説明

無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜

【課題】断熱性・遮熱性に優れた無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜を提供する。
【解決手段】無機物質のCa(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)、顔料・着色顔料の中から選択された一つ又は複数の無機質粒子又は粉末を添加成分とし90%以上添加させ形成した無機質塗料に断熱効果を持たせる。また、中に断熱成分として組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、10〜100μmのセラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択された一つ又は複数を容積比で3〜40%添加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物や各種装置等の構造物の壁表面や外部又は内部の表面の塗装に用いられる無機質断熱塗料又は当該無機質塗料を用いた塗膜に関する。また無機質水性塗料を用い、原料成分として分子式Ca(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、 MgO(酸化マグネシウム)を含有させた無機質塗料が塗布されることより形成した塗膜が高い断熱性を持つことに関する。さらに、無機質塗料に遮熱・断熱効果を発揮するセラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空(バルーンともいう)、真空ビーズ(アルミノ珪酸ソーダガラス)の一つ又は複数を添加させることによってより高い遮熱・断熱効果が容易に得られる無機質断熱塗料又は該当無機質を用いた塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズ(アルミノ珪酸ソーダガラス)を含有した塗料を構造体の表面に塗布し形成した被膜が遮熱・断熱効果を発揮する技術が知られている。また無機質の塗料を構造体の表面に塗布し形成した被膜が一定の遮熱・断熱効果を発揮することも知られている。しかし、例えばセラミック系の中空ビーズを断熱成分として含有する有機体質のペイント等はバインダが有機性のため形成した被膜が抗紫外線の性能が弱く効果を発揮する期間が比較的短いことも知られている。
【0003】
上記セラミック系などの中空、真空ビーズを含有するアクリルエマルジョン系ペイント(又はシリコン系、ウレタン系など種類は多様)などの有機質塗料、一般に建築物などの壁、天井、屋根又は鉄部などの表面塗装に用いられ塗布するものである。
【0004】
上記セラミック系などの中空、真空ビーズを含有した有機質塗料の遮熱効果は白色のビーズもしくは淡色による光の反射効果を利用し、断熱としての効果は被膜表面に形成されるビーズ層の低い熱伝導率によって効果が得られるものである。
【0005】
上記含有のセラミック系の中空ビーズは、宇宙航空機の断熱技術を応用した10μ〜100μの粉末状の製品である。
【0006】
この技術を用いた塗料又は塗膜として、以下に示す特許文献などが存在する。
【先行技術文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−105358号公報
【特許文献2】特開2004−10903号公報
【特許文献3】特開平11−80599号公報
【特許文献4】特開2002−186896号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、無機質成分として分子式Ca(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、 MgO(酸化マグネシウム)、顔料・着色顔料の中からの一つ又は複数を90%以上含有し又は添加させることより断熱性を持った無機質塗料を形成させる。さらに形成した無機塗料の中に、断熱成分を加えることより、断熱性・遮熱性の性能を高めさせることのできる無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜を提供する。本発明は断熱成分として組成式CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択した一つ、又は複数の組み合わせを使用する。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行特許文献1〜4に記載された中空などのビーズを塗料に添加させることにより作られた塗料及び被膜は遮熱の効果としては太陽光を反射させることに頼っている。また、被膜の中に形成されたビーズ層がもった低い熱伝導率を利用して断熱効果を得ているものである。
【0010】
上項述べた太陽光に対する反射は、塗膜の色が白色また淡色の場合において効果的であるが、塗膜を濃色にしたり他の仕上げ塗料によって表面に重ね塗りすることによって反射率が下がったり遮熱効果も半減したりすることより樹脂温度も高くなって中空ビーズ層による断熱効果がほぼ機能しなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の目的は、遮熱効果を発揮する反射だけに特化せず、組成式CaCO3(炭酸カルシウム)が高い断熱性を持つことに注目し、無機質水性塗料を用いて、90%以上の無機質の粒子または粉末からなる断熱性高い無機質塗料に、更に断熱成分として、組成式CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズから選択された一つ、または複数の組み合わせを含有させ又は添加させることより強力な断熱性能を発揮させる無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜を提供することにある。そうすることより先行特許文献1〜4に記載された従来では反射効果を妨げる濃色の塗料や塗膜の重ね塗りなど表面の仕上げを自由に選択することが可能となり、また上記先行文献と同等の遮熱効果又はそれ以上の断熱効果が発揮する無機質断熱塗料又は無機質塗膜を提供することが可能になった。
【0012】
上記課題を解決するための本発明が第1に塗料の添加成分として無機質のCa(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、MgOの中から選択された一つ、または複数の組み合わせからなる粉末又は粒子の添加量が90%以上含有され、又は添加されることより、断熱の効果を持つ無機質塗料を形成させることを特徴としている。
【0013】
上記課題を解決するための本発明が第2に上記作成された無機質塗料が、更に断熱成分として組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択された一つ、または複数の組み合わせを使用することを特徴としている。
【0014】
上記課題を解決するための本発明が第3に組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、10〜100μmのセラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択された一つ又は複数の組み合わせを断熱成分とし、その添加量を無機質粒子または粉末からなる無機質塗料の全添加成分に対して容積比で3〜40%含有し、又は添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
第一に特に本発明の無機質塗料は、断熱性に優れた組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択した一つ、または複数の組み合わせを添加させることより更なる断熱とした効果が十分に発揮できるため、塗膜の上に他の塗料を重ね塗っても、濃色によって遮熱効果を妨げても厚さが0.5mm〜30mmである塗膜の断熱効果が強力である塗膜形成が可能になった。
【0016】
第二に本発明で使用する塗料は、添加成分としたCa(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、MgOの粉末または粒子が無機質な特性を持ち、中から選択された一つ、または複数の組み合わせから作られた塗料も無機質塗料となって断熱性と不燃性の特徴も持ち、塗布されることより形成された塗膜も断熱効果も発揮する。そして断熱性の優れた組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、セラミック系の中空、真空ビーズを更に添加させたため、断熱の相乗効果でもって断熱性の強力な無機質塗膜を形成することが可能になった。
【0017】
第三に本発明で使用する塗料は可塑性を持った水性無機質のバインダを使用し全添加成分も主として無機質のため、無機質塗料とする性能を発揮する期間も長く、また抗紫外線、耐久性、不燃性という無機質塗料とした固有の特徴を持ち、人にも環境にも優しい。
【0018】
第四に本発明で使用する無機質塗料は塗料とした効果を発揮する期間も長く、断熱効果に優れた上記組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、セラミック系などの中空や真空ビーズを特に使用することより建築物や各種装置の表面に強力な断熱性を持った塗膜を形成させて、建築物または各種装置の使用期間をより長くすることが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の塗料は、添加成分として無機質のCa(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)から選択された一つ、または複数の組み合わせを90%以上利用して無機質のものとなる。
【0020】
本発明の上記無機質塗料は、断熱成分として断熱性の優れた組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、セラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空、真空ビーズの中から選択された一つ、または複数の組み合わせを使用する。作られた無機質塗料は、塗布によって形成された無機質塗膜に断熱の効果を発揮させることを特徴とする。選択した上記断熱成分の添加量は塗料の粒子状または粉末状の全添加成分に対して容積比で3〜40%と含有又は添加することより、滑らかで均一の無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜を得ることが可能になる。
【0021】
本発明の上記無機質断熱塗料は、塗布によって形成された塗膜も優れた断熱性を持った無機の体質も有する。
【0022】
本発明の上記無機質断熱塗料は、水性無機質のバインダを利用することより、可塑性を持つクリーム状の水性無機質断熱塗料となり、例えば建築物の壁面に塗布し、水が蒸発すると縮合反応が進行して断熱性の高い無機質断熱塗膜、またはアモルファス膜を形成してその一部が機械的に例えばコンクリートなどの無機質の基材に食いつき剥がれない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明での上記クリーム状の水性無機質断熱塗料の製造に当たっては、添加成分の殆どが市販されていて、配合自体も容易である。
【0024】
本発明の無機質断熱塗料は、塗布方法が塗布対象物に対してローラー塗り、刷毛塗り、コテ塗りなどを選択して塗布されることより容易に無機質断熱塗膜が形成することが可能である。
【0025】
本発明の無機質塗料又は無機質塗膜の性能を表現するための実験の実施例を以下に示す。この実施例での機材の準備については、先ず均一厚み1cmで、一辺の長さが15cmの正方形の白色タイルをこの実験での試料として5枚用意して置く。そして従来用いられる例えば白色の可塑性のあったクリーム状の水性無機質塗料も用意し、二つ分けてそれぞれ焼成された白色、または黄色のセラミックの中空ビーズをそれぞれ体積比10%で、二つの無機塗料の中にソレゾレ添加させて水を適切に入れ十分に混練した上で白色又は黄色の無機質断熱塗料を2種類に分けて作って置く。更に組成式CaCO3(炭酸カルシウム)を白色の可塑性のあったクリーム状の水性無機質塗料に体積比20%添加させて水を適切にいれて十分に混練する。
【0026】
本発明の実施例の試料作成について、第1に上記試料タイルの一枚目はAと呼ばれて、そのままの状態にして置く。第2に上記試料タイルの2枚目はBと呼ばれて、表面の上に可塑性のあった白色のクリーム状の水性無機質塗料を2回塗りで厚み2mmの塗膜に白色で仕上げる。第3に上記タイルの3枚目はCと呼ばれて、表面の上に本発明の上記用意された白色無機質断熱塗料を2回塗りで厚さ2mmの塗膜に白く仕上げる。第4に上記タイルの4枚目はDと呼ばれて、表面の上に本発明の上記用意された黄色無機質断熱塗料を2回塗りで厚さ2mmの塗膜に黄色いに仕上げる。第5に上記タイルの5枚目はEと呼ばれて、表面の上に本発明の上記用意された組成式CaCO3(炭酸カルシウム)の無機質断熱塗料を2回塗りで厚さ2mmの塗膜に仕上げる。上記試料タイル板BとCとDとEの塗膜を7ディー経て自然乾燥させる。
【0027】
本発明の実験実施例の主な機材としては、一つ目は上記A、B、C、D、E試料タイル板、二つ目は熱源として100℃のお湯、三つ目は市販の高さが15cmで口の直径が10cmの鉄製容器を5つ購入し熱をあまり発散させないように工夫しておき、五つ目は5本の温度計である。
【0028】
本発明の実験の実施に当たって、予め上記5つの温度計を室温と同一温度にしておく。そして100℃のお湯を5人が同時に上記それぞれの鉄製容器の口まであと5mmのところに入れ、それから上記5枚の試料タイル板の表面又は塗布面を上にして上記5つ鉄製容器に5人で同時に蓋をする。温度の測定にあたっては、時系列において読み取ろうとする温度には誤差が出ないように5枚の試料タイル板に対して5つの温度計から5人が同時に読み取る。測定に当たって蓋にした温度上昇の様子、又は外れた蓋の高い温度の状態から温度下降の様子を試料タイルごとに測定する。最後に温度上昇の様子、と温度下降の様子をソレゾレ時間−温度のグラフにする。
【0029】
上記の実施方法で、蓋にした状態の上記5枚試料タイル板の温度上昇の様子を1分毎に10分間、測定し記録する。それから鉄製容器から外した上記5枚試料タイル板の温度上昇の状態から温度降下していく様子を1分毎に10分間、測定し記録する。記録されたデータを温度上昇の状態、また温度下降の状態をそれぞれ時間−温度のグラフにする
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】は比較実験として上記5枚試料タイル板の温度上昇の様子を示す時間−温度グラフである。
【0031】
【図2】は比較実験として上記5枚試料タイル板の温度の上昇状態から温度の下降していく状態を示す時間−温度グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質添加成分とするCa(OH)2(消石灰)、CaO(生石灰)、CaCO3(炭酸カルシウム)、SiO2(二酸化珪素)、CaSiO3(ケイ酸カルシウム)、TiO2(二酸化チタン)、MgO(酸化マグネシウム)の中から選択された一つ又は複数を含有する無機質塗料を利用することを特徴とする無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。
【請求項2】
「請求項1」に記載の無機質添加成分の一つ又は複数の組み合わせの含有量として、90%以上含有する無機質塗料を利用することを特徴とする無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。
【請求項3】
断熱成分として組成式CaCO3(炭酸カルシウム)、10〜100μmのセラミック系、フライアッシュ系、ガラス系の中空又は真空のビーズの中から選択された任意の一つ又は複数の組み合わせを含有する無機質塗料を利用することを特徴とする「請求項1」、「請求項2」に記載の無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。
【請求項4】
「請求項3」に記載の断熱成分から選択された任意の一つ又は複数の組み合わせの含有量を「請求項1」に記載の無機質塗料の全添加成分に対して容積比で3〜40%添加させる無機質塗料を利用することを特徴とする「請求項1」、「請求項2」、「請求項3」に記載の無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。
【請求項5】
「請求項1」に記載の無機質添加成分と「請求項3」に記載の断熱成分の組み合わせを含有する無機質塗料を利用することを特徴とする「請求項1」、「請求項2」、「請求項3」、「請求項4」に記載の無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。
【請求項6】
「請求項1」に記載の無機質添加成分を90%以上含有し、この全含有量に対して「請求項3」に記載の断熱成分の添加量を容積比で3〜40%添加させ、上記2種の合計重量に対して水性無機質塗料を重量比で35%〜50%用いたことによって作られた無機質塗料を利用することを特徴とする「請求項1」、「請求項2」、「請求項3」、「請求項4」、「請求項5」に記載の無機質断熱塗料又は無機質断熱塗膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−7015(P2013−7015A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152296(P2011−152296)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501329253)
【Fターム(参考)】