説明

温室フィルム開閉装置

【課題】巻き取り限度位置又は巻き戻し限度位置の微調整を可能にする。
【解決手段】 駆動部の駆動を停止させるリミットスイッチ41,42をスイッチングするスイッチ操作部材43,44と、該スイッチ操作部材43,44のスイッチング位置を調整する調整つまみ45,46とが、減速歯車機構を介して連結されている。スイッチ操作部材43,44は、内周縁に歯部を有し、減速歯車機構として、スイッチ操作部材43,44に噛み合う歯部を外周縁に備え、歯数が該スイッチ操作部材よりも少ない外歯車47,48を有するものを用いている。これにより、調整つまみ45,46の回転運動は、減速されてスイッチ操作部材43,44に伝達されるため、スイッチ操作部材の回転量が小さくなり、スイッチ操作部材の細かな制御が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の側面や谷部等に配設され、換気のために開閉される温室フィルムを巻き取り又は巻き戻しして開閉するための温室フィルム開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、駆動部に直流モータを使用した温室フィルムの開閉装置が開示されている。駆動部の駆動により巻き取り軸を回転させて温室フィルムを巻き取り又は巻き戻しして開閉する装置である。この開閉装置には、巻き取り側と巻き戻し側の各限度位置で駆動部の駆動を停止させる2つのリミットスイッチが設けられていると共に、この2つのリミットスイッチのスイッチング位置を任意に調節可能になっている。
【特許文献1】特開2001−128563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された開閉装置は、リミットスイッチをスイッチングするスイッチ操作部材と、該スイッチ操作部材を任意の角度回転させることにより、スイッチング位置を調節する初期位置調整部材とが、同期して動作する構成となっている。従って、初期位置調整部材を1回転させれば、スイッチ操作部材が1回転する構成である。このため、この初期位置調整部材を回転させることによって、巻き取り側又は巻き戻し側の限度位置を細かく調整することが困難である。すなわち、スイッチング位置を調整する場合、温室フィルムの開閉を何度か繰り返して再調整するが、特許文献1に示されたものでは、手指で操作する初期位置調整部材の回転角度と同じであるため、スイッチ操作部材を数度単位、あるいは数十度単位で調整することは非常に困難であった。なお、特許文献1では、駆動部に直流モータを用いているが、交流モータを用いたものでも同様の問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、スイッチ操作部材の初期位置を細かく制御でき、温室フィルムの巻き取り側及び巻き戻し側の限度位置の僅かな調整も可能にする温室フィルム開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、温室フィルムを巻き取り又は巻き戻しして開閉する巻き取り軸と、該巻き取り軸を回転させる駆動部とを備えた温室フィルム開閉装置において、
前記駆動部の駆動を停止させる駆動停止スイッチと、
前記駆動部の駆動により所定の角度回転し、前記巻き取り軸が温室フィルムの巻き取り方向限度位置又は巻き戻し方向限度位置に到達すると、前記駆動停止スイッチをスイッチングして前記駆動部の駆動を停止させるスイッチ操作部材と、
前記スイッチ操作部材を任意の角度回転させてその初期位置を調整し、該スイッチ操作部材によるスイッチング動作のタイミングを調節する初期位置調整部材とを備え、
前記スイッチ操作部材と前記初期位置調整部材とが、減速歯車機構を介して連結されており、
前記スイッチ操作部材の初期位置を調整するため、前記初期位置調整部材を回転させると、該初期位置調整部材の回転運動が減速されて前記スイッチ操作部材に伝達されることを特徴とする温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記スイッチ操作部材が、外方に突出し、前記駆動停止スイッチを押圧する突出する突出片を備えると共に、内周縁に歯部を有する内歯車からなり、
前記減速歯車機構が、前記内歯車からなるスイッチ操作部材に噛み合う歯部を外周縁に備えると共に、歯数が該スイッチ操作部材よりも少なく、前記スイッチ操作部材の中心に対して偏心した位置に中心を有し、かつ、外周縁の内側に円周方向に沿って等間隔で形成された複数の孔部を有する外歯車を有してなり、
前記初期位置調整部材が、中心が前記スイッチ操作部材の中心に合致する細径部と、中心が前記外歯車の中心に合致し、前記外歯車の中央孔部に挿入される大径部とを有し、
前記外歯車の各孔部には、該孔部の内径よりも小さな外径の支持突起が挿入され、その状態で、前記初期位置調整部材を回転させると、前記外歯車が、前記スイッチ操作部材の中心回りを公転し、1公転毎に、前記スイッチ操作部材を前記外歯車との歯数差分、回転させる構造である請求項1記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記外歯車の各孔部を、前記支持突起から離脱させた状態で、前記初期位置調整部材を回転させると、該初期設定位置調整部材の回転動作に、前記外歯車及び前記スイッチ操作部材が同期して回転する請求項2記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記支持突起は、前記駆動部の回転を伝達する駆動伝達歯車に形成されており、前記駆動部を駆動させて巻き取り軸を回転させている際には、前記外歯車の各孔部内に、前記支持突起が位置しており、前記駆動部の駆動により前記駆動伝達歯車が回転すると、該支持突起を介して外歯車及びスイッチ操作部材が同期して回転することを特徴とする請求項2又は3記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記駆動停止スイッチは、温室フィルムの巻き取り方向限度位置用と巻き戻し方向限度位置用との2つが設けられており、前記スイッチ操作部材、初期位置調整部材、及び減速歯車機構は、それぞれの駆動停止スイッチに対応して設けられている請求項1〜4のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記駆動停止スイッチが、リミットスイッチである請求項1〜5のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記巻き取り軸による温室フィルムの開閉動作に伴い、ガイド用棒状部材に沿って前記駆動部を移動させるため、前記駆動部に付設される移動機構をさらに備え、
前記移動機構が、移動方向に沿って所定間隔をおいて配設された上段ローラ群及び下段ローラ群を有し、
前記上段ローラ群及び下段ローラ群は、それぞれ、前記ガイド用棒状部材の周面に当接可能に、円周方向に沿って略等間隔で3カ所以上に配置される車輪を備えてなる請求項1〜6のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
請求項8記載の本発明では、前記上段ローラ群及び下段ローラ群を構成する車輪が、それぞれ、円周方向に沿って略等間隔で3カ所に配置されいる請求項7記載の温室フィルム開閉装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の温室フィルム開閉装置は、駆動部の駆動を停止させる駆動停止スイッチをスイッチングするスイッチ操作部材と、該スイッチ操作部材のスイッチング位置を調整する初期位置調整部材とが、減速歯車機構を介して連結されている。従って、初期位置調整部材を回転させると、該初期位置調整部材の回転運動は、減速されてスイッチ操作部材に伝達される。この結果、初期位置調整部材の回転量よりも、スイッチ操作部材の回転量が小さくなるため、スイッチ操作部材の細かな制御が可能であり、温室フィルムの巻き取り側及び巻き戻し側の限度位置の僅かな調整が可能になる。
【0007】
特に、スイッチ操作部材として、内周縁に歯部を有する内歯車からなるものを用い、減速歯車機構として、この内歯車からなるスイッチ操作部材に噛み合う歯部を外周縁に備え、歯数が該スイッチ操作部材よりも少ない外歯車を有するものを用い、さらに、初期位置調整部材として、中心がスイッチ操作部材の中心に合致する細径部と、中心が外歯車の中心に合致する大径部とを有するものを用いると、減速比を大きくとれるため、初期位置調整部材を回転させることによるスイッチ操作部材の初期位置の調整をより細かく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の―の実施形態にかかる温室フィルム開閉装置1の外観を示す概略平面図であり、図2は背面図である。
【0009】
図1及び図2に示したように、本実施形態の温室フィルム開閉装置1は、駆動部10、移動機構20、巻き取り軸30、及び制御部40を有して構成される。駆動部10は、駆動源となるモータ11と、該モータ11を支持すると共に、内部にモータ11の回転駆動力を伝達するギア機構(図示せず)等が内蔵されたケーシング12とを備えて構成される。ケーシング12には、管状支持軸13が設けられており、この管状支持軸13に巻き取り軸30の端部が挿通されて連結されている。また、管状支持軸13の一端は制御部40に設けられたウオーム51に連結されている(図4、図5参照)。
【0010】
移動機構20は、駆動部10に付設されており、中央に挿通されるガイド用棒状部材25の周面に各車輪21a,22aが接し、該ガイド用棒状部材25に沿って移動し得るように設けられている。すなわち、この移動機構20を有することにより、駆動部10のモータ11が回転した際に、該駆動部10の自転が防止され、駆動部10の駆動が巻き取り軸30に伝達される。これにより、巻き取り軸30が温室フィルムを巻き取り又は巻き戻ししていくと、移動機構20が、駆動部10及び制御部40と共に、ガイド用棒状部材25に沿って上昇又は下降する。
【0011】
移動機構20は、かかる機能を果たすものであればどのような構造のものであってもよく、上記特許文献1で開示されたものを用いることもできるが、本実施形態では次のような構造のものを用いている。
【0012】
すなわち、この移動機構20は、図1〜図3に示したように、移動方向に沿って所定間隔をおいて配設された上段ローラ群21及び下段ローラ群22を有し、該上段ローラ群21及び下段ローラ群22が、それぞれ、ガイド用棒状部材25の周面に当接可能であると共に、円周方向に沿って略等間隔で3カ所に、すなわち、略120度間隔で配置される車輪21a,22aを備えてなる。これにより、ガイド用棒状部材25を挟んで2つの車輪を配置しただけの構造と比較して、駆動部10の重さ等によって生じる巻き取り軸30のスラスト方向の偏荷重を受けることができ、移動機構20の車輪21a,22aがガイド用棒状部材25に沿って移動する際に、いわゆるかじり現象(ロック現象)等が生じることを抑制でき、円滑な移動を可能にする。
【0013】
なお、車輪21a,22aは、円周方向に沿って4カ所以上に設けることもできるが、できるだけ少ない車輪数で、低コストでありながら、より確実に偏荷重を受けられることから、本実施形態のように3カ所に略等間隔で配置することが好ましい。また、各車輪21a,22aはベアリングを介して支持するなど、回転時の摩擦抵抗を小さくすることが好ましい。回転時の摩擦抵抗が小さいと、ガイド用棒状部材25に沿っての移動がよりスムースになるため、巻き取り軸30に生じる偏荷重が小さくなり、上段ローラ群21と下段ローラ群22との間隔を小さくしたりするなどの小型化が可能である。また、各車輪21a,22aは、図1〜図3に示したように、平面視で略V字状ないしは略U字状、あるいは、ガイド用棒状部材25の周面に沿った円弧状に形成したものを用いることが好ましい。これにより、偏荷重が加わった際にガイド用棒状部材25の回りを円周方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0014】
制御部40には、図4〜図6に示したように、駆動部10のモータ11の駆動を停止させる駆動停止スイッチとしての2つのリミットスイッチ41,42が配設されている。一方のリミットスイッチ41は巻き取り側の限度位置で接点がスイッチングされるとモータ11の駆動を停止させ、他方のリミットスイッチ42は巻き戻し側の限度位置で接点がスイッチングされるとモータ11の駆動を停止させる。各リミットスイッチ41,42に対応して、2つのスイッチ操作部材43,44及び初期位置調整部材である2つの調整つまみ45,46が設けられていると共に、各スイッチ操作部材43,44と各調整つまみ45,46とが、それぞれ減速歯車機構を介して連結されている。スイッチ操作部材43,44は、駆動部10の駆動に伴って、初期位置から所定量回転すると、リミットスイッチ41,42の接点41a,42aを押圧してスイッチング可能なように、環状に形成されていると共に、略山形ないしは略三角形状になって外方に突出する突出片43b,44bを備えている。
【0015】
一方、制御部40は、上記したように、管状支持軸13の一端が連結されるウオーム51を有し、このウオーム51を介して、駆動部10の駆動がスイッチ操作部材43,44に伝達される。具体的には、制御部40内には、図5〜図7に示したように、ウオーム51に噛み合うウオームホイール52が配設されていると共に、ウオームホイール52には、同軸上に、該ウオームホイール52の回転に伴って回転する第1のかさ歯車53が設けられている。第1のかさ歯車53には、軸芯方向の一端側と他端側とに、2つの歯部53a,53bが形成されており、各歯部53a,53bには、それぞれに噛み合うように第2のかさ歯車54,55が設けられている。なお、ウオーム51、ウオームホイール52、第1のかさ歯車53、第2のかさ歯車54,55は、請求項4で定義した駆動伝達歯車を構成する。
【0016】
第2のかさ歯車54,55は、ウオームホイール52及び第1のかさ歯車53の回転支軸57に対して直交する方向に設けられた2つの回転支軸58,59にそれぞれ支持されている。また、駆動伝達歯車の一つを構成する第2のかさ歯車54,55の背面には、それぞれ、複数の支持突起54a,55aが設けられている。本実施形態では、図8に示したように、それぞれ8つの支持突起54a,55aが設けられており、この支持突起54a,55aに、上記した減速歯車機構を構成する外歯車47,48が支持される。
【0017】
減速歯車機構は、外周縁に歯部47a,48aを備えた外歯車47,48を有すると共に、内歯車構造に形成されたスイッチ操作部材43,44自体も減速歯車機構の一部を構成する。より具体的には、スイッチ操作部材43,44は内周縁に歯部43a,44aを有する内歯車構造に形成されており、外歯車47,48は、該スイッチ操作部材43,44の内周縁内に配置され、外歯車47,48の歯部47a,48aがスイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aに噛み合うように配置される。外歯車47,48は、その歯部47a,48aの一部のみが、スイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aに噛み合うような大きさで形成されており、該外歯車47,48の歯部47a,48aの歯数は、スイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aの歯数よりも少なくなっている(図8参照)。本実施形態では、両者の歯数差を1に設定しているが、これに限定されるものではない。また、外歯車47,48には中央孔部47b,48bが形成されていると共に、該中央孔部47b,48bの周囲であって外周縁(歯部47a,48a)の内側には円周方向に沿って等間隔で形成された複数の孔部47c,48cが形成されている。この孔部47c,48cには、上記した支持突起54a,55aが挿入されるため、本実施形態では、孔部47c,48cは、支持突起54a,55aと同様に、8つ設けられている。また、孔部47c,48cの内径は、支持突起54a,55aの外径よりも大きな径で形成されている。
【0018】
外歯車47,48の中央孔部47b,48bの中心Pは、各回転支軸58,59、各第2のかさ歯車54,55及び各スイッチ操作部材43,44の軸心(中心)Qからずれた位置(偏心位置)になるように設けられている。具体的には、各調整つまみ45,46が、図9に示したように、細径部45a,46aと大径部45b,46bとを備えると共に、細径部45a,46aの中心と大径部45b,46bの中心とが一致しないように形成された筒状体から形成されており、その中空部内に回転支軸58,59を挿入して取り付けた際には、細径部45a,46aの中心が、各回転支軸58,59、各第2のかさ歯車54,55及びスイッチ操作部材43,44の軸心(中心)Qに一致するように配設される。大径部45b,46bは、外歯車47,48の中央孔部47b,48bに挿入されて、大径部45b,46bの中心が外歯車47,48の中心Pと一致するように配設される。なお、各調整つまみ45,46は、中空部に挿入される各回転支軸58,59の周囲を回転するように設けられていてもよいし、各回転支軸58,59と共にケーシング60に対して回転するように設けられていてもよい。
【0019】
スイッチ操作部材43,44は、図7及び図10に示したように、外歯車47,48の周囲を取り囲む大環状部47d,48dと調整つまみ45,46の周囲を取り囲む小環状部47e(48e)との段差を有する構造で形成されているが、大環状部47d,48dと小環状部47e,48eとは別体に形成し、小環状部47e,48eがケーシング60に対して固定され、大環状部47d,48dのみが回転するように設けてもよい。小環状部47e,48eの内面には、調整つまみ45,46の周囲を取り囲むコイルスプリング49の一端が固定されている。コイルスプリング49の他端は、外歯車47,48に少なくとも一部が当接しており、該外歯車47,48を第2のかさ歯車54,55に押し付け、孔部47c,48cが常態において支持突起54a,54bの外側に位置するように付勢している。このため、図11に示したように、調整つまみ45,46を手前に引けば、該コイルスプリング49の弾性に抗して、外歯車47,48が調整つまみ45,46と共に手前に移動し、各孔部47c,48cが支持突起54a,55aに接しない位置となるように離脱させる。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。まず、温室フィルムを巻き取り又は巻き戻す際の動作では、図10に示したように、外歯車47,48の孔部47c,48cが第2のかさ歯車54,55の支持突起54a,55aに係合した状態になっている。また、スイッチ操作部材43,44は、突出片43b,44bが適宜の位置となるように設定されている。この状態で、駆動部10のモータ11が駆動すると、管状支持軸13を介して巻き取り軸30が回転し、温室フィルムを巻き取り又は巻き戻ししていく。温室フィルムを巻き取り又は巻き戻ししていくと、移動機構20がガイド用棒状部材25に沿って上昇又は下降し、これに伴って本実施形態の温室フィルム開閉装置1全体が上昇又は下降する。なお、この際、本実施形態で示した移動機構20を使用すると、温室フィルムの巻き取り又は巻き戻しの際の偏荷重の吸収に優れ、移動機構20がガイド用棒状部材25に沿って円滑に上下動できることは上記したとおりである。
【0021】
一方、モータ11の駆動によって管状支持軸13及び巻き取り軸30が回転すると、該管状支持軸13の一端に連結された制御部40のウオーム51が回転する。ウオーム51が回転すると、ウオームホイール52が回転し、これに伴って第1のかさ歯車53が回転する。そして、第1のかさ歯車53の各端部に設けられた2つの歯部53a,53bに噛み合っている2つの第2のかさ歯車54,55がそれぞれ回転する。第2のかさ歯車54,55が回転すると、支持突起54a,55aが、嵌り合っている孔部47c,48cの内壁を押圧し、図8に示したように、外歯車47,48の歯部47a,48aの一部をスイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aに押し付ける。この結果、内歯車構造のスイッチ操作部材43,44は、外歯車47,48とは相対回転せず、外歯車47,48と同期して回転する。
【0022】
従って、駆動部10のモータ11により管状支持軸13が回転し、巻き取り軸30が回転して温室フィルムを巻き取っていくと、制御部40では、ウオーム51、ウオームホイール52、第1のかさ歯車53、第2のかさ歯車54,55及び外歯車47,48を介して、各スイッチ操作部材43,44が所定方向に回転する。そして、各スイッチ操作部材43,44が所定方向に所定量回転すると、突出片43b,44bが各リミットスイッチ41,42の接点41a,42aを押圧し、回路を遮断して、駆動部10のモータ11の駆動を停止させる。例えば、巻き取り限度位置(上限位置)では、一方のスイッチ操作部材43の突出片43bが一方のリミットスイッチ41の接点41aを押圧してモータ11の駆動を停止させ、巻き戻し限度位置(下限位置)では、他方のスイッチ操作部材44の突出片44bが他方のリミットスイッチ42の接点42aを押圧してモータ11の駆動を停止させる。
【0023】
一方、巻き取り限度位置又は巻き戻し限度位置の調整、すなわち、スイッチ操作部材43,44の突出片43b,44bの初期位置の調整は次のように行う。まず、初期位置を大きく調整したい場合は、調整つまみ45,46を図11に示したようにコイルスプリングの弾性力に抗して手前に引き、外歯車47,48の孔部47c,48cが第2のかさ歯車54,55の支持突起54a,55aの周囲に位置しないようにする。この常態では、調整つまみ45,46を回転させると、その大径部45b,46bに連結されている外歯車47,48は、その中心Pがスイッチ操作部材43,44の中心Q回りを公転するが、外歯車47,48の動きは規制されないため、スイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aに押し付けられた状態で、調整つまみ45,46と共に回転する。このため、スイッチ操作部材43,44もこれらに同期して回転する。従って、この場合には、調整つまみ45,46の回転量と同じだけスイッチ操作部材43,44の突出片43b,44bが回転する。この状態で、調整つまみ45,46を戻すと、コイルスプリングの弾性力により、図10に示したように、外歯車47,48は第2のかさ歯車54,55の背面に押し付けられると共に、孔部47c,48cが支持突起54a,55aの周囲に位置するように嵌り合う。
【0024】
次に、孔部47c,48cと支持突起54a,55aが嵌り合った状態で、調整つまみ45,46を回転させると、外歯車47,48は、その中心Pがスイッチ操作部材43,44の中心Q回りを公転するが、その際に、外歯車47,48の孔部47c,48cの内壁が支持突起54a,55aの周面に接するため、それに規制されることにより、外歯車47,48は、調整つまみ45,46の回転動作に同期せず、スイッチ操作部材43,44に対して相対回転し、外歯車47,48の歯部47a,48aとスイッチ操作部材43,44の歯部43a,44aとの噛み合いがずれていく。この結果、外歯車47,48が、スイッチ操作部材43,44の中心Q回りを1公転する毎に、スイッチ操作部材43,44が、外歯車47,48との歯数差分、本実施形態では1歯分回転する。従って、調整つまみ45,46の回転量に対して、スイッチ操作部材43,44の回転量が大幅に小さくなるため、スイッチ操作部材43,44の突出片43b,44bの初期位置を細かく制御でき、巻き取り限度位置又は巻き戻し限度位置の微調整を極めて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる温室フィルム開閉装置を示す概略平面図である。
【図2】図2は、上記実施形態にかかる温室フィルム開閉装置を示す背面図である。
【図3】図3は、上記実施形態の温室フィルム開閉装置で用いた移動機構を示す図である。
【図4】図4は、上記実施形態の温室フィルム開閉装置で用いた制御部の外観を示す図である。
【図5】図5は、上記実施形態の温室フィルム開閉装置で用いた制御部の内部を示す図である。
【図6】図6は、図5の正面図である。
【図7】図7は、図6のA−A線矢視図である。
【図8】図8は、上記実施形態の作用を説明するための図であって、スイッチ操作部材、外歯車、支持突起の配置関係を示す図である。
【図9】図9は、調整つまみの外観を示す図である。
【図10】図10は、外歯車の孔部が、第2のかさ歯車の支持突起の周囲に位置している状態を示す断面図である。
【図11】図11は、調整つまみを手前に引き、外歯車の孔部が、第2のかさ歯車の支持突起の周囲から離脱している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 温室フィルム開閉装置
10 駆動部
11 モータ
13 管状支持軸
20 移動機構
21 上段ローラ群
22 下段ローラ群
21a,22a 車輪
30 巻き取り軸
40 制御部
41,42 リミットスイッチ
43,44 スイッチ操作部材
43a,44a 歯部
45,46 調整つまみ
47,48 外歯車
47a,48a 歯部
47c,48c 孔部
51 ウオーム
52 ウオームホイール
53 第1のかさ歯車
54,55 第2のかさ歯車
54a,55a 支持突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室フィルムを巻き取り又は巻き戻しして開閉する巻き取り軸と、該巻き取り軸を回転させる駆動部とを備えた温室フィルム開閉装置において、
前記駆動部の駆動を停止させる駆動停止スイッチと、
前記駆動部の駆動により所定の角度回転し、前記巻き取り軸が温室フィルムの巻き取り方向限度位置又は巻き戻し方向限度位置に到達すると、前記駆動停止スイッチをスイッチングして前記駆動部の駆動を停止させるスイッチ操作部材と、
前記スイッチ操作部材を任意の角度回転させてその初期位置を調整し、該スイッチ操作部材によるスイッチング動作のタイミングを調節する初期位置調整部材とを備え、
前記スイッチ操作部材と前記初期位置調整部材とが、減速歯車機構を介して連結されており、
前記スイッチ操作部材の初期位置を調整するため、前記初期位置調整部材を回転させると、該初期位置調整部材の回転運動が減速されて前記スイッチ操作部材に伝達されることを特徴とする温室フィルム開閉装置。
【請求項2】
前記スイッチ操作部材が、外方に突出し、前記駆動停止スイッチを押圧する突出する突出片を備えると共に、内周縁に歯部を有する内歯車からなり、
前記減速歯車機構が、前記内歯車からなるスイッチ操作部材に噛み合う歯部を外周縁に備えると共に、歯数が該スイッチ操作部材よりも少なく、前記スイッチ操作部材の中心に対して偏心した位置に中心を有し、かつ、外周縁の内側に円周方向に沿って等間隔で形成された複数の孔部を有する外歯車を有してなり、
前記初期位置調整部材が、中心が前記スイッチ操作部材の中心に合致する細径部と、中心が前記外歯車の中心に合致し、前記外歯車の中央孔部に挿入される大径部とを有し、
前記外歯車の各孔部には、該孔部の内径よりも小さな外径の支持突起が挿入され、その状態で、前記初期位置調整部材を回転させると、前記外歯車が、前記スイッチ操作部材の中心回りを公転し、1公転毎に、前記スイッチ操作部材を前記外歯車との歯数差分、回転させる構造である請求項1記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項3】
前記外歯車の各孔部を、前記支持突起から離脱させた状態で、前記初期位置調整部材を回転させると、該初期設定位置調整部材の回転動作に、前記外歯車及び前記スイッチ操作部材が同期して回転する請求項2記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項4】
前記支持突起は、前記駆動部の回転を伝達する駆動伝達歯車に形成されており、前記駆動部を駆動させて巻き取り軸を回転させている際には、前記外歯車の各孔部内に、前記支持突起が位置しており、前記駆動部の駆動により前記駆動伝達歯車が回転すると、該支持突起を介して外歯車及びスイッチ操作部材が同期して回転することを特徴とする請求項2又は3記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項5】
前記駆動停止スイッチは、温室フィルムの巻き取り方向限度位置用と巻き戻し方向限度位置用との2つが設けられており、前記スイッチ操作部材、初期位置調整部材、及び減速歯車機構は、それぞれの駆動停止スイッチに対応して設けられている請求項1〜4のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項6】
前記駆動停止スイッチが、リミットスイッチである請求項1〜5のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項7】
前記巻き取り軸による温室フィルムの開閉動作に伴い、ガイド用棒状部材に沿って前記駆動部を移動させるため、前記駆動部に付設される移動機構をさらに備え、
前記移動機構が、移動方向に沿って所定間隔をおいて配設された上段ローラ群及び下段ローラ群を有し、
前記上段ローラ群及び下段ローラ群は、それぞれ、前記ガイド用棒状部材の周面に当接可能に、円周方向に沿って略等間隔で3カ所以上に配置される車輪を備えてなる請求項1〜6のいずれか1に記載の温室フィルム開閉装置。
【請求項8】
前記上段ローラ群及び下段ローラ群を構成する車輪が、それぞれ、円周方向に沿って略等間隔で3カ所に配置されいる請求項7記載の温室フィルム開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−274972(P2007−274972A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105878(P2006−105878)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】