説明

漏洩同軸アンテナ

本発明は、内部導体(1)、内部導体(1)の廻りの誘電体(2)、および誘電体(2)の廻りに配置した第一シールド導体(4)を含む漏洩同軸アンテナ(10)に関係し、第一シールド導体(4)は内部導体(1)の長手方向に分散した開口部(41)を有し、且つその開口部(41)を電磁エネルギーが通過するように構成されている。第二シールド導体(5)が第一シールド導体(4)の廻りまたは下に配置され、第二シールド導体(5)は、シールドされた区域(S1〜S12)にある第一シールド導体の開口部(41)の少なくともいくつかをカバーするように構成されている。第二シールド導体(5)は、アンテナ(10)の長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体(4)のカバーしていないかまたはマスクしていない部分(AS1〜AS12)を画定し、電磁エネルギーがカバーしていない部分(AS1〜AS12)を通過するように構成されている。このようにして、本発明は例えば航空宇宙産業用途に関する漏洩同軸アンテナの特性を改善するための二層シールドを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部導体、内部導体の廻りの誘電体、および誘電体の廻りに配置したシールド導体を含む漏洩同軸アンテナに関係し、シールド導体は内部導体の長手方向に分散した開口部(opening)を有し、且つその開口部を電磁エネルギーが通過するように構成されている。特に、このような漏洩同軸アンテナは飛行機および他の用途で使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
漏洩および/または放射(radiating)同軸ケーブルは、トンネル、鉱山、ビルディングのような密閉空間におけるおよび/または狭い横方向の交通ルート(例えば線路および幹線道路)を含む他の引き伸ばした(stretched-out)用途における長手方向アンテナとして採用されてもよい。現代的な用途では、このようなケーブルは、飛行機のような引き伸ばされた乗り物で採用されてもよく、そこでは一または二方向通信の要求が存在する。漏洩同軸ケーブルは表面波をサポートし、そこでは出力の一部が放射状に放射される。漏洩同軸ケーブルは放射または結合(coupling)モードで作動(operate)する。これらのモードは、全ての寄与する隙間(aperture)の同相追加に対応する。
【0003】
既知の漏洩および/または放射同軸ケーブルのほとんどは重く、直径が大きく、且つ柔軟性がない。しかしながら歴史的には、これは問題とはならなかった、なぜならそれらが使用される用途、例えば上述したもののいくつか、は軽量または柔軟性のあるケーブルを必要としなかったからである。しかしながら、例えば、特に飛行機での使用については、そのような欠点は不利なことがある。
【0004】
米国特許第4 599 121号は、製造プロセスにおいて編組みが進んだときに、シールドワイヤーの端部を引き込む(drop)ことによってそこに造られる開口部を有する、連続編組みシールドを使用することによって、漏洩同軸ケーブルを製造する方法に、方向付けられている。
【0005】
米国特許第5 936 203号は、連続する複数の導電ストリップで形成された外部導体を有する放射同軸ケーブルに方向付けられている。この複数の導電ストリップは、中心導体に対して同軸の関係で連続的に巻き付けられ、且つ誘電性のコアによって分離されている。この複数の導電ストリップは、組み合わさって放射ケーブルの別の導体を画定し、且つケーブルの励起に応じた電磁エネルギーを受信するために及び放射するために導電ストリップ間に複数のギャップまたは隙間を画定する。
【0006】
米国特許第4 339 733号は、少なくとも一つの中心導体、またはその中心導体を囲む誘電性のコア、およびその誘電性のコアの全長に沿って中心導体に対して同軸の関係で配置された複数の放射シースを含む、放射ケーブルに関係する。特に、シースは、編組みのような連続構造、らせんまたは長手方向に巻き付けられた構造によって実現される。
【0007】
ドイツ特許第26 36 523 A1号は、絶縁コーティングでカバーされている放射同軸伝送ラインに方向付けられている。同様の円筒状の放射素子が、ライン上に、且つそのライン内でおよびラインを介して伝送される高周波帯域の中心周波数の波長と等しい中心間間隔で、等間隔で置かれる。絶縁コーティングは、環境に対して外部導体を絶縁し、および放射素子のためのサポート表面を設立する。各放射体は、放射される伝送帯域の中心周波数の半分の波長に等しい長さを有することが好ましい。
【0008】
上述の文献のいくつかで具現化されたような、既知の漏洩および/または放射同軸ケーブルのどれも、航空宇宙産業用途での使用に対する要求に合致しない。開口の編組み構造を使用する柔軟性のあるデザインは、限定された帯域幅および長手方向の大きな損失を有する一方で、開口を有する畝状の(ridged)外部導体を伴うデザインは、大きな曲げ半径を有し柔軟性に欠ける。特に、飛行機内のGSMおよびWLANのような無線用途用の分散型のアンテナとして使用することを意図した漏洩/放射同軸ケーブルは、多くの特定の要求に合致しなければならない。これらの要求には、例えば、60mまでのアンテナ長でその周波数帯域内での作動をサポートするために、それが柔軟性(32mmの曲げ半径を有し、インピーダンス変化が1オーム未満であること)、高帯域幅かつ広帯域(400MHzから6GHzまで)、軽量(190g/m)、長手方向の低い損失(6GHzで0.36dB/m未満の減衰)でなければならないことが含まれる。飛行機で使用するための漏洩/放射同軸ケーブルは、柔軟性でなければならない、なぜなら多くの障害物によってアンテナを直線状に通す(run)ことが不可能である飛行機内部にそれが設置されるからである。それは高周波数応答を有さなければならない、なぜなら無線通信標準の多くが数GHzで作動するからである。それは高帯域幅を有さなければならない、なぜなら無線通信標準のそれぞれは一つのアンテナ内でその独自の周波数帯域で作動するからである。それは飛行機の質量を最小限にするという目的を有する飛行機の仕様に適合するために軽量でなければならない。それは十分な長さに達することができるように長手方向の損失が低くなければならないが、一方で受信および/または伝送アンテナとして機能するために十分な放射損失を有さなければならない。最後に、放射損失は全長に沿って均質でなければならず、および例えば飛行機の仕様のような、用途によって規定された特定のノイズ排除要求を維持するために部分円周状放射パターンを可能にしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、したがって、現存する解決策の上述した欠点の少なくともいくつかを改善することができる、漏洩同軸アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、請求項1または請求項2に記載の特徴による漏洩同軸アンテナによって解決される。本発明による漏洩同軸アンテナの実施態様は、従属請求項から明らかである。
【0011】
特に、本発明の第一の態様によると、漏洩同軸アンテナは、内部導体、内部導体の廻りの誘電体、および誘電体の廻りに配置した第一シールド導体を含み、第一シールド導体は内部導体の長手方向に分散した開口部を有し、および該開口部を電磁エネルギーが通過するように構成されている。第二シールド導体は第一シールド導体の廻りに配置され、ここで第二シールド導体は、シールドされた区域内でアンテナの外側へ電磁エネルギーが通過することを防ぐために、シールドされた区域にある第一シールド導体の開口部の少なくともいくつかをカバーするように構成されている。さらに、第二シールド導体は、アンテナの長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体のカバーしていない部分を画定し、電磁エネルギーがカバーしていない部分を通過するように構成されている。
【0012】
本発明の別の実施態様により、第二シールド導体は第一シールド導体の下に配置され、ここで第二シールド導体は、シールドされた区域内でアンテナの外側へ電磁エネルギーが通過することを防ぐために、シールドされた区域にある第一シールド導体の開口部の少なくともいくつかをマスクするように構成されている。さらに、第二シールド導体は、アンテナの長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体のマスクしていない部分を画定し、電磁エネルギーがマスクしていない部分を通過するように構成されている。
【0013】
このように、本発明は、本明細書の導入部で述べたように、漏洩同軸アンテナの特性を改善するための第一シールド導体および第二シールド導体を有する二層シールドを提案する。特に、両シールド層はケーブルの曲げを可能にするが、第二シールド導体を有する第二シールド層が、ケーブルの全長のかなりの部分にわたって第一シールド導体を構成する第一シールド層の開口部をカバーまたはマスクするので、同軸伝送モードの長手方向の損失はかなり低減することができる。これは、柔軟性があることと長手方向の損失が低いことの組み合わせを可能にする。漏洩同軸ケーブルの帯域幅および到達距離だけでなく横断損失または放射の量も、種々の属性:第一シールド層の上への第二シールド層の被覆率(coverage)によって、または、それぞれに、第一シールド層の下に第二シールド層をマスクすること、および第一シールド層のカバーしていないかまたはマスクしていない部分(第二シールド層の開口部)の長さによって、制御することができる。さらに、これに応じて第一シールド層の開口部(例えば幅および/または数)を変化させてもよい。これは、多くの用途に対して本発明を適用することを可能にする。高帯域幅および長い到達距離が柔軟性と組み合わせて求められるとき、例えば航空宇宙産業において、それは特に重要である。
【0014】
本発明の実施態様により、第二シールド導体は、アンテナの長手方向に非連続的に配列されている複数の管状区域を有し、管状区域間の第一シールド導体の、それぞれ、カバーされていないかまたはマスクされていない部分を画定する。
【0015】
本発明の別の実施態様により、第二シールド導体は、少なくともアンテナが作動しているときに、第一シールド導体にシールドされた区域内で電気的に結合されるように配列されている。したがって、第一シールド導体が接地電位に接続されているとき、シールド機能を発揮するために第二シールド導体も接地電位に接続される。一実施態様により、第一シールド導体および第二シールド導体の両方が互いに直接接触するように、両シールド導体が互いへのガルバニ接触を維持する。一方でまた、第二シールド導体を第一シールド導体へ容量性結合を介して結合するために、第一シールド導体が第二シールド導体へ容量性挙動を有する材料を介して接続されてもよい。このような結合は、漏洩同軸アンテナの作動周波数に対して特別に配列される。この関心事において、例えば、第一シールド導体および第二シールド導体の間に配列された誘電材料が、容量性結合素子として働くことがある。
【0016】
本発明の別の実施態様により、導電ストリップが誘電体の円周区域に沿って長手方向に配列され、前記開口部のシールドされたセグメントおよび前記開口部のシールドされていないセグメントを形成し、ここで、電磁エネルギーが前記開口部のうちシールドされていないセグメントにある開口部を通過する。このような導電ストリップは、例えば、電磁エネルギーを漏洩同軸アンテナの好ましい方向に焦点合わせをするために、適用されてもよい。さらに、このような導電ストリップは、アンテナの或る位置に電磁エネルギーを集中させるために、および長手方向の損失を低減させるために使用されてもよい。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様により、第一シールド導体および第二シールド導体は導電ストリップを介して電気的に結合される。
【0018】
第一シールド導体は、ワイヤー導体のオープン構造を有してもよく、それは下にある層の表面全体をカバーしない。別の実施態様によれば、第一シールド導体は、オープン構造の導電ホイルメッシュを有する。さらに、内部導体は、プラスチックコアの廻りに巻き付けられた金属導体を有してもよい。このようなプラスチックコアまたはプラスチック管は、FEP(フルオロエチレンプロピレン)で構成されているのが好ましい。誘電体は、ポリテトラフルオロエチレンであるのが好ましく、および延伸ポリテトラフルオロエチレンであるのが最も好ましい。非導電ジャケットが、第二シールド導体および第一シールド導体の廻りに配置されるのが好ましい。
【0019】
特別な実施態様では、本発明の漏洩同軸アンテナは、米国特許第5 500 488A号およびEP0 635 850A1号に記載されたベース同軸ケーブルを含んでもよく、それがここに記載された本発明の原理により改善される。すなわち、ここに記載された基本原理がそのようなケーブルに適用可能である。特に、内部導体はプラスチックコアを囲むように配列されてもよく、ここで内部導体は、さらに二層を含み、重なるように且つ螺旋状に巻き付けた導電性フィルムの形態の内側層、および内側層と電気接触する横巻き(served)ワイヤーの形態の外側層を伴う。
【0020】
本発明の実施態様により、アンテナ機能を発揮する同軸アンテナの区域を形成する第一シールド導体の、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分は、それらの部分間に間隔をアンテナの長手方向に有し、それはアンテナの全長に沿って変化する。特に、その間隔は、アンテナの全長に沿ってランダムなやり方で変化してもよく、周期的な共振を避ける。このような周期的な共振は、それが起こった場合に、漏洩同軸アンテナの性能を低下させる。この関心事において、ランダムなやり方で変化させることは、可変で予め定められていない構造、または第一シールド導体の、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分間の間隔の適法性を意味する。
【0021】
本発明の別の実施態様によれば、第一シールド導体の、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分が、アンテナの長手方向に幅を有し、それはアンテナの全長に沿って変化する。特に、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分は、アンテナの全長に沿ってより均質な放射出力損失を生じるように、伝送端部から受信端部までケーブルが横断するときに、より広くなる幅を有してもよい。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様によれば、組み合わせ効果で、均質な損失を生じるため、および性能を低下させ得る周期的な共振を避けるために、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分の幅を変化させることと、その部分間の間隔を変化させることとの組み合わせが、行使される。
【0023】
本発明の漏洩同軸アンテナの様々な構成要素は、任意の好適な順番で配置されることができる。例えば、この同軸アンテナは、約190g/m以下の質量(しかし、最終用途によっては、質量は重要でないこともある)、32mm未満の曲げ半径、400MHz〜6GHzの帯域幅、および6GHzの周波数でメートルあたり0.36dB未満である長手方向の減衰、を有する。
【0024】
本発明のさらなる実施態様および有利な特徴は、従属請求項から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明はここで特に添付図面に図解された発明の実施態様を参照して記載される。図1は、本発明の実施態様による典型的な漏洩同軸アンテナ10の側面図である。同軸アンテナ10は、少なくともその一端でコネクター21(図示されない)に結合可能である。第二シールド導体5は、アンテナ10の長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向の別々の位置に非連続的に第一シールド導体4のカバーしていない部分を画定する。
【0026】
本発明による漏洩同軸アンテナのさらなる詳細は、図2および3を参照して示される。漏洩同軸アンテナ10は、内部導体1を有しており、それは金属であってもよいし、または本明細書の以下により詳細に記載されるように、プラスチック管の廻りに巻き付けた金属であってもよい。誘電体2が内部導体または中心導体1の廻りに配置され、その誘電体は任意の絶縁材料であってよい。例えば、誘電体2はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。特に、誘電体2は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であってもよい。
【0027】
実施態様により、漏洩同軸アンテナ10は、アンテナの長手方向に誘電体2の円周区域に沿って配置された導電ストリップ3を有してもよく、シールドされたセグメント31およびシールドされていないセグメント32を形成し、ここで電磁エネルギーがシールドされていないセグメント32でアンテナの外側へ通過することができる。導電ストリップ3は、金属若しくは金属化されたホイルまたは他の導電層であってもよい。導電ストリップ3を、その外側表面の一区域だけをカバーしている同軸アンテナ10の全長に沿って配置することによって、導電ストリップ3から離れる方向でシールドされていないセグメント32の外へ電磁エネルギーが結合または放射する。このやり方で、電磁エネルギーおよび放射のパターンを特定の方向に焦点合わせすることができ、それによって同軸アンテナの指向性が制御される。これは、近接場および/または非近接場の電磁場密度が、電磁妨害(EMI)高感度装置を含むエリアのような高感度エリアで制御されることが必要である場合に、非常に重要である。
【0028】
第一シールド導体4は、それぞれ、誘電体2および導電ストリップ3の廻りに配置され、ここで第一シールド導体4は内部導体1の長手方向に分散した開口部41を有する。このようにして、第一シールド導体4は、電磁エネルギーが開口部41を通過するように、配列される。第一シールド導体4は、誘電体2および導電ストリップ3の廻りに同軸に配置される。シールド導体4は、編組みまたはホイルメッシュであってもよい。シールド導体4に対する重要な要求は、それが開口部を有し、その開口部を介して電磁エネルギーが放射または結合することである。さらに、第二シールド導体5は、第一シールド導体4の廻りに配置され、ここで第二シールド導体5は、図1に示されるS1〜S12のような、シールドされた区域で第一シールド導体4の開口部41の少なくともいくつかをカバーするように構成されている。これらのシールドされた区域S1〜S12において、電磁エネルギーがそれぞれのシールドされた区域内でアンテナの外側へまたはアンテナの外側から通過することが阻止される。第二シールド導体5は、ホイルまたは任意の他の好適な導電材料であってもよい。非導電ジャケット6が、同軸アンテナ10の構成要素の全てにわたって配置されてもよい。
【0029】
本発明の漏洩同軸アンテナ10の様々な構成要素は、それぞれの実施態様で図面に図解されている。例えば、第二シールド導体5は、第一シールド導体4の下に配置されてもよく、ここで第二シールド導体5は、シールドされた区域S1〜S12で第一シールド導体4の開口部41の少なくともいくつかをマスクするように、配列される。これに応じて、このようなシールド導体5が、アンテナの長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体4のマスクしていない部分を画定する。このような第一シールド導体4のマスクしていない部分AS1〜AS12は、電磁エネルギーがこのマスクしていない部分AS1〜AS12を通過するように構成されている。したがって、マスクしていない部分AS1〜AS12は、アンテナ区域として機能するように構成されている。さらに、導電ストリップ3は、第一シールド導体4および第二シールド導体5の一方若しくは両方の、下、間、または上に配置されてもよい。
【0030】
図1の実施態様によると、第二シールド導体5はアンテナ10の長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向の別々の場所に非連続的に配列された第一シールド導体4のカバーしていない部分AS1〜AS12を画定する。第二シールド導体5が第一シールド導体4の下に配置され、アンテナの長手方向に第一シールド導体4のマスクしていない部分AS1〜AS12を画定する場合、同じ基本原理が適用されてもよい。特に、図1によると、第二シールド導体5は、図3の断面図で参照番号5を使って示されるように、複数の管状区域S1〜S12を有する。このような複数の管状区域は、アンテナ10の長手方向に非連続的に配列され、管状区域S1〜S12の間に非連続または別々のカバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12を画定し、そのカバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12も管状またはリング状形態でできており、そして漏洩同軸ケーブル10のアンテナ区域として機能する。対照的に、シールドされた区域S1〜S12は、シールド機能(非アンテナ機能)を提供する。
【0031】
特に、各管状区域S1〜S12の軸長さは、かなり大きく作られ、例えば、作動周波数の波長の半分より極めて大きい。表面波は広げることが可能になる。
【0032】
シールド機能を提供するために、アンテナ10が作動するとき、少なくともそれぞれの作動周波数に関して、シールドされた区域S1〜S12内で第一シールド導体4に電気的に結合されるように、第二シールド導体5が配列される。特に、第一シールド導体4が接地電位に結合されているとき、第二シールド導体5も接地電位にあるように、第一シールド導体4および第二シールド導体5は、お互いに対してガルバニ接触を維持する。したがって、第一シールド導体4は、第一シールド導体4の外側へその全体の長さに渡って、すなわち、アンテナの全体の長さに渡って第一シールド導体4が配列されるときには同軸アンテナの全体の長さに渡って、電磁エネルギーを放射または結合する。この第一シールド導体4はこのようにして配列され、漏洩同軸アンテナ10のアンテナ機能を提供する。対照的に、第二シールド導体5は、非連続的なシールドされた区域S1〜S12内でブロック機能を提供するように配列され、それぞれのシールドされた区域S1〜S12内でアンテナの外側に電磁エネルギーが通過することを防ぐ。
【0033】
したがって、同軸アンテナ10の電磁エネルギーは、カバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12を介して伝送され、そこでは第二シールド導体5が開口部を提供する。これらのカバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12の幅Lは、アンテナを特定の周波数に合わせるためおよび反射減衰量(リターンロス)および結合損失を調整するために、変化させてもよい。さらに、各区域AS2〜AS11は、区域AS1からそれぞれX〜X10の間隔で配列され、その間隔はお互いの関係について変化してもよい。特に、カバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12は、それらの間に間隔をアンテナの長手方向に有し、それはアンテナの全長に沿って変化する。特に、そのような間隔は周期的な共振を避けるためにアンテナの全長に沿ってランダムなやり方で変化してもよい。したがって、図1に示されるような間隔XからX10は、ランダムなやり方で選択されてもよく、特にカバーしていないまたはマスクしていない部分AS1〜AS12が等間隔になることを避ける。アンテナを特定の周波数に合わせるためおよび反射減衰量および結合損失を調整するために、部分AS1〜AS12の幅Lおよびそれらの間の間隔は、組み合わせで、変化してもよい。
【0034】
信号は同軸アンテナ10を長手方向に下るように運ばれるはずなので、オープン構造のシールド導体4も同軸アンテナ10の廻りに同軸に配置され、ここでシールド導体4はケーブルの廻りにその全体の長さに沿って配置されて、導電性が長手方向に維持される。しかしながら、オープン構造のシールド導体4のために、シールド導体4のオープン構造を介して開口部41で電磁エネルギーが結合または放射することが可能となる。
【0035】
図5では、本発明の実施態様による別の典型的な漏洩同軸アンテナの部品の側面図が示される。この実施態様によれば、中心または内部導体1は、米国特許第5 500488A号に記載されるような原理による異なる構造を有する。この実施態様によれば、内部導体1がプラスチックコア11を囲むように配列され、ここで内部導体は二つの層12および13を有する。内側層12は重なるように且つ螺旋状に巻き付けた導電フィルムの形態であり、一方で外側層13は内側層12と電気接触する横巻きワイヤーの形態である。層12は、プラスチックコア11の廻りに巻き付けた銀メッキした銅フィルムの形態であってもよく、ここで本実施態様においてツイストした丸型の銀メッキした銅導体13の組み合わせが銅フィルム12に渡って適用される。誘電体14は内部導体1をカバーする。このような構造を伴って、広帯域と高周波数の両立する電気的同軸ケーブルが提供可能であり、それは、本明細書で記載されるアンテナ特性と組み合わせて、製造コストだけでなく所望の電気的および機械的特性を最適化する低減衰同軸ケーブルに対する要求を満たす、広帯域、高周波数の両立する伝送特性を組み合せる。さらに、低いケーブル質量および高い柔軟性が提供可能である。
【0036】
図4は、それぞれの部分AS1〜AS10の間の具体的な間隔を示している本発明の別の実施態様による、別の典型的な漏洩同軸アンテナの側面図を示す。この例によれば、部分AS1〜AS10の幅Lは、ケーブルの示されている長さに渡って一定に保たれる。
【0037】
このようにして、本発明は漏洩同軸アンテナの特性を改善するための二層シールドを提案する。特に、両シールド層はケーブルの曲げを可能にするが、第二シールド導体を有する第二シールド層が、ケーブル長さのかなりの部分に渡って第一シールド導体を有する第一シールド層の開口部をカバーまたはマスクするので、同軸伝送モードの長手方向の損失をかなり低減することができる。これが、低い長手方向の損失と柔軟性のあるデザインとの組み合わせを可能にする。漏洩同軸ケーブルの帯域幅および到達距離だけでなく横断損失または放射の量も、第一シールド層の被覆率によって、または、それぞれに、第一シールド層をマスクすること、および第一シールド層のカバーしていないかまたはマスクしていない部分(第二シールド層の開口部)の長さによって、制御可能である。これは、多くの用途に対して本発明を適用することを可能にする。それは、航空宇宙産業用途のように、高帯域幅および長い到達距離が柔軟性と組み合わせて要求されるときに、特に重要である。
【実施例】
【0038】
出願人は、本発明の同軸アンテナの例を製造し、そしてそれらを従来の同軸ケーブルと比較した。これらの例およびその試験の結果を以下に報告する。
【0039】
例1:
本発明による同軸アンテナを図4に示されるように構築した。提案した発明の実践的な効果を試験するために、以下の試験を実施した。
【0040】
図4の同軸アンテナを様々な直径の心棒(マンドレル)の廻りに180°巻き付け、そして特性インピーダンスの変化を測定することによって、曲げ半径を測定した。特性インピーダンスは、時間領域反射率測定器[TDRサンプリングモジュール80E04を有するTektronix TDS 8000]を使用して測定した。その結果は、心棒の直径が32mm以上の場合に、特性インピーダンスの変化が1オーム未満であることを示した。この試験は、この同軸アンテナが、曲げおよび/またはいくらかの柔軟性を必要とする用途で使用可能であるという、望ましい示唆を与えている。
【0041】
例1の同軸アンテナの周波数応答を、Agilent 8753ES Vector Network Analyzerを使用して測定した。挿入損失S21および反射減衰量S11の両方を、300kHz〜6GHzの周波数レンジで測定した。ベースライン性能レベルを得るために、これらの測定は、まず開口部を外側の第二シールド導体に入れる前の例1の同軸アンテナで行い(長手方向の減衰)、そして次にそのような開口部を同軸アンテナに導入した後で行った(長手方向および横断減衰)。その結果は以下のとおりであった:ベースライン(非−アンテナ)ケーブルは長手方向の挿入損失が2.5GHzの場合に0.19dB/mであり、6GHzの場合に0.31dB/mであった。開口部が導入された後では、長手方向および横断損失が2.5GHzの場合に0.24dB/mであり、6GHzの場合に0.57dB/mであると測定された。この漏洩同軸アンテナの反射減衰量は、6GHz未満の周波数に対して−18dB未満であると測定された。また、Rhode & Schwarz から市販されるVector Network Analyzer ZVCEを使用して、アンテナ効率を導き出すために、伝達インピーダンス測定を実施した。この試験はシールドされた部屋で実施した。国際電気技術委員会標準文書IEC61196−1に記載されたワイヤーインジェクション法を、20kHz〜3GHzの周波数レンジに渡って実行した。試験サンプルは一つの開口部を有する0.5m長の同軸アンテナであった。明確な接地条件を提供するために、両端部を真鍮の備品に端末処理した。アンテナ効率は800MHzで−15dBおよび2.5GHzで−10dBと測定された。これらの実験は、例1の放射/漏洩同軸アンテナが高帯域幅、すなわち400MHz〜6GHzを示すこと、を示した。
【0042】
実施したもう一つの実験は、例1の同軸アンテナを使用中のシステムを意味する実践的な状況で繋ぐ(hook up)ことであり:すなわち二つのコンピューター間に本例の同軸アンテナを使用してWLANネットワークを設立した。WLANアクセスポイント[SMC EliteConnect Universal Wireless Access Point SMC2555W-AG]を本例の60mの同軸アンテナに接続した。10mの区域を地上約2m上方に吊り、そして受信部を吊られたアンテナの下の様々なポイントに置き、そして性能を測定した。この受信部は無線LANカード[SMC EliteConnect Universal Wireless Cardbus Adapter SMC2536W-AG]を伴うモバイルコンピューター[Dell(登録商標) Lattitude]より構成されていた。このWLANアンテナに付随するソフトウェアを使用してWLANリンク品質を測定し、そして吊ったアンテナから5mの距離内では最高のリンク品質を示した。
【0043】
ここで本発明の特定の実施態様が説明されおよび記載されたが、本発明はこのような説明および記載に限定されるべきではない。本特許請求の範囲内で、変更および改善が組みこまれそして本発明の一部として具現化されることが可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明は、添付の図面と共同して、本発明の実施態様についての上記の記載を参照することによって、よりよく理解される。
【図1】本発明の実施態様による典型的な漏洩同軸アンテナの側面図。
【図2】本発明の実施態様による典型的な漏洩同軸アンテナの側面図であって、本発明の実施態様により配置された様々な構成要素のそれぞれを示す。
【図3】図2の典型的な漏洩同軸アンテナの断面図。
【図4】本発明の別の実施態様による別の典型的な漏洩同軸アンテナ組立品の側面図。
【図5】本発明による漏洩同軸アンテナ別の実施態様の部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体(1)、
内部導体(1)の廻りの誘電体(2)、
内部導体(1)の長手方向に分散した開口部(41)を有し、且つ開口部(41)を電磁エネルギーが通過するように構成されている、誘電体(2)の廻りに配置した第一シールド導体(4)、
を含んでなる漏洩同軸アンテナ(10)であって、
第二シールド導体(5)が第一シールド導体(4)の廻りに配置され、第二シールド導体(5)は、シールドされた区域(S1〜S12)内でアンテナの外側へ電磁エネルギーが通過することを防ぐために、シールドされた区域(S1〜S12)にある第一シールド導体の開口部(41)の少なくともいくつかをカバーするように構成されており、
ここで、第二シールド導体(5)は、アンテナ(10)の長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体(4)のカバーしていない部分(AS1〜AS12)を画定し、電磁エネルギーがカバーしていない部分(AS1〜AS12)を通過するように構成されている、
ことを特徴とする漏洩同軸アンテナ(10)。
【請求項2】
内部導体(1)、
内部導体(1)の廻りの誘電体(2)、
内部導体(1)の長手方向に分散した開口部(41)を有し、且つ開口部(41)を電磁エネルギーが通過するように構成されている、誘電体(2)の廻りに配置した第一シールド導体(4)、
を含んでなる漏洩同軸アンテナ(10)であって、
第二シールド導体(5)が第一シールド導体(4)の下に配置され、第二シールド導体(5)は、シールドされた区域(S1〜S12)内でアンテナの外側へ電磁エネルギーが通過することを防ぐために、シールドされた区域(S1〜S12)にある第一シールド導体の開口部(41)の少なくともいくつかをマスクするように構成されており、
ここで、第二シールド導体(5)は、アンテナ(10)の長手方向に非連続的に配列され、アンテナの長手方向に第一シールド導体(4)のマスクしていない部分(AS1〜AS12)を画定し、電磁エネルギーがマスクしていない部分(AS1〜AS12)を通過するように構成されている、
ことを特徴とする漏洩同軸アンテナ(10)。
【請求項3】
第二シールド導体(5)が、アンテナ(10)の長手方向に非連続的に配列されている複数の管状区域(5、S1〜S12)を有し、管状区域(S1〜S12)間の第一シールド導体(4)の、それぞれ、カバーされていないかまたはマスクされていない部分(AS1〜AS12)を画定する、請求項1または2に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項4】
第二シールド導体(5)が、少なくともアンテナ(10)が作動しているときに、第一シールド導体(4)にシールドされた区域内(S1〜S12)で電気的に結合されるように配列されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項5】
第一シールド導体(4)および第二シールド導体(5)がお互いへのガルバニ接触を維持する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項6】
誘電体(2)の円周区域に沿って長手方向に配列された導電ストリップ(3)をさらに含み、前記開口部(41)のシールドされたセグメント(31)および前記開口部(41)のシールドされていないセグメント(32)を形成し、ここで、電磁エネルギーが前記開口部のうちシールドされていないセグメント(32)にある開口部(41)を通過する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項7】
第一シールド導体(4)および第二シールド導体(5)は導電ストリップ(3)を介して電気的に結合される、請求項6に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項8】
第一シールド導体(4)が、ワイヤー導体のオープン構造を有してもよく、それは下にある層(2、3)の表面全体をカバーしない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項9】
第一シールド導体(4)は、オープン構造の導電ホイル、導電メッシュ、横巻きワイヤー、または編組みワイヤーを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項10】
第一シールド導体(4)の、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分(AS1〜AS12)が、それらの部分間に間隔(X1〜X10)をアンテナ(10)の長手方向に有し、該間隔はアンテナ(10)の全長に沿って変化し、特にアンテナの全長に沿ってランダムなやり方で変化し、周期的な共振を避ける、請求項1〜9のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項11】
第一シールド導体(4)の、それぞれ、カバーしていないまたはマスクしていない部分(AS1〜AS12)が、アンテナ(10)の長手方向に幅(L)を有し、該幅はアンテナ(10)の全長に沿って変化する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項12】
内部導体(1)が、プラスチックコア(11)の廻りに巻き付けられた金属導体(12、13)を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。
【請求項13】
内部導体(1)が、プラスチックコア(11)を囲むように配列され、ここで内部導体は、さらに二層(12、13)を含み、重なるように且つ螺旋状に巻き付けた導電性フィルムの形態の内側層(12)、および内側層(12)と電気接触する横巻きワイヤーの形態の外側層(13)を伴う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の漏洩同軸アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−525646(P2009−525646A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552721(P2008−552721)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000554
【国際公開番号】WO2007/087998
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】