説明

溶融金属温度の測定方法

【課題】従来の光ファイバを使用する測定装置では、保護被覆の溶融は早いので、短時間の後には光ファイバに対する適正な保護を行えなくなる。
【解決手段】光ファイバにより溶融金属中で温度を測定するための方法において、光ファイバ(2)の浸漬端を、支持体(6)により支持され且つ溶融金属消耗性である第1の消耗性本体(1)により案内し、光ファイバ(2)の浸漬端を、消耗性本体(1)と共に溶融金属に少なくとも1回浸漬し、前記支持体(6)の少なくとも部分的な消耗後に、前記第1の前記消耗性本体(1)を前記支持体(6)から取り外し、次いで第2の消耗性本体(2)と交換し、前記光ファイバ(2)を前記第2の消耗性本体(1)を通して送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバにより溶融金属の温度を測定する方法及び装置に関する。光ファイバは支持体に支持され且つ測定装置に直結又は間接的に接続されている。光ファイバの浸漬端は溶融金属中で消耗することができる消耗性本体により案内される。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は公知であり、例えば欧州特許公開EP655613A1に記載されている。そこに記載された装置では、光ファイバは数層の保護被覆を有する。保護被覆は1秒当たり1〜10cmの速度で溶融する。保護被覆は特に測定すべき溶融金属の温度よりも高い融点を有する粒子を含有している。
【0003】
同様な装置は特開平03−284709号及び特開平04−329323号に記載されている。更に、これらの文献は溶融金属中での測定を光ファイバを利用して行うことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許公開EP655613A1
【特許文献2】特開平03−284709号
【特許文献3】特開平04−329323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の光ファイバを使用する測定装置では、保護被覆の溶融は早いので、短時間の後には光ファイバに対する適正な保護を行えなくなる。
【0006】
従って、本発明は公知の装置を改良し、特にその光ファイバの保護し、光ファイバにより溶融金属中で温度を測定する改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、本発明に従って、測定器に直接又は間接に接続された光ファイバを支持体により支持した溶融金属温度測定装置により達成される。本発明により、光ファイバは溶融金属により消耗される消耗性本体内を案内される浸漬端を有し、この消耗性本体は、光ファイバの浸漬端が損壊する速度とほぼ同一又はそれより大きいが10cm/分以下の消耗速度を有する。
【発明の効果】
【0008】
消耗性本体は最大でも10cm以下の消耗速度を有し、且つ光ファイバの浸漬端が損壊する速度とほぼ同一又はそれより大きいので、測定中に損壊されない光ファイバの自由端が常に露出状態にあって測定に使用されることが保証され、同時に、光ファイバはその長さに沿って充分に保護される。光ファイバの破壊はその浸漬端で始まり、構造体を破壊する条件(高温度、溶融金属の浸食性、その他)が存在する限り軸線方向に継続する。したがって、光ファイバを取り囲む本体が順次破壊されるので、光ファイバもその浸漬端から始まって新鮮な部分が常に溶融金属と接触し、それにより、黒体輻射である放射線を受け取り、それを温度測定のために伝送する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有利には消耗性本体の消耗速度は1cm/分以下である。ここに消耗速度は約600℃から約1700℃の温度範囲でのことであり、特に約1400℃から1700℃の範囲でのことである。消耗性本体の特性は特に材料と本体の構造(例えば材料の接着度)に依存する。
消耗性本体が鉄(又は鉄鋼、鋳鉄)よりも高い溶融温度を有し、溶融鉄に不溶性ならば有利である。とくに、本体が鋳砂、耐火セメント、及び結合フライアッシュの少なくとも一種から製作されると有利である。材料は接着剤により結合できる。鋳砂、耐火セメント、及び結合フライアッシュは約600℃から約1700℃の温度範囲の溶融金属において使用するのに適する。これらの材料は耐熱性が非常に高い。これらの材料から形成した本体は溶融金属中で、材料の粒子同士の結合を分解する浸食により分解する。この過程は浸漬端から始まって長手軸線方向、つまり光ファイバの軸線に沿って進行する。光ファイバは石英から製作するのが有利である。
【0011】
光ファイバが金属管特に鋼管で直接包囲されていることが好ましい。また検出器が消耗性本体に囲まれている場合には光ファイバを検出器に直結するのが有利である。
【0012】
消耗性検出器を消耗性本体内に配置して、特に長期の使用に対して、装置の全体的な機能を調整することが望ましい。制御された消耗を改善するための機械的な安定部材を消耗性本体内に配置すると有利である。好ましい実施例では、消耗性本体は支持体の一端に取り付けられ、それにより装置全体の機能を減じることなく消耗性本体を交換することが可能となる。消耗性本体内で電気的及び/又は光学的信号線が電気的及び/又は光学的接点を介して支持体中の接続片(コネクタ)に接続され、それにより着脱接続が達成できる。
【0013】
光ファイバが連続ファイバであり支持体及び/又は消耗性本体内を移動できるように構成されている場合には特に有利である。光ファイバの消耗部分の交換は単に光ファイバを支持体及び/又は消耗性本体内で連続的に供給するだけでよい。
【0014】
本発明の方法は、溶融金属内で消耗性であって支持体に支持されている消耗性本体により光ファイバを案内し、光ファイバの浸漬端を前記消耗性本体の少なくとも一部と共に溶融金属に一回以上浸漬し、前記消耗性本体が少なくとも部分的に消耗した後に前記消耗性本体を取り外し、他の消耗性本体と交換し、そして光ファイバをこの交換した消耗性本体を通して連続的に供給することよりなる。この方法によると装置の使用寿命が大きく向上し、中断のない長時間にわたる測定が可能となる。
【0015】
本発明の特徴及び構成の詳細は以下に本発明を図面を参照した説明で更に良く理解できるであろう。図示の実施例は本発明の現時点での好ましい実施例である。しかし本発明は実施例に示した構造に限定されるものではない。
【0016】
図1に示した消耗性本体1は粒子間の結合が圧縮又は接着剤により行われている鋳砂、向きセメント、又はフラウアッシュから製作されている。本体1の長軸線に沿って光ファイバ2が配置されており、本体は測定時に溶融金属内に浸漬される。光ファイバ2の端部3は光放射の形で測定信号を受信する。溶融金属の温度はこの信号から公知の方法により計算される。
【0017】
本体1の外周には耐摩耗性被覆を施して取扱中に本体を保護することができる。溶融金属中では消耗性本体1は浸漬先端(光ファイバの端部3近傍)から分解して行き、本体1の粒子間の結合が分断される。溶融金属に最初に接触する部分が浸漬先端であるので、この過程は浸漬端部から開始し、ついで軸線方向に連続して進行する。本体1内に配置されている光ファイバ2はこれにつれて漸進的に露出され、そのため光ファイバ2の表面部分は漸次溶融金属に露出されて放射を受け取る。
【0018】
本体1には安定部材4が合体されており、本体1を安定化して装置の取扱中又は輸送中の破損を防ぎ、また消耗性先端の消耗を促進する。安定部材としては、本体1を機械的に安定化できるかぎり、プラスチック、金属網又はワイヤ等の任意の形状と材質よりなる部材を使用できる。更に金属管5が設けられている。この金属管は、先ず本体1が金属管5の個所まで消耗したときに溶融金属との接触で電気信号を発生する消耗センサとしてまず役立つ。この金属管5は、浸漬端の反対側から本体1の端部に装入されている。第二にこの金属管5は本体1のホルダとして役立つ。この装置を取り扱うことを可能にする標準ランス7が支持管6に挿入される。
【0019】
加えるに、標準ランス7は本体1から延びる導線の接点として信号を伝送するために使用される。図1に示した実施例では、導線は電気信号線である。この目的で光検出器8が金属管内に配置され、光ファイバ2から来る光信号を検出してそれを電気信号に変換し、変換された信号を導線9を介して伝送する。導線9は電気接点10に接続されており、標準ランス7の側の対応した電気接点に接触でき、それにより信号は例えば電気的評価装置に伝送できる。信号を所定の標準値と対照する較正装置11が金属管5内に収容されている。このようにして、例えば長期使用中に生じる光ファイバ2の長さの変動が検出でき、変動の結果としての信号損失を等化することができる。
【0020】
図2は本発明の第2実施例を示す。光信号が既に本体1で電気信号に変換されて伝送される図1の例とは違い、図2の装置は光信号の伝送を可能にする。ここでは、光コネクタ12が金属管5内に配置される。このコネクタは光信号を光接触ブロック13に結合し、このブロック内で他の光ファイバ2が溶融金属からの光信号を受け取り、それを固定測定装置(図示せず)に伝送し、そこで光信号は電気信号に変換される。光接触ブロック13は金属管5内に嵌合することができる。上記二種の実施例において、充分な消耗の後に消耗性本体1は標準ランス7から引き抜かれ、次いで新規な本体1と交換される。
【0021】
図1〜2に示した実施例における光ファイバ2は本体1に固定されているが、図3は軸孔15に光ファイバ2を通して案内し、連続的に供給する例を示す。この目的で、機械コネクタ16(例えば図示の金属管)が浸漬端とは反対側の端部に配置される。標準ランス7に支持されている接触ブロック17は、コネクタ16に押し込むことができる。光ファイバ2の良好な案内のために、漏斗型の転移部が接触ブロック17のコネクタ16への接触部に設けられている。この転移部は光ファイバ2が軸孔15へ円滑に挿入されることを可能にする。接触ブロック17の内部には、公知の光ファイバ案内手段が設けてある。このような手段を使用すると連続した又はエンドレスの光ファイバがその消耗につれて供給され、それにより光ファイバ2の消耗が本体1の消耗から或る程度独立することを保証する。これは測定装置の長寿命な機能性を提供する。
【0022】
明らかに、図2及び図3の実施例にも較正装置(図示せず)を、光ファイバ2の他端の通常は固定部材が配置されている個所に配置することができる。
【0023】
上記の実施例は本発明から逸脱しない限り修正することができることは明らかである。従って、本発明は上記の実施例により制限されるものではなく、発明の範囲内の修正変更を含むものである。
【符号の説明】
【0024】
1 本体
2 光ファイバ
4 安定部材
5 金属管
6 支持管
7 ランス
8 光検出器
9 導線
10 電気接点
11 較正装置
12 光コネクタ
13 光接触ブロック
15 軸孔
16 コネクタ
17 接触ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(6)により支持され且つ測定機器に直接又は間接に接続された光ファイバ(2)により溶融金属中で温度を測定するための方法において、
前記光ファイバ(2)の浸漬端を、前記支持体(6)により支持され且つ溶融金属消耗性である第1の消耗性本体(1)により案内し、
前記光ファイバ(2)の浸漬端を、前記消耗性本体(1)と共に溶融金属に少なくとも1回浸漬し、
前記支持体(6)の少なくとも部分的な消耗後に、前記第1の前記消耗性本体(1)を前記支持体(6)から取り外し、次いで
第2の消耗性本体(2)と交換し、前記光ファイバ(2)を前記第2の消耗性本体(1)を通して送ることを特徴とする、溶融金属中で温度を測定するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−22165(P2011−22165A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247495(P2010−247495)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2005−26164(P2005−26164)の分割
【原出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】