説明

測位システム、及び測位方法

【課題】設置コストを抑えた測位システム、及び測位方法を提供することを課題としている。
【解決手段】測位信号s1を送信するターゲット・ノード1と、測位信号を受信した後、基準信号s2を送信する少なくとも1つ以上の第1のリファレンス・ノード2aと、測位信号および基準信号を受信し、測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻とを測定し、測定した測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻とに関する情報を測位サーバに各々送信する少なくとも2つの第2のリファレンス・ノード(2b,2c)と、複数の第2のリファレンス・ノードから送信された各々の測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻と、第1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、第1のリファレンス・ノードのタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する測位サーバ4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測位技術の一つとして、UWB−IR(Ultra Wide Bande−Impulse Radio;超広帯域パルス無線)を用いた測位(以下、UWB測位という)が、よく知られている(例えば、非特許文献1参照)。UWB測位では、位置推定のために参照されるパラメータとして、無線信号の到来時間、到来時間差(Time difference of Arrival;TDOA)、到来角、信号強度、等が利用されている。この中で、TDOAによるUWB測位は、比較的簡易なハードウェア構成で精度の高い測位結果を得ることが出来るため、広く用いられている。このTDOAによるUWB測位を行う場合、UWB信号を受信する複数の基地局の時刻は、高精度に同期させておく必要がある。
【0003】
基地局の時刻同期を実現するため、ノードが位置測位用の信号を送信し、送信された位置測位用の信号を3つの基地局と1つの基準局とが受信する。位置測位用の信号の受信後、基準局は、基準信号を送信し、送信された基準信号を3つの基地局がそれぞれ受信する。そして、各基地局は、位置測位用の信号を受信した時刻と、基準信号を受信した時刻とをそれぞれ測定する。そして、各基地局で測定された位置測位用の信号を受信した時刻と、基準信号を受信した時刻と、各基地局の位置情報を用いてノードの位置を計算している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−140617号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sinan Gezici, H. Vincent, ”Position Estimation via Ultra-Wide-Band Signals”, IEEE Proceedings of the IEEE, February 2009, Vol. 97, No. 2, pp. 386-403, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、ノードの位置を測定したい領域に3つの基地局に加え、基準局を新たに設置する必要があるので、設置コストが上昇するという問題点があった。また、特許文献1に記載の従来技術は、基準局を新たに設置するための場所を確保する必要があるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、設置コストを抑えた測位システム、及び測位方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る測位システムは、測位信号を送信するターゲット・ノードと、前記測位信号を受信した後、基準信号を送信する少なくとも1つ以上の第1のリファレンス・ノードと、前記測位信号および前記基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する少なくとも2つの第2のリファレンス・ノードと、複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻と、前記第1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、前記第1のリファレンス・ノードのタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する測位サーバと、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る測位システムにおいて、前記測位信号および前記基準信号を受信した少なくとも2つの前記第2のリファレンス・ノードは、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差を測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差に関する情報を前記測位サーバに各々送信し、前記測位サーバは、複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差と、前記リファレンス・ノードの各々の前記位置情報と、各々のタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係る測位システムにおいて、前記測位信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードは、順次、前記基準信号を送信し、順次、自装置以外の前記第1または第2のリファレンス・ノードが送信した基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る測位システムにおいて、前記基準信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードは、隣接し合う前記第1または第2のリファレンス・ノードは互いに異なる順番で前記基準信号を送信し、前記測位サーバは、前記第2の各々のリファレンス・ノードのタイムラグを用いてターゲット・ノードの位置を推定するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る測位システムにおいて、前記測位信号または前記基準信号がUWB−IR信号であるようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る測位方法は、ターゲット・ノードが、測位信号を送信する送信工程と、少なくとも1つ以上の第1のリファレンス・ノードが、前記測位信号を受信した後、基準信号を送信する送信工程と、少なくとも2つの第2のリファレンス・ノードが、前記測位信号および前記基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る測位方法において、前記基準信号を受信した少なくとも2つの前記第2のリファレンス・ノードが、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差を測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差に関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程と、前記測位サーバが、複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差と、前記1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、前記1のリファレンス・ノードのタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する工程と、を備えるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係る測位方法において、前記測位信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードが、順次、前記基準信号を送信し、順次、自装置以外の前記第1または第2のリファレンス・ノードが送信した基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同期される測位信号を受信したリファレンス・ノード自身が基準局として働くため、リファレンス・ノード以外に専用の基準局を設ける必要が無く、ノードの設置コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る測位システムの構成図である。
【図2】同実施形態に係るターゲット・ノードの構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係るリファレンス・ノード2(2b、2c;基地局)の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態に係るリファレンス・ノード2a(基地局)の構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態に係る測位サーバの構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態に係る測位計算を説明する図である。
【図7】同実施形態に係る複数のTDOA値を用いて幾何学的手法により測位座標を推定する手法を説明する図である。
【図8】同実施形態に係るリファレンス・ノード数が4つの場合の測位計算を説明する図である。
【図9】同実施形態に係るリファレンス・ノード数が3つの場合の送受信のシーケンス図である。
【図10】同実施形態に係る測位の手順を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態に係るシミュレーションにおいて仮定した測位フィールドを示す図である。
【図12】同実施形態に係る評価したエリア内における測位誤差の最大値のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】同実施形態に係る座標点(3,3)にターゲット・ノードを置いた際のシミュレーション結果を示す図である。
【図14】同実施形態に係る座標点(5,5)にターゲット・ノードを置いた際のシミュレーション結果を示す図である。
【図15】同実施形態に係る座標点(3,3)にターゲット・ノードを置いて測位を11000回行った際の測位結果の散布図である。
【図16】同実施形態に係る座標点(5,5)にターゲット・ノードを置いて測位を11000回行った際の測位結果の散布図である。
【図17】第2実施形態に係る測位システムの構成図である。
【図18】同実施形態に係る測位の手順を示すフローチャートである。
【図19】同実施形態に係るリファレンス・ノードの順位の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は係る実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る測位システムの構成図である。図1に示すように、測位システム100は、ターゲット・ノード1、リファレンス・ノード2a、リファレンス・ノード2b、リファレンス・ノード2c、ネットワーク3、測位サーバ4を備えている。
【0020】
ターゲット・ノード1は、端末装置であり、位置を計測するための無線信号s2(以下、測位信号s2という)を送信する機能を備えている。
リファレンス・ノード2a(第1のリファレンス・ノード)は、基準時間を確定するための無線信号s2(以下、基準信号s2という)を送信する基準局としての機能を備えている。なお、リファレンス・ノード2aは、ネットワーク3に接続されていない。
リファレンス・ノード2bと2cは、ターゲット・ノード1から送信された測位信号s1と、リファレンス・ノード2aから送信された基準信号s2とを受信する機能を備えている。リファレンス・ノード2b、2c(第2のリファレンス・ノード)は、数百ピコ秒〜数ナノ秒程度の幅を持つインパルス信号を捕捉できる高精度のクロック(不図示)を備えている。なお、リファレンス・ノード2b、2cの各クロックは、例えば、定期的にキャリブレーションされて同期している。リファレンス・ノード2b、2cは、測位信号s1を受信した時刻(以下、測位信号s1の受信時刻という)と基準信号s2を受信した時刻(以下、基準信号s2の受信時刻という)を測定する。リファレンス・ノード2b、2cは、測定した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻とをネットワーク3を介して測位サーバ4に送信する機能を備えている。なお、測位信号s1および基準信号s2は、例えばUWB−IR(Ultra Wide Bande−Impulse Radio;超広帯域パルス無線)信号である。
また、リファレンス・ノード2a、2cは、例えば、一辺が20[m]の正方形の異なる3つの頂点に配置されている。
【0021】
ネットワーク3は、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等により構築される。
測位サーバ4は、ネットワーク3を介して、リファレンス・ノード2bと2cから送信される測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻とを受信する。測位サーバ4は、受信した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻と、リファレンス・ノード2aと2bと2cの各位置情報と、リファレンス・ノード2aのタイムラグとに基づいて、ターゲット・ノード1の位置を推定する。
【0022】
次に、ターゲット・ノード1、リファレンス・ノード2a、2c、測位サーバ4について、図2〜図5を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るターゲット・ノードの構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態に係るリファレンス・ノード2(2b、2c;基地局)の構成を示すブロック図である。図4は、本実施形態に係るリファレンス・ノード2a(基準局)の構成を示すブロック図である。図5は、本実施形態に係る測位サーバの構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、ターゲット・ノード1は、プロセッサ部11、メモリ12、ベースバンド部13、送信RF部14、アンテナ15を備えている。
プロセッサ部11は、ターゲット・ノード1の動作モード(測位信号s1の送信モード、待機モード等)の切り替え制御を行う。プロセッサ部11は、メモリ12に記憶されているプログラムに基づき、測位信号s1のパケットデータを生成し、生成した測位信号s1のパケットデータをベースバンド部13に出力する。測位信号s1を送信するタイミングは、例えば予め定められている所定の周期、例えば、10[msec]、または」5[min]等の間隔である。
メモリ12には、所定のプログラム・データ、動作パラメータの設定が記憶されている。
ベースバンド部13は、測位信号s1の送信動作の管理、動作パラメータの設定、送信パケットデータのベースバンド処理(拡散、符号化)等を行う。ベースバンド部13は、メモリ12に記憶されている動作パラメータの設定を読み出し、読み出した動作パラメータの設定を用いて、測位信号s1のパケットデータのベースバンド処理を行う。ベースバンド部13は、ベースバンド処理された測位信号s1のデータを送信RF部14に出力する。
送信RF部14は、ベースバンド部13より出力された測位信号s1のデータを高周波帯域に変換し、変換したデータを、アンテナ15を介して測位信号s1として空間へ放射(送信)する。
なお、図2において、ターゲット・ノード1は、送信機能のみ備える構成の例を説明したが、受信機能も有するようにしてもよい。
【0024】
図3に示すように、リファレンス・ノード2(2b、2c)は、それぞれアンテナ21、受信RF部22、ベースバンド部23、プロセッサ部24、メモリ25、通信部26を備えている。
受信RF部22は、アンテナ21を介して無線信号(測位信号s1、基準信号s2)を受信する。受信RF部22は、受信した高周波帯の測位信号s1をベースバンド帯へ周波数変換し、周波数変換した受信信号をベースバンド部23へ出力する。
ベースバンド部23は、無線信号の受信動作の管理、動作パラメータの設定、受信パケットデータのベースバンド処理(逆拡散、復号)等を行う。ベースバンド部23は、メモリ25に記憶されている動作パラメータの設定を読み出し、読み出した動作パラメータの設定を用いて、無線信号のベースバンド処理を行う。ベースバンド部23は、ベースバンド処理された無線信号のデータをプロセッサ部24に出力し、メモリ25に書き込んで記憶させる。ベースバンド部23は、不図示のクロックに基づき、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻との測定を行う。ベースバンド部23は、測定した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報をプロセッサ部24に出力し、メモリ25に書き込んで記憶させる。
プロセッサ部24は、ベースバンド部23から出力された測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を通信部26に出力する。
メモリ25には、所定のプログラム・データ、動作パラメータの設定が記憶されている。
通信部26は、入力された測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を、ネットワーク3に合わせて変換し、変換した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を、ネットワーク3を介して測位サーバ4に送信する。
【0025】
図4に示すように、リファレンス・ノード2aは、アンテナ21、受信RF部22、ベースバンド部23a、プロセッサ部24a、メモリ25a、アンテナ27、送信RF部28を備えている。
受信RF部22は、アンテナ21を介して無線信号(測位信号s1)を受信する。受信RF部22は、受信した高周波帯の測位信号s1をベースバンド帯へ周波数変換し、周波数変換した受信信号をベースバンド部23aへ出力する。
ベースバンド部23aは、無線信号の受信動作の管理、動作パラメータの設定、受信パケットデータのベースバンド処理(逆拡散、復号)等を行う。ベースバンド部23aは、メモリ25aに記憶されている動作パラメータの設定を読み出し、読み出した動作パラメータの設定を用いて、測位信号s1のベースバンド処理を行う。ベースバンド部23aは、ベースバンド処理された無線信号のデータをプロセッサ部24aに出力し、メモリ25aに書き込んで記憶させる。ベースバンド部23aは、不図示のクロックに基づき、測位信号s1の受信時刻の測定を行う。ベースバンド部23aは、測定した測位信号s1の受信時刻に関する情報をプロセッサ部24aに出力し、メモリ25aに書き込んで記憶させる。ベースバンド部23aは、測位信号s1を受信した後、基準信号s2のデータを生成し、生成した基準信号s2のデータのベースバンド処理(拡散、符号化)等を行う。ベースバンド部23aは、ベースバンド処理した基準信号s2のデータを送信RF部28に出力する。図4において、受信アンテナ21と送信アンテナ27は別々に書かれているが、送受切り替え器等を用いて同じアンテナを共用しても良い。
送信RF部28は、入力された基準信号s2のデータを高周波帯域に変換し、変換したデータを、アンテナ27を介して基準信号s2として空間へ放射(送信)する。
【0026】
図5に示すように、測位サーバ4は、通信部41、測位部42、データベース43を備えている。
通信部41は、ネットワーク3を介して、リファレンス・ノード2(2b、2c)から送信された測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を受信する。通信部41は、受信した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を所定の信号フォーマットに変換して、変換した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を測位部42に出力する。
測位部42は、データベース43からリファレンス・ノード1および2(2a、2b、2c)の各位置情報と、リファレンス・ノード1(2a)のタイムラグに関する情報を読み出す。測位部42は、後述するように、読み出した各位置情報と各タイムラグに関する情報と、入力された測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻に関する情報を用いて、ターゲット・ノード1の位置を推定する。
データベース43には、リファレンス・ノード1および2(2a、2b、2c)の各位置情報と、リファレンス・ノード1(2a)の各タイムラグに関する情報とが保持されている。
【0027】
次に、本実施形態に係る測位計算について、図1と図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る測位計算を説明する図である。図6(a)は、リファレンス・ノード2b(基地局)が受信した無線信号D1を模式的に示した図である。図6(b)は、リファレンス・ノード2c(基地局)が受信した無線信号D3を模式的に示した図である。図6(c)は、リファレンス・ノード2a(基準局)が受信および送信した無線信号D2を模式的に示した図である。図6において、横軸は時間を表し、縦軸は信号レベルを表している。
【0028】
ターゲット・ノード1との距離は、リファレンス・ノード2bが一番近く、次にリファレンス・ノード2cが近く、リファレンス・ノード2aが一番遠いとする。
まず、ターゲット・ノード1は、測位信号s1を送信する。ターゲット・ノード1との距離に基づき、リファレンス・ノード2bは、時刻T1aに測位信号s1を受信する(図6(a)、波形201)。リファレンス・ノード2aは、時刻T1bに測位信号s1を受信する(図6(b)、波形211)。同様に、リファレンス・ノード2cは、時刻T3に測位信号s1(波形221)を受信する(図6(c))。
【0029】
リファレンス・ノード2aは、測位信号s1を受信した後、時刻T4の時、基準信号s2(波形222)を送信する。時刻T3と時刻T4との時間差TD3は、リファレンス・ノード2aの処理にかかる時間(以下、タイムラグ、プロセッシング・タイム、処理時間、ともいう)である。ここでタイムラグは、リファレンス・ノード2aの回路内を信号が伝わる際の伝搬遅延、等である。このタイムラグは、予め測定され、または設計値から算出され、測位サーバ4のデータベース43に記憶されている。または、タイムラグは、リファレンス・ノード2aが送信する基準信号s2のペイロード部に書き込まれることで、リファレンス・ノード2b(基地局)または2c(基地局)を介して測位サーバ4に送信するようにしてもよい。なお、ペイロード部とは、通信パケットのうちヘッダ部分を除いた転送したいデータ本体である。
【0030】
リファレンス・ノード2cは、時刻T2bに基準信号s2(波形212)を受信する(図6(b))。同様に、リファレンス・ノード2bは、時刻T2aに基準信号s2(波形202)を受信する(図6(a))。
すなわち、時間差TD1aは、リファレンス・ノード2bにおける測位信号s1の受信時刻T1aと基準信号s2の受信時刻T2aとの時間差を表す。時間差TD2aは、リファレンス・ノード2a(基準局)とリファレンス・ノード2b(基地局)とにて測定された各測位信号s1のTDOA(Time Difference Of Arrival;到来時間差)値である。また、時間差TD3は、リファレンス・ノード2a(基準局)が測位信号s1の受信から基準信号s2の送信までに要する処理時間を表す。時間差TD4aは、リファレンス・ノード2a(基準局)からリファレンス・ノード2b(基地局)までの基準信号s2の時間差を表している。また、時間差TD1bは、リファレンス・ノード2cにおける測位信号s1の受信時刻T1bと基準信号s2の受信時刻T2bとの伝搬時間を表している。
【0031】
時間差TD1aは、リファレンス・ノード2bのクロックに基づいて測定される値である。時間差TD4aは、リファレンス・ノード2a(基準局)とリファレンス・ノード2b(基地局)の座標が既知であるため、リファレンス・ノード2a(基準局)とリファレンス・ノード2b(基地局)との距離L1を、次式(1)のように光速c(3×10[m/s])で除算することで計算できる。
【0032】
TD4a=L1/c ・・・(1)
【0033】
すなわち、時間差TD1aとTD4aとが算出することができ、またはタイムラグTD3が既知であるため、到来時間差TD2aは、次式(2)を用いて算出できる。
【0034】
TD2a=TD1a−TD3−TD4a ・・・(2)
【0035】
同様に、リファレンス・ノード2a(基準局)とリファレンス・ノード2c(基地局)にて測定された測位信号s1の到来時間差TD2bも次式(3)のように算出できる。
【0036】
TD2b=TD1b−TD3−TD4b ・・・(3)
【0037】
式(3)において、時間差TD4bは、リファレンス・ノード2a(基準局)からリファレンス・ノード2c(基地局)までの基準信号s2の伝搬時間を表している。
測位サーバ4は、式(2)と(3)の2つのTDOA値を用いて、ターゲット・ノード1の位置を幾何学的手法もしくは統計学的手法により推定する。図7は、本実施形態に係る複数のTDOA値を用いて幾何学的手法により測位座標を推定する手法を説明する図である。ここで幾何学的手法とは、図7に示すように、例えば、複数のTDOA値によって決定される複数の双曲線251と双曲線261との交点271を測位座標とするような手法である。図7において、横軸は、x方向[m]であり、縦軸は、y方向[m]である。図7において、例えば、双曲線251が式(2)で算出された到来時間差TD2aの推定値であり、双曲線261が式(3)で算出された到来時間差TD2bである。
また、統計学的手法とは、例えば、TDOA値の測定値と理論値の誤差によって定義される尤度関数の値が最小となる点を持って測位座標とするような手法である。
【0038】
次に、測位サーバ4が統計学的手法により行う測位計算について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係るリファレンス・ノード数が4つの場合の測位計算を説明する図である。図8に示すように、ターゲット・ノード1の周辺に、4つのリファレンス・ノード1〜4が、各々、各座標(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)に配置されている。
図8において、リファレンス・ノード1を基準局とすると、尤度関数P(x,y)は、次式(4)のように定義できる。
【0039】
【数1】

【0040】
式(4)において、vは光速、tabはリファレンス・ノードaとリファレンス・ノードbとが、ターゲット・ノードからの測位信号s1を受信した時刻のTDOA値である。そして、測位サーバ4は、尤度関数P(x,y)が最小となる(x,y)の位置をターゲット・ノード1の座標の推定値とする。
【0041】
次に、本実施形態に係る測位システム100の送受信と測位推定について、図9と図10を用いて説明する。図9は、本実施形態に係るリファレンス・ノード数が3つの場合の送受信のシーケンス図である。図10は、本実施形態に係る測位の手順を示すフローチャートである。
まず、ターゲット・ノード1は、測位信号s1を送信する(ステップS1)。
次に、各リファレンス・ノード2a、2b、2cは、それぞれ時刻T1a、時刻T1b、時刻T3の時、測位信号s1を受信する。また、各リファレンス・ノード2a〜2cは、それぞれ測位信号s1の受信時刻を測定する(ステップS2)。
【0042】
次に、リファレンス・ノード2aは、時刻T4の時、基準信号s2を送信する(ステップS3)。
次に、リファレンス・ノード2bは、基準信号s2を受信し、受信した基準信号s2の受信時刻T2aを測定する。リファレンス・ノード2bは、測定した測位信号s1の受信時刻T1aと基準信号s2の受信時刻T2aとを用いて時間差TD1aを算出する。リファレンス・ノード2bは、算出した時間差TD1aに関する情報を測位サーバ4にネットワーク3を介して送信する(ステップS4)。
次に、リファレンス・ノード2cは、基準信号s2を受信し、受信した基準信号s2の受信時刻T2bを測定する。リファレンス・ノード2cは、測定した測位信号s1の受信時刻T1bと基準信号s2の受信時刻T2bとを用いて到来時間差TD1bを算出する。リファレンス・ノード2cは、算出した到来時間差TD1bに関する情報を測位サーバ4にネットワーク3を介して送信する(ステップS5)。
【0043】
次に、測位サーバ4は、ネットワーク3を介して、リファレンス・ノード2bと2cから到来時間差TD1aに関する情報と到来時間差TD1bに関する情報とを受信する。測位サーバ4は、データベース43に記憶されているリファレンス・ノード2aと2bと2cの各位置情報と、タイムラグTD3の情報とを読み出す。測位サーバ4は、読み出したリファレンス・ノード2aの位置情報と、タイムラグTD3の情報と、受信した到来時間差TD1aと到来時間差TD1bに関する情報とに基づき、式(2)と式(3)を用いて、ターゲット・ノード1の位置を算出することで推定する(ステップS6)。
【0044】
なお、本実施形態では、リファレンス・ノード2bが到来時間差TD1aを算出して、算出した到来時間差TD1aを測位サーバ4に送信する例を説明したが、測定した測位信号s1の受信時刻T1aに関する情報と基準信号s2の受信時刻T2aに関する情報とを測位サーバ4に送信するようにしてもよい。同様に、リファレンス・ノード2cは、測定した測位信号s1の受信時刻T1bに関する情報と基準信号s2の受信時刻T2bに関する情報とを測位サーバ4に送信するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、リファレンス・ノード2aが基準局の機能を備える例を説明したが、リファレンス・ノード2bまたは2cが基準局でもよい。この場合、リファレンス・ノード2aは基地局である。
また、リファレンス・ノードは、3つ以上であればよく、例えば4つでもよい。この場合、基準信号s2を送信する基準局の機能を有するリファレンス・ノードは1つでなくともよく、少なくとも1つであればよい。
【0046】
次に、本実施形態に係る測位方法の性能を評価するために、測位システムのシミュレーションを実施した結果について、図11〜図14を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係るシミュレーションにおいて仮定した測位フィールドを示す図である。図11において、横軸はx方向の距離[m]を表し、縦軸はy方向の距離[m]を表している。図11に示すように、基準局2a、基地局2b、基地局2cはそれぞれ座標(0,0)、(0,6)、(6,0)に配置され、1≦x≦5かつ1≦y≦5のエリア内(図11におけるハッチで示した領域301)における測位精度を評価した。なお、本シミュレーションにおいて、基地局2bおよび2cにて受信される測位信号s1と基準信号s2との時間差の測定誤差の幅は、±2nsと仮定した。
【0047】
図12は、本実施形態に係る評価したエリア内における測位誤差の最大値のシミュレーション結果を示す図である。図12に示すように、3つのリファレンス・ノード2a〜2cで作られる三角形の重心311において測位誤差の最大値は、最も小さく、0.3m以下となっている。重心311から離れるにつれて、測位誤差の最大値は、徐々に大きくなっている。
【0048】
図13は、本実施形態に係る座標点(3,3)にターゲット・ノードを置いた際のシミュレーション結果を示す図である。図14は、本実施形態に係る座標点(5,5)にターゲット・ノードを置いた際のシミュレーション結果を示す図である。なお、図13、図14において、リファレンス・ノード2a〜2cは、図11と同様の位置に配置してシミュレーションを行っている。
図13において円で示されている範囲321が測位誤差の範囲であり、点322で示されているのが測位信号s1と基準信号s2との時間差の測定誤差が0(ゼロ)のときの測位結果である。また、図14において楕円331で示されているのが測位誤差の範囲であり、点332で示されているのが測位信号s1と基準信号s2との時間差の測定誤差が0(ゼロ)のときの測位結果である。図13と図14の双方において、測位信号s1と基準信号s2との時間差の測定誤差が0のとき、測位結果は正確に真の座標を示している。
図13に示すように、ターゲット・ノードが3つのリファレンス・ノードが作る三角形の重心付近に置かれた場合、測位誤差の範囲321は真円となり、その半径は約0.3[m]である。一方、図14に示すように、ターゲット・ノードが3つのリファレンス・ノードが作る三角形の外側に置かれた場合、測位誤差の範囲331は楕円となり、その半径の最大値は約1[m]である。
【0049】
次に、本実施形態に係る測位方式の性能を評価するために、本願実施形態の測位システムについて実験により評価を行った。
図15は、本実施形態に係る座標点(3,3)にターゲット・ノードを置いて測位を1000回行った際の測位結果の散布図である。図16は、本実施形態に係る座標点(5,5)にターゲット・ノードを置いて測位を1000回行った際の測位結果の散布図である。
図15および図16において、それぞれ図13および図14の測位誤差の分布は、実験結果とシミュレーション結果とがよく一致している。このため、本実施形態に係る測位方法の測位誤差は、シミュレーション通りであり、高い測位精度が得られていることが確認できた。
【0050】
以上のように、本実施形態では、3つのリファレンス・ノードのうち1つが基準信号s2を送信する基準局になり、他のリファレンス・ノードが基地局になる。そして、測位サーバは、各基地局が測定した測位信号s1の受信時刻と基準信号s2の受信時刻との時間差、各基地局の位置、タイムラグを用いてターゲット・ノードの位置を推定するようにしたので、リファレンス・ノード自身が基準局として働くため、リファレンス・ノード以外に専用の基準局を設ける必要が無く、ノードの設置コストを低減できる。
【0051】
[第2実施形態]
図17は、第2実施形態に係る測位システムの構成図である。図17に示すように、測位システム100aは、ターゲット・ノード1、リファレンス・ノード2a’、リファレンス・ノード2b’、リファレンス・ノード2c’、ネットワーク3、測位サーバ4’を備えている。ターゲット・ノード1の構成は、第1実施形態(図2)と同様であり、リファレンス・ノード2a’、2b’、2c’の構成は、図4と同様であり、測位サーバ4’の構成は、図5と同様である。
【0052】
次に、本実施形態に係る測位システム100aの送受信と測位推定について、図18を用いて説明する。図18は、本実施形態に係る測位の手順を示すフローチャートである。
まず、ターゲット・ノード1は、測位信号s1を送信する(ステップS101)。
次に、各リファレンス・ノード2a’、2b’、2c’は、それぞれ測位信号s1を受信し、それぞれ測位信号s1の受信時刻を測定する(ステップS102)。
【0053】
次に、リファレンス・ノード2b’は、測位信号s1を受信後、基準信号s2bを送信する(ステップS103)。
リファレンス・ノード2b’は、リファレンス・ノード2a’から送信された基準信号s2aを受信し、基準信号s2aの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2b’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2aの受信時刻との到来時間差TDOA2bs1s2aを算出し、算出した到来時間差TDOA2bs1s2aに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS104)。
リファレンス・ノード2b’は、リファレンス・ノード2c’から送信された基準信号s2cを受信し、基準信号s2cの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2b’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2cの受信時刻との到来時間差TDOA2bs1s2cを算出し、算出した到来時間差TDOA2bs1s2cに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS105)。
【0054】
ステップS103と並行して、リファレンス・ノード2c’は、測位信号s1を受信後、基準信号s2cを送信する(ステップS106)。
リファレンス・ノード2c’は、リファレンス・ノード2b’から送信された基準信号s2bを受信し、基準信号s2bの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2c’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2bの受信時刻との到来時間差TDOA2cs1s2bを算出し、算出した到来時間差TDOA2cs1s2bに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS107)。
リファレンス・ノード2c’は、リファレンス・ノード2a’から送信された基準信号s2aを受信し、基準信号s2aの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2c’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2aの受信時刻との到来時間差TDOA2cs1s2aを算出し、算出した到来時間差TDOA2cs1s2aに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS108)。
【0055】
ステップS103と並行して、リファレンス・ノード2a’は、測位信号s1を受信後、基準信号s2aを送信する(ステップS109)。
リファレンス・ノード2a’は、リファレンス・ノード2b’から送信された基準信号s2bを受信し、基準信号s2bの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2a’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2bの受信時刻との到来時間差TDOA2as1s2bを算出し、算出した到来時間差TDOA2as1s2bに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS110)。
リファレンス・ノード2a’は、リファレンス・ノード2c’から送信された基準信号s2cを受信し、基準信号s2cの受信時間を測定する。リファレンス・ノード2a’は、測位信号s1の受信時刻と基準信号s2cの受信時刻との到来時間差TDOA2as1s2cを算出し、算出した到来時間差TDOA2as1s2cに関する情報を測位サーバ4’にネットワーク3を介して送信する(ステップS111)。
【0056】
次に、測位サーバ4’は、ネットワーク3を介して、リファレンス・ノード2b’と2c’から到来時間差TDOA2bs1s2a、TDOA2bs1s2c、TDOA2cs1s2b、TDOA2cs1s2a、TDOA2as1s2b、TDOA2as1s2cに関する情報を受信する。測位サーバ4’は、データベース43に記憶されているリファレンス・ノード2a’〜2c’の各位置情報と、タイムラグTD3の情報とを読み出す。ここで、タイムラグTD3は各々のリファレンス・ノードで異なる値である場合は、それぞれ独立なものとして管理されている。測位サーバ4’は、読み出したリファレンス・ノード2a’〜2c’の各位置情報と、タイムラグTD3の情報と、受信した各到来時間差に関する情報とに基づき、ターゲット・ノード1の位置を算出することで推定する(ステップS112)。
【0057】
次に、測位サーバ4‘が行う測位計算の例について説明する。ターゲット・ノードと4つのリファレンス・ノードは、図8のように配置されている。このため、各リファレンス・ノードが同時に基準局となった場合の尤度関数P(x、y)は、次式(5)のように定義できる。
【0058】
【数2】

【0059】
式(5)において、vは光速、tabはリファレンス・ノードaとリファレンス・ノードbとが、ターゲット・ノードからの測位信号s1を受信した時刻のTDOA値である。そして、測位サーバ4’は、尤度関数P(x,y)が最小となる(x,y)の位置をターゲット・ノード1の座標の推定値とする。
【0060】
図19は、本実施形態に係るリファレンス・ノードの順位の一例を説明する図である。測位したいターゲット・ノード1を囲む正方形の領域の各頂点に4つのリファレンス・ノードが配置されている場合において、リファレンス・ノードの順位決定の一例について説明する。
図19に示すように、ターゲット・ノード511は、まず領域501内の座標(x11,y11)の位置にある。また、リファレンス・ノード521は座標(x,y)の位置に配置され、リファレンス・ノード522は座標(x,y)の位置に配置され、リファレンス・ノード523は座標(x,y)の位置に配置され、リファレンス・ノード524は座標(x,y)の位置に配置されている。この場合、測位システム100aの施工者は、各リファレンス・ノード521〜524に対して、リファレンス・ノード521の順位を1、リファレンス・ノード522の順位を2、リファレンス・ノード523の順位を3、リファレンス・ノード524の順位を4と予め定めておく。そして、測位システム100aの施工者は、各リファレンス・ノードの順位を各リファレンス・ノード521〜524の各メモリ25aに記憶させておく。
【0061】
ターゲット・ノード511が、座標(x11,y11)で測位信号s1を送信した場合、各リファレンス・ノード521〜524は、予め定められている順位に基づき、順次、基準信号を送信する。このように、予め基準信号を発生する順位を定めておくことで、各リファレンス・ノード521〜524の信号が同時に送信されることを防ぐことができる。
【0062】
次に、ターゲット・ノード511が、領域502内の座標(x12,y12)の位置に移動する。そして、領域502の各頂点(x,y)、(x,y)、(x,y)、(x,y)の位置に各リファレンス・ノード523〜526が配置されている。この場合、順位は、領域501の順位を引き継ぎ、リファレンス・ノード523が順位3、リファレンス・ノード524が順位4に設定されている。このため、座標(x,y)、(x,y)の順位は、施工者により順位3と4以外である順位1と2に設定されている。すなわち、隣接するリファレンス・ノードに設定されている順位と重ならない順位が設定され、各リファレンス・ノードの各メモリ25aに記憶させておく。すなわち、図19に示すように、各順位は、リファレンス・ノード525が順位1、リファレンス・ノード526が順位2に設定されている。
このように、予め基準信号を発生する順位を定めておくことで、ターゲット・ノードが他の領域に移動した場合においても、各リファレンス・ノード521〜524の信号が同時に送信されることを防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態では、複数のリファレンス・ノードが基準局の役割をする順番を予め設定しておく例を説明したが、基準局になる順番はランダムでもよい。この場合、基準局となるリファレンス・ノードを固定しないことで、測位フィールド内に通信の死角となる場所が発生する可能性を低減する効果がある。例えば、ターゲット・ノード511が、100[m/sec]の速さで移動している場合、フィールド内にある障害物等により、特定の基地局のみが測位信号s1を受信できない、すなわち通信の死角状態が発生する場合がある。このような場合、基準信号を送信する基準局を固定にしてしまうと、通信の死角になってしまい、測位を行えない。このため、リファレンス・ノードは、基準局の役割と基地局の役割とに、例えば、100[msec]ごとに切り替えることで、通信の死角を減少させることができる。
【0064】
また、測位計算の際に必要となる各リファレンス・ノードのタイムラグは、予め測定して測位サーバ4’のデータベース43または不図示の記憶部に記憶しておいてもよい。また、各リファレンス・ノードのタイムラグは、測位前もしくは測位中に行われるキャリブレーション処理によって求めることができる。キャリブレーション処理とは、例えば、2つのリファレンス・ノード間で信号を送受信し、信号の往復に要した時間から既知であるリファレンス・ノード間の距離を信号が伝搬するために要する時間を引くことで、あるリファレンス・ノードにおけるタイムラグが見積もることができる。各リファレンス・ノードは、これらのタイムラグを測定し、測定した各タイムラグを測位サーバ4’に各々送信するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態では、3つのリファレンス・ノードのうち1つが順次、基準信号を送信する基準局になり、他のリファレンス・ノードが基地局になる。そして、測位サーバは、各基地局が測定した測位信号s1の受信時刻と基準信号の受信時刻との時間差、各基地局の位置、タイムラグを用いてターゲット・ノードの位置を推定するようにしたので、リファレンス・ノード自身が基準局として働くため、リファレンス・ノード以外に専用の基準局を設ける必要が無く、ノードの設置コストを低減できる。
【0066】
なお、本実施形態では、3つのリファレンス・ノードのうち1つが順次、基準信号を送信する基準局になり、他のリファレンス・ノードが基地局になる例を説明したが、基準局の役割をするのは、例えば、ネットワーク3と接続できなくなったターゲット・ノードでもよい。図17において、ターゲット・ノード2a’〜2c’が初期状態でネットワーク3に接続されていたとする。そして、ターゲット・ノード1から測位信号を受信した時、リファレンス・ノード2a’がネットワーク3から切断されていた場合、リファレンス・ノード2a’は基準局になり、他のリファレンス・ノード2b’、2c’が基地局になるようにしてもよい。
【0067】
なお、実施形態の図2〜図5の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD−ROM等の可搬媒体、USB(Universal Serial Bus) I/F(インタフェース)を介して接続されるUSBメモリ、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、サーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0068】
100、100a・・・測位システム
1、511・・・ターゲット・ノード
2a〜2c、2a’〜2c’・・・リファレンス・ノード(基準局、基地局)
3・・・ネットワーク
4、4’・・・測位サーバ
11、24、24a・・・プロセッサ部
12、25、25a・・・メモリ
13、23a・・・ベースバンド部
14・・・送信RF部
15、21、27・・・アンテナ
22・・・受信RF部
23・・・ベースバンド部
26、41・・・通信部
28・・・送信RF部
42・・・測位部
43・・・データベース
s1・・・測位信号
s2・・・基準信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位信号を送信するターゲット・ノードと、
前記測位信号を受信した後、基準信号を送信する少なくとも1つ以上の第1のリファレンス・ノードと、
前記測位信号および前記基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する少なくとも2つの第2のリファレンス・ノードと、
複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻と、前記第1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、前記第1のリファレンス・ノードのタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する測位サーバと、
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記基準信号を受信した少なくとも2つの前記第2のリファレンス・ノードは、
測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差を測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差に関する情報を前記測位サーバに各々送信し、
前記測位サーバは、
複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差と、前記リファレンス・ノードの各々の前記位置情報と、タイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記測位信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードは、
順次、前記基準信号を送信し、順次、自装置以外の前記第1または第2のリファレンス・ノードが送信した基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2の記載の測位システム。
【請求項4】
前記測位信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードは、
隣接し合う前記第1または第2のリファレンス・ノードは互いに異なる順番で前記基準信号を送信し、
前記測位サーバは、
前記第1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、前記第1および前記第2の各々のリファレンス・ノードのタイムラグを用いてターゲット・ノードの位置を推定する
ことを特徴とする請求項3に記載の測位システム。
【請求項5】
前記測位信号または前記基準信号がUWB−IR信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測位システム。
【請求項6】
ターゲット・ノードが、測位信号を送信する送信工程と、
少なくとも1つ以上の第1のリファレンス・ノードが、前記測位信号を受信した後、基準信号を送信する送信工程と、
少なくとも2つの第2のリファレンス・ノードが、前記測位信号および前記基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程と、
を備えることを特徴とする測位方法。
【請求項7】
前記基準信号を受信した少なくとも2つの前記第2のリファレンス・ノードが、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差を測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差に関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程と、
前記測位サーバが、複数の前記第2のリファレンス・ノードから送信された各々の前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻との差と、前記1と第2のリファレンス・ノードの各々の位置情報と、前記1のリファレンス・ノードのタイムラグとに基づきターゲット・ノードの位置を推定する工程と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の測位方法。
【請求項8】
前記測位信号を受信した複数の前記第2のリファレンス・ノードが、順次、前記基準信号を送信し、順次、自装置以外の前記第1または第2のリファレンス・ノードが送信した基準信号を受信し、前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とを測定し、測定した前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに関する情報を前記測位サーバに各々送信する送信工程
を備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−98071(P2012−98071A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244023(P2010−244023)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【Fターム(参考)】