説明

無端帯状部材の製造方法及び面ファスナー付き帯状部材

【課題】 短時間でろ布等の無端帯状部材の取替えが可能で、装置の安定運転を阻害せず、長さ方向の微調整も可能で、ほつれによる接合部の解離もなく、安価な材料で無端帯状部材を製造する方法等を提供する。
【解決手段】 帯状部材2の両端部の各々に面ファスナー3〜5を縫合し、両端部の各々の面ファスナー3〜5を互いに貼り合わせた面ファスナー付き帯状部材1を用い、面ファスナー3〜5を接合して無端帯状部材を製造する。面ファスナー3〜5の接合だけで無端帯状部材が完成するので、ベルトフィルターのろ布(帯状部材)等の取り替え等に利用すると、極めて短時間にろ布を交換することができる。通気性のある面ファスナーを用いると、接合部でろ過を行うこともでき、ムラなく固液分離等を行うことができる。帯状部材2の各々の端部に複数枚の面ファスナーを縫合し、重ね合わせ、接合部の強度を増強することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状部材の製造方法及び面ファスナー付き帯状部材に関し、特に、ベルトフィルター等に用いられるろ布や、比較的軽量の輸送物を取り扱うコンベアベルト等の無端帯状部材の製造方法及び面ファスナー付き帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
スラリー等の固液分離に用いられるベルトフィルターは、例えば、図5に示すように、真空源25A、25Bに連通し、上方が開口する箱状に形成された真空トレイ24A、24Bと、真空トレイ24A、24Bの上方に設けられたグリッド23と、グリッド23の上方を走行する無端ろ布22等を備える。無端ろ布22は、複数のローラ28(28A〜28C等)によって支持されて矢印方向に回転する。無端ろ布22の上方には、スラリー等を供給するための供給トレイ30と、スラリーを洗浄するための液体を供給する洗浄水トレイ31が配置される。また、無端ろ布22のろ過部以外の部分で無端ろ布22を洗浄するため、高圧水等を噴射するろ布洗浄ノズル32が配置される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、真空源25A、25Bによって真空トレイ24A、24Bの真空度を高くした状態で、供給トレイ30から無端ろ布22の上にスラリーを供給し、無端ろ布22上で、洗浄水トレイ31から供給される液体によって洗浄しながらスラリーを真空ろ過する。尚、無端ろ布22からの剥離が不完全であった付着ケークは、ろ布洗浄ノズル32によって除去される。
【0004】
上記構成を有するベルトフィルター21の運転を継続すると、次第に無端ろ布22が消耗するとともに、無端ろ布22が目詰まりし、最終的には安定運転を継続することができなくなるため、無端ろ布22を定期的に取り替える必要がある。無端ろ布22を取り外した後、新たな無端ろ布を装置に装着する際には、リターンローラ28A、テンションローラ28C等を取り外す必要があるため、無端ろ布22の交換作業に長時間を要していた。
【0005】
また、予め無端状に形成されたものではなく、帯状のろ布を装置に搬入した後、両端部を縫合糸で縫い合わせて新たに無端ろ布22を形成することも実施され、また、提案されているが(例えば、特許文献2参照)、やはり、縫合作業に長時間を要し、その間、ベルトフィルター21の運転を停止する必要があった。
【0006】
さらに、この方法では、縫合作業が手作業となるため、接合の出来、不出来によってろ布の破損やほつれが生じ、ろ布の寿命が左右されていた。また、ろ布を縫い合わせる際には、エポキシ樹脂等でろ布がほつれないように処理していたが、樹脂部分は通気性、通液性がないため、この部分でスラリーをろ過することができなくなる。そのため、水分が高い状態で、スラリーが無端ろ布22に付着したままリターンローラ28Aに達すると、リターンローラ28Aの近傍を汚染したり、洗浄装置33を閉塞させるなどの問題があった。
【0007】
そこで、上記問題を解決するため、図6に示すように、ろ布40をランナー41を有するファスナー42で接合することも行われている。このファスナー42を用いると、ろ布40をベルトフィルター等の装置に搬入した後、ろ布40の両端部をファスナー42を介して接合するだけで無端ろ布の装置への装着が完了するため、短時間でろ布の交換を行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−275508号公報
【特許文献2】特開2004−105884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記図6に示したランナー付きファスナー42を用いると、ファスナー42が厚く、硬いため、ろ布40を回転させるためのキャリアローラ、リターンローラ等の部分でろ布40が滑り、安定して装置の運転を継続することができないおそれがあった。また、ろ布40にスクレーパーを近づけることができず、ろ布40全体の掻き取りが不十分になるおそれもあった。さらに、ファスナー42では、ろ布40の長さ方向の微調整ができないため、ろ布40の蛇行を防止するのが困難であった。これらに加え、ファスナー42を閉じた後は、ランナー41を取り外し、ステープラー等の金具で離れ止めをする必要もあり、ほつれによって接合部が解離するおそれもあった。また、塩水をろ過する場合には、高級なニッケル合金等を用いる必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、短時間でろ布等の無端帯状部材の取り替えを可能とし、装置の安定運転を阻害することなく、無端帯状部材の長さ方向の微調整も可能で、ほつれによって接合部が解離するおそれもなく、高価な材料を用いる必要もない無端帯状部材の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、無端帯状部材の製造方法であって、帯状部材の両端部を面ファスナーを用いて接合することを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、面ファスナーを用いて帯状部材の両端部を接合するだけで無端帯状部材を製造することができるため、ベルトフィルターのろ布等の取り替え等に利用すると、リターンローラや、テンションローラ等を取り外す必要もなく、極めて短時間に無端ろ布の交換作業を行うことができる。また、接合部には面ファスナーが存在するだけで、他の部分に比較して接合部がそれ程厚くなることがないため、装置の安定運転を阻害することもない。さらに、無端帯状部材の長さ方向の微調整も可能であり、ほつれによって接合部が解離するおそれもなく、高価な材料を用いる必要もない。
【0013】
前記無端帯状部材の製造方法において、前記面ファスナーに通気性を有するものを使用することができる。これによって、面ファスナーをベルトフィルターのろ布等の接合に用いた場合でも、接合部でろ過を行うことができるため、スラリーが無端ろ布に付着したままリターンローラに達し、このローラの近傍を汚染したり、ろ布を洗浄するための洗浄装置を閉塞させるなどの不具合を防止することができる。
【0014】
前記無端帯状部材の製造方法において、一端部にN+1枚(Nは1以上の整数)の面ファスナーを縫合し、他端部にN枚の面ファスナーを縫合し、該N+1枚の面ファスナーと、該N枚の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより前記両端部を接合することができる。これにより、帯状部材の接合部に必要な強度に合わせて、端部に縫合する面ファスナーの重ね合わせ枚数を変化させることができ、重ね合わせ枚数を増加させることにより、より強固に帯状部材を接合することができる。
【0015】
また、本発明は、面ファスナー付き帯状部材であって、帯状部材の両端部の各々に面ファスナーを縫合し、該両端部の各々の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより無端帯状部材を形成可能であることを特徴とする。この面ファスナー付き帯状部材を用いることにより、簡単に無端帯状部材を製造することができ、上述のように、ベルトフィルターのろ布等の取り替え等に利用すると、極めて短時間に無端ろ布の交換作業を行うことができ、装置の安定運転を阻害することもなく、無端帯状部材の長さ方向の微調整も可能で、ほつれによって接合部が解離するおそれもなく、高価な材料も不要である。
【0016】
前記面ファスナー付き帯状部材において、前記面ファスナーに通気性を有するものを用いることができる。これによって、上述のように、面ファスナーをベルトフィルターのろ布等の接合に用いた場合でも、リターンローラの近傍を汚染したり、洗浄装置を閉塞させるなどの不具合が発生することがない。
【0017】
前記面ファスナー付き帯状部材において、帯状部材の一端部にN+1枚(Nは1以上の整数)の面ファスナーを縫合し、他端部にN枚の面ファスナーを縫合し、該N+1枚の面ファスナーと、該N枚の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより無端帯状部材を形成可能とすることができる。これによって、上述のように、接合部に必要な強度に合わせて、端部に縫合する面ファスナーの重ね合わせ枚数を調整することができる。
【0018】
前記面ファスナー付き帯状部材において、前記帯状部材を、ろ布またはコンベアベルトとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、短時間でろ布等の無端帯状部材の取り替えが可能で、装置の安定運転を阻害することもなく、無端帯状部材の長さ方向の微調整も可能で、ほつれによって接合部が解離するおそれもなく、安価な材料で無端帯状部材を製造する方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明にかかる面ファスナー付き帯状部材の第1の実施の形態を示し、この面ファスナー付き帯状部材1は、帯状部材2と、帯状部材2の両端部の各々に縫合された面ファスナー3、4、5とで構成される。
【0021】
帯状部材2は、例えば、ろ布や、比較的軽量の輸送物を取り扱うコンベアベルト等であって、無端帯状に成形した後、各種装置に用いられるものである。
【0022】
面ファスナー3は、左側端部が帯状部材2に縫合され、他端は自由端となっている。面ファスナー3の下面にファスナーとして機能する係合面が形成され、上面はファスナーとして機能しない滑らかな表面を有する片面ファスナーである。
【0023】
面ファスナー4は、面ファスナー3と同様に、左側端部が帯状部材2に縫合され、他端は自由端となっているが、面ファスナー4の上面にファスナーとして機能する係合面が形成され、下面はファスナーとして機能しない滑らかな表面を有する片面ファスナーである。
【0024】
一方、面ファスナー5は、右側端部が帯状部材2に縫合され、他端は自由端となっている。面ファスナー5の上下両面に、ファスナーとして機能する係合面が形成される両面ファスナーである。
【0025】
上記ファスナー3〜5は、濡れても接合力が低下せず、温度が上昇しても所定の繊維強度を維持することができ、ローラ等の屈曲に対して柔軟に追従することが必要である。
【0026】
そして、面ファスナー付き帯状部材1を無端状とする際には、図2に示すように、面ファスナー3と面ファスナー4との間に、面ファスナー5を挿入し、面ファスナー3と面ファスナー5、及び面ファスナー4と面ファスナー5を互いに係合させると、簡単に無端帯状部材を形成することができる。
【0027】
上述のようにして無端帯状部材を形成すると、接合部には面ファスナー3、4、5が存在するだけで、他の部分に比較して接合部がそれ程厚くなることがなく、面ファスナー付き帯状部材1をベルトフィルターのろ布として使用した場合でも、ろ過物の掻き取りが不十分になることもない。また、面ファスナー3、4と、面ファスナー5の位置関係を調整することにより、簡単に帯状部材2の長さ方向の微調整を行うことができるため、蛇行防止も容易である。さらに、面ファスナー3、4、5をナイロン等の樹脂製とすることで、錆びを生じさせることもない。
【0028】
尚、面ファスナー付き帯状部材1をベルトフィルターのろ布として使用する場合には、面ファスナー3、4、5を通気性を有する材料で形成すると、接合部においてもろ過を行うことができ、従来のように、スラリーがろ布に付着したままリターンローラに達し、このローラの近傍を汚染したり、ろ布を洗浄するための洗浄装置を閉塞させるなどの不具合を解消することもできる。
【0029】
図3は、本発明にかかる帯状部材の第2の実施の形態を示し、この面ファスナー付き帯状部材11は、帯状部材12と、帯状部材12の両端部の各々に縫合された面ファスナー13〜19とで構成される。
【0030】
帯状部材12は、帯状部材2と同様、ろ布や、比較的軽量の輸送物を取り扱うコンベアベルト等である。
【0031】
面ファスナー13は、左側端部が帯状部材12に縫合され、他端は自由端となっている。面ファスナー13の下面にファスナーとして機能する係合面が形成され、上面はファスナーとして機能しない滑らかな表面を有する片面ファスナーである。
【0032】
面ファスナー14、15は、面ファスナー13と同様に、左側端部が帯状部材12に縫合され、他端は自由端となっている。面ファスナー14、15の上下両面に、ファスナーとして機能する係合面が形成される両面ファスナーである。
【0033】
面ファスナー16は、面ファスナー13と同様に、左側端部が帯状部材2に縫合され、他端は自由端となっているが、面ファスナー16の上面にファスナーとして機能する係合面が形成され、各々の下面はファスナーとして機能しない滑らかな表面を有する片面ファスナーである。
【0034】
面ファスナー17〜19は、右側端部が帯状部材12に縫合され、他端は自由端となっている。面ファスナー17〜19の上下両面に、ファスナーとして機能する係合面が形成される両面ファスナーである。
【0035】
そして、図4に示すように、面ファスナー13〜16と面ファスナー17〜19を一枚毎に交互に重ね合わせて互いに係合させることにより、強固に帯状部材12の両端部を接合することができる。このように、接合部に必要な強度に合わせて帯状部材12の両端部の各々に縫合する面ファスナーの重ね合わせ枚数を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる面ファスナー付き帯状部材の第1の実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】図1に示した面ファスナー付き帯状部材を用いて無端帯状部材を形成した状態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明にかかる面ファスナー付き帯状部材の第2の実施の形態を示す正面図である。
【図4】図3に示した面ファスナー付き帯状部材を用いて無端帯状部材を形成した状態を示す接合部の拡大正面図である。
【図5】従来のベルトフィルターの一例を示す正面図である。
【図6】従来のランナーを有するファスナーを用いたろ布の接合方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 面ファスナー付き帯状部材
2 帯状部材
3〜5 面ファスナー
11 面ファスナー付き帯状部材
12 帯状部材
13〜19 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材の両端部を面ファスナーを用いて接合することを特徴とする無端帯状部材の製造方法。
【請求項2】
前記面ファスナーは、通気性を有することを特徴とする請求項1に記載の無端帯状部材の製造方法。
【請求項3】
一端部にN+1枚(Nは1以上の整数)の面ファスナーを縫合し、他端部にN枚の面ファスナーを縫合し、該N+1枚の面ファスナーと、該N枚の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより前記両端部を接合することを特徴とする請求項1または2に記載の無端帯状部材の製造方法。
【請求項4】
帯状部材の両端部の各々に面ファスナーを縫合し、該両端部の各々の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより無端帯状部材を形成可能であることを特徴とする面ファスナー付き帯状部材。
【請求項5】
前記面ファスナーは、通気性を有することを特徴とする請求項4に記載の面ファスナー付き帯状部材。
【請求項6】
帯状部材の一端部にN+1枚(Nは1以上の整数)の面ファスナーを縫合し、他端部にN枚の面ファスナーを縫合し、該N+1枚の面ファスナーと、該N枚の面ファスナーを互いに貼り合わせることにより無端帯状部材を形成可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の面ファスナー付き帯状部材。
【請求項7】
前記帯状部材は、ろ布またはコンベアベルトであることを特徴とする請求項4、5または6に記載の面ファスナー付き帯状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−703(P2006−703A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177068(P2004−177068)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】