説明

温室及び温室を用いた植物育成方法

【課題】
従来、寒冷地における温室栽培においては、冷暖房にかかるコストが甚大となり、経済的にもまたエコロジー的にも問題が生じていた。また、逆に寒冷な気候を利して収穫期を遅らせて付加価値を高める等の取り組みはなされてこなかった。
【解決手段】
少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を用い、温室辺縁部の断熱材周りや温室内部に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生産に用いる温室及びこの温室を用いた植物育成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地における温室栽培においては、燃料燃焼や電熱等による加温が行われていた。また、逆に寒冷な気候を利して収穫期を遅らせて付加価値を高める等の取り組みはなされてこなかった。
【特許文献1】特開2002−330640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の方法によっては、冷暖房にかかるコストが甚大となり、経済的にもまたエコロジー的にも問題が生じていた。
【0004】
また、従来の方法によっては寒冷な気候を利して収穫期を遅らせて付加価値を高める等の取り組みがなされず、寒冷地の気候を活かした特産物の開発なども困難であった。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、温室に於いて、少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を活用することにより、低コストで環境にも優しい温室栽培が可能となり、また寒冷な気候を利して収穫期を遅らせて付加価値を高める栽培方法も可能となった。
前記の方法を用いる事により、簡便な方法によって安価に農業の生産性と付加価値を高め、以て産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を用い、温室辺縁部の断熱材周りや温室内部に設置する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の1実施例の略図である。本実施例では、温室の辺縁部に形成された溝に、断熱材及び少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設して用いた。ここで、図中11は植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体、12は断熱材、13は温室本体を示す。
【0008】
筆者らは、以前より緑化工事、土木工事などで利用する少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体に関してその用途等を鋭意研究してきたが、今回農業への応用について検討を重ね、本発明に至ったものである。なお、かかる品は弊社(有)ノースグリーンの登録商標でチップタイと称しているので、以下の説明ではチップタイと呼称する。
【0009】
本実施例では、地下に埋設する断熱材としては安価な発泡スチロール板を用い、その内側にチップタイを併せて埋設した。これにより、発泡スチロール板とチップタイが共に断熱材とっして働くと共に、チップタイが発酵することによる発酵熱が生じ、温室部分の土地の凍結が抑制され、早期から温室を用いての植物栽培が可能となった。
【実施例2】
【0010】
次に、実施例1の構成の上でさらに温室内の地面の上にもチップタイを配設した。本実施例においては、温室本体はドーム形であり、透明ビニールの覆蓋を設置した。
【0011】
本実施例では、チップタイの地表覆蓋効果、チップタイ自体の発酵による発熱、チップタイによる太陽光の吸収、さらには配設した断熱材の断熱効果により、温室部分の地温を高め凍結を防止し、暖房等を用いることなく早期より生産を可能にすることが出来た。
【実施例3】
【0012】
次に、温室内で多段の構成をとった場合の実施例について説明する。本実施例では、温室本体はハウス型を用い、実施例1と同様に辺縁部の断熱を行った。また、温室内には棚状の構造を設け、上下段共にチップタイを敷き詰めた。
【0013】
本実施例の方法によれば、特に上段に於いてはチップタイの発酵発熱効果が高まり、非常に早期から温室の利用が可能になった。また、本実施例の方法を用いることにより、上段において高温を好む植物、下段では寒冷に強い植物、といった作り分けや、上段において光の必要な植物、下段では冷暗所でつくる植物、といった作り分けが可能になり、農業生産の効率が向上する。
【0014】
また、いずれの実施例においても、チップタイは土に代わって植物を育成する素材として活用出来、クリーンでエコロジカルな農業生産を可能にすることができる。
【実施例4】
【0015】
次に、同様の構成を活用して、春季以降の植物生産にあたりチップタイの保冷効果を発揮せしめ、一般の生産に対して時期を遅らせて生産物の付加価値を高めた生産を可能にする方法について説明する。
【0016】
本実施例においては、温室本体はハウス型を用い、実施例1と同様に辺縁部の断熱を行った。温室の屋根と外壁は着脱可能であり、厳寒期にこれを外しておく。温室内部にもチップタイを敷き詰め、これに潅水しながら凍結させる。完全に凍結したらさらにチップタイを重ね敷きして、潅水、凍結を繰り返してもよい。なお、積雪があると逆に保温効果を発揮して地下の凍結深度が浅くなるので、積雪を避けるために屋根は外さず、外壁だけを外すことも有効である。
【0017】
図2は、本実施例に係る温室を用いた植物育成方法の例を示す図である。ここで図中21はチップタイ、22は断熱材を示す。本実施例の方法によれば、季以降の植物生産にあたりチップタイの保冷効果を発揮せしめ、一般の生産に対して時期を遅らせて生産物の付加価値を高めた生産が可能となり、農業の付加価値向上に非常に有効であることが判明した。
【0018】
また、本実施例の方法は温室内を多段の構成とした場合にも有効である。特にチップタイによる栽培はイチゴなどに非常に適しており、通常は端境期となる夏期に出荷出来るイチゴ栽培など、経済的にメリットのある農業経営が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上述べてきたように、本発明の方法を用いる事により、簡便な方法によって安価に農業の生産性と付加価値を高め、以て産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる温室の構造の一例を示す略図である。(実施例1)
【図2】本発明にかかる温室を用いた植物育成方法の一例を示す略図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0021】
11 植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体
12 断熱材
13 温室本体
21 チップタイ
22 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成するための温室であって、該温室の辺縁部に形成された溝に、断熱材及び少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設してなる事を特徴とする温室。
【請求項2】
植物を育成するための温室であって、該温室の辺縁部に形成された溝に、少なくとも断熱材を配設してなり、且つ温室内部の床面にも少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設してなる事を特徴とする温室。
【請求項3】
植物を育成するための温室であって、該温室の辺縁部に形成された溝に、断熱材及び少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設してなり、且つ温室内部の床面にも少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設してなる事を特徴とする、請求項1乃至2記載の温室。
【請求項4】
植物を育成するための温室であって、該温室の辺縁部に形成された溝に、少なくとも断熱材を配設してなり、且つ温室内部の床面にも少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設してなり、さらに温室の屋根、外壁、上覆のいずれかが着脱可能である事を特徴とする、請求項2乃至3記載の温室。
【請求項5】
植物を育成するための温室であって、該温室の辺縁部に形成された溝に、少なくとも断熱材を配設してなり、且つ温室内は多段の植物育成スペースを有し、この多段のいずれか或いは複数の段に少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設されてなる事を特徴とする、請求項2乃至4記載の温室。
【請求項6】
温室の辺縁部に形成された溝に少なくとも断熱材を配設してなり、且つ温室内部の床面にも少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設し、冬季間は該構造物の地表覆蓋効果、該構造物自体の発酵による発熱、該構造物による太陽光の吸収、さらには配設した断熱材の断熱効果により、該温室部分の地温を高め凍結を防止し、暖房等を用いることなく早期より生産を可能にする事を特徴とする、温室を用いた植物育成方法。
【請求項7】
温室の辺縁部に形成された溝に少なくとも断熱材を配設してなり、温室の屋根、外壁、上覆のいずれかが着脱可能であり、且つ温室内部の床面にも少なくとも間伐材または建設廃材を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造物を配設し、冬季間は該構造物の屋根、外壁、上覆のいずれかを取り外した上で該構造物に潅水して凍結させ、必要に応じて該構造物を多段に設置・凍結させておき、春季以降の植物生産にあたり該構造物の保冷効果を発揮せしめ、一般の生産に対して時期を遅らせて生産物の付加価値を高めた生産を可能にする事を特徴とする、温室を用いた植物育成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−6845(P2007−6845A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194272(P2005−194272)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(301011604)有限会社ノースグリーン (12)
【Fターム(参考)】