説明

炭酸含有内用液

【課題】前記の生薬と二酸化炭素を含有し、味が改善されるとともに、外観が良好で服用感にも優れた内用液を提供する。
【解決手段】(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上、並びに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、(C)二酸化炭素を封入してなる炭酸含有内用液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観が良好で、服用感に優れた炭酸含有内用液に関する。
【背景技術】
【0002】
病中病後、肉体疲労、栄養障害、食欲不振等の場合の栄養補給や、肌荒れ、冷え症、神経痛、関節痛、筋肉痛等の諸症状の緩和や予防を期待して種々のビタミン類や生薬を配合した医薬品、医薬部外品等が数多く販売され、広く使用されている。これらの医薬品や医薬部外品等のうち、内用液は、固形物に比較し、服用に際して別に水も不要で、嚥下に問題が生じにくく摂取が容易であること、また服用量の調節が容易である等の理由から、広く採用されている。一方で、ビタミン類や生薬は、不快な味を有するものが多く、内用液に配合すると服用感を損なう場合がある。
【0003】
このような状況下、ビタミンB1の不快味や不快臭を二酸化炭素の配合により改善できることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ、イカリソウ等の生薬を含有する内用液の服用感を良好にすべく二酸化炭素の封入を試みた。ところが、これらの生薬を含有する液に二酸化炭素を封入すると泡状の着色物が発生し、得られた内用液の上部に着色物が残存し、外観上好ましくなく、製品価値及び生産適性を損なうことが判明した。
従って、本発明の課題は、前記の生薬と二酸化炭素を含有し、外観が良好で服用感にも優れた内用液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記生薬含有液に二酸化炭素を封入する際の泡状の着色物の発生を抑制すべく種々検討した結果、数多くの非イオン性界面活性剤の中でポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを添加した場合に、選択的に当該泡状の着色物の発生を防止できるとともに、服用感が良好で、かつ安定な内用液が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上、並びに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、(C)二酸化炭素を封入してなる炭酸含有内用液を提供するものである。
また、本発明は、(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上、並びに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する内用液に、二酸化炭素を封入することを特徴とする炭酸含有内用液の泡状着色物の発生抑制方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炭酸含有内用液は、製造時に泡状着色物が生成しないため外観が良好で、かつ二酸化炭素の封入により服用感に優れ、かつ経時安定性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】二酸化炭素封入時に泡状着色物が発生した状態を示す写真である。
【図2】二酸化炭素封入時に泡状着色物の発生が抑制された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の内用液は、(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上を含有する。これらの成分は、本発明内用液の有効成分である。
【0011】
ショウキョウは、ショウガの根茎であり、発汗作用、消化促進作用、鎮嘔作用、抗痙攣作用等を有し、寒気を伴う風邪の初期症状の治療、胃腸の冷え等による胃腸機能低下の治療等に用いられる生薬である。ショウキョウは、ショウガの根茎の粉砕物又はその抽出物として用いられる。ショウキョウエキスとしては、水抽出物、熱水抽出物、アルコール抽出物等が挙げられる。このうち、ショウキョウ流エキスを用いるのが好ましい。ショウキョウの含有量は、本発明の内用液中、原生薬換算で0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.05〜1.3w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
【0012】
肝臓水解物は、ウシ、ブタ等の肝臓の加水分解物であり、滋養強壮効果、肝機能改善効果等を有する。肝臓水解物の含有量は、本発明の内用液中、0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.01〜1w/v%がより好ましく、0.05〜0.5w/v%がさらに好ましい。
【0013】
ゴミシは、モクレン科地五味子の成熟果実を乾燥したものであり、強壮作用、神経興奮作用、鎮咳去痰作用、抗菌作用、抗疲労効果等を有する。ゴミシとしては、ゴミシの水抽出物、熱水抽出物、アルコール抽出物等が用いられる。ゴミシの含有量は、本発明内用液中、原生薬換算で0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.1〜1w/v%がより好ましく、0.3〜0.6w/v%がさらに好ましい。
【0014】
シゴカは、ウコギ科エゾウコギの根皮又は幹皮を乾燥させたものであり、滋養強壮、中枢神経系に対する鎮静、抗炎症、鎮痛、解熱、血圧降下、血糖降下作用等を有する。シゴカとしては、シゴカの水抽出物、熱水抽出物、アルコール抽出物等が挙げられる。シゴカの含有量は、本発明内用液中、原生薬換算で、0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.1〜1.5w/v%がより好ましく、0.2〜1.2w/v%がさらに好ましい。
【0015】
イカリソウは、メギ科イカリソウであり、全草や葉が用いられ、利尿作用、強精作用、強壮作用等を有する。イカリソウとしては、水抽出物、熱水抽出物、アルコール抽出物等が用いられる。イカリソウの含有量は、本発明内用液中、原生薬換算で0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.05〜1.2w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
【0016】
本発明の内用液においては、これらの成分の1種又は2種以上を含有するが、これらの成分のうち、ショウキョウ、肝臓水解物及びシゴカを含有するのが好ましく、ショウキョウ及び肝臓水解物を含有するのがより好ましい。成分(A)の合計含有量は、有効性及び服用感の点から本発明の内用液中、肝臓水解物を除く生薬の原生薬換算量及び/又は肝臓水解物の含有量の合計で0.01〜1.5w/v%が好ましく、0.05〜1.5w/v%がより好ましく、0.1〜1.5w/v%がさらに好ましい。
【0017】
本発明の内用液に用いられる(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、成分(A)を含有する内用液に二酸化炭素を封入した際の泡状着色物の発生を防止し、かつ本発明の内用液の経時安定性を向上させる作用を有する。二酸化炭素封入時の泡状着色物の発生に関しては、後記実施例に示すように、種々の非イオン性界面活性剤や消泡剤及び増粘剤の添加によっても十分に防止できないにもかかわらず、これら成分(B)が特異的に効果を有する。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのポリオキシエチレン数は20〜200が好ましく、ポリオキシプロピレン数は20〜70が好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンC8-22脂肪酸エステルが好ましく、ポリオキシエチレンソルビタンモノC8-22脂肪酸エステルがより好ましい。またポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン数は、10〜40が好ましく、10〜30がより好ましく、約20が特に好ましい。より具体例にはポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオシキエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルが挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルが特に好ましい。
これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の内用液中の成分(B)の含有量は、泡状着色物の発生防止効果及び経時安定性の点から、0.001〜1.0w/v%が好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの含有量は、0.01〜0.5w/v%が好ましく、0.05〜0.2w/v%がさらに好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量は0.001〜0.5w/v%が好ましく、0.01〜0.1w/v%がさらに好ましい。
【0019】
本発明の内用液には二酸化炭素が封入される。二酸化炭素の封入により、成分(A)の苦味等がマスキングされ、服用感が良好になる。本発明の内用液への二酸化炭素の封入量は、ガスボリューム[内用液中に溶解している二酸化炭素量(v/v)]が、1〜4が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜4.0がさらに好ましい。なお、本発明におけるガスボリュームとは、1気圧15.6℃において、内用液中に溶解している炭酸ガスの体積を内用液の体積で割ったものである。
【0020】
本発明の内用液には、前記成分の他に、他の有効成分、矯味剤、甘味剤、安定化剤、増粘剤、溶解補助剤、pH調節剤、着色剤、香料、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等を配合することができる。他の有効成分としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB12、ビタミンC、タウリン、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。このうち、ビタミンB1は0.001〜0.03w/v%含有するのが好ましく、ビタミンB2は0.001〜0.03w/v%含有するのが好ましく、ビタミンB6は0.01〜0.1w/v%含有するのが好ましく、コンドロイチン硫酸は0.1〜1w/v%含有するのが好ましい。
【0021】
本発明の内用液のpHとしては2〜5が好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
【0022】
本発明の内用液は、成分(A)及び成分(B)を含有する液を調製し、二酸化炭素ガスを所定量封入することにより製造するのが好ましい。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
ショウキョウ流エキス5mL、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プルロニックF68)0.5g、クエン酸7g、水酸化ナトリウム適量、果糖ブドウ糖液糖40g、香料適量を精製水1000mLに溶解し、これに二酸化炭素をガスボリュームが2.5となるように封入して内用液を得た。
【0025】
実施例2〜61及び比較例1〜61
実施例1と同様にして、表1〜表12の内用液を製造した。
【0026】
(試験及び評価)
(1)二酸化炭素封入時の泡状着色物の発生の有無
二酸化炭素封入時の着色物の発生の有無を以下の基準で評価した。着色物が発生した状態の写真を図1に、着色物の発生が抑制された状態の写真を図2に示す。
【0027】
着色物の析出が多い:×
着色物の析出が認められる:△
着色物の析出がほとんどない:○
着色物の析出が全くない:◎
【0028】
(2)服用感
得られた内用液を5名のパネラーが服用し、その服用感を評価した。
【0029】
服用しにくい:×
やや服用しにくい:△
服用しやすい:○
非常に服用しやすい:◎
【0030】
(3)経時安定性
得られた内用液を60℃に3週間保存後、2ヶ月冷蔵保存し、外観を評価した。
【0031】
著しい外観の劣化を生じる :×
外観の劣化を生じる :△
ほとんど外観の劣化を生じない:○
外観の劣化を生じない :◎
【0032】
得られた結果を表1〜表12に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
表1〜表12に記載のように、成分(A)の含有液に二酸化炭素を封入すると泡状着色物が発生するが、これに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを添加すると当該着色物の発生は顕著に抑制されることがわかる。また、得られた内用液は、服用感が良好で、かつ経時安定性も良好であった。
一方、成分(B)に代えて、種々の非イオン性界面活性剤、消泡剤や増粘剤を添加しても十分な効果は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上、並びに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、(C)二酸化炭素を封入してなる炭酸含有内用液。
【請求項2】
成分(A)の含有量が、肝臓水解物を除く生薬の原生薬換算量及び/又は肝臓水解物の含有量の合計で0.01〜1.5w/v%である請求項1記載の炭酸含有内用液。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.001〜1.0w/v%である請求項1又は2記載の炭酸含有内用液。
【請求項4】
(A)ショウキョウ、肝臓水解物、ゴミシ、シゴカ及びイカリソウから選ばれる1種又は2種以上、並びに(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する内用液に、二酸化炭素を封入することを特徴とする炭酸含有内用液の泡状着色物の発生抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95670(P2013−95670A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236775(P2011−236775)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】