説明

漢方薬組成物ならびにこれらの調製方法および使用

【課題】漢方薬組成物および当該組成物を包含する薬物を提供すること。
【解決手段】
漢方薬組成物および当該組成物を含有する薬物、ならびにこれらの調製方法および利用であって、ここで、当該組成物の成分が、1−10部のニンジン、1−10部のイチョウ葉、0.05−0.5部のサフランの柱頭、および5−10部のダイズを含み、当該成分の源が、漢方薬原材料、または当該漢方薬原材料と等価の漢方薬の抽出物であり得;本発明に係る当該漢方薬組成物が、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬組成物に関し、より詳細には、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に使用される漢方薬組成物に関する。上記組成物を構成する成分は、直接に粉剤に砕かれる漢方薬材料および/またはで漢方薬材料の抽出を介して得られる抽出物であり得る。
【背景技術】
【0002】
脳血管疾患は、虚血性の脳血管疾患および出血性の脳血管疾患の2種類に一般的に分けられ、虚血性の脳血管障害がより多く発生し、かつ脳梗塞が59.2%−85%を占めている。虚血性の脳血管疾患は、(1)脳組織に対する一過性、虚血性および局限性の損傷に起因する機能障害であり、かつ病因学における脳動脈硬化症に関連する、一過性脳虚血発作(小卒中または一時的な脳虚血性発作としても知られるTIA);(2)アテローム性動脈硬化症の場合における血液凝固、種々の動脈炎、外傷もしくは他の物理的要因、または血液疾患に起因する局部的な脳血管性の病変に起因する脳血栓症;(3)血液に入り、かつ大脳の血管を閉塞する複数の疾患から生成される閉塞に起因する脳塞栓を含む。
【0003】
多くの薬物が、虚血性の脳血管疾患の処置に利用可能である。逆症療法薬は、主に塞栓薬剤、抗血小板物質および抗凝血性薬物である一方において、漢方薬は、丹参および三七人参のサポニンによって代表されるフォスー ファユ(Huoxue Huayu)(血液循環の促進およびうっ血の除去)の漢方薬注射液、シン ナオ チン(Xing Nao Jing)およびチン カイ リン(Qing Kai Ling)によって代表されるチンレ チェトゥ シンナオ カイチャオ(Qingre Jiedu Xingnao Kaiqiao)(解熱および有毒物質の除去)漢方薬注射液、ならびにレン シェン ツァイ ツァオ ワン(Ren Shen Zai Zao Wan)(ニンジン再構成丸薬)およびファ トゥオ ツァイ ツァオ ワン(Hua Tuo Zai Zao Wan)(ファ トゥオ(Hua Tuo)再構成丸薬)によって代表されるイーチ フォスー トンルオ(Yiqi Huoxue Tongluo)(気の補充、血液循環の促進、副側における閉塞の除去)経口調製物を包含する。臨床的実施において、逆症療法薬は、主に緊急事態において使用され、かつ副作用を有する一方において、漢方薬注射液は、長期間の使用に関して利用可能ではなく、かつ漢方薬組成物は、不確かな薬効、不明な有効成分および安定した品質管理標準の欠如といった多くの問題を有している。
【0004】
痴呆は、大脳の器質性の病理的変質によって誘導される後天的な不変的な精神状態障害である。2005年における世界的な疫学的調査は、痴呆にかかっている患者が約2400万人であることを示した。年間増加は、7秒間に1人以上の患者を伴って460万の患者であり、かつその数は、20年間に2倍である。中国において控えめに見積もって、その数は、2001年から2040までに毎年、300%近くまで増加する。2040年までに痴呆にかかっている患者が、8100万人であると予想される。痴呆の発生率は、年齢に伴って増加する。老年痴呆は、A.主要な変性痴呆(例えば、アルツハイマー病(AD));B.血管性痴呆(VD);C.複合性痴呆(VDと組み合わさったAD);D.他の種類の痴呆(ピック病およびレビ小体を伴う痴呆)に、主に分類される。ADおよびVDは、老年痴呆における2つの最も主要な種類であり、かつすべての痴呆患者における90%以上を占め、ADが最も一般的であり、かつ65歳を超える患者が痴呆を有しかつ最も致命的である。
【0005】
臨床的実施において、老年痴呆の処置用に現在利用可能な第1の選択の薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、タクリン、ドネペジル、リバスティグミンおよびガランタミンなど)である。漢方薬における老年痴呆に対する診断は、逆症療法薬におけるAD、VDまたは複合された種類のすべての種類(老年痴呆と関連する疾患および症状のすべてが挙げられる)を包含する。老年痴呆の処置に対して一般的に用いられる漢方薬組成物は、ティン シー シャオ ファン(Ding Zhi Xiao Wan)(ニンジン、ブクリョウ、ショウブおよびオンジ)、チャオ シン ファン(Tiao Xin Fang)(精神状態を調整する処方薬)(トウジン、ブクリョウ、カンゾウ、セキリョウ、オンジなど)、プー シェン ファン(Bu Shen Fang)(強腎用の処方薬)(テンモンドウ、バクモンドウ、未加工のジオウ、加工済のジオウ、サンシュユなど)、タン クィ シャオ ヤオ サン(Gang Gui Shao Yao San)(ジオウおよびシャクヤク粉末)、ホワン リィアン チィエ トゥ タン(Huang Lian Jie Du Tang)(オウレンの毒性物質除去液)、コウ テン サン(Gou Teng San)(チョウトウコウ粉末)、イー カン サン(Yi Gan
San)、シャオ チャイフー タン(Xiao Chaihu Tang)(小サイコの液体)、およびチャイ フー チァ ロン クー ムー リー タン(Chai Hu Jia Long Gu Mu Li Tang)(サイコ、化石化したリュウコツおよびカキエキス)を包含する。しかし、臨床的実施において、コリンエステラーゼ阻害剤は、認識障害および情緒症状のみを改善することができるが、基本的な病理的変性に対する有意な効果を有していない。それらは、(1から2年の間)遅らせることのみが可能であり、かつ疾患の進行を止めることができない(すなわち、それらは、症状を緩和できるが、疾患を治療できない)。長期の使用は、コリンエステラーゼの合成の増加をさえ誘導し得る。タクリンは、重篤な胃腸の反作用および肝臓の毒性を結果として生じる可能性がより高い。漢方薬組成物は、不明な薬効成分、長期の薬物使用に対する不便さ、および安定した安定した品質管理標準の欠如といった多くの問題を有している。
【0006】
従って、逆症療法薬において明らかな制限および欠点があり、かつ漢方薬は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に現在、利用可能であり、かつ積極的および有意な効果、完全な調製技術および安定な薬物品質を有する虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置する薬物の種類の開発に対して、依然として要求が残っている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、漢方薬の理論に由来し、かつ実験および臨床的実践を要約することによって達成される。本発明は、4つの天然植物からの抽出および精製によって製造される純粋な漢方薬の調製物である、漢方薬組成物に関する。本発明が積極的な治療効果を有し、かつ安全であることは、実験によって証明される。
【0008】
本発明は、漢方薬組成物および当該組成物を包含する薬物を提供することを目的とする。この薬物は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に使用され得る。
【0009】
また、本発明は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に使用され得る有意な治療効果および安定した品質を有する漢方薬組成物が取得され得る、上記組成物の調製方法を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置する薬物の調製における上記漢方薬組成物の利用を提供することを目的としている。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、1−10質量部のニンジン、1−10質量部のイチョウ葉、0.05−0.5質量部のサフランの柱頭および5−10質量部のダイズを包含する、漢方薬組成物を提供する。上記ニンジン、イチョウ葉、サフランの柱頭およびダイズ(ダイズの成熟した種子)のそれぞれは、原材料から取得され得るか、または同量の上記漢方薬材料から抽出され得る。
【0012】
本発明における上記漢方薬組成物は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の全身的な処置に対して創り出される。本発明は、漢方薬の化合物であり、かつ自己免疫系の改善に重点が置かれている。上記漢方薬材料は、大量に容易に取得され得る。それらは、合理的な組み合わせにおいて毒作用または副作用を有しておらず、かつ良好な効果を有する。
【0013】
漢方薬組成物における成分の質量比は、2−6質量部のニンジン、3−6質量部のイチョウ葉、0.06−0.2質量部のサフランの柱頭、7−8質量部のダイズであることが好ましく、かつより好ましい質量比は、4.0質量部のニンジン、4.5質量部のイチョウ葉、0.1質量部のサフランの柱頭および7.5質量部のダイズである。
【0014】
上記組成物における漢方薬に関する抽出の収量は、互いに異なる。また従って、本発明は、1−10質量部のニンジンの抽出物、1−10質量部のイチョウ葉、0.5−5質量部のサフランの柱頭および0.1−1質量部のダイズの抽出物を包含する漢方薬組成物を提供する。ニンジン、イチョウ葉、サフランの柱頭およびダイズの上記抽出のすべては、アルコール抽出である。
【0015】
本発明における漢方薬組成物の処方薬の設計は、合理的なものである。上記組成物におけるニンジンは、漢方薬の原則に従って、君薬(主要な薬物)である。本発明の上記組成物を用いて処置されるべきADは、原因についての不足および表面的な事象の過剰によって特徴付けられ、かつ内臓の欠陥、ならびに気および血液の流れの不調と主に関連する。内臓の欠陥および脳副側を遮断する濁った毒素は、基本的な病理学的原因であり、かつ疾患のすべての過程において持続する。上記処方薬における君薬であるニンジン(有効成分は、ギンセノシドである)は、腎臓の気を大いに養い得、かつ知性の増進に関して精神状態を安定させ得る。臣薬(副次的な薬物)であるイチョウ葉(主要な有効成分は、イチョウフラボノイドおよびギンゴライドである)およびサフランの柱頭(主要な有効成分は、サフランの柱頭のグリコシドである)は、血液循環を促進することができ、かつ有毒物質を除去することができる。補助薬物であるダイズ(主要な有効成分は、ダイズイソフラボノイドおよびビタミンE)は、内因性の毒素を除去することができる。上記組成物は、気を補うことができかつ血液循環を促進することができ、毒性物質を除去することができかつ副行物を通すことができ、かつ原因および表面的な事象の両方を考慮して精神状態を安定させて知性を増進することができる。
【0016】
本発明の組成物は、上記漢方薬材料の原料粉または上記漢方薬材料の抽出物の添加および混合によって製造され得る。上記質量比において成分が含まれる条件において、組成物は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置に有効で有り得、本発明の保護範囲内に有り得る。ニンジン、イチョウ葉、サフランの柱頭およびダイズは、本発明の好ましい実施形態において、漢方薬材料のすべての抽出物である。
【0017】
好ましい実施形態において、成分および上記組成物の質量比は、ニンジンの抽出物:イチョウ葉の抽出物:サフランの柱頭の抽出物:ダイズの抽出物=5:5:1:0.5である。
【0018】
ニンジンの上記抽出物は、公然の公知のあらゆる方法を用いて調製され得る。
【0019】
本発明における好ましい抽出方法は、以下の通りである。
【0020】
ニンジンの少なくとも2倍量の低濃度(50−70%、好ましくは60%)のエタノールがニンジンに加えられ、かつ少なくとも1回(好ましくは3回)の抽出が、1回について少なくとも1時間(好ましくは3時間)実施される。液体抽出物は、混合され、かつ相対的密度が約1.05になるまで濃縮される(50℃)。液体濃縮物は、少なくとも1倍(好ましくは2倍)の容積の蒸留水に加えられ、かつろ過される。ろ過物は、低極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂(好ましくはAB−8タイプ)の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、水に続いて10%エタノールを用いて溶出される。10%エタノール溶出物および水溶出物が捨てられ、かつ樹脂がカラムの約2.5倍の容積までの70%エタノールを用いて溶出される。70%エタノール溶出物は、回収され、かつギンセノシドを含有するニンジンの抽出物が取得され得る。
【0021】
本発明において薬物を伴うマクロ細孔の樹脂は、水、10%エタノールおよび70%エタノールのそれぞれを用いて溶出される。エタノールの上記2つの濃度のふるいわけおよび溶出の手法は、漢方薬の全成分の含有量に関する技術の要求だけでなく、有効成分に関する製造物のより高い転移率および収率を保証することができる。
【0022】
イチョウ葉の抽出物は、以下の抽出方法を用いて取得され得る。
【0023】
乾燥したイチョウ葉の少なくとも2倍(好ましくは8倍)量の低濃度(60−80%、好ましくは70%)のエタノールが上記イチョウ葉に加えられ、かつ少なくとも1回(好ましくは3回)の抽出が、1回について50−70℃(好ましくは60℃)において少なくとも1時間(好ましくは4時間)実施される。液体抽出物は、混合され、かつ相対密度が約1.05になるまで減圧によって濃縮される(50℃)。液体濃縮物は、水に加えられ、冷やされ、沈殿させられ、かつろ過される。ろ過物は、有効成分を富化するために、極性水素結合ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂(好ましくはADS−1タイプ)の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、水に続いて60%エタノールによって溶出される。水溶出物が捨てられる一方において、エタノール溶出物が回収され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。それから、生薬の2倍量の水が加えられ、かつ沸騰するまで過熱される。室温における沈殿が24時間続けられる。ろ過した後に、ろ過物は、不純物を取り除くために、弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂(好ましくはDM−130タイプ)の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂が水に続いて%15エタノールおよび60%エタノールによって溶出される。水溶出物および15%エタノール溶出物が捨てられる一方において、60%エタノール溶出物が回収される。また、濃縮および乾燥が継続可能であり、かつイチョウ葉の抽出物の産物が取得され得る。
【0024】
本発明において、イチョウ葉の抽出技術、特に精製技術は、不純物(主にイチョウ葉の、フェノール酸、多糖類、単糖類および無機塩)の除去を目的とした有機溶媒抽出技術の制限を打開している。イチョウ葉のフェノール酸の有害な不純物が、特に低い水溶性を有し、かつ60%以上のエタノール溶出物において主に存在する一方において、多糖類および無機塩の不純物の大部分が15%エタノールを用いて溶出され得るので、不純物のほとんどは、本発明においてマクロ細孔吸着性の樹脂の上における2回の精製手順を用いて除去され得る。さらに、15−60%エタノール溶出物は、60%エタノール溶出の後に回収され得、フェノール酸の含有量が5ppmであることを保証することができる。上述のふるいわけを経て得られるイチョウ葉の抽出物における、主要な有効成分の割合(すなわち、イチョウフラボノイド対ギンゴライドの割合)は、24:25−10、好ましくは24:20−10、およびより好ましくは24:15である。薬理学的実験は、この割合を有するイチョウ葉の抽出物の効果が、24:6のイチョウフラボノイド対ギンゴライドの割合を有する現在における国際標準におけるイチョウ葉 EGb761の抽出物の効果よりも有意に高いことを証明している。
【0025】
サフランの柱頭の上記抽出物は、公然の公知のあらゆる方法を用いて調製され得る。本発明において好ましい抽出方法は、以下の通りである。
【0026】
サフランの柱頭の少なくとも5倍(好ましくは20倍)の量の60−80%エタノールがサフランの柱頭に加えられ、かつ少なくとも1回(好ましくは3回)の抽出が、1回について60−90℃(好ましくは90℃)において少なくとも1時間(好ましくは2時間)実施される。液体抽出物が混合され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。液体濃縮物が加えられ、かつ原材料の1倍量を超える水を用いて希釈され、かつろ過される。ろ過物は、弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂(例えば、AB−8タイプ)の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂が水に続いて30%未満の漸進的に増加される濃度のエタノール(例えば、後の30%エタノール溶出のために20%エタノールが使用される)によって溶出される。最後に、70%エタノールが薬物を伴う樹脂の溶出に使用される。水溶出物および30%未満のエタノール抽出物が捨てられる一方において、70%エタノール抽出物が回収され、かつサフランの柱頭グリコシドを含むサフランの柱頭の抽出物が取得され得る。
【0027】
材料が高価なので、調製技術のふるいわけに関する前提が高い収率を保証する。本発明における溶出に対して選択される20%エタノールおよび30%エタノールは、エタノールの濃度における差異が10%でしかないように感じられるが、実験において発明者は、サフランの柱頭の損失が、20%エタノールおよび30%エタノールの抽出の後においてほとんどなく、かつ30%または他の濃度のエタノールが溶出に直接に使用される場合に、サフランの柱頭のグリコシドの大きな損失が生じることを見出した。
【0028】
ダイズのエタノール抽出は、以下の抽出方法を用いて取得され得る。
【0029】
材料のダイズは、85−95%エタノールを用いて抽出され、かつろ過される。残余物が60−80%(好ましくは約70%)エタノールを用いて抽出され、かつろ過される。エタノール抽出物は、混合され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。材料の1倍質量の水が加えられ、かつ十分に攪拌されかつろ過される。ろ過物は、弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂(例えば、AB−8タイプのマクロ細孔吸着性樹脂)の上においてクロマトグラフにかけられる。好ましくは、薬物を伴う樹脂が、まず水を用いて溶出され、かつ水溶出物が捨てられる。それから、50−65%(好ましくは約60%)エタノールが溶出に使用される。溶出物が回収され、かつ部分Aが取得される。部分Aにおける主要成分は、イソフラボノイドである。90−95%エタノールが溶出に使用される。溶出物が完全に回収される。無水エタノールがエステル化に使用される。水が洗浄用にふたたび加えられ、かつ溶液が層状化される。溶液が、下層(酸性水)が除去された後に、ガス抜き用に0.1MPaまで(好ましくはガス抜き用の回転式の蒸発乾燥器を用いて0.1MPaまで)減圧される。アルコール分解のために水酸化ナトリウムが加えられる。それから、水が洗浄用に加えられる。下層におけるアルカリ性水が除去される。上層における有機液体がガス抜き用に0.1MPaまで減圧され、かつそれから膜蒸留を受けて脂肪酸エチルエステルを除去する。残余物が(好ましくは0.133Pa、蒸発プレートと濃縮プレートとの間が0.5mmという条件において)分子蒸留を受ける。部分Bが取得され、かつその成分は混合性のトコフェノールである。部分Bおよび部分Aが混合され、かつ本発明におけるダイズの抽出物として使用される。
【0030】
ニンジンの、イチョウ葉の、サフランの柱頭のおよびダイズの抽出物用の上記抽出方法は、実施例1に使用される漢方薬組成物のカプセル剤における主成分用の調製方法である。
【0031】
主に、本発明のダイズの抽出物における、質量比が4:2−0.5、好ましくは約4:1を有するダイズイソフラボノイドおよびビタミンEであることが決定される。
【0032】
また、本発明は、上記漢方薬組成物および薬学的に受容可能な補助材料を包含する、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置する薬物を提供する。補助材料は、薬物調製の種類のため変わる。薬物にとって、ニンジンの抽出物における有効成分(ギンセノシド)は、ギンセノシド Re(C488218)に基づいて13.75mg/0.15g未満ではない。イチョウ葉の抽出物における有効成分(ギンゴライドを含有する)は、ギンゴライド A(C2024)、ギンゴライド B(C202410)、ギンゴライド C(C202411)およびビロバライド(C1518)の総量に基づいて、2.75mg/0.15g未満でない。上記0.15gの意味は、製品薬物の質量である。
【0033】
調製物の上記形態は、調製物のあらゆる形態(好ましくは経口薬剤(薬理学における経口薬剤の利用可能なあらゆる製剤形態(好ましくは顆粒剤、カプセル剤、錠剤、経口液剤およびシロップ剤)が挙げられる)で有り得る。本実施形態において、顆粒剤およびカプセル剤が好ましい。虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置する本発明における薬剤の効果が、市販の薬物よりも有意に高いことは、実験によって証明する。本発明の組成物は、最大の投与量を低下させ、かつ動じに高い効果および低い毒性を維持している。
【0034】
発明者は、本発明に基づく調査をさらに実施して、より安定な活性組成物およびおよび有効性の高い含有量を有する漢方薬組成物を取得している。そしてかれは、イチョウ葉 EGb761の国際標準抽出物におけるイチョウフラボノイド対ギンゴライドの割合が24:6であるが、本発明者によって実施された薬理動態実験が、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置用のイチョウ葉の抽出物におけるイチョウフラボノイド対ギンゴライドの最善の比率が24:15であることを証明することを、見出した。上記結果に基づいて、一般的解析および直交計画は、実際の誤差を用いることによって、ニンジンの抽出物、イチョウ葉の抽出物、サフランの柱頭の抽出物およびダイズの抽出物に対して実施される。動物の実験行動評価は、記憶程度の検出用の手段としてモリス水迷路を用いて、D−ガラクトースを用いて脳の老化を誘導されたモデルマウスおよび通常のマウスを用いて、調査される。結果の包括的な解析は、4つの成分からなる組成物の処方の治療効果があらゆる単一の成分より良好であり、かつダイズの抽出物と、3つの成分(ニンジン、イチョウ葉およびサフランの柱頭)の処方におけるニンジンおよびイチョウ葉のそれぞれとの間における相互作用があること(ダイズまたはその抽出物が老年痴呆の処置用の処方薬の作製に必要であることを示している)、を示す。
【0035】
また、本発明は、以下のものを包含するすべての種類の薬物の上記経口薬剤を調製する方法を提供する。
【0036】
A.顆粒剤:デキストリンまたは他の粘着剤が処方される混合軟膏のそれぞれに加えられ、よく混合され、60〜80℃において乾燥され、かつ粉砕される。これに対して、風味調整剤(例えば、ステビオシン)が加えられ、かつ十分に混合され、それから顆粒化されかつ乾燥され、かつ製品顆粒剤が得られる。
【0037】
B.錠剤:デキストリンまたは他の粘着剤が混合軟膏に加えられ、均質に混合され、60〜80℃において乾燥され、かつ粉砕される。これに対して、適量の粘着剤(例えば、スターチ)および崩壊剤(例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム)が加えられ、それから均質に混合され、顆粒化され、かつ乾燥される。それから、適量の滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム)が加えられかつ均質に混合され、かつ錠剤に圧縮される。必要に応じてフィルムコーティングが施され得る。製品錠剤が得られる。
【0038】
C.カプセル剤:デキストリンまたは他の粘着剤が、処方される混合軟膏のそれぞれに加えられ、均質に混合され、乾燥され、かつ粉砕される。風味調整剤(例えば、ステビオシン)および適当な充填剤(例えば、スターチ)が加えられ、かつ均質に混合される。顆粒が乾燥され、かつカプセルの中に充填される。
【0039】
D.丸薬:デキストリンまたは他の粘着剤が、処方される混合軟膏のそれぞれに加えられ、均質に混合され、乾燥され、かつ粉砕される。これに対して、蜂蜜もしくは水、または蜜蝋もしくは米粉もしくは米糊が加えられる。製品丸薬は、他の丸薬の調製するための慣例的な方法によって作製され得る。
【0040】
また、本発明は、蜜丸、水蜜丸、水丸、糊丸、蝋丸および濃縮丸に仕立てられ得る。技術的手法は、慣例的なものであるが、技術的条件は、当業者に公知である漢方薬の異なる条件に従って変更され得る。
【0041】
本発明の薬物にふさわしい調製手法は、異なる製品に関して変更し得る。しかし、これは、公然のよく知られる常識的な調製の技術であり、かつ本明細書において省略され得る。
【0042】
上記好ましい実施形態の手順において、処理条件(抽出にとって最良の処理要素)は、ペースト剤の割合および有効成分の含有量に基づき、かつ3因子―3レベル直交実験によって決定される。
【0043】
本発明の組成物に使用される漢方薬材料は、2005年の薬局方にすべてが言及されており、かつすべての指標が、同定において当該薬局方の規定と一致する。3回分の量の試料は、2005年の中国薬局方の第1巻 付録IXEおよびIXFの項における規定の条件下において、砒素塩および重金属について検出され、かつその結果は、当該規定の範囲内である。
【0044】
本発明の薬物は、衛生試験において、薬局方の衛生基準に対して確認する。
【0045】
また、本発明は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置用の薬物の調製における上記漢方薬組成物の適用を提供する。
【0046】
この調査は、この薬物が、現在、臨床的に使用されるAChEI(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)およびEGb761(正式名称:イチョウ葉抽出物錠剤(すなわち、イチョウ葉の標準的な抽出物))に対して異なる機能特性を有し得ること、および当該薬物がより良好な効果を有することを示す。この薬物は、市場においてより有利であり得る。機序は、この薬物が、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の病理学的変化の複数の標的(ADの上流過程(すなわち、β−アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子の異常発現)を含む)に対して効力を生じることで有り得、当該機序は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置する漢方薬材料の有効成分の処方薬の作製に対する基準を提供する。
【0047】
(薬理学試験)
試験薬物:実施例1において使用される薬物のカプセル剤(以下において、本発明の薬物と呼ぶ)。
【0048】
対照に関する薬物:ヒューペルジン A(正式名称:ヒューペルジン錠剤、ホーナンチュイリンチュイスン製薬株式会社、主成分:ヒューペルジン A C1518O);タナカン(正式名称:イチョウ葉抽出物錠剤、Beaufour Ipsen Industrie、フランス);ウェイ ナオ カン(我々の研究室によって生産され、ニンジン、イチョウ葉およびサフランの柱頭の抽出物を含有する)。
【0049】
1 行動実験
1.1 ステップダウン(跳台)試験
1.1.1 スコポラミン臭化水素酸塩を用いて記憶障害を誘導されたモデルマウスに対する影響
実験は、薬理実験方法学の第3版(シュ シューユンら)における神経系薬物実験法の第5項のように実施される。モデル群におけるマウスの5分間における誤りの回数は、対照群よりも有意に高い(P<0.05)。薬物が投与されてから15日後において、陽性のヒューペルジン A群およびタナカン群におけるマウスの誤りの回数は、モデル群よりも有意に低く(P<0.001)、かつ前者に関する潜伏期は、有意に延長される(P<0.001)。本発明の薬物を用いた高い投与量群および中間の投与量群のマウスにおける誤りの回数は、有意に減少し(P<0.05〜0.01)、かつ前者は、より長い潜伏期を有する(P<0.05)。結果は表1に示される。
【0050】
【表1】

【0051】
1.2 ステップスルー(避暗)試験
実験は、薬理実験方法学の第3版(シュ シューユンら)における神経系薬物実験法の第5項のように実施される。モデル群におけるマウスの5分間における誤りの回数は、対照群よりも有意に高い(P<0.05)。薬物が投与されてから15日後において、対照群と比較すると、タナカン群のけるマウスは、より長い潜伏期および少ない誤りを有し;本発明の薬物を用いた高い投与量群および中間の投与量群のマウスにおける誤りの回数は、有意に減少する(P<0.05)。結果は表2に示される。
【0052】
【表2】

【0053】
1.3 モリス水迷路試験
実験は、Morris RGM,Garrud P, Rawlins JNP et al. Place navigation impaired in rats with hippocampus lesions. Nature; 297: 681~3に記載された方法のように実施される。
【0054】
1.3.1 βアミロイド前駆体タンパク質(Aβ)毒性によって傷害されたモデルマウスの空間学習および空間記憶に対する影響
両側の海馬のCA1領域にAβ1−40を注入してから4週後において、モデル群におけるマウスに関して、モリス水迷路において泳ぐ時間および泳ぐ経路の長さが、偽手術群と比較して有意な差を有して、より長い(P<0.05)。探索戦略は、ほとんど辺縁性であるか、または無作為である。両側の海馬のCA1領域にAβ1−40を注入してから4週後において、本発明の高い投与量群および中間の投与量群ラットに関して、モリス水迷路において泳ぐ時間および経路の長さが、モデル群より遥かに短くなり(P<0.05)、かつ探索戦略は、ほとんど趨性である。結果は表3に示される。
【0055】
【表3】

【0056】
1.3.2 両側性の総頚動脈の永続的な結さつを受けているVDラット(2VO)の空間学習および空間記憶に対する影響
ラットの両側の総頚動脈が結さつされてから1ヶ月後において、偽手術群と比較して有意な差がないが、学習障害および記憶障害の傾向がある。結さつしてから2ヶ月および3ヶ月後において、モデル群における迷路を切り抜ける時間は、偽手術群よりも有意に長く(P<0.01)、ラットの学習能力および記憶能力が、局所貧血の時間の経過とともに有意に低下することを示している。薬物が投与されてから1ヶ月または2ヶ月後において、本発明の薬物の3つ投与群におけるラットの学習能力および記憶能力のすべては、モデル群と比較して、有意に上昇し、かつ迷路を切り抜ける時間は、有意に短縮される(P<0.05〜0.01)。ウェイ ナオ カン群およびヒューペルジン A群において同じ影響がある(P<0.05〜0.01)。薬物が投与されてから2ヶ月後において、タナカン群におけるラットの学習能力および記憶能力は、有意に上昇する(P<0.05)。ウェイ ナオ カンと比較して、本発明の薬物が投与されてから1ヶ月または2ヶ月後において、高い投与量群および中間の投与量群におけるラットの学習能力および記憶能力のすべてが有意に上昇し、かつ迷路を切り抜ける時間が、モデル群と比較して有意に短縮される(p<0.05〜0.01)。結果は表4に示される。
【0057】
【表4】

【0058】
1.4 議論および簡単な要約
(1)また、本発明において、損傷を誘導したスコポラミン、クロルプロマジン、レセルピンまたは亜硫酸ナトリウムの薬物動態実験が、実施される。上記化学損傷の後に、マウスのステップダウン実験は、指標として5分間における回避潜伏期および誤りの回数を用いて実施される。本発明の薬物の胃内投与後の15日において、2つの指標は、異なる程度において改善され、本発明の薬物がモデルマウスの後天的かつ強固な記憶の障害を改善し得ることを示している。
【0059】
(2)エタノール損傷に基づいて、マウスのステップスルー実験は、指標として5分間における回避潜伏期および誤りの回数を用いて実施される。本発明の薬物の胃内投与後の15日において、2つの指標は、異なる程度において改善され、本発明の薬物がモデルマウスの記憶回復障害を改善することができることを示している。
【0060】
(3)この調査において、D−ガラクトース誘導した脳が老化したラット、Aβ毒性傷害したラット、自然老化に誘導された認識障害ラットおよびAPP遺伝子導入マウスは、ADモデルの役を果たし、かつ2VOラットがVDモデルの役を果たす。3分間における泳ぐ時間および経路の長さは、主な指標の役を果たすと同時に、探索戦略などは、補助指標の役を果たす。マウスの泳ぎの評価に対する薬物の影響が観察される。結果は、ラットまたはマウスの泳ぎの評価が、本発明の薬物の胃内投与後に異なる程度に向上されることを示し、本発明の薬物がADモデル動物およびVDモデル動物の空間学習能および空間記憶能を向上することができることを示している。さらに、ウェイ ナオ カンと比較して、本発明の薬物は、2VOラットに関して、モリス水迷路実験の指標を有意に改善し、ダイズの添加を伴う本発明の薬物の治療効果がより良好であることを示す。
【0061】
2 神経伝達物質の検出
実験は、Liu JX, Cong WH, Xu L, Wang JN., Effect of combination of extracts of radix ginseng and ginkgo biloba on acetylcholine in amyloid beta-peptide-treatedrats determined by an improved HPLC. Acta Pharmacol Sin. 2004; 25: 1118~23に開
示される方法のように実施される。
【0062】
2.1 アセチルコリン(Ach)
2.1.1 Aβ毒性損傷を有するモデルラットの全脳におけるAchの含有量に対する影響
両側の海馬のCA1領域にAβ1−40を注入してから4週後において、モデル群におけるラットの全脳におけるAChの含有量は、偽手術群と比較して有意に減少する(P<0.01)。薬物が投与されてから4週後において、モデル群におけるラットと比較して、本発明のすべての薬物群におけるラットの全脳におけるAChの含有量は、有意に減少する(P<0.05〜0.01)。有意差はないが、陽性のヒューペルジン A群におけるラットの全脳におけるAChのレベルに増加の傾向がある。結果は表5に示される。
【0063】
【表5】

【0064】
2.1.2 VDラットに生じさせた両側性の総頚動脈の永続的な結さつの全脳におけるAchに対する影響
モデル群におけるラットの脳におけるAChの含有量は、2VO後の3ヶ月において、偽手術群と比較して有意に低下する(P<0.01)。薬物が投与されてから2ヶ月において、本発明のすべての薬物群のラットにおけるAChの含有量は、有意に増加する(P<0.05〜0.01)。ウェイ ナオ カン、ヒューペルジン Aおよびタナカンは、同じ効果を有する(P<0.05〜0.01)。ウェイ ナオ カン群と比較して、本発明の薬物の高い投与量群および中間の投与量群のラットにおけるAChの含有量は、有意に増加する(P<0.05〜0.01)。結果は表6に示される。
【0065】
【表6】

【0066】
2.1.3 議論および簡単な要約
本発明の薬物の胃内投与後に、動物の全脳または海馬におけるAChの含有量が有意に増加し、本発明の薬物が、ADおよびBDモデル動物におけるAChの放出および分解を制御することができ、中枢神経系のAChを増加することができ、かつ中枢のコリン作動性の系を改善することができることを示している。さらに、ウェイ ナオ カンと比較して、本発明の薬物を伴う2VOラットにおける中枢の系のAChの含有量が有意に増加し、ダイズの添加を伴う本発明の薬物の効果は、より良好であることを示している。
【0067】
2.2 モノアミン神経伝達物質およびその代謝物
2.2.1 Aβ損傷を有するモデルラットの全脳におけるモノアミン神経伝達物質およびその代謝物の含有量に対する影響
偽手術群と比較して、モデル群のラットの全脳における5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)の含有量は、有意に減少し(P<0.05)、かつドーパミン(DA)およびノルエピネフリン(NE)に関して減少する傾向にある。モデル群と比較して、本発明の薬物投与群のすべての全脳のDAおよび5−HTに有意な変化はなく(P>0.05)、かつホモバニリン酸(HVA)および5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)のレベルに減少の傾向があり、特に本発明の薬物の低投与量群に関してHVAの有意な減少を伴う(P<0.05)。結果は表7に示される。
【0068】
【表7】

【0069】
2.2.2 議論および簡単な要約
(1)Aβ毒性損傷を伴うラットの脳におけるモノアミン神経伝達物質の低い代謝レベルは、老化患者およびAD患者の病理的変化と類似であり、Aβ毒性損傷に起因する記憶障害が、モノアミン神経伝達物質であるDAおよび5−HTの代謝の変化に関連することを示している。本発明の薬物は、DAおよび5−HTの分解を遅らせ得、かつ中枢の系におけるDAおよび5−HTのレベルを上昇させて脳におけるモノアミン作動性の系の活性を相対的に改善し得ることを示している。
【0070】
(2)また、同じ薬理動態実験は、本発明における自然老化の認識障害のモデルに対して実施される。すべてのモデルラットの海馬におけるDA、HVA、5−HTおよび5−HIAAが有意に減少すること、ならびにNEおよびジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)に関して減少の傾向があることが見出され、AD患者および高齢者の中枢の系のNE、DAおよび5−HTの活性と矛盾しない、モノアミン神経伝達物質の代謝の活性レベルが低いことを示している。本発明の薬物が投与されてから12週後において、DA、DOPAC、5−HTおよび5−HIAAに関して増加の傾向があり、かつ本発明の薬物の高い投与量群の海馬におけるDAおよび5−HTのレベルが有意に増加し、本発明の薬物がおそらくDAおよび5−HTの取り込みを阻害することによってDAおよび5−HTの系の活性を向上し得ることを示している。また、DAおよび5−HTのレベルを上昇させる本発明の薬物の機序が、ヒューペルジン Aおよびタナカンとは異なり得ることが、見出される。ヒューペルジン Aは、DAのニューロンにおける代謝、および5−HTの分解を阻害し得る一方において、タナカンは、DAのニューロンにおける代謝、および5−HTの取り込みを阻害し得る。
【0071】
(3)また、同じ薬理動態実験が、本発明におけるAPP遺伝子導入マウスに対して実施される。上述の2つのADモデルの脳におけるモノアミン神経伝達物質の変化とは反対に、APP遺伝子導入マウスの全脳における5−HTおよび5−HIAAが有意に増加し、かつNEおよびADに関して増加の傾向があり、APP遺伝子の異常発現が、論文における報告と一致して、他の動物モデルとは異なる様態において中枢の系におけるモノアミン神経伝達物質の代謝の様式に影響を与えることを示している。陽性のヒューペルジン A群および本発明の薬物の高い投与群における5−HTおよび5−HIAAは、異なる程度まで減少し、両者が中枢の系の5−HTの異常な代謝を制御することによってこの系の活性を制御することができることを示している。
【0072】
結果は、本発明の薬物が中枢の系のNE、DAおよび5−HTのレベル、ならびにNE、DAおよび5−HTの系の活性を制御することができることを示す。コリン作動性の系とモノアミン作動性の系との間における相互作用(依存性および補強)が、認識の過程において関与することに照らして、本発明の薬物の学習記憶を改善するという効果は、モノアミン神経伝達物質の取り込みおよび分解に対する干渉と関連し得る。
【0073】
3 他の生化学的指標の検出
検出は、試薬キットの取り扱い説明書のように実施される。
【0074】
3.1 アセチルコリンエステラーゼ(AChE)
3.1.1 自然老化の認識障害を有するモデルラットの全脳のAChEの活性に対する影響
老年対照群におけるラットの全脳のAChEの活性は、青年対照群と比較して、有意に減少する(P<0.05)。薬物が投与されてから12週後において、陽性のヒューペルジン A群、タナカン群および本発明の薬物の群におけるラットの全脳のAChEの活性は、老年対照群におけるラットと比較して、有意に増加する(P<0.05〜0.01)。結果は表8に示される。
【0075】
【表8】

【0076】
3.2 マロンジアルデヒド(MDA)
3.2.1 自然老化の認識障害を有するモデルラットの全脳のMDAの含有量に対する影響
老年対照群のラットにおける全脳のMDAの含有量は、青年対照群と比較して、有意に増加する(P<0.05)。薬物が投与されてから12週後において、本発明の薬物のすべての投与群におけるラットの全脳の含有量は、有意に減少する(P<0.05)。有意差はないが、陽性のヒューペルジン A群およびタナカン群におけるラットの脳MDA含有量において減少の傾向がある(P>0.05)。結果は表9に示される。
【0077】
【表9】

【0078】
超酸化物不均化酵素(SOD)
3.3.1 自然老化を伴うモデルラットの全脳のSODの活性に対する影響
老年対照群におけるラットの全脳におけるのSODの活性は、青年対照群と比較して、有意に減少する(P<0.05)。薬物が投与されてから12週後において、陽性のヒューペルジン A群、タナカン群および本発明のすべての薬物群におけるラットの全脳のSODの活性は、老年対照群と比較して、有意に増加する(P<0.05)。結果は表120に示される。
【0079】
【表10】

【0080】
3.4 Aβ毒性障害を有するラットの全脳Na−K−ATP酵素の活性に対する影響
海馬の両側のCA1領域にAβ1−40を注入してから4週後において、ラットの全脳におけるNa−K−ATP酵素の活性は、偽手術群と比較して、有意に減少する(P<0.05)。薬物が投与されてから4週後において、ヒューペルジン A群、タナカン群および本発明のすべての薬物群におけるラットの全脳Na−K−ATP酵素の活性は、モデル群のラットと比較して、有意に増加する(P<0.05〜0.01)。結果は表11に示される。
【0081】
【表11】

【0082】
3.5 議論および簡単な要約
3.5.1 AChEの活性に対する影響
(1)老化およびADの変化と一致して、自然老化の認識障害を伴うラット全脳AChEの活性は、有意に減少する。本発明の薬物は、AChEの低下した活性を顕著に増加させることができ、異常な代謝状態を制御することができ、かつコリン作動性の中枢神経系の機能、および老化もしくはADにおける学習記憶障害を改善することができる。
【0083】
(2)また、同じ薬理動態実験は、D−ガラクトース誘導した脳の老化およびAPP遺伝子導入マウスに対して実施される。2つのモデル動物の全脳AChEの活性のすべては、有意に増加し、かつあまりに高い活性は、AChの分解を促進する。
【0084】
3.5.2 MDAの含有量およびSODの活性に対する影響
自然老化の認識障害を伴うラットに対して薬物が投与された後に、全脳のSODの活性が増加する一方において、MDAのレベルが減少し、本発明の薬物が、高齢動物の抗酸化および遊離ラジカルの除去の機能を改善し得、かつ老化防止に役立ち得かつ記憶能を改善し得ることを示している。
【0085】
3.5.3 Aβ毒性障害を有するラットの全脳Na−K−ATP酵素の活性に対する影響
薬物が投与された後に、Aβ毒性障害を伴うラットの全脳Na−K−ATP酵素の活性は、有意に増加し、本発明が、ATP酵素の活性を保護し、かつ細胞輸送を制御して、神経細胞の原形質膜の機能および細胞機能を改善し得ることを示している。
【0086】
4. APP遺伝子発現レベルの検出
4.1 自然老化の認識障害を有するラットの皮質および海馬におけるAPP遺伝子の発現レベルに対する影響
老年対照群におけるラットの皮質および海馬のAPP遺伝子の発現レベルは、青年対照群と比較して、有意に増加する(P<0.05)。薬物が投与されてから12週後に、陽性のタナカン群および本発明の薬物のすべての投与量群におけるAPP遺伝子の発現レベルは、有意に低下する(P<0.05)。結果は表12に示される。
【0087】
【表12】

【0088】
4.2 議論および簡単な要約
結果は、本発明の薬物が、自然老化の認識障害を伴うラットの皮質および海馬のAPP遺伝子の過剰発現を有意に制御することができることを示し、当該薬物による学習記憶障害の改善が、皮質および海馬におけるこの遺伝子の過剰発現に対する抑制と、Aβの形成および異常堆積ならびにSPの形成の減少と、病理学的変化の上流からおそらくAβによって誘導される病理学的障害の干渉と、中枢の学習記憶機能に関連する因子に対する影響とに起因し得ることを示している。
【0089】
5 組織学的実験および細胞形態学的実験
5.1 HE染色
実験は、病理組織切片化および染色技術(コン チー−チンら)の第7章 第2項のように実施される。
【0090】
5.1.1 D−ガラクトースを用いて脳加齢を誘導されたモデルラットの組織形態学に対する影響
盲検群におけるラットの海馬の垂体細胞は、緊密に配列しており、細胞の上下が明確であり、かつ細胞の数が豊富であり;核膜は、明瞭な核小体と共に透明である。モデル群におけるラットの海馬の垂体細胞は、ゆるく配列しており、細胞構造において形がゆがんでおり、細胞体に関して膨張しており、かつ細胞の上下が不規則であり;いくつかの細胞は、核濃縮および濃い染色を示す。陽性のヒューペルジン A群および本発明のすべての薬物群におけるラットの海馬の垂体細胞は、より明確な輪郭を有する秩序ある配列であり;かつ核濃縮および濃い染色がない。特に、ヒューペルジン Aおよび本発明高い投与量群および中間の投与量群における効果は、より明らかである。
【0091】
5.1.2 自然老化の認識障害を有するモデルラットの組織形態学に対する影響
青年対照群におけるラットの海馬の垂体細胞は、集結して配列しており、細胞の上下について明確であり、かつ輪郭がよく形作られており、そして核膜は、明瞭な核小体と共に透明である。老年対照群におけるラットの海馬の垂体細胞は、ゆるく配列しており、かついくつかの細胞は不完全な構造を有し;2、3の細胞は核濃縮および三角形の輪郭を有した濃い染色を呈しており;タナカン群および本発明のすべての薬物群におけるラットの海馬の垂体細胞は、老年対照群と比較して、より明確な配列およびより良好な細胞形態を有し、かつ核濃縮および濃い染色がない。特に、タナカン群ならびに本発明の薬物の高い投与量群および中間の投与量群のすべてにおける効果は、より明確である。
【0092】
5.2 海馬神経細胞の超微細構造に対する影響
使用される方法は、現代医学実験方法(ワン チエン)の第1−4頁の通りである。
【0093】
5.2.1 Aβ毒性障害を有するモデルラットの海馬神経細胞の超微細構造に対する影響
偽手術群におけるラットの海馬神経細胞の微細構造は、大きな球形または卵形の核、均一な真性染色質、明確な核および完全な核膜を有して正常であり;原形質におけるミトコンドリアおよび粗面小胞体の構造は、明らかであり;かつリボソームおよびシナプスが豊富である。モデル群のラットにおける海馬神経細胞の核の染色質が辺縁に集合しており、かつ核縮合しており;細胞の容積が小さくされ、かつ細胞質が凝集され;ミトコンドリアが2、3の細胞において少し膨張しており;粗面小胞体およびリボソームといった細胞小器官は、一般的に正常であり;かつシナプス前膜およびシナプス後膜が不明確である。シナプス空間が消失している。偽手術群よりも有意にシナプス小胞が少ない。ヒューペルジン A群および本発明の薬物のすべての群における海馬神経細胞は、モデル群と比較して、より良好な形態および構造、より明確な細胞膜ならびにシナプス前膜およびシナプス後膜を有し;ほとんどの細胞は、核の均一な染色質を有し;かつミトコンドリアの内襞は明確である。
【0094】
5.2.2 自然老化の認識障害を有するモデルラットの海馬神経細胞の超微細構造に対する影響
青年対照群における海馬神経細胞は、大きな球形または卵形の核および均一な染色質および明確な核を有する正常な形態の特性を保っており;細胞質におけるミトコンドリアおよび粗面小胞体の構造は、明確であり;かつリボソームおよびシナプスが豊富にある。老年対照群おいて、いくつかの海馬神経細胞における膜、液胞およびミエロイド構造が明確に断片化ならびに溶解しており;核は不規則な形態であり;染色質は塊になっており、かつ核の周辺領域は有意に肥厚化しており;ミトコンドリアは膨張し、かつ空胞を生じており;小胞体は伸張され;かつリポフスチンおよび油滴が見られる。モデル群とは反対に、ヒューペルジン A群および本発明の薬物のすべての群において、海馬神経細胞は、より良好な形態および構造ならびに明確な細胞膜を有し;いくつかの細胞は、核の均一な染色質を有し;層状のミトコンドリアの内襞は明確であり;リボソームの数が増加し;かつシナプスの数が増加している。特に、タナカン群および本発明の薬物の高い投与量群および中間の投与量群のすべてにおける効果は、より明確である。
【0095】
5.2.3 APP遺伝子導入マウスの海馬神経細胞モデルの超微細構造に対する影響
非遺伝子導入マウスの同腹子の海馬神経細胞の超微細構造は、大きな球形もしくは卵形の核、均一な染色質ならびに明確な核を有して正常であり;細胞質におけるミトコンドリアおよび粗面小胞体の構造は、明確であり;リボソームが豊富であり;活多くのシナプスがある。盲検マウス群における核は、核濃縮、辺縁化および不規則な配列を有し;ミトコンドリアが僅かであり、内襞が整然としておらず、かつ内襞の空間が大きく;粗面小胞体が整然としておらず;かつ断片化さえ起こしており;リソソームは不規則な形状を有して数が増加しており;液胞、ミエロイド構造および不規則なリポフスチンが原形質に見られ得る。本発明の薬物の高い投与量群における細胞は、盲検群と比較して、より良好な形態および構造を有し、いくつかの細胞は、明確な構造を有し;かついくつかの核は均一な染色質を有する。
【0096】
5.3 簡単な要約
海馬神経細胞の完全な形態および構造は、それらが正常に機能できる前提である。虚血性の脳血管疾患、加齢の痴呆または老年痴呆といった病理的因子は、必然的に機能の異常さを結果として生じる、神経細胞の形態および構造の障害を誘導することができる。例えば、核および粗面小胞体の障害は、タンパク質合成の機能の低下を誘導することができ;ミトコンドリアの損傷は、エネルギー代謝の障害を誘導することができ;多くのリポフスチンの蓄積は、空間における配列を妨げ;シナプスの消失は、神経細胞に対する標的組織の消失を意味し;かつすべての変化は、最終的に老化および死を招く。D−ガラクトース誘導した脳の老化を伴うラットおよび自然老化の認識障害を伴うラットは、HE染色用のモデルとして役に立ち、かつAβ毒性損傷を伴うラット、自然老化の認識障害を伴うラットおよびAPP遺伝子導入マウスは、モデル動物の海馬神経細胞に対する本発明の薬物の影響を調べるための、透過型電子顕微鏡用のモデルとして役に立つ。結果は、本発明の薬物を投与されるモデル動物に関して、海馬神経細胞およびシナプスの形態および構造が、異なる程度に改善され得ること、シナプスの数が増加すること、神経細胞のアポトーシスおよび消失が遅らせられ得ることまたは軽減され得ることを示し、本発明の薬物が神経細胞を保護し得ることを示している。
【0097】
(毒物学的試験)
16時間の絶食しているラットは、1日に2回の最大濃度(57.5mg/ml)および最大容積(20ml/体重kg)の胃内投与を受ける。1日の最大投与量は、2300mg/体重kgであり、かつヒトに対する臨床投与量(240mg/日)の670倍に等しい。連続した14日の観察の後に、死亡は認められない。ラットは、ヒトに処方されるべきであると計画中の臨床投与量の70倍、35倍、および17.5倍の薬物を用いて6ヶ月間に渡って投与される。全体的な状態、体重、食物の摂取、血液循環、血液凝固、血液生化学、ECGならびに主要な臓器の指標および肉眼による視診および顕微鏡による視診は、薬物が投与されてから3ヵ月後および6ヵ月後および薬物の投与が中止されてから4週後のそれぞれに調べられる。有意な病理学的変化は見られない。有意な毒物学的調査は、薬物が低い毒性を有して安全であることを示す。
【0098】
要約すると、本発明の組成物は、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆の処置において通常に使用される薬物よりも優れており、かつ有意な効果を有する。また、長期研究は、本発明の漢方薬組成物が安定であり、かつ信頼できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明の目的および技術的解決は、以下の実施例を詳細に説明される。
【0100】
実施例1:本発明の漢方薬組成物(抽出物)の調製
処方:
ニンジンの抽出物を27.5g イチョウ葉の抽出物を27.5g
サフランの柱頭の抽出物を5.5g ダイズの抽出物を2.75g。
【0101】
調製方法:
ニンジン生薬の8倍量の60%エタノールが当該ニンジンに加えられ、かつ還流抽出が2回、実施される。液体抽出物は、混合され、かつ相対密度が1.05になるまで濃縮される(50℃)。液体濃縮物は、2倍容積の蒸留水に加えられ、かつろ過される。ろ過物は、AB−8タイプのマクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、蒸留水に続いて10%エタノールによって溶出される。水溶出物および10%エタノール溶出物が捨てられ、かつ樹脂は、容積がカラムの約2.5倍容積になるまで70%エタノールを用いて溶出される。70%エタノール溶出物は、回収され、かつギンセノシドを含有するニンジンの抽出物が取得され得る。
【0102】
乾燥イチョウ葉の8倍量の70%エタノールが当該イチョウ葉に加えられ、60℃において浸漬され、かつ1回につき少なくとも1時間において2回、抽出が実施される。液体抽出物は、混合され、かつ相対密度が1.05になるまで減圧によって濃縮される。液体濃縮物は、水に加えられ、冷やされ、沈殿させられ、かつろ過される。ろ過物は、ADS−17タイプのマクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、水に続いて60%エタノールによって溶出される。水溶出物は、捨てられ、かつ60エタノール溶出物は、回収されかつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。それから生薬の2倍量の水が加えられ、かつ沸騰するまで過熱される。室温における沈殿は24時間、継続する。ろ過した後に、ろ過物は、DM−130タイプのマクロ細孔吸着性の樹脂の上において、クロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、水に続いて15%エタノールおよび60%エタノールによって溶出される。水溶出物および15%エタノール溶出物が捨てられる一方において、60%溶出物が回収される。濃縮および乾燥は、イチョウ葉の抽出物が取得されるまで継続する。産物におけるイチョウフラボノイド対ギンゴライドの含有量の割合は、24:15である。
【0103】
サフランの柱頭の20倍量の60%エタノールがサフランの柱頭の材料に加えられ、かつ70−80℃において浸漬され、かつ抽出が2回、実施される。液体抽出物は、混合され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。液体濃縮物は、生薬の1倍量の水に加えられ、かつ希釈される。希釈された液体は、AB−8タイプのマクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂は、水よって溶出され、続いて20%エタノール、30%エタノールおよび最後に70%エタノールが溶出に使用される。水溶出物および30%エタノール溶出物が捨てられる一方において、70%エタノール溶出物は、回収され、かつサフランの柱頭のグリコシドを含有するサフランの柱頭の抽出物が取得され得る。
【0104】
ダイズは、95%エタノールを用いて抽出され、かつろ過される。残余物は、70%エタノールを用いて抽出され、かつろ過される。エタノール抽出物は、混合され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮される。材料の2倍質量の水が加えられ、十分に攪拌され、かつろ過される。ろ過物は、AB−8タイプのマクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられる。薬物を伴う樹脂はまず水を用いて溶出され、かつ水溶出物は捨てられる。それから、60%エタノールが溶出に使用される。溶出物は回収され、かつ部分Aが取得される。部分Aにおける主成分は、イソフラボノイドである。90−95%エタノールが溶出に使用される。溶出物は回収される。無水エタノールがエステル化に使用される。水は洗浄用にふたたび加えられ、かつ溶液は層状化される。溶液は、下層(酸性水)が除去されたあとに、回転式蒸発器を用いて0.1MPaまで減圧される。水酸化ナトリウムがアルコール分解用に加えられる。それから水が洗浄用に加えられる。下層におけるアルカリ性水が除去される。上層における有機液体は、ガス抜き用に0.1MPaまで減圧され、かつそれから膜蒸留を受ける。残余物は、(0.133Pa、蒸発板と濃縮板との間が0.5mm未満という条件において)分子蒸留を受ける。部分Bが取得され、かつその成分は混合トコフェノールである。部分Bおよび部分Aが混合され、かつ本発明におけるダイズの抽出物として使用される。本発明のダイズ抽出物において、主に4:1の質量比を有するダイズイソフラボノイドおよびビタミンEがある。
【0105】
上記乾燥した抽出物は、20目に砕かれ、86.75gのスターチに加えられ、3号のカプセルに入れられ、かつ本発明のカプセル剤が製造される。
【0106】
結果の提示:漢方薬組成物が以下の関連する規定に適う。
【0107】
定性および定量:ギンゴライドの含有量の同定および決定は、中国薬局方の抽出の項のように実施され;サフランの柱頭のグリコシド含有量の同定および決定は、中国薬局方の抽出の項のように実施され;ニンジン含有量の同定および決定は、中国薬局方の抽出の項のように実施される。
【0108】
ダイズイソフラボノイドおよびダイズゲニステインの決定方法:ダイズ抽出物の適量が、正確に重さを測られ、かつ25mlの水に加えられる。混合および懸濁の後に、1mlの酢酸緩衝溶液(pH4.5)および15μlのβ−グルコサッカラーゼが加えられる。37℃のウォーターバスが加水分解に使用される。溶媒は、乾燥するまで減圧条件において回収される。メタノールが分解に使用される。ミクロ多孔性ろ過膜がろ過に使用される。液体クロマトグラフィーが、分析に使用される(Zorbax−C18クロマトグラフィーカラム、流動相は、45:55:1のメタノール−水−酢酸であり、流速:0.8ml/分、監視の波長:260nm)。
【0109】
VEの含有量の決定:この製品の適量が、取られ、正確に重さを測られ、かつ乳鉢に加えられる。2滴の無水エタノールが乳鉢に加えられ、かつ製品が細かく挽かれる。20mlの無水エタノールが、数回に分けて粉液漏斗に対して定量的に製品を移すために使用される。10mlの水が加えられ、かつn−ヘキサン抽出が、1回につき5mlのヘキサンを用いて3回実施される。抽出液が混合される。溶媒が回収され、減圧条件下において乾燥される。残余物の流動相は、10mlの瓶に定量的に移される。流動相が、所定の目盛りに至るまで加えられる。瓶における液体は、均等に振とうされ、かつ試験液体として微小孔膜フィルタを通り抜ける。10μLの対照液体および試験液体のそれぞれが、取られ、かつ測定用の液体クロマトグラフィーに注入される(容積対容積が97:3のメタノール−水は流動相の役割をし、検出波長は207nmである)。
【0110】
薬物の組み合わせのそれぞれのカプセル剤における組成(それぞれのカプセル剤に関して1.5g)は、以下の通りである:
(1)合計のグリコシドは、ギンセノシド Re(C488218)に基づいて、13.75mg以上であり;
(2)ギンセノシド Rg(C427214)、Re(C488218)、ギンセノシド Rb(C549223)に基づいて、グリコシドの合計は、それぞれ1.375mg、0.825mgおよび0.825mg以上であり;
(3)フラボノイドの合計は、ルチン(C273016)に基づいて、11.00mg以上である。
【0111】
(4)フラボノイドグリコシドは、ケルセチン、ケンフェリドおよびイソラムネチンのそれぞれに基づいて、6.60mg以上である。
【0112】
(5)テルペンラクトースは、ギンゴライド A(C2024)、ギンゴライド
B(C202410)、ギンゴライド C(C202411)およびビロバライド(C1518)の合計に基づいて、2.75mg以上であり;
(6)サフランの柱頭のグリコシドの合計は、無水のサフランの柱頭のグリコシド−I(C446424)に基づいて、2.75mg以上である。
【0113】
(7)サフランの柱頭のグリコシド−I(C446424)は、1.375mg以上であり;
(8)ダイズイソフラボノイドの合計は、ゲニステイン(C273016)に基づいて、1.35mg以上であり;
(9)ゲニステイン(C273016)は、0.5mg以上であり;
(10)ビタミンEは、ビタミンE(C3152)に基づいて0.5mg以上である。
【0114】
本発明の組成物のカプセル剤の臨床的な推奨投与量は、1回につき150mg、1日につき3回である。
【0115】
実施例2:
本発明の組成物に関する処方は、以下の通りである:
40質量部のニンジン 45質量部のイチョウ葉 1質量部のサフランの柱頭 75質量部のダイズ。
【0116】
組成物の調製の方法:上記薬剤材料は、20目に砕かれ、かつ組成物が完成される。
【0117】
顆粒剤の調製:上記薬物粉末が混合された後に、デキストリンおよびステビオシンが加えられ、均質に混合され、70〜75℃において真空中において乾燥され、砕かれ、かつ顆粒化される。本発明の組成物の顆粒剤の暗褐色の製品が得られる。
【0118】
結果の提示:本発明の組成物の顆粒剤が、顆粒剤の項(2005年版の中国薬局方 付録IC)にある規定に適う。組成物の含有量は、実施例1のように検出され、かつギンセノシド Reは9.15mg/g以上である。
【0119】
実施例3:
処方:2部のニンジンの抽出物、10部のイチョウ葉の抽出物、0.5部のサフランの柱頭の抽出物、1部のダイズの抽出物。
【0120】
錠剤の調製の方法:本発明の組成物の抽出物が混合された後に、デキストランといった粘着剤が加えられ、十分に混合され、60−80℃において真空中において乾燥され、かつ粉砕される。スターチといった充填剤、ステアリン酸マグネシウムといった滑沢剤、およびカルボキシメチルスターチナトリウムといった崩壊剤が加えられ、かつ均質に混合される。混合物は、顆粒化され、かつ錠剤に圧縮される。製品の錠剤が得られる。
【0121】
結果の提示:本発明の組成物の錠剤が錠剤の項にある関連する規定に適う。定性定量検出が、実施例1のように実施される。製品は、9.15mg/g以上のギンセノシド Reを含有する。
【0122】
実施例4:
処方:10部のニンジンの抽出物、3部のイチョウ葉の抽出物、4部のサフランの柱頭の抽出物、0.2部のダイズの抽出物。
【0123】
組成物の調製の方法:実施例1と同じ。
【0124】
錠剤の調製:本発明の組成物の抽出物は、混合され、デキストリンといった粘着剤が加えられ、十分に混合され、60−80℃において真空中において乾燥され、かつ粉砕される。スターチといった充填剤、ステアリン酸マグネシウムといった滑沢財、およびカルボキシメチルスターチナトリウムは、加えられ均質に混合される。混合物は、顆粒化され、かつ錠剤に圧縮される。製品の錠剤が得られる。
【0125】
結果の提示:本発明の組成物の錠剤が錠剤の項にある関連する規定に適う。定量定性検出は、実施例1のように実施される。製品は、9.15mg/g以上のギンセノシド Reを含有する。
【0126】
実施例5:
処方:10部のニンジンの抽出物、1部のイチョウ葉の抽出物、0.5部のサフランの柱頭の抽出物、80部のダイズの抽出物。
【0127】
調製の方法:上記薬剤材料は、20目に砕かれ、かつ本発明の組成物が得られる。組成物の内容物は、実施例1のように決定され、かつギンセノシドは9.15mg/g以上である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−10質量部のニンジンの抽出物、1−10質量部のイチョウ葉の抽出物、0.5−5質量部のサフランの柱頭の抽出物および0.1−1質量部のダイズの抽出物を包含する、虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための、漢方薬組成物。
【請求項2】
イチョウ葉の上記抽出物が、イチョウフラボノイドおよびギンゴライドを24:25−10の質量比において少なくとも包含する請求項1に記載の漢方薬組成物。
【請求項3】
ダイズの上記抽出物が、ダイズイソフラボノイドおよびビタミンEを4:2−0.5の質量比において少なくとも包含する請求項1に記載の漢方薬組成物。
【請求項4】
イチョウ葉の上記抽出物は、以下のように:
イチョウ葉の少なくとも2倍量の60−80%エタノールが上記イチョウ葉に加えられ、かつ浸漬抽出が50−70℃において少なくとも1回実施されて液体抽出物を得;
当該液体抽出物は、混合され、かつ結果として生じる液体濃縮物の相対密度が約1.05になるまで濃縮され;
当該液体濃縮物に水を加え、かつ結果混合物をろ過してろ過物を得;
当該ろ過物が、極性水素結合ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ、当該樹脂に吸着されている薬物が水に続いて60%エタノールによって溶出され、かつ当該水溶出物が捨てられる一方において、当該エタノール溶出物が回収され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮されて濃縮溶出物を得;
当該濃縮溶出物に水を加え、かつろ過して他のろ過物を取得し、当該ろ過物が弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ、当該樹脂に吸着されている薬物が、水に続いて15%エタノールおよび60%エタノールのそれぞれによって溶出され、かつ当該水溶出物および15%エタノール溶出物が捨てられる一方において、当該60%エタノール溶出物が回収されて
得られる請求項1または2に記載の漢方薬組成物。
【請求項5】
ダイズの上記抽出物は、以下のように:
材料のダイズが85−95%エタノールを用いて抽出されかつろ過され、かつ結果残余物が60−80%エタノールを用いてさらに抽出されかつろ過され;
エタノール結果抽出物が、混合されかつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮されて濃縮抽出物を得、かつ材料の1倍質量の水が当該濃縮抽出物に加えられかつろ過されてろ過物を得;
当該ろ過物が、マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ、5−65%エタノールがマクロ細孔吸着性の当該樹脂の溶出に使用され、当該結果溶出物が部分Aとして回収され;
90−95%エタノールが、マクロ細孔吸着性の当該樹脂の溶出にさらに使用され、かつ当該90−95%エタノール抽出物が、回収されかつ蒸発されて残余物を得;
無水アルコールがエステル化用に当該残余物に加えられ、それから水がふたたび加えられかつ結果溶液が層状化され、かつ当該溶液の下層が除去された後に当該溶液がガス抜き用に0.1MPaまで減圧され;
水酸化ナトリウムがアルコール分解用に加えられ、それから水が洗浄用に加えられ、下層にある洗浄液体が除去され、かつ上層における有機液体がガス抜き用に0.1MPaまで減圧され、そしてそれから膜蒸留を受け;
残余物が分子蒸留を受けて部分Bを得;
部分Bおよび部分Aが混合されて
得られ得る請求項1〜4のいずれか1項に記載の漢方薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の漢方薬組成物を調製する方法であって、当該方法は以下の(1)〜(5)の工程を包含している、
(1)ニンジンの2倍量の50−70%エタノールが加えられ、かつ還流抽出が少なくとも1回実施され;液体抽出物が、結果として生じる液体濃縮物の相対密度が約1.05になるまで濃縮され;当該液体濃縮物が、少なくとも4倍容積の水に加えられ、かつろ過され;当該ろ過物が低極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ;当該樹脂に吸着されている薬物が水に続いて10%エタノールによって溶出され;当該水溶出物および10%エタノール溶出物が捨てられかつ当該樹脂が60−75%エタノールを用いてさらに溶出され、かつ当該60−75%エタノール溶出物が回収されて、ニンジンの抽出物を得る工程;
(2)乾燥したイチョウ葉の少なくとも2倍量の60−80%エタノールが加えられ、かつ少なくとも1回の抽出が50−70℃において実施され;当該液体抽出物が結果として生じる液体濃縮物の相対密度が約1.05になるまで減圧によって濃縮され;当該液体濃縮物が水に加えられ、冷やされ、沈殿させられ、かつろ過され;当該ろ過物が、極性水素結合ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ;当該樹脂に吸着されている薬物が、水に続いて60%エタノールによって溶出され;当該水溶出物が捨てられる一方において、当該60%エタノール溶出物が回収され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮され;水が加えられ、かつ沸騰するまで加熱され;沈殿が室温において実施され;ろ過した後に、ろ過物が弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ;当該樹脂に吸着されている薬物が、水に続いて15%エタノールおよび60%エタノールのそれぞれによって溶出され;そして当該水溶出物および15%エタノール溶出物が捨てられる一方において、当該60%エタノール溶出物が回収されて、イチョウ葉の抽出物を得る工程;
(3)材料のサフランの柱頭の少なくとも5倍量の60−80%エタノールが加えられ、かつ少なくとも1回の抽出が70−80℃において実施され;当該液体抽出物が、アルコールの臭いがなくなるまで濃縮され;当該液体濃縮物が、上記材料の1倍容積を超える水を用いて希釈され;当該希釈液が、弱極性ポリスチレン型マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ;当該樹脂に吸着されている薬物が、水に続いて30%未満の漸進的に増加される濃度のエタノールによって溶出され;最後に70%エタノールが、当該樹脂に吸着されている薬物の溶出に使用され;そして当該水溶出物および当該30%未満のエタノール抽出物が捨てられる一方において、当該70%エタノール溶出物が回収されて、サフランの柱頭の抽出物を得る工程;
(4)材料のダイズが85−95%エタノールを用いて抽出され、かつろ過され;当該残余物が60−80%エタノールを用いて抽出され、かつろ過され;当該エタノール抽出物が、混合され、かつアルコールの臭いがなくなるまで濃縮され;当該材料の1倍質量の水が結果濃縮物に加えられ、それから当該混合物がろ過され;当該ろ過物が、マクロ細孔吸着性の樹脂の上においてクロマトグラフにかけられ;当該樹脂に吸着されている薬物が、まず水を用いて溶出されかつ当該水溶出物が捨てられ、それから50−60%エタノールが溶出に使用され;当該溶出物が部分Aとして回収され;90−95%エタノールが当該薬物のさらなる溶出に使用され;当該溶出物が完全に回収され;無水エタノールがエステル化用に加えられ;水がふたたび加えられ、かつ結果溶液が層状化され;当該溶液が、当該溶液の下層が除去された後にガス抜き用に0.1MPaまで減圧され;水酸化ナトリウムがアルコール分解用に加えられ;水が洗浄用に加えられ;結果液体の下層にある当該水洗浄液が除去され;上層において有機層がガス抜き用に0.1MPaまで減圧され、そしてそれから膜蒸留を受け;当該残余物が分子蒸留を受けて部分Bを得;そして部分Bおよび部分Aが混合されて、ダイズの抽出物を得る工程;
(5)ニンジンの上記抽出物、イチョウ葉の上記抽出物、サフランの柱頭の上記抽出物およびアルコールを用いたダイズの上記抽出物を混合する工程。
【請求項7】
1−10質量部のニンジン、1−10質量部のイチョウ葉、0.05−0.5質量部のサフランの柱頭および5−10質量部のダイズを包含し、
当該ニンジン、イチョウ葉、サフランの柱頭およびダイズが、漢方薬材料または同量の当該漢方薬材料を抽出することによって得られる抽出物の形態であり得る
虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための、漢方薬組成物。
【請求項8】
上記組成物が、2−6質量部のニンジン、3−6質量部のイチョウ葉、0.06−0.2質量部のサフランの柱頭および7−8質量部のダイズである請求項7に記載の漢方薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の上記漢方薬組成物および薬学的に受容可能な補助材料を包含する虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための薬物。
【請求項10】
請求項7または8に記載の上記漢方薬組成物および薬学的に受容可能な補助材料を包含する虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための薬物。
【請求項11】
上記薬物が、丸剤、濃縮丸、水丸、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、粉剤、軟膏、経口液剤またはシロップ剤から選択される経口薬剤用の投与形態に調合される請求項9または10に記載の薬物。
【請求項12】
虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための薬物の調製における請求項1〜5のいずれか1項に記載の上記組成物の使用。
【請求項13】
虚血性の脳血管疾患および老年痴呆を処置するための薬物の調製における請求項7または8に記載の上記組成物の使用。

【公開番号】特開2012−214500(P2012−214500A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173056(P2012−173056)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2009−505701(P2009−505701)の分割
【原出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(508312197)
【氏名又は名称原語表記】LIU,Jianxun
【住所又は居所原語表記】1 Xiyuan Caochang,Haidian District,Beijing 100091,China
【Fターム(参考)】