説明

無機半導体一次粒子の製造方法

【課題】液相中でサイズ分布が狭いミクロンサイズの無機半導体一次粒子を製造する方法、特に硫化亜鉛を母体とする蛍光体の製造方法を提供し、それを用いることで発光素子として充分な高い輝度を有するEL蛍光体素子を提供する。
【解決手段】圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃の、水を主とする溶媒を用いた反応系で無機半導体一次粒子を生成させるにあたり、分散媒に少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有させる無機半導体一次粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機半導体一次粒子の製造方法に関し、詳しくは、高輝度で長寿命のエレクトロルミネッセンス(EL)蛍光体用無機半導体一次粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機エレクトロルミネッセンス(EL)発光体とは、二つの電極間に挟まれた無機の蛍光体粒子に交流電場を印可することで蛍光体を発光させた発光素子であり、分散型と薄膜型のEL発光体が知られている。分散型のEL発光体は、数μmの蛍光体粒子を高誘電率のバインダー中に分散させ、少なくとも一方が透明な二枚の電極の間に挟み込んだ構造からなり、発光素子を数mm以下の厚さとすることが可能な面発光体で、発熱がなく発光効率が良いなど数多くの利点を有する。そのため道路標識、各種インテリアやエクステリア用の照明、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の光源、大面積の広告用の照明光源等としての用途が期待されている。
【0003】
無機EL発光体に用いられる蛍光体粒子としては、無機の半導体粒子に付活剤(発光中心としての金属イオン)を添加したものであり、一般的には硫化亜鉛を母体として、銅等の付活剤及び塩素等の共付活剤が添加されたものが広く知られている。しかし、これらの蛍光体粒子を用いて作成された発光素子は、他の原理に基づく発光素子に較べて発光輝度が低く、また発光寿命が短いという欠点があり、この為従来から種々の改良が試みられている。
【0004】
硫化亜鉛を母体とする蛍光体粒子を合成するには、原料の硫化亜鉛ナノ粒子をフラックスと呼ばれる無機塩と共に1300℃〜1000℃の非常に高い温度で第一焼成を行ってミクロンサイズの粒子に成長させ、続いて500〜1000℃で第二焼成を行い蛍光体粒子を得る方法が主流であった。この製造法に関しては例えば特許文献1〜3に記載されている。しかしながらこの方法では、高温の炉内で焼成を行うため焼成を始めてから終えるまでに系に物質を添加することが難しく、例えば粒子内部における付活剤もしくは共付活剤の濃度分布を粒子内で変化させるということは不可能である。そのため更なる高輝度な硫化亜鉛蛍光体粒子を得ることが困難であった。
【0005】
一方、液相中で硫化亜鉛粒子を合成する場合は、付活剤もしくは共付活剤を粒子の成長途中にその量を制御して添加すること可能であり、粒子内部における付活剤もしくは共付活剤の濃度分布が変化した、焼成法では得られない蛍光体粒子を生成することができる。また核形成と成長を分離して粒子形成し、かつ粒子成長中の過飽和度を制御することでサイズ分布の狭い単分散な硫化亜鉛粒子を得ることも可能となる。
【0006】
液相にて無機EL蛍光体用の硫化亜鉛粒子を合成する方法に関しては、特許文献4に水系でナノサイズの粒子を合成する方法が記載されており、また非特許文献1〜3に水系で硫化亜鉛の結晶をサブミクロンサイズまで成長させた報告がある。但し、非特許文献1で得られた球形粒子は、ナノサイズの微結晶が凝集してできた二次粒子(凝集体粒子)であり、また非特許文献2の粒子も同様に小サイズ粒子の凝集体であって、EL蛍光体粒子として好ましいミクロンサイズの一次粒子は得られていない。一方非特許文献3では、予め形成したナノサイズ粒子を密閉容器に入れて高温で熟成することによりサブミクロンサイズの硫化亜鉛一次粒子を得ているが、この方法では粒子成長途中での修飾が困難であり、粒子内部における付活剤や共付活剤の濃度分布制御や粒子サイズ分布の制御などが不可能である。これまで、液相で結晶成長させ、かつ、粒子修飾を行う粒子の合成方法については報告されていない。
【0007】
加えて液相で粒子の形成を制御する為には、粒子同士の凝集を防ぐことが非常に重要となる。一般的に水中での粒子形成においては、この凝集を防ぐ為に保護コロイド(=分散媒)が使用される。保護コロイドとしては天然及び合成のポリマーなど種々の物質が用いられるが、好ましくはゼラチンがよく用いられる。このポリマーは粒子表面に吸着して、ある厚さのポリマー吸着層を形成し、ファンデルワールス力による凝集が起こる距離以内に粒子同士が近づくことを防ぎ、粒子同士の凝集を阻止する。
【0008】
一方、硫化亜鉛粒子は水への溶解度が10-12mol/Lのオーダーと非常に低く、通常行われている水系での粒子形成の条件である100℃以下では、粒子成長速度が非常に低く、ナノサイズの粒子しか得られない。このためミクロンサイズの粒子に成長させるためには、反応温度を100℃以上の高温にする必要があるが、通常好ましく用いられるゼラチンでは加水分解により保護コロイド性が著しく低下し、用いることができない。
【特許文献1】特開平8−183954号公報
【特許文献2】特開平7−62342号公報
【特許文献3】特開平6−330035号公報
【特許文献4】特開2002−313568号公報
【非特許文献1】「ファイン・パーティクルズ」(界面剤の科学シリーズ、vol.92、スギモト編)(FINEPARTICLES, surfactant science series volume 92, edited by Sugimoto), p.190-196、
【非特許文献2】「コロイド・アンド・サーフェス A」(Colloids andSurface A), vol.135, p.207-226 (1998)
【非特許文献3】「クリスタル・リサーチ・テクノロジー」(CrystalResearch Technology), vol.35, 279-289 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の無機EL蛍光体粒子における上記の課題を解決するものであって、液相中でサイズ分布が狭いミクロンサイズの無機半導体一次粒子を製造する方法を提供することを目的とし、特に硫化亜鉛を母体とする蛍光体の製造方法を提供し、それを用いることで発光素子として充分な高い輝度を有するEL蛍光体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下の手段で解決することができる。
(1)圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃の、水を主とする溶媒を用いた反応系で無機半導体一次粒子を生成させるにあたり、分散媒に少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有させることを特徴とする無機半導体一次粒子の製造方法。
(2)圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃の、水を主とする溶媒を用いた反応系で少なくとも一種の反応溶液を添加し反応させて無機半導体一次粒子を生成させるにあたり、分散媒に少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有させることを特徴とする無機半導体一次粒子の製造方法。
(3)前記無機半導体一次粒子の25℃での水に対する溶解度積pKspが17〜40の範囲にあることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(4)前記水溶性ビニル高分子の平均分子量が1000〜1000000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(5)前記水溶性ビニル高分子が少なくとも一つのカルボキシル基を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(6)前記水溶性ビニル高分子がポリアクリル酸であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(7)前記無機半導体一次粒子が硫化亜鉛を母体とする組成の粒子であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(8)硫黄イオンを含む水溶液と亜鉛イオンを含む水溶液を添加し反応させ、且つ反応液中の硫黄イオン濃度が10-5モル/L以上過剰になるように調整して生成した硫化亜鉛を母体とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(9)アミノ基またはカルボキシル基を有するキレート剤を加えることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、平均粒径が0.1〜100μmの無機半導体一次粒子。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、粒子サイズの変動係数が35%以下であることを特徴とする無機半導体一次粒子。
(12)付活剤として銅、マンガン、銀、金及び希土類元素からなる群から選択された元素を少なくとも一つ含むエレクトロルミネッセンス用の蛍光体粒子であることを特徴とする(10)又は(11)項に記載の無機半導体一次粒子。
(13)共付活剤として塩素、臭素、ヨウ素、及びアルミニウムからなる群から選択された元素を少なくとも一つ含むエレクトロルミネッセンス用の蛍光体粒子であることを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子。
(14)少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有し、水を主とする溶媒中に平均粒径が0.1〜100μmの無機半導体一次粒子が分散された分散物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、生成粒子の凝集を防ぎ、粒子サイズの分布が狭い蛍光体一次粒子を製造することができる。本発明により製造された蛍光体一次粒子を用いることにより、高輝度で発光寿命の長いEL素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における無機半導体とは、典型的には、第II族元素とVI族元素とから成る群から選ばれる元素の一つあるいは複数と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる一つあるいは複数の元素とから成る半導体が挙げられる。例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CaS、MgS、SrS、GaP、GaAs、BaAl24、CaGa24、Ga23、Zn2SiO4、Zn2GaO4、ZnGa24、ZnGeO3、ZnGeO4、ZnAl24、CaGa24、CaGeO3、Ca2Ge27、CaO、Ga23、GeO2、SrAl24、SrGa24、SrP27、MgGa24、Mg2GeO4、MgGeO3、BaAl24、Ga2Ge27、BeGa24、Y2SiO5、Y2GeO5、Y2Ge27、Y4GeO8、Y23、Y22S、SnO2及びそれらの混晶などが挙げられる。この中でもZnS、ZnSe、ZnSSe、CaS、CaSrSなどを好ましく用いることができ、特にZnS又はZnSSeが好ましい。
これらの半導体の多くは難水溶性であるが、本発明の製造方法によれば液相中でも生成することができる。生成される半導体粒子は、水に対する溶解度積pKsp(25℃)で表すと、好ましくは17〜40であり、より好ましくは17〜35、最も好ましくは17〜28である。個々の半導体の溶解度積pKsp(25℃)は、例えば、日本化学会編「化学便覧」に記載の溶解度から容易に求めることができる。
【0013】
これら難水溶性の半導体化合物は、ミクロンサイズの一次粒子として形成するにはその低い溶解度が問題である。そこで、本発明では高温高圧条件の液相を粒子形成に用いる。粒子形成は、水を50vol%以上、好ましくは70vol%以上含む水を主とする溶媒で行われ、温度条件は120〜370℃、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは200〜350℃である。但し、溶媒の温度を上げすぎると超臨界状態となり逆に溶解度が下がるため好ましくない。水の場合は375℃以上で超臨界状態となる。水系溶媒で100℃以上の高い温度を得るには、密閉性の高い耐圧構造の反応容器が必要である。この時に容器内の圧力は、温度に伴って飽和蒸気圧が高まる。本発明では、容器内の圧力は飽和蒸気圧のままでもよく、また外部から圧力を加えても良い。本発明の圧力条件は、0.2〜20MPa、好ましくは0.5〜15MPa、さらに好ましくは1.5〜15MPaである。
【0014】
本発明の無機半導体一次粒子は、このような高温高圧条件の液相に少なくとも一種の反応溶液(前駆体溶液)を添加して生成される。ここで反応溶液とは、例えば無機半導体一次粒子を構成する元素を含むイオン性の水溶液や、加熱により加水分解して無機半導体一次粒子を生成する化合物の溶液などが挙げられる。
【0015】
無機半導体粒子を生成する反応溶液は、連続的に添加される。その際に付活剤、共付活剤の水溶液も同時に連続添加することができる。添加のパターンは種々可能である。例えば、核形成と成長の工程は分けて、それぞれの最適の過飽和度を実現すべく溶液の添加速度を決めることが好ましく、溶液を一定流量で添加してもよいし、間欠的に添加してもよく、また段階的に或いは連続的に添加流量を増加させたり、或いは段階的或いは連続的に添加流量を減少させたりすることもできる。これらは付活剤及び共付活剤の水溶液の添加に関しても同様である。粒子生成にかける時間は好ましくは100時間以内、より好ましくは12時間以内で5分以上である。核形成過程と成長過程の間に、オストワルド熟成工程を入れることが粒子サイズの調節に好ましい。このオストワルド熟成は、好ましくは温度が120℃〜370℃、より好ましくは200℃〜350℃で行われ、また熟成時間は、5分〜50時間が好ましく、より好ましくは、20分〜10時間である。
【0016】
反応容器内での、反応液の濃度に関しては生成した無機半導体粒子の濃度として、1mM以上5M以下が好ましく、5mM以上3M以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明で製造される半導体粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.5〜50μm、最も好ましくは1〜30μmである。平均粒径は、粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真から200個の円相当直径を測定し、その平均値で表す。生成する半導体粒子は、一次粒子として得られる。ここで二次粒子とは、より小さい粒子が凝集して見かけの粒径が大きくなった粒子を示し、一次粒子とは凝集していない粒子である。
【0018】
次に、本発明で分散媒として用いられる水溶性ビニル高分子について説明する。本発明に用いられる水溶性ビニル高分子は下記一般式(1)で表される重合体である。
【0019】
【化1】

【0020】
一般式(1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル)を表し、水素原子、メチル基が特に好ましい。R2は一般式(1)で表される高分子に水溶性を付与する置換基を表し、水酸基やカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ピリジニウム基等が挙げられ、好ましくはカルボキシル基である。
一般式(1)において、Lは単結合もしくは炭素数1〜12の置換もしくは無置換のアルキレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基を表し、無置換アルキレン基としては、具体的にはメチレン、ジメチレン等を、アラルキレン基としてはフェニレンメチレン、フェニレンエチレン等を挙げることができ、特に好ましいのは単結合もしくはメチレン、フェニレンメチレンである。
【0021】
本発明に用いられる一般式(1)で表される水溶性ビニル高分子は、Aで表す共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合した繰り返し単位を有することもできる。Aのようなモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリル化合物、オレフィン酸、ビニルエーテル類、N−ビニルアミド類、ビニル異節環化合物、マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル類、フマル酸エステル類、クロトン酸エステル類などがあり、具体的に挙げると、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の単独重合体が水溶性であるような単量体を好ましい例として挙げることができる。
【0022】
また、Aとしては本発明で用いられる水溶性ビニル高分子の水溶性を損ねない範囲で、その単独重合体が水に不溶な疎水性単量体が共重合されていてもよい。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルビニルエーテル、エチレン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニルなどが挙げられる。本発明に用いる水溶性ビニル高分子は、Aで表されるエチレン性不飽和モノマーを1種以上共重合しても構わないし、無くても構わない。
【0023】
一般式(1)において、x、yは各繰り返し単位の重量百分率比を表し、xは0.1ないし100%、好ましくは1ないし85%、特に好ましくは2ないし50%を表し、yは0ないし99.9%、好ましくは15ないし99%、特に好ましくは50ないし98%を表す。ここでx+y=100を表す。一般式(1)で表される高分子は、ブロック共重合体、グラフト重合体などの規則性のある共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
一般式(1)で表される水溶性ビニル高分子としては、ポリアクリル酸が特に好ましい。
本発明に用いられる水溶性ビニル高分子の分子量は、好ましい範囲としては重量平均分子量で1000〜1000000、特に好ましくは5000〜250000の範囲である。
【0024】
水溶性ビニル高分子は、水を50vol%以上含む溶媒に溶解して添加される。この高分子溶液は、粒子形成中のどの段階に添加してもよい。例えば、粒子形成前の反応容器に予め添加して核と成長の保護コロイドとして用いたり、成長過程途中或いは終了後に添加して粒子の凝集を防止するのに用いたりしてもよい。反応溶媒中に含有させる高分子溶液の濃度は、0.001wt%〜50wt%が好ましく、0.01wt%〜20wt%がさらに好ましい。高分子溶液は、少なくとも1種類以上の溶液を添加することができる。また濃度の異なる溶液を組み合わせて添加しても構わない。
【0025】
本発明の製造方法では、水溶性ビニル高分子を保護コロイドとして粒子形成中及び/または形成後に存在させることによって、粒子凝集が少なくサイズ分布が狭い無機半導体粒子の調製が可能となる。本発明における粒子サイズ分布は、変動係数(COV:Coefficient of Variation)で表す。
変動係数=(サイズの標準偏差/平均粒子サイズ)×100
本発明の無機半導体粒子の変動係数は、好ましくは35%以下、さらに好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0026】
本発明の製造方法により、少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有し、水を主とする溶媒中に平均粒径が0.1〜100μmの無機半導体一次粒子が分散された分散物が得られる。この分散物は、後述するように、水熱合成法などの液相法による非発光シェル層の形成にそのまま適用することができる。
【0027】
本発明の無機半導体一次粒子の製造に用いられる装置は、圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃という高温高圧に設定された反応容器中で、半導体微粒子溶液を添加するため、耐圧容器に水溶液を注入できる配管と耐圧性の精密ポンプを使用することができることが好ましい。装置の材質は、使用する温度と圧力に応じて、例えば、耐圧耐熱ガラスや、テフロン材(商品名、テトラフルオロエチレン)、ステンレスなどの金属材が用いられる。但し、金属材の場合は粒子形成中に耐圧容器から不純物となる金属が溶出し、所望の性能が発現されない恐れがある。例えば、硫化亜鉛を母体とするEL蛍光体では、特に鉄、ニッケル、コバルトは発光を抑制する有害金属イオンであり、避ける必要がある。そのため粒子形成に用いられる耐圧容器、添加パイプ、撹拌器、その他の接液する部品は、有害イオンを含まない材質を用いる。本発明の無機半導体一次粒子を製造する装置の材質は、テフロン材、ハステロイ(商品名)、チタン材が好ましい。また、本発明に用いられる製造装置には、撹拌機構が具備されることが好ましい。撹拌装置に関しては特公昭55−10545号公報、米国特許第3782954号明細書等を参考にすることができる。
【0028】
次に硫化亜鉛を母体とするエレクトロルミネッセンス用の蛍光体粒子(以下、「EL蛍光体粒子」という)を例に、本発明を詳細に説明する。
本発明では、ミクロンサイズの硫化亜鉛粒子を得るために、反応中の硫黄イオン濃度を過剰に保つことが好ましい。過剰な硫黄イオン濃度は、化学量論量、すなわち亜鉛イオンに対して10-5〜10モル/Lがよく、10-3〜1モル/Lが好ましい。過剰にする硫黄イオンは、反応前の水溶媒に予め加えてもよく、反応時に亜鉛イオンの溶液に対して余分に硫黄イオンの溶液を加えてもよい。
【0029】
硫化亜鉛粒子を形成するときに、硫化亜鉛の水への溶解度を増加させる方法として、本発明ではキレート剤を好ましく用いることができる。亜鉛イオンのキレート剤としては、アミノ基、カルボキシル基を有するものが好ましく、具体的には、エチレンジアミン四酢酸(以下EDTAと表す)、N,2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(以下EDTA−OHと表す)、ジエチレントリアミン五酢酸、2−アミノエチルエチレングリコール四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、2−ヒドロキシエチルグリシン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノトリエチルアミン、アリルアミン、エタノールアミン等があげられる。キレート剤は、反応前の水溶媒に溶解して用いてもよく、水溶液として単独で添加することもでき、また微粒子溶液と混合して添加することもできる。
【0030】
硫化亜鉛母体のEL蛍光体の発光中心となる付活剤は、付活剤として蛍光体に一般に使用されているものであれば良く、例えば、銅、マンガン、銀、金及び希土類元素等の各種の金属イオンが好ましく用いられる。具体的には、これらの元素の酢酸塩、硫酸塩等が好ましく用いられる。これらは単独でも、複数を組み合わせて用いてもよい。蛍光発光の波長(色)は付活剤の種類に依存しており、例えば、青緑色(銅)、オレンジ色(マンガン)、青色(銀)等の蛍光が得られる。付活剤の好ましい濃度は付活剤の種類によるが、例えば、銅付活剤の場合は最終製品の母体の硫化亜鉛に対して銅濃度で0.01〜0.5mol%の範囲であればよい。付活剤を硫化亜鉛粒子中にドープする為には、ドープ物質の錯体を形成して、粒子生成中あるいはその前後に添加することが好ましい。錯体形成の化合物としては、前記のキレート剤を好ましく用いることができる。その際、ドープ物質の錯体の溶解度が、硫化亜鉛粒子の溶解度に近いことが好ましい。これに関しては、特開2002−338961号公報等を参照することができる。
【0031】
共付活剤としては、ハライドイオンやアルミニウムイオンの化合物が好ましく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、及びアルミニウムからなる群から選択された元素を少なくとも一つ含む化合物がさらに好ましい。最も好ましくはアルミニウムイオンの硝酸塩や硫酸塩等が用いられる。共付活剤の好ましい濃度は共付活剤の種類によるが、例えばアルミニウム共付活剤の場合は最終製品の母体の硫化亜鉛に対してアルミニウム濃度で0.01〜0.5mol%の範囲であればよい。共付活剤としてアルミニウムイオンを用いる場合は、前記のキレート剤と混合して付活剤イオンの水溶液を添加する間に或いは前後に加えることが好ましい。
【0032】
付活剤、共付活剤のEL蛍光体粒子内へのドーピングに関しては、いったん液相で硫化亜鉛粒子を調製した後、それを乾燥し粉末にして、その粉末に付活剤、及びまたは共付活剤を添加して、焼成することによってドーピングすることもできる。その際焼成温度は300から1200℃が好ましく、より好ましくは400〜1000℃であり、焼成時間は、30分〜10時間が好ましく、より好ましくは1〜7時間である。この焼成の際、フラックスを添加することもできる。フラックスとしては食塩、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0033】
また、焼成法でEL蛍光体の発光特性向上のために行われる衝撃修飾(粒子を破壊しない範囲の大きさの衝撃力を加える処理)も、本発明のEL蛍光体粒子に用いることができる。衝撃力を加える方法としては、粒子同士を接触混合させる方法、アルミナ等の球体を混ぜて混合させる(ボールミル)方法、粒子を加速させ衝突させる方法、超音波を照射する方法などが好ましく用いられる。
【0034】
本発明のEL蛍光体粒子は、粒子の表面に非発光シェル層を有することもできる。このシェル層形成は、コアとなる蛍光体の調製に引き続いて化学的な方法を用いて0.01μm以上の厚みで設置するのが好ましい。好ましくは0.01μm以上1.0μm以下の範囲である。非発光シェル層は、酸化物、窒化物、酸窒化物や、母体蛍光体粒子上に形成した同一組成で発光中心を含有しない物質から作成することができる。また、母体蛍光体粒子材料上に異なる組成の物質をエピタキシャルに成長させることによっても形成することができる。非発光シェル層の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法などの気相法と、複分解法、ゾルゲル法、超音波化学法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、水熱合成法、尿素溶融法、凍結乾燥法などの液相法や噴霧熱分解法なども用いることができる。本発明では液相中で蛍光体粒子を合成するため、特に液相法による非発光シェル層の形成に好適である。
【0035】
かくして得られた付活剤、共付活剤がドープされた硫化亜鉛母体のEL蛍光体は、水洗、乾燥した後、塩酸、青酸カリウム溶液で洗浄した後、乾燥してEL蛍光体粉末を得る。この蛍光体を有機バインダー中に分散し、塗布してEL発光層が形成される。この発光層を、背面電極上の反射絶縁層と透明電極との間に配置した電界発光素子を外皮フィルムで密封封止すると、電界発光灯(EL発光素子)が完成する。両電極の間に電圧を印加すると、両電極に形成される高い電界によって、発光層の蛍光体が発光する。蛍光体粒子が高い電場におかれると、粒子内の付活剤、たとえば銅イオンが局在する電動層に電場が集中し、そこで非常に高い電場が生じ、この電動層から電子と正孔が発生し、それらが付活剤、共付活剤を介して、再結合することによって発光する。EL蛍光体粒子においてはこの電子発生と再結合を効率良く行うことが非常に大切である。本発明の硫化亜鉛蛍光体粒子は、付活剤イオン、共付活剤イオンを粒子内に自在に局在化させることができ、効果的な電子発生と再結合が可能となると考えられる。さらに本発明の蛍光体粒子は、粒子サイズ分布の均一性、さらに粒子構造の粒子間のばらつきが少ない為、さらに高い発光効率をもたらすことができる。
【0036】
続いて本発明の硫化亜鉛EL蛍光体粒子を用いたEL発光素子(以下EL素子)について詳細を記述する。
本発明のEL素子は、発光層を、少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極で挟持した構成をもつ。発光層と電極の間には誘電体層を隣接することが好ましい。発光層は、蛍光体粒子を結合剤に分散したものを用いることができる。結合剤としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。これらの樹脂に、BaTiO3やSrTiO3などの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。誘電体層は、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO2、BaTiO3、SrTiO3、PbTiO3、KNbO3、PbNbO3、Ta23、BaTa26、LiTaO3、Y23、Al23、ZrO2、AlON、ZnSなどが用いられる。これらは均一な膜として設置されても良いし、また粒子構造を有する膜として用いても良い。均一な膜の場合は、誘電膜の調製法はスパッター、真空蒸着等の気相法であっても良く、この場合膜の厚みは通常0.1μm以上10μm以下の範囲で用いられる。また本発明の素子構成において、各種保護層、フィルター層、光散乱反射層などを必要に応じて付与することもできる。
【0037】
EL素子の製造に用いるEL蛍光体粒子含有塗布液又は誘電体微粒子含有塗布液は、少なくともEL蛍光体粒子又は誘電体微粒子、結合剤、及び結合剤を溶解する溶剤を含有してなる塗布液である。常温におけるEL蛍光体粒子含有塗布液又は誘電体微粒子含有塗布液の粘度としては、0.1Pa・s以上5Pa・s以下の範囲が好ましく、0.3Pa・s以上1.0Pa・s以下の範囲が特に好ましい。EL蛍光体粒子含有塗布液又は誘電体微粒子含有塗布液の粘度が、低すぎるときは、塗膜の膜厚ムラが生じやすくなり、また分散後の時間経過とともに蛍光体粒子又は誘電体微粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、EL蛍光体粒子含有塗布液又は誘電体微粒子含有塗布液の粘度が高すぎるときには、比較的高速での塗布が困難となる。なお、前記粘度は、塗布温度と同じ16℃において測定される値である。
【0038】
発光層は、スライドコーター又はエクストルージョンコーターなどを用いて、透明電極を付設したプラスチック支持体等の上に、塗膜の乾燥膜厚が0.5μm以上30μm以下の範囲になるように連続的に塗布することが好ましい。このとき、発光層の膜厚変動は、12.5%以下が好ましく、特に5%以下が好ましい。
【0039】
支持体上に塗布された各機能層は、少なくとも塗布から乾燥工程までを連続工程とすることが好ましい。乾燥工程は、塗膜が乾燥固化するまでの恒率乾燥工程と、塗膜の残留溶媒を減少させる減率乾燥工程に分けられる。本発明では、各機能層の結合剤比率が高いため、急速乾燥させると表面だけが乾燥し塗膜内で対流が発生し、いわゆるベナードセルが生じやすくなり、また急激な溶媒の膨張によりブリスター故障を発生しやすくなり、塗膜の均一性を著しく損なう。逆に、最終の乾燥温度が低いと、溶媒が各機能層内に残留してしまい、防湿フィルムのラミネート工程等のEL素子化の後工程に影響を与えてしまう。したがって、乾燥工程は、恒率乾燥工程を緩やかに実施し、溶媒が乾燥するのに十分な温度で減率乾燥工程を実施することが好ましい。恒率乾燥工程を緩やかに実施する方法としては、支持体が走行する乾燥室をいくつかのゾーンに分けて、塗布工程終了後からの乾燥温度を段階的に上昇することが好ましい。
【0040】
本発明のEL素子の製造においては、好ましくは、発光層にカレンダー処理機を用いてカレンダー処理を施す。カレンダー処理により形成された発光層の両主面の平滑度は、十点平均粗さで0.5μm以下の範囲が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。使用するカレンダー処理機は特に限定されるものではなく、公知の装置の中から適宜選択することができる。少なくとも一方を例えば50℃〜200℃に加熱した一対のロールの間に、加圧しながら結合剤1中に蛍光体粒子を分散させた発光層を対象物として通すことで平滑化処理を施すものである。カレンダー処理において、カレンダーロールの加熱温度は、発光層に含まれる結合剤の軟化温度以上にすることが好ましい。また、カレンダー圧力と搬送速度は、蛍光体粒子を破壊したり、必要以上に発光層を延伸したりしないように、カレンダー温度とEL発光層の塗布幅も考慮して、必要な平滑度が得られるように適宜選択することが好ましい。
【0041】
本発明のEL素子において、透明電極は一般的に用いられる任意の透明電極材料が用いられる。例えば錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫などの酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子などが挙げられる。これら透明電極にはこれに櫛型あるいはグリッド型等の金属細線を配置して通電性を改善することも好ましい。透明電極の比抵抗率は、0.01Ω/□以上30Ω/□以下の範囲が好ましい。光を取り出さない側の背面電極は、導電性の有る任意の材料が使用できる。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適時選択されるが、導電性さえあればITO等の透明電極を用いても良い。また、両電極とも、導電性の前記微粒子材料を結合剤とともに分散した導電材料含有塗布液を作製して、前述のスライドコーター又はエクストルージョンコーターを用いて塗布することもできる。
【0042】
EL素子の振動抑制のために補償電極を付与する場合にも、前述の導電材料を用いることができる。例えば光を取り出す透明電極の外側に補償電極を付与する場合には、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫などの酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子などの透明電極材料を用いることが好ましい。
【0043】
また、光を取り出さない背面電極の外側に補償電極を付与する場合には、金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなど導電性の有る任意の材料が使用できるが、導電性さえあればITO等の透明電極を用いても良い。この補償電極は前記の透明電極や背面電極と絶縁層を介して付設されるが、絶縁層材料は絶縁性の無機材料や高分子材料、無機材料粉体を高分子材料に分散した分散液などを蒸着、塗布などにより形成できる。また、導電性の前記微粒子材料を結合剤とともに分散した導電材料含有塗布液を作製して、前述のスライドコーター又はエクストルージョンコーターを用いて塗布することもできる。さらに、前記絶縁性材料を結合剤とともに分散した絶縁材料含有塗布液を作製して、前記導電材料含有塗布液と同時に塗布することもできる。付設した補償電極に駆動電源より電圧を印加するが、このとき発光層に印加される電圧と逆位相にすることで、発光層で発生する振動を相殺できる。補償電極は、透明電極の外側又は背面電極の外側のいずれかに絶縁層を挟んで付設しても同様の効果があるが、同時に付設して一方を接地させることで、さらなる振動抑制効果を期待できるので好ましい。また、発光層(と誘電体層)の誘電率と補償電極の内側の絶縁層の誘電率が実質同等であるように調整することが振動抑制を効果的に行うためには好ましい。
【0044】
EL素子の振動抑制のための別の方法としてEL素子に用いる緩衝材層を付与する場合には、衝撃吸収能の高い高分子材料や発泡剤を加えて発泡させた高分子材料を用いることが好ましい。衝撃吸収能の高い高分子材料としては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハイパロン、シリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴムなどが使用できる。これら高分子材料の硬度としては、振動吸収能の点から50以下が好ましく、30以下がさらに好ましい。また、ブチルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなどは、吸水性が低いためEL素子を水分から保護する保護膜としても機能するためより好ましい。上記のゴム材料やポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン樹脂に発泡剤を加えて発泡させた材料を緩衝材として用いることも好ましい。これらの緩衝材を用いた緩衝材層は、緩衝材層を接着剤でEL素子に貼り付けることで付設することができるが、緩衝材料を溶剤に溶解して緩衝材料含有塗布液を作製し、前述のスライドコーター又はエクストルージョンコーターを用いて塗布することもできる。緩衝材層の膜厚は、高分子材料の硬度にもよるが、振動を十分に吸収するためには20μm以上が必要で、50μm以上が好ましい。200μm以上になると素子厚みが大きく増加して、質量やフレキシビリティの点で好ましくない。また、上記の補償電極と緩衝材層の併用は、さらに振動を抑制することができるので好ましい。
【0045】
本発明のEL素子は、薄層化した発光層を用いることが好ましい。発光層の薄層化は、発光層に印加させる電圧が同一駆動条件では従来のEL素子のように発光層が厚い場合に比べて高くなるため、輝度が高くなる。従来のEL素子と同程度の輝度で駆動する場合には、駆動電圧や周波数を低くすることができるため、電力消費が少なくなり、さらに振動や騒音を改善することができる。そのような効果を得るためには、発光層の厚みが0.5μm以上で30μm以下の範囲が好ましく、特に15μm以下が好ましい。さらに、蛍光体粒子を含む発光層と、蛍光体粒子を含む発光層と必要に応じて隣接させる無機誘電体粒子を含む誘電体層の合計膜厚みが、1μm以上で50μm以下の範囲が好ましく、特に30μm以下が好ましい。
【0046】
本発明に用いられる蛍光体粒子としては、30μm以下の発光層を均一に形成するために平均粒径が0.1μm以上15μm以下の範囲の粒子を使用することが好ましい。また発光層中の蛍光体粒子の充填率に制限しないが、好ましくは60質量%以上95質量%以下の範囲で、より好ましくは80質量%以上90質量%以下の範囲である。本発明の一実施態様において蛍光体粒子の粒子サイズを15μm以下にすることで、発光層の塗膜の膜厚の均一性が向上し、塗膜表面の平滑性も同時に向上する。さらに、単位面積当たりの粒子数が大幅に増加することで、微細な発光ムラが著しく改善できる。さらに、粒子サイズの減少は、蛍光体粒子の印加電圧の増加につながり、発光層の薄層化による発光層への電界強度の増加と併せて、EL素子の輝度向上にとって好ましく、雑音の原因となる振動の抑制にも好ましい。
【0047】
また、本発明の誘電体粒子は、薄膜結晶層であっても粒子形状であってもよい。またそれらの組み合わせであっても良い。誘電体粒子を含む誘電体層は、蛍光体粒子層の片側に設けてもよく、また蛍光体粒子層の両側に設けることが好ましい。誘電体層を塗布で形成する場合は、発光層と同様に、スライドコーター又はエクストルージョンコーターを用いることが好ましい。薄膜結晶層の場合は、基板にスパッタリング等の気相法で形成した薄膜であっても、BaやSrなどのアルコキサイドを用いたゾルゲル膜であっても良い。粒子形状の場合は、蛍光体粒子の大きさに対し十分に小さいことが好ましい。具体的には蛍光体粒子サイズの1/1000以上1/3以下の範囲の大きさが好ましい。
【0048】
本発明の分散型EL素子は、最後に封止フィルムを用いて、外部環境からの湿度や酸素の影響を排除するよう加工する。EL素子を封止する封止フィルムは、40℃〜90%RHにおける水蒸気透過率が0.05g/m2/day以下が好ましく、0.01g/m2/day以下がより好ましい。さらに40℃〜90%RHでの酸素透過率が0.1cm3/m2/day/atm以下が好ましく、0.01cm3/m2/day/atm以下がより好ましい。このような封止フィルムとしては、有機物膜と無機物膜の積層膜が好ましく用いられる。有機物膜としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられ、特にポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂などは吸水性があるため、あらかじめ真空加熱などの処理を施すことで絶乾状態にしたものを用いることがより好ましい。
【0049】
これらの樹脂を塗布などの方法によりシート状に加工したものの上に、無機物膜を蒸着、スパッタリング、CVD法などを用いて堆積させる。堆積させる無機物膜としては、酸化ケイ素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化ケイ素/酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが好ましく用いられ、特に酸化ケイ素がより好ましく用いられる。より低い水蒸気透過率や酸素透過率を得たり、無機物膜が曲げ等によりひび割れることを防止するために、有機物膜と無機物膜の形成を繰り返したり、無機物膜を堆積した有機物膜を、接着剤層を介して複数枚貼り合わせて多層膜とすることが好ましい。有機物膜の膜厚は、5μm以上300μm以下の範囲が好ましく、10μm以上200μm以下の範囲がより好ましい。無機物膜の膜厚は、10nm以上300nm以下の範囲が好ましく、20nm以上200nm以下の範囲がより好ましい。積層した封止フィルムの膜厚は、30μm以上1000μm以下の範囲が好ましく、50μm以上300μm以下の範囲がより好ましい。例えば、40℃〜90%RHにおける水蒸気透過率が0.05g/m2/day以下の封止フィルムを得るためには、上記の有機物膜と無機物膜とが2層ずつ積層された構成では50〜100μmの膜厚で済んでしまうが、従来から封止フィルムとして使用されているポリ塩化三フッ化エチレンでは200μm以上の膜厚を必要とする。封止フィルムの膜厚は、薄い方が光透過性や素子の柔軟性の点で好ましい。
【0050】
この封止フィルムでELセルを封止する場合、2枚の封止フィルムでELセルを挟んで周囲を接着封止しても、1枚の封止フィルムを半分に折って封止フィルムが重なる部分を接着封止しても良い。封止フィルムで封止されるELセルは、ELセルのみを別途作成しても良いし、封止フィルム上に直接ELセルを作成することもできる。また、封止工程は、真空又は露点管理された乾燥雰囲気中で行うことが好ましい。
【0051】
高度な封止加工を実施した場合でも、ELセルの周囲に乾燥剤層を配置することが好ましい。乾燥剤層に用いられる乾燥剤としては、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、紙や吸湿性の高い樹脂などが好ましく用いられるが、特にアルカリ土類金属酸化物が吸湿性能の点でより好ましい。これらの吸湿剤は粉体の状態でも使用することはできるが、例えば樹脂材料と混合して塗布や成形などによりシート状に加工したものを使用したり、樹脂材料と混合した塗布液をディスペンサーなどを用いてEL素子の周囲に塗布したりして乾燥剤層を配置することが好ましい。さらに、ELセルの周囲のみならず、ELセルの下面や上面を乾燥剤で覆うことがより好ましい。この場合、光を取り出す面には透明性の高い乾燥剤層を選択することが好ましい。透明性の高い乾燥剤層としては、ポリアミド系樹脂等を用いることができる。
【0052】
本発明の用途は、特に限定されるものではないが、光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。発光色を白色とする方法としては、例えば、銅とのマンガンが付活され、焼成後に徐冷された硫化亜鉛蛍光体のように単独で白色発光する蛍光体粒子を用いる方法や、3原色又は補色関係に発光する複数の蛍光体を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色のように短い波長で発光させて、蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30以上0.43以下の範囲で、かつy値が0.27以上0.41以下の範囲が好ましい。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
(合成例1)
反応容器に純水150mLとゼラチン2gを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら0.1モル/Lの硫化ナトリウム(Na2S)水溶液150mLと0.1モル/Lの硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。生成した粒子はX線回折パターンから酸化亜鉛であった。また粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、200個の粒子について平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。なお、粒子形成に用いた反応装置の概要を図1に示す。図1において、装置は加熱ヒーター3を具備した耐圧容器1と耐圧蓋2からなり、20MPの圧力に耐えられるよう設計されている。耐圧容器の内部には試料を保持する試料容器4があり、該容器内の試料液は、撹拌装置5によって撹拌される。ヒーター3は、耐圧容器1の周りを螺旋状に取り巻いている。添加液は、30MP耐圧性を有する耐圧精密ポンプ7によって、導入管6を通して、試料液中に添加される。反応装置において試料溶液に接する部品は、全てチタン製で構成されている。
(合成例2)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にゼラチン2gと0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液150mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(合成例3)
合成例1と同様の反応装置の反応容器に純水150mLとポリアクリル酸(平均分子量5000)0.5gを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら0.1モル/Lの硫化ナトリウム(Na2S)水溶液150mLと0.1モル/Lの硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。生成した粒子はX線回折パターンから酸化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
(合成例4)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.5gと0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液150mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
(合成例5)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.5gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液7mLおよび0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液150mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(合成例6)
合成例1と同様の反応装置の反応容器に入れるポリアクリル酸を平均分子量250000のものに代えた以外は、合成例5と同様に実施した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
(合成例7)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.1gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液1.4mLおよび0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液150mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液150mLを同時にゆっくりと添加した。添加終了後、ポリアクリル酸(平均分子量25000)0.4gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液5.6mLを純水50mLに溶解した溶液を、温度を維持したまま反応容器に撹拌しながら添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(合成例8)
特公昭55−10545号公報に記載の図3の撹拌器を用いて、前記合成例7の処方に従って粒子を形成した。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定し、結果を表1に示した。
(合成例9)
特公昭55−10545号公報に記載の図6の撹拌器を用いて、前記合成例7の処方に従って粒子を形成した。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定し、結果を表1に示した。
【0057】
(合成例10)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.1gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液1.4mLおよび0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液15mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液15mLを同時に添加した。続いて、0.1モル/LのNa2S水溶液135mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液135mLを、特公平7−23218号に記載の混合器を用いて室温で混合して微粒子を作り、この微粒子溶液を反応容器に添加して粒子を成長させた。添加終了後、ポリアクリル酸(平均分子量25000)0.4gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液5.6mLを純水50mLに溶解した溶液を、温度を維持したまま反応容器に撹拌しながら添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(合成例11)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.1gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液1.4mLおよび0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.1モル/LのNa2S水溶液15mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液15mLを同時に添加した。続いて、0.1モル/LのNa2S水溶液135mLと0.1モル/LのZn(NO3)2水溶液135mLを、粒子の臨界成長速度の上限(再核発生しない速度)になるように加速しながら溶液を添加し粒子を成長させた。添加終了後、ポリアクリル酸(平均分子量25000)0.4gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液5.6mLを純水50mLに溶解した溶液を、温度を維持したまま反応容器に撹拌しながら添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(合成例12)
合成例1と同様の反応装置の反応容器にポリアクリル酸(平均分子量25000)0.1gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液1.4mLおよび0.1モル/LのNa2S水溶液150mLを加え、300℃(圧力は成り行きで約9MPa)で撹拌しながら、0.2モル/LのNa2S水溶液75mLと0.2モル/LのZn(NO3)2水溶液75mLを同時にゆっくりと添加した。亜鉛が50%添加された時点で、硫酸銅とEDTAが1:1に混ざった溶液75mLと硝酸アルミニウム水溶液75mLを、同時に添加する亜鉛イオンに対してそれぞれ0.1mol%、0.1mol%になるように加えた。添加終了後、ポリアクリル酸(平均分子量25000)0.4gと1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液5.6mLを純水50mLに溶解した溶液を、温度を維持したまま反応容器に撹拌しながら添加した。生成した粒子はX線回折から硫化亜鉛であった。合成例1と同様に平均サイズ、粒子サイズ分布および凝集粒子の全体に占める個数の割合を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果から明らかなように、本発明の合成例3〜12はいずれも、添加された水溶性ビニル高分子が保護コロイドとして作用することにより、粒子の凝集が少なくサイズ分布が狭い一次粒子が調製できることがわかった。
【0062】
実施例2
合成例12で作製した硫化亜鉛蛍光体粒子を用いて、EL素子を作製し発光特性を評価した。なお、下記の各塗布液の粘度は、粘度計(VISCONIC ELD.R及びVISCOMETER CONTROLLER E−200、ローターNo.71、東京計器(株)製、それぞれ商品名)を用い、撹拌(回転数:20rpm)下、16℃液温において測定した。
【0063】
(蛍光体粒子含有塗布液の調製)
合成例12の硫化亜鉛EL蛍光体および結合剤としてシアノレジン(信越化学社製;CR−S、商品名)を下記の組成比でDMF有機溶媒中に添加し、プロペラミキサー(回転数3000rpm)で分散させ、16℃における粘度が0.5Pa・sであるEL蛍光体粒子含有塗布液を調製した。
・合成例12の硫化亜鉛EL蛍光体・・・・・100質量部
・シアノレジン・・・・・・・・・・・・・・25質量部
【0064】
(誘電体微粒子含有塗布液の調製)
誘電体微粒子としてチタン酸バリウム(キャボットスペシャリティケミカルズ製BT−8、商品名:平均粒径120nm)および結合剤としてシアノレジン(信越化学社製;CR−S、商品名)を下記の組成比でDMF有機溶媒中に添加し、プロペラミキサー(回転数3000rpm)で分散させ、25℃における粘度が0.5Pa・sである誘電体微粒子含有塗布液を調製した。
・チタン酸バリウム・・・・・90質量部
・シアノレジン・・・・・・・30質量部
【0065】
(EL素子の作成と評価)
支持体としてITO透明電極がスパッタリングされているポリエチレンテレフタレート(厚み100μm)上に、スライドコーターを用いて前記のEL蛍光体粒子含有塗布液を乾燥塗膜の目標膜厚が10μmになるように塗布した。塗布後、120℃で乾燥して、EL蛍光体層がITO上に形成されたシート状積層体Aを得た。続いてシート状積層体Aを、前述のスライドコーターを配置した塗布装置に再度配置し、発光層の塗布と同様の方法で前記の誘電体微粒子含有塗布液を、塗膜の乾燥膜厚が10μmになるように、塗布、乾燥して、ITO上にEL蛍光体層と誘電体層を積層したシート状積層体Bを得た。シート状積層体Bの上に、背面電極として30μm厚のアルミ箔を貼り合わせ、透明電極と背面電極に電圧を供給するためのリード線を付設した後、全体を封止フィルムで封止してEL素子を得た。このEL素子に100V、1kHzの交流を印加したところ良好な発光特性(高輝度、長寿命)を示した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例で使用した水熱合成用装置の概要説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 耐圧容器
2 耐圧蓋
3 ヒーター
4 試料容器
5 撹拌装置
6 導入管
7 耐圧精密ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃の、水を主とする溶媒を用いた反応系で無機半導体一次粒子を生成させるにあたり、分散媒に少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有させることを特徴とする無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項2】
圧力0.2〜20MPa、温度120〜370℃の、水を主とする溶媒を用いた反応系で少なくとも一種の反応溶液を添加し反応させて無機半導体一次粒子を生成させるにあたり、分散媒に少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有させることを特徴とする無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項3】
前記無機半導体一次粒子の25℃での水に対する溶解度積pKspが17〜40の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性ビニル高分子の平均分子量が1000〜1000000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性ビニル高分子が少なくとも一つのカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性ビニル高分子がポリアクリル酸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項7】
前記無機半導体一次粒子が硫化亜鉛を母体とする組成の粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項8】
硫黄イオンを含む水溶液と亜鉛イオンを含む水溶液を添加し反応させ、且つ反応液中の硫黄イオン濃度が10-5モル/L以上過剰になるように調整して生成した硫化亜鉛を母体とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項9】
アミノ基またはカルボキシル基を有するキレート剤を加えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、平均粒径が0.1〜100μmの無機半導体一次粒子。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、粒子サイズの変動係数が35%以下であることを特徴とする無機半導体一次粒子。
【請求項12】
付活剤として銅、マンガン、銀、金及び希土類元素からなる群から選択された元素を少なくとも一つ含むエレクトロルミネッセンス用の蛍光体粒子であることを特徴とする請求項10又は11に記載の無機半導体一次粒子。
【請求項13】
共付活剤として塩素、臭素、ヨウ素、及びアルミニウムからなる群から選択された元素を少なくとも一つ含むエレクトロルミネッセンス用の蛍光体粒子であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の無機半導体一次粒子。
【請求項14】
少なくとも一種の水溶性ビニル高分子を含有し、水を主とする溶媒中に平均粒径が0.1〜100μmの無機半導体一次粒子が分散された分散物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8451(P2006−8451A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188331(P2004−188331)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】