説明

溶融金属の温度測定装置

【課題】ゲッタ材は使用中に大きい温度変動に曝され、そのため熱応力を受ける。熱応力はゲッタ材の損傷を生じる。
【解決手段】実質的にグラファイト及び金属酸化物より形成された外部保護体を有する熱電対チューブとその内部に配置された熱電対とを有し、前記熱電対チューブが前記外部保護体内で隙間を置いて配置されて中間スペースを形成しており、該中間スペースには絶縁材と酸素還元材が配置されている、金属溶融物特に鉄又は鉄鋼溶融物中の温度を測定するための温度測定装置において、前記絶縁材と前記酸素還元材とは、粉末混合物の形で、前記熱電対チューブ(3)の周りを隙間を保って取り囲むか又は前記外部保護体(1)により隙間を保って取り囲まれている管(2)を形成していることを特徴とする温度測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にグラファイト及び金属酸化物より形成された外部保護体を有する熱電対チューブとその内部に配置された熱電対とを有し、前記熱電対チューブが前記外部保護体内で間隔を置いて配置されて中間スペースを形成しており、該中間スペースには絶縁材と酸素還元材が配置されている、金属溶融物特に鉄又は鉄鋼溶融物中の温度を測定するための温度測定装置に関する。本発明はさらにかかる装置を製造する方法と提供する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は例えばEP558808B1、及びUS5209571A等により公知である。これらの刊行物には、熱電対を保護するために熱電対チューブと外部保護体との間にゲッタ材が配置される。同様な記載はGB2193375にも記載されている。
【特許文献1】EP558808B1
【特許文献2】US5209571A
【特許文献3】GB2193375
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このゲッタ材は使用中に大きい温度変動に曝され、そのため熱応力を受ける。熱応力はゲッタ材の損傷を生じる。
従って本発明の目的は従来装置の上記の欠点を改良した溶融金属柱で温度を測定するための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的は特許請求の範囲に記載した本発明の特徴により解決される。
本発明の装置は、実質的にグラファイト及び金属酸化物より形成された外部保護体を有する熱電対チューブとその内部に配置された熱電対とを有し、前記熱電対チューブが前記外部保護体内で隙間を置いて配置されて中間スペースを形成しており、該中間スペースには絶縁材と酸素還元材が配置されている、金属溶融物特に鉄又は鉄鋼溶融物中の温度を測定するための温度測定装置である。ここに熱電対チューブとは一端が閉じており、熱電対線がその内部に配置され、熱電対線同士は少なくとも一種の絶縁材により互いに離間されているものを指す。この絶縁材の具体的例としては二重管又は個別の管セグメントがある。前記絶縁材と前記酸素還元材とは、粉末混合物の形で、前記熱電対チューブの周りを隙間を保って取り囲むか又は前記外部保護体により隙間を保って取り囲まれている管を形成していて、さらに熱電対チューブ及び・又は保護体に対して相対移動ができるので、熱応力は補償され、その結果、装置の全体は破損のおそれが減じる。好ましくは、絶縁材はアルミニウム酸化物のような酸化物、酸素還元材はアルミニウムのような非貴金属(卑金属)である。粉末混合物におけるアルミニウム含有量は10〜40重量%、好ましくは15〜33重量%である。
【0005】
前記管は一端が閉じているか、両端が開放しているか、又は複数の管セグメントから形成されることができる。粉末混合物の他にバインダを含むことができる。高温度用のバインダは公知であり、例えばフェノール系バインダ、メチルセルロース系バインダは使用できる。バインダは管を強化するが所望のゲッタ作用を害しない。管自体は乾式圧縮成型、注型、押出又はプラズマ噴射等により形成でき、それにより最小の空孔率で且つ低い酸化性ガス透過率の高密度の管を作製できる。絶縁材と酸素還元材とで形成されたこの管と、熱電対チューブ又は外部保護体との間の隙間には、ガス、繊維、又はボールが、必要な可動性を阻害しないように充填されている。繊維又はボールは装置の安定化に役立つ。繊維又はボールはアルミニウム酸化物、又は酸化物(特にアルミニウム酸化物)と酸素還元材(特に卑金属特にアルミニウム)との混合物より形成できる。前記ガスは混合ガス、特に窒素の混合ガスでありうる。
【0006】
本発明の目的はさらに上記の装置を製造する方法を提供する。すなわち、粉末混合物を使用して管を製作し、該管に熱電対を挿入し、外部保護管を前記管の周りに配置する方法である。まず管(ゲッタ管)を保護体に挿入し、次いで例えば圧縮し、次いで熱電対チューブに挿入する。
【0007】
図1〜3は本発明の各種の実施例を示す。
図1は閉じた酸素還元管を有する装置を示す。
図2は複数の管セグメントから製作された酸素還元管を有する装置を示す。
図3は開放した酸素還元管を有する装置を示す。
【0008】
図1は本発明の第1の実施例を示す。グラファイトとアルミニウム酸化物とから製作され約50〜60重量%の範囲のアルミニウム酸化物を含有する外部保護体1の中央孔に、アルミニウム酸化物とアルミニウムとの混合物とから製作されアルミニウムの含有量が約20重量%のゲッタ管2が配置される。ゲッタ管2は外部保護体1と共に圧縮される。ゲッタ管2の内部には熱電対チューブ3が配置され、そしてこれら熱電対チューブ3とゲッタ管2との間には隙間4が形成される。熱電対チューブ3は一端が開放しており、外部保護体1から接触片5の中に延びている。接触片5に接触のために他の測定ワイヤが設けられている。熱電対チューブ3は外部保護体1の内部でセメント6により環状接触片5に固定されている。セメント7はまた熱電対チューブ3を管状接触片5の内部に固定するために環状接触片5の内部に導入できる。隙間4には空気が存在する。
【0009】
図2は本発明の他の実施例を例示する。この実施例では、外部保護体1の内部に、互いに固定された複数の管セグメントから形成されたゲッタ管2’が配置されている。ゲッタ管2’は外部保護体1との間に隙間4’を形成し、またゲッタ管2’の内部に配置した熱電対チューブ3との間に隙間4を形成している。熱電対チューブ3は接触片5の内部に開放し、そしてセメント7により固定されている。接触片5は外部保護体1の内部にセメント6で固定されている。
【0010】
図3は本発明の同様な他の実施例を示し、ゲッタ管2”は単一部片として形成され、そして隙間4’に介在して外部保護体1の内部に配置されている。ゲッタ管2”と熱電対チューブ3との間にも隙間4が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】閉じた酸素還元管を有する装置を示す。
【図2】複数の管セグメントから製作された管を有する装置を示す。
【図3】開放した酸素還元管を有する装置を示す。
【符号の説明】
【0012】
1 外部保護体
2、2’、2”’ ゲッタ管
3 熱電対チューブ
4、4’隙間
5 接触片
6、7 セメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にグラファイト及び金属酸化物より形成された外部保護体を有する熱電対チューブとその内部に配置された熱電対とを有し、前記熱電対チューブが前記外部保護体内に配置されて中間スペースを形成しており、該中間スペースには絶縁材と酸素還元材が配置されている、金属溶融物特に鉄又は鉄鋼溶融物中の温度を測定するための温度測定装置において、
前記絶縁材と前記酸素還元材とは、粉末混合物の形で、前記熱電対チューブ(3)の周りを隙間を保って取り囲むか、又は前記外部保護体(1)により隙間を保って取り囲まれている管(2、2’、2”)を形成していることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記絶縁材が酸化物特にアルミニウム酸化物であり、前記酸素還元材は卑金属特にアルミニウムである請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
粉末混合物を基準としてアルミニウム含有量は10〜40重量%、好ましくは15〜33重量%である請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記管(2、2’、2”)は一端が閉じているか、両端が開放しているか、又は複数の管セグメントから形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記管(2、2’、2”)は前記粉末混合物の他にバインダを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記絶縁材と酸素還元材とで形成された前記管(2、2’、2”)と、熱電対チューブ(3)又は外部保護体(1)との間の隙間(4、4’)には、少なくとも部分的にガス、繊維、又はボールが充填されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記繊維又はボールは、アルミニウム酸化物、又は酸化物特にアルミニウム酸化物と酸素還元材特に卑金属特にアルミニウムとの混合物、である請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記ガスは混合ガス、特に窒素の混合ガスである請求項6に記載の測定装置。
【請求項9】
粉末混合物を使用して管を製作し、該管に熱電対(3)を挿入し、外部保護管(1)を前記管の周りに配置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項の測定装置を製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−57528(P2007−57528A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211448(P2006−211448)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】