説明

炎症改善のための生体模倣エボジアルテカルパ果実抽出物

【課題】哺乳類の皮膚炎を少なくとも部分的に回復に向わせるか、少なくとも部分的に抑制するかの何れか一方又は両方のために用いる医薬組成物の提供。
【解決手段】例えばプロスタグラジン及び/又はCOX−2生成を抑制することにより、炎症を回復に向わせる及び/又は抑制する組成及び方法であり、これは少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドを(好ましくはブチレン化ヒドロキシトルエンとの組み合わせで)用いる。好ましいインドールキナゾリンアルカロイドは、ルテカルピン、エボジアミン、及びデヒドロエボジアミンであり、これらはハーブ、エボジアルテカルパからなる漢方薬Wu−Chu−Yuにおける非精製形態で自然界に見出される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
I.技術分野
本発明は、環境及び生化学的状態に起因する炎症効果を改善する化合物の生体模倣混合物の調製に関する。特に、この生体模倣混合物は、エボジアルテカルパ(Evodiarutaecarpa)果実から抽出調製される混合体に関する。この混合体は、循環酸素添加酵素活性を抑制し、プロスタグランジンの生成を低減し、紫外線光に露呈した後の紅斑の発症、或いは化学的炎症を抑制できる。
【0002】
II.発明の背景
創傷や感染部位における顕在性炎症は、組織病状、細胞生物学、微生物学、生化学的及び分子生物学における指標として特徴付けられる。低レベルにおける同様な過程が微小な炎症状態を引き起こしているものと理解され、これは臨床学的な症例としては極僅かにしか現れないが、ヒトの健康に関係している。微小な炎症にかかり易くする状態は遺伝的性質と加齢との両方の結果であるので、微小炎症は年配者にはよくあることである。この症状は、血管反応性の低減及び環境毒素に対する応答の増大を含む。これらの症状に抗することは、過度な血管拡張、炎症細胞の流入、及び細胞毒素の解放をもたらす。これは紅班及び痛みを伴うが、しばしば、この挑戦と反応のサイクルは慢性的であり、人生の後半のみに現れる症例である。この種の微小炎症は多くは心疾患、アルツハイマー症、関節炎、癌、更に高齢者には最終的にはそれ自体が明白になる他の多くの慢性疾患に起因している。急性と微小炎症との両方の重要な媒介物はプロスタグランジン(PG)である。PG合成体は前駆性アラキドン酸からなり、酸素添加(COX)酵素により制御される。PG族は、血管拡張、炎症細胞の活性化など多くの反応を発する。PGの基礎レベルはCOX−1により維持されており、これは通常の細胞の新陳代謝に必要である。有害な刺激に反応して、COX−2が誘発されて活性化して、多くの炎症反応をもたらす過剰なPGが生成される。残念ながら、我々が歳をとるにつれて、COX−2の休止レベルは増大するので、ひいては、刺激に応答するPGの生成が増大する。
【0003】
PGの調節剤は、その効果に対する巨大な市場が存在するので広く考えられている。非常に成功した新たな薬理学的な化学物質が市販されており、これはCOX−2を選択的に阻止するので、加齢による炎症応答特性を抑制する。これらの調節剤は、明確に規定して、その作用を一貫的に且つ選択的にして副作用を生じないようにせねばならない。これは特に、高齢者には長期間に亘って使用されるためである。
【0004】
植物から調製された植物抽出物は、科学的な機関の会員によって、PG生産に対する影響力を持ち、抗炎症効果を持つものと考えられている。一つの例はエボジアルテカルパ(Evodia rutaecarpa)果実から生成された抽出物であり、これは伝統的な漢方薬であり、Wu−Chu−Yuとして知られている。この抽出物を単独で又は他の植物の抽出物と組み合わせて用いることについては、抗炎症剤、抗新生物薬剤、抗新生物薬剤、皮膚白化処理、高血圧、乾燥を有する所定の皮膚の採取及び艶の増大、痛みの治療、及び他の様々な主張として既に説明されてきた。これらの抽出物は様々な有機合成物を包含しており、それらは個別に研究されており、様々な効果が個々の化合物に寄与しており、その主意な一つはインドールキナゾリン アルカロイドである。これらはキナゾルインドカーボリン アルカロイドとしても、及びエボジア果実内にも知られており、これらは主にルテカルピン、エボジアミン、及びデヒドロエボジアミンである。エボジア果実は一般的ではなく、その育成も容易ではなく、その果実から調製された抽出物における化合物の量も、その年、地理的な場所、収穫年、及び抽出物方法、保存方法、更に他の変動要因によって、大きく変動する。これら全ての要因が、その抽出物を商業化できない原因である。
【0005】
ヒトの皮膚(これは一酸化窒素(NO)及びPGを生成する)における微小炎症反応の抑制を測定し、その効果が恒久的であり、対象に害悪を及ぼさない便利な試験システムも望まれる。炎症の抑制を試験するための現在の方法は、強い刺激剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ガラギーナン、或いはペルーのバルサンなどの使用を伴う。これらは強烈さをもたらし、ときには痛みを伴う炎症反応をもたらす。ニコチン酸メチル(MN)は統合失調症診断の一方法として紅潮反応を形成するために用いられてきた。皮膚を刺すことに対する感受性がニコチン酸メチルに対する過剰反応に関連して提案された(Issachar他、1998年)が、これは既に否定されている(Coverly他,1998年)。炎症により誘発されたニコチン酸メチルはPG抑制剤により抑制される(Wilkin他,1985年)。
【0006】
III.発明の概要
第1の態様によれば、本発明は組成物を与え、これは
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンと
(c)一つ又は複数の溶媒及び/又は一つ又は複数の担持体とを備え、前記組成物における前記一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカイドの濃度は少なくとも0.02μg/mlであり、ブチル化ヒドロキシトルエンの濃度は少なくとも0.01mg/mlである。
【0007】
第2の態様によれば、本発明は組成物を与え、その組成物は
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンと、
(c)一つ又は複数の溶媒及び/又は一つ又は複数の担持体とを備え前記組成物における(a)及び(b)の乾燥重量の合計は、前記組成物における固体の総重量の少なくとも10%である(好ましくは少なくとも50%であり、更に好ましくは90%である)。
【0008】
本発明のこの態様に関連して、組成物における(b)の乾燥重量は、前記組成物における固体の総計の好ましくは少なくとも50重量パーセントである。
【0009】
本発明の第3の態様は、組成物を与え、この組成物は、
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンとを、
(c)一つ又は複数の溶媒及び/又は一つ又は複数の担持体とを備え、550ナノメータにおける組成物の光吸収の指数を270ナノメータにおける吸収で割ると、0.01未満である。
【0010】
本発明の第4の態様は、組成物を与え、この組成物は、
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンとを、
(c)一つ又は複数の溶媒及び/又は一つ又は複数の担持体とを備え、450ナノメータにおける組成物の光吸収の指数を400ナノメータにおける吸収で割ると、0.01未満である。
【0011】
上述の態様によれば、組成物は好ましくはブチレングリコールを即ち溶媒及び/又は担持体として含む。
【0012】
本発明の第5の態様は、組成物を与え、この組成物は、
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチレングリコールとを備える。
【0013】
この態様によれば、この組成物はブチレン化ヒドロキシトルエンも含む。
【0014】
第6の態様によれば、本発明は哺乳類の皮膚炎症を少なくとも部分的に反転させるか及び/又は部分的に抑制する方法を与える。この方法は、そのような反転及び/又は抑制が必要な哺乳類の皮膚へ組成物を施し、その組成物は(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドであり、組成物を作成するために用いる時は、その純度が50%以上(好ましくは90%以上)である該アルカロイド及び(b)ブチル化ヒドロキシトルエンを備える。
【0015】
第7の態様によれば、本発明は哺乳類の皮膚炎症を少なくとも部分的に反転させるか及び/又は少なくとも部分的に抑制する方法を与え、そのような反転及び/又は抑制が必要な哺乳類の皮膚に組成物を塗布し、その組成物は、
(a)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドと、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンとを備え、
この組成物の抗炎症活性化は、ヒトの皮膚上でニコチン酸メチル誘発紅斑を用いて試験した際に、ブチレングリコールが、一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイド及びブチル化ヒドロキシトルエンと容積で同じ重量パーセントで溶融している組成物からなる組成物の抗炎症活性化と実質的に同程度かそれよりも大きい。
【0016】
本発明の第6及び第7の態様によれば、組成物は好ましくはブチレングリコールからなる。
【0017】
本発明の第8の態様によれば、本発明はシクロオキシナーゲ2の活性を少なくとも部分的に抑制する方法を与え、この方法は、そのような抑制が必要な哺乳類の皮膚に組成物を塗布し、この組成物は、ブチル化ヒドロキシトルエン、又はトリシクロ(3,3,1,1(3,7)−デカン−カルボキシリック酸エチルエステル、又はブチル化ヒドロキシトルエンとトリシクロ(3,3,1,1(3,7)−デカン−カルボキシリック酸エチルエステルとの組み合わせであり、ここで、ブチル化ヒドロキシトルエン、又はトリシクロ(3,3,1,1(3,7)−デカン−カルボキシリック酸エチルエステル、又はブチル化ヒドロキシトルエンとトリシクロ(3,3,1,1(3,7)−デカン−カルボキシリック酸エチルエステルとの組み合わせの組成物中の濃度は、シクロオキシナーゲ2の活性をすくなくとも部分的に抑制するには充分である。
【0018】
この態様によれば、この組成物は好ましくはブチレングリコールを含む。
【0019】
第9の態様によれば、本発明は哺乳類の皮膚に酸化窒素を誘発する方法を与え、この方法は、ニコチン酸メチルの有効量を有する組成物を、循環障害を示す症状、例えば肢端紅痛症又はレーノー症候群(Reynaud’s syndrome)を示す皮膚へ塗布する。
【0020】
第10の態様によれば、本発明は哺乳類の皮膚へ塗布される製剤に使用する組成物を調製する方法が与えられる。この方法は、
(a)インドールキナゾリンアルカロイドを含む第1の成分を与える段階と、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンを含む第2の成分を与える段階と、
(c)哺乳類の皮膚へ塗布するのに適した担持体及び/又は溶剤を与える段階と、
(d)第1の成分、第2の成分、及び担持体及び/又は溶剤を用いて組成物を調製する段階とを含み、第1の成分のインドールキナゾリンアルカロイドの純度は50パーセント以上(好ましくは90パーセント以上)である。
【0021】
第11の態様によれば、本発明は哺乳類の皮膚へ塗布する製剤を調製する方法が与えられる。この方法は、
(a)インドールキナゾリンアルカロイドを含む第1の成分を与える段階と、
(b)ブチル化ヒドロキシトルエンを含む第2の成分を与える段階と、
(c)哺乳類の皮膚へ塗布するのに適した担持体及び/又は溶剤を与える段階と、
(d)第1の成分、第2の成分、及び担持体及び/又は溶剤を用いて製剤を調製する段階
とを含み、第1の成分のインドールキナゾリンアルカロイドの純度は50パーセント以上(好ましくは90パーセント以上)である。
【0022】
本発明の第10及び11の態様によれば、担持体及び/又は溶剤は好ましくはブチレングリコールを含む。
【0023】
上述の様々な態様によれば、本発明の組成物及び方法は以下の特徴の幾つか又は全てを有することが好ましい。
【0024】
(1)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドの組成物中の組み合わせ濃度は約400乃至600μg/mlである。
【0025】
(2)一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドは、ルテカルピン、エボジアミン、デヒドロエボジアミン及びそれらの糖からなるグループから個々に選択される。
【0026】
(3)ブチル化ヒドロキシトルエンの濃度は少なくとも0.05mg/mlである。
【0027】
(4)ブチル化ヒドロキシトルエンの濃度は少なくとも4乃至6mg/mlであり、一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドの組成物中の組み合わせ濃度は約400乃至600μg/mlである。
【0028】
(5)組成物は更にエボジン(evodine)を含む。
【0029】
(6)組成物は更にプロスタグランジンの生成を抑制する一つ又は複数の薬剤を有する。
【0030】
(7)この組成物は、プロスタグランジンの生成を刺激する一つ又は複数の薬剤を有する。
【0031】
(8)組成物における一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイドの組み合わせ濃度は、炎症を少なくとも部分的に反転及び/又は少なくとも部分的に抑制するのに充分である。
【0032】
(9)組み合わせにおける一つ又は複数のインドールキナゾリンアルカロイド及びブチル化ヒドロキシトルエンの組み合わせ濃度は、炎症を少なくとも部分的に反転及び/又は少なくとも部分的に抑制するのに充分である。
【0033】
(10)組成物がエマルジョンの形態にある。
【0034】
(11)組成物は哺乳類の皮膚例えばヒトの皮膚へ塗布するのに適している。
【0035】
上述の一般的な説明と以下の詳細な説明との両方は、単に本発明の例示であって、本発明の特性及び特徴の理解のために概観若しくは構成を与えることを意図したものである。
【0036】
本発明の付加的な特徴及び利点は以下の詳細な説明に記載されており、当業者には説明から容易に理解し得るか、或いは本明細書に説明したように発明を実施することにより明らかとなろう。添付図面は本発明の更なる理解を与えるように添付されており、本明細書に組み込まれて、その一部を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はデヒドロエボジアミン、エボジアミン及びルテカルピンの化学構造である。
【図2】図2は担体としてブチレングリコールを用いるエボジアルテカルパ抽出物による体外のCOX−1及びCOX−2の50%抑制濃縮をプロットした図である。
【図3A】図3AはRP−18 F254 HPTLCプレートから励起された個々のエボジアルテカルパ抽出物片によるCOX−2酵素の抑制であって、全エボジアルテカルパ抽出物(EVE)は個々の解析された断片の総質量に等しい。
【図3B】図3BはRP−18 F254 HPTLCプレートからの断片17の励起により発生した準断片によるCOX−2酵素の抑制であって、基準相HPTLCプレート上の更なる断片化が続き、エボジアルテカルパ抽出物(EVE)の質量は図3Aにおけるものと同様である。
【図4】図4はエボジア混合体によるHaCaTケラチノサイト細胞からのUVB誘発PGE分泌の抑制を示す図である。
【図5A】図5Aは正常なヒトの表皮ケラチノサイト(NHEK)からのPGD分泌におけるニコチン酸メチルの効果を示す図である。
【図5B】図5Bはヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)からの酸化窒素(NO)の解放におけるニコチン酸メチルの効果を示す図である。
【図6】図6はMN処置の後の30分及び60分後におけるヒトの皮膚の0.14mg/mlニコチン酸メチルにより誘発された紅班上の単独の1%(v/v)エボジア混合体ローション前置処置の効果を示す図である。
【図7】図7は1%(v/v)エボジア混合体又は媒体制御の何れかで前置処置されて、0.14mg・mlニコチン酸メチルが試みられた被験者の前腕掌の写真である。この写真は試みの30分後に撮られたものであって、媒体制御側の暗い円は誘導酵素であり、これはエボジア混合体側には事実上存在していない。
【0038】
V.本発明及びその好ましい実施例の詳細な説明
その特定の好ましい態様について以下に説明するように本発明はブチレングリコールに基づくEvoia果実抽出物の合成生体模倣混合物を与えて哺乳類、特にヒトにおける炎症を鎮静する。混合物はサイクロクロオキシゲンの活性化を抑制し、紫外線及び/又は化学物質への露呈により誘発されるプログスタンランディアンの生成を低減する。この混合体は例えば皮膚における炎症反応の出現を抑制する。
【0039】
本明細書で用いるように、用語「生体模倣(biomimetic)」とは人口物質又は化合物であって、その少なくとも一部の機能、模倣が、少なくとも部分的には、天然の物質又は化合物の機能であるものを意味する。この定義に従えば、本発明はその特定の実施例において、エボジア ルテカルパ果実抽出物の生体模倣に関し、特に、この抽出物の報告された抗炎症特性を有する生体模倣に関する。
【0040】
以下に説明するように、幾つかのエボジア ルテカルパ果実抽出処方が得られて分析され、インドールキナゾリンアルカロイドの組成及び濃度とは大きく異なっていることが判っている。例1において説明したように、これらアルカロイドの高濃縮度はCOX−2酵素活性化を抑制し、UVB誘発PG解放を低減することが判っている。これらの経験の過程では、溶解ブチレングリコールは抽出物の活性化を増強する(例1)という驚くべき発見がなされている。また、ルテカルピン及びエボジアミンの重量は、抽出物内で他の成分と混合されたときは、純粋な形態における場合(例2)よりもUVB−PG解放の抑制に効果的でないという予期せぬ発見もなされている。これはアルカロイドの抑制剤が抽出物中に存在していることを示している。
【0041】
エボジア ルテカルパ果実抽出物の解析は高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によって様々な帯域が明らかになり、これは化合物の複雑な混合を示す。帯域パターンは果実のバッチ及び抽出物のロットの中で変動し、抗炎症活性化の効能も変動する。様々な調合液内の個々の断片を解析した後の結論は、COX−2抑制活性化はインドールキナゾリンアルカロイド断片には見られないが、むしろ2つの個別の断片(例2)に見られるということである。これは従来技術とは対照的であり、UVB誘発PG解放の抑制は、COX−2の抑制に起因していると考えられており(Andre Mahans,Rainer Wolber,Franze Stab, Lars−Oliver Klottz及びHelmut Seis,Contribution of UVB and UVA to UV−dependent stimulation of cyclo−oxygenase−2 expression in artificial epidemis. Photochem.Photobiol.Sci.3:257−262,2004)、COX−2抑止はインドールキナゾリンアルカイドに起因することが判った(Moon他、1999年及びGupta,2001年)。アルカイドUYB誘発PG解放には、COX−2上の効果を伴わないが、何か他のものがCOX2を抑制していることも判った。
【0042】
2つのCOX−2抑制断片の解析は、これらがブチレン化ハイドロシキロトルエンであることを明らかにし、これは合成酸化防止剤に広く用いられており、トリシクロ(3,3,1,1[3,7]−デカン−1−カロキシリック酸エチルエステル,天然香料(例2)である。発明者はCOX−2抑制活性をBHTを用いて複製した(例2)。BHTは合成物質であるので、エボジア果実の天然成分とすることはできない。抽出物を供給する工場からの文献にはBHTを構成する記載はない。発明者が同一の工場からのエボジア果実抽出物の二つの個別のロットについて検査してみたところ、第1のロット(#030124)はBHT断片を包含し、且つ抗COX−2活性化を示したが、第2のロット(#030702)はBHT断片を包含せず、抗COX−2活性化を有していなかった。発明者は、BHTは、エボジア ルテカルパ果実抽出物に工場によって意図的に含有されているのではなく、抽出に散発的に用いられる溶剤からの混入物質であり、即ち処理後の期間に失われることが多いものであると結論した。エボジア ルテカルパ果実抽出物における抗炎症活性のこれらの発見から、発明者は、インドールキナゾリンアルカロイドにブチル化ハイドロキシトルエンをブチレングリコール基内で混合することにより、好ましい生体模倣を調製した(例3)。インドールキナゾリンアルカロイドはrutaecarpine,dihydororutaecarpine,14−formyldihydororutaecarpine,vodiamine,dehydrovodiamine,isovodiamine,hydroxyvodiamine(rhesinie),evocarpine,dihydroevocarpine及びwuchuyine,並びにそれらの合成のための方法が説明されている(Bergman and Bergman,1985,Chavan and Sivappa,2003)。インドールキナゾリンアルカロイドは現在は合成されているので、90%(w/w)を越える純度で商業的に入手可能であり、これはrutaecarpine,vodiamine及びdehydrovodiamineである。従ってこれらインドールキナゾリンアルカロイドは好ましい。合成物は構造的に関連している(図1参照)。Dehydrovodiamine(構造1)は、D−リングにおけるN−14のプロトン付加によりvodiamine(構造2)と交換可能であり、これらは機能的に同族体である。
【0043】
エボジア ルテカルパ抽出物の生体模倣により近い製品を製造する目的で、エボジア果実に見出される一つ又は複数の非アルカロイド化合物を含ませることが好ましい。これらはルテビン、エボジン(リモニンとしても知られる)、エボドル、エボジノン、エボジン、及びグシュイック(gushuyic)を含む。一つ又は複数の非アルカロイドが同一の抗炎症活性を有するならば、例2に示すマツダ他(1998年)に説明されたようなエボジンも望ましい。更に、消費者は透明又は白色の外用剤を好むので、一つ又は複数の非アルカロイドは可視光範囲で僅かな吸収性をもたねばならない。一つ又は複数の非アルカロイドは、安全であって、且つ90%(w/w)以上の純度で商業的に入手可能であり、エボジンがそれらの基準を満たさねばならない。或る商業的市場の条件下では、生体模倣混合体における少なくとも一つの生成された成分が合成ではなく、エボジア植物の抽出物から精製され、植物果実種子から抽出された高純度(>90%(w/w)純度)エボジアが中国から得られる。これらの理由のため、好ましい非アルカロイド化合物は精製された天然エボジアである。
【0044】
従って本発明の好ましい生体模倣は、インドールキナゾリンアルカロイド、エボジアミン、及びブチル化ヒドロキシトルエン(及び選択的にフェノキシエタノールなどの抗菌剤)の混合物である。この混合物は本明細書ではエボジア混合体(例3)と称する。これは軽く着色された製品であるが、エボジア抽出物は代表的には暗い色である。これら精製された成分の混合体は、UVB誘発PG解放の抑制における相乗効果をもたらし、これは例3に説明したような個々の成分から予期される効果の総計よりも大きいことが判った。更に、このエボジア混合体は、塗布の僅か60分の後に、ヒトの皮膚におけるニコチン酸メチルによる炎症を劇的に低減させる効能がある(例4)。1000−フォールド稀釈液(即ち、0.1%(v/v))でさえも、混合体は2週間以上に亘って使用された際にヒトの皮膚における炎症を防止するのに効果的であった(例4)。
【0045】
エボジア混合体は天然エボジア果実とは異なっており、天然エボジア果実は様々な方法で抽出されることに留意されたい。例えば、天然エボジア果実抽出体の特性には変化があり、これは、抗炎症活性の天然抑制体には欠けており、常にBHTを包含し、化合物はエボジア果実には見られず、抽出体との一貫性は見られないためである。更に、エボジア混合体は、他でもなく若干のエボジア果実抽出成分を含んでおり、非天然化物と共に相乗作用をもたらす。これらの結果は、果実抽出体の固有の特性ではなく、自然の帰結でもない。
【0046】
エボジア混合体の個々の成分の各々及び混合体全体は、適宜な溶剤で溶解させてもよいが、この化合物は脂肪親和性であるので、好ましい溶剤は無極性か有機体である。個々の成分又はエボジア混合体は搬送媒体、例えばリポソーム、ニオソーム、エソソーム、トランスファロソーム、マイクロスポンジ、又は他の剛な或いは可撓な封入系などに封入してもよく、それらは最終的な製品に加えられる。細菌性汚染を防ぐ薬剤を含めることが望ましいこともあろう。好ましい抗菌剤はフェノキシエタノールであり、これはその製造業者により濃度1%で用いることが推奨されている。
【0047】
溶剤は局所的に塗布されるので、安全且つ非刺激性でなければならない。適宜な溶剤はアルコールを含むが、これは保管及び運搬中に火災の危険があり、プロプレングリコールは人によっては刺激性を伴う。例1で説明したように、抗炎症活性は、成分がブチレングリコールに溶解された場合には、アルコールにおけるよりも予期せぬ大きなものとなる。これらの理由により、局所的投与に好ましい溶剤はブチレングリコールである。個々の成分又はエボジア混合体は、基本的に許容される任意の化粧品又は医薬品に添加でき、それらは生来的に極性又は非極性、或いは基体が極性と非極性との組み合わせ相である。
【0048】
個々の成分又はエボジア混合体が水又は極性相へ添加された際には、エマルジョンが形成されるが、このエマルジョンの形成を促進するように、極性相に対して非極性の個々の成分又は混合体の最少量を添加することが好ましい。この理由により、個々の成分又はエボジア混合体は、非極性溶剤中で実際的に最高の濃度、即ちその溶解の限界近傍にすることが望ましい。従って混合体の調合の上限は極性溶剤におけるその溶解の限界である。
【0049】
エボジア混合体は、局所的処方における活性成分(即ち、インドールキナゾリン,evodine,及びブチル課ヒドロキシトルエン)の0.01μg/ml乃至500μg/mlの広い範囲に亘って有効である。例4に説明したように、低濃度は長期間に亘る使用に効果的である。高濃度は短期間に効果的である。例えば、0.1%(v/v)のエボジア混合体(活性成分の計6・08μg/mlを包含する)は、毎日二回、七日間に亘って皮膚へ使用するのに効果的である。一方、1%(v/v)のエボジア混合体(活性成分の計60.8μg/mlを包含する)は塗布後の60分間以内は皮膚に有効である。適切な濃度の選択には、製品の費用、頻度、及び使用される時間の長さ、予期しない反応のおそれを考慮する。低コストで頻繁且つ長時間の使用、及び有害事象、例えばアレルギー反応の 懸念については、低濃度が望ましい。皮膚に塗布する処方について特に好ましい使用レベルは、4乃至7μg/mlインドールキナゾリンアルカロイド(単体又は複数)、0.2乃至0.4μg/mlエボジア及び40乃至60μg/mlブチル化ハイドロキシトルエンである。
【0050】
抗炎症効果は、エボジア混合体そのものを用いるか、エボジア果実からは抽出できない付加的な成分を加えるか、或いは他の化学物質又は抽出物により達成される。これらの付加的な成分は、付加的なCOX−2抑制体、COX−1の抑制体、或いはホスホリパーゼA2とすることができる。これらは日焼け防止剤若しくは日焼け止め或いは酸化防止剤などの付加的な防止剤とすることもできる。これらは、ビタミン又はミネラルのような栄養素、或いはレチノイン酸又はホルモンなどの特定の代謝修正剤としてもよい。これらは、例えば着色剤、香料、及び制汗剤などのプログランジンの生成を刺激する潜在性を有する薬剤としてもよい。このような場合、エボジア混合体は、それらの潜在的PG−刺激剤の影響を受ける炎症側を覆う役割を果たすことができる。
【0051】
エボジア混合体は、直接的に又は間接的に炎症反応を誘発する発作の前後でもその発作中でも用いることができる。しかしながら混合体は、対象となる組織へ塗布した後、その抗炎症効果が観察されるまで、約45分を要する。従って使用の好ましい時間は、刺激の前に、少なくとも45分間であり、好ましくは60分間である。例えば、エボジア混合体は日光への露呈に先立つ60分間に塗布することができる。実際的な目的では、或る種の炎症発作は予期できないので、エボジア混合体は朝に一回、更に好ましくは一日に朝晩二回用いることが好ましい。
【0052】
エボジア混合体の抑制剤の開始剤の範囲は非常に広範囲である。これは、アラキドン酸をプロスタグランジンへの転換の任意の誘発物質を含む。その供給源は、外部環境の刺激或いは標準代謝過程又は疾病からもたらされる内部刺激である。外部刺激の例は、イオン化又は非イオン化輻射、熱、酸化、表皮剥離、創傷、有害物質、食物、過敏症又は感染物質である。内部刺激の例は、代謝、ホルモン、パラクリン、又は自己分泌失調の変化、神経症又は神経性刺激、癌又は自己免疫性反応である。
【0053】
エボジア混合体は適宜な化粧品又は薬剤基材内で処方することができる。顔、頸、腕及び手、脚若しくは足、胴、腹部、髪、頭皮、又は粘膜などの局所的塗布のためには、これは局所的クリーム、ローション、美容液、エマルジョン、エマージョン、ゲル、シャンプー、ヘアーリンス、固体形態、パウダー状、ワックス、及び二種類若しくは複数の成分の混合系を含むことができる。
【0054】
エボジア混合体は、炎症を受けた健康な者又は刺激成分を伴う疾病を被った者の治療に用いてもよい。これは、幼児、少児、成人又は高齢者に用いてもよい。エボジア混合体は、炎症性疾病の何らの兆候を示していない者、これは遺伝子の存在に起因する素因、突然変異遺伝子、個人により炎症を被り易くさせる遺伝子の特殊な形態を含む。(以下の文献を参照されたい:米国仮出願第60/577,822号[出願日2004年6月8日]及び60/578,530号[出願日2004年6月10日]、発明者:Daniel B.Yarosh及びDavid A. Brown、発明の名称”Genetic Screening for Polymorphisms in Human Genes That Incerease or Decrease Sensitivity to Toxic Agents”、これらの全ての内容は参照により本発明に組み込まれている。)一つの好ましい実施の形態では、環境的要因に対して皮膚の過敏性を示す40歳代以上の者の治療に局所的ローションが用いられた。
【0055】
エボジア混合体の抗炎症性活性は、ラウリル硫酸ナトリウム、カラジーナン、又はペルーのバルサム(ミヨシロンペロイロ樹脂[Myroxylon pereirae resin])などの刺激又はアレルギーを用いた様々なモデルで示すことができた。これらの炎症は、24時間を越える痛みを伴う反応を引き起こし、その影響は数日間に及ぶものである。実証のための好ましい方法は、ニコチン酸メチル反応の抑制にあった。ニコチン酸メチルの溶液を皮膚へ迅速に塗布して、紅潮反応を誘発し、これは15乃至60分間にピークがあり、約3時間で解消した。個人ごとに異なる反応最適化のためのニコチン酸メチルの必要量は0.1mM乃至30mMの範囲であるが、多くの場合には適切な反応は1mMで達成される。この反応は誘発PG及びNOの基本的要素を包含する。比較的に高い濃度のエボジア混合体の処方の60分間に亘る前置処置は、比較的に低濃度の2週間においてさえも、紅班の初期ピークを低減させ、反応の正常なレベルまでの時間が短縮させた。
【0056】
本発明の何らかの目的の将来的な限定を伴うことなく、以下の例は本発明の態様及びその使用について様々な例示を示す。
【0057】
例1
エボジアルテカルパ抽出物により皮膚細胞からのCOX−2の抑制及びUV誘発PGE2解放
四ロットのエボジアルテカルパ抽出物を中国の供給者から入手した。この抽出物は50%グレインアルコールを用いる抽出により調整して、褐色の糊状のものから緑色の粘液状の形態へ変化させた。この四つのロットのrルテカルピン含有量は2.2%(w/w)(ロット020420)、0.5%(w/w)(ロット20929)、0.3%(w/w)(ロット020621)、及び4%(w/w)(ロット030124)であり、基準体として純粋なルテカルピン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を用いてHPTLCにより判定した。抽出体供給者の説明によれば、この差異には意味は無く、薬草源は各ロット毎に異なるので、ルテカルピンの含有量はロット毎に変動するということであった。果実からの種子は通常は夏季に収穫されるので、冬季には高品位の未加工の薬草を入手するのは困難である。
【0058】
HaCaTケラチノサイト細胞ラインはGibcoBRL(ニューヨーク、グランド島)D−MEM低グルコース媒体で培養され、その媒体は10%熱不活性ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L−グルタミン、及び1%非必須アミノ酸を含有している。その直後にUVB(400J/m)を照射し、HaCaT細胞を12.5μg/ml乃至100μg/mlエボジアルテカルパ抽出物(ロット030124)でエタノール中で処理した。媒体はUVB照射の24時間後に集菌して、プロスタグランジンE2(PGE)含有をPGEELOSAキット(R&D System カタログ番号DE0100)を用いて解析した。その結果は、HaCaT細胞からのUVB誘発PGE分泌は、エボジアルテカルパ抽出物12.5μg/mlにおいて29%から100μg/mlにおいて78%であった。
【0059】
細胞からの誘導プロスタグランジン解放の主要な源は、シクロ−オキシゲナーゼ2(COX−2)の誘導に関係していることは良く知られている。従って、生体外での分析は、エボジアルテカルパ抽出物が直接にCOX−2酵素を抑制しているか否かを判定するために純粋なCOX−2を用いて実行される。この分析は商業的に入手可能なCOX Inhibitor Screenings Assay(Cayman,Ann Arbor,ミシガン)を製造者の仕様書に従って検査することによりなされた。その結果は生体外の純粋なCOX−2酵素活性の抑制は、エボジアルテカルパ抽出物をエタノールに溶解した場合は12.5μg/mlでは25%から100μg/mlでは61%、またエボジアルテカルパ抽出物を1,3−ブチレングリコールに溶解した場合は12.5μg/mlでは50%から71%であった(本明細書及び特許請求の範囲で用いるように、1,3−ブチレングリコール又は1,3ブタンエディオルは「ブチレングリコール」と称す)。エタノールに溶解したCOX−2生体外の50%減少抑制凝縮(IC50)エボジアルテカルパ抽出物は57μg/mlであり、ブチレングリコールに溶解したエボジアルテカルパ抽出物についてのIC50は18μg/mlであった。これらの結果は、エボジアルテカルパ抽出物はCOX−2抑制剤であり、COX−2抑制剤としての効果は、エタノールに溶解した抽出物に対して、ブチレングリコールに溶解した抽出物で増大することを示している。従って、ブチレングリコールは好ましい担体である。
【0060】
構造性圧搾扁桃COX−1は必須の構造的且つ標準的PGの供給源であることはよく知られている。対照的に、様々なproinflammatory刺激によりCOX−2を誘導でき、それによって生じたPGは、その生成の程度及び継続時間に応じて、有益にも有害にもなる。COX−2活性の抑制は、持続的炎症の副作用の予防及び治療になり得ることも広く認められている。しかしながら構造性COX−2活性の抑制は、COX−1の生成が不可欠であるので有害であろう。従って、COX−1に対してCOX−2を選択的に抑制する機能としての抗炎症剤シクロ−オキシゲナーゼ抑制剤の効力を示すことは一般的な方法である。COX−1及びCOX−2についてのIC50の測定は、エボジアルテカルパ果実抽出は、COX−1よりもCOX−2についての抑制が216倍であることを示している(図2)。これらの結果は、エボジアルテカルパ果実抽出物は選択的COX−2抑制剤であることを示し、また、エボジアルテカルパ果実抽出物は、COX−2活性の抑制による細胞からのUVB誘発PGE分泌を抑制し得ることを示している。
【0061】
例2
エボジアルテカルパ果実抽出物の精製成分による皮膚細胞からのCOX−2及びUV誘発PGEの抑制
効果的であったエボジアルテカルパ果実抽出物の一つが、エタノール(HPTLCにより定められたロット030124)に溶融した3%(w/w)エボジアミンと4%(w/w)ルタエカプリンとを含んでいたので、これらの物質の何れか一方又は両方が、細胞からのUVB誘発PGE分泌及び生体内COX−2活性の抑制に原因しているのではないかと疑われた。更に、ルタエカプリンがCO−X抑制剤であるとする文献からの報告もある(Moon他,1999, Gupta,2001)。
【0062】
意外にも、精製ルタエカプリン(Sigma−Aldrich,セントルイス、ミズーリ州、アメリカ)とエボジアミン(EnviroTest Laboratories,エドモントン、アルバータ州、カナダ)との両方が、エボジアルテカルパ果実抽出物におけるよりも低濃縮度でUVB照射HaCat細胞からのPGE分泌を抑制することが見出された(表1)。4μg/mlのルタエカプリン及び3μg/mlのエボジアミンを包含する100μg/mlのエボジアミカン抽出物(ロット030124)は、PGE分泌を80%抑制するのに必要とし、精製ルタエカプリン又はエボジアミンは0.3μg/mlでは同程度に有効であった。このデータは、インドールキナゾリンアルカロイドがその全活性を示すことを防ぐエボジアミカン抽出物内に抑制剤が存在していることを示す。
【0063】
仮にCOX−2抑制によりエボジアルテカルパ果実抽出物がUVB誘発PGEを抑制するのであれば、精製インドールキナゾリンアルカロイドも同様な濃縮度でCOX−2抑制剤になると考えられる。意外なことに、抽出物内のインドールキナゾリンアルカロイドは1μg/ml未満で有効COX−2抑制剤であったが、生体外COX−2を抑制するには実質的に一層に純粋なルタエカプリンか、純粋なデヒドロエボジアミン(エボジアミンの機能的同属体)が必要であり、即ち、デヒドロエボジアミンについては>7.5μg/mlが、ルタエカプリンについては14.4μgが必要であった(表2)。これらの結果は、抽出物の他の成分がCOX−2抑制活性の原因であることを示唆している。
【0064】
従って、エボジアルテカルパ果実抽出物をHPTLCを用いて断片化し、個々の断片をCOX−2抑制活性のために分析した。
【0065】
HPTLCは、20X20cm RP−18 F254プレートを用いて、移動相でヘキサン:アセトン(3:1)でなされた。エボジアルテカルパ果実抽出物の合計10mgをルタエカプリン及びエボジアミン基準体に隣接する基点に沿って装填した。HPTLCは溶剤前部がプレートの上部に到達するまで続いている。乾燥状態では、プレートはUVAランプ下で視覚化され、全ての可視帯の縁に標識を付けた。可視帯を含んで等しい大きさに分けられた20の帯にプレートの領域上で指標を付けて、次に各帯をプレートから削り落とした。エボジアミン及びルタエカプリンは、それぞれ断片9及び10における識別される単独の帯として除去した。断片は、エタノールに溶融させるのに続いて、600×gの遠心力によりHPTLC基質から回収された。
【0066】
断片は、上述した例で採用した生体外分析評価を用いてCOX−2抑制活性について分析した。その結果は、20の断片を組み合わせたに等しい質量に達する非断片化エボジアルテカルパ果実抽出物に実質的に等しい断片17におけるCOX−2抑制活性を示している(図3)。特に興味を惹くのは、ルタエカプリン(断片9)及びエボジアミン(断片10)に対応する帯が、この分析評価においてはCOX−2抑制活性を示さないことであり、これはおそらく何らかの抑制活性には高濃縮度のインドールキナゾリンアルカロイドが必要なためであろう。断片17におけるCOX−2抑制活性の存在及びインドールキナゾリンアルカロイドに対応する断片におけるCOX−2抑制活性の欠除から導かれることは、エボジアルテカルパ果実抽出物のCOX−2抑制活性は新たな未だ認識されていない成分によっているものと考えられることである。
【0067】
断片17が標準相HPTLCを用いて更に断片化された際に、COX−2抑制活性は6つの帯のうちの2つに見られた(図3Bにおける副断片17−2及び17−3)。この活性が、エボジアルテカルパ果実抽出物の実質的に全てのCOX−2抑制活性の原因になったと考えられる(図3B)。
【0068】
副断片17−2及び17−3をガスクロマトグラフィー及び質量分光分析(GCMS)により二つの異なる解析により解析した。第1のGCMSは、30メートルメチルシリコン(ZB−1)カラムを用いてJEOL GCメイトにおける毎分15℃で50℃から300℃に亘って電子イオン化モードを用いた。この化合物はワイリー質量スペクトルライブラリを検索することにより特定された。第2のGCMSは、30メートルメチルシリコン(ZB−1)カラムを用いてFinnigan MAT GCQにおける毎分15℃で50℃から300℃に亘って電子イオン化モードと化学イオン化モードとの両方を用いた。この機器は化合物を特定するNIST質量スペクトルライブラリを用いた。断片17−2はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を包含することが判明した。このBHTは酸化防止剤として用いられる合成化合物であって、植物学的には自然界には見出されないものである。副断片17−3はトリクロ(3,3,1,1[3,7]−デカン−1−カロキシリック酸、エチルアダマンタン−1−カルボン酸としても知られているエチルエステルを包含することが判明し、これは複雑な構造を有する天然の香料であって、現在は市販されていない。GCMSデータからは、抽出の毎ml当りのBHTのmgの条件にエボジア抽出物のロット#030124におけるBHTの濃縮度はたかだか0.006mg/mlであった。この抽出は、獲得された任意の抽出物のBHTの最高レベルを有しており、全ての場合において抽出のBHT濃縮は実質的に0.01mg/ml未満であった。
【0069】
エボジアルテカルパ果実の副断片17−2における動的要素としてのBHTの識別に続き、生体外のCOX−1及びCOX−2分析を純粋なBHTを用いてなした。その結果はBHTはCOX−1とCOX−2との両方に対して能動的であり、COX−2に対しては選択的であることを示している(表3)。これは公知の植物学的COX−2抑制剤ウルソル酸よりもCOX−2についてより選択的であるが、公知のCOX−2抑制剤CELEBREXほど選択的ではなかった(表3)。
【0070】
観察によれば、エボジアルテカルパ果実抽出物の選択性(216、例1参照)は純粋なBHTの選択性よりも大きい(87、表3)ので、COX−2抑制における成分中には相乗効果があるという結論を導かせる。初期データは、この相乗効果は本発明の生体模倣中にも存在することに矛盾しない。UVB照射HaCaTからのPG分泌を抑制するBHTの能力について、UVB照射直後にBHTを用いて細胞を処理することにより検査した。媒体を24時間後に採取してPGEELISAキット(R&DSystems、ミネアポリス、ミネソタ、アメリカ合衆国)を用いてPGE含有物について分析した。BHTは2−20μg/mlでUVB誘発分泌を抑制し、これはCOX―2生体外抑制についてのIC50の範囲内にある。
【0071】
例3
純粋なルテカルピン、エボジン、出ヒドロエボジアミン及びブチル化ヒドロキシトルエンの混合物による皮膚細胞におけるCOX−2及びUV誘発プロスタグランジン
上記の例は予期しなかった三つの結果を示している。先ず、インドールキナゾリンアルカロイドのUVB誘発PGEを抑制する能力は、エボジアルテカルパ果実抽出物に混合されたときに減少した。というのは、抽出物は活性の抑制体をも含有するためである。第二に、エボジアルテカルパ果実抽出物のCOX−2を抑制する能力は、インドールキナゾリンアルカロイドには依存しないが、他の成分(その一つはBHT)に依存する。このことから第三の驚くべき結論、即ち従来技術に相反して、インドールキナゾリンアルカロイドは、COX−2抑制に効果的でない濃度でもUVB誘発PGEを抑制するということが導かれる。更に、抗炎症性活性は、成分がブチレングリコール内にあるときに高くなることも判明した。
【0072】
このエボジアルテカルパ果実抽出物の活性の新たな知見による利点を奏させるために、エボジアルテカルパ果実中に発見された純粋な成分の生体模倣混合体を調製した。このエボジアミカン混合体は、ブチレングリコール(純度99.8%(w/w))中に溶解された合成ルテカルピン(純度99.9%(w/w))、合成デヒドロエボジアミン(>純度96%(w/w))、天然エボジアン(≧純度98%(w/w))、及び合成ブチル化ヒドロキシトルエン(≧純度99.8%(w/w))を含有する(表4)。混合体は以下の好ましい処置を用いて調製した。ブチレングリコールを40Cまで加熱し、且つルテカルピンを10分間に亘って攪拌することにより溶解させた。その温度を65Cまで上昇させ、BHTを30分間に亘って攪拌することにより溶解させた。次に温度を80Cまで上昇させ、且つエボジン及びデヒドロエボジアミンを90分間に亘って攪拌することにより溶解させた。次に、この溶液を25Cまで冷却して、フェノキシエタノール(防腐剤)を添加した。エボジア混合体におけるインドールキナゾリン アルカロイドルテカルピンとデヒドロエボジアミンとの各々の好ましい濃度、即ち細胞からのUVB誘発PGE分泌抑制において効果的な濃度は、エボジア混合体を0.1%(v/v)で用いたときである。デヒドロエボジアミンはエボジアミンの機能相同体であって、発明者の把握したところでも、また文献においても、エボジアミンと同様な活性を有している。デヒドロエボジアミンの利点は、より容易に商業的に入手可能なことである。BHTの好ましい濃縮度、即ち細胞からのUVB誘発PGE分泌抑制において効果的な濃度はエボジア混合体を0.04%(v/v)で用いたときであり、COX−2抑制に効果的なのはエボジア混合体を1%(v/v)で用いたときである。好ましくは、エボジンは商業的目的で添加される。というのは、エボジンはエボジア果実から直接に抽出され、若干の抗炎症性活性を有することが報告されている。好ましくは、フェノキエタノールを抗菌剤として添加する。上述したことに基づいて、エボジア混合体の好ましい成分を表4に示す。
【0073】
表4の好ましいエボジア混合体は僅かに黄ばんだ色合いを帯びているが、エボジア抽出物は暗色を呈しており、黒又は暗褐色の濁った色のこともあれば、暗緑色のこともある。エボジア混合体は、黄色領域(400ナノメータ周辺)から長波長へ増大する入射波長としての光吸収における実質的な低減により抽出物から識別される。吸光度を標準1cm光路キュベットを用いて分光光度計により測定し、この値を、試料に用いた特定の溶剤の背景吸収について補正した。吸収は透過率の逆数のlog10に等しく、透過率は溶液により伝達された入射光の比であり、即ち透過率は入射強度で除した透過強度に等しい。大切なことは、試料を適切に稀釈して、吸収率測定が分光光度計測定の線形範囲内になるようしにして、とりわけ装置の検出限界に等しくなったり、或いはそれを下回ったりしないようにすることである。吸収率値は稀釈計数を掛けた分光光度計からの読み取り値である。
【0074】
エボジア混合体とエボジア抽出物とは共に黄色領域で吸収されるが、僅かに長い波長で始まって、可視領域を越えて少なくとも700ナノメートルへ延出するエボジア抽出物よりもエボジア混合体は吸収がかなり少ない。実際、表4に説明した100%(v/v)エボジア混合体は実質的に475nmと700nmとの間のバックグラウンドを超える吸収はないが、抽出体は相当なレベルを保持している。表5に示すように、好ましいエボジア混合体の550nmの270nmに対する吸収比は基本的に0(即ち550ナノメートル測定は分光光度計の検出限界を下回る)であり、一方、エボジア抽出物は10×10−3又はそれ以上の比を有する。同様に、450nmの400nmに対する吸収比は、エボジア混合体については0に近似(3×10−3)するが、エボジア抽出物については100×10−3以上である。
【0075】
表4の好ましいエボジア混合物を、HaCaT細胞からのUVB誘発PGE分泌を抑制するその能力について検査した。PGE分泌を抑制する最も有効な濃度は0.01%(v/v)であって、UVB誘発PGE分泌を50%以上抑制する有効な範囲は0.004%(v/v)乃至0.4%(v/v)である(図4)。エボジア混合体はこの分析評価においては0.004%(v/v)において有効であるので、培養細胞へ投与された際にUVB誘発PGE分泌抑制におけるその最も有効な成分よりもおよそ10倍の効能がある。このことはエボジアルタエカルパ抽出物は、この活性を阻止する化合物を包含し、抑制体が除去された時、成分がUVB誘発PGEを抑制するように相乗的に働くという知見を表している。好ましいエボジア混合体は生体外COX−2酵素の抑制においても有効である。表4の好ましいエボジア混合体の1%(v/v)溶液はCOX−2活性の54%減少をもたらし、2%(v/v)溶液はCOX−2の84%減少をもたらす。1%(v/v)エボジア混合体におけるBHTの濃度は55μg/mlであり(表4)、COX−2についてのIC50は、COX−2分析において単独で用いたときのBHTのそれと同様であることを示している(表3)。これらの結果はエボジア混合体は1%乃至2%(v/v)で用いたときCOX−2に最も大きな影響を有する。従ってエボジア混合体は、COX−2により専ら媒介される炎症状態について、0.01%(v/v)で用いられたときに皮膚細胞からのUVB誘発PGE分泌を抑制するのに有益であり、好ましい処方は少なくとも1%(v/v)エボジア混合体を含有する。
【0076】
例4
皮膚におけるニコチン酸メチル誘発紅斑のブチレングリコール中の精製ルテカルピン、エボジン、デヒドロエボジアミン及びブチル化ヒドロキシトルエンによる抑制
ニコチン酸メチルの皮膚への塗布はPGにより媒介される一過性紅斑を誘発すると考えられる。PGとNOとの両方はヒトの皮膚に紅斑を誘発することが知られており、PGがNOを誘発することも知られている。ニコチン酸メチルの皮膚への塗布は、統合失調症に対する診断手順(Ward他、1998年)と、また局所的に塗布された抗炎症薬の評価(Duteil他、1990年)との両方に用いられている。発明者は、ニコチン酸メチルは培養皮膚細胞からのPG分泌抑制に有益であり、局所的に塗布されたエボジア混合体の有効性を検査する手段であるという知見を得た。更に、これまでの検討では、ニコチン酸メチルの影響はPG分泌の誘発により媒介されることを示していたが、発明者は、ニコチン酸メチルはNOも誘発し、これはPGの誘発に必要な濃度よりも非常に低い濃度であることを発見した。従って紅斑を誘発する皮膚へのニコチン酸メチルの塗布は、プロスタグランジンと酸化窒素生成との両方を抑制する薬剤を検査するのに有益である。
【0077】
標準ヒト表皮角化細胞(NHEK)及びヒト微小細胞(HMVEC)は、商業的供給業者(Cascade Biologics、ポートランド、オレゴン、USA)から入手して、製造業者の推奨に従って培養した。ニコチン酸メチルはHOにおける1M原液として作成した。この原液をHOにおいて100mMへ稀釈した。この100mMニコチン酸メチルを細胞培養媒体中で125乃至1000μMへ更に稀釈し、NHEK及びHMVEC細胞が密集度約70%に成長したときに、ニコチンメチル酸を包含する新鮮な媒体で処理した。ニコチン酸メチルの24時間の常温放置の後、培養媒体を集めた。窒素酸化物は、Calbiochem比色窒素酸化物分析キット(Calbiochem、サンディエゴ、カリフォルニア州)に説明されたGreiss試薬を用いて測定した。細胞培養媒体におけるPGは商業的に入手可能なPGD及びPGEELISAキット(R&DSystem、ミネアポリス、ミネソタ、米国)を用いて分析された。培養されたNHEK及びまたHMVECからの結果は、ニコチンメチル酸はPGD(図5A)とPGE分泌物(データは示さず)との両方を誘発することを示している。これは、ヒト皮膚における検討に従えば、ニコチンメチル酸の局所的塗布により誘発された紅斑は、PGDにより媒介されることを示している(Morrow他、1992年)。培養媒体におけるNOについての試験は、PG分泌物の刺激に加えて、ニコチン酸メチルはHMVEC(図5B)からNO分泌も誘発するが、これはPGD及びPGEの生成に必要なニコチン酸メチルの濃度よりも非常に低いことを示している。NOは皮膚紅斑を誘発する血管拡張剤であるので、ニコチン酸メチルは、PGD及びPGEの誘発を介してのみならず、NOの誘発により皮膚紅斑を誘発する。従ってニコチン酸メチルは微小循環機能不全による症状、例えば肢端紅痛症及びレーノー症(Reynaud’s disease)の治療に有益である。
【0078】
7人の被験者の皮膚におけるニコチン酸メチルの試験的投与により誘発された紅斑を低減させる0.54%(w/v)Carbopol(登録商標)ヒドロゲルローションにおける好ましいエボジア混合体(表4)の1%(v/v)による単独の処置の能力を検査するために検討をなした。各塗布領域は耐色性黒色インクマーカーにより形成された隣接するラベルにより境界を規定した。ニコチン酸メチルの試験的投与に先立つ一時間、エボジア混合体ローションを処置部位に大量に塗布した。エボジア混合体を包含しないCarbopol(登録商標)ヒドロゲルローションをビークル調整体として用いた。全ての被験者の上部及び下部掌前腕に処置を繰り返した。一時間後、ローションを腕から洗い落とし、Dermaspectrometer(Cortex Technology,Smedevaenget 10,9560 Hadsund,デンマーク)を用いて各処置部位について紅斑を三倍で読み取った。その直後に、水における0.14mg/mlニコチン酸メチル溶液の10μLを各処置部位に塗布した。紅斑を15,30,60及び90分後に読み取った。その結果は、1%(v/v)エボジア混合体ローションのピーク反応及び抑制効果は、ニコチン酸メチル試験的投与の30分後に起きることを示している(図6)。ビークルにより前置処置された処理部位とエボジア混合体で前置処置された処理部位との間のニコチン酸メチル処理部位における紅斑の差異の例を図7に示す。ニコチン酸メチルの塗布の30分後、ビークルによる前置処置部位は活発な紅斑反応を示しているが、エボジア混合体による前置処置部位は辛うじて知覚できる程度の反応を有している。全ての被験者についての結果を零時刻からの紅斑の変化の読み取りとして解析した。ニコチン酸メチルの塗布の15分後においては、必ずしも全ての被験者が紅斑の誘発を示しているわけではない(データは示さない)。ニコチン酸メチルの試験的投与の30分後、上腕と下腕との両方について結果は統計的に有意なもの(P≦0.05;対T試験)となった(図6)。1%(v/v)エボジア混合体ローションによるニコチン酸メチル誘発紅斑の平均減少は上腕と下腕との両方について約35%であった。ニコチン酸メチル塗布の60分後、紅斑反応は薄れ始めて、紅斑反応におけるエボジアローションの効果は殆ど識別できなくなった。90分後、紅斑の読み取りは基本に戻った。
【0079】
エボイディア混合体の低量投与も長時間に亘って用いた場合に有効である。上述したのと同様な手順を一日二回、二週間に亘って五箇所の部位に続けた。三箇所は、ヒドロゲルローション内の0.1%、0.3%、及び1.0%(v/v)の試験品により処置し、一箇所はビークル調整ローションで処置し、あとの一箇所はローション又はニコチン酸メチルの何れでも処置しなかった。最初の一週間後、それらの箇所にニコチン酸メチルを試したところ、ビークル処置箇所は、未処置箇所に比べて特徴的な紅斑反応を示した。0.3%及び1.0%(v/v)エボジア混合体を含有するローションはニコチン酸メチル誘発紅斑を抑制するが、0.1%(v/v)においてはさしたる効果はなかった。一日二回の処置の二週間経過後、0.1%(v/v)エボジア混合体は、0.3%及び1.0%(v/v)ローションと共に、炎症反応を鎮静するのに効果的であった。
【0080】
これらの結果は、エボジア混合体は人体の皮膚におけるニコチン酸メチル誘発紅斑を低減させることを示している。ニコチン酸メチルは人体の皮膚にNO及びPG分泌を誘発することが知られているので、上述の結果は、エボジア混合体が皮膚における幾多のNO及びPG媒介症状(紫外線、環境刺激物により誘発されたもの、並びに内因性炎症体及びその症状を含む)の改善に有益であることを示している。
【0081】
ビサボロールは抗炎症ハーブカモミールにおける活性要素であって、局所薬として、また炎症反応を抑える茶に広く用いられている。エボジア混合体とビサボロールとを、各々をヒドロゲルローションに処方して、ビサボロールをエボジア混合体の活性の総量に等しくして比較した。その結果は、1%(v/v)エボジア混合体ローション(表4、60.8μg/ml)はニコチン酸メチル媒介紅斑の低減に有効であるが、ビサボールローション(61μg/ml)は効果がないことを示した。
【0082】
本発明の特定の実施例について説明及び図示したが、当業者には上述の開示事項から本発明の目的及び要旨を逸脱することなく、様々な変更例をなせることが自明であることを理解されたい。単なる一例として、添付の請求項は本発明の様々な特徴を列挙しているが、本発明はそれらの特徴の任意の及び全ての組み合わせを包含しており、このことは、そのような組み合わせが添付の請求項に記載されているか否かは問わないことを了承されたい。
【0083】
参考文献
エボジア果実抽出物及びその成分の研究
1. Jan Bergaman and Solveig Bergman. Studies of Rutaecarpine and Related Quinazolinocarboline Alkaloids. J. Org. Chem. 50: 1246-1255, 1985.
2. Subhash Chavan and R. Sivappa. A Facile Total Synthesis of Rutaecarpine. Tetrahedron Letters. 45: 997-999, 2004
3. Wen-Fei Chou, Jyh-Fei Liao, and Chieh-Fu Chen. Comparative Study on the Vasodilatory Effects of Three Quinazoline Alkaloids Isolated from Evodia rutaecarpa. J. Nat. Prod. 59: 374-378, 1996
4. Shyam Gupta. The Role of Phytopharmaceuticals in Topica Pain Relief. HAPPI December 2001, p110.
5. Yoshinori Kobayashi. The Nociceptive and Anti-Nociceptive Effects of Evodiamine from Fruits of Evodia rutaecarpa in Mice. Planta Med. 69: 425-428, 2003.
6. Yoshinori Kobayashi, Yumiko Nakano, Miho Kizaki, Kiyoko Hoshikuma, Yoshiharu Yokoo, and Toshikazu Kamiya. Capsaicin-Like Anti-Obese Activities of Evodiamine from Fruits of Evodia rutaecarpa, a Vanilloid Receptor Agonist. Planta Med. 67: 628-633, 2001.
7. Yoshinori Kobayashi, Kiyoko Hashikuma, Yumiko Nakano, Yoshiharu Yokoo, and Toshikazu Kamiya. The positive Ionotropic and Chronotropic Effects of Evodiamine and Rutaecarpine, Indoloquinazoline Alkaloids Isolated from the Fruits of Evodia rutaecarpa, on the Guinea-Pig Isolated Right Atria: Possible Involvement of Vanilloid Receptors. Planta Med. 67: 244-248, 2001.
8. Hedeaki Matsuda, Jian-xin Wu, Toshyuki Tanaka, Munekazu Iinuma, and Michinori Kubo. Antinociceptive Activities of 70% Methanol Extract of Evodia Fructus (Fruit of Evodia rutaecarpa var. bodinieri) and Its Alkaloidal Components Biol. Pharm. Bull. 20 (3) 243-248, 1997.
9. H. Matsuda, M. Yoshikawa, M. Linuma, M. Kubo. Antinociceptive and anti-inflammatory activities of limonin isolated from the fruits of Evodia rutaecarpavar. Bodinieri. Panta Med. May; 64(4):339-42, 1998.
10. T.C. Moon, M. Murakami, I. Kudo, K.H. Son, H.P. Kim, S.S. Kang, and H.W. Chang. A new class of COX-2 inhibitor, Rutaecarpine from Evodia rutaecarpa. Inflamm. Res. 48: 621-625, 1999.
11. Joen-Rong Sheu. Pharmaclological Effect of Rutaecarpine, and Alkaloid Isolated from Evodia rutaecarpa. Cardiovascular Drug Rev. 17:237-245, 1999.
12. Nikolaus Thuille, Manfred Fille, Markus Nagl. Bactericidal activity of herbal extracts. Int. J. Hyg. Environ,. Health. 206: 217-221, 2003.
13. H.G. Woo. C.H. Lee, M.S. Noh, JJ. Lee, Y.S. Jung, E.J. Baik, C.H. Moon, S.H. Lee. Rutaecarpine, a quinazolinocarboline alkaloid, inhibits prostaglandin production in raw264.7 macrophages. Planta Med. 67(6):505-9, 2001.
【0084】
ニコチン酸メチルの作用機構に関する研究
14. J. Coverly, L. Peters, E. Whittle and D. Basketter. Susceptibility to skin stinging, non-immunologic contact uticaria and acute skin irritation; is there a relationship? Contact Dermatitis 38:90-95, 1998.
15. I. Dutel, C. Queille, M. Poncet, J.P. Ortonne, and J. Czernielewski. Objective assessment of topical corticosteroids and non-steroidal anti-inflammatory drugs in methyl-nicotinate-induced skin inflammation. Clin. Exp. Dermatol 15:195-9, 1990.
16. N. Issachar, Y. Gall, M. Borrel and M-C. Poelman. Correlation between percutaneous penetration of methyl nicotinate and sensitive skin, using laser Doppler imaging. Contact Dermatitis 39:182-186, 1998.
17. J. D. Morrow, J. A. Awad, J. A. Oates, and L. J. Roberts, 1992, Identification of skin as a major site of prostaglandin D2 release following oral administration of niacin in humans. J. Invest. Dermatol. 98-812-5.
18. P. E. Ward, J. Sutherland, E. M. T. Glen, and A. I. M. Glen. 1998. Niacin skin flush in schizophrenia: a preliminary report. Schizophrenia Res. 29:269-74.
19. Jonathan Wilkin, Glenn Fortner, Linda Reinhardt, Otero Flowers, S. James Kilpatrick and W. Carson Streeter. Prostaglandins and nicotinate-provoked increase in cutaneous blood flow. Clin. Pharmacol Ther. 38:273-277, 1985.
【0085】
関連特許公報
1.米国特許5,598,421号及び6,214,831号は活性抑制を有するエボジアミン、ルテカルピン又はエボジアからの抽出物を包含する食物又は他の組成に関する。
【0086】
2.米国特許6,323,241号は勃起不全治療目的のための血管作用薬としてのエボジアルテカルパ抽出物の使用を開示している。
【0087】
3.米国特許6,239,114号は他の組成との混合体における抗癌剤としてのエボジン(ここではリモニンと称されている)の使用を開示している。
【0088】
上述の「エボジア果実抽出物及びその成分の研究」「ニコチン酸メチルの作用機構に関する研究」及び「関連特許公報」の欄に列挙した文献の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の皮膚炎を少なくとも部分的に回復に向わせるか、少なくとも部分的に抑制するかの何れか一方又は両方のために用いる医薬組成物であって、
a.少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドと、
b.ブチル化ヒドロキシトルエンと、
c.ブチレングリコール
を含む医薬組成物。
【請求項2】
哺乳類の皮膚炎を少なくとも部分的に回復に向わせるか、少なくとも部分的に抑制するかの何れか一方又は両方のために用いる医薬組成物であって、
a.少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドと、
b.ブチル化ヒドロキシトルエンと、
c.ブチレングリコール
を備えると共に、以下の(i)乃至(iv)、即ち、
(i)前記医薬組成物における前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドの混合濃度は少なくとも0.02μg/mlであり、且つブチル化ヒドロキシトルエンの濃度は少なくとも0.01mg/mlであること、
(ii)前記医薬組成物における前記aと前記bとの乾燥重量の合計は、前記医薬組成物における全固形物の重量の少なくとも10%であること、
(iii)550ナノメートルにおける前記医薬組成物の光吸収率を270ナノメートルにおけるその光吸収率で除した商は、0.01以下であること、及び
(iv)450ナノメートルにおける前記医薬組成物の光吸収率を400ナノメートルにおけるその光吸収率で除した商は、0.1以下であること、
のうちの少なくとも一つを備える医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物における前記aと前記bとの乾燥重量の合計は、前記医薬組成物における全固形物の重量の少なくとも90%である医薬組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物における前記bの乾燥重量の合計は、前記医薬組成物における全固形物の重量の少なくとも50%である医薬組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の医薬組成物は、以下の(i)乃至(ix)、即ち、
(i)前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドの混合濃度が約400乃至600μg/mlである医薬組成物であること、
(ii)前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドがルテカルピン、エボジアミン、デヒドロエボジアミン及びそれらの塩類からなるグループから個々に選択されるように設けられた医薬組成物であること、
(iii)エボジンを更に含む医薬組成物であること、
(iv)プロスタグランジンの生成を抑制する少なくとも一つの薬剤を更に含む医薬組成物であること、
(v)プロスタグランジンの生成を刺激する潜在性を有する少なくとも一つの薬剤を更に含む医薬組成物であること、
(vi)前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドの混合濃度は、炎症を少なくとも部分的に回復させるか、少なくとも部分的に抑制するかの何れか一方又は両方に有効である医薬組成物であること、
(vii)エマルジョンの形態である医薬組成物であること、
(viii)哺乳類の皮膚へ塗布するのに適する医薬組成物であること、及び
(ix)ヒトの皮膚へ塗布するのに適する医薬組成物であること、
のうちの少なくとも一つである医薬組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の医薬組成物は、以下の(i),(ii)及び(iii)、即ち、
(i)ブチル化ヒドロキシトルエンの濃度が少なくとも0.05mg/mlである医薬組成物であること、
(ii)ブチル化ヒドロキシトルエンの濃度が4乃至6mg/mlであり、前記医薬組成物における前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイドの混合濃度が約400乃至600μg/mlである医薬組成物であること、及び
(iii)前記少なくとも一つのインドールキナゾリンアルカロイド及び前記ブチル化ヒドロキシトルエンの混合濃度は、炎症を少なくとも部分的に回復させるか、少なくとも部分的に抑制するかの何れか一方又は両方に有効である医薬組成物であること、
のうちの少なくとも一つである医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の医薬組成物を調製する方法であって、
a.インドールキナゾリンアルカロイドを含む第1の成分を与える段階と、
b.ブチル化ヒドロキシトルエンを含む第2の成分を与える段階と、
c.ブチレングルコールを含む担体と溶媒とのうちの何れか一方又は両方を与える段階と、
d.第1の成分、第2の成分、及び前記担体と溶媒とのうちの何れか一方又は両方を用いて前記医薬組成物を調製する段階とを含み、
第1の成分におけるインドールアルカロイドの純度が50%以上である方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の医薬組成物を含む製剤を調製する方法であって、
a.インドールキナゾリンアルカロイドを含む第1の成分を与える段階と、
b.ブチル化ヒドロキシトルエンを含む第2の成分を与える段階と、
c.ブチレングルコールを含む担体と溶媒とのうちの何れか一方又は両方を与える段階と、
d.第1の成分、第2の成分、及び前記担体と溶媒とのうちの何れか一方又は両方を用いて前記製剤を調製する段階とを含み、
第1の成分におけるインドールアルカロイドの純度が50%以上である方法。
【請求項9】
請求項7又は8の方法において、以下の(i)及び(ii)、即ち、
(i)第1の成分におけるインドールキナゾリンアルカロイドの純度は90%以上であること、及び
(ii)前記インドールキナゾリンアルカロイドは、ルテカルピン、エボジアミン、デヒドロエボジアミン及びそれらの塩類からなるグループから個々に選択されること、のうちの少なくとも一つを更に含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−232991(P2012−232991A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154746(P2012−154746)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2007−527885(P2007−527885)の分割
【原出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(500362604)アプライド・ジェネティクス・インコーポレーテッド・ダーマティクス (2)
【Fターム(参考)】