説明

漂白繊維品の製法およびそれに用いる装置

【課題】繊維品を、オゾン含有液を用いて効率よく処理することができ、しかも得られた漂白繊維品が経時的に黄変しにくい、優れた漂白処理繊維品の製法、およびそれに用いる装置、並びに上記製法によって得られる漂白繊維品を提供する。
【解決手段】処理槽1内に、繊維品4をパッケージ化した状態で装填して繊維品4に水分を付与した後、オゾン含有液を、上記水分が付与された繊維品4の内外を強制循環させることにより、繊維品4に漂白処理を施す工程と、50℃以上の加温水を、上記漂白処理後の繊維品4の内外を強制循環させることにより、上記繊維品4に黄変処理を施す工程と、オゾン分解用薬液を、上記黄変処理後の繊維品4の内外を強制循環させることにより、繊維品4の黄変除去とオゾン分解を同時に行う工程とを備え、かつ、処理槽1内のオゾン濃度を一定に保つようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛等の繊維品を漂白して得られる漂白繊維品の製法およびそれに用いる装置、並びにそれによって得られる漂白繊維品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維品に対する漂白処理には、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸ナトリウムといった塩素系漂白剤が多く用いられてきた。しかしながら、これらの塩素系漂白剤を用いた漂白処理工程では、毒性の強い塩素系化合物を含有する処理液が排出されるおそれがあるため、厳しい監視システムや処理設備が必要となり、多大なコストがかかるという問題がある。
【0003】
そこで、最近では、上記塩素系漂白剤に代えて、より環境に優しい過酸化水素を用いた漂白が多く行われるようになってきている。しかし、上記過酸化水素は、金属イオンが存在すると、その触媒作用で分解して繊維品を脆化する等の理由から、繊維の風合いが悪くなるという問題がある。また、これら従来の漂白処理では、漂白剤だけでなく精錬剤を組み合わせた薬剤を含む処理液に、例えば80〜120℃という高温下で長時間、繊維を浸漬して処理を行うため、薬剤コストおよびエネルギーコストが非常に高くつき、またエコロジー的にも問題である。
【0004】
一方、全く新しい漂白方法として、オゾン(O3 )を用いた方法が提案され、一部で実用化されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平9−31840号公報
【特許文献2】特開2001−164458公報
【特許文献3】特開平7−11565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記オゾンは、自然界にも存在する安全な物質で、放置しておくと自己分解して酸素(O2 )となり、その毒性が残留しないという特徴を有する。したがって、前記塩素系漂白剤等のように、排水処理等に多大なコストをかける必要がないという利点を有する。
【0006】
しかし、上記特許文献1、2に記載された漂白方法は、いずれも、帯状の繊維品を連続的に走行させ、その途中、処理槽内でオゾン含有ガスに接触させるようにしているため、繊維品が処理槽を出入りする開口部において、オゾン含有ガスが周囲に漏れないよう機密性を保つことが必要となり、高度な組立技術、保全技術が要求される。オゾンは、いくら自己分解するといっても、未分解の状態では有毒ガスであるため、厳しい環境基準が設けられているからである。特に、オゾン含有ガスを用いて漂白された繊維は、経時的に黄変しやすいことから、上記黄変を防止するために、文献1では、漂白処理後の繊維品を湯洗することが提案され、文献2では、漂白処理後の繊維品を、さらに過酸化水素で補助漂白することが提案されている。このため、未反応のオゾンが残留する繊維品を、これらの工程に移動させなければならず、オゾン含有ガス密封化の負担が大きく、実用的でない。しかも、これらの方法によっても、繊維品の経時的な黄変を完全に防止することはできない。
【0007】
一方、上記特許文献3に記載された漂白装置は、パッケージ化された繊維品をバッチ式の処理槽内で処理するようにしたもので、オゾンを含有する処理液を強制循環させて繊維品に接触させることにより漂白処理を行うようになっている。この装置によれば、オゾンが外部に漏れにくいものの、実際に、どのような処理条件でオゾン漂白を行い、またどのようにしてオゾン漂白後の繊維の経時的な黄変を防止するか、等についての検討が不充分で、実用的でない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、繊維品を、オゾン含有液を用いて効率よく処理することができ、しかも得られた漂白繊維品が経時的に黄変しにくい、優れた漂白処理繊維品の製法およびそれに用いる装置、並びに上記製法によって得られる漂白繊維品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、天然繊維および再生繊維の少なくとも一方を主体とする繊維品に漂白処理を施して漂白繊維品を得る方法であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽内に、上記繊維品を装填する工程と、処理液を、上記処理槽に付設された強制循環配管を経由させて、処理槽内に装填された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に水分を付与する工程と、上記処理液中にオゾンガスを供給してオゾン含有液とし、このオゾン含有液を、上記強制循環配管を経由させて、上記水分が付与された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に漂白処理を施す工程と、オゾン分解用薬液を、上記強制循環配管を経由させて上記漂白処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、オゾン分解を行う工程と、上記オゾン分解後の繊維品を洗浄処理する工程とを備え、上記繊維品の漂白処理工程において、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測し、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つようにした漂白繊維品の製法を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、天然繊維および再生繊維の少なくとも一方を主体とする繊維品に漂白処理を施して漂白繊維品を得る方法であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽内に、上記繊維品を装填する工程と、処理液を、上記処理槽に付設された強制循環配管を経由させて、処理槽内に装填された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に水分を付与する工程と、上記処理液中にオゾンガスを供給してオゾン含有液とし、このオゾン含有液を、上記強制循環配管を経由させて、上記水分が付与された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に漂白処理を施す工程と、50℃以上の加温水を、上記強制循環配管を経由させて上記漂白処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、上記繊維品に黄変処理を施す工程と、オゾン分解用薬液を、上記強制循環配管を経由させて上記黄変処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品の黄変除去とオゾン分解を同時に行う工程と、上記黄変除去とオゾン分解後の繊維品を洗浄処理する工程とを備え、上記繊維品の漂白処理工程において、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測し、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つようにした漂白繊維品の製法を第2の要旨とする。
【0011】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記処理槽として、繊維品をパッケージ化した状態で処理を行うパッケージ型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、パッケージ化された繊維品の内外を繰り返し通過させながら強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした漂白繊維品の製法を第3の要旨とし、上記処理槽として、繊維品をロープ状にして液流によって移送しながら処理を行う液流型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、ロープ状の繊維品を移送するための液流として用いながら強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした漂白繊維品の製法を第4の要旨とし、上記処理槽として、繊維品を回転ドラム内で動かしながら処理を行うワッシャー型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、上記回転ドラム内外を強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした漂白繊維品の製法を第5の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記オゾン含有液におけるオゾン濃度が10〜300g/Nm3 に設定されており、強制循環によるオゾン含有液の流量が、対象とする繊維品1kg当たり15〜90リットル/分に設定されている漂白繊維品の製法を第6の要旨とし、上記オゾン分解用薬液として、過酸化水素とアルカリ剤を主成分とする薬液を用いるようにした漂白繊維品の製法を第7の要旨とし、上記オゾン分解用薬液として、まず、還元剤を主成分とする第1の薬液を用い、ついで過酸化水素とアルカリ剤を主成分とする第2の薬液を用いるようにした漂白繊維品の製法を第8の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記処理槽外に排出されるオゾン含有の排液および処理槽外に排出されるオゾン含有の排ガスを、アルカリ水溶液貯槽内に導入し、排液および排ガスに含有されるオゾンを、上記アルカリ水溶液中で分解させるようにした漂白繊維品の製法を第9の要旨とし、上記アルカリ水溶液貯槽内の、液面から上に溜まるガスを捕集して200℃以上に加熱された煙突内に導入し、上記捕集ガスに含有されるオゾンを、上記煙突内の熱により熱分解させるようにした漂白繊維品の製法を第10の要旨とする。
【0014】
また、本発明は、上記第1の要旨である漂白繊維品の製法に用いる装置であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽と、上記処理槽内に繊維品を装填するための繊維品保持手段と、上記処理槽内に装填された繊維品に液体を導入するための液体導入手段と、上記処理槽内に導入された液体を上記処理槽内から取り出して再び処理槽内に導入することを繰り返し、処理槽内に装填された繊維品と液体とを接触させるための液体強制循環配管と、上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾンガスを供給して漂白処理のためのオゾン含有液を調製するオゾンガス供給手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾン分解用薬剤を投入して、オゾン分解を行うためのオゾン分解用薬液を調製する薬液調製手段と、上記処理槽内の液体を処理槽外に排出するための液体排出配管と、上記処理槽内のガスを処理槽外に排出するためのガス排出配管とを備え、上記処理槽には、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測するためのオゾン濃度センサが設けられ、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つ濃度制御が行われるようになっている繊維品の漂白装置を第11の要旨とする。
【0015】
さらに、本発明は、上記第2の要旨である漂白繊維品の製法に用いる装置であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽と、上記処理槽内に繊維品を装填するための繊維品保持手段と、上記処理槽内に装填された繊維品に液体を導入するための液体導入手段と、上記処理槽内に導入された液体を上記処理槽内から取り出して再び処理槽内に導入することを繰り返し、処理槽内に装填された繊維品と液体とを接触させるための液体強制循環配管と、上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾンガスを供給して漂白処理のためのオゾン含有液を調製するオゾンガス供給手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体を50℃以上に加温して黄変処理のための加温水を調製する加温手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾン分解用薬剤を投入して、黄変除去とオゾン分解を同時に行うためのオゾン分解用薬液を調製する薬液調製手段と、上記処理槽内の液体を処理槽外に排出するための液体排出配管と、上記処理槽内のガスを処理槽外に排出するためのガス排出配管とを備え、上記処理槽には、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測するためのオゾン濃度センサが設けられ、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つ濃度制御が行われるようになっている繊維品の漂白装置を第12の要旨とする。
【0016】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記処理槽が、繊維品をパッケージ化した状態で処理を行うパッケージ型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、パッケージ化された繊維品の内外を繰り返し通過して繊維品と接触するようになっている繊維品の漂白装置を第13の要旨とし、上記処理槽が、繊維品をロープ状にして液流によって移送しながら処理を行う液流型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、ロープ状の繊維品を移送するための液流として用いられて繊維品と接触するようになっている繊維品の漂白装置を第14の要旨とし、上記処理槽が、繊維品を回転ドラム内で動かしながら処理を行うワッシャー型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、上記回転ドラム内外を強制循環して繊維品と接触するようになっている繊維品の漂白装置を第15の要旨とする。
【0017】
また、本発明は、それらのなかでも、特に、上記オゾンガス供給手段として、オゾンガス発生装置と、このオゾンガス発生装置から延びるオゾンガス供給配管と、エジェクタ、渦流ポンプ、ミキシングポンプのいずれかからなる気液混合吐出手段とが設けられ、オゾンガスが、上記気液混合吐出手段を介して、上記循環液体中に微細気泡化した状態で供給されるようになっている繊維品の漂白装置を第16の要旨とし、上記液体排出配管の先端およびガス排出配管の先端が、ともにアルカリ水溶液貯槽内に連通されるようになっている繊維品の漂白装置を第17の要旨とする。
【0018】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記アルカリ水溶液貯槽内の、液面から上に溜まるガスが捕集され、200℃以上に加熱された煙突内に送入されるようになっている繊維品の漂白装置を第18の要旨とし、上記処理槽の内周面と、オゾン含有液体およびオゾン含有ガスが流通する配管の内周面とが、ともにフッ素系樹脂によってコーティングされている繊維品の漂白装置を第19の要旨とする。
【0019】
そして、本発明は、上記第1〜第10の要旨のいずれかの製法によって得られる漂白繊維品を第20の要旨とし、そのなかでも、特に、製造後、20〜30℃の雰囲気下で60日間放置後の白度(JIS−1991法に従う)が、60以上である漂白繊維品を第21の要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
すなわち、本発明の漂白繊維品の製法は、すぐに分解して環境に残留することのないオゾンを用いて繊維品を漂白処理するようにしたもので、環境への負荷が小さいという利点を有する。また、オゾンによる漂白は、従来の塩素系等の漂白剤を用いた場合と比べ、薬剤使用量やエネルギー消費量が少なくてすむ、という点においてもエコロジカルである。そして、本発明の製法は、各種の形態によって処理槽内に装填された繊維品に対し、オゾン含有液を、そのオゾン濃度を一定に保ちながら強制循環させて繊維品に強制的に接触させて漂白処理を行うようにしているため、効率よく、均一に漂白処理することができるという利点を有する。
【0021】
そして、上記処理を、密封容器内で行うため、未分解のオゾンが周囲に漏れることがなく、作業環境を完全に保つことができる。さらに、繊維品に対し、比較的穏やかな条件で漂白処理を行うため、繊維品の劣化が少なく、滑らかな風合いの漂白繊維品を得ることができるという利点を有する。しかも、漂白処理に至る過程で、繊維品と空気との接触等によって繊維品に黄変物質が生じた場合であっても、漂白処理後の、オゾン分解用薬液によるオゾン分解処理工程において、オゾン分解を行うと同時に、上記黄変物質を除去することができるため、得られる漂白繊維品が、経時的に黄変しにくいという優れた効果を奏する。なお、上記黄変原因物質が、最終製品に残留したり、製品化後、経時的に増加することを防止するために、上記オゾン漂白処理後オゾン分解処理前に、加温水を用いて人工的に黄変処理を行い、生じた黄変を、オゾン分解処理時に除去することにより、より充分な形で、繊維品の経時的な黄変を防止することができる。
【0022】
また、本発明の繊維品の漂白装置は、従来のパッケージ処理装置、液流処理装置、ワッシャー型処理槽等に簡単な改良を追加するだけで得ることができるため、設備コストを低く抑えることができる。そして、未分解のオゾンを周囲に漏らすことなく安全に、経時的に黄変しにくい、あるいは黄変することのない、優れた風合いの漂白繊維品を製造することができる。
【0023】
そして、本発明の製法によって得られた漂白繊維品は、上記のように、優れた風合いで、経時的に黄変しにくい、あるいは黄変することのない、高品質のものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明が対象とする繊維は、従来から、漂白処理が要求されている、綿,麻,羊毛等の天然繊維およびビスコースレーヨン等の再生繊維を主体とする繊維である。これらの繊維は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明において、上記「主体とする」とは、これらの繊維のみからなる繊維品だけでなく、これらの繊維と他の繊維とを併用した繊維品を含む趣旨である。その場合、主体となる天然繊維、再生繊維に組み合わせられる他の繊維は、繊維全体に対し、50重量%未満に設定される。
【0026】
また、本発明が対象とする繊維品の形態は、どのようなものであっても差し支えはなく、例えば、ばら毛,フィラメント,綿わた,トウ,スライバー,糸,織編物,不織布等のいずれであってもよい。あるいは、ガーメント等、最終製品の形状に仕立てられたものであってもよい。
【0027】
そして、本発明における漂白処理時の繊維品の態様は、上記繊維品の種類および漂白装置の処理の型に応じて適宜設定される。例えば、パッケージ型の漂白装置を用いる場合、通常、ばら毛等はバスケット内槽等に充填した状態で、糸等はかせ状,チーズ状,コーン状等にまとめパッケージ化した状態で、織編物,不織布等はビーム等に巻回したり積層したりしてパッケージ化した状態で装填される。また、ガーメント等の製品は平たく伸ばして積層した状態で装填することができる。あるいは、処理槽内で、繊維品をプレスした状態やテンションセットした状態で装填することもできる。一方、液流型の場合は、糸や織編物等をロープ状にして処理流路内に装填し、ワッシャー型の場合は、織編地、不織布、ガーメント等を、処理槽(回転ドラム式)内に自由な状態で装填することができる。
【0028】
つぎに、本発明に用いる繊維品の漂白装置の一例を、図1に示す。図において、1は、開閉蓋1aを備えた竪型密閉式の処理槽で、内側に、多孔付円筒状のスピンドル2(多孔の図示を省略、以下同じ)を多数本有し周囲が多孔板3aで囲われたチーズキャリア3が装填されるようになっている。そして、各スピンドル2には、糸を多孔付チューブ(図示を省略)に巻回してチーズ状にパッケージ化した繊維品4が、多段に積重された状態で保持されている(図では4段)。なお、各スピンドル2の繊維品4は、その上端部に設けられるチーズ押さえ板および締め込みナット(これらの図示を省略)で固定されるようになっている。
【0029】
また、上記処理槽1の底部中央に、上記チーズキャリア3の下部に設けられたヘッダー部3bと連通する流体導入口5が設けられており、処理槽1の外側に設置された循環ポンプ6の吐出側から延びる流体供給配管7が、熱交換器8を介して接続されている。一方、処理槽1の底部側方には、流体取出口9が設けられており、この流体取出口9から延びる流体取出配管10が、仕切弁11を介してエジェクタ12の液体吸引口に接続され、上記エジェクタ12の吐出側が、弁13を介して循環ポンプ6の吸入側に接続されている。なお、14は、エジェクタ12を経由しない流路に切り替えるための仕切弁、14′は、循環ポンプ6を経由する流路から、後述するブロア21を経由する流路に切り替えるための仕切弁である。
【0030】
そして、上記エジェクタ12の気体吸引口には、オゾン発生器15から延びるオゾンガス供給配管16が接続されており、上記エジェクタ12によって、液体とオゾンガスとが気液混合状態で循環ポンプ6に吸入され、処理槽1内に導入されるようになっている。なお、上記オゾンガス供給配管16には、オゾンガスの流量調整のためのバルブ弁17が設けられている。また、上記オゾン発生器15には、酸素濃縮装置(PSA)18が接続されており、空気から濃縮された酸素がオゾンガス原料として導入されるようになっている。
【0031】
また、上記流体取出口9と流体供給配管7の間には、仕切弁19、20を介してブロア21が接続されており、前記仕切弁11、14′を閉じ、上記仕切弁19、20を開くことにより、上記循環ポンプ6による液体の強制循環を、上記ブロア21による気体の強制循環に切り替えることができるようになっている。
【0032】
さらに、上記流体取出配管10には、蒸気や空気等の気体を供給するための給気配管と、水や洗浄水を供給するための給液配管とが、それぞれ弁を介して接続されている(図示せず)。
【0033】
一方、上記処理槽1の上部には、処理槽1内の気体を処理槽1外に排出するための排ガス口22が設けられており、この排ガス口22に、他端が工場内に設けられたアルカリ廃液槽23の廃液中に延びる排ガス配管24が、開閉弁25を介して接続されている。26は、排ガスを矢印のように移送するためのブロアである。
【0034】
また、上記処理槽1の底部(図では見やすくするために側方に表示している)には、廃液口27が設けられており、この廃液口27に、他端が、上記排ガス配管24と同様、上記アルカリ廃液槽23の廃液中に延びる廃液配管28が、開閉弁29を介して接続されている。
【0035】
なお、上記アルカリ廃液槽23は密閉されており、その液面から上に溜まるガスが捕集されて、配管30を介して、工場内のボイラー煙突(図示せず)内に送入されるようになっている。これにより、ガスに残留するオゾンが、ボイラーの熱(例えば200℃以上)で完全に熱分解される。また、アルカリ廃液槽23内の廃液は、配管31を介して、工場内に設けられる廃液処理槽(図示せず)に移送されるようになっている。
【0036】
そして、上記装置において、オゾン発生器15内部の、オゾンガス取り出し部近傍には、オゾンガス濃度を測定するためのオゾンセンサS1 が設けられており、液体供給配管7の途中と、処理槽1内の2個所にも、循環する処理液のオゾン濃度を測定するためのオゾンセンサS2 、S3 がそれぞれ設けられている。これら3個のオゾンセンサS1 〜S3 は、互いに連動して、漂白処理工程において、循環するオゾン含有液のオゾン濃度を一定に保つ機能を果たすようになっている。
【0037】
また、オゾンガスが環境に悪影響を及ぼさないよう、安全面から、処理槽1の外側、処理槽1の開閉蓋1aの内側、配管30の途中、配管31の途中、の4個所にも、それぞれオゾンセンサS4 〜S7 が設けられている。すなわち、オゾンガス濃度の安全基準値は、労働基準法において、0.1ppmに定められていることから、これに準じ、上記処理槽1の外側に設けられたオゾンセンサS4 によって0.1ppmが検出された場合、「ガス漏れによる周辺作業環境が危険」との判断から、装置の稼働が強制的に停止されるようになっている。
【0038】
また、開閉蓋1aの内側に設けられたオゾンセンサS5 は、装置稼働時には追従測定であるが、処理終了後、開閉蓋1aの開放時に、上記オゾンセンサS5 によって0.1ppmが検出された場合、「これを開放すると周辺作業環境が危険」との判断から、上記開閉蓋1aの開放動作が、強制的に停止されるようになっている。
【0039】
さらに、配管30、31に設けられたオゾンセンサS6 、S7 は、常時追従測定であるが、1ppm検出時にアラート警報を発するよう設定されている。そして、上記オゾンセンサS6 、S7 のいずれかによって10ppmが検出された場合には、安全確保のために、装置の稼働が強制的に停止されるようになっている。10ppm未満の場合は、オゾンの処理が、ガスの場合はボイラー煙突内で、廃液の場合は廃液処理場において、それぞれ完全に分解処理されるからである。
【0040】
上記装置を用い、例えばつぎのようにして、繊維品4に対し漂白等の処理を行うことにより、優れた品質の漂白繊維品を得ることができる。すなわち、まず、図1に示すように、チーズキャリア3の各スピンドル2に繊維品4を多段に積重保持した状態で、処理槽1内に装填する。そして、給液配管(図示せず)から処理槽1内に、所定の浴比(例えば1:10)となる量の常温水(25℃)を注入した後、循環ポンプ6を作動させて、図1において矢印で示すように、常温水を強制循環(循環液量が、繊維品1kg当たり30リットル/分となるよう設定)させて、繊維品4の内側から外側に向かって繰り返し通過させる。これを10分間維持することより、繊維品4を内側まで水分が付与され、濡れた状態になる。
【0041】
つぎに、循環液(常温水)に、所定濃度(例えば1g/リットル)となるようクエン酸を注入して、10分間循環を繰り返すことにより、循環液のpHを酸性側に調整する。アルカリ性では、つぎに導入するオゾンガスのオゾンが分解するからである。
【0042】
また、酸素濃縮装置18およびオゾン発生器15を作動させ、所定濃度(例えば100g/Nm3 )のオゾンを含むオゾンガスを発生させるとともに、エジェクタ12を作動させ、循環液がエジェクタ12を経由するよう設定してバルブ弁17を開き、エジェクタ12を経由して循環液中にオゾンガスを注入し、オゾンガスが循環液に微細気泡となって混じり合ったオゾン含有液をつくる。このとき、例えば、エジェクタ12内の圧力を392.4kPa(=4kg/cm2 )に設定し、エジェクタ12から弁13までの間で196.2kPa(=2kg/cm2 )に減圧することにより、オゾンガスを好適な微細気泡として、循環液に混合した状態で吐出させることができる。
【0043】
そして、このオゾン含有液を、循環ポンプ6により30分間強制循環させ、繊維品4の内側から外側に向かって繰り返し通過させる。これにより、繊維品4の表面および内側で、オゾンの分解に伴う漂白処理が行われる。なお、上記漂白処理中、オゾンが経時的に分解するため、オゾンガスを、処理槽1内に連続的に注入し続ける。また、必要に応じて、開閉弁25を開閉して、処理槽1内のガスを、排ガス配管24からアルカリ廃液槽23内に送入して、処理槽1内の圧力を一定に保つようにする。
【0044】
さらに、上記オゾン漂白処理工程において、オゾン濃度を一定に保つために、処理槽1内のオゾンセンサS3 と、オゾン発生器15内のオゾンセンサS1 と、循環ポンプ6の吐出側に設けられたオゾンセンサS2 とを連動させて、オゾン濃度の自動制御を行う。より具体的に述べると、オゾンセンサS3 とオゾンセンサS2 とで、オゾン含有液のオゾン濃度の変動を常時測定し、両者の値のずれを誤差修正した上で、その値が、予め設定された基準濃度より10%不足した値になると、オゾン発生器15におけるオゾンガスの発生量を、オゾンセンサS1 の測定値が上限の設定値になるまで増やすようにする。また、逆に、オゾンセンサS3 とオゾンセンサS2 による測定値(誤差修正値)が、予め設定された基準濃度より10%超過した値になると、オゾン発生器15におけるオゾンガスの発生量を、オゾンセンサS1 の測定値が下限の設定値になるまで減らすようにする。このようにして、オゾン含有液におけるオゾン濃度を一定に保つ。なお、上記オゾンセンサS3 が異常値(例えば基準濃度の±50%濃度)を測定した場合は、全システムを停止するよう設定しておくことが好ましい。
【0045】
上記漂白処理終了後、循環液(オゾン含有液)を、排液配管28から処理槽1外に排出し、アルカリ廃液槽23内のアルカリ廃液(通常、pH10〜11)に通して、液に含まれるオゾンを、アルカリ下で分解し無害化する。なお、アルカリ廃液槽23内の、液面から上に溜まるガスは、すでに述べたように、配管30を介して、工場内のボイラー煙突内に送入させ、ボイラーの熱で完全に熱分解される。
【0046】
そして、排液後の処理槽1内に、給液配管から新たに常温水を供給し、5分間の強制循環を行って排液する水洗処理を2回繰り返し、処理槽1内に残留するオゾンを、ある程度除去する。ここまでの工程図を図2に示す。
【0047】
つぎに、給液配管から処理槽1内に常温水を供給し、循環ポンプ6により強制循環させながら80℃に昇温して加温水とした後、さらに10分間強制循環させ、繊維品4の内側から外側に向かって繰り返し通過させる。上記加温水の熱によって、繊維を構成する窒素原子と周囲の水酸基にオゾンが作用して窒素化合物を生じる反応が促進され、繊維品4が黄変する。この黄変反応は、従来から、オゾン漂白繊維品の製品表面が、経時的に徐々に黄ばんでくる原因となるもので、この黄ばみの防止が強く望まれてきたものである。この例は、上記黄変を人工的に生じさせ、後述するオゾン分解処理工程において、残留オゾンを分解すると同時に、上記黄変反応により生じた黄変物質を分解除去することにより、それ以降、黄変が発生しないよう工夫したものである。
【0048】
このようにして黄変処理を行った後、循環液(加温水)を、排液配管28から処理槽1外に排出し、アルカリ廃液槽23内で分解し無害化する。
【0049】
そして、排液後の処理槽1内に、給液配管から新たに常温水を供給し、5分間の強制循環を行って排液する水洗処理を2回繰り返し、処理槽1内に残留するオゾンを、さらに除去する。ここまでの工程図を図3に示す。
【0050】
つぎに、給液配管から処理槽1内に常温水を供給し、循環ポンプ6により強制循環させながら90℃に昇温した後、下記のレサイプの薬剤を投入して、オゾン分解用の薬液を調製する。この薬液を、さらに15分間強制循環させ、繊維品4の内側から外側に向かって繰り返し通過させて、残留オゾンを分解すると同時に、先の工程で人工的に発生させた黄変物質を分解除去する。
【0051】
〔オゾン分解用薬液のレサイプ〕
過酸化水素 2〜6g/リットル
水酸化ナトリウム 1〜4g/リットル
界面活性剤 1g/リットル
安定剤 1g/リットル
【0052】
このようにしてオゾン分解処理および黄変除去処理を行った後、循環液(薬液)を、排液配管28から処理槽1外に排出し、アルカリ廃液槽23内で分解し無害化する。
【0053】
そして、排液後の処理槽1内に、給液配管から新たに常温水を供給し、5分間の強制循環を行って排液する水洗処理を2回繰り返し、処理槽1内に残留するオゾンを、さらに除去する。これによって一連の処理を終了する。ここまでの工程図を図4に示す。
【0054】
そして、上記水洗に用いた水を排水し、仕切弁11、14′と仕切弁19、20の切り替えにより、ブロア21を処理槽1に接続した後、ブロア21を作動させて処理槽1内を加圧し、繊維品4の圧力脱水を行う。そして、開閉蓋1aを開き、処理槽1内からチーズキャリア3ごと繊維品4を取り出し、別に設けられる乾燥装置に装填して繊維品4を乾燥する。乾燥条件は、繊維品4の種類、形態に応じて、適宜に設定することができる。このようにして、目的とする漂白繊維品を得ることができる。
【0055】
上記の方法によれば、すぐに分解して環境に残留することのないオゾンを用い、比較的穏やかな条件で繊維品4を漂白処理するため、環境への負荷が小さいという利点を有する。そして、パッケージ化された状態の繊維品4に対し、オゾン含有液を強制循環させ、繊維品4の内部まで強制的に接触させて漂白処理を行うようにしているため、低濃度のオゾンで効率よく、均一に漂白処理することができる。しかも、上記処理を、密封容器からなる処理槽1内で完全にクローズドした状態で行うため、未分解のオゾンが周囲に漏れることがなく、作業環境を完全に保つことができる。さらに、繊維品4同士がパッケージ化されて動かない状態で、上述のように比較的穏やかな条件で漂白処理を行うため、繊維品の劣化が少なく、滑らかな風合いの漂白繊維品を得ることができるという利点を有する。そして、得られた漂白繊維品は、処理工程の途中で人工的に黄変され、その後、黄変物質が分解除去されているため、処理後は、経時的に黄変することがなく、製造直後の白度が安定して保たれるという利点を有する。
【0056】
また、上記漂白装置は、従来のパッケージ処理装置に簡単な改良を追加するだけで得ることができるため、設備コストが安価である。そして、未分解のオゾンを周囲に漏らすことなく、安全に、優れた風合いの漂白繊維品を製造することができる。
【0057】
なお、図1の装置では、チーズ状にパッケージ化された繊維品4の、内側から外側に向かってオゾン含有液が通過するよう設定しているが、循環ポンプ6、エジェクタ12等の接続を変えることにより、オゾン含有液が、繊維品4の外側から内側に向かって通過するよう設定しても差し支えはない。また、内→外、外→内を交互に切り換えるようにしても差し支えはない。ただし、外→内の場合には、繊維品4の内部において、オゾン含有液が均一に流れにくいことから、基本的には、図1の装置のように、繊維品4の内側から外側に向かってオゾン含有液が通過するように設定することが望ましい。
【0058】
また、上記の例において、まず常温水のみを循環させて繊維品4に水分を付与するのは、つぎにオゾン含有液を循環させてオゾン漂白処理を行う際、繊維内部まで均一に処理が行われるようにするものである。上記の例では、常温水を10分間循環し、ついで、この常温水にクエン酸を注入して10分間循環するようにしたが、当初から、クエン酸を注入して酸性にした常温水によって、繊維品4に水分付与を行うようにしてもよい。
【0059】
なお、上記水分付与に用いる常温水としては、通常、蒸留水、純水、イオン交換水等の水が用いられるが、100%の水以外に、キレート剤等、水に、適宜の添加剤を配合したものであっても差し支えない。そして、その温度は、特に加熱や冷却をしない水を用いるときの水温でよく、環境温度に応じて、通常、20〜35℃の範囲内である。特に、この常温水は、後からオゾンガスを混合してオゾン含有液として循環させるのに用いるものであるから、オゾンが分解する40℃以上にすることは好ましくない。
【0060】
そして、上記常温水の量は、繊維品4を充分に濡らすことができる量であれば、特に差し支えはないが、これにオゾンガスを混合してオゾン漂白処理用の循環液として用いることを考慮とすれば、浴比が1:5〜1:15、特に1:8〜1:13となる範囲内で用いることが好適である。また、常温水の水分付与のための時間は、上記の例に限らず、繊維品4の形態や浴比に応じて、適宜に設定することができる。さらに、循環させる液量も、特に限定するものではないが、次工程であるオゾン漂白処理工程時の循環量と同一に設定しておくことが、いちいち循環ポンプ6の設定を変える必要がなく、好適である。
【0061】
また、上記常温水に注入するクエン酸は、この液にオゾンガスを混合してオゾン含有液としてオゾン漂白に用いる際、オゾンを分解させないよう、液を酸性にするために用いられるものである。この場合、上記クエン酸に限らず、適宜の酸を用い、液のpHを、3〜6程度の酸性にすることが好適である。過度に酸性にすると、繊維品4に悪影響を及ぼし、中性〜アルカリでは、オゾンが分解されて、漂白効果が得られないからである。
【0062】
つぎに、上記の例において、循環する常温水に、エジェクタ12を介してオゾンガスを注入しているが、上記オゾンガスの注入量は、注入後のオゾン含有液におけるオゾン濃度が、10〜300g/Nm3 、特に50〜150g/Nm3 となるよう設定することが好適である。すなわち、オゾン濃度が10g/Nm3 未満では、漂白処理が不充分となるおそれがあり、逆に、オゾン濃度が300g/Nm3 を超えると、繊維品4の繊維強度が低下するおそれがあるからである。
【0063】
そして、上記の例では、オゾンガスを、エジェクタ12を介して、微細気泡となって常温水に混合するようにしたが、これは、オゾンガスを微細気泡として分散含有させた処理液を用いると、漂白処理を均一に行うことができ、繊維品4の風合いも良好なものが得られるからである。このような微細気泡をつくるには、上記エジェクタ12を経由する際、エジェクタ12内と吐出直後とで、圧力値を、例えば2/3〜1/5に減じ、その圧力変化によって、オゾンガスを微細気泡化して液中に分散させることが好適である。また、上記エジェクタ12に限らず、オゾンガスを微細気泡化するための気液混合吐出手段として、渦流ポンプやミキシングポンプを用いることができる。
【0064】
さらに、オゾン含有液の強制循環による液量も、繊維品4の材質や形態によるが、通常、繊維品1kg当たり15〜90リットル/分に設定することが好適である。すなわち、循環する液量が少なすぎると、パッケージ化された繊維品4の内部までオゾン含有液を通過させることが容易でなく処理に時間がかかり、逆に、循環する液量が大きすぎると、繊維品4が損傷するおそれがあるからである。
【0065】
また、オゾン含有液の温度は、常温でよく、強制循環させる時間は、通常、15〜60分、なかでも20〜40分に設定することが、好適である。すなわち、処理時間が15分未満では、漂白処理が不充分になるおそれがあり、逆に、60分を超えて行うと、それ以上の効果が得られず、しかもエネルギーコストがかかるからである。
【0066】
さらに、上記漂白処理後の黄変処理において、上記の例では、循環させる加温水の液温を80℃としたが、液温は、これに限るものではない。ただし、上記加温水は、オゾンによる黄変生成反応を促進させるためのものであり、50℃未満では、その促進効果が不充分で、短時間で黄変を生起させることができないため、50℃以上であることが望ましい。なかでも80〜100℃に設定することが、黄変を生起させる上で好適である。そして、上記加温水の量は、浴比1:5〜1:15、特に1:8〜1:13となる範囲内で用いることが好適である。そして、この「加温水」も、前記「常温水」と同様、100%の水である必要はなく、適宜の添加剤を配合したものであっても差し支えない。
【0067】
また、上記黄変処理に要する時間は、1〜30分、なかでも15分以内に設定することが好適である。すなわち、処理時間が短すぎると、人工的な黄変処理が不充分となり、製品化した漂白繊維品が、経時的に黄変を生じるおそれがあり、逆に、処理時間が長すぎると、黄変防止効果に変わりがないにもかかわらず、オゾンの影響が強すぎて繊維の強度を損なう、という問題がある。加温水を調製するためのエネルギーコストが高くなりすぎる、という問題もある。
【0068】
一方、上記漂白処理後の、オゾン分解処理において、処理用の薬液は、上記の例に限るものではなく、下記のレサイプAのものを、好適に用いることができる。
【0069】
〔レサイプA〕
浴比 1:8〜1:13
処理温度 60〜90℃
処理時間 10〜20分
過酸化水素 1〜6g/リットル
水酸化ナトリウム 1〜4g/リットル
界面活性剤 0.5〜2g/リットル
安定剤 0.5〜2g/リットル
【0070】
なお、上記水酸化ナトリウムは、液性をアルカリ性(好適には、pH8〜10)にするために用いられるもので、これに代えて、あるいはこれとともに、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等、各種のアルカリ剤を用いることができる。
【0071】
また、上記界面活性剤としては、例えば、サンモール(日華化学社製)等が好適に用いられ、安定剤としては、例えば、ブライトNIK(洛東化成工業社製)等が好適に用いられる。
【0072】
また、他のオゾン分解処理方法として、例えば、図5に示すように、まず、亜硝酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする第1の薬液を、上記の例と同様にして、処理槽1内に供給し強制循環させて、残留オゾンの酸化力を還元剤で消失させる還元処理を行い、2回水洗を繰り返した後、上記の例と同様の、過酸化水素と水酸化ナトリウムを主成分とする第2の薬液で、オゾン分解処理を行う、という2段階処理を行うようにしてもよい。この方法によれば、先の方法に比べて、得られる漂白繊維品の白度がやや劣るものの、繊維へのダメージが殆どないという利点を有する。
【0073】
上記還元処理に用いる第1の薬液としては、下記のレサイプBのものを、好適に用いることができる。
【0074】
〔レサイプB〕
浴比 1:8〜1:13
処理温度 30〜80℃
処理時間 10〜20分
亜硫酸ナトリウム 2〜4g/リットル
水酸化ナトリウム 1〜2g/リットル
【0075】
なお、上記亜硫酸ナトリウムは、還元剤として作用するもので、これに代えて、あるいはこれとともに、ハイドロサルファイト、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を用いることができる。
【0076】
さらに、他の方法として、図6に示すように、オゾン漂白処理と、黄変処理と、第1の薬液による還元処理と、第2の薬液によるオゾン分解処理とを、途中、排液→水洗を経由することなく、一浴で連続的に行う方法があげられる。この方法によれば、得られる漂白繊維品の白度は多少劣るものの、実用性は充分に備えている。しかも、処理液の使用量が大幅に削減できるため、用水コスト、エネルギーコストを大幅に低減することができる。
【0077】
なお、上記一浴で連続的に処理を行う方法において、黄変処理は、オゾン漂白処理後の処理液を50℃に加温して行うことが好適である。50℃を超えると、つぎの還元処理による効果が充分に得られず、黄変除去が不充分になるおそれがあるからである。
【0078】
また、前記の例では、漂白処理後、処理槽1から排出される排液、排ガスを、ともにアルカリ廃液槽23内に導いて、アルカリ廃液によってオゾン分解させ、さらにその液面から上のオゾン含有ガスを、ボイラー煙突内に送入して、オゾンを熱分解するようにしているが、オゾンを、このような形で無害化することは任意である。工場によっては、このようなアルカリ廃液槽23やボイラー煙突が近傍に設置されていない場合もあり、その場合は、別途アルカリ処理槽もしくは他のオゾン分解手段を設けることが望ましい。ただし、前記の例のように、アルカリ廃液槽23やボイラー煙突を利用すると、処理コストがかからず、好適である。
【0079】
さらに、前記の例では、漂白処理と黄変処理の間、黄変処理とオゾン分解処理の間において、それぞれ処理槽1内の処理液を排出して、2回水洗を繰り返しているが、このような水洗処理を挟むか否かは、処理対象や要求される繊維の白度等によって、適宜の設計とすることができる。
【0080】
また、前記の例では、処理槽1として、竪型のものを用いているが、処理槽1は横型であっても差し支えはない。そして、処理槽1への繊維品4の装填方法や装填態様も、上記に限らず適宜設定することができる。
【0081】
そして、本発明の漂白装置において、処理槽1の内側およびオゾン含有気体が流れる各配管の内側は、オゾン酸化による腐食を防止するために、デュポン社製のテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂によってコーティングすることが好ましい。また、各部材の接続部には、接液部が全てフッ素系樹脂で被覆されたメカニカルシールを用いることが好ましい。
【0082】
さらに、本発明の漂白装置において、オゾン濃度を一定に保つためのオゾンセンサの配置や個数、設定値等は、上記の例に限らず、適宜に設定することができる。ただし、上記の例のように、処理槽1内のオゾン含有液におけるオゾン濃度だけでなく、複数の測定値から誤差修正を行った上で、濃度制御を行うことが、高精度で濃度制御を行うことができ、好適である。
【0083】
また、上記一連の説明は、本発明をパッケージ処理装置に適用した例にもとづいているが、本発明は、処理槽の内外を、処理液を強制循環させて処理を行う各種の処理装置に適用することができる。例えば、図7に示すように、パッケージタイプの処理槽1に代えて、液流式の処理槽40を備えた液流処理装置に適用することができる。
【0084】
上記液流処理装置の処理槽40は、布帛等の繊維品4′をロープ状にして、液流によって移送しながら処理を行うもので、どのようなタイプの液流式処理槽であってもよいが、この例の処理槽40では、繊維品4′を蛇行状態で滞留させながら移送する滞留槽41と、リール42によって引き上げられた繊維品4′を液体噴射部43から噴射される液流によって移送する移送通路44とを備えている。そして、45は、滞留槽41内において、繊維品4′と処理液とを分離するための多孔性分離板で、滞留槽41内の底部に溜まる処理液が、循環ポンプ6、熱交換器8を経由して、上記液体噴射部43に循環供給されるようになっている。それ以外の構成は、図1に示す例と同様であり、同一番号を付して、その説明を省略する。
【0085】
この装置によっても、前記パッケージ処理装置と同様、強制循環される処理液が繊維品4′と接触しながら処理が行われるようになっており、前記の例と同様にして、一連のオゾン漂白処理を行うことができる。
【0086】
ただし、液流処理装置を用いる場合、オゾン漂白処理に用いるオゾン含有液の濃度は、10〜300g/Nm3 、なかでも、100〜200g/Nm3 に設定することが好適である。そして、浴比は、1:5〜1:20に設定することが好適である。
【0087】
また、前記パッケージ処理装置を用いた例においては、繊維品4が、緊密にパッケージ化され処理液を含浸した状態で処理に供されるため、処理の過程で、繊維品4が空気接触することが少なく、空気酸化に伴う黄変が進行しにくいことから、人工的に黄変を生じさせ、オゾン分解処理工程において、残留オゾン分解と同時に、生じた黄変物質を分解除去することが、それ以降の黄変を防止する上で好適である。しかし、上記液流処理装置では、ロープ状の繊維品4′が、その移送途中で空気と接触する機会が多いため、人工的に黄変を生じさせなくても、オゾン分解処理工程に至るまでに、ある程度黄変が進行する。そこで、必ずしも、前記の例のように、人工的な黄変処理を施さなくても、上記オゾン分解処理工程において、その自然発生した黄変物質を除去しておけば、それ以降の黄変を、ある程度防止することができる。もちろん、人工的な黄変処理を施すことにより、より完全な黄変防止効果が得られる。
【0088】
なお、上記自然発生した黄変物質の除去に有効なオゾン分解用薬液としては、例えば前記〔レサイプB〕として示したような、亜硝酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする還元処理用の第1の薬液を用い、つぎに、例えば前記〔レサイプA〕として示したような、過酸化水素と水酸化ナトリウムを主成分とする第2の薬液を用いることが、それ以降の黄変を防止する上で、好適である。
【0089】
さらに、本発明は、例えば、図8に示すように、ワッシャータイプの処理槽50を備えた回転ドラム式処理装置に適用することができる。
【0090】
上記ワッシャータイプの処理槽50は、織編地等の繊維品4″を、多孔性の回転ドラム51内に装填して回転させながら、外槽52内に貯留された処理液と接触させて処理を行うもので、どのようなタイプの回転ドラム式の処理槽であってもよいが、上記外槽52内に貯留される処理液が、循環ポンプ6、熱交換器8を経由して、外槽52内に循環供給されるようになっている。それ以外の構成は、図1に示す例と同様であり、同一番号を付して、その説明を省略する。
【0091】
この装置によっても、前記パッケージ処理装置や液流式処理装置と同様、強制循環される処理液が繊維品4″と接触しながら処理が行われるようになっており、前記の例と同様にして、一連のオゾン漂白処理を行うことができる。
【0092】
ただし、回転ドラム式処理装置を用いる場合、オゾン漂白処理に用いるオゾン含有液の濃度は、10〜300g/Nm3 、なかでも、100〜200g/Nm3 に設定することが好適である。そして、浴比は、1:8〜1:30に設定することが好適である。
【0093】
また、この回転ドラム式処理装置においても、上記液流処理装置と同様、回転ドラム51内の繊維品4″が、回転ドラム51の回転に追従して移動する際、空気と接触する機会が多いため、人工的に黄変を生じさせなくても、オゾン分解処理工程に至るまでに、ある程度黄変が進行する。そこで、必ずしも、前記の例のように、人工的な黄変処理を施さなくても、上記オゾン分解処理工程において、その自然発生した黄変物質を除去しておけば、それ以降の黄変を、ある程度防止することができる。もちろん、人工的な黄変処理を施すことにより、より完全な黄変防止効果が得られる。
【0094】
なお、上記自然発生した黄変物質の除去に有効なオゾン分解用薬液としては、上記液流処理装置の場合と同様の、還元処理用の第1の薬液と、第2の薬液との組み合わせが、好適に用いられる。
【実施例】
【0095】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0096】
〔実施例1〜8、比較例1〕
下記の処理条件(装置の基本的な構成は図1に従う)で、表1、表2に示すレサイプにしたがって、オゾン漂白処理を施し、処理槽から取り出して乾燥することにより、漂白繊維品(単糸)を得た。そして、このものの白度を、JIS−1991法にしたがって測定するとともに、繊維強度を、JIS−L 1095法にしたがって測定した。また、これらの漂白均一性と風合いを、後記のとおり評価した。これらの結果および総合評価を、後記の表1、表2に併せて示す。
【0097】
〔処理条件〕
(1)処理槽 70リットルタイプオーバーマイヤー(日阪製作所社製)
(2)浴比 1:10
(3)処理対象 20番手単糸の綿糸、1個1kgのチーズ状。処理槽内に7個の チーズを装填。
(4)使用水 イオン交換水(25℃)
(5)循環液量 300リットル/分
【0098】
〔漂白均一性〕
各実施例、比較例ごとに、処理槽内で異なる位置のチーズから取り出した糸によって10枚のメリヤス生地(50cm×50cmの正方形)を作製し、10枚の漂白度にばらつきがないかどうかをモニター10名の目視により評価させた。評価は、◎…非常に良好、○…良好、△…やや不良、×…不良の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0099】
〔風合い〕
モニター10名に、上記と同様のメリヤス生地を触らせ、その手触りから風合いを官能評価させた。評価は、◎…非常に滑らか、○…滑らか、△…ふつう、×…悪い、の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
〔実施例9〕
後記の表3に従うレサイプで、図6に示す工程に従い、一浴で連続的に一連の処理を行った。他の条件は、実施例1と同様にして、漂白繊維品を得た。
【0103】
〔実施例10〕
基本的には、実施例6と同様にしたが、エジェクタの設定を調整することより、処理液中に混合するオゾンガスの気泡を、実施例6のものより大きくなるようにした。すなわち、実施例6の場合は、オゾンガスが微細気泡化して混合されたオゾン含有液は、上記微細気泡によって白濁した液となっていたが、この例では、肉眼で直径1〜2mmの気泡が見える程度のものであった。
【0104】
〔実施例11〕
基本的には、実施例6と同様にしたが、エジェクタの設定を調整することより、処理液中に混合するオゾンガスの気泡を、実施例6のものより小さくなるようにした。すなわち、肉眼では、実施例6の場合に比べ、オゾンガスの微細気泡がより微細になっていることは不明であるが、エジェクタによる減圧の程度を、実施例6のそれより大きくすることにより、気泡のさらなる微細化を達成したものである。
【0105】
これらの実施例品についても、前記と同様にして評価し、その結果を、下記の表3に、各例のレサイプと併せて示した。
【0106】
【表3】

【0107】
上記の結果から、実施例1〜11の生地は、いずれも概ね良好な結果が得られていることがわかる。
【0108】
つぎに、前記実施例6、7と比較例1の各加工仕上がり乾燥後の生地に対し、その経時的な黄変の程度を評価するために、何ら温度管理がなされていない室内に自然放置し、1日後、30日後、60日後の白度を、JIS−1991法にしたがって測定した。また、150℃×10分の強制乾熱処理を施した後の白度を、上記と同様にして測定した。これらの結果を、下記の表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
上記の結果から、実施例6、7の生地は、ともに、経時的な黄変が殆どなく、生地の白さが概ね保たれるが、人工的な黄変処理を行わず、オゾン分解処理も何ら行わなかった比較例1の生地は、経時的な黄変が著しく、実用に供することができない。
【0111】
〔実施例12〜21、比較例2〕
下記の処理条件(装置の基本的な構成は図7に従う)で、表5〜表7に示すレサイプにしたがって、オゾン漂白処理を施し、処理槽から取り出して乾燥することにより、漂白繊維品(綿織物)を得た。そして、このものの白度を、JIS−1991法にしたがって測定するとともに、これらの漂白均一性と風合いを、後記のとおり評価した。これらの結果および総合評価を、後記の表5〜表7に併せて示す。
【0112】
〔処理条件〕
(1)処理槽 50kgタイプサーキュラー(日阪製作所社製)
(2)浴比 1:10
(3)処理対象 50kgの綿織物
(4)使用水 イオン交換水(25℃)
(5)循環液量 1000リットル/分
【0113】
〔漂白均一性〕
各実施例、比較例ごとに、処理槽内より取り出した生地サンプル(50cm×50cmの正方形)10枚の漂白度にばらつきがないかどうかをモニター10名の目視により評価させた。評価は、◎…非常に良好、○…良好、△…やや不良、×…不良の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0114】
〔風合い〕
モニター10名に、上記と同様のサンプル生地を触らせ、その手触りから風合いを官能評価させた。評価は、◎…非常に滑らか、○…滑らか、△…ふつう、×…悪い、の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
上記の結果から、実施例12〜21の生地は、いずれも概ね良好な結果が得られているが、比較例2品は、実用上好ましくない評価項目があり、実施例品に比べて劣っていることがわかる。
【0119】
つぎに、前記実施例13、14、21と比較例2の各加工仕上がり乾燥後の生地に対し、その経時的な黄変の程度を評価するために、何ら温度管理がなされていない室内に自然放置し、1日後、30日後、60日後の白度を、JIS−1991法にしたがって測定した。また、150℃×10分の強制乾熱処理を施した後の白度を、上記と同様にして測定した。これらの結果を、下記の表8に示す。
【0120】
【表8】

上記の結果から、実施例13、14の生地は、ともに、経時的な黄変が殆どなく、生地の白さが概ね保たれるが、人工的な黄変処理を行わず、オゾン分解処理のうち還元処理をを行わなかった実施例21の生地は、やや黄変の程度が大きかった。また、人工的な黄変もオゾン分解処理も、何ら行わなかった比較例2の生地は、経時的な黄変が著しく、実用に供することができない。
【0121】
〔実施例22〜31、比較例3〕
下記の処理条件(装置の基本的な構成は図8に従う)で、表9〜表11に示すレサイプにしたがって、オゾン漂白処理を施し、処理槽から取り出して乾燥することにより、漂白繊維品(綿織物)を得た。そして、このものの白度を、JIS−1991法にしたがって測定するとともに、これらの漂白均一性と風合いを、後記のとおり評価した。これらの結果および総合評価を、後記の表9〜表11に併せて示す。
【0122】
〔処理条件〕
(1)処理槽 30kgタイプワッシャー(日阪製作所社製)
(2)浴比 1:10
(3)処理対象 30kgの綿織物
(4)使用水 イオン交換水(25℃)
(5)循環液量 450リットル/分
【0123】
〔漂白均一性〕
各実施例、比較例ごとに、処理槽内より取り出した生地サンプル(50cm×50cmの正方形)10枚の漂白度にばらつきがないかどうかをモニター10名の目視により評価させた。評価は、◎…非常に良好、○…良好、△…やや不良、×…不良の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0124】
〔風合い〕
モニター10名に、上記と同様のサンプル生地を触らせ、その手触りから風合いを官能評価させた。評価は、◎…非常に滑らか、○…滑らか、△…ふつう、×…悪い、の4段階評価とし、最も人数の多い評価を採用した。
【0125】
【表9】

【0126】
【表10】

【0127】
【表11】

【0128】
上記の結果から、実施例22〜31の生地は、いずれも概ね良好な結果が得られているが、比較例3品は、実用上好ましくない評価項目があり、実施例品に比べて劣っていることがわかる。
【0129】
つぎに、前記実施例23、24、31と比較例3の各加工仕上がり乾燥後の生地に対し、その経時的な黄変の程度を評価するために、何ら温度管理がなされていない室内に自然放置し、1日後、30日後、60日後の白度を、JIS−1991法にしたがって測定した。また、150℃×10分の強制乾熱処理を施した後の白度を、上記と同様にして測定した。これらの結果を、下記の表12に示す。
【0130】
【表12】

上記の結果から、実施例23、24の生地は、ともに、経時的な黄変が殆どなく、生地の白さが概ね保たれるが、人工的な黄変処理を行わず、オゾン分解処理のうち還元処理をを行わなかった実施例31の生地は、やや黄変の程度が大きかった。また、人工的な黄変もオゾン分解処理も、何ら行わなかった比較例3の生地は、経時的な黄変が著しく、実用に供することができない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の一実施例に用いられる漂白装置の構成図である。
【図2】上記実施例の工程の一部を示す工程図である。
【図3】上記実施例の工程の他の一部を示す工程図である。
【図4】上記実施例の工程のさらに他の一部を示す工程図である。
【図5】本発明の他の実施例の工程の一部を示す工程図である。
【図6】本発明のさらに他の実施例の工程の一部を示す工程図である。
【図7】本発明の他の実施例に用いられる漂白装置の構成図である。
【図8】本発明のさらに他の実施例に用いられる漂白装置の構成図である。
【符号の説明】
【0132】
1 処理槽
4 繊維品
6 循環ポンプ
15 オゾン発生器
1 〜S3 オゾンセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維および再生繊維の少なくとも一方を主体とする繊維品に漂白処理を施して漂白繊維品を得る方法であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽内に、上記繊維品を装填する工程と、処理液を、上記処理槽に付設された強制循環配管を経由させて、処理槽内に装填された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に水分を付与する工程と、上記処理液中にオゾンガスを供給してオゾン含有液とし、このオゾン含有液を、上記強制循環配管を経由させて、上記水分が付与された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に漂白処理を施す工程と、オゾン分解用薬液を、上記強制循環配管を経由させて上記漂白処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、オゾン分解を行う工程と、上記オゾン分解後の繊維品を洗浄処理する工程とを備え、上記繊維品の漂白処理工程において、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測し、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つようにしたことを特徴とする漂白繊維品の製法。
【請求項2】
天然繊維および再生繊維の少なくとも一方を主体とする繊維品に漂白処理を施して漂白繊維品を得る方法であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽内に、上記繊維品を装填する工程と、処理液を、上記処理槽に付設された強制循環配管を経由させて、処理槽内に装填された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に水分を付与する工程と、上記処理液中にオゾンガスを供給してオゾン含有液とし、このオゾン含有液を、上記強制循環配管を経由させて、上記水分が付与された繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品に漂白処理を施す工程と、50℃以上の加温水を、上記強制循環配管を経由させて上記漂白処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、上記繊維品に黄変処理を施す工程と、オゾン分解用薬液を、上記強制循環配管を経由させて上記黄変処理後の繊維品と接触させながら強制循環させることにより、繊維品の黄変除去とオゾン分解を同時に行う工程と、上記黄変除去とオゾン分解後の繊維品を洗浄処理する工程とを備え、上記繊維品の漂白処理工程において、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測し、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つようにしたことを特徴とする漂白繊維品の製法。
【請求項3】
上記処理槽として、繊維品をパッケージ化した状態で処理を行うパッケージ型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、パッケージ化された繊維品の内外を繰り返し通過させながら強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした請求項1または2記載の漂白繊維品の製法。
【請求項4】
上記処理槽として、繊維品をロープ状にして液流によって移送しながら処理を行う液流型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、ロープ状の繊維品を移送するための液流として用いながら強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした請求項1または2記載の漂白繊維品の製法。
【請求項5】
上記処理槽として、繊維品を回転ドラム内で動かしながら処理を行うワッシャー型の処理槽を用い、上記処理液、オゾン含有液、加温水、オゾン分解用薬液の各液を、上記回転ドラム内外を強制循環させることにより、繊維品と接触させるようにした請求項1または2記載の漂白繊維品の製法。
【請求項6】
上記オゾン含有液におけるオゾン濃度が10〜300g/Nm3 に設定されており、強制循環によるオゾン含有液の流量が、対象とする繊維品1kg当たり15〜90リットル/分に設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の漂白繊維品の製法。
【請求項7】
上記オゾン分解用薬液として、過酸化水素とアルカリ剤を主成分とする薬液を用いるようにした請求項1〜6のいずれか一項に記載の漂白繊維品の製法。
【請求項8】
上記オゾン分解用薬液として、まず、還元剤を主成分とする第1の薬液を用い、ついで過酸化水素とアルカリ剤を主成分とする第2の薬液を用いるようにした請求項1〜6のいずれか一項に記載の漂白繊維品の製法。
【請求項9】
上記処理槽外に排出されるオゾン含有の排液および処理槽外に排出されるオゾン含有の排ガスを、アルカリ水溶液貯槽内に導入し、排液および排ガスに含有されるオゾンを、上記アルカリ水溶液中で分解させるようにした請求項1〜8のいずれか一項に記載の漂白繊維品の製法。
【請求項10】
上記アルカリ水溶液貯槽内の、液面から上に溜まるガスを捕集して200℃以上に加熱された煙突内に導入し、上記捕集ガスに含有されるオゾンを、上記煙突内の熱により熱分解させるようにした請求項1〜9のいずれか一項に記載の漂白繊維品の製法。
【請求項11】
請求項1記載の漂白繊維品の製法に用いる装置であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽と、上記処理槽内に繊維品を装填するための繊維品保持手段と、上記処理槽内に装填された繊維品に液体を導入するための液体導入手段と、上記処理槽内に導入された液体を上記処理槽内から取り出して再び処理槽内に導入することを繰り返し、処理槽内に装填された繊維品と液体とを接触させるための液体強制循環配管と、上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾンガスを供給して漂白処理のためのオゾン含有液を調製するオゾンガス供給手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾン分解用薬剤を投入して、オゾン分解を行うためのオゾン分解用薬液を調製する薬液調製手段と、上記処理槽内の液体を処理槽外に排出するための液体排出配管と、上記処理槽内のガスを処理槽外に排出するためのガス排出配管とを備え、上記処理槽には、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測するためのオゾン濃度センサが設けられ、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つ濃度制御が行われるようになっていることを特徴とする繊維品の漂白装置。
【請求項12】
請求項2記載の漂白繊維品の製法に用いる装置であって、開閉蓋付密封容器からなる処理槽と、上記処理槽内に繊維品を装填するための繊維品保持手段と、上記処理槽内に装填された繊維品に液体を導入するための液体導入手段と、上記処理槽内に導入された液体を上記処理槽内から取り出して再び処理槽内に導入することを繰り返し、処理槽内に装填された繊維品と液体とを接触させるための液体強制循環配管と、上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾンガスを供給して漂白処理のためのオゾン含有液を調製するオゾンガス供給手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体を50℃以上に加温して黄変処理のための加温水を調製する加温手段と、同じく上記液体強制循環配管を循環する液体にオゾン分解用薬剤を投入して、黄変除去とオゾン分解を同時に行うためのオゾン分解用薬液を調製する薬液調製手段と、上記処理槽内の液体を処理槽外に排出するための液体排出配管と、上記処理槽内のガスを処理槽外に排出するためのガス排出配管とを備え、上記処理槽には、処理槽内のオゾン濃度を経時的に計測するためのオゾン濃度センサが設けられ、測定濃度が設定範囲を下回る場合には、上記オゾンガス供給量を増量し、測定濃度が所定範囲を上回る場合には、上記オゾンガス供給量を減量することにより、処理槽内のオゾン濃度を一定に保つ濃度制御が行われるようになっていることを特徴とする繊維品の漂白装置。
【請求項13】
上記処理槽が、繊維品をパッケージ化した状態で処理を行うパッケージ型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、パッケージ化された繊維品の内外を繰り返し通過して繊維品と接触するようになっている請求項11または12記載の繊維品の漂白装置。
【請求項14】
上記処理槽が、繊維品をロープ状にして液流によって移送しながら処理を行う液流型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、ロープ状の繊維品を移送するための液流として用いられて繊維品と接触するようになっている請求項11または12記載の繊維品の漂白装置。
【請求項15】
上記処理槽が、繊維品を回転ドラム内で動かしながら処理を行うワッシャー型の処理槽であり、上記液体強制循環配管によって強制循環される液体が、上記回転ドラム内外を強制循環して繊維品と接触するようになっている請求項11または12記載の繊維品の漂白装置。
【請求項16】
上記オゾンガス供給手段として、オゾンガス発生装置と、このオゾンガス発生装置から延びるオゾンガス供給配管と、エジェクタ、渦流ポンプ、ミキシングポンプのいずれかからなる気液混合吐出手段とが設けられ、オゾンガスが、上記気液混合吐出手段を介して、上記循環液体中に微細気泡化した状態で供給されるようになっている請求項11〜15のいずれか一項に記載の繊維品の漂白装置。
【請求項17】
上記液体排出配管の先端およびガス排出配管の先端が、ともにアルカリ水溶液貯槽内に連通されるようになっている請求項11〜16のいずれか一項に記載の繊維品の漂白装置。
【請求項18】
上記アルカリ水溶液貯槽内の、液面から上に溜まるガスが捕集され、200℃以上に加熱された煙突内に送入されるようになっている請求項11〜17のいずれか一項に記載の繊維品の漂白装置。
【請求項19】
上記処理槽の内周面と、オゾン含有液体およびオゾン含有ガスが流通する配管の内周面とが、ともにフッ素系樹脂によってコーティングされている請求項11〜18のいずれか一項に記載の繊維品の漂白装置。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれかの製法によって得られることを特徴とする漂白繊維品。
【請求項21】
製造後、20〜30℃の雰囲気下で60日間放置後の白度(JIS−1991法に従う)が、60以上である請求項20記載の漂白繊維品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−240224(P2008−240224A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316229(P2007−316229)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(599105012)
【出願人】(506322798)
【出願人】(506322802)
【Fターム(参考)】