説明

濾過装置

【課題】海水で腐蝕せず、軽量かつ安価な濾過体を備えた濾過装置を提供することを課題とする。
【解決手段】筒状の濾過材19の軸線1方向一端に開口端板15、他端に閉塞端板16を備える複数の濾過体5と、一方の板面側で濾過体5を保持し通孔4A,4B,4Cが形成された基板4と、基板の他方の板面側で逆洗管6を駆動する逆洗機構7とを有し、基板の他方の板面側の第二室2Bに連通する原水導入管8と一方の板面側の第一室2Aに連通する濾過排出管11が設けられ、逆洗水排出管9が第二室2Bから容器外へ延出し、開口端板15と閉塞端板16は支持材17で連結され、濾過材19が支持材17に外接して筒状をなし、濾過材19は、内層19C、中間層19B、外層19Aから成り、目開きが内層は1〜10mm、中間層は10〜50μm、外層は300〜3000μmである樹脂クロスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の原水としての海水を濾過する濾過装置、特に、船舶のバラストタンクに積み込まれるバラスト水に含まれる生物を効率的に捕捉除去するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空荷または積荷が少ない状態の船舶は、プロペラ没水深度の確保、空荷時における安全航行の確保等の必要性から、荷下し時にバラストタンクに海水がバラスト水として注水される。逆に、積荷をする場合には、バラスト水が海中へ排出される。ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶により、バラスト水の取水および排水が行われると、バラスト海水に含まれる細菌類やプランクトンなどの生物が持ち込まれることにより、沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、2004年2月、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において、船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることになった。
【0003】
バラスト水の処理基準として国際海事機構(IMO)が定める基準によれば、船舶から排出されるバラスト水に含まれる50μm以上の生物(主に動物プランクトン)の数が1m中に10個未満、10μm以上50μm未満の生物(主に植物プランクトン)の数が1mL中に10個未満、コレラ菌の数が100mL中に1cfu未満、大腸菌の数が100mL中に250cfu未満、腸球菌の数が100mL中に100cfu未満、にするように規定されている。
【0004】
バラスト水の処理技術としては、現在開発中のものが多いが、従来技術として特許文献1そして特許文献2では、バラスト水を排出する際にバラスト水中に含まれる有害プランクトンまたは有害藻類のシストを塩素系殺菌剤あるいは過酸化水素を用いて殺菌する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、バラスト水として取水される海水に含まれる生物の数は、海水を採取する日時や場所によって大きく異なり、海水1mL中に数個程度から数億個程度まで幅がある。このため、特許文献1、特許文献2の方法では、国際海事機構(IMO)が定める基準の全ての項目を確実に達成することが難しい。特に、比較的大型の動物プランクトンも死滅させるには、殺菌剤を大量に使用しないと効果がないという問題がある。そのため、殺菌剤費用が嵩むという問題や、大量の殺菌剤を貯留する貯槽を設けなければならず、スペースに制約のある船舶には支障があるという問題がある。さらに、殺菌剤を大量に使用すると、残留する殺菌剤がバラスト水とともに海中へ排出されることによる環境へ影響が無視できないという問題がある。
【0006】
そこで、取水された海水中に殺菌剤を供給する前に、比較的大型のプランクトンを濾過装置により捕捉して除去し、小型のプランクトンと細菌を殺菌剤により死滅させ、殺菌剤使用量を低減することが提案される。
【0007】
また、バラスト水の積込み時または排水時に、上記海水中の生物処理を行なうということは、船舶への荷下し時または荷積み時にこの処理を行なうことであり、荷役時間以内に生物処理を終了するために、短時間で大量の海水の給水または排水を行ない生物処理を行う必要があり、濾過装置により生物を捕集する際には短時間で大量の濾過処理が可能な濾過装置が望まれる。そこで特許文献3では、大量処理が可能なように複数の濾過体を備えて濾過面積を大きくすると共に、装置内部に熱を加えて高温状態とする加熱手段を設けて残留生物を殺滅させることとした濾過装置が提案されている。上記特許文献3では、濾過体は、軸線方向で一端が開口し周面が通水可能な円筒状をなし、海水はこの開口から導入され、周面で濾過されて該周面外に排出される。この濾過体は、定間隔で突起が形成された金属製の細い線材(ノッチワイヤ)を筒状枠体の周囲にコイル状をなすように密に巻回して円筒状として、各巻回で隣接するノッチワイヤ間で突起によって目開きを形成するノッチワイヤフィルタとしている。このノッチワイヤフィルタは、線材としてのノッチワイヤが金属製であるため、濾過時そして逆洗時においても十分な強度を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−322788
【特許文献2】特開平05−000910
【特許文献3】特開2009−066533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3では、濾過体について、ノッチワイヤの腐蝕に起因する損傷と、その交換に関して、改善が求められている。
【0010】
先ず、ノッチワイヤが金属製なので、海水を濾過する場合、塩分により腐蝕しやすいという問題がある。腐蝕すれば、濾過体の目開きに影響するし、強度も低下する。かかる問題を回避するには、腐蝕しにくいステンレス鋼のノッチワイヤを用いることになるが、ステンレス鋼のノッチワイヤは高価である。
【0011】
次にノッチワイヤフィルタは、上板と下板をそれらの周縁部で連結する柱状の複数の支持材の周囲にノッチワイヤを螺旋状に巻回し、該ノッチワイヤの一端を上板、そして他端を下板に固着する構造となっていて、ノッチワイヤは上板そして下板と完全に一体化している。したがって、低下した濾過体の性能の改善のためには、濾過体全体を新しいものと交換しなくてはならない。これは経済的に不利である。
【0012】
さらには、市販のフィルタ布を用いるのと異なり、濾過体毎に、上述の構造の支持材にノッチワイヤを巻回して濾過体を製造しなくてはならず、製造コストが高くなる。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑み、海水によっても腐蝕せず、軽量で安価に製造できる濾過体を有する濾過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、逆洗機構を濾過体の一端側にのみ有する第一発明と、両端側に有する第二発明とに大別される。
【0015】
<第一発明>
本発明に係る濾過装置は、周部に筒状の濾過材が設けられその中心軸線方向一端に開口端板そして他端に閉塞端板を備える複数の濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の内部と連通する位置に形成されている基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の第二室とに区分し、上記容器には第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が第二室から容器外へ延出している。
【0016】
かかる濾過装置において、第一発明では、濾過体の開口端板と閉塞端板は、該濾過材の内外への通水を許容するように周部に設けられた支持材によって連結され、上記濾過材が該支持材で支持されているように該支持材に外接して筒状をなしており、該濾過材は、内層、中間層そして外層から成る樹脂クロス製の濾布で形成され、濾布は、内層の目開きが1〜10mm、中間層の目開きが10〜50μm、そして外層の目開きが300〜3000μmである樹脂クロスであることを特徴としている。
【0017】
<第二発明>
本発明に係る濾過装置は、周部に筒状の濾過材が設けられその中心軸線方向両端に開口端板を備える複数の濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の内部と連通する位置に形成されている二つの基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を二つの基板により基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の二つの第二室とに区分し、上記容器には一つの第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が二つの第二室から容器外へ延出している。
【0018】
かかる濾過装置において、第二発明では、濾過体の両端の開口端板は、該濾過材の内外への通水を許容するように周部に設けられた支持材によって連結され、上記濾過材が該支持材で支持されているように該支持材に外接して筒状をなしており、該濾過材は、内層、中間層そして外層から成る樹脂クロス製の濾布で形成され、濾布は、内層の目開きが1〜10mm、中間層の目開きが10〜50μm、そして外層の目開きが300〜3000μmである樹脂クロスであることを特徴としている。
【0019】
このような構成の第一そして第二発明の濾過装置によると、海水等の原水は、原水入口から容器の第二室へ導入され、基板の通孔を経て該濾過体内に入り、該濾過体の周部に配された濾過材を透過して濾過水が第一室に至り、ここから濾過水排出管口を経て容器外に取り出される。
【0020】
一方、逆洗機構の逆洗管が位置している濾過体では、逆洗管が在るために、第二室から該濾過体へは原水が流入できず、逆に、第一室から上記周部の濾過材を透過して濾過水が濾過体内へ入り込む。その際、濾過水は濾過材の内面における付着物を除去する。そして、濾過水は該付着物を伴って逆洗管を経て逆洗水排出管から容器外へ排出される。逆洗管は中心軸線まわりに回転するので、この逆洗管が位置する対象濾過体は順次変わって行き、したがって、原水の濾過を行いつつ、常に濾過体を次々に逆洗することとなる。
【0021】
本発明における濾過体における濾過材は、内層、中間層そして外層から成る樹脂クロス製の濾布で形成され、濾布は、内層の目開きが1〜10mm、中間層の目開きが10〜50μm、そして外層の目開きが300〜3000μmである樹脂クロスである。目開きの小さい中間層が濾過可能な粒子径、すなわち濾過性能を決定する。濾過材は、それ自体全体が樹脂クロス製の濾布なので、軽量であり、海水による腐蝕という問題を生じない。濾過時そして逆洗時に、内層と外層が上記中間層を補強し保護する。
【0022】
上記濾過材では、原水を濾過する時には内側から外側に向け原水が透過され、逆洗時には外側から内側に向け濾過水が透過される。上記濾過材は、濾過時に中間層へ固形物が付着し徐々に開き目が閉塞していき、該中間層は外側への圧力が作用し、中間層単独では外側に伸長して破断する危険性があるが、外層が中間層の伸長を抑制するため、中間層の破断を防止できる。一方、逆洗時には中間層に固形物が付着しており中間層は内側への圧力が作用し、中間層単独では内側に伸長して破断する危険性や、中間層が濾過体の支持材と接触磨耗され破断する危険性があるが、内層が中間層の伸長を抑制し、また、内層が濾過体の支持材との間にあるため、中間層の破断を防止できる。内層そして外層は、中間層よりも目開きが大きいので、中間層での濾過性能に何ら影響をもたらさない。
【0023】
上記濾過材は、製造に際しては、市販されている樹脂クロス製濾布のうち、上記の目開きのものを選択しこれらを内層、中間層、そして外層として採用し、適宜箇所、例えば周縁で溶着等により一体化して一つのシートとすることができ、支持材への周回配置そして開口端板や閉塞端板への取付け保持を容易とする。換言すれば、保守時には、濾過体全体を取り外すことなく、単に濾過材のみを上記開口端板や閉塞端板から外せば良い。これは、交換作業が容易になるのみならず、経済的にも有利である。
【0024】
本発明において、濾過材は、開口端板と閉塞端板のそれぞれの周面に形成された取付溝部に配された緩衝材を介し、該開口端板と該閉塞端板のそれぞれの周面でクランプバンドにより保持されているようにすることができる。緩衝材とクランプバンドを用いることにより、濾過材の開口端板や閉塞端板に対する取付け時や濾過時そして逆洗時に、濾過材の損傷を防止することができ、また、取付けそして取外しがきわめて容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように、筒状をなす濾過体の周部に配される濾過材を、内層、中間層そして外層の三層で成る樹脂クロスの濾布とし、濾過粒度を決定する中間層に対してメッシュ数の小さい内外層で該中間層を補強することとしたので、中間層での濾過性能を維持しつつ濾過材の強度を確保でき、海水の濾過時においても腐蝕することなく、さらには、保守時に、濾過体全体を外すことなく濾過材のみを容易に取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態そして濾過装置の部分破断正面図である。
【図2】図1の濾過装置に用いられる複数の濾過体の一つについての分解斜視図である。
【図3】図2の濾過体に用いられる濾過材を展開状態でその一部について、各層を分離して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示される本実施形態の濾過装置は、鉛直な中心軸線1をもつ有底円筒状の容器本体2と、該容器本体2の上部開口へ水密状態で取り付けられる蓋体3と、上記容器本体2の下部にて該容器本体2の内部を第一室たる上室2Aと第二室たる下室2Bとに仕切る基板4と、該基板4の上面に取り付けられ上方に延びる円筒状の複数の濾過体5と、さらには、上記基板4の下面に対し摺接回転する逆洗管6と、これを回転駆動させる駆動機構7とを備えている。
【0028】
上記容器本体2には、周方向の一箇所で上記下室2Bに連通するように原水導入管としての海水導入管8が、そして周方向の他の箇所で該下室2Bに連通するように逆洗水排出管9が、さらには底部で下室2Bに連通するようにドレイン管10がそれぞれフランジを介して接続されている。上記海水導入管8、逆洗水排出管9そしてドレイン管10には、第一開閉弁8A、第二開閉弁9Aそして第三開閉弁10Aがそれぞれ取り付けられている。
【0029】
さらに、上記容器本体2には、上室2Aの上部で周方向の一箇所で該上室2Aに連通するように濾過水排出管11が接続されている。この濾過水排出管11には第四開閉弁11Aが取り付けられている。
【0030】
上室2Aと下室2Bとに仕切る基板4には、上記中心軸線1に対して同心をなす複数(図1の例では三つ)の円と上記中心軸線1に向う複数の半径線との交点位置に、板厚方向に貫通する通孔4A,4B,4Cが形成されている。上記基板4の上面には、上記通孔4A,4B,4Cのそれぞれに対して連通するように、後述する濾過体5が垂立して取り付けられている。
【0031】
基板4の下面を摺接回転する逆洗管6は、上記中心軸線1の位置の一端から一つの半径線方向外方で容器本体2の円周面近傍に他端を有するように延びている。該逆洗管6は、上記中心軸線1から通孔4A,4B,4Cが位置する各円の半径に等しい距離となる位置に、上方に向け突出する接続口6A,6B,6Cが形成されていて、この接続口6A,6B,6Cが基板4の下面に摺接する。上記逆洗管6は、上記中心軸線1の位置となる一端が開口され、他端が閉じられている。この逆洗管6の開口している一端は、中心軸線1上に位置する連絡管12に連通するように一体的に接続されている。該連絡管12は上端が閉じられ下端が開口している。該連絡管12の開口する下端は、容器本体2の底部に設けられた受箱12A内に突入していて、該受箱12Aの上板に対して水密状態で中心軸線まわりに相対回転可能に支持されている。該受箱12Aには既述の逆洗水排出管9が連通接続されている。
【0032】
逆洗時には、上記逆洗管6は、容器外に連通されていて接続口6A,6B,6Cでの圧力が大気圧であり、通孔4A,4B,4Cが接続口6A,6B,6Cと接する時、濾過体5の外部が濾過水圧を受け内部は大気圧であり、濾過体5の外部の圧力が内部より高くなるので、濾過体外周から濾過水が濾過材を透過して内部に流入し、濾過材内面に付着した付着物が逆洗され、濾過水とともに容器外へ排出されることとなる。
【0033】
上記逆洗管6には、駆動機構7が接続されている。該駆動機構7は、容器の蓋体3の外面に設けられた減速機13付きのモータ14と、該減速機13から垂下して容器の上室2Aへ突入し中心軸線1上に延びる駆動軸体13Aとを有し、該駆動軸体13Aの下端が上記連絡管12の上端と連結されている。かくして、モータ14の回転が減速機13で減速されて、上記駆動軸体13Aへ伝えられ、上記連絡管12の上端へ一体的接続されている逆洗管6が上記中心軸線1まわりに回転するようになる。この逆洗管6の回転により、逆洗管6の接続口6A,6B,6Cは、周方向に移動して次々と基板4の通孔4A,4B,4Cと連通するようになる。
【0034】
上記基板4の上面に対し、通孔4A,4B,4Cの位置に取り付けられた濾過体5は、図2に見られるように、下端に位置する環板状の開口端板15そして上端に位置する円板状の閉塞端板16を、柱状の支持材17で連結して形成される枠体18と、該枠体18に取り付けられる筒状の濾過材19と、この濾過材19の枠体18への取付けに用いられる取付具としてのクランプバンド20とを有している。
【0035】
上記開口端板15と閉塞端板16は、同外径で、周面にクランプバンド20のための環状の取付溝部15A,16Bが形成されている点で同じであるが、開口端板15は中央に開孔15Bが貫通形成されている点で閉塞端板16と相違している。該開口端板15の開孔15Bの内径は基板4の通孔4A,4B,4Cの内径とほぼ同じである。上記開口端板15、閉塞端板16、支持材17そしてクランプバンド20は、海水で腐蝕しないようにステンレス鋼製又は防食被覆された材料であることが好ましい。かかる開口端板15と閉塞端板16は、それらの周縁付近での周方向の複数位置で平行に配された、細長い円柱状の支持材17により連結され、枠体18として一体化されている。支持材17同士の間隔において濾過材19のたるみが生じないように、支持材17の間隔が適切に配されている。
【0036】
上記開口端板15そして閉塞端板16の周面に形成された取付溝部15A,16Aにて、後述の濾過材19を取り付けるクランプバンド20は、図2のごとく、上記取付溝部15A,16Aにそれぞれ収まる幅の弾性金属帯で、一箇所で開放された略リング状をなしており、周方向の一端に突起20Aが、そしてこれに隣接する他端に係止孔20Bが形成されていて、該クランプバンド20を後述の濾過材の外周に配した後に、突起20Aを係止孔20Bにスナップ状に係止させることで、上記濾過材19を上記開口端板15そして閉塞端板16に対して緊締保持する。該クランプバンド20は、上記開口端板15と閉塞端板16の間の中間位置でも、濾過材を支持材17に対して緊締保持させるように用いられることが好ましい。上記取付溝部15A,16Aには、上記濾過材19に対し緩衝材となるパッキングを配したり、シーラントを塗布しておくことが好ましい。
【0037】
樹脂クロスの濾布から形成される濾過材19は、図3に見られるような、樹脂糸で作られた三種の樹脂クロス濾布を重ねて外層、中間層そして内層とし、これを円筒状に丸めると共に、図1のごとく、両端周縁部と周方向での接合端縁を溶着して円筒体として形成される。
【0038】
上記濾布の樹脂クロスは、外層、中間層そして内層のいずれも、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリアリレートそしてテフロン(登録商標)等のいずれかを素材としている。上記図3に見られるように、濾過材19の外層19A、中間層19Bそして内層19Cは、好ましい形態として、外層19Aの目開きが300〜3000μm、中間層19Bの目開きが10〜50μm、そして内層19Cの目開きが1〜10mmの樹脂クロスとなっている。その際、樹脂クロス濾布を形成する糸の太さは、中間層19B,外層19Aそして内層19Cの順に太くなっている。
【0039】
このように、外層19A、中間層19Bそして内層19Cを成す三種の濾布は図2の円筒状の濾過体5となるのに適切な展開寸法に切断された後、上下縁部19−1が縫製あるいは樹脂での溶着により一つのシートを形成し、次に円筒状に丸められてから、その周方向端縁19−2同士を縫製あるいは樹脂での溶着により接合し、図2に示す円筒状の濾過材19を形成するようになる。
【0040】
このように形成された濾過材19は、図2のごとく、開口端板15と閉塞端板16の取付溝部15A,16Aに予めシーラント等の緩衝材が配された枠体18のへ該枠体18の一端側から外挿された後、外側から、上記取付溝部15A,16A位置で、クランプバンド20により、上記開口端板15と閉塞端板16の周部で緊締保持される。また、開口端板15と閉塞端板16との間の中間位置でも、上記クランプバンド20により濾過材19が支持材17に対し緊締保持されることが望ましい。このようにして構成された濾過体5は、その開口端板15の開孔15Bが、基板4の通孔4A,4B,4Cと一致する位置で、上記基板4の上面に着脱容易状態に取り付けられる。
【0041】
このように構成された本実施形態の濾過装置は、次の要領で濾過・逆洗そして保守がなされる。
【0042】
<濾過及び逆洗時>
先ず、第一、第二、第四開閉弁8A,9A,11Aを開放そして第三開閉弁10Aを閉じて、原水、例えば、濾過前の海水を海水導入管8から容器内へ導入する。この原水は、図1にて実線矢印で示されるように、容器の下室2Bに入った後、ここから基板4の通孔4A,4B,4Cを経て対応する濾過体5内に流入する。さらに、原水は、濾過体5の周部をなす濾過材19を透過して上室2Aへ至る。その際、原水は濾過材19で濾過され、上室2Aに濾過水として入る。この濾過水は濾過水排出管11から容器外へ流出する。
【0043】
上記原水の濾過時に、逆洗機構7の駆動軸体13Aが減速機13付きモータ14からの駆動力を受けて回転しており、逆洗管6は、接続口6A,6B,6Cが基板4の下面と摺接しながら、上記中心軸線1まわりに回転している。したがって接続口6A,6B,6Cは回転移動しながら、基板4の通孔4A,4B,4Cと次々と間欠的に連通するようになる。この逆洗管6の接続口6A,6B,6Cと連通している基板4の通孔4A,4B,4Cには下室2Bからの原水が流入できず、逆に、上室2A内の濾過水の一部が、逆洗管6に対応して位置する濾過体5の周部たる濾過材19を透過し該濾過体5内へ流入する。その際、濾過体5内へ流入する濾過水は、濾過時に上記濾過材19の内面に付着した濾過残渣を該周部から剥離、すなわち逆洗してこの濾過残渣と共に逆洗管6へ流入する。この付着物を伴う濾過水は連絡管12内を流れ、受箱12Aを経て逆洗水排出管9容器外へ排出される。かくして、容器内では、原水が濾過されつつ、濾過水の一部を用いて、常時、濾過体5が順次逆洗されている。
【0044】
<保守時>
濾過装置の保守点検の際には、蓋体3を外して濾過体5を露呈せしめた状態で特定のあるいは全部の濾過体5を基板4から外して外部へ取り出すことで状況確認あるいは濾過材19の交換等が行われる。また、一括してすべての濾過体5を容器外に取り出したいときには、基板4と共に組立体として取り出すこともできる。
【0045】
濾過体5における濾過材19の交換は、濾過体5のクランプバンド20を外すことで容易に行える。また、容器本体2内の洗浄は、第一、第二そして第四開閉弁8A,9A,11Aを閉じ第三開閉弁10Aを開放状態で行われ、洗浄後の液はドレイン管10から排出される。
【0046】
本実施形態では、濾過装置は、その容器内の第一室が上室、第二室が下室となる形態として説明したが、この第一室そして第二室は、上下が逆の位置関係になったり、装置の横置据付けにより、左右の位置関係になることもある。
【0047】
さらに、本発明では、濾過体の両端を開口端板として、通孔がこれらの両方の開口端板で濾過体内部と連通するように二つの基板を配して、一つの第一室に対して第二室を二つ形成し、それぞれの第二室に逆洗機構を設けるようにしてもよい。濾過体の両方から逆洗水を流入させ逆洗するため、効率よくかつ確実に付着物を逆洗し除去することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 中心軸線
2A 上室
2B 下室
4 基板
4A,4B,4C 通孔
5 濾過体
8 海水導入管
9 逆洗水排出管
11 濾過水排出管
15 開口端板
16 閉塞端板
17 支持材
19 濾過材
19A 外層
19B 中間層
19C 内層
20 クランプバンド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
周部に筒状の濾過材が設けられその中心軸線方向一端に開口端板そして他端に閉塞端板を備える複数の濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の内部と連通する位置に形成されている基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の第二室とに区分し、上記容器には第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が第二室から容器外へ延出していることとする濾過装置において、
濾過体の開口端板と閉塞端板は、該濾過材の内外への通水を許容するように周部に設けられた支持材によって連結され、上記濾過材が該支持材で支持されているように該支持材に外接して筒状をなしており、該濾過材は、内層、中間層そして外層から成る樹脂クロス製の濾布で形成され、濾布は、内層の目開きが1〜10mm、中間層の目開きが10〜50μm、そして外層の目開きが300〜3000μmである樹脂クロスであることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
周部に筒状の濾過材が設けられその中心軸線方向両端に開口端板を備える複数の濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の内部と連通する位置に形成されている二つの基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を二つの基板により基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の二つの第二室とに区分し、上記容器には一つの第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が二つの第二室から容器外へ延出していることとする濾過装置において、
濾過体の両端の開口端板は、該濾過材の内外への通水を許容するように周部に設けられた支持材によって連結され、上記濾過材が該支持材で支持されているように該支持材に外接して筒状をなしており、該濾過材は、内層、中間層そして外層から成る樹脂クロス製の濾布で形成され、濾布は、内層の目開きが1〜10mm、中間層の目開きが10〜50μm、そして外層の目開きが300〜3000μmである樹脂クロスであることを特徴とする濾過装置。
【請求項3】
濾過材は、開口端板と閉塞端板のそれぞれの周面に形成された取付溝部に配された緩衝材を介し、該開口端板と該閉塞端板のそれぞれの周面でクランプバンドにより保持されていることとする請求項1又は請求項2に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−13839(P2013−13839A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146972(P2011−146972)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】