説明

炭素繊維強化樹脂複合材及びその製造方法

【課題】軽量で、高強度であり、伝熱異方性及び保温性に富み、金属光沢を有する炭素繊維強化樹脂複合材及び炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法の提供。
【解決手段】少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層と、少なくとも1層の断熱層とを積層した炭素繊維強化樹脂複合材であって、前記断熱層が、単一の素材で平均表面粗さRaが0.3μm以下であるボイド含有糸からなる炭素繊維強化樹脂複合材である。前記断熱層が、ボイド含有糸の不織布、ニット、クロスなどであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂複合材及び炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンは、軽量で、伝熱に優れ、安価であるという特徴を有している。例えば、カーボンナノチューブの熱伝導率(W/m/K)は、ガラスを1とすると、3,000〜5,500である。しかし、前記カーボンは、このように伝熱性が良すぎるため、用途によっては弊害が生じることがある。
そこで、前記カーボンの伝熱性を制御するために、例えば、カーボンシートに断熱材を挟んで断熱効果を付与することが行われている。
このような断熱材として、例えば、熱伝導率の低いガラスからなるガラスファイバーなどが挙げられる。しかし、断熱材としてガラスファイバーを使用すると、重量が増加してしまうという問題があった。
【0003】
また、カーボンの構造による伝熱性の制御が行われている。このカーボンの構造による伝熱性の制御としては、例えば、グラファイトシート(層状構造)のように、伝熱異方性(面方向には伝熱するが、面に対し垂直方向(厚み方向)には伝熱しにくい)を付与することが挙げられる。しかし、カーボン単体で、伝熱性を制御すること、特に、伝熱異方性を付与することは限界がある。更に、カーボン単体では、条件によっては機械的強度が低下してしまうという課題もある。
【0004】
そこで、カーボンと他の材料を組み合わせたカーボン複合材について種々検討がなされている。例えば、カーボンを熱硬化性樹脂などと複合させたもので、軽くて高強度、高弾性である炭素繊維強化樹脂(CFRP)が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この提案の炭素繊維強化樹脂では、充分な伝熱異方性(断熱性)及び保温性は得られないという問題がある。
【0005】
一方、本願出願人は、先に、結晶性を有するポリマーのみからなり、内部に空洞を有する断熱性及び金属光沢のある糸及び該糸の製造方法について提案している(特許文献2参照)。そして、この空洞(ボイド)を有する糸の製造方法の一例として、ネッキングを生じさせることにより内部に空洞を有する糸(ボイド含有糸)を製造することが記載されている。
しかし、この提案では、前記ネッキングを生ずる糸状体の温度について検討されていないため、前記ネッキングの位置を制御できず、前記ネッキングの位置が移動する結果、糸状体が切れてしまうという問題がある。また、前記ネッキングの安定性を充分には制御できず、断面形状、平均直径などが均一なボイド含有糸を製造できないという問題があった。
【0006】
したがって、軽くて、高強度であり、断熱性及び保温性に富んだ炭素繊維強化樹脂複合材の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−299831号公報
【特許文献2】特開2009−191382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、軽量で、高強度であり、伝熱異方性及び保温性に富み、金属光沢を有する炭素繊維強化樹脂複合材及び炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層と、少なくとも1層の断熱層とを積層した炭素繊維強化樹脂複合材であって、
前記断熱層が、単一の素材で平均表面粗さRaが0.3μm以下であるボイド含有糸からなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂複合材である。
<2> 断熱層がボイド含有糸の不織布である前記<1>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材である。
<3> 断熱層がボイド含有糸を布状に織ったクロスである前記<1>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材である。
<4> 断熱層がボイド含有糸を綾織りしたクロスである前記<1>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材である。
<5> 断熱層がボイド含有糸を布状に編んだニットである前記<1>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材である。
<6> 糸状体をネック延伸してボイド含有糸を得ることを特徴とする炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法である。
<7> ボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱する前記<6>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法である。
<8> 炭素繊維強化樹脂層を加熱しながら加圧した後に、断熱層を積層して、その後に再度、断熱層に含まれるボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱しながら加圧する前記<6>から<7>のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、軽量で、高強度であり、伝熱異方性及び保温性に富み、金属光沢を有する炭素繊維強化樹脂複合材及び炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ネッキングの概略を示す図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、糸の斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける糸のA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける糸のB−B’断面図である。
【図3】図3は、本発明で用いる紡糸装置の一態様の概略図である。
【図4】図4は、本発明で用いる紡糸装置の一態様の概略図である。
【図5A】図5Aは、伝熱異方性及び保温性を評価するための測定装置の斜視図である。
【図5B】図5Bは、伝熱異方性及び保温性を評価するための測定装置の容器の上面図である。
【図5C】図5Cは、伝熱異方性及び保温性の評価を開始する際の、測定装置、及び測定サンプルの外観を示す図である。
【図5D】図5Dは、伝熱異方性及び保温性の評価中の測定装置、測定サンプルの配置、及び各温度センサーの配置を示す、上面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(炭素繊維強化樹脂複合材)
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材は、少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層と、少なくとも1層の断熱層とを積層してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0013】
<炭素繊維強化樹脂層>
前記炭素繊維強化樹脂層は、炭素繊維と、マトリックス樹脂とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0014】
−炭素繊維−
前記炭素繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、気相成長炭素繊維を用いることができるが、高強度糸が得られ易いPAN系炭素繊維が好ましい。前記PAN系炭素繊維の場合について、以下に説明する。
【0015】
紡糸法としては湿式、乾式、乾湿式等を採用できるが高強度糸が得られ易い湿式又は乾湿式が好ましく、特に乾湿式紡糸が好ましい。紡糸原液にはPAN系のホモポリマー又は共重合体の溶液あるいは懸濁液等を用いることができる。凝固、水洗、延伸、油剤付与されて前駆体原糸とし、更に、耐炎化、炭化、必要に応じて黒鉛化を行う。
【0016】
炭化又は黒鉛化条件としては、炭素繊維を得るためには不活性雰囲気中最高温度は1,400℃以上が好ましく、1,600℃以上がより好ましい。焼成温度が高いほど弾性率は向上するが、引張強度及び樹脂との接着強度が低下するとともに比重が増加するため最適化することが好ましく、1,400℃以上2,200℃以下がより好ましく、1,600℃以上2,000℃以下が更に好ましい。また、同一焼成温度で引張強度及び弾性率を向上させるために延伸を組み合わせることが好ましい。強度及び弾性率を向上させるために細繊度の炭素繊維が好ましく、炭素繊維の単繊維径で、7.5μm以下がより好ましく、6.5μm以下が更に好ましく、5.5μm以下が特に好ましい。
【0017】
得られた炭素繊維は、更に電解処理及びサイジング処理がなされることが好ましい。前記電解処理に用いられる電解質としては、硫酸、硝酸等の酸、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ、又はそれらの塩の溶液、好ましくは水溶液が使われる。乾湿式紡糸によって得られた炭素繊維の場合には、アルカリ又は塩の水溶液が好ましい。前記電解質としては、塩基性アミン類化合物又はアンモニウム塩を存在させることが有効であり、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等、又はそれらの混合物などが挙げられる。前記電解質のpHは8以上がより好ましい。前記pHが8未満であると、電解酸化により生成した黒鉛酸化物の溶解が小さく、マトリックス樹脂との接着が低下するおそれがある。
【0018】
前記電解処理の電気量は、使用する炭素繊維の弾性率により異なり、高弾性率炭素繊維の場合は、発達した表面の黒鉛構造を破壊するエネルギーが必要となるために、高い通電電気量が必要となる。しかし、一度に高電気量を流すと電圧が高くなり、安全上問題であるとともに、炭素繊維に欠陥が生じやすくなるという問題がある。したがって、1槽当たりの処理量を低くし処理槽数を多くする必要がある。具体的には、炭素繊維1g及び1槽当たりの電気量が2クーロン/g・槽以上100クーロン/g・槽以下が好ましく、2クーロン/g・槽以上80クーロン/g・槽以下がより好ましい。前記電気量が、2クーロン/g・槽未満であると、表層の結晶性の低下が充分に進まず、かつ処理槽数を多くする必要があり生産性が悪化することがある。一方、前記電気量が、100クーロン/g・槽を超えると、炭素繊維基質の強度低下が大きくなることがある。また、結晶性の低下を適度な範囲に維持する観点からは、通電処理の総電気量は、2クーロン/g以上1,000クーロン/g以下が好ましく、20クーロン/g以上500クーロン/g以下がより好ましい。処理時間については、数秒〜10数分が好ましく、10秒〜2分がより好ましい。
【0019】
また、前記電解処理を行った後、水洗及び乾燥する工程において、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易い。したがって、可能な限り低い温度で乾燥することが好ましく、具体的には、乾燥温度は、250℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。
【0020】
前記サイジング剤として用いられる化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エポキシ系サイジング剤が好ましく、これらの中でも、複数のエポキシ基を有する脂肪族化合物が特に好ましい。前記エポキシ基の数は炭素繊維とマトリックス樹脂との橋渡しを有効に行い、かつサイジング剤間の反応を抑制するため2個〜4個であるのが好ましい。また、サイジング剤の骨格は炭素繊維とマトリックス樹脂の界面に剛直で立体的に大きな化合物を介在させないため、分子鎖が直鎖状で柔軟性を有し、かつ分子量が小さいのが好ましい。具体的には、エポキシ当量は、80以上1,000以下が好ましく、90以上500以下がより好ましく、分子量は、100以上2,000以下が好ましく、200以上1,000以下がより好ましい。前記サイジング剤として用いられる化合物としては、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類,ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリエチレンオキサイドジグリシジルエーテル類、ポリプロピレンジグリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0021】
前記サイジング剤の付着量としては、炭素繊維単位質量当たり0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。前記付着量が、0.01質量%未満であると、炭素繊維とマトリックス樹脂との橋渡しが不充分で接着特性の向上効果が小さくなることがあり、5質量%を超えると、サイジング剤間の反応が多くなるために炭素繊維/マトリックス樹脂間にサイジング剤の重合物が占め、コンポジット特性が変化する恐れがあり好ましくない。
【0022】
前記サイジング剤に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトンなどが挙げられる。これらの中でも、取扱いが容易で防災の観点から水が特に好ましい。したがって、水に不溶又は難溶のエポキシ化合物には乳化剤、界面活性剤等を添加し水分散性にして用いるのが好ましい。
【0023】
前記サイジング剤付与処理を行った後、乾燥する工程における乾燥温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃がより好ましい。前記乾燥温度が、150℃未満であると、サイジング剤の溶媒が完全に除去できずコンポジットの接着特性に悪い影響を及ぼす恐れがあり、かつ乾燥時間が長くなり工業上実際的でない。また、350℃以上であるとサイジング剤の硬化が進み、炭素繊維束が固くなって束の拡がり性が悪化するために、良好なコンポジットの成形ができなくなる恐れがある。
【0024】
−マトリックス樹脂−
前記マトリックス樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0025】
前記エポキシ樹脂としては、芳香族骨格を主体とした2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールAやビスフェノールFを骨格としたグリシジルエーテル型2官能樹脂、フェノールノボラックを骨格としたグリシジルエーテル多官能樹脂、メチレンジアニリンを置換したグリシジルアミン型の4官能樹脂、アミノフェノールをグリシジル基で置換した3官能エポキシ樹脂、脂肪族骨格のエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、反応性希釈剤と呼ばれる1官能性エポキシ樹脂、などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルフォン、フェニレンジアミン等の芳香族骨格アミン、ジシアンジアミド等のアミン系硬化剤、ビスフェノール化合物やフェノールノボラック等の分子内に2個以上のフェノール性OH基を持つ多価フェノール系の硬化剤、カルボン酸無水物系の硬化剤などが挙げられる。これらの中でも、ジアミノジフェニルスルフォンが硬化樹脂の耐熱性の観点から特に好ましい。変性剤成分としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリビニルフォルマール等のエポキシ樹脂に可溶なポリマーが、硬化後に相分離を起こさない範囲で添加することができる。
【0026】
前記炭素繊維は、前記マトリックス樹脂と組み合わされ、例えば、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインド法などの公知の方法により炭素繊維強化樹脂層が形成される。
【0027】
前記炭素繊維強化樹脂層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
【0028】
<断熱層>
前記断熱層の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記断熱層は、前記炭素繊維強化樹脂層と積層される。前記断熱層の位置としては、表層でもよく、中層であってもよいが、積層体強度確保の点から最表層が好ましい。
【0029】
前記断熱層は、ボイド含有糸からなる。
前記ボイド含有糸は、その内部に空洞を有する糸である。
前記空洞とは、前記空洞を有する糸内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。前記空洞は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真により確認することができる。
前記ボイド含有糸は、単一の素材(核材が不使用で、結晶核を基点に空洞を生成したもの)で糸の平均表面粗さRaは、0.3μm以下であり、0.05μm〜0.1μmが好ましい。前記平均表面粗さRaが、0.3μmを超えると、クロスに織る際に、切断等のトラブルが発生しやすくなることがある。
前記平均表面粗さRaは、例えば、コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製)などにより測定することができ、JIS B0601に準じて求めることができる。なお、前記平均表面粗さRaは、一般に、算術平均粗さと称されることもある。
【0030】
前記ボイド含有糸は、前記空洞を延伸方向に配向した状態で有してなり、該空洞のアスペクト比が特定範囲であることが好ましい。
前記アスペクト比とは、前記空洞の平均長さをL(μm)とし、前記空洞の配向方向と直交方向における該空洞の平均径をr(μm)とした際のL/r比(以下、「アスペクト比」と省略することがある。)を意味する。
前記アスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が特に好ましい。
【0031】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞を有する糸の斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞を有する糸のA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞を有する糸のB−B’断面図である。
【0032】
前記空洞を有する糸の製造工程において、前記空洞は、通常、延伸方向に沿って配向する。したがって、前記空洞の平均長さL(μm)は、空洞を有する糸10の表面10aに垂直で、かつ、前記延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。また、前記空洞の平均径r(μm)は、空洞を有する糸10の表面10aに垂直で、かつ、延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。
【0033】
なお、前記紡糸方法においては、前記糸状体の搬送方向に沿ってネッキング延伸を行うため、このネッキング延伸の方向が前記延伸方向に相当する。
【0034】
ここで、前記空洞の平均長さL(μm)は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の平均径r(μm)は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0035】
前記空洞の配向方向と直交方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が特に好ましい。
【0036】
前記紡糸方法において、前記空洞は、通常、前記延伸方向に沿って配向する。したがって、前記空洞の配向方向と直交方向における前記空洞の個数は、前記空洞を有する糸10の表面10aに垂直で、かつ、前記延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記空洞の配向方向と直交方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0037】
前記ボイド含有糸の平均直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜500μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、20μm〜50μmが更に好ましい。前記平均直径が、10μm未満であると、糸切れが起こりやすく、安定して連続製造することが難しくなることがあり、500μmを超えると、糸が剛直であるため、織物などに加工した際にゴワゴワして風合いが悪くなることがあり、また、糸を加工して得られる織物をインサート成形など二次加工する場合に形状が追随しにくいことがある。前記平均直径が、前記特に好ましい範囲であると、しなやかさ、加工性、及び風合いに優れる点で有利である。
【0038】
前記糸の平均直径は、例えば、キーエンス社製デジタル寸法測定器〔LS−7600(コントローラー部)、LS−7010M(測定部)〕やミツトヨ社製のデジタルマイクロメータ(293−230MDC−25MJ)などを用いて、前記糸の直径を20点測定した際の平均値である。
【0039】
前記糸の反射率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40%〜90%が好ましく、40%〜80%がより好ましく、40%〜60%が更に好ましい。前記反射率が、前記特に好ましい範囲内であると、金属様光沢を有しかつ高級感のある風合いがある糸が得られる点で有利である。
【0040】
ここで、前記反射率は、日本分光株式会社製「V−570」に積分球を取り付けて波長200nmから2,500nmの範囲でスキャンした際の波長550nmにおける反射率である。また、装置付属の標準白板の測定値を100%とした。なお、得られた糸を平織りにして布形状に加工したものを測定試料とした。織る際には、糸1本当り100gから200g程度の荷重を掛けて、充分に厚密化した。
【0041】
前記断熱層としては、前記ボイド含有糸の不織布、前記ボイド含有糸を布状に織ったクロス、前記ボイド含有糸を布状に編んだニットなどから構成されることが好ましい。
前記クロスとしては、綾織、平織、朱子織などが挙げられる。これらの中でも、ボイド繊維に不要な曲げストレスを加えない点で綾織りしたクロスであることが好ましい。
前記平織は、たて糸とよこ糸が1本ごとに交互に浮き沈みして交錯する組織となる織り方である。
前記綾織は、平織のように交互に浮き沈みさせて交差させず、縦糸を横糸の上を2本あるいは3本通し、その後、横糸の下を1本交差させて織られる織り組織のことである。組織点が斜めに連続して、綾線を表すのが特徴で、意匠性にも優れる。通常は、織り線は右上がりのパターンを表とする場合が多い。例えば、糸の太さと密度が同じ場合には、綾線は45°である。
【0042】
前記断熱層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.03mm〜3.0mmが好ましい。
【0043】
(炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法)
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法は、糸状体をネック延伸してボイド含有糸を得る工程(断熱層形成工程)を少なくとも含み、炭素繊維強化樹脂層形成工程、複合化工程を含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0044】
<断熱層形成工程>
前記断熱層形成工程は、ボイド含有糸からなる断熱層を形成する工程であり、前記ボイド糸は、糸状体をネック延伸して得られる
【0045】
−糸状体−
前記糸状体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
前記糸状体は、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などを含有していてもよい。また、延伸後に、得られる糸内に空洞を作製させるための、無機微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を含有していてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマー、非晶性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリマーが、無機微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を使用せずに空洞を有する糸が得られる点で好ましい。
【0046】
−結晶性ポリマー−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非晶性(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0047】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン類(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、アイソタクティックポリプロピレン(isoPP)などが挙げられる。これらの中でも、耐久性、力学強度、製造及びコストの観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリオレフィン類、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0048】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が、前記好ましい範囲であると、溶融押出時に溶融押出口金(ノズル)から吐出される溶融体の形状が安定し、均一な径の糸状体にしやすくなる点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。
ここで、前記溶融粘度は、例えば、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0049】
前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.3が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記極限粘度(IV)が、前記好ましい範囲であると、得られる糸状体の引張強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。
ここで、前記IVは、例えば、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0050】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好ましく、100℃〜260℃が更に好ましい。前記融点が、前記好ましい範囲であると、通常の使用で予想される温度範囲で径を保ちやすくなる点、また、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な紡糸ができる点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。
ここで、前記融点は、例えば、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0051】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とするポリマーの総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られるポリマーが全て含まれる。
【0052】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0053】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0054】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0055】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0056】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0057】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時に空洞を発現し易いが、前記溶融粘度が、前記好ましい範囲であると、溶融押出時に口金からの押出がしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しにくくなり、品質が安定したりする点、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しにくくなる点、及び、押出時に口金から吐出されるポリマーの形態が維持しやすくなって、安定的に紡糸できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。
【0058】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.3が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時に空洞を発現し易いが、前記IVが、前記好ましい範囲であると、溶融押出時に口金からの押出がしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。更に、前記IVが、前記好ましい範囲であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。加えて、前記IVが、前記好ましい範囲であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で有利であり、前記特に好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる点で有利である。
【0059】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性などの観点から70℃〜300℃が好ましく、90℃〜270℃がより好ましい。
【0060】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0061】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、溶融押出時に物性が高まり、押し出しやすくなる点で好ましい。
【0062】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0063】
前記糸状体は、X線回折において結晶性ピークの半値幅が確認できることが好ましい。前記半値幅としては、2θとして9°未満が好ましく、7°以下がより好ましく、5°以下が特に好ましい。前記半値幅が、9°以上であると、空洞を有する糸を得ることが困難である。前記半値幅が、特に好ましい範囲であると、光輝性の優れた外観の空洞を有する糸を安定した品質で製造できる点で有利である。
【0064】
前記半値幅は、例えば、X線回折装置(RINT TTR III、リガク社製)により測定することができる。
【0065】
前記糸状体の平均直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜500μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、20μm〜50μmが更に好ましい。前記平均直径が、10μm未満であると、糸切れが起こりやすく、安定して連続製造することが難しくなることがある。また、糸の表面と内部での冷却速度の差が小さくなり、空洞を有する糸を作製する際に、空洞(ボイド)が発生しにくくなることがあり、500μmを超えると、得られる糸が剛直であるため、織物などに加工した際にゴワゴワして風合いが悪くなることがあり、また、糸を加工して得られる織物をインサート成形など二次加工する場合に形状が追随しにくいことがある。前記平均直径が、前記特に好ましい範囲であると、得られる糸がしなやかさ、加工性、及び風合いに優れる点で有利である。
【0066】
前記糸状体の平均直径は、例えば、キーエンス社製デジタル寸法測定器〔LS−7600(コントローラー部)、LS−7010M(測定部)〕や、ミツトヨ社製のデジタルマイクロメータ(293−230MDC−25MJ)などを用いて、前記糸状体の直径を20点測定した際の平均値である。
【0067】
前記糸状体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶融紡糸、乾式紡糸などが挙げられる。
前記溶融紡糸としては、例えば、溶融押出機を用いて、原料を溶融させた後、該原料を断面形状が円形の口金から押し出し、引き取りながら、冷却水槽中で固化させる方法が挙げられる。
前記溶融紡糸は、口金の温度と冷却水の温度を調整し、それぞれの温度偏差を5℃以下に抑制しながら行うことが、糸状体の結晶化度を安定させる点で、好ましい。
【0068】
前記糸状体に対し張力を付与する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速ロールと高速ロールとを有する張力付与手段、ロールと巻取り機とを有する張力付与手段、無端ベルトと巻取り機とを有する張力付与手段、糸状体を押し出すオリフィスと巻取り機とを有する張力付与手段などが挙げられる。これらの中でも、低速ロールと高速ロールとを有する張力付与手段が、前記糸状体に対し安定した張力を付与できる点で好ましい。
【0069】
前記低速ロールと高速ロールとを有する張力付与手段による張力の付与は、例えば、前記低速ロールと前記高速ロールを用いた前記糸状体の搬送において、前記糸状体の搬送方向の上流側に前記低速ロールを配置し、下流側に前記高速ロールを配置し、これらロールに接触するように前記糸状体を搬送させ、これらロールの周速差を用いて行われる。
【0070】
前記糸状体の搬送速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記低速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度としては、前記高速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度より低速であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1m/分〜200m/分が好ましく、0.5m/分〜100m/分がより好ましく、1m/分〜20m/分が更に好ましい。前記搬送速度が、0.1m/分未満であると、速度ムラが発生しやすく、空洞を有する糸を作製する際に安定的に空洞(ボイド)が発現しないことがあり、また、搬送速度が遅いために生産性に劣ることがあり、200m/分を超えると、ネッキング延伸の位置が安定せずに糸切れが起こり易くなることがある。前記搬送速度が、前記特に好ましい範囲であると、高い生産性で安定したネッキング延伸ができる点で有利である。
前記高速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度としては、前記低速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度より高速であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5m/分〜2,000m/分が好ましく、50m/分〜1,500m/分がより好ましく、100m/分〜1,000m/分が更に好ましい。前記搬送速度が、0.5m/分未満であると、空洞を有する糸を作製する際に安定的に空洞(ボイド)が発現しないことがあり、2,000m/分を超えると、ネッキング延伸の位置が安定せずに糸切れが起こり易くなることがある。前記搬送速度が、前記特に好ましい範囲であると、安定して高速延伸ができる点で有利である。
【0071】
ここで、前記低速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度は、前記低速ロールの周速と同じ速度のため、前記低速ロールの周速から求めることができる。また、前記高速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度は、前記高速ロールの周速と同じ速度のため、前記高速ロールの周速から求めることができる。
【0072】
前記低速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度(l)と、前記高速ロールに接する位置における前記糸状体の搬送速度(h)との比(h/l)としては、1.0を超えれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(h/l)=2〜20が好ましく、4〜15がより好ましく、4〜10が更に好ましい。前記比が、2未満であると、空洞を有する糸の作製の際に空洞(ボイド)が発生しにくいことがあり、20を超えると、糸切れが起こり易くなることがある。前記比が、前記特に好ましい範囲であれば、安定的に連続製造できる点で有利である。
【0073】
前記低速ロールと高速ロールとを有する張力付与手段は、更にニップロールを有していることが好ましい。前記ニップロールと、前記低速ロール及び前記高速ロールのいずれかとで前記糸状体をニップすることで、前記糸状体に張力を安定して付与できる。
【0074】
前記低速ロール、前記高速ロール、及び前記ニップロールの構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、曲率の大きいロールが好ましい。
前記低速ロール、前記高速ロール、及び前記ニップロールの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状が挙げられる。
前記低速ロール、前記高速ロール、及び前記ニップロールの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属に各種メッキを付したもの、ステンレス、シリコーンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、NBR、各種エラストマーなどが挙げられる。
【0075】
また、前記低速ロールと高速ロールとを有する張力付与手段は、更に補助ロールを有していることが好ましい。前記補助ロールを有することで、前記糸状体へ張力を均一に付与できる。
【0076】
前記張力付与処理により前記糸状体に付与される張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5MPa〜40MPaが好ましく、10MPa〜30MPaがより好ましく、10MPa〜20MPaが特に好ましい。前記張力が、5MPa未満であると、延伸ムラが発生し易いことがあり、40MPaを超えると、糸切れが起こり易くなることがある。前記張力が、前記特に好ましい範囲であると、安定して高速延伸ができる点で有利である。
ここで、前記張力は、糸状体の張力を示す。
【0077】
前記ネック延伸は、ネッキング発生手段により行うことができる。
ここで、前記ネッキングとは、延伸の際に糸状体の狭い範囲において生じるくびれである。ネッキングの概略を図1に示す。図1において、Wは前記糸状体の直径を示し、Wは糸(延伸後の糸)の直径を示し、Lはネッキングが生じている糸状体の範囲の長さである。通常、ネッキング延伸においては、Lの長さは、1mm〜5mmとなる。
【0078】
前記ネッキング発生手段としては、張力が付与された前記糸状体の一部を、前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度から糸状体にネッキングが生ずる温度に昇温させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0079】
前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度とは、前記張力が付与された状態において前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度であり、例えば、糸状体のガラス転移温度(Tg)以下の温度である。
前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、冷却手段を用いて前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度に保持する方法が挙げられる。
前記冷却手段により前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度に冷却することにより、ネッキングの位置を、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された糸状体近傍に移動させ、固定させることができる。
ここで、前記糸状体の直径が実質的に変化しないとは、糸状体の平均直径の変化率が3%以下であることをいう。
ここで、前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差熱分析装置(DSC)などにより測定することができる。
【0080】
前記冷却手段としては、張力が付与された前記糸状体を糸状体の直径が実質的に変化しない温度に冷却できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、冷却可能な部材、冷風発生装置、前記紡糸装置を設置した部屋自体を冷却温度に設定することなどが挙げられる。これらの中でも、小型かつ前記糸状体を確実に冷却可能な点から、冷却可能な部材が好ましい。
【0081】
前記冷却可能な部材としては、その部材自体が冷却されることにより、前記糸状体を冷却できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面にフッ素樹脂等で易滑処理をしたアルミニウムブロック、内部を冷媒が循環する無機部材、電子冷却を用いた冷却素子を張り付けた無機部材などが挙げられる。
前記無機部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導率が高く、かつ安価である点で、真鍮、銅、アルミニウム、鉄、ステンレスが好ましい。また、滑り性、耐摩耗性に優れる点から、セラミックが好ましい。
前記冷媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、冷却された気体、液体などが挙げられる。前記冷却された気体としては、例えば、冷却された空気が挙げられる。前記冷却された液体としては、例えば、冷却された水や不凍液などが挙げられる。
前記冷却可能な部材による前記糸状体の冷却は、例えば、前記糸状体を前記冷却可能な部材に接触させながら搬送することにより行うことができる。
【0082】
前記冷却可能な部材の大きさ、構造、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記冷却可能な部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円弧状の凸面を有する冷却可能な部材が、前記糸状体が接触し易く前記糸状体の温度を制御し易い点で好ましい。
【0083】
前記略円弧状の凸面を有する冷却可能な部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円弧状の凸面の端部が前記糸状体に接触しない構造の冷却可能な部材が、前記糸状体が前記端部に接触して切れることを防止できる点で好ましい。
【0084】
前記冷却可能な部材を用いる際には、前記糸状体が前記冷却可能な部材に接触した状態であることが、前記糸状体の温度を制御し易い点で好ましい。
【0085】
前記冷風発生装置としては、前記糸状体に冷風を当てることができる装置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記冷風発生装置は、防塵フィルターを有していることが好ましい。防塵フィルターを設けることにより、冷風に含まれる塵、埃などを取り除くことができ、塵、埃などの付着がない、きれいな糸を製造することができる。
前記冷風発生装置による前記糸状体の冷却は、例えば、搬送されている前記糸状体の一部に乾燥冷風を吹き付けることにより行うことができる。
【0086】
前記冷却手段により冷却される前記糸状体の冷却温度としては、糸状体の直径が実質的に変化しない温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、糸状体のガラス転移温度以下が好ましく、糸状体のガラス転移温度より10℃以上低い温度がより好ましく、糸状体のガラス転移温度より80℃低い温度から糸状体のガラス転移温度より10℃低い温度の範囲の温度が特に好ましい。前記冷却温度が、糸状体のガラス転移温度を超えると、ネッキング延伸の位置が加熱装置上から外れて糸切れが発生することがある。前記冷却温度が、前記特に好ましい範囲であると、加熱装置上で安定的にネッキング延伸ができる点で有利である。
【0087】
前記ネッキングが生ずる温度とは、前記張力が付与された状態において前記糸状体にネッキングが生ずる温度であり、例えば、糸状体のガラス転移温度より80℃低い温度から糸状体のガラス転移温度より50℃高い温度の範囲の温度である。
前記ネッキングが生ずる温度にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段によりネッキングが生ずる温度にする方法が挙げられる。
【0088】
前記加熱手段としては、張力が付与された前記糸状体をネッキングが生ずる温度に加熱できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱可能な部材、加熱気体、炭酸ガスレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、前記加熱可能な部材が好ましい。
【0089】
前記加熱可能な部材としては、その部材自体が加熱され、当該部材に糸状体を接触させることにより、前記糸状体を加熱できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、渦電流を用いた加熱装置、電気ヒーター、内部を熱媒が循環する金属部材などが挙げられる。
前記熱媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱された気体、液体などが挙げられる。前記加熱された気体としては、例えば、加熱された空気が挙げられる。前記加熱された液体としては、例えば、加熱された水や熱媒油などが挙げられる。
【0090】
前記加熱可能な部材の大きさ、構造、材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記加熱可能な部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円弧状の凸面を有する加熱可能な部材が、前記糸状体が接触し易く前記糸状体の温度を制御し易い点で好ましい。
【0091】
前記略円弧状の凸面を有する加熱可能な部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円弧状の凸面の端部が前記糸状体に接触しない構造の加熱可能な部材が、前記糸状体が前記端部に接触して切れることを防止できる点で好ましい。
【0092】
前記加熱可能な部材を用いる場合、前記糸状体が前記加熱可能な部材に接触した状態であることが、前記糸状体の温度を制御し易くする点、及びネッキング開始点を安定化させる点で好ましい。
【0093】
前記加熱気体としては、前記糸状体を加熱できる気体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱風などが挙げられる。前記熱風は、例えば、熱風炉により発生させることができる。
【0094】
前記加熱手段により加熱される前記糸状体の加熱温度としては、糸状体にネッキングが生ずる温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、糸状体のガラス転移温度より80℃低い温度から糸状体のガラス転移温度より50℃高い温度の範囲の温度が好ましく、糸状体のガラス転移温度より20℃低い温度から糸状体のガラス転移温度より40℃高い温度の範囲の温度がより好ましい。前記加熱温度が、糸状体のガラス転移温度より80℃低い温度未満であると、ネッキングが生じると同時に糸が切れ易いことがあり、糸状体のガラス転移温度より50℃高い温度を超えると、ネッキングが生じずに延伸してしまうことがある。前記加熱温度が、前記より好ましい範囲であると、ネッキングが生じ易くなるとともに、空洞を有する糸を作製する際に空洞(ボイド)が発生し易くなる点で有利である。
【0095】
−−温度差−−
前記ネッキング発生処理における、前記糸状体の直径が実質的に変化しない温度(A)と前記糸状体にネッキングが生ずる温度(B)との温度差(B−A)の絶対値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5℃〜100℃が好ましく、10℃〜50℃がより好ましく、20℃〜40℃が特に好ましい。前記温度差が、5℃未満であると、ネッキングの起点が安定せずにムラになることがあり、100℃を超えると、糸状体が切れ易くなったり、ネッキングが発現し難くなることがある。前記温度差が、前記特に好ましい範囲であると、ネッキングが安定して発生する点で有利である。
また、前記糸状体の材質が、ポリエステル樹脂である場合には、前記温度差としては、40℃〜80℃が好ましく、40℃〜60℃がより好ましく、10℃〜40℃が特に好ましい。前記温度差が、10℃未満であると、ネッキングの起点が安定しなくなり、得られる糸の直径にばらつきが出易くなることがあり、80℃を超えると、頻繁に切断したり、ネッキングが発現しにくくなることがある。前記温度差が、前記特に好ましい範囲であると、安定してネッキング延伸ができる点で有利である。
【0096】
前記ネッキング発生処理において、ネッキングが生ずる温度に昇温させた前記糸状体にネッキングを生じさせ、前記糸状体をネッキング延伸するとともに、該ネッキングの位置を、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体近傍に移動させ、固定させることが、ネッキングの位置を制御し易い点から好ましい。
前記ネッキングの位置を、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体近傍に移動させ、固定させる方法としては、例えば、前記糸状体の搬送方向の下流側でネッキングを生じさせた後、ネッキングの位置を、次第に、ネッキングを生じた位置よりも前記糸状体の搬送方向の上流側であって、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体近傍にまで移動させて、その位置にネッキングの位置を固定させる方法が挙げられる。
【0097】
ここで、図3及び図4の紡糸装置を用いて、ネッキングの位置を、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体近傍に移動させ、固定させる方法について、一例を説明する。
図3の紡糸装置は、低速ロール3、高速ロール4、加熱可能な部材(加熱手段)6a、ニップロール7、補助ロール8を有する。
図4の紡糸装置は、低速ロール3、高速ロール4、冷却可能な部材(冷却手段)5、加熱可能な部材(加熱手段)6a、ニップロール7、補助ロール8を有する。前記冷却可能な部材5は、略円弧状の凸面を有し、内部を冷媒が循環する金属部材であり、前記略円弧状の凸面は糸状体2に接触するが、前記略円弧状の凸面の端部は糸状体2に接触しない構造となっている。前記加熱可能な部材6aは、略円弧状の凸面を有し、内部を熱媒が循環する金属部材であり、前記略円弧状の凸面は糸状体2に接触するが、前記略円弧状の凸面の端部は糸状体2に接触しない構造となっている。
【0098】
前記ネッキングの位置を、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体近傍に移動させ、固定させる方法としては、まず、糸状体2を前記低速ロール3と前記高速ロール4との間で搬送させる。この際、前記低速ロール3よりも前記高速ロール4の周速を速くすることにより、前記糸状体2を、前記低速ロール3側から前記高速ロール4側に搬送させる。また、前記低速ロール3と前記高速ロール4の周速差により、前記糸状体2に張力を付与する。前記低速ロール3と前記ニップロール7により前記糸状体2をニップし、更に前記高速ロール4と前記ニップロール7により前記糸状体2をニップすることにより、前記糸状体2には張力が安定して付与される。
続いて、搬送している前記糸状体2の一部を、前記冷却可能な部材5に接触させることにより、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に冷却する。続いて、糸状体の直径が実質的に変化しない温度に冷却された前記糸状体2の一部を、前記糸状体2の搬送により移動させ、前記加熱可能な部材6aに接触させて、ネッキングが生ずる温度に昇温する。この昇温により、前記糸状体2にネッキングが生じ、前記糸状体2はネッキング延伸される。
この際に、ネッキングは、前記糸状体2の搬送方向の下流側(図4のbの位置)で生じ、ネッキング延伸が開始する。そして、ネッキング延伸を続けると、ネッキングの位置は、前記糸状体2の搬送方向の上流側であって、前記冷却可能な部材5により糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された前記糸状体2近傍(図4のaの位置)に遡るように移動し、ネッキングの位置は前記位置(図4のaの位置)で固定される。
【0099】
前記紡糸方法により得られる糸の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーのみからなるものであってもよいし、結晶性ポリマー以外のその他の成分を含むものであってもよい。これらの中でも、前記糸が前記結晶性ポリマーのみからなることが、得られる糸が空洞を有する糸であり、かつ前記空洞を有する糸を安定した品質で製造できる点で好ましい。
【0100】
ここで、結晶性ポリマーのみからなる前記糸は、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分が検出されるかどうかで判別できる。
【0101】
<炭素繊維強化樹脂層形成工程>
前記炭素繊維強化樹脂層形成工程は、少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層を形成する工程であり、上述したように、プリプレグ法、ハンドレイアップ法などが挙げられる。
前記プリプレグ法は、前記炭素繊維を一方向、織物、ヤーンあるいはマットなどの形態のものにマトリックス樹脂を含浸し、炭素繊維強化樹脂プリプレグを得た後、該プリプレグを積層、巻き付けなどの賦型工程を経て、プレス、オートクレーブ、又はラッピング成形などの方法によって加熱成形される。
前記ハンドレイアップ法は、型に炭素繊維を敷き、硬化剤を混合した樹脂を脱泡しながら多重積層して作製する方法である。
【0102】
<複合化方法>
少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層と、少なくとも1層の断熱層とを積層し、複合化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)炭素繊維強化樹脂層に断熱層を積層し、この積層体を、前記断熱層を構成するボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱しながら加圧する方法、(2)炭素繊維強化樹脂層を加熱しながら加圧した後に、断熱層を積層して、その後に再度、断熱層に含まれるボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱しながら加圧する方法、などが挙げられる。
ここで、前記ボイド含有糸のガラス転移温度は、例えば、示差熱分析装置(DSC)などにより測定することができる。
【0103】
以上により製造された炭素繊維強化樹脂複合材の比重としては、1.45〜1.60が好ましい。前記比重が、前記好ましい範囲であると、軽量で、かつ機械的強度の高い炭素繊維強化樹脂複合材を得ることができる。
前記比重は、例えば、水中置換法などにより測定することができる。
【0104】
前記炭素繊維強化樹脂複合材の引張強度としては、160N/mm〜450N/mmが好ましい。前記引張強度が、前記好ましい範囲であると、軽量で、かつ機械的強度の高い炭素繊維強化樹脂複合材を得ることができる。
前記引張強度は、例えば、島津製作所のプラスチック引張試験システムSSG式などを用いて測定することができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
(製造例1)
<糸状体Aの製造>
メルトフローレート(Melt flow rate(MFR))=4g/10minであるPP(ポリプロピレン100%樹脂)を、溶融押出機を用いて280℃で断面形状が円形の口金から押し出し、ライン速度25m/分で引き取りながら25℃の冷却水槽中で固化させて、平均直径220μmの糸状体Aを得た。
【0107】
<糸状体の延伸>
得られた糸状体Aについて、図3に示す紡糸装置を用いて、ネッキング延伸した。
まず、低速ロール3に接する位置における前記糸状体Aの搬送速度を20m/分、高速ロール4に接する位置における前記糸状体Aの搬送速度を101m/分とし、前記糸状体Aを前記低速ロール3から前記高速ロール4に向かって搬送させた。この際、前記糸状体Aに17MPaの張力を付与した。また、前記糸状体Aは、加熱可能な部材6aに接触するように搬送させた。
前記糸状体Aを搬送させつつ、前記加熱可能な部材6aよりも前記糸状体Aの搬送方向の上流側において、前記糸状体Aの一部を、25℃(糸状体の直径が実質的に変化しない温度)にした。25℃の前記糸状体Aの一部を、前記糸状体Aの搬送により搬送方向の下流側に移動させ、前記加熱可能な部材6aに接触させ40℃(ネッキングが生ずる温度)に昇温した。
これら処理により、前記糸状体Aにネッキングが生じた。ネッキングの位置は、ネッキング延伸を開始した直後には、図3のbの位置であったが、ネッキング延伸を続けると、図3のaの位置(糸状体の直径が実質的に変化しない温度に維持された糸状体A近傍)まで遡るように移動し、その位置で固定され、その後は移動しなくなった。
ネッキング延伸している際に、前記糸状体Aが切れることはなく、安定して紡糸できた。
得られたボイド含有糸の平均直径は40μmであった。なお、糸状体Aの外観は透明だが、延伸により得られた空洞を有する糸の外観は銀色であった。そのため、延伸中の糸状体の外観を目視で観察することにより、ネッキングの位置は、容易に確認できた。
【0108】
得られたボイド含有糸について、以下のようにして、結晶性ピークの半値幅、糸のガラス転移温度、糸の平均表面粗さRa、糸状体及び糸の平均直径、糸の直径のばらつき、空洞の有無、及び反射率を測定した。結果を表1に示す。
次に、得られたボイド含有糸10本を束にし、綾織りにして布形状に加工した。以上により、厚み0.3mmの製造例1のボイド含有糸を綾織りした布(断熱層材料)を作製した。
【0109】
<結晶性ピークの半値幅の測定>
得られた糸状体を幅25mmにわたってガラス試料ホルダー上に貼り付け、X線回折装置(RINT TTR III、リガク社製)を用いて、以下の測定条件で測定後、結晶性ピ−クと非晶性ピ−ク(2θ=20°)のピーク分離を行い、各ピ−クの半値幅を測定した。
〔測定条件〕
・X線強度 :50kV−300mA
・発散スリット :開放
・発散縦スリット :10mm
・散乱スリット :0.05mm
・受光スリット :0.15mm
・スキャン速度 :4°/min
・スキャン範囲 :2θ=5°〜60°
【0110】
<糸のガラス転移温度(Tg)の測定>
得られた糸のガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析装置(SII社製、DSC220)により測定した。
【0111】
<糸の平均表面粗さRa>
糸の平均表面粗さRaは、コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて、糸の長さ方向に50mm間隔で測定した10点の表面粗さを平均して求めた。
【0112】
<糸状体及びボイド含有糸の平均直径、並びにボイド含有糸の直径のばらつき>
キーエンス社製デジタル寸法測定器(LS−7600(コントローラー部)、LS−7010M(測定部))を用いて、糸状体及びボイド含有糸の任意の位置で、糸状体及びボイド含有糸の直径を20cm毎に20点測定し、その平均値を平均直径とした。また、ボイド含有糸の直径の20点の測定値から標準偏差(σ)を算出した。
【0113】
<空洞の有無>
包埋樹脂であるエポキシ樹脂で包埋したボイド含有糸を、ミクロトームを使って断面を露出させた後、走査型電子顕微鏡により撮影した写真を観察して、空洞の有無を確認した。
【0114】
<アスペクト比>
ボイド含有糸の表面に垂直で、かつ、延伸方向(ネッキング延伸方向)に直角な断面(図2B参照)と、前記ボイド含有糸の表面に垂直で、かつ、前記延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において計測枠をそれぞれ設定した。この計測枠は、その枠内に空洞が50個〜100個含まれるように設定した。
次に、計測枠に含まれる空洞の数を計測し、前記延伸方向に直角な断面の計測枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記延伸方向に平行な断面の計測枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記延伸方向に直角な断面の計測枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚み(r)を測定し、その平均の厚みを平均径rとした。また、前記延伸方向に平行な断面の計測枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(1)式及び(2)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(1)
L=(ΣL)/n ・・・(2)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0115】
<反射率>
日本分光社製「V−570」に積分球を取り付けて波長200nmから2,500nmの範囲でスキャンした際の波長550nmにおける反射率を測定した。また、装置付属の標準白板の測定値を100%とした。なお、得られたボイド含有糸を平織りにして布形状に加工したものを測定試料とした。織る際には糸1本当り100gから200g程度の荷重を掛けて、充分に厚密化した。
【0116】
(製造例2)
製造例1において、得られたボイド含有糸を平織りにして布形状に加工した以外は、製造例1と同様にして、厚み0.3mmの製造例2のボイド含有糸を平織りした布(断熱層材料)を作製した。
【0117】
(製造例3)
製造例1において、得られたボイド含有糸を編んで布形状(ニット)に加工した以外は、製造例1と同様にして、厚み0.5mmの製造例3のボイド含有糸を編んだ布(断熱層材料)を作製した。
【0118】
(製造例4)
<糸状体Bの製造>
極限粘度(IV)=0.92であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂)を、溶融押出機を用いて285℃で断面形状が円形の口金から押し出し、ライン速度15m/分で引き取りながら12℃の冷却水槽中で固化させて、平均直径300μmの糸状体Aを得た。
【0119】
製造例1において、糸状体Aの代わりに糸状体Bを用いた以外は、製造例1と同様にして、厚み0.3mmの製造例4のボイド含有糸を綾織りした布(断熱層材料)を作製した。
【0120】
【表1−1】

【表1−2】

【0121】
(実施例1)
厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)にエポキシ樹脂(硬化点80℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシートを4枚積層した積層体上に、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を積層した積層物をナイロンフィルムで覆い、内部を真空引きした(バギング)。次いで、これを80℃で60分間加熱した後、圧力を6kgf/cmまで高めるとともに、加熱温度を約120℃まで昇温して120分間保持し硬化させた(低温オートクレーブ処理)。以上により、実施例1の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0122】
(実施例2)
厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)にエポキシ樹脂(硬化点80℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシートを4枚積層した積層体の片面上に、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を2枚積層した積層物をナイロンフィルムで覆い、内部を真空引きした(バギング)。次いで、これを80℃で60分間加熱した後、圧力を6kgf/cmまで高めるとともに、加熱温度を約120℃まで昇温して120分間保持し硬化させた(低温オートクレーブ処理)。以上により、実施例2の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0123】
(実施例3)
厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)にエポキシ樹脂(硬化点80℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシート2枚を積層した積層体の2つで、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を挟んで積層した積層物をナイロンフィルムで覆い、内部を真空引きした(バギング)。次いで、これを80℃で60分間加熱した後、圧力を6kgf/cmまで高めるとともに、加熱温度を約120℃まで昇温して120分間保持し硬化させた(低温オートクレーブ処理)。以上により、実施例3の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0124】
(実施例4)
厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)にエポキシ樹脂(硬化点130℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシートを4枚積層した積層体上に、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を積層した積層物をナイロンフィルムで覆い、内部を真空引きした(バギング)。次いで、これを120℃で60分間加熱した後、圧力を6kgf/cmまで高めるとともに、加熱温度を約180℃まで昇温して120分間保持し硬化させた(通常オートクレーブ処理)。以上により、実施例4の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0125】
(実施例5)
厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3101平織)にエポキシ樹脂(硬化点130℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシートを4枚積層した積層物をナイロンフィルムで覆い、内部を真空引きした(バギング)。次いで、これを120℃で60分間加熱した後、圧力を6kgf/cmまで高めるとともに、加熱温度を約180℃まで昇温して120分間保持し硬化させた(通常オートクレーブ処理)。
得られた成形体に製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を積層して、エポキシ樹脂(硬化点130℃)を含浸塗布させた後に圧着し、40℃で30分セット乾燥後に乾燥炉にて110℃で120分間硬化処理を行い一体化した(ハンドレイアップ仕上げ)。以上により、実施例5の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0126】
(実施例6)
実施例1において、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を、製造例2のボイド含有糸を平織りした布に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0127】
(実施例7)
実施例1において、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を、製造例3のボイド含有糸を編んだ布(ニット)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0128】
(実施例8)
実施例1において、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を、製造例4のボイド含有糸を綾織りした布に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0129】
(実施例9)
実施例1において、厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)を、厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3101平織)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0130】
(実施例10)
実施例1において、厚み0.25mmのカーボンクロス(東邦テナックス株式会社製、W−3161綾織)に、エポキシ樹脂(硬化点80℃)を塗布し、乾燥させてシート状のプリプレグを作製した。このプリプレグシートを2枚積層した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0131】
(比較例1)
実施例1において、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0132】
(比較例2)
実施例1において、製造例1のボイド含有糸を綾織りした布をガラスファイバー(日東紡製、ロービングクロス、WR570C−100)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の炭素繊維強化樹脂複合材を作製した。
【0133】
次に、作製した各炭素繊維強化樹脂複合材について、以下のようにして、伝熱異方性及び保温性、並びに引張強度を評価した。結果を表2に示す。
【0134】
<伝熱異方性及び保温性>
5cm×18cmの大きさにした炭素繊維強化樹脂複合材を、図5A及び図5Bに示すように、測定装置31の2つのスリット33に跨るように、かつ断熱層を有する面がセラミックヒーターと対面するように配置した。温度センサー35、及び36は、前記炭素繊維強化樹脂複合材の中央の表面に設置した。スリット33の間隙は、発泡ポリウレタンフォームで塞いだ。温度センサー37は、図5C及び図5Dに示すように、測定装置32a、及び32bの外側に出た炭素繊維強化樹脂複合材40の断熱層側の表面に貼り付けた。
上記のように測定装置を準備した後に、セラミックヒーター34の温度を80℃に上昇させ、温度センサー35、36、及び37の温度を測定した。そして、全ての温度センサーの温度が安定した時点から2分後の温度を測定値とした。なお、測定時の室温は22℃である。
上記測定結果を基に、下記評価基準により評価した結果を表2に示す。下記評価基準において、D1及びD2は以下の意味である。
D1=(温度センサー35の温度)−(温度センサー36の温度)
D2=(温度センサー35の温度)−(温度センサー37の温度)
なお、D1の値が大きいほど、炭素繊維強化樹脂複合材が、厚み方向への伝熱を抑える機能に優れていることを示す。D2の値が小さいほど、炭素繊維強化樹脂複合材が、面方向へ伝熱する機能に優れていることを示す。
〔評価基準〕
◎:D1−D2が30℃以上である
○:D1−D2が10℃以上30℃未満である
△:D1−D2が2℃以上10℃未満である
×:D1−D2が2℃未満である
【0135】
<比重>
JIS K7112の水中置換法に準じて、水温25℃で繊維強化複合材料の比重を測定した。
【0136】
<引張強度>
引張強度は、島津製作所のプラスチック引張試験システムSSG式を用いて測定した。
【0137】
【表2−1】

【表2−2】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材は、軽量で、高強度であり、伝熱異方性及び保温性に富み、金属光沢を有するので、例えば、自動車部品、自動車の内外装、鉄道車両の内外装、船舶、釣竿等のスポーツ用途、航空宇宙用途、容器、建築材料、ユニットバス、などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0139】
2 糸状体
3 低速ロール
4 高速ロール
5 冷却可能な部材(冷却手段)
6a 加熱可能な部材(加熱手段)
6b 加熱部(加熱手段)
7 ニップロール
8 補助ロール
9 予熱ロール
10 空洞を有する糸
10a 表面
100 空洞
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する方向における空洞の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の炭素繊維強化樹脂層と、少なくとも1層の断熱層とを積層した炭素繊維強化樹脂複合材であって、
前記断熱層が、単一の素材で平均表面の粗さRaが0.3μm以下であるボイド含有糸からなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂複合材。
【請求項2】
断熱層がボイド含有糸の不織布である請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂複合材。
【請求項3】
断熱層がボイド含有糸を布状に織ったクロスである請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂複合材。
【請求項4】
断熱層がボイド含有糸を綾織りしたクロスである請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂複合材。
【請求項5】
断熱層がボイド含有糸を布状に編んだニットである請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂複合材。
【請求項6】
糸状体をネック延伸してボイド含有糸を得ることを特徴とする炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法。
【請求項7】
ボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱する請求項6に記載の炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法。
【請求項8】
炭素繊維強化樹脂層を加熱しながら加圧した後に、断熱層を積層して、その後に再度、断熱層に含まれるボイド含有糸のガラス転移温度以上で加熱しながら加圧する請求項6から7のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂複合材の製造方法。

【図2B】
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【図1】
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【図2A】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2012−106451(P2012−106451A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258305(P2010−258305)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】