子量が小さく、低分子量成分の量が多くなり、揮散性が大きくなり好ましくない傾向がある。また、水酸基価が小さすぎると、溶剤への溶解性やセルロースアシレートとの相溶性が悪くなり、好ましくない傾向がある。
【0100】
本発明におけるポリエステルジオールの数平均分子量(Mn)は、水酸基価の値からの計算やGPCの測定から求めることが出来る。分子量の値としては650以上2800以下であることが好ましく、700以上2000以下であることが更に好ましく、800以上1250以下であることが特に好ましい。また、光学的に等方性とするためには800以上1200以下であるものが特に好適に用いられる。
【0101】
その他、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるサーモトロピック液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂を可塑剤として使用することもできる。
【0102】
ここでいう芳香族オキシカルボニル単位としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4´−ヒドロキシジフェニル−4−カルボン酸から生成した構造単位を、芳香族ジオキシ単位としては、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンから生成した構造単位を、芳香族ジカルボニル単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位を、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールから生成した構造単位を例示することができる。具体例としては、p−オキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート、p−オキシ安息香酸/6−オキシ−2−ナフトエ酸などのサーモトロピック液晶性ポリエステルが挙げられる。
【0103】
(マット剤)
マット剤としては、無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよい。無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルローストリアセテートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0104】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール76、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール312及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0105】
セルロースアシレート、溶剤及び添加剤については、特開2005−104148号に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【実施例】
【0106】
以下の方法により、実験1〜17を行った。各実験の詳細は、実験1について詳細に行い、実験2〜17について、実験1と同じ箇所の説明は省略し、異なる部分の説明をする。
【0107】
(実験1)
原料ドープの調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.86) 100 質量部
表1に示す可塑剤A(水酸基価:113) 10 質量部
マット剤(AEROSIL R972) 0.03質量部
の組成比からなる固形分を
ジクロロメタン 80 質量部
メタノール 13.5 質量部
n−ブタノール 6.5 質量部
からなる混合溶剤に適宜添加し、攪拌溶解して原料ドープを調製した。なお、可塑剤Aの水酸基価は、JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法により求めた。
【0108】
原料ドープを濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンク11に入れた。上記組成の原料ドープ14の粘度は10Pa・sであった。
【0109】
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテート(TAC)は、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その質量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。
【0110】
[添加剤液の調製]
100質量部の可塑剤を、
ジクロロメタン 80 質量部
メタノール 13.5 質量部
n−ブタノール 6.5 質量部
からなる混合溶媒に適宜添加し、攪拌溶解して添加剤液を調製した。添加剤液の粘度は1Pa・sであった。
【0111】
図1に示す混合装置12において、得られた原料ドープ14及び添加剤液から流延ドープ16をつくった。
【0112】
混合装置12において、流路71には、添加部57、プレ混合部58、拡散部120を順次設けた(図12参照)。原料ドープ14及び添加剤液の流速比Vb/Vaは1.2であった。スリット出口72と第1仕切板76aとの交差角度θ1、及びスリット出口72と第2仕切板77aとの交差角度θ2は、いずれも45°であった。
【0113】
得られた流延ドープを用いて、溶液製膜設備10にて帯状のフィルムをつくった。
【0114】
(評価)
以下について評価した。
【0115】
1.混合ムラ評価その1
得られた帯状のフィルムについて、幅方向における可塑剤の含有量分布を測定した。可塑剤の含有量の測定には、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた。測定箇所は幅方向に50点設けた。各測定箇所における強度比(=可塑剤の強度/ポリマーの強度)を測定し、この強度比の標準偏差を、可塑剤の含有量ムラΔKとした。ΔKを表2に示す。
【0116】
2.混合ムラ評価その2
得られた帯状のフィルムから、長手方向の長さが1mのサンプルフィルムを切り出した。このサンプルフィルムについて、第1検査及び第2検査を行って、異物の数Nをカウントした。第1検査では、フィルムに反射光をあてて、フィルム中の異物の有無を目視により検査した。第2検査では、第1検査で確認された異物について、偏光顕微鏡を用いて、その大きさを調べた。そして、大きさが10μm以上の異物の数Nをカウントした。
【0117】
3.液もれ評価
ダイナミックミキサ52において液の漏れが生じたか否かを、以下の基準に基づいて、評価した。なお、○と△とは合格であり、×は不合格である。
○:液の漏れが生じなかった。
△:液がにじみ出るが、にじみ出た場所で液が固まるため、液が外部へ漏れなかった。
×:液の漏れが生じた。
【0118】
各評価項目における評価結果を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
(実験2〜17)
実験2〜17では、流速比Vb/Va、プレ混合部の有無、θ1及びθ2、混合工程に用いたミキサの種類、及び拡散部の有無は、表2に示すものとしたこと以外は実験1と同様にして行った。実験2〜10、13〜17では、実験1と同様にノズル70を用いたが、実験11〜12では、ノズル70に代えて、円形の出口を有するノズルを用いた。
【0121】
混合工程に用いたミキサの種類には、タイプA、B及びCがある。表2においては、タイプAを用いた場合は「A」、タイプBを用いた場合は「B」、タイプCを用いた場合は「C」と示す。ここで、タイプAは、ダイナミックミキサ52である。タイプBは、特開2009−090655の図3に示されたダイナミックミキサ(混合装置25)である。タイプCは、特開2010−100042の図13に示された捻転混合型のインラインミキサである。なお、混合工程を行っていないものについては、「−」と示した。また、各実験において、混合工程に用いたミキサがタイプA、タイプBの場合、ミキサの回転駆動速度Vdを表2に示す。
【符号の説明】
【0122】
10 溶液製膜設備
12 ドープ製造設備
14 原料ドープ
16 流延ドープ
18 フィルム
52 ダイナミックミキサ
57 添加部
58 プレ混合部
80 スタティックミキサ
110 流延ドープ製造方法
111 添加工程
112 プレ混合工程
113 混合工程
114 拡散工程
120 拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び溶媒を含む原料ドープの流路を備えた配管と、
前記流路内に設けられ、前記原料ドープの流れ方向の下流側に向けて添加剤液を流出するスリット出口を有するノズルと、
前記ノズルよりも前記流れ方向の下流側に配され、前記流れ方向に直交する面において互いに平行となるように前記流路内に固定された仕切板を備えたスタティックミキサと、
前記スタティックミキサよりも前記流れ方向の下流側に設けられ、攪拌羽を備える駆動軸の回転により、前記添加剤液が添加された前記原料ドープをパイプの中空部内で攪拌するダイナミックミキサとを有し、
前記駆動軸は、前記中空部内に設けられた1対のシール部、及び前記中空部のうち前記1対のシール部の間に設けられ、前記配管と接続するパイプ内流路をそれぞれ貫通することを特徴とする混合装置。
【請求項2】
前記ノズルは前記スリット出口の長手方向が前記仕切板と交差するように配され、
この交差角度が40°以上50°以下であることを特徴とする請求項1記載の混合装置。
【請求項3】
前記スタティックミキサと前記ダイナミックミキサとの間に、前記原料ドープ又は前記添加剤液の拡散部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の混合装置。
【請求項4】
前記流路における前記原料ドープの流速をVaとし、前記流路における前記添加剤液の流速をVbとするときに、Vb/Vaの値が1.2以上1.8以下となるように前記原料ドープ又は前記添加剤液の流速を調節する流量調節部を有することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の混合装置。
【請求項5】
前記ダイナミックミキサには前記ドープ及び前記添加剤液を混合してなる流延ドープの出口が設けられ、
この出口が前記流延ドープを支持体上に流延する流延ダイと接続することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の混合装置。
【請求項6】
ポリマー及び溶媒を含む原料ドープ及び添加剤液の混合によりなる流延ドープの製造方法において、
流路を流れる前記原料ドープ中にて、前記原料ドープの流れ方向の下流側を向くスリット出口から前記添加剤液を流出する添加工程と、
前記流れ方向に直交する面において互いに平行となるように前記流路内に固定された仕切片を備えたスタティックミキサへ前記添加工程を経た前記ドープ及び前記添加剤液を通すプレ混合工程と、
パイプの中空部に設けられた1対のシール部の間に前記添加工程を経た前記原料ドープを導入し、前記1対のシール部を貫通する駆動軸を回転し、前記駆動軸に設けられた攪拌羽を用いて前記添加工程を経た前記原料ドープを攪拌する混合工程とを有することを特徴とする流延ドープの製造方法。
【請求項7】
前記ノズルは前記スリット出口の長手方向が前記仕切板と交差するように配され、
この交差角度が40°以上50°以下であることを特徴とする請求項6記載の流延ドープの製造方法。
【請求項8】
前記原料ドープ及び前記添加剤液からなる液において、前記原料ドープ又は前記添加剤液の拡散を行う拡散工程を、前記プレ混合工程及び前記混合工程の間で行うことを特徴とする請求項6または7記載の流延ドープの製造方法。
【請求項9】
前記流路における前記原料ドープの流速をVaとし、前記流路における前記添加剤液の流速をVbとするときに、Vb/Vaの値が1.2以上1.8以下となるように前記原料ドープ又は前記添加剤液の流速を調節することを特徴とする請求項6ないし8のうちいずれか1項記載の流延ドープの製造方法。
【請求項10】
前記ポリマーがセルロースアシレートであることを特徴とする請求項6ないし9のうちいずれか1項記載の流延ドープの製造方法。
【請求項11】
前記原料ドープ及び前記添加剤液を混合してなる流延ドープを支持体上に流出し、前記流延ドープからなる膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、
前記膜を前記支持体から剥ぎ取る剥取工程と、
この剥取工程を経た前記膜から前記溶媒を蒸発させる乾燥工程とを有し、
請求項6ないし10のうちいずれか1項記載の前記混合工程と前記膜形成工程とを連続して行うことを特徴とする溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−81743(P2012−81743A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192711(P2011−192711)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】