説明

湿式不織布用熱接着性複合繊維およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、接着性が良好で、効率良く安定して、地合いの均一な不織布を製造でき、なおかつ熱接着加工時の収縮が低い湿式不織布用熱接着性複合繊維およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】上記課題は繊維形成性成分と熱接着性成分とからなる熱接着性複合繊維であり、融点が130〜230℃の範囲であるポリエステルを熱接着性成分とし融点が220℃以上でなおかつ熱接着性成分の融点より20℃以上高いポリアルキレンテレフタレートを繊維形成性成分とし、少なくとも該熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合繊維であって、熱接着性成分に特定の変性ポリオレフィンが一定量配合され該熱接着性繊維表面にポリエーテルエステル共重合体からなる油剤が付着しており、熱接着性成分の重量比率、繊維長、油剤付着量、120℃乾熱収縮率が規定されている熱接着性複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式不織布用熱接着性複合繊維およびその製造方法に関し、さらには、強力が高く、地合いの均一な不織布を製造でき、なおかつ熱接着加工時の収縮が低い湿式不織布用熱接着性複合繊維およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式不織布用熱接着繊維として、共重合ポリエステル系の複合繊維が広く用いられている。例えば、結晶融点を持たない非晶性共重合ポリエステルを熱接着性成分とし、融点が220℃以上のポリアルキレンテレフタレートを繊維形成性成分とする湿式不織布用熱接着性複合繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、本特許出願において提案された湿式不織布用熱接着性繊維は、従来より接着性は改善されているものの、なお不十分であった。さらに、その特許出願において提案された湿式不織布用熱接着性繊維は、従来より熱収縮の抑えられたものであったが、依然熱接着加工時の収縮が大きく、寸法安定性に劣るという課題があった。
【0003】
一方、融点が151℃の結晶性共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレートを熱接着性成分とし、ポリエチレンテレフタレートを繊維形成性成分とするエアレイド不織布用の熱接着性複合繊維が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。本特許において提案された複合繊維は、良好な接着性を示すものの、水中での分散性に劣るため、得られる湿式不織布の地合いは満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−227089号公報
【特許文献2】特開2005−139569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、接着性が良好で、効率良く安定して、地合いの均一な不織布を製造でき、なおかつ熱接着加工時の収縮が低い熱接着性複合繊維およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、熱接着性成分を構成するポリマーの種類、熱接着性複合繊維の複合状態および形状などが、主体繊維との接着性に大きく影響することに着目し、従来の湿式不織布用熱接着性複合繊維より接着性が向上し、同時に、効率良く品位の優れた湿式不織布が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
かくして、本発明によれば、繊維形成性成分と熱接着性成分とからなる熱接着性複合繊維であり、融点が130〜230℃の範囲であるポリエステルを熱接着性成分とし、融点が220℃以上でなおかつ熱接着性成分の融点より20℃以上高いポリアルキレンテレフタレートを繊維形成性成分とし、少なくとも該熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合繊維であって、該熱接着性繊維表面に油剤が付着し、下記(1)〜(7)を満足することを特徴とする熱接着性複合繊維およびその製造方法が提供される。
(1)熱接着性成分に、ポリオレフィンが該熱接着性成分の重量を基準として0.5〜15重量%含まれていること
(2)該ポリオレフィンがポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンに、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸を共重合したポリオレフィンであること
(3)熱接着性成分の熱接着性複合繊維に占める割合が40〜95重量%であること
(4)繊維長が2〜30mmであること
(5)油剤がポリエステル・ポリエーテル共重合体であること
(6)油剤付着率が熱接着性複合繊維に対して、0.01重量%以上であること
(7)120℃における乾熱収縮率が8%以下であること
【0008】
また当該熱接着性複合繊維は、熱接着性複合繊維を延伸した後熱風中で弛緩熱処理を行う製造方法または熱接着性複合繊維を延伸した後温水中でオーバーフィード処理を行う製造方法によって製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱接着性複合繊維は主体繊維との接着性が良好であるだけでなく、かかる複合繊維によれば、湿式不織布の地合いを均一なものとすることができる。さらに湿式不織布の製造の際に熱接着加工時の収縮が抑えられ、寸法安定性の優れた湿式不織布が得られる。このため、本発明の熱接着性複合繊維からは、極めて高品質の不織布を製造することができる。そのためそのようにして得られた不織布はフィルターなど濾過機能を要求される用途に好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、融点が130〜230℃の範囲であるポリエステルを熱接着性成分とし、融点が220℃以上でなおかつ熱接着性成分の融点より20℃以上高いポリアルキレンテレフタレートを主として構成する熱接着性複合繊維である。上記熱接着性成分を主として構成するポリマーは、融点が130〜220℃の範囲、好ましくは150〜200℃の範囲であるポリエステルである。ここで「主として構成する」とは、熱接着性成分の60重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上を構成することをいう。
【0011】
かかる熱接着性成分としては、第三成分としてジカルボン酸あるいはジオールを共重合したポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリトリメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリ乳酸系ポリマーなどが具体例として挙げられる。上記熱接着性成分の中でも、ジカルボン酸あるいはジオールを共重合したポリエチレンテレフタレート、ジカルボン酸あるいはジオールを共重合したポリブチレンテレフタレートが好適である。上記共重合ポリエチレンテレフタレートは、構成する全酸成分を基準としてイソフタル酸が5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%共重合したものが熱接着性の点で特に好ましい。また、上記共重合ポリブチレンテレフタレートは、構成する全酸成分を基準としてイソフタル酸が5〜40モル%、より好ましくは5〜35モル%共重合したものが熱接着性の点で特に好ましい。なお、上記の共重合ポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリブチレンテレフタレートには、熱接着性やその他の物性を阻害しない範囲で、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸テトラブチルアンモニウム、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ポリカプロラクトン、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールなどがランダム共重合もしくはブロック共重合されていてもよい。これらの成分が共重合されることによって、熱接着性成分を構成するポリアルキレンテレフタレートはその融点を130〜230℃とすることができる。融点が130℃より小さいと複合繊維としての生産に困難が伴い、また繊維間の融着が起こりやすく複合繊維の品質が劣る場合がある。一方融点が230℃より高いと十分な熱接着性を付与することができない。
【0012】
本発明の繊維形成性成分を構成するポリアルキレンテレフタレートは、融点が220℃以上である必要がある。220℃未満であると複合繊維を安定して紡糸・製糸することが困難になる、および湿式抄紙後の熱処理工程で熱による劣化や変形等がしばしば発生するという問題が発生する。ただし、上記繊維形成性成分の融点と熱接着性成分の融点の差が大きすぎると紡糸性が低下する傾向にあり、該繊維形成性成分の融点は220〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは225〜280℃の範囲である。また、上記繊維形成性成分の融点は上記熱接着性成分の融点より20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40〜150℃高い必要がある。さらに上記繊維形成性成分を構成するポリアルキレンテレフタレートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられるが、中でもポリエチレンテレフタレートが、融点および複合繊維としたときの剛性が高い点からより好ましい。
【0013】
上記の熱接着性成分および繊維形成性成分に使用されるポリマーには、本発明の効果を妨げない範囲でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などの添加剤が必要に応じて含有されていてもよい。
【0014】
本発明の複合繊維は、少なくとも熱接着性成分が該複合繊維の表面に露出するように複合化されている複合繊維であり、熱接着性成分と繊維形成性成分が並列型(サイドバイサイド型)に複合化されたもの、熱接着性成分を鞘成分とし繊維形成性成分を芯成分とし、両成分が鞘芯型または偏芯鞘芯型に複合化された複合繊維である。本発明の複合繊維においては、熱接着性成分の該繊維表面に占める割合が小さくても高い接着力を示すが、主体繊維を均一に濡らすことができる点で鞘芯型に複合化させるのが特に好ましい。
【0015】
本発明においては、前述の複合繊維が前述した(1)〜(7)の要件を同時に満足していることが肝要である。これにより、上記各要件の奏する効果があいまって、主体繊維との接着性を良好とすること、効率良く地合いの均一な湿式不織布を製造すること及び熱接着加工時の収縮を抑えることのすべての課題を同時に達成することができる。
【0016】
以下、上記(1)〜(7)の各要件について説明する。まず、本発明においては、(1)熱接着性成分として、上記のような共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリブチレンテレフタレートを主として構成するポリマーとして用いた場合、繊維−繊維間の摩擦が高くなりやすく、水中での分散性が低下することがあるため、熱接着性成分に、ポリオレフィンが該成分の重量を基準として0.5〜15重量%含まれている必要がある。これにより湿式不織布中の結束状欠点を格段に減少させることができる。上記ポリオレフィンとしては、(2)に記載があるようにポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンを主たる成分とし、これらにスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などを共重合したものなどが例示できるが、特にマレイン酸共重合ポリオレフィンがポリエステルとの相溶性が良好であり、結束状欠点を減少させる効果が大きいため、より好ましい。即ち本願発明のビニルモノマーを共重合した変性ポリオレフィンの具体例としては、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸若しくはマレイン酸などを共重合したポリプロピレン;スチレン、アクリル酸、メタクリル酸若しくはマレイン酸などを共重合した高密度ポリエチレン;スチレン、アクリル酸、メタクリル酸若しくはマレイン酸などを共重合した中密度ポリエチレン;スチレン、アクリル酸、メタクリル酸若しくはマレイン酸などを共重合した低密度ポリエチレン;又はスチレン、アクリル酸、メタクリル酸若しくはマレイン酸などを共重合した線状低密度ポリエチレンを挙げることができる。また、ポリオレフィンの熱接着性成分への混合率が0.5重量%未満であると欠点減少効果が低下し、15重量%を超えると、紡糸時の糸切れが発生しやすくなる傾向にある。ポリオレフィンの混合率は、より好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0017】
次に、(3)熱接着性成分の複合繊維に占める割合を40〜95重量%とする必要がある。40重量%未満では、主体繊維の表面を十分濡らすだけのポリマー量がないため、該主体繊維との熱接着性が不十分となり、十分な強力の湿式不織布が得られない。95重量%を超えると、複合繊維の安定した溶融紡糸が困難となる。上記割合としては45〜90重量%の範囲が好ましく、より好ましくは50〜80重量%の範囲である。これら(1)、(3)の配合に関する要件は熱接着性成分とポリオレフィンの混合・混練率の調整、複合繊維を紡糸する際に繊維形成性成分と熱接着性成分の吐出量の調整によって当業者であれば容易に実現することができる。
【0018】
さらに(4)繊維長は、2〜30mmとする必要がある。繊維長が2mmを下回ると、主体繊維を強固に接着させるためのネットワークが形成しにくくなり、また繊維の切断工程を継続・安定して行うことが難しい。一方、繊維長が30mmを超えると、抄紙の際に十分な水中への分散性が得られず、好ましくない。繊維長としては、3〜20mmがより好ましい。本発明の熱接着性複合繊維においては、捲縮を実質的に有していないことがより好ましい。捲縮を有していると、湿式抄紙工程において繊維が均一に分散するのが困難となる。実質的にとは、具体的には3個/25mm以下を指す。
【0019】
また、(5)本発明の複合繊維に使用する油剤は、親水性の高いポリエステル・ポリエーテル共重合体を主たる構成成分とする必要がある。ポリエステル・ポリエーテル共重合体以外の油剤を使用すると、抄紙の際に十分な分散性が得られず、好ましくない。親水性を確保し且つ熱接着性成分であるポリエステルや繊維形成性成分であるポリアルキレンテレフタレートとの濡れ性を確保する為に、ポリエステル・ポリエーテル共重合体は酸成分としてテレフタル酸やイソフタル酸、ポリオール成分としてポリエチレングリコールが共重合されているポリエステル・ポリエーテル共重合体が好ましい。
【0020】
ポリエーテル・ポリエステル共重合体を構成するジカルボン酸の成分比率はテレフタル酸および/またはイソフタル酸の共重合モル比が40:60〜100:0の範囲が適切である。ジカルボン酸成分全体に対して、イソフタル酸成分の含有率が60モル%を超える場合、あるいはテレフタル酸の含有率が40モル%未満となると、繊維形成性成分や熱接着性成分を構成するポリエステルに対するポリエーテル・ポリエステル共重合体の固着性が小さくなり好ましくない。
【0021】
また、他の一方の構成成分であるポリアルキレングリコールの数平均分子量は1000〜8000の範囲が適切である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が1000未満の場合あるいは8000を超える場合は、親水性が高くなり繊維形成性成分や熱接着性成分を構成するポリエステルへの固着が十分に確保できない。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が小さい場合、水分子が共晶膜へ充分に水和しないためと推定される。一方、8000を超える場合は、主に熱接着性成分を構成する共重合ポリエステルに対するポリエーテル・ポリエステル共重合体の相溶性が小さくなるためと推定される。
【0022】
ポリアルキレングリコールの共重合割合は、40〜90重量%の範囲が適切である。共重合割合が40重量%未満であると温水中の水分子の共晶膜への水和が不十分であり、一方90重量%を超えると熱接着性成分を構成する共重合ポリエステルに対するポリエーテル・ポリエステル共重合体の相溶性が小さくなる。ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0023】
さらに、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の数平均分子量は3000〜20000の範囲が適切であるである。3000未満あるいは20000を超える場合は、いずれも熱接着性成分を構成する共重合ポリエステルに対するポリエーテル・ポリエステル共重合体の固着が不十分であったり、得られた熱接着性複合繊維の水中への分散性が十分でなかった。このような油剤に関する種々の構成要件を満たす油剤を採用することによって、湿式不織布を製造する抄紙の際に、均一に繊維が分散し不織布の地合の均一性、均一な接着性を達成することができる。
【0024】
また、(6)油剤付着率を0.01重量%以上とする必要がある。油剤付着率が0.01重量%を下回ると、抄紙の際に十分な分散性が得られず、好ましくない。抄紙の際には水中に複合繊維を分散させることが一般に採用されるので、水への分散性を考慮してポリエーテル部分には主にポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン単位を有することが好ましい。油剤付着率としては、0.1重量%以上がより好ましい。油剤付着率は油剤を含まない熱接着性複合繊維の重量を基準として油剤の固形成分の重量率を持って表すことが一般に採用されている。
【0025】
また、(7)本発明の複合繊維の120℃における乾熱収縮率は8.0%以下とする必要がある。8.0%を超えると、不織布の熱接着処理時の収縮が大きくなる。より好ましくは6.0%以下である。また複合繊維の乾熱収縮率をこの値の範囲内にするには、後述するような製造方法を採用する事で可能となる。本発明の複合繊維の繊度は特に限定されないが、0.1〜3.0デシテックスの範囲が主体繊維との熱接着性をより強固にでき好ましい。特に繊度を細くすればするほど構成本数を多くでき、得られる湿式不織布の強力が高くなるため有利である。紡糸延伸条件の調整によって繊度の調整は行うことができる。
【0026】
本発明の複合繊維を主体繊維と混綿して用いる場合、該複合繊維が湿式不織布中に3〜30重量%程度含まれるようにすれば、十分な接着性能を発揮できる。
本発明の熱接着性複合繊維は、たとえば以下の方法により製造することができる。すなわち、前述した熱接着性成分および繊維形成性成分を構成するポリマーをチップ状とし、これらをそれぞれ乾燥した後、溶融して公知に複合紡糸口金に導入し、溶融複合繊維糸条として押し出し、口金下15〜100mmの位置で冷却固化し紡糸速度300〜2000m/分で巻き取り未延伸糸を得る。得られた未延伸糸を15〜80℃で、1.5〜7.0倍に延伸し、60〜100℃で定長熱処理もしくはオーバーフィード熱処理を行うまたは弛緩熱セットを行って熱接着性複合繊維とすることができる。この際、熱収縮を下げるため、通常、延伸温度または熱セット温度を高めに設定する方法などがある。以下、延伸後に弛緩熱処理を行う場合とオーバーフィード熱処理をする場合についてより詳細に述べる。
【0027】
本発明の複合繊維を製造する際には、上記のような延伸処理をした後、弛緩熱処理を行い、収縮させる製造方法を採用することができる。弛緩熱処理(無緊張状態下での熱処理)は熱風中で行うことが好ましい。熱風の温度は、70〜150℃の範囲で行うことが好ましい。70℃未満であると、熱風中で十分な収縮が発現せず、本発明の目的である複合繊維の低収縮化が達成されない。一方、熱風温度が150℃を超えると、鞘の熱接着性成分が膠着し、得られる複合繊維の水中での分散性も劣るものとなる。80〜130℃の範囲が、より好ましい。
【0028】
また本発明の複合繊維は以下の手法によっても製造することができる。本発明の複合繊維は、上記のような延伸処理をした後、オーバーフィード熱処理を行い、収縮させる製造方法を採用することもできる。オーバーフィード熱処理は温水中で行うことが好ましい。オーバーフィード熱処理は、以下のようにして行うことが一例としてあげることができる。延伸処理後は樹脂の性質上、紡糸・延伸条件に由来して、強い熱収縮を生じる場合もあり、この場合には繊維の配向を上げてしまう方向であるので、1.0倍より大きい延伸ドラフトをかける代わりに未延伸糸が延伸中に弛みを生じない程度の1.0倍未満のドラフト(オーバーフィード)をかけながら熱処理をしても差し支えない。温水の温度は、70〜100℃の範囲で行うことが好ましい。70℃未満であると、温水中で十分な収縮が発現せず、本発明の目的である複合繊維の低収縮化が達成されない。一方、温水温度が100℃を超えると、鞘の熱接着性成分が膠着し、得られる複合繊維の水中での分散性も劣るものとなる。80〜98℃の範囲が、より好ましい。オーバーフィード処理は、0.7〜0.97倍の倍率で行うことが好ましい。0.7倍未満であると、温水中での収縮が不十分な場合、温水中でトウが弛み、安定的に生産ができない。一方、0.97倍を超えると、本発明の目的である複合繊維の低収縮化が達成されない。0.8〜0.95倍の範囲がより好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0030】
(1)固有粘度([η])
オルトクロロフェノールを溶媒として、温度35℃で測定した。
【0031】
(2)メルトフローレイト(MFR)
JIS K 7210 に記載の方法により測定した。
【0032】
(3)融点(Tm)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量系DSC−7型を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
【0033】
(4)繊度
JIS L 1015 7.5.1 A法に記載の方法により測定した。
【0034】
(5)繊維長
JIS L 1015 7.4.1 C法に記載の方法により測定した。
【0035】
(6)乾熱収縮率
JIS L 1015 7.15(2)に準拠し、120℃にて実施した。
【0036】
(7)シートの引張り強さおよび地合い
熊谷理機工業株式会社製角型シートマシンを使って、熱接着性複合繊維50%と主体繊維50%とを水中でよく撹拌、混合して分散させ、大きさが約25cm×約25cmで、目付けが約50g/cmのシートを作製する。該シートを濾紙の間に挟んで、熊谷理機工業株式会社製の高温用回転型乾燥機を使って表面温度160℃の条件で、熱処理を行う。この熱処理されたシートを、JIS P8113に従って引張り強さを測定し、裂断長で表した。熱処理されたシートについては下記の判定基準で地合いの良否も目視で判定した。
地合い○:構成繊維の分布が均一であり、斑が非常に少ない。
地合い△:構成繊維の分布がやや不均一であり、斑がやや目立つ。
地合い×:構成繊維の分布が非常に不均一であり、斑が目立つ。
【0037】
(8)シート面積収縮率
熊谷理機工業株式会社製角型シートマシンを使って、熱接着性複合繊維80%とNBVKPパルプ20%とを水中でよく撹拌・混合して分散させ、大きさが約25cm×約25cmで、目付けが約50g/m2のシートを作成する。次に、該シートを室温中で一昼夜以上乾燥させた後、孔を開けたテフロン(登録商標)シートの上に載せ、該シートを熱風循環式乾燥機にて120℃、5分間収縮処理を行う。収縮処理前のシート面積A0と収縮処理後の面積A1から下記の式により求めシート面収縮率とする。
シート面積収縮率(%)=〔(A0−A1)/A0〕×100
【0038】
[参考例1]
120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。溶融ポリマーを、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1305孔有する紡糸口金から溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は720g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1200m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で3.1倍に延伸し、引き続いて90℃の温水中で1.15倍に延伸した後、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞った後、130℃で乾燥した後、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は1.7デシテックス、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着率は0.24重量%であった。
【0039】
[実施例1]
80℃で24時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.55dL/g、Tmが151℃の共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート(coPBT;イソフタル酸25モル%、エチレングリコール35モル%共重合)とマレイン酸が0.5重量%共重合された低密度ポリエチレン(MFR8g/10分、Tm98℃)のチップを95:5の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、255℃の溶融混合ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で3.1倍に延伸し、引き続いて90℃の温水中で1.15倍に延伸した後、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞り、110℃の熱風中で45分間弛緩熱処理した後、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.2デシテックス、120℃乾熱収縮率は2.3%、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表1に示した。
【0040】
[実施例2]
80℃で24時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.55dL/g、Tmが151℃の共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート(coPBT;イソフタル酸25モル%、エチレングリコール35モル%共重合)とマレイン酸が0.5重量%共重合された低密度ポリエチレン(MFR8g/10分、Tm98℃)のチップを95:5の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、255℃の溶融混合ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で4.0倍に延伸し、引き続いて95℃の温水中で0.9倍でオーバーフィード処理した後、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.1デシテックス、120℃乾熱収縮率は4.6%、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
[比較例1]
80℃で24時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.55dL/g、Tmが151℃の共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート(coPBT;イソフタル酸25モル%、エチレングリコール35モル%共重合)とマレイン酸が0.5重量%共重合された低密度ポリエチレン(MFR8g/10分、Tm98℃)のチップを95:5の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、255℃の溶融混合ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で3.1倍に延伸し、引き続いて90℃の温水中で1.15倍に延伸した後、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.1デシテックス、120℃乾熱収縮率は12%、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表2に示した。
【0043】
[比較例2]
35℃で48時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.57dL/g、Tmを示さない共重合ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(coPET;イソフタル酸30モル%、ジエチレングリコール4モル%共重合)を二軸エクストルーダーで溶融し、250℃の溶融ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を55℃の温水中で3.1倍に延伸し、引き続いて50℃の温水中で1.15倍に延伸した後、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.1デシテックス、120℃乾熱収縮率は15%、ポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表2に示した。
【0044】
[比較例3]
80℃で24時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.55dL/g、Tmが151℃の共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート(coPBT;イソフタル酸25モル%、エチレングリコール35モル%共重合)とマレイン酸が0.5重量%共重合された低密度ポリエチレン(MFR8g/10分、Tm98℃)のチップを95:5の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、255℃の溶融混合ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で3.1倍に延伸し、引き続いて90℃の温水中で1.15倍に延伸した後、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35(重量比)からなる油剤のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞り、110℃の熱風中で45分間弛緩熱処理した後、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.2デシテックス、120℃乾熱収縮率は2.3%、油剤の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表2に示した。
【0045】
[比較例4]
80℃で24時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.55dL/g、Tmが151℃の共重合ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート(coPBT;イソフタル酸25モル%、エチレングリコール35モル%共重合)とマレイン酸が0.5重量%共重合された低密度ポリエチレン(MFR8g/10分、Tm98℃)のチップを95:5の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、255℃の溶融混合ポリマー(熱接着性成分)とした。一方、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)のチップをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=50:50となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを1032孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は280℃、吐出量は750g/分であった。さらに吐出ポリマーを30℃の冷却風で冷却し、1100m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を70℃の温水中で4.0倍に延伸し、引き続いて95℃の温水中で0.9倍でオーバーフィード熱処理した後、ステアリルホスフェートカリウム塩/ジメチルシリコーン=65/35(重量比)からなる油剤のエマルジョン(濃度2重量%)を通過させ、約12重量%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに、5mmの繊維長にカットした。得られた短繊維の繊度は2.1デシテックス、120℃乾熱収縮率は4.6%、油剤の付着率は0.24重量%であった。得られた繊維と参考例1で作製した主体繊維を使用して作製したシートの引張り強さと地合い及びシート面積収縮率を表2に示した。
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
上述のようにして本発明の熱接着性複合繊維を得ることができる。得られた熱接着性複合繊維の乾熱収縮率は小さく、その熱接着性複合繊維から得られた湿式不織布は地合が良好であり、十分な強度を有することは明らかである。本発明の熱接着性複合繊維は主体繊維との接着性が良好であるだけでなく、かかる複合繊維によれば、湿式不織布の地合いを均一なものとすることができる。さらに湿式不織布の製造の際に熱接着加工時の収縮が抑えられ、寸法安定性の優れた湿式不織布が得られる。このため、本発明の熱接着性複合繊維からは、極めて高品質の不織布を製造することができる。そのためそのようにして得られた不織布はフィルターなど濾過機能を要求される用途に好ましく用いることができる。これらのことが達成できたことによる産業上の意義は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形成性成分と熱接着性成分とからなる熱接着性複合繊維であり、融点が130〜230℃の範囲であるポリエステルを熱接着性成分とし融点が220℃以上でなおかつ熱接着性成分の融点より20℃以上高いポリアルキレンテレフタレートを繊維形成性成分とし、少なくとも該熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合繊維であって、該熱接着性繊維表面に油剤が付着しており下記(1)〜(7)を満足することを特徴とする熱接着性複合繊維。
(1)熱接着性成分に、ポリオレフィンが該熱接着性成分の重量を基準として0.5〜15重量%含まれていること
(2)該ポリオレフィンがポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンに、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸を共重合したポリオレフィンであること
(3)熱接着性成分の熱接着性複合繊維に占める割合が40〜95重量%であること
(4)熱接着性複合繊維の繊維長が2〜30mmであること
(5)油剤がポリエステル・ポリエーテル共重合体であること
(6)油剤付着率が熱接着性複合繊維に対して、0.01重量%以上であること
(7)120℃における乾熱収縮率が8%以下であること
【請求項2】
熱接着性複合繊維が、熱接着性成分を鞘、繊維形成性成分を芯とする芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1記載の熱接着性複合繊維。
【請求項3】
繊維形成性成分がポリエチレンテレフタレートである請求項1〜2のいずれかに記載の熱接着性複合繊維。
【請求項4】
300〜2000m/分の紡糸速度で引き取った未延伸糸を1.5〜7.0倍に延伸した後、弛緩熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱接着性複合繊維の製造方法。
【請求項5】
弛緩熱処理を熱風中で行うことを特徴とする請求項4に記載の熱接着性複合繊維の製造方法。
【請求項6】
300〜2000m/分の紡糸速度で引き取った未延伸糸を1.5〜7.0倍に延伸した後、オーバーフィード熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱接着性複合繊維の製造方法。
【請求項7】
オーバーフィード熱処理を温水中で行うことを特徴とする請求項6に記載の熱接着性複合繊維の製造方法。

【公開番号】特開2011−195978(P2011−195978A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62437(P2010−62437)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】