説明

無線リモコン端末及びプログラム

【課題】リモコン本体とその収納ケースとを相対的にスライドさせてアンテナ長を自在に可変することが可能な無線リモコン端末において、操作部による操作性を改善すると共に使用時の通信状態を安定化させ、且つ簡素な構造が実現するようにする。
【解決手段】収納ケース50の下側をリモコン本体10の出入り用に開口し、リモコン本体10の下部に操作部22を配置して、操作部22の位置を収納ケース50の開口部51の近くなるようにする。これによって、スライド操作時に迅速に操作部22を出現させる。また、リモコン本体10の上部にアンテナ導入手段を設け、収納ケース50及びリモコン本体10によるスライド動作と、アンテナの伸縮動作とを連動させて、使用時には操作者の身体からアンテナが遠ざかるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線リモコン端末等に関し、さらに詳しくは、端末本体をケースに収納することができる無線リモコン端末等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末本体をケースに収納することができる通信端末としては、例えば、特許文献1に記載されるものがあった。
この通信端末は、アンテナが内蔵された端末本体と、この端末本体と相対的にスライドする収納ケースとを備えている。このスライド動作のために、端末本体の長手方向両側面には突条部が形成され、収納ケースの長手方向内側両側面には上記突条部に係合する略断面凹形状のレール部が形成されている。
【0003】
突条部の外側面とレール部の内側面にはそれぞれ導体が敷設され、これら導体がアンテナに電気的に接続される。そして、端末本体と収納ケースのスライド操作により、アンテナのアース長が伸縮自在となるように構成されている。
【0004】
また、端末本体の表面部には、表示情報を確認しながら操作を行えるように、上部に表示部が配置され、下部に操作部が配置されており、収納ケースのスライド操作により収納ケースから端末本体を引き出す際には、収納ケースの開口から、まず端末本体の表示部が出現し、続いて操作部が出現するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−179674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記公報の通信端末では、収納ケースから端末本体を引き出す際に、収納ケースの開口から、端末本体の表示部の後に操作部が出現するようになるため、表示確認よりも操作部による操作を優先させたい場合や、表示確認不要の操作を行うような場合には、迅速に操作部を引き出すことができず、操作性が悪かった。
【0007】
また、端末本体側に突条部を設け収納ケース側にレール部を形成して、端末本体と収納ケースとを相対的にスライド自在とし、さらに突条部とレール部のそれぞれにアンテナ長伸縮用の導体を敷設している。このような複雑な構成では製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、操作者が収納ケースから端末本体の操作部を引き出して操作する際に、アンテナ長伸縮用の上記導体が人体に近づくようになるため、ボディエフェクトによってアンテナ特性が変化し、通信動作が不安定になるという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、係る問題を解決するためになされたもので、リモコン本体とその収納ケースとを相対的にスライドさせてアンテナ長を自在に可変することが可能な構成において、操作部による操作性を改善すると共に使用時の通信状態を安定化させ、且つ簡素な構造が実現する無線リモコン端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点では、本発明は、アンテナ長が可変なアンテナと接続された無線通信部を有し、少なくとも、操作部からの操作信号を前記無線通信部により外部の被制御装置へ送信するリモコン本体と、前記アンテナの伸縮方向へ該リモコン本体と相対的にスライドすると共にスライド方向一方側が前記リモコン本体の出入り用に開口し、前記リモコン本体及び前記アンテナを収納する収納ケースとを備え、前記リモコン本体のスライド方向一方側に前記操作部を配置し、前記収納ケースのスライド動作と前記アンテナ長の可変動作とが連動するように構成したことを特徴とする無線リモコン端末を提供する。
【0011】
上記第1の観点による無線リモコン端末では、収納ケースのスライド方向一方側がリモコン本体出入り用に開口し、リモコン本体のスライド方向一方側に操作部を配置したので、操作部の位置が収納ケースの開口に近くなる。これにより、収納ケースから操作部を迅速に出現させることができ、操作性が向上する。
【0012】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による無線リモコン端末において、前記収納ケースのスライド動作と前記アンテナ長の可変動作との連動により、前記アンテナが、スライド方向他方側への伸長、またはスライド方向一方側への収縮を行うことを特徴とする。
【0013】
上記第2の観点による無線リモコン端末では、収納ケースの開口からのリモコン本体の出入りに応じて、アンテナ長可変動作を的確に行うことができる。
【0014】
第3の観点では、本発明は、前記第1又は2の観点による無線リモコン端末において、前記収納ケースのスライド最大位置は、使用の無線周波数で定まる必要アンテナ長に対応する前記リモコン本体のスライド方向他方側の部位であり、前記収納ケースのスライド最小位置は、前記リモコン本体のスライド方向一方側の端部であることを特徴とする。
【0015】
上記第3の観点による無線リモコン端末では、収納ケースがスライド最大となる収納ケースオープン時には、アンテナのアンテナ長を使用無線周波数で定まる必要アンテナ長まで確実に伸長することができる。さらに、収納ケースがスライド最小となる収納ケースクローズ時には、リモコン本体全体が収納ケースで覆われるので、リモコン本体を防水構造に近い状態にすることができる。
【0016】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点による無線リモコン端末において、前記スライド最大位置に対応する前記リモコン本体のスライド方向他方側に、前記収納ケースの脱落を防止するための係合手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
上記第4の観点による無線リモコン端末では、収納ケースのスライド限界がリモコン本体のスライド方向他方側の部位となり、スライド動作時に収納ケースの脱落を確実に防止することができる。
【0018】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第4のいずれかの観点による無線リモコン端末において、前記アンテナは、伸縮式のロッドアンテナで構成し、前記ロッドアンテナの頂部を、前記収納ケースにおけるスライド方向他方側の面の内側に固定したことを特徴とする。
【0019】
上記第5の観点による無線リモコン端末では、無線リモコン端末に元々存在するアンテナを利用して、収納ケースのスライド動作とアンテナのアンテナ長可変動作とを連動させることができるので、簡素な構造が実現し、低コスト化を図ることができる。
【0020】
第6の観点では、本発明は、前記第5の観点による無線リモコン端末において、前記ロッドアンテナの頂部の固定は、該頂部にネジ孔を設け、前記収納ケースにおけるスライド方向他方側の面の外側からネジで固定したことを特徴とする。
【0021】
上記第6の観点による無線リモコン端末では、ロッドアンテナの頂部が収納ケースのスライド方向他方側の面に確実に固定されるので、上記した、収納ケースの脱落を防止するための係合手段を省略することができ、端末の小型化を実現することができる。
【0022】
第7の観点では、本発明は、前記第1から前記第6のいずれかの観点による無線リモコン端末において、前記リモコン本体のスライド方向他方側に情報表示部を配置し、前記情報表示部に対応する前記収納ケースの部分を透明又は半透明で構成したことを特徴とする。
【0023】
上記第7の観点による無線リモコン端末では、情報表示部での表示情報確認よりも操作部による操作を優先させたい場合や、表示情報確認不要の操作を行うような場合は勿論、操作前に表示情報確認が必要な操作であっても、操作部を収納ケースから迅速に出現させることができる。
【0024】
第8の観点では、本発明は、前記第1から前記第7のいずれかの観点による無線リモコン端末において、前記スライド方向一方側は、前記リモコン本体及び前記収納ケースの下側であり、前記スライド方向他方側は、前記リモコン本体及び前記収納ケースの上側であることを特徴とする。
【0025】
第8の観点による無線リモコン端末では、操作者が収納ケースからリモコン本体を出現させて使用する際に、アンテナが人体から遠ざかるようになるため、ボディエフェクトによるアンテナ特性の悪影響を回避することができ、通信動作が安定する。
【0026】
第9の観点では、本発明は、前記第7又は第8の観点による無線リモコン端末において、前記収納ケースのスライドに伴い、前記情報表示部を前記収納ケースの一部が覆う状態と覆わない状態とを採り、前記収納ケースが前記情報表示部を覆う状態では、前記情報表示部以外の報知手段によって報知を行う制御手段を備えることを特徴とする。
【0027】
第9の観点による無線リモコン端末では、操作者は、収納ケースが情報表示部を覆う状態では、情報表示部以外の報知手段による報知を受けることができる。例えば、情報表示部に表示する内容と報知手段の報知内容とを同一に構成すれば、操作者は、収納ケースが情報表示部を覆う状態でも、その内容を確認できる。また、例えば、情報表示部に表示する内容があることを知らせる報知を報知手段から行うように構成すれば、収納ケースが情報表示部を覆う状態でも、情報表示部に表示する内容があることを知ることができる。例えば、情報表示部に表示する表示内容に更新があった場合に、報知手段から報知するとよい。また、例えば、報知手段により、収納ケースが十分なオープン状態になっていないことを知らせる報知をするとよい。このようにすれば、収納ケースが十分なオープン状態になっていないことを知ることができるため、アンテナ長が適切な長さになく、通信がベストな状態で行えない状態であることを知らせることができる。
【0028】
なお、情報表示部を収納ケースの一部が覆わない状態の場合には報知手段による報知を抑制するとよい。抑制するとは、例えば、報知しないようにしたり、あるいは、報知の度合いを小さくするようにしたりするとよい。報知手段は例えば視覚以外で認識できる報知態様をとるとよく、例えば、音を出力する音出力手段としたり、あるいはバイブレータ等を駆動して振動を発生させる振動発生手段としたりするとよい。
【0029】
第10の観点では、コンピュータに、前記第9の観点による無線リモコン端末としての機能を実現させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の無線リモコン端末によれば、操作部を有するリモコン本体とその収納ケースとを相対的にスライドさせてアンテナ長を自在に可変することが可能な構成において、操作部による操作性が改善すると共に使用時の通信動作を安定化させることができ、また簡素な構造を実現して低コスト化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図である。
【図2】リモコン本体の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る無線リモコン端末のクローズ状態を示す外観斜視図である。
【図4】実施例2に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図である。
【図5】実施例3に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図である。なお、収納ケース50は透視的に表示してある。
この無線リモコン端末は、例えば、車両の外部から無線でエンジン起動やセキュリティ起動を行うもので、図1に示すように、リモコン本体10と、リモコン本体10及びアンテナ11を収納する収納ケース50とを具備している。
【0034】
リモコン本体10は、外形が扁平な直方体で形成され、その四隅の形状は円弧状のカーブを成す。このリモコン本体10と同様の外形を有する収納ケース50は、例えば樹脂から成り、アンテナ11が伸び縮みする方向(本明細書において、単に「上下方向」ということがある。この場合、アンテナ11が伸びる方向を「上方向」、その逆向きを「下方向」という。)へ該リモコン本体10と相対的にスライドすると共に、ケース下面が開口部51としてリモコン本体10の出入り用に開口してある。
【0035】
リモコン本体10の上面12には、伸縮式のロッドアンテナで構成されるアンテナ11が突出している。そして、ロッドアンテナ11の頂部11aは、収納ケース50の上側内壁面52に接着剤で固定されている。このような構成により、収納ケース50及びリモコン本体10によるスライド動作と、ロッドアンテナ11の伸縮によるアンテナ長の可変動作とが連動するように構成されている。
【0036】
伸縮式のロッドアンテナ11は、径の異なる複数のアンテナエレメントを同心的に配置して構成されている。伸長時には、最大径エレメントから最小径エレメントまで多段的に延び、且つ小径側エレメントが大径側エレメントから抜けないようになっている。そして、最小径エレメントを引き出すことによって、それ以上は伸長しないアンテナ全長に達する。このようにして、使用無線周波数で定まる必要アンテナ長を確保することができる。
【0037】
また、リモコン本体10における左右両側上部の側面13、14には、スライド操作時に収納ケース50がリモコン本体10から脱落するのを防止するための係合爪15、16がそれぞれ突設されている。一方、収納ケース50の左右両側内壁面53,54の下部には、リモコン本体10側の上記係合爪15、16に係合させるための係合爪55、56が突設されている。これら係合爪が係合する位置は、スライド最大位置、つまりロッドアンテナ11がアンテナ全長に達する位置に対応する。このように、これら係合爪によって、収納ケース50とリモコン本体10とによるスライド動作が規制され、スライド操作時においてリモコン本体10からの収納ケース50の脱落を確実に防止することができる。
【0038】
また、リモコン本体10の正面側上部には液晶等から成る情報表示部21が配置され、その下部には静電式タッチスイッチ等から成る操作部22が配置されている。操作部22には、例えば、エンジンスタート/ストップ用のタッチスイッチや、ドアロック/アンロック用のタッチスイッチなどが配列されている。
【0039】
リモコン本体10の上面12には、上記ロッドアンテナ11と所定の間隔をおいてバネ式ボタンスイッチ31が配置され、リモコン本体10の下面17には、キーホルダ用の孔部18が形成されている。バネ式ボタンスイッチ31は、収納ケース50のオープン時にバネの弾発力により接点が接触してオン状態となり、収納ケース50のクローズ時には収納ケース50の上側内壁面52の押圧によってオフ状態となるスイッチである。すなわち、バネ式ボタンスイッチ31は、収納ケース50のオープン/クローズに応じて、リモコン本体10内の各電気的な構成モジュール(図2参照)に対して電源の供給/遮断を行うためのスイッチである。
【0040】
図2は、リモコン本体10の電気的構成を示すブロック図である。
リモコン本体10は、図2に示すように、無線通信部20、情報表示部21、操作部22、マイコン23、及びメモリ24を備え、これら各モジュールがシステムバス25を介して接続されている。無線通信部20は、リモコン本体10の上部に設けられたアンテナ導入部11bを介してロッドアンテナ11に接続されている。そして無線通信部20は、操作部22からの操作信号を無線電波信号に変えて、車両内に設置された、エンジン起動やセキュリティ起動用の被制御装置へ送信する。また、無線通信部20は、この被制御装置から送信された、エンジン状態やセキュリティ状態を示す無線電波信号を受信し、情報表示部21で表示可能な信号としてシステムバス25へ出力する。
【0041】
情報表示部21及び操作部22は、例えばバックライト方式でLED照明部26からの照明光を受光する。LED照明部26は、複数個のLED素子とこれを駆動する駆動回路から構成されている。マイコン23は、メモリ24に格納されているプログラムコードに従ってリモコン本体10の動作全体を制御する。メモリ24は、上記プログラムコードや各種必要情報を記憶し、電源オフ時にも記憶内容が消去しない不揮発性メモリ等で構成されている。
【0042】
LED照明部26を含む上記各モジュールは、バッテリ30に接続された電源供給回路32より直流電力の供給を受ける。そして、バッテリ30と電源供給回路32との間の電気経路には、上述したバネ式ボタンスイッチ31が介在している。
【0043】
次に、上記構成の無線リモコン端末の動作について図1〜図3を参照して説明する。なお、図3は、実施例1に係る無線リモコン端末のクローズ状態を示す外観斜視図である。
操作者が、当該無線リモコン端末によって、車両の外部からエンジン起動やセキュリティ起動を行う場合には、まず収納ケース50をオープンさせるためのスライド操作を行う。操作者は、図3に示すような、収納ケース50がクローズの状態において、例えば、操作者の一方の手でキーホルダを掴み、他方の手で収納ケース50を端末上方へスライドさせると、このスライド操作に連動して、操作者の身体から遠ざかる方向へロッドアンテナ11が伸長する。
【0044】
これと共に、バネ式ボタンスイッチ31がオン状態となり、リモコン本体10の各電気的な構成モジュール(図2参照)に電力が供給される。その結果、LED照明部26によって情報表示部21及び操作部22のバックライトが点灯し、また、マイコン23は操作部22からの操作を待つ待機状態となる。
【0045】
そして、収納ケース50の開口部51からは、初めに操作部22、続いて情報表示部21が出現する。ロッドアンテナ11がアンテナ全長まで伸長すると、収納ケース50の係合爪55、56がリモコン本体10の係合爪15、16にそれぞれ係合し、スライド操作はスライド限界のスライド最大位置に到達する。これにより、スライド操作時においてリモコン本体10から収納ケース50の脱落を確実に防止することができる。
【0046】
収納ケース50から操作部22及び情報表示部21が出現すると、操作者は、操作部22の所望のタッチスイッチを操作する。例えば、車両のエンジンを起動するためにエンジンスタート用のタッチスイッチに触れると、その操作信号は、無線通信部20において無線電波信号に変換されて、エンジン起動信号としてアンテナ11から送信される。この一連の動作はマイコン23の制御によって行われる。
【0047】
車両内の被制御装置は、このエンジン起動信号を受信して、エンジンを起動させた後、例えばその実行状況を示す情報を無線電波で本実施例の無線リモコン端末へ送信する。無線リモコン端末の無線通信部20は、その実行状況情報を受信して表示信号に変換し、情報表示部21は、この情報を表示する。この一連の動作はマイコン23の制御によって行われる。このようにして、操作者は、情報表示部21において被制御装置に対するリモコン制御の実行状況を確認することができる。
【0048】
その後、操作者は、収納ケース50をクローズさせるためのスライド操作を行う。収納ケース50を端末下方へスライドさせると、このスライド操作に連動して、ロッドアンテナ11が収縮する。そして、収納ケース50の上側内壁面52がバネ式ボタンスイッチ31を押圧すると、バネ式ボタンスイッチ31がオフ状態となり、リモコン本体10の各電気的な構成モジュールへの電力供給が遮断される。これによって情報表示部21及び操作部22のバックライトが消灯し、無線リモコン端末は、収納ケース50の開口部51がスライド最小位置つまりリモコン本体10の下端部に到達した図3に示すようなクローズ状態となる。
【0049】
図3に示すように、収納ケース50がスライド最小位置に到達するクローズ状態では、リモコン本体10全体が収納ケース50で覆われるので、リモコン本体10を防水構造に近い状態にすることが可能になる。したがって、リモコン本体10を水滴や塵埃から保護することができる。さらに、端末使用時以外において操作部22のスイッチが押されることがないため、例えば操作者のポケット内に無線リモコン端末を入れておいても、リモコン本体10の誤動作を回避することができる。これにより、誤動作防止のための二度押しやキーロック等の特殊な操作が不要になる。さらに、操作部22に静電式タッチスイッチなど比較的誤動作を招きやすいセンサ類を使用できるので、リモコン本体10の機構部品を減らせることができ、端末の薄型化が可能になる。また、操作部22のスイッチのサイズを大きくすることも可能になる。
【0050】
本実施例では、収納ケース50の下側がリモコン本体10出入り用に開口し、リモコン本体10の下部に操作部22を配置したので、操作部22の位置が収納ケース50の開口部51に近くなる。これにより、迅速に操作部22を出現させることができ、例えば、情報表示部21での表示情報確認よりも操作部22による操作を優先させたい場合や、表示情報確認不要の操作を行うような場合などにおいて、操作性が向上する。
【0051】
また、アンテナ11を伸縮式のロッドアンテナで構成し、その頂部11aを収納ケース50の上側内壁面52に固定したので、端末に元々存在するアンテナを利用して、収納ケース50のスライド動作とロッドアンテナ11の伸縮動作(アンテナ長可変動作)とを連動させることができる。これにより、簡素な構造が実現し、低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、収納ケース50の開口部51からのリモコン本体10の出入りに応じて、ロッドアンテナ11の伸縮動作を的確に行うことができる。さらに、操作者が収納ケース50からリモコン本体10を出現させて使用する際に、ロッドアンテナ11が操作者の身体から遠ざかるようになるため、ボディエフェクトによるアンテナ特性の悪影響を回避することができ、通信動作が安定する。
【0053】
また、ロッドアンテナ11が収納ケース50内で自動的に伸縮するので、操作者がロッドアンテナ11の伸縮操作(引き延ばしと収納)を行う手間が不要となるだけでなく、ロッドアンテナ11の折損を防止することもできる。
【0054】
−実施例2−
上述の実施例1では、ロッドアンテナ11の頂部11aを収納ケース50の上側内壁面52に接着剤で固定したが、接着剤の劣化等により該固定が不良となって、収納ケース50のスライド動作とロッドアンテナ11の伸縮動作との連動に不具合が生ずる可能性がある。本実施例では、それを回避した構成について説明する。
【0055】
図4は、実施例2に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図であり、図1と共通する要素に同一の符号を付している。なお、収納ケース50は透視的に表示してある。
本実施例では、ロッドアンテナ11の頂部11aを収納ケース50の上側内壁面52に固定する方法として、図4に示すように、ロッドアンテナ11の頂部11aにネジ孔11cを設けておき、収納ケース50の上面外側からネジ11dで締めて固定する。
【0056】
このような方法を採ることにより、ロッドアンテナ11の頂部11aが収納ケース50の上面に確実に固定される。これにより、収納ケース50のスライド動作とロッドアンテナ11の伸縮動作との連動が確実になされると共に、次のような利点がある。すなわち、ロッドアンテナ11の伸長がアンテナ全長に達すると、ロッドアンテナ11はそれ以上伸長しないので、実施例1で設置した、収納ケース50の脱落を防止するための係合爪15、16、55、56を省略することができる。したがって、マッチ箱のようなシンプルなスライド形態が実現すると共に、端末の小型化を図ることができる。
【0057】
−実施例3−
本実施例では、アンテナ11として伸縮式のロッドアンテナを用いない場合の構造について説明する。
図5は、実施例3に係る無線リモコン端末を示す外観斜視図であり、図1と共通する要素に同一の符号を付している。なお、収納ケース50は透視的に表示してある。
【0058】
この無線リモコン端末では、図5に示すように、収納ケース50において、左右側面の一方の内壁面(図5の例では、正面に対して右側の内壁面53)下部から上側内壁面52の途中に至るまで帯状のアンテナ用導体40が貼設されている。このアンテナ用導体40の長さは、使用無線周波数で定まる必要アンテナ長に対応するものとなっている。一方、リモコン本体10における左右一方の側面(図5の例では、正面に対して右側の側面13)上部からは、アンテナ導入部であるアンテナ接点端子11bが突出し、収納ケース50のアンテナ用導体40の表面に当接するようになっている。
【0059】
このような構成により、収納ケース50及びリモコン本体10の相対的なスライド動作に連動してアンテナ長が変化し、端末使用時には、使用無線周波数で定まる必要アンテナ長が確保される。
【0060】
本実施例においても、上記実施例1で説明したものと同様の効果を奏することができる。但し、ロッドアンテナに関する効果は除かれる。
【0061】
−変形例−
本発明は上記各実施例に限定されず、種々変形が可能である。その変形例としては例えば次のようなものがある。
(1)収納ケース50のスライドに伴い、情報表示部21を収納ケース50の一部が覆う状態と覆わない状態とを採り、収納ケース50が情報表示部21を覆う状態では、情報表示部21以外の報知手段によって報知を行うように構成しても良い。具体的には、図5に示した実施例3の構成において、リモコン本体10の側面13からアンテナ用導体40に当接する端子をアンテナ接点端子11bの他にもう一つ設ける。このもう一つのアンテナ接点端子は、収納ケース50の係合爪55がリモコン本体10の係合爪15に接触する位置にスライドさせた際には帯状のアンテナ用導体40に接触せずに、これ以外の位置では接触するように配置する。そして、マイコン23は、この二つの当接端子がアンテナ用導体40を介して電気的に導通しているときには、収納ケース50が情報表示部21を覆う状態となっていて収納ケース50が十分なオープン状態になっていないと判断し、例えば操作部22近傍に設置されたLEDランプ等の報知手段をオンする。なお、このようなマイコン23の制御を実行するためのプログラムコードは、メモリ24に格納しておく。このような構成により、操作者は、報知手段により、収納ケース50が十分なオープン状態になっているか否かを確実に認識することができる。
【0062】
なお、次のように構成してもよい。マイコン23は、情報表示部21に表示する内容と報知手段の報知内容とを同一に制御すれば、操作者は、収納ケース50が情報表示部21を覆う状態でも、その内容を確認できる。また、マイコン23は、情報表示部21に表示する内容があることを知らせる報知を報知手段から行うよう制御すれば、収納ケース50が情報表示部21を覆う状態でも、情報表示部21に表示する内容があることを知ることができる。マイコン23は、情報表示部21に表示する表示内容に更新があった場合に、報知手段から報知する制御をするとよい。これらの制御は、例えば、被制御装置からの報知要求信号を受信したときに行うとよい。なお、マイコン23は、情報表示部21を収納ケース50の一部が覆わない状態の場合には報知手段による報知を抑制する制御をするとよい。抑制する制御とは、例えば、報知しないようにしたり、あるいは、報知の度合いを小さくするようにしたりする制御である。報知手段は例えば視覚以外で認識できる報知態様をとるとよく、例えば、音を出力する音出力手段としたり、あるいはバイブレータ等を駆動して振動を発生させる振動発生手段としたりしてもよい。
【0063】
(2)上記各実施例では、無線リモコン端末と被制御装置との無線通信を双方向としたが、無線リモコン端末側だけから送信できる片方向であっても良い。この場合は、情報表示部21を省略する構成も可能になる。
【0064】
(3)少なくとも情報表示部21を収納ケース50越しで視認できるように、収納ケース50の表面側を透明又は半透明で構成しても良い。このような構成によれば、情報表示部21での表示情報確認よりも操作部22による操作を優先させたい場合や、表示情報確認不要の操作を行うような場合は勿論、操作前に表示情報確認が必要な操作であっても、迅速に操作部22を収納ケース50から出現させることができる。
【0065】
(4)リモコン本体10のバッテリ30を、リモコン本体10の裏面側上部に配置して収納ケース50をバッテリ蓋の代わりにするようにしても良い。
【0066】
(5)収納ケース50の表面全体にゴム質などのラバーコートを施しても良い。これにより、装用感が良くなると共に、キーホルダに取り付けられている鍵が収納ケース50に当たっても収納ケース50に傷がつきにくくなる。
【0067】
(6)アンテナ導入部11は、上述した実施例に限らず、アンテナの一部として構成してもよい。またリモコン本体10のアンテナ導入部10の周囲は空間としてもよい。例えば図1、2、4の構成において、リモコン本体10の上面全体が開口している構成としてもよく、例えば収納ケース10がこの部分を覆う(外部に露出させない)構成となっているとよい。
【0068】
(7)上述した実施例の中では、スライド最大位置で、ロッドアンテナ11がアンテナ全長に達する構成としたが、ロッドアンテナ11の長さはスライド最大位置でのアンテナ全長よりも長いものを用いてもよく、特にスライド最大位置でのアンテナ全長が使用の無線周波数で定まる必要アンテナ長になるように構成すればよい。このようにすれば、より使用周波数にマッチした長さでロッドアンテナ11を使用することができ、ロッドアンテナ11を使用周波数に合わせて特注する必要もなくなる。
【0069】
(8)クローズ状態において、収納ケース50からリモコン本体10の一部が露出するように構成するとよい。特に収納ケース50の開放端側(上述した実施例における下端側)でリモコン本体10の一部が露出するように構成するとよい。
このようにすれば、リモコン本体10を収納ケース50から容易に引き出すことができる。例えば、露出したリモコン本体10の下部を一方の手で持ち、収納ケース50を他方の手でスライドさせて容易に引き出すことができる。
クローズ状態において、収納ケース50からリモコン本体10の下部が露出するような構成としては、例えば、収納ケース50の下端位置に切欠き部を設けると良い。切り欠き部は、指が入る程度の大きさとするとよく、例えば、下端に半円状の切り欠き部を設けるとよい。また、切欠き部は、特に、収納ケース50のオモテ面と裏面の対向する同位置に設けるとよい。また収納ケース50のスライド方向の長さをリモコン本体10のスライド方向の長さよりも短くして、クローズ状態において、収納ケース50からリモコン本体10の下部が露出するように構成してもよい。
【0070】
(9)ロッドアンテナ11は、図4に示したように従来のリモコンのロッドアンテナと同様に中心部から偏心した位置(図4の例では左寄り)に設けるようにしてもよいが、中心部に設けるとさらによい。特に、スライド方向に直交する方向(図4の左右方向)の中心に設けるとよい。また、図4の奥行き方向(厚み方向)の中心に設けるとよい。このような構成にすれば、スライド時に力が均等にかかるようになり、ひねる力などが加わることなく、よりスムーズにスライドできるようになる。
【0071】
(10)操作部22はタッチスイッチ以外の構成としてもよい。例えば、タッチセンサその他の各種センサで構成してもよい。
【0072】
(11)アンテナ用導体40は、収納ケース50の左右側面の一方の内壁面に設けることとしたが、収納ケース50の背面側または前面側の内壁面に設けるようにしてもよい。また、アンテナ用導体40は、例えば、基板にパターンとして形成してもよい。例えば、F型アンテナ、L型アンテナ、コイル等として機能するような蛇行パターン、特定の指向性を有するパターン、その他任意のパターン形状のアンテナを容易に形成できるとともに、収納ケース50に貼付け固定できるなど、収納ケース50への組み付け作業が容易にできる。
【0073】
(12)アンテナ用導体40とアンテナ導入部11bとは、スライド最大位置で接触するようにするとよいが、さらに、スライド範囲全域にわたって接触する構成とするとよい。このようにすればスライド最大位置以外のスライド位置でも完全にアンテナとの接触が切れてしまうことはなくなる。したがって、完全にスライド最大位置までスライドさせていない状態でも使用できる可能性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の無線リモコン端末は、例えば、車両等の装置の外部から無線で該装置内の機能を制御するリモコン制御システムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0075】
10 リモコン本体
11 ロッドアンテナ
11a ロッドアンテナの頂部
11b アンテナ導入部
11c ネジ孔
11d ネジ
15、16 係合爪
20 無線通信部
21 情報表示部
23 マイコン
24 メモリ
31 バネ式ボタンスイッチ
40 アンテナ用導体
50 収納ケース
51 開口部
55、56 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ長が可変なアンテナと接続された無線通信部を有し、少なくとも、操作部からの操作信号を前記無線通信部により外部の被制御装置へ送信するリモコン本体と、
前記アンテナの伸縮方向へ該リモコン本体と相対的にスライドすると共にスライド方向一方側が前記リモコン本体の出入り用に開口し、前記リモコン本体及び前記アンテナを収納する収納ケースとを備え、
前記リモコン本体のスライド方向一方側に前記操作部を配置し、
前記収納ケースのスライド動作と前記アンテナ長の可変動作とが連動するように構成したことを特徴とする無線リモコン端末。
【請求項2】
前記収納ケースのスライド動作と前記アンテナ長の可変動作との連動により、前記アンテナが、スライド方向他方側への伸長、またはスライド方向一方側への収縮を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線リモコン端末。
【請求項3】
前記収納ケースのスライド最大位置は、使用の無線周波数で定まる必要アンテナ長に対応する前記リモコン本体のスライド方向他方側の部位であり、前記収納ケースのスライド最小位置は、前記リモコン本体のスライド方向一方側の端部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線リモコン端末。
【請求項4】
前記スライド最大位置に対応する前記リモコン本体のスライド方向他方側に、前記収納ケースの脱落を防止するための係合手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の無線リモコン端末。
【請求項5】
前記アンテナは、伸縮式のロッドアンテナで構成し、前記ロッドアンテナの頂部を、前記収納ケースにおけるスライド方向他方側の面の内側に固定したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の無線リモコン端末。
【請求項6】
前記ロッドアンテナの頂部の固定は、該頂部にネジ孔を設け、前記収納ケースにおけるスライド方向他方側の面の外側からネジで固定したことを特徴とする請求項5に記載の無線リモコン端末。
【請求項7】
前記リモコン本体のスライド方向他方側に情報表示部を配置し、
前記情報表示部に対応する前記収納ケースの部分を透明又は半透明で構成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の無線リモコン端末。
【請求項8】
前記スライド方向一方側は、前記リモコン本体及び前記収納ケースの下側であり、
前記スライド方向他方側は、前記リモコン本体及び前記収納ケースの上側であることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の無線リモコン端末。
【請求項9】
前記収納ケースのスライドに伴い、前記情報表示部を前記収納ケースの一部が覆う状態と覆わない状態とを採り、
前記収納ケースが前記情報表示部を覆う状態では、前記情報表示部以外の報知手段によって報知を行う制御手段を備えること
を特徴とする請求項7又は8に記載の無線リモコン端末。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載の無線リモコン端末としての機能を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102285(P2013−102285A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243804(P2011−243804)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】