説明

炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法

【課題】炭酸水素ナトリウム結晶粒子を高精度に組成分析する方法を提供する。
【解決手段】炭酸水素ナトリウム結晶粒子を、二酸化炭素を含まない乾燥ガス中に置き、ウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩の加熱分解が完了し、セスキ炭酸ナトリウムの分解が開始しない第一の温度、及び上記3成分の分解が完了する第二の温度の二種の温度に保持し、かかる二種の温度における質量を測定し、質量減少値から各成分を定量する。一方、炭酸水素ナトリウムを無水メタノール中で攪拌して得られた抽出液を滴定し、炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量を定量する。この3成分の総量から、上記炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムの2成分の定量値を減じることにより炭酸ナトリウム無水塩を定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法に関し、特に、炭酸水素ナトリウム中結晶粒子のウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、セスキ炭酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウム無水塩の含量をそれぞれ測定する定量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(重曹、重炭酸ソーダとも呼ばれる)は、ベーキングパウダー、清涼飲料などの添加剤として各種の食料品分野や、人工透析剤、胃腸薬その他として医薬品分野に、さらに、消火剤、浴用剤、洗浄剤、ブラストメディア、酸性ガス中和剤などとして広く使用されている。これらの炭酸水素ナトリウム結晶粒子は、ほとんどの場合において粉末乃至粒状の結晶粒子の形態で製造、搬送、貯蔵、販売され、また使用されている。
【0003】
しかし、市販されている炭酸水素ナトリウム結晶粒子は一般的に固結性を示し、特に、梅雨時期等の温度が高く湿気の多い保管環境下では、製造工程での乾燥によって、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面に生成した炭酸ナトリウム無水塩に起因して、大きな固結性を有することが経験的に知られている。固結が生じた場合には、粒子の流動性が低下し、上記流通から使用時の各過程における取り扱い性が著しく低下し、各種の障害をもたらす。よって、固結性は、炭酸水素ナトリウムの商品価値を失いかねる大きな問題である。
【0004】
炭酸水素ナトリウム(NaHCO)の固結の発生は、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面が製造の過程で炭酸ナトリウム無水塩(NaCO)となり、流通や保管の過程でウェグシャイダー塩(NaCO・3NaHCO)又は炭酸ナトリウム一水塩(NaCO・HO)となり、さらにセスキ炭酸ナトリウム(NaCO・NaHCO・2HO)となることによって、炭酸水素ナトリウム結晶粒子間が架橋し固着することに起因する。
【0005】
従来、この炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面組成の変化に着目した、固結防止方法が開示されている。例えば、特許文献1には、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面をセスキ炭酸ナトリウムとする、固結性の改善された炭酸水素ナトリウム結晶粒子の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、特定の二酸化炭素ガス濃度と特定の水分量の乾燥用ガスを使用する、固結性の小さい炭酸水素ナトリウム結晶粒子の製造方法が提案されている。
【0006】
また、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の固結性を判断したり、固結性の低減の対策を取ったりするために炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面組成を調整する場合においては、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成、特に表面近傍の組成(具体的には、炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム無水塩、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの含量)を正確に知る必要がある。
しかし、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩、セスキ炭酸ソーダ及び炭酸ナトリウム無水塩の各成分は、何れも相互に、あるいは炭酸水素ナトリウムに類似した炭酸アルカリであり、なおかつ、炭酸水素ナトリウム結晶粒子上に僅かに生成している。これらの定量分析は、X線回折法では測定できないなど極めて困難であり、従来その分析方法もほとんど開示されておらず、僅かに特許文献3に開示されているのみであった。特許文献3では、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に所定温度の乾燥ガスを流通し、一定の温度あるいは経時的な連続昇温条件における炭酸水素ナトリウム結晶粒子から流出する水分同伴ガス中の水分をカールフィッシャー水分定量分析計により経時的に定量分析することにより、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の水分を、遊離水分、炭酸ナトリウム一水塩の結晶水、及びセスキ炭酸ナトリウムの結晶水に分別定量分析する方法が開示されている。しかし、このカールフィッシャー水分定量分析法による場合、精度の点でなお充分でない上に、試料量が多く均一に加熱されないために試料の加熱分解に斑が発生することによって試料からの水分の放出の時間分布が広くなるなどの点で難点があり、より優れた定量分析方法が求められていた。
【特許文献1】特開2003−104722号公報
【特許文献2】特開2004−203673号公報
【特許文献3】特開2003−83947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中のウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、セスキ炭酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウム無水塩の含量をより高精度で測定する定量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面近傍の組成分析について鋭意研究を重ねたところ、炭酸水素ナトリウム結晶粒子表面の組成を正確に分析するために、炭酸水素ナトリウム結晶粒子が加熱された条件下でセスキ炭酸ナトリウムやウェグシャイダー塩や炭酸ナトリウム一水塩より安定で分解しにくいこと、及び、さらにセスキ炭酸ナトリウムの方がウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩より熱的に安定であることを見出し、かかる所見に基づき、新たな原理に基づく定量分析方法の発明に至ったものである。すなわち、本発明の要旨は以下の構成を有する。
【0009】
(1)炭酸水素ナトリウム結晶粒子を、二酸化炭素を実質的に含まない乾燥したガス中において、所定時間でウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩の加熱分解が実質的に完了しセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が実質的に開始しない第一の温度、及び、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウム各々の加熱分解が所定時間で実質的に完了する第二の温度の二種の温度に保持し、所定時間経過後の質量減少を測定して、かかる二種の温度における質量減少値から、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの定量分析を行うことを特徴とする炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
(2)第一の温度が45〜57℃の間で選択された温度であり、第二の温度が58〜70℃の間で選択された温度である上記(1)に記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成定量分析方法。
(3)ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムを、かかる各成分を実質的に含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に各々所定量混合した標準試料に対して上記(1)記載の方法と同様の測定を行って得られた質量減少値を基準として、定量分析の対象である炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれる各成分、すなわちウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの絶対量を算出する上記(1)または(2)に記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成定量分析方法。
(4)ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを実質的に含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子につき上記(1)記載の方法と同様の測定を行い、得られた質量減少値を差し引いて、上記二種の温度における所定時間経過後の炭酸水素ナトリウム結晶粒子自体の分解による質量減少量を補正する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成定量分析方法。
(5)炭酸水素ナトリウム結晶粒子を無水メタノール中で攪拌して得られた抽出液を、30質量%以上の濃度の塩酸溶液を無水メタノールで希釈した塩酸溶液で滴定して、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量を定量し、一方、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法により上記炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを定量し、該定量値を上記総量から減じることにより炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩を定量する炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中のウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、セスキ炭酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウム無水塩の含量を高精度で測定する定量分析方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法は、炭酸水素ナトリウム結晶粒子を、二酸化炭素を実質的に含まず、炭酸水素ナトリウム及びその成分、すなわち、炭酸ナトリウム無水塩、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムと反応しない乾燥したガス中において、所定時間でウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩の加熱分解が実質的に完了しセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が実質的に開始しない第一の温度、及び、ウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が所定時間で実質的に完了する第二の温度の二種の温度に保持し、所定時間経過後の質量減少を測定して、かかる二種の温度における質量減少値の差から、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムとの定量分析を行うものである。
【0012】
本発明においては、炭酸水素ナトリウム結晶粒子について熱重量測定(Thermogravimetry)を行う。熱重量測定とは試料の温度を所定のプログラムに従って変化させながら、試料の質量変化を連続的に温度または時間の関数として測定する方法であり、分解の開始と終了の情報及び分解による減量の情報を得ることができる。本発明では試料を所定温度に制御する等温法を用いる。また、質量変化は時間の関数として測定する。
【0013】
熱重量測定は極めて高感度の天秤によって質量変化を測定するので、水分気化装置付きのカールフィッシャー水分定量分析計を用いた水分の測定方法と比較して、高精度の測定が可能である。さらには、水分気化装置付きのカールフィッシャー水分定量分析計を使用する場合と比較して測定対象である試料を入れるサンプルホルダーの熱容量が小さいこと、および測定に必要な試料の質量が少なくて済むことから、短時間で所定の温度に達するため、等温法での測定に適している。
【0014】
本発明においては、炭酸水素ナトリウム結晶粒子を二種の温度に保持して等温法により熱重量測定を行い、かかる二種の温度における減量傾向(以下「減量プロファイル」という。)の違い、すなわち質量減少値の差から、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの定量分析を行う(以下「TG法」という。)
【0015】
本発明においてTG法を行う装置としては、特に限定されず、通常の熱重量測定装置(あるいは加熱重量減分析装置ともいう。)が使用できるが、示差熱分析(以下、「DTA」という。)と同時測定できる装置がより好適である。DTAの測定結果は、加熱によって発生した熱変化を温度差として検出するので、ウェグシャイダー塩や炭酸ナトリウム一水塩やセスキ炭酸ナトリウムの分解に起因する吸熱の開始と終了の情報を得ることができるので、TG法においても併用することが有用である。
【0016】
以下、本発明によるTG法の具体例を説明する。まず、炭酸水素ナトリウム結晶粒子をサンプルホルダーに所定量入れて、二酸化炭素を実質的に含まず、炭酸水素ナトリウム結晶粒子、すなわち炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム無水塩、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムと反応しない乾燥したガス中において、下記の二種の温度に保持し、所定時間経過後の質量減少を測定する。
【0017】
TG法で使用する雰囲気ガスは、二酸化炭素を実質的に含まず、炭酸水素ナトリウム及びその成分と反応しない乾燥したガスであり、具体的には、窒素ガスや、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが特に好適に使用できる。また還元性ガスであっても水素等は、炭酸水素ナトリウム及びその成分と反応しないので使用可能である。雰囲気ガスの使用流量は10〜1000mL/分が好ましい。10mL/分より少ないと分解により発生する水蒸気や二酸化炭素によって、炭酸ナトリウム無水塩が吸湿したり炭酸ナトリウム一水塩やセスキ炭酸ナトリウムの分解が阻害されたり、また温度分布が発生したりする。一方、1000mL/より多くても不必要であり無駄となる。また測定中は一定の流量とする。
【0018】
炭酸水素ナトリウム結晶粒子を保持する温度は、所定時間でウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩の加熱分解が実質的に完了しセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が実質的に開始しない第一の温度、及び、ウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が所定時間で実質的に完了する第二の温度の二種の温度である。これは、本発明者が、炭酸水素ナトリウムがセスキ炭酸ナトリウムやウェグシャイダー塩や炭酸ナトリウム一水塩より加熱された条件下で安定で分解しにくいこと、及び、さらにセスキ炭酸ナトリウムの方がウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩より熱的に安定であることに着目し、選定した温度である。
ここでウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩は近似の温度で分解する。よってウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩との区別は、炭酸水素ナトリウムの製造過程において加湿処理した温度と相対湿度と二酸化炭素ガス濃度の条件を元に相平衡図で炭酸ナトリウム一水塩の領域かウェグシャイダー塩の領域かを、分析とは別途に判別することによる。保管された炭酸水素ナトリウム結晶粒子の場合は、その保管中の温度と湿度と二酸化炭素ガス濃度の条件により判断する。相平衡図によらない場合は、その雰囲気下に炭酸ナトリウム無水塩の結晶粒子を長時間保管してその結晶の変化をX線回折により結晶の構造解析を行っておく。なお、測定するサンプルを長時間室温に放置したままにしておくと、吸湿してウェグシャイダー塩を生成するので、サンプリング後は早急に分析する。
【0019】
かかる温度と時間は測定試料の量、測定装置の構造、サンプルホルダーの構造等によって異なり、一概に特定できないが、第一の温度と時間は、所定時間でウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩の炭酸ナトリウム無水塩への分解が実質的に完了しセスキ炭酸ナトリウムの分解が実質的に開始しない温度と時間であり、45〜57℃の間で選択し、時間は40〜60分の間で選択するのが好ましい。第一の温度は、特に、51〜55℃が好ましく、時間は45〜55分が好ましい。また、第二の温度と時間は、所定時間でウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムの分解が実質的に完了する温度と時間であり、58〜70℃の間で選択し、時間は40〜60分の間で選択するのが好ましい。第二の温度は、特に、61〜65℃が好ましく、時間は45〜55分が好ましい。第一及び第二の温度両者の差は5〜15℃が好ましく、特に7〜15℃が好適である。
【0020】
測定対象の炭酸水素ナトリウム結晶粒子試料の質量は10〜200mgが好ましい。より好ましくは20〜100mgである。10mg未満であると質量変化が小さくなり分析精度が低下するため好ましくない。200mgを超えると試料内の温度分布が大きくなり分析精度が低下するため好ましくない。
【0021】
本発明のTG法による測定例としては、試料を60mg秤量して、53℃等温で測定し50分経過後の質量減少値を測定する。次いで63℃等温で測定し50分経過後の質量減少値を測定する。この例の場合では、第一の温度である53℃における質量減少値が、ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩が炭酸ナトリウム無水塩に分解した際の重量減少に相当し、第二の温度である63℃における質量減少値から第一の温度である53℃における質量減少値を引いた部分が、セスキ炭酸ナトリウムが炭酸ナトリウム無水塩に分解した際の重量減少に相当する。
ここで、ウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩との区別は、本試料の保管状況が相平衡図でウェグシャイダー塩の領域であれば、第一の温度である53℃等温での50分経過後の質量減少値はウェグシャイダー塩による減量であり、第二の温度である63℃における質量減少値から第一の温度である53℃における質量減少値を引いた部分が、セスキ炭酸ナトリウムによる減量に相当する。
【0022】
炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの絶対量は、かかるTG法による質量減少値から「標準添加法」により求めることができる。「標準添加法」とは、ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムを、かかる各成分を実質的に含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に各々所定量混合した標準試料に対して上記TG法による同様の測定を行い、かかる標準試料について得られた質量減少値を基準として、定量分析の対象である炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの絶対量を算出する方法である。具体的には、ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウム各成分の微粒子を、実質的にこの各成分を含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に所定量混合した標準試料を準備し、この標準試料についてTG法で測定して得た質量減少値を基準として、定量分析の対象である炭酸水素ナトリウムに含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの絶対量を算出する。標準試料に使用するウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの粒子の大きさは、大きいと加熱分解に時間がかかり誤差が生じる恐れがあるためより微細であることが好ましく、具体的には20μm以下、特に10μm以下が好ましい。なお、前述各成分を含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子には、炭酸ナトリウム無水塩は含まれていてもよい。
【0023】
ここで、より高い精度で定量分析を行うため、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを実質的に含まない炭酸水素ナトリウムについて、分析対象である炭酸水素ナトリウムと同様のTG法による測定を行い、得られた質量減少値を差し引いて、TG法で選択した二種の温度における所定時間経過後の炭酸水素ナトリウム自体の分解による質量減少量を補正する(この補正を以下、「ベースライン補正」という)のが好ましい。炭酸ナトリウム無水塩を含む炭酸水素ナトリウムを試料として測定したり、あるいはベースライン補正のための質量減少値を測定する場合は、吸湿によって炭酸ナトリウム無水塩が短時間でウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩となるため、特に注意して手早く測定を行うのが好ましい。サンプルを測定用の容器であるサンプルパンにのせて秤量後に、直ちにサンプルパンに蓋をして密閉し、測定直前に蓋に孔を開けて測定に供することは、吸湿を防止する上で有効である。
【0024】
以上、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中のウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの含量を特定する方法を説明したが、次いで、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩の含量を特定する方法について説明する。
【0025】
炭酸水素ナトリウム結晶粒子を無水メタノール中で攪拌して得られた抽出液を、30質量%以上の濃度の塩酸溶液を無水メタノールで所定の温度に希釈した塩酸溶液で滴定して、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量を定量する(以下、本方法を「無水メタノール抽出法」という)。ここでウェグシャイダー塩は炭酸ナトリウム無水塩や炭酸ナトリウム一水塩やセスキ炭酸ソーダと比較して無視できる程度しか抽出されない。一方、上述したTG法により上記炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを定量し、該定量値を上記3成分の総量から減じることにより炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム無水塩を定量する。
【0026】
無水メタノール抽出法において、炭酸水素ナトリウム結晶粒子を砕かずに抽出操作を行えば、炭酸水素ナトリウム結晶粒子表面近傍の、炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分が抽出されるので、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面の3成分の総量を中和滴定により特定できる。
【0027】
無水メタノール抽出法の具体例としては、以下の通りである。まず、炭酸水素ナトリウム結晶粒子を秤量し、無水メタノールに入れて振とうし、上記3成分を抽出した液を作成する。この抽出液を中和滴定する。中和滴定は、水分の混入を極力減らすため、30質量%以上の濃度の塩酸溶液を無水メタノールで希釈した塩酸溶液を使用して行う。無水メタノールでなく水で希釈すると、水が混入するために炭酸水素ナトリウムが溶出してしまい中和滴定で誤差を生ずるので好ましくない。同様に希釈調整前の塩酸水溶液の濃度も、より高い方が水の混入を削減できるため、35質量%以上がより好ましい。希釈調整後の塩酸溶液は、0.1規定の濃度になるように調整するのが好ましい。希釈前の塩酸溶液として、塩化水素メタノール溶液も使用できる。中和滴定に使用する指示薬としてはフェノールフタレインが好適な例として挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を記載する。本実施例は具体例を示すものであり、これに限定されない。
種々の乾燥条件で製造し、一部のサンプルは、その後加湿処理されて、表面の組成が異なる炭酸水素ナトリウム結晶粒子を五種(以下、単に「サンプル1〜5」という。)用意し、製造後直ちに、あるいはその後セスキ炭酸ナトリウム領域で保管した後に、各々の組成をTG法及び無水メタノール抽出法により測定して各サンプル(炭酸水素ナトリウム結晶粒子)の表面の組成を分析した。
ここでサンプル1〜4の加湿条件は炭酸ナトリウム一水塩の領域であった。すなわち製造直後の炭酸水素ナトリウム結晶粒子にはウェグシャイダー塩でなく炭酸ナトリウム一水塩が生成している。一方、サンプル5の加湿条件はウェグシャイダー塩の領域であった。すなわち製造直後の炭酸水素ナトリウム結晶粒子には炭酸ナトリウム一水塩でなくウェグシャイダー塩が生成している。そして、その後セスキ炭酸ナトリウムの領域で保管されたために、いずれも次第に一部分がセスキ炭酸ナトリウムとなっている。
具体的には、サンプル3は乾燥のみで加湿処理はされていない。サンプル1と2と4は乾燥後、炭酸ナトリウム一水塩領域で加湿処理し、その後、セスキ炭酸ナトリウム領域で保管した。サンプル5は乾燥後、ウェグシャイダー塩領域で加湿処理し、その後、セスキ炭酸ナトリウム領域で保管した。
以下、サンプル1につき、具体的に分析方法を説明する。
【0029】
[TG法によるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの定量]
本実施例において、TG法による測定には、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製の示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(以下「本測定装置」という。)を使用した。
まず、炭酸水素ナトリウム結晶粒子(サンプル1)を60mg秤量して、白金製の試料容器であるサンプルパンに入れて蓋を乗せた後に直ちにサンプルシーラーを用いて密閉した。測定直前に蓋に孔を明けて、本測定装置のサンプルホルダーにセットして測定した。
【0030】
基準物質はペレット状に成型したサファイアを使用した。分析に供した質量は60mgであった。雰囲気ガスは乾燥窒素ガスを使用し、流量は50mL/分とした。昇温し、53℃に到達後、その温度を保持し、60分間の減量を測定した。これによって経過時間に対する減量の曲線、すなわち減量プロファイルを得た。この減量プロファイルで50分経過後の減量を測定値として採用した。次いで63℃の等温で測定し減量プロファイルを得た。50分経過後の減量を測定値として採用した。53℃で50分経過後の質量減少値が、炭酸ナトリウム一水塩が炭酸ナトリウム無水塩に分解した際の質量減少に相当し、63℃で50分経過後の質量減少値から53℃で50分経過後の質量減少値を引いた部分が、セスキ炭酸ナトリウムが炭酸ナトリウム無水塩に分解した際の重量減少に相当する。前述のごとくサンプル1の加湿条件は炭酸ナトリウム一水塩の領域であるので、炭酸水素ナトリウム結晶粒子にはウェグシャイダー塩でなく炭酸ナトリウム一水塩が生成しているためである。
ここで、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子60mgについて、同様のTG法による測定を行い、減量プロファイルを得た。すなわちベースラインを同様に測定しておき、サンプル1の各減量プロファイルから差し引き、ベースライン補正を行った。
【0031】
図1にサンプル1の減量プロファイルを示す。図1では53℃と63℃の減量プロファイルを併記している。この減量プロファイルはベースラインを差し引いた後のすなわちベースライン補正後のグラフである。
ここで、53℃での減量プロファイルである「53℃Hold TG」の曲線と、63℃での減量プロファイルである「63℃Hold TG」の曲線を用い、質量減少値を読み取る。「53℃Hold TG」の曲線の0分のTG値(%)(0.000)と50分のTG値(%)(0.064)の差(破線Aと破線Bの間隔)、すなわち0.064%が炭酸ナトリウム一水塩の分解による減量に相当することがわかる。次いで、「63℃Hold TG」の曲線の50分のTG値(%)(0.088)と「53℃Hold TG」の曲線の50分のTG値(%)(0.064)の差(破線Bと破線Cの間隔)、すなわち0.024%がセスキ炭酸ナトリウムの分解による減量に相当することが分かる。また、「53℃Hold DTG」と「63℃Hold DTG」は「53℃Hold TG」と「63℃Hold TG」の微分曲線である。
【0032】
[標準添加法による標準試料の測定]
この質量減少値を炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの含量に換算するため、各々の成分の質量減少値と含量との関係を標準添加法により求める。炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの含量を特定するために、ウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムを含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に、0.500質量%の炭酸ナトリウム一水塩と、0.500質量%のセスキ炭酸ナトリウムを加えた標準試料(60mg)を作製した。具体的には、添加する炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムはメノウ乳鉢で約5μmまで微細にすり潰して、ウェグシャイダー塩と炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムを含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に均一に混合して作製した。このようにして得られた標準試料について、前記のサンプル1と同様にTG法で測定した。0.500質量%の炭酸ナトリウム一水塩と0.500質量%のセスキ炭酸ナトリウムは、炭酸ナトリウム無水塩に換算すると、0.427質量%と0.352質量%である。また、ベースライン補正も行った。
【0033】
この標準試料では、53℃で50分経過後の質量減少値は0.124%で、63℃で50分経過後の質量減少値は0.358%であった。すなわち、炭酸ナトリウム一水塩0.500質量%(炭酸ナトリウム無水塩換算で0.427質量%)に対して、53℃で50分経過後の質量減少値0.124%が対応することがわかった。また、標準試料の53℃で50分の値と63℃で50分の値との差は0.234%である(0.358−0.124=0.234)。よって、セスキ炭酸ナトリウム0.500質量%(炭酸ナトリウム無水塩換算で0.352質量%)に対して、53℃と63℃の50分経過後の質量減少値の差である0.234%が対応することがわかった。
ここではサンプル1の炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムの場合について記載したが、サンプル5のウェグシャイダー塩とセスキ炭酸ナトリウムの場合も同様にして分析できる。この場合、標準添加法では炭酸ナトリウム一水塩に替えてウェグシャイダー塩を使用する。
【0034】
[ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの含量の算出]
そこで、図1にグラフを記載したサンプル1に関して計算する。サンプル1はウェグシャイダー塩を含まないので、炭酸ナトリウム一水塩とセスキ炭酸ナトリウムについて記載するが、サンプル5のごとくウェグシャイダー塩を含むサンプルについても同様に算出できる。
上記の通り、サンプル1における炭酸ナトリウム一水塩の質量減少値は0.064%であり、また標準添加法により炭酸ナトリウム一水塩0.500質量%に対して質量減少値0.124%が対応することから、サンプル1における炭酸ナトリウム一水塩の含量は0.26質量%と算出できる(0.064×0.5÷0.124=0.26)。これは、炭酸ナトリウム無水塩に換算すると0.22質量%である。
【0035】
また、サンプル1におけるセスキ炭酸ナトリウムの質量減少値は0.024%であり、また、標準添加法により、セスキ炭酸ナトリウム0.500質量%に対して質量減少値0.234%が対応することから、サンプル1におけるセスキ炭酸ナトリウムの含量は0.05質量%となる(0.024×0.5÷0.234=0.05)。これは、炭酸ナトリウム無水塩に換算すると0.04質量%である。
【0036】
[無水メタノール抽出法による、炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩、セスキ炭酸ナトリウム3成分の総量の特定]
無水メタノール抽出法により炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの総量を分析する。炭酸水素ナトリウム(サンプル1)を5g秤量し、これを100mL(ミリリットル)の無水メタノールに入れ、30分間振とうした。得られた抽出液を0.1規定の濃度の塩酸でフェノールフタレインを指示薬として中和滴定した。ここで滴定に用いた0.1規定の塩酸は、水分の混入を極力減らすために、35質量%の塩酸水溶液を無水メタノールで希釈して0.1規定の濃度に調整したものである。
サンプル1では、炭酸水素ナトリウム中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量は炭酸ナトリウム無水塩換算で0.26質量%であった。またサンプル5ではウェグシャイダー塩は無水メタノールに抽出されないので、炭酸ナトリウム無水塩とセスキ炭酸ナトリウムを測定することとなる。
【0037】
[炭酸ナトリウム無水塩の含量の算出]
無水メタノール抽出法により求めた炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量0.26質量%から、TG法により求めたサンプル1における炭酸ナトリウム一水塩の含量(炭酸ナトリウム無水塩換算)0.22質量%、及び、セスキ炭酸ナトリウムの含量(炭酸ナトリウム無水塩換算)0.04質量%を差し引いて、炭酸ナトリウム無水塩の含量は0.00質量%と算出できる(0.26−0.22−0.04=0.00)。
【0038】
サンプル2〜5に関してもサンプル1と同様に測定した結果を表1に示す。ここで、炭酸ナトリウム無水塩の量は、無水メタノール抽出法により得られた炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩(サンプル5ではウェグシャイダー塩)、及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量(炭酸ナトリウム無水塩換算値)から、TG法により得られた炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの各含量(炭酸ナトリウム無水塩換算値)を減じて算出した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成、特に表面近傍の組成を、既存の装置を利用して少ない試料で高精度に定量分析できる。よって、炭酸水素ナトリウム結晶粒子の固結性を判断したり、固結性低減のための対策を取ったりするために炭酸水素ナトリウム結晶粒子の表面組成の調整が必要な様々な用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例におけるサンプル1(炭酸水素ナトリウム結晶粒子)の減量プロファイル
【符号の説明】
【0043】
破線A:測定開始時における質量減少値0%を示す線
破線B:53℃で50分経過後の質量減少値(%)を示す線
破線C:63℃で50分経過後の質量減少値(%)を示す線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム結晶粒子を、二酸化炭素を実質的に含まない乾燥したガス中において、所定時間で、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩及び炭酸ナトリウム一水塩の加熱分解が実質的に完了しセスキ炭酸ナトリウムの加熱分解が実質的に開始しない第一の温度、及び、ウェグシャイダー塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウム各々の加熱分解が所定時間で実質的に完了する第二の温度の二種の温度に保持し、所定時間経過後の質量減少を測定して、かかる二種の温度における質量減少値から、炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれるウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムの定量分析を行うことを特徴とする炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
【請求項2】
第一の温度が45〜57℃の間で選択された温度であり、第二の温度が58〜70℃の間で選択された温度である請求項1に記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
【請求項3】
ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムを、かかる各成分を実質的に含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子に各々所定量混合した標準試料に対して請求項1に記載の方法と同様の測定を行って得られた質量減少値を基準として、定量分析の対象である炭酸水素ナトリウム結晶粒子に含まれる前記各成分の絶対量を算出する請求項1または2に記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
【請求項4】
ウェグシャイダー塩又は炭酸ナトリウム一水塩、及びセスキ炭酸ナトリウムを実質的に含まない炭酸水素ナトリウム結晶粒子につき請求項1に記載の方法と同様の測定を行い、得られた質量減少値を差し引いて、上記二種の温度における所定時間経過後の炭酸水素ナトリウム結晶粒子自体の分解による質量減少量を補正する請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。
【請求項5】
炭酸水素ナトリウム結晶粒子を無水メタノール中で攪拌して得られた抽出液を、30質量%以上の濃度の塩酸溶液を無水メタノールで希釈した塩酸溶液で滴定して、炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩、炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムの3成分の総量を定量し、一方、請求項1〜4のいずれかに記載の方法により上記炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム一水塩及びセスキ炭酸ナトリウムを定量し、該定量値を上記総量から減じることにより炭酸水素ナトリウム結晶粒子中の炭酸ナトリウム無水塩を定量する炭酸水素ナトリウム結晶粒子の組成分析方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−145520(P2006−145520A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307490(P2005−307490)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】