説明

溶融金属中のガス含有量を測定する方法

【課題】公知のガス収集装置を改良し、収集プロセスの効率を増加させ、測定方法の効率も増加させる装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、収集ボディを持つ浸漬端と、浸漬端が開口しているガス供給ラインと、ガスが収集ボディを浸透するためのガス放出ラインと、で構成され、ガス収集ボディが、浸漬端に配置された端面と、側壁とを備えており、少なくとも前記ガス収集ボディの一部が、ガス不透性の層を備えている、溶融金属中のガスを収集するための測定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収集ボディを持つ浸漬端と、浸漬端が開口しているガス供給ラインと、ガスが収集ボディを浸透するためのガス放出ラインと、で構成され、ガス収集ボディが、浸漬端に配置された端面と、側壁とを備えている、溶融金属中のガスを収集するための装置に関する。
【0002】
加えて、本発明は、ガスが溶融金属中に導入され、溶融金属中に含まれたガスとのガス交換に取り掛かり、それから、ガスは、取り出されて、評価のために測定装置に供給され、少なくとも2つの異なったガスが溶融金属中に導入されて評価され、両方のガスは、個別のキャリアガスと任意のガスの混合とを有しており、溶融金属中のガスの割合が決定される、溶融金属中のガス含有量を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
そのような装置は、例えば、DE102005011181A1又は、EP307430B1によって知られている。そのようなデバイスにおいて、溶融金属中に含まれた特定のガスの内容が測定できるように、溶融金属からのガスは、集められて測定装置に送られる。
【0004】
この目的のために、リファレンスガス又はキャリアガスを溶融金属に供給するためのガス供給ラインは、ガス収集ボディを貫通し、その端面から外にでており、そのガス供給ラインを用いてリファレンスガスは、溶融金属中に吹き込まれる。
【0005】
リファレンスガスは、溶融金属中のガスで富んでくる、又は、他のやり方によれば、リファレンスガスは、溶融金属よりも測定されるガスの濃度が高くなる。これにより、結果として生じるガス混合物は、測定されるガスの濃度が、リファレンスガスよりも低くなる。
【0006】
結果として生じるガス混合物は、ガス収集ボディによって上方へ上げられ、ガス放出ラインを通して測定装置に供給され、評価される。測定方法は、例えば、EP307430B1にその詳細が記載されている。そのような測定方法は、EP563447A1にも記載されている。似たような装置は、US6,216,526B1と、EP295798A1とから公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ国特許第102005011181号明細書
【特許文献2】欧州特許第307430号明細書
【特許文献3】欧州特許第563447号明細書
【特許文献4】アメリカ合衆国特許第6,216,526号明細書
【特許文献5】欧州特許第295798号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、公知のガス収集装置を改良し、収集プロセスの効率を増加させ、測定方法の効率も増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的は、独立請求項の構成要件によって成し遂げられる。好ましい実施形態は、従属請求項から得られる。
少なくともガス収集ボディの一部にガス不浸透性層を備えているので、ガス収集ボディによって、ガスのより多くの部分を収集でき、この部分をガス放出ラインと、従って測定装置に供給することができる。なぜならば、ガス収集ボディを貫通したガスは、少なくとも本質的には、ガス放出ラインからを除いて、もはやガス収集ボディからでることができないので、ガス収集ボディのなかを上がっていったガスのかなり大きい部分は、測定装置に供給されることができるからである。
【0010】
このように、測定は、単純で、速く、そして結局は、より正確にもなる。少なくとも外側の側壁の一部がガス不浸透性層を備えることが得策である。ガス収集ボディそれ自身は、すでに先行技術(上記参照)から公知の、端面に空洞空間を備えている。溶融物から出てきたガスは、最初にこの空洞空間内に収集される。それから、それらは、ガス収集ボディの中を通る。なぜならば、それらは、空洞空間から他の方向に逃げられないからである。
【0011】
ガス不浸透性層による側面の遮蔽により、ガスは、ガス放出ラインを通ってのみ外に出ることができる。この目的のために、ガス不浸透性層は、ガス収集ボディの側壁の表面に配置されることができる。その層は、重なって配置された少なくとも2つの副層で構成されると有利である。ガス収集ボディの内側に面した下側の副層は、特に、鉄よりも高い融点を持った金属からつくられることができる。その金属は、特に、モリブデン、チタン、バナジウム、クロム、ニオブ、又は、少なくともこれらの1つの合金であることができる。
【0012】
下側の、内部の副層は気密性がある。ガス収集ボディの内部からみて外側に向き、セラミックでつくられた、外側の副層は、この内部の副層に適用されることができる。この外側の副層は、ガス収集ボディとそれの間に配置された金属製の下部の副層のための保護層としての役目を果たすことができる。
【0013】
外側の副層は、このましくは、酸化物セラミックまたは、ケイ酸塩から、特に、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化クロム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、又はスピネルから形成されることができる。ガス収集ボディは、ほとんど完全にその層で覆われることができるが、ガス収集ボディへのガス入口端面と、ガス収集ボディからガス放出ラインへの出口だけが覆われていない。
【0014】
ガス収集ボディの端面全体、又は、ガス収集ボディの端面空洞空間の表面だけを覆わない状態にすることは、理にかなっている。好ましくは、少なくとも副層の1つは、プラズマ溶射によって適用される。
【0015】
便宜上、ガス収集ボディは、円柱状、又は、円錐状の側壁を持つことができる。ガス放出ラインは、好ましくは、ガス収集ボディの端面の反対側に位置する、ガス収集ボディの後壁に配置される。ガス放出ラインは、例えば、ガス供給コネクタ上、又は、ガス収集ボディの開口部の中に配置させることができる。
【0016】
その装置は、本発明によれば、溶融金属中のガス含有量の測定のために使用される。例えば、多種多様の異なった溶融金属での測定が可能である。ガス収集ボディそれ自身は、溶融金属に対して不浸透性であるが、測定されるガスに対しては、大変良好なガス透過性と受容性とを示す。
【0017】
本発明によれば、本測定方法は、混合されたガスの濃度は、溶融金属中の測定されるガスの濃度よりも、ガス導入のそれぞれのケースにおいて下か、ガス導入のそれぞれのケースにおいて上のどちらかである。
【0018】
ここで、本方法は、溶融金属中の仮定したガス濃度とともにスタートし、溶融金属中の期待される濃度よりもはっきりと上か、下か、の濃度が、導入されるガスのために選ばれる。それから、2つのガスにとって、測定されるガスは、溶融金属中で吸収されるか、脱着されるかどちらかである。このように、測定は、お互いに独立の、2つ又はそれ以上のガスとともに成し遂げられる。
【0019】
ここで、同一の、又は、異なったキャリアガスが使用されることができる。もし、溶融金属中の決定されたガスの濃度が、導入されたガス中のこのガスの濃度よりも高かった場合は、溶融物中に導入されたガスは、溶融物からガスを吸収する。そのため、導入ガスとして、純粋なキャリアガスも使用されることができ、測定されるガスの濃度が導入ガス中でゼロであることができる。
【0020】
反対のケースとして、溶融金属が、導入ガスからガスを吸収する。なぜならば、それぞれのケースにおいて、必然的にゴールは平衡となるからである。測定のために、溶融金属中の異なったガスの吸収と脱着の特性が異なることができるという環境は、使用されることができる。
【0021】
キャリアガスとして、不活性ガスが、好ましくは、アルゴンそして/または窒素が使用されることができる。溶融金属中の一酸化炭素濃度が測定されるために、混合されたガスとして、一酸化炭素が使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、図を参照して以下により詳細に説明されるだろう。図は、本発明と一致して、装置の部分断面図を示している。
図に示された装置は、キャリアチューブ(図示せず)上のアタッチメントノズル1に固定され、このチューブとともに溶融金属中に浸漬される。ガス収集ボディ2は、ガス交換を行うため、溶融金属中に浸漬される。アタッチメントノズル1内には、ガス連結部3;3’がある。
【0024】
ここで、中央ガス連結部3は、装置内の中央に配置されたガス供給ライン内で開いている。この供給ラインは、ガス収集ボディを通して中央にガイドされており、ガス収集ボディの端面5の真下で終わる。キャリアガスは、ガス供給ライン4を通して溶融金属中に導入される。
【0025】
ガス供給ライン4は、基本的には、石英チューブでつくられ、その開口部がガス収集ボディ2の方向に向けられるようにその浸漬端を曲げることができる。ガス供給ライン4は、ガス収集ボディ2にセメント6を用いて固定される。ガス供給ライン4を通して溶融金属中に流れるキャリアガスは、溶融金属からのガスを吸収し、ガス収集ボディ2の空洞空間7のなかに上がってきて、端面5とそこから収集ボディ2の中を通る。
【0026】
これは、例えばセメントのような多孔性の材料で形成されている。セラミックのボディ、例えば、酸化アルミニウムも可能である。ガスは、ガス収集ボディの細孔を通り抜け、ガス放出ラインの中を上昇する。この放出ラインは、基本的に石英ガラスチューブ8で形成され、セメント9によってガス収集ボディ2に固定されている。
【0027】
石英ガラスチューブの中には、例えば、球状の酸化アルミニウムで作られた多孔性の充填物10が詰められている。充填物10を通して、溶融金属からのガスと混合されたキャリアガスは、ガス連結部3’を通して測定装置に放出される。そこで、抽出したガスは、溶融金属中に導入されたガスと比較され、従って、溶融物から吸収された(溶融物に脱着された)ガスは、評価されて、その結果、溶融金属中のガス含有量が決定される。
【0028】
このプロセスは、それ自体は、十分よく知られており、例えば、EP307430B1(または、EP563447A1に類似して)に記載されている。アルゴンは、導入されるガスのキャリアガスとして使用される。期待されるガス含有量は、2.5%なので、2.5%より多い割合(例えば、5%と10%)の一酸化炭素は、溶融鋼鉄中の一酸化炭素を測定するために、キャリアガスと混合される。
【0029】
ガス収集ボディ2は、その円錐状の外側表面に、下側副層11と外側副層12とで作られたガス不浸透性の層を備えている。下側の副層11は、モリブデンで形成される。外側の副層12は、保護層として使用され、スピネルで作られる。原理上は、ガス不浸透性の層は、浸漬端と対向する、ガス収集ボディ2の端にも配置されることができる。しかしながら、通常のケースでは、これは必要ない。それは、そこに備えられる表面は小さいので、ガス漏れは、ちっぽけな範囲でしか起きないからである。
【0030】
それ故に、実際には、その装置によって取り出されたすべてのガスは、石英ガラスチューブ8によって定義されたガス放出ラインに供給される。
この装置によって、溶融鋼鉄中の水素または窒素の量も決定されることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 アタッチメントノズル
2 ガス収集ボディ
3 中央ガス連結部
4 ガス供給ライン
5 端面
6 セメント
7 空洞空間
8 石英ガラスチューブ
9 セメント
10 充填物
11 下側副層
12 外側副層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属中のガス含有量を測定する方法であって、
ガスが溶融金属中に導入され、溶融金属中に含まれたガスとのガス交換に取り掛かり、それから、ガスは、取り出されて、評価のために測定装置に供給され、
少なくとも2つの異なったガスが溶融金属中に導入されて評価され、
両方のガスは、個別のキャリアガスと任意のガスの混合とを有しており、溶融金属中でのそれらの割合が決定され、
混合されたガスの濃度は、溶融金属中の測定されるガスの濃度よりも、ガス導入のそれぞれのケースにおいて下か、ガス導入のそれぞれのケースにおいて上のどちらかである、 ガス含有量測定方法。
【請求項2】
導入されたガスが、異なったキャリアガスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活性ガスが、特にアルゴンと窒素のうちのいずれか一つまたは両方がキャリアガスとして使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合されたガスが、一酸化炭素である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
測定されるガスの濃度よりも低い濃度の場合は、キャリアガスに混合されたガスの濃度が、ゼロであることができる、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−255814(P2012−255814A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221747(P2012−221747)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2008−179271(P2008−179271)の分割
【原出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】