説明

無線装置及びパケットの転送方法

【課題】複数レイヤにおけるパケットの転送が混在するマルチホップ通信ネットワークを実現する。
【解決手段】第1及び第2レイヤにおけるパケットの転送が可能な第1の種類の無線装置10−aは、第1の種類の他の無線装置から第1レイヤにおけるアドレスを受信する第1アドレス受信部37と、第1の種類の他の無線装置と第2レイヤにおけるパケットの転送が可能な第2の種類の無線装置から第2レイヤにおけるアドレスを受信する第2アドレス受信部38と、受信されたアドレスに基づき前記他の無線装置及び第2の種類の無線装置を検出する検出部39と、パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスの無線装置が第1の種類か第2の種類かに応じて、パケットの転送レイヤを第1及び第2レイヤのいずれか一方から選択する転送レイヤ選択部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、無線装置とパケットの転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホック通信では、他の無線装置から送信されたパケットを無線装置が中継することによって、最終的な宛先の無線装置へパケットを届けるマルチホップ通信が行われている。従来、マルチホップ通信におけるパケットの転送処理は、ルーティング処理を管理するレイヤ、例えばOSI参照モデルでいうレイヤ3で行われていた。
【0003】
なお、インターネット層よりも下位のMAC(Media Access Control)層に属する転送モジュールを備えた無線装置31が、マルチホップによりパケットを転送する無線通信ネットワークが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2008−17028号公報
【特許文献2】特表2008−546222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチホップ通信においても、ルーティング処理を管理するレイヤよりも下位のレイヤでパケットの転送を行うことは可能である。以下、ルーティング処理を管理するレイヤを「レイヤA」と表記し、レイヤAより下位のレイヤを「レイヤB」と表記することがある。レイヤBはレイヤAよりも下位のレイヤであるから、レイヤBにおいてパケットの転送を行うことにより、レイヤAで転送を行っていた従来のマルチホップ通信よりも処理遅延が低減される。
【0006】
しかしながら、レイヤBでのパケット転送に使用される通信プロトコルは、レイヤAでのパケット転送に使用される通信プロトコルとは異なる。このため、レイヤAでの転送のみをサポートする従来の無線装置と、レイヤBでのパケット転送をサポートできる装置とが混在したネットワークを構築することはできなかった。このためマルチホップ通信ネットワークにおいて、レイヤAにおけるパケット転送と、より高速なレイヤBにおけるパケット転送とが混在させることができなかった。
【0007】
実施態様に係る装置及び方法は、複数レイヤにおけるパケットの転送が混在するマルチホップ通信ネットワークを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による第1の種類の無線装置は、第1レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第1転送部と、第1レイヤよりも上位の第2レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第2転送部と、第1の種類の他の無線装置から第1レイヤにおける他の無線装置のアドレス情報を受信する第1アドレス受信部と、他の無線装置から第2レイヤにおける他の無線装置のアドレス情報を、及び第2レイヤにおけるパケットの転送を行う第2の種類の無線装置から第2レイヤにおける第2の種類の無線装置のアドレス情報を受信する第2アドレス受信部と、第1アドレス受信部及び第2アドレス受信部により受信されたアドレス情報に基づき、他の無線装置及び第2の種類の無線装置を検出する検出部と、パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスの無線装置の種類が第1の種類か第2の種類かに応じて、パケットを次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを、第1レイヤ及び第2レイヤのいずれか一方から選択する転送レイヤ選択部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本件開示の装置又は方法によれば、複数レイヤにおけるパケットの転送が混在するマルチホップ通信ネットワークが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ネットワークの構成の例を示す図である。
【図2】無線装置のハードウエア構成例を示す図である。
【図3】第1の種類の無線装置の第1構成例を示す図である。
【図4】転送先アドレス情報の第1例を示す図である。
【図5】転送先アドレス情報の第2例を示す図である。
【図6】第1レイヤのパケットのヘッダ形式の説明図である。
【図7】第2の種類の無線装置の構成例を示す図である。
【図8】第1の種類の無線装置の処理の第1例の説明図である。
【図9】転送先アドレスと転送レイヤの決定処理の一例の説明図である。
【図10】第1の種類の無線装置の第2構成例を示す図である。
【図11】第1の種類の無線装置の第3構成例を示す図である。
【図12】第1の種類の無線装置の処理の第2例の説明図である。
【図13】転送先アドレス情報の作成処理の第1例の説明図である。
【図14】転送先アドレス情報の作成処理と転送レイヤの決定処理の一例の説明図である。
【図15】転送先アドレス情報の作成処理の第2例の説明図である。
【図16】第1の種類の無線装置の第4構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は、ネットワークの構成の例を示す図である。ネットワーク1は、無線装置10−a、10−1〜10−5を備える。ネットワーク1は、パケットの送信元の無線装置とパケットの宛先の無線装置の間で、マルチホップ無線通信によってパケットの送信を行うマルチホップネットワークである。
【0012】
無線装置10−a、10−1〜10−5の間を接続する実線は、無線装置10−aからパケットの宛先の無線装置まで、パケットが転送される間に、無線装置間を転送されるパケットが経由する経路を示す。例えば、送信元の無線装置10−aから宛先の無線装置10−2へ送信されるパケットは、無線装置10−1を経由する。また例えば、送信元の無線装置10−aから宛先の無線装置10−5へ送信されるパケットは、無線装置10−3を経由する。
【0013】
ネットワーク1内では、第1の種類の無線装置と第2の種類の無線装置が混在する。第1の種類の無線装置は、第1レイヤ及び第2レイヤのいずれのレイヤにおいても、パケットの転送処理を実行できる無線装置である。一方で、第2の種類の無線装置は、第2レイヤにおけるパケットの転送処理を実行できるが、第1レイヤにおけるパケットの転送機能を有しない無線装置である。第1レイヤは第2レイヤよりも下位のレイヤである。例えば、第1レイヤ及び第2レイヤは、それぞれOSI参照モデルでいうレイヤ2及びレイヤ3であってよい。
【0014】
図1に示す例において、無線装置10−a、10−1、10−2及び10−5が第1の種類の無線装置であり、無線装置10−3及び10−4が第2の種類の無線装置である。
【0015】
図2は、第1の種類の無線装置10−aのハードウエア構成例を示す図である。他の無線装置10−1〜10−5も同様のハードウエア構成を有する。無線装置10−aは、プロセッサ20と、メモリ21と、補助記憶装置22と、無線通信部23を備える。プロセッサ20と、メモリ21と、補助記憶装置22と、無線通信部23は、データを伝送するバス24によって接続される。
【0016】
補助記憶装置22には、無線装置10−aの動作を制御するための各種コンピュータプログラムやデータが記憶される。補助記憶装置22は、ハードディスクや不揮発性メモリなどを含んでいてよい。プロセッサ20は、データ処理装置であり、補助記憶装置22に記憶されるプログラムを実行し、無線装置10−aの動作を制御するための各処理を実行する。メモリ21には、プロセッサ20により実行中のプログラムや、このプログラムによって一時的に使用されるデータが記憶される。無線通信部23は、他の無線装置10−1〜10−5との間の信号の無線通信処理を行う。
【0017】
なお、図2に示すハードウエア構成は、あくまで無線装置10−a、10−1〜10−5のハードウエア構成の一例である。以下に説明する処理を実行するものであれば、様々な種類のハードウエア構成が無線装置10−a、10−1〜10−5のために採用できる。
【0018】
図3は、第1の種類の無線装置10−aの第1構成例を示す図である。無線装置10−aの各構成要素によって実行される処理は、図2の補助記憶装置22に記憶される転送プログラムをプロセッサ20が実行することにより実現されるものである。なお図3では、この実施例の説明に関係する機能を中心として示している。また、第1の種類の他の無線装置10−1、10−2及び10−5も、無線装置10−aと同様の構成を有していてよい。他の実施例においても同様である。
【0019】
第1の種類の無線装置10−aは、送信部30と、受信部31と、第1転送部32と、第1レイヤパケット生成部33と、第2転送部34と、第2レイヤパケット生成部35を備える。また、無線装置10−aは、第1アドレス受信部36と、第2アドレス受信部37と、検出部38と、転送先アドレス記憶部39と、転送レイヤ選択部40と、経路決定部41を備える。
【0020】
送信部30は、パケットを他の無線装置へ送信する。また受信部31は、他の無線装置から送信されたパケットを受信する。第1転送部32は、受信したパケットからデータ部分を取得して、第1レイヤパケット生成部33へ出力する。または第1転送部32は、10−aを送信元とするパケットに格納するデータを第1レイヤパケット生成部33へ出力する。
【0021】
また、第1転送部32は、受信部31により受信されたパケットを、第1レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ転送する転送処理を行う。また、第1転送部32は、無線装置10−aを送信元とするパケットを第1レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ送信する転送処理を行う。
【0022】
転送処理の際に第1転送部32は、パケットの宛先アドレスに応じた第1レイヤにおける転送先アドレスを経路決定部41から取得する。転送先アドレスとは、本無線装置10−aの次にパケットが転送される無線装置のアドレスである。
【0023】
なお、以下の説明において、第1レイヤにおいて転送されるパケットを「第1レイヤパケット」と表記し、第1レイヤにおいて使用されるアドレスを「第1レイヤアドレス」と表記することがある。また、以下の説明において、第2レイヤにおいて転送されるパケットを「第2レイヤパケット」と表記し、第2レイヤにおいて使用されるアドレスを「第2レイヤアドレス」と表記することがある。
【0024】
第1レイヤパケット生成部33は、宛先アドレス、転送先アドレスを少なくとも含んだヘッダと、第1転送部32から受信したデータを格納したパケットを生成する。生成された第1レイヤパケットは、送信部30により送信される。
【0025】
第2転送部34は、受信したパケットからデータ部分を取得して、第2レイヤパケット生成部35へ出力する。または第2転送部34は、10−aを送信元とするパケットに格納するデータを第2レイヤパケット生成部35へ出力する。第2転送部34は、受信部31により受信されたパケットを次の転送先の無線装置へ転送する転送処理を行う。また、第2転送部34は、無線装置10−aを送信元とするパケットを次の転送先の無線装置へ転送する転送処理を行う。転送処理の際に、第2転送部34は、パケットの宛先アドレスに応じた第2レイヤにおける転送先アドレスを、経路決定部41から取得する。
【0026】
第2レイヤパケット生成部35は、宛先アドレス、転送先アドレスを少なくとも含んだヘッダと、第2転送部34が受信パケットから取得したデータ、又は無線装置10−aから送信するデータを格納したパケットを生成する。生成された第2レイヤパケットは、第1レイヤパケット生成部33により第1レイヤパケットにカプセル化された後に送信部30により送信される。
【0027】
第1アドレス受信部36は、第1の種類の他の無線装置、例えば無線装置10−1、10−2又は10−5から、ネットワーク1内の第1の種類の無線装置の第1レイヤアドレスに関するアドレス情報を受信する。例えば、アドレス情報の送信元が無線装置10−1であるとき、アドレス情報は、少なくとも無線装置10−1の第1レイヤアドレスを含む。また、アドレス情報の送信元が無線装置10−1であるとき、無線装置10−1が検出した、無線装置10−1以外の第1の種類の無線装置の第1レイヤアドレスを含んでいてよい。
【0028】
第2アドレス受信部37は、他の無線装置、例えば無線装置10−1〜10−5から、ネットワーク1内の無線装置の第2レイヤアドレスに関するアドレス情報を受信する。例えば、アドレス情報の送信元が無線装置10−3であるとき、アドレス情報は、少なくとも無線装置10−3の第2レイヤアドレスを含む。また、アドレス情報の送信元が無線装置10−3であるとき、無線装置10−3が検出した、無線装置10−3以外の無線装置の第2レイヤアドレスを含んでいてよい。
【0029】
検出部38は、第1アドレス受信部36及び第2アドレス受信部37により受信されたアドレス情報に基づいて、第1の種類の他の無線装置10−1、10−2及び10−5と、第2の種類の無線装置10−3及び10−4を検出する。例えば検出部38は、第1レイヤアドレスを有する無線装置を第1の種類の無線装置として検出してよい。また、例えば検出部38は、第2レイヤアドレスを有するが第1レイヤアドレスを有しない無線装置を、第2の種類の無線装置として検出してよい。
【0030】
無線装置10−aは、検出した第1の種類の他の無線装置を記憶するための記憶部を備えていてよく、また、無線装置10−aは、検出した第2の種類の無線装置を記憶するための記憶部を備えていてよい。
【0031】
転送先アドレス記憶部39は、パケットの宛先アドレスに応じてそれぞれ定まる転送先アドレスを指定する転送先アドレス情報を記憶する。図4は、転送先アドレス情報の第1例を示す図である。転送先アドレス情報は、例えば図4に示すようなルーティングテーブルであってよい。
【0032】
転送先アドレス情報は、第1レイヤにおける宛先アドレス、第1レイヤにおける転送先アドレス、第2レイヤにおける宛先アドレス、第2レイヤにおける転送先アドレスを格納可能なデータ構造に格納される。
【0033】
例えば、転送先アドレス情報が図4に示すテーブル構造を有するとき、テーブル構造は、第1レイヤにおける宛先アドレス欄と、第1レイヤにおける転送先アドレス欄と、第2レイヤにおける宛先アドレス欄と、第2レイヤにおける転送先アドレス欄を有する。例えば、参照符号42の行の転送先アドレス情報は、パケットの宛先が無線装置10−2であるとき、本無線装置10−aの次にパケットが転送される無線装置が無線装置10−1であることを指定する。
【0034】
第1の種類の無線装置については、転送先アドレス情報は、第1レイヤにおける宛先アドレス及び転送先アドレスと、第2レイヤにおける宛先アドレス及び転送先アドレスの両方を含む。一方で第2の種類の無線装置については、転送先アドレス情報は、第1レイヤにおける宛先アドレス及び転送先アドレスを含まず、第2レイヤにおける宛先アドレス及び転送先アドレスを含む。
【0035】
図5は、転送先アドレス情報の第2例を示す図である。転送先アドレス情報は、図4の転送先アドレス情報に含まれる項目に加えて、後述の転送レイヤ選択部40により選択された転送レイヤを含んでいてよい。転送レイヤとは、本無線装置10−aと転送先アドレスの無線装置との間のパケットで転送するレイヤである。例えば、転送先アドレス情報が図5に示すテーブル構造を有するとき、転送レイヤ欄を有する。
【0036】
例えば、参照符号42の行の転送先アドレス情報は、本無線装置10−aから無線装置10−1へ第1レイヤでパケットが転送されることを指定する。例えば、参照符号43の行の転送先アドレス情報は、本無線装置10−aから無線装置10−3へ第2レイヤでパケットが転送されることを指定する。転送レイヤ選択部40は、転送レイヤを決定した後、転送先アドレス記憶部39に転送レイヤを記憶させてよい。
【0037】
図3を参照する。転送レイヤ選択部40は、宛先アドレスに対する転送先アドレスの無線装置の種類が第1の種類か第2の種類かに応じて、この宛先アドレスへ送信されるパケットを次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを決定する。例えば転送レイヤ選択部40は、転送先アドレスの無線装置が第2の種類の無線装置であるとき、この無線装置へパケットを転送する転送レイヤとして第2レイヤを選択する。
【0038】
例えば転送レイヤ選択部40は、転送先アドレスの無線装置が第1の種類の無線装置であるとき、この無線装置へパケットを転送する転送レイヤとして第1レイヤ及び第2レイヤのうちいずれかを任意に選択する。又は、例えば転送レイヤ選択部40は、転送先アドレスの無線装置が第1の種類の無線装置であるとき、この無線装置へパケットを転送する転送レイヤとして第1レイヤを選択してもよい。
【0039】
経路決定部41は、第1転送部32又は第2転送部34からパケットの宛先アドレスを受信する。または、経路決定部41は、無線装置10−aを送信元とするパケットの宛先アドレスを、パケットの送信を依頼するアプリケーションから受信する。経路決定部41は、転送先アドレス記憶部39に記憶された転送先アドレス情報に基づいて宛先アドレスに対応する転送先アドレスを決定する。
【0040】
また、経路決定部41は、宛先アドレスに対して転送レイヤ選択部40により選択された転送レイヤを、転送先アドレスへパケットを転送する際に使用する転送レイヤとして決定する。図5の転送先アドレス情報のように、転送レイヤ選択部40により選択された転送レイヤが転送先アドレス記憶部39に記憶されているとき、経路決定部41は、転送先アドレス記憶部39から転送レイヤを読み出してよい。
【0041】
転送レイヤが第1レイヤであるとき、経路決定部41は、宛先アドレスと転送先アドレスを第1転送部32へ出力する。転送先アドレスとして第1レイヤアドレスが使用される。宛先アドレスの無線装置が第1の種類の無線装置であるとき、宛先アドレスとして第1レイヤアドレス及び第2レイヤアドレスのうちいずれを使用してもよい。宛先アドレスの無線装置が第2の種類の無線装置であるとき、宛先アドレスとして第2レイヤアドレスが使用される。
【0042】
第1転送部32は、経路決定部41から受信した宛先アドレスと転送先アドレスを第1レイヤパケット生成部33へ出力する。第1レイヤパケット生成部33は、第1転送部32から受信した宛先アドレスと転送先アドレスをヘッダに格納する。
【0043】
第1レイヤパケット生成部33は、パケットの転送レイヤが第1レイヤであり、かつ宛先アドレスとして第2レイヤアドレスが使用される場合には、宛先アドレスをヘッダの拡張部分に格納してよい。
【0044】
図6は、第1レイヤパケットのヘッダ形式の説明図である。第1レイヤパケット100は、ヘッダ101とデータ102を有する。ヘッダ101は、タイプ111、サブタイプ112、転送先アドレス113、宛先アドレス114及び拡張部分115を含む。タイプ111及びサブタイプ112は、パケットの種類を示す。転送先アドレス113は、パケット100の転送先アドレスを示す第1レイヤアドレスである。宛先アドレス114は、パケット100の宛先アドレスを示す第1レイヤアドレスである。第1レイヤパケット生成部33は、第2レイヤにおける宛先アドレスをヘッダ101に格納する場合には、宛先アドレスを拡張部分115に格納してよい。
【0045】
図3を参照する。転送レイヤが第2レイヤであるとき、経路決定部41は、宛先アドレスと転送先アドレスを第2転送部34へ出力する。転送先アドレス及び宛先アドレスとして第2レイヤアドレスが使用される。第2転送部34は、経路決定部41から受信した宛先アドレスと転送先アドレスを第2レイヤパケット生成部35へ出力する。第2レイヤパケット生成部35は、第2転送部34から受信した宛先アドレスと転送先アドレスをヘッダに格納する。
【0046】
図7は、第2の種類の無線装置10−3の構成例を示す図である。無線装置10−3の各構成要素によって実行される処理は、図2の補助記憶装置22に記憶される転送プログラムをプロセッサ20が実行することにより実現されるものである。なお図7では、この実施例の説明に関係する機能を中心として示している。また、第2の種類の他の無線装置10−4も、無線装置10−3と同様の構成を有していてよい。他の実施例においても同様である。
【0047】
第2の種類の無線装置10−3は、送信部50と、受信部51と、転送部52と、パケット生成部53と、転送先アドレス記憶部54と、経路決定部55を備える。送信部50は、パケットを他の無線装置へ送信する。また受信部51は、他の無線装置から送信されたパケットを受信する。転送部52は、受信した第2レイヤパケットからデータ部分を取得して、パケット生成部53へ出力する。
【0048】
また、転送部52は、受信部51により受信されたパケットを、第2レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ転送する転送処理を行う。また、転送部52は、無線装置10−3を送信元とするパケットを第2レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ転送する転送処理を行う。転送処理の際に、転送部52は、パケットの宛先アドレスに応じた第2レイヤにおける転送先アドレスを経路決定部55から取得する。
【0049】
パケット生成部53は、宛先アドレス、転送先アドレスを少なくとも含んだヘッダと、転送部52が受信パケットから取得したデータ、又は無線装置10−3から送信するデータを格納したパケットを生成する。生成されたパケットは、送信部50により送信される。
【0050】
転送先アドレス記憶部54は、パケットの宛先アドレスに応じてそれぞれ定まる転送先アドレスを指定する転送先アドレス情報を記憶する。転送先アドレス情報は、例えばルーティングテーブルであってよい。経路決定部55は、転送するパケットの宛先アドレスを転送部52から受信したとき、転送先アドレス記憶部54に記憶された転送先アドレス情報に基づいて宛先アドレスに対応する転送先アドレスを決定する。
【0051】
次に、図3に示す無線装置10−aによる処理の例を説明する。図8は、第1の種類の無線装置10−aの処理の第1例の説明図である。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションAA〜AGの各オペレーションはステップであってもよい。
【0052】
オペレーションAAにおいて、第1アドレス受信部36は、第1の種類の他の無線装置から、ネットワーク1内の第1の種類の無線装置の第1レイヤアドレスに関するアドレス情報を受信する。オペレーションABにおいて、第2アドレス受信部37は、他の無線装置から、ネットワーク1内の無線装置の第2レイヤアドレスに関するアドレス情報を受信する。
【0053】
オペレーションACにおいて検出部38は、第1アドレス受信部36及び第2アドレス受信部37により受信されたアドレス情報に基づいて、第1の種類の他の無線装置10−1、10−2及び10−5と、第2の種類の無線装置10−3及び10−4を検出する。
【0054】
オペレーションADにおいて転送レイヤ選択部40は、転送先アドレス記憶部39に記憶される又は記憶されることが予定される宛先アドレスについて、この宛先アドレスへ送信されるパケットを次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを決定する。決定された転送アドレスは、転送先アドレス記憶部39に記憶されてよい。
【0055】
オペレーションAEにおいて経路決定部41は、送信パケットの宛先アドレスを取得する。オペレーションAFにおいて経路決定部41は、宛先アドレスに対する転送先アドレスと転送レイヤを決定する。
【0056】
転送レイヤが第1レイヤであるとき、オペレーションAGにおいて経路決定部41は、宛先アドレスと転送先アドレスを第1転送部32へ出力する。第1転送部32は、宛先アドレスと転送先アドレスを第1レイヤパケット生成部33へ出力する。第1レイヤパケット生成部33は、受信したアドレスに基づいて第1レイヤパケットを生成する。送信部30は、生成された第1レイヤパケットを送信する。
【0057】
転送レイヤが第2レイヤであるとき、オペレーションAGにおいて経路決定部41は、宛先アドレスと転送先アドレスを第2転送部34へ出力する。第2転送部34は、宛先アドレスと転送先アドレスを第2レイヤパケット生成部35へ出力する。第2レイヤパケット生成部35は、受信したアドレスに基づいて第2レイヤパケットを生成する。第2レイヤパケットは、第1レイヤパケット生成部33により第1レイヤパケットにカプセル化された後、送信部30により送信される。
【0058】
図9は、図8に示すオペレーションAFにおける、経路決定部41による転送先アドレスと転送レイヤの決定処理の一例の説明図である。図9は、例として、転送先アドレス記憶部39の転送先アドレス情報が、図5に示すテーブル構造を有する場合における処理を示す。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションBA〜BGの各オペレーションはステップであってもよい。
【0059】
オペレーションBAにおいて経路決定部41は、送信パケットの宛先アドレスが第1レイヤアドレスであるか否かを判定する。宛先アドレスが第1レイヤアドレスであるとき(オペレーションBA:Y)、処理はオペレーションBBへ進む。宛先アドレスが第1レイヤアドレスでないとき(オペレーションBA:N)、処理はオペレーションBCへ進む。
【0060】
オペレーションBBにおいて経路決定部41は、転送先アドレス情報の各行について、第1レイヤにおける宛先アドレス欄に格納されたアドレスと、送信パケットの宛先アドレスとを比較することにより、参照する行を決定する。その後処理はオペレーションBDへ進む。
【0061】
オペレーションBCにおいて経路決定部41は、転送先アドレス情報の各行について、第2レイヤにおける宛先アドレス欄に格納されたアドレスと、送信パケットの宛先アドレスとを比較することにより、参照する行を決定する。その後処理はオペレーションBDへ進む。
【0062】
オペレーションBDにおいて経路決定部41は、オペレーションBB又はBCにより決定された行の転送レイヤ欄に格納されたレイヤを、転送レイヤとして決定する。オペレーションBEにおいて経路決定部41は、転送レイヤが第1レイヤであるか否かを判定する。転送レイヤが第1レイヤであるとき(オペレーションBE:Y)、処理はオペレーションBFへ進む。転送レイヤが第1レイヤでないとき(オペレーションBE:N)、処理はオペレーションBGへ進む。
【0063】
オペレーションBFにおいて経路決定部41は、第1レイヤにおける転送先アドレス欄に格納されたアドレスを、転送先アドレスとして決定する。その後処理は終了する。また、オペレーションBGにおいて経路決定部41は、第2レイヤにおける転送先アドレス欄に格納されたアドレスを、転送先アドレスとして決定する。その後処理は終了する。
【0064】
本実施例の第1の種類の無線装置は、転送先アドレスの無線装置が第1の種類の無線装置か第2の種類の無線装置かに応じて転送レイヤを選択してパケットを送信する。このため、転送元及び転送先の両方が第1の種類の無線装置の場合には、第1レイヤにおいてパケットを転送することが可能となる。一方で、転送元及び転送先の少なくとも一方が第2の種類の無線装置の場合には、第2レイヤにおいてパケットが転送される。したがって、本実施例よれば、第1レイヤ及び第2レイヤにおけるパケットの転送が混在するマルチホップ通信ネットワークが実現される。
【0065】
次に、第1の種類の無線装置10−aの他の構成例を説明する。図10は、無線装置10−aの第2構成例を示す図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には同じ参照符号を付する。第1の種類の無線装置10−aは、更に、第1アドレス送信部60及び第2アドレス送信部61を備える。以下に説明する無線装置10−aの他の構成においても、構成要素60及び61が設けられてもよい。
【0066】
第1アドレス送信部60は、無線装置10−aの第1レイヤアドレスに関するアドレス情報を他の無線装置へ報知する。また第1アドレス送信部60は、第1アドレス受信部36で受信されることにより無線装置10−aが取得した第1の種類の他の無線装置の第1レイヤアドレスに関するアドレス情報も報知してよい。
【0067】
第2アドレス送信部61は、無線装置10−aの第2レイヤアドレスに関するアドレス情報を他の無線装置へ報知する。また第2アドレス送信部61は、第2アドレス受信部37で受信されることにより無線装置10−aが取得した他の無線装置の第2レイヤアドレスに関するアドレス情報も報知してよい。
【0068】
同様に、第2の種類の無線装置10−3は、無線装置10−3の第2レイヤアドレスに関するアドレス情報を他の無線装置へ報知するアドレス送信部を備えてよい。後述する無線装置10−3の他の構成においても、このアドレス送信部が設けられてよい。
【0069】
無線装置10−a、10−1〜10−5がそれぞれアドレス情報を報知することにより、無線装置10−aは、第1の種類の無線装置については第1レイヤアドレス及び第2レイヤアドレスを、第2の種類の無線装置については第2レイヤアドレスを受信する。したがって本実施例によれば、無線装置10−aにおいて、各無線装置について受信されたアドレスの種類を判定することにより、各無線装置の種類を判定することができる。
【0070】
次に、第1の種類の無線装置10−aの他の構成例を説明する。図11は、第1の種類の無線装置10−aの第3構成例を示す図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には同じ参照符号を付する。第1の種類の無線装置10−aは、更に、経路情報受信部62と、転送先アドレス情報生成部63と、経路情報送信部64を備える。以下に説明する無線装置10−aの他の構成においても、構成要素62〜64が設けられてもよい。なお、図3に示す転送レイヤ選択部40の処理は、転送先アドレス情報生成部63によって行われてもよい。
【0071】
経路情報受信部62は、他の無線装置10−1〜10−5から経路情報を受信する。経路情報は、少なくとも、経路情報の送信元の無線装置の送信元アドレスとこの送信元の無線装置から転送可能な宛先アドレスとの組み合わせを含む。第1の種類の無線装置10−1、2及び5は、第1レイヤアドレスに関する経路情報と第2レイヤアドレスに関する経路情報を報知してよい。第2の無線装置10−3及び4は、第2レイヤアドレスに関する経路情報と第2レイヤアドレスに関する経路情報を報知してよい。
【0072】
第1アドレス受信部36と経路情報受信部62は、同じパケットからそれぞれアドレス情報及び経路情報を取得してよい。また、第2アドレス受信部37と経路情報受信部62は、同じパケットからそれぞれアドレス情報及び経路情報を取得してよい。第1レイヤアドレスに関するアドレス情報を格納するパケットには、第1レイヤアドレスに関する経路情報が格納されてよい。第2レイヤアドレスに関するアドレス情報を格納するパケットには、第2レイヤアドレスに関する経路情報が格納されてよい。
【0073】
転送先アドレス情報生成部63は、受信された経路情報に含まれる各宛先アドレスについて、各宛先アドレスに組み合わされた送信元アドレスを転送先アドレスとして決定することにより、転送先アドレス情報を生成する。転送先アドレス情報生成部63は、生成した転送先アドレス情報を転送先アドレス記憶部39に記憶する。
【0074】
経路情報送信部64は、転送先アドレス記憶部39に記憶された宛先アドレスと、無線装置10−aのアドレスとを含んだ経路情報を作成し、他の無線装置に報知する。同様に、第2の種類の無線装置10−3は、無線装置10−3が転送可能な宛先アドレスに関する経路情報を他の無線装置へ報知する経路情報送信部を備えてよい。
【0075】
次に、図11に示す無線装置10−aによる処理の例を説明する。図12は、第1の種類の無線装置10−aの処理の第2例の説明図である。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションCA〜CIの各オペレーションはステップであってもよい。
【0076】
オペレーションCA〜CCの処理は、図8に示すオペレーションAA〜ACの処理と同様である。オペレーションCDにおいて経路情報受信部62は、他の無線装置10−1〜10−5から経路情報を受信する。オペレーションCEにおいて転送先アドレス情報生成部63は、転送先アドレス情報を生成する。
【0077】
オペレーションCFにおいて転送先アドレス情報生成部63は、転送先アドレス記憶部39に記憶される又は記憶されることが予定される宛先アドレスについて、この宛先アドレスへ送信されるパケットを次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを決定する。オペレーションCG〜CIの処理は、図8に示すオペレーションAE〜AGと同様である。
【0078】
無線装置10−aは、第1の種類の無線装置については、第2レイヤアドレスだけでなく第1レイヤアドレスも、転送先アドレスとして転送先アドレス記憶部39に格納することができる。このため本実施例によれば、無線装置10−aは、第2の種類の無線装置へは第2レイヤアドレスを使って第2レイヤにおいてパケットを転送することができ、第1の種類の無線装置へは第1レイヤアドレスを使って第1レイヤにおいてパケットを転送することができる。このようにして本実施例によれば、第1レイヤ及び第2レイヤにおけるパケットの転送が混在するマルチホップ通信ネットワークが実現される。
【0079】
続いて、転送先アドレス情報の作成処理の例について説明する。図13は、転送先アドレス情報の作成処理の第1例の説明図である。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションDA〜DDの各オペレーションはステップであってもよい。以下の説明において経路情報受信部62は、M個の無線装置について、それぞれの無線装置のアドレスを宛先アドレスとする経路情報を取得したものと仮定する。
【0080】
図13に示す例では、転送先アドレス情報生成部63は、同じ宛先アドレスへパケットが到達できる転送先アドレスが複数あったとき、転送先アドレスから宛先アドレスまでの経路コストが最小となる転送先アドレスを、使用する転送先アドレスとして選択する。このため他の無線装置から取得する経路情報は、少なくとも、経路情報の送信元の無線装置のアドレスと、この送信元の無線装置から転送可能な宛先アドレスと、この無線装置から宛先アドレスまでの間の経路コストの組み合わせを含んでいてよい。
【0081】
経路コストの値は、例えば、パケットの転送の処理遅延の関数として算出されてよい。処理遅延は、パケットの転送に使用される転送レイヤに応じて異なる値であってよい。また、経路コストの値は、処理遅延に加えて又はこれに代えて、ホップ数、無線装置の負荷、各経路の無線品質、各経路におけるパケットのスループット、及び/又は無線装置におけるパケットのスループットの関数として算出されてもよい。例えば、ホップ数及び無線装置の負荷に関しては、これら値が大きいほど経路コストの値が増大するように経路コストの算出方法を定めてよい。無線品質及びスループットに関しては、これら値が大きいほど経路コストの値が低下するように経路コストの算出方法を定めてよい。また例えば、経路コストの値は、処理遅延、ホップ数、負荷、無線品質及び/又はスループットのそれぞれに重み係数を掛けた値を、例えば加算等の演算により組み合わせることにより算出されてよい。この重み係数は学習によって変化させてもよい。
【0082】
オペレーションDAにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iに値「1」を代入する。オペレーションDBにおいて転送先アドレス情報生成部63は、第i番目の宛先アドレスについて取得した転送先アドレスのうち、経路コストが最小となる経路情報の転送先アドレスを、使用する転送アドレスとして選択する。オペレーションDAにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iの値を1つ分増加させる。オペレーションDDにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iがMより大きいかどうかを判定する。変数iがMより大きいとき(オペレーションDD:Y)、処理は終了する。変数iがM以下であるとき(オペレーションDD:N)、処理はオペレーションDBへ戻る。
【0083】
本実施例によれば、宛先アドレスまでの経路コストが最も小さい無線装置のアドレスを、転送先アドレスとして選択することができる。
【0084】
図14は、転送先アドレス情報の作成処理と転送レイヤの決定処理の一例の説明図である。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションEA〜EHの各オペレーションはステップであってもよい。以下の説明において経路情報受信部62は、M個の無線装置について、それぞれの無線装置のアドレスを宛先アドレスとする経路情報を取得したものと仮定する。また経路情報受信部62は、第i番目の宛先アドレスに対して、Ni個の転送先アドレスを取得したものと仮定する。
【0085】
図14に示す例で転送先アドレス情報生成部63は、各転送先アドレスから宛先アドレスまでの経路コストに無線装置10−aから転送先アドレスまでの経路コストをそれぞれ加えることにより、無線装置10−aから宛先アドレスまでの経路コストを算出する。転送先アドレス情報生成部63は、算出された経路コストが最小となる転送先アドレスを、使用する転送先アドレスとして選択する。
【0086】
無線装置10−aから転送先アドレスまでの経路コストは、転送先アドレスまでの転送の処理遅延の関数であってよい。転送先アドレスまでの転送の処理遅延は、転送先アドレスまでの転送に使用される転送レイヤに応じて異なる値であってよい。
【0087】
例えば、転送先アドレスが第1レイヤアドレスであるときは、転送先アドレスまでの転送の処理遅延は、転送レイヤが第1レイヤであるときの処理遅延であってよい。転送先アドレスが第2レイヤアドレスであるときは、転送先アドレスまでの転送の処理遅延は、転送レイヤが第2レイヤであるときの処理遅延であってよい。
【0088】
転送先アドレスを選択したとき、転送先アドレス情報生成部63は、転送先アドレスまでの転送の処理遅延を決める際にこの転送先アドレスへの転送レイヤとして仮定されたレイヤを、この転送先アドレスへの転送レイヤとして決定する。
【0089】
オペレーションEAにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iに値「1」を代入する。オペレーションEBにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数jに値「1」を代入する。オペレーションECにおいて転送先アドレス情報生成部63は、第j番目の転送先アドレスの無線装置へパケットを転送したときの、無線装置10−aから第i番目の宛先アドレスまでの経路コストを算出する。
【0090】
オペレーションEDにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数jの値を1つ分増加させる。オペレーションEEにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数jがNiより大きいかどうかを判定する。変数jがNiより大きいとき(オペレーションEE:Y)、処理はオペレーションEFへ進む。変数jがNi以下であるとき(オペレーションEE:N)、処理はオペレーションECへ戻る。
【0091】
オペレーションEFにおいて転送先アドレス情報生成部63は、第i番目の宛先アドレスについて取得した転送先アドレスのうち、オペレーションECで算出した経路コストが最小となる経路情報の転送先アドレスを、使用する転送先アドレスとして選択する。また転送先アドレス情報生成部63は、転送レイヤを決定する。
【0092】
オペレーションEGにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iの値を1つ分増加させる。オペレーションEHにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iがMより大きいかを判定する。変数iがMより大きいとき(オペレーションEH:Y)、処理は終了する。変数iがM以下のとき(オペレーションEH:N)、処理はオペレーションEBへ戻る。
【0093】
本実施例によれば、無線装置10−aから宛先アドレスまでの経路コストが最も小さくなるように、転送先アドレスと転送レイヤを決定することができる。
【0094】
図15は、転送先アドレス情報の作成処理の第2例の説明図である。なお、他の実施態様においては、下記のオペレーションFA〜FGの各オペレーションはステップであってもよい。以下の説明において経路情報受信部62は、M個の無線装置について、それぞれの無線装置のアドレスを宛先アドレスとする経路情報を取得したものと仮定する。
【0095】
図15に示す例で転送先アドレス情報生成部63は、同じ宛先アドレスへパケットが到達できかつ経路コストが最小となる転送先アドレスが複数あったとき、宛先アドレスまでのホップ数が最小となる転送先アドレスを、使用する転送先アドレスとして選択する。他の無線装置から受信される経路情報は、少なくとも、経路情報の送信元の無線装置のアドレス、この送信元の無線装置から転送可能な宛先アドレス、並びにこの無線装置から宛先アドレスまでの間の経路コスト及びホップ数の組み合わせを含んでいてよい。
【0096】
オペレーションFAにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iに値「1」を代入する。オペレーションFBにおいて転送先アドレス情報生成部63は、第i番目の宛先アドレスについて取得した転送先アドレスのうち、経路コストが最小となる経路情報の転送先アドレスを選択する。
【0097】
オペレーションFCにおいて転送先アドレス情報生成部63は、オペレーションFBで選択された転送先アドレスが複数であるか否かを判定する。選択された転送先アドレスが複数でないとき(オペレーションFC:N)、処理はオペレーションFDへ進む。選択された転送先アドレスが複数であるとき(オペレーションFC:Y)、処理はオペレーションFEへ進む。
【0098】
オペレーションFDにおいて転送先アドレス情報生成部63は、オペレーションFBで選択されたアドレスを転送先アドレスとして選択する。その後処理はオペレーションFFへ進む。
【0099】
オペレーションFEにおいて転送先アドレス情報生成部63は、オペレーションFBで選択されたアドレスのうち、ホップ数が最小である転送先アドレスを選択する。その後処理はオペレーションFFへ進む。オペレーションFFにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iの値を1つ分増加させる。オペレーションFGにおいて転送先アドレス情報生成部63は、変数iがMより大きいかを判定する。変数iがMより大きいとき(オペレーションFG:Y)、処理は終了する。変数iがM以下のとき(オペレーションFG:N)、処理はオペレーションFBへ戻る。
【0100】
なお図15に示すオペレーションFBにおいても、図14の処理と同様に無線装置10−aから宛先アドレスまでの経路コストを算出することによって転送先アドレスを選択してもよい。
【0101】
本実施例によれば、処理遅延により求めた経路コストが等しい転送先アドレスが複数あるとき、ホップ数が最小の経路を選択することができる。このためネットワーク中の中継回数を低減することができ、無線装置の処理負荷を低減することが可能となる。
【0102】
次に、第1の種類の無線装置10−aの他の構成例を説明する。図16は、第1の種類の無線装置10−aの第4構成例を示す図である。図3に示す構成要素と同様の構成要素には同じ参照符号を付する。図16に示す構成例は、図3に示す第1転送部32及び第2転送部34の細部の構成例を説明する。以下に説明する第1レイヤパケット解析部70と、転送レイヤ判定部71と、第2レイヤパケット解析部72と、第1レイヤ転送部73と、第2レイヤ転送部74は、第1転送部32及び第2転送部34の一例であってよい。
【0103】
第1レイヤパケット解析部70は、受信部31によって受信された第1レイヤパケットを解析する。転送レイヤ判定部71は、第1レイヤパケット解析部70の解析結果に従って受信されたパケットの転送レイヤを判定する。すなわち転送レイヤ判定部71は、受信された第1レイヤパケットが送信データをデータユニットとして格納しているか、それとも第1レイヤパケット内にカプセル化された第2レイヤパケット内に送信データが格納されているかを判定する。
【0104】
転送レイヤ判定部71は、第1レイヤパケットのヘッダの値に応じて転送レイヤを判定してよい。例えば、転送レイヤ判定部71は、図6に示すパケット100のタイプ111及びサブタイプ112の値に応じて転送レイヤを判定してよい。転送レイヤが第1レイヤであるとき、転送レイヤ判定部71は、第1レイヤパケットのデータ部102に格納されたデータを、第1レイヤ転送部73及び第2レイヤ転送部74へ出力する。
【0105】
また転送レイヤ判定部71は、ヘッダに格納された宛先アドレスを経路決定部41へ出力する。例えば、転送レイヤ判定部71は、図6に示すパケット100の宛先アドレス114に格納された第1レイヤアドレスを経路決定部41へ出力してよい。また例えば、転送レイヤ判定部71は、パケット100の拡張部分115に格納された第2レイヤアドレスの宛先アドレスを経路決定部41へ出力してよい。転送レイヤ判定部71は、タイプ111及びサブタイプ112の値に応じて、拡張部分115に宛先アドレスが格納されているか否かを判定してよい。
【0106】
転送レイヤが第2レイヤであるとき、転送レイヤ判定部71は、第1レイヤパケットにカプセル化された第2レイヤパケットを、第2レイヤパケット解析部72へ出力する。第2レイヤパケット解析部72は、第2レイヤパケットを解析し、第2レイヤパケットのデータ部に格納されたデータを、第1レイヤ転送部73及び第2レイヤ転送部74へ出力する。また第2レイヤパケット解析部72は、ヘッダに格納された宛先アドレスを経路決定部41へ出力する。
【0107】
第1レイヤ転送部73は、転送レイヤ判定部71又は第2レイヤパケット解析部72から受信したデータ、又は無線装置10−aを送信元とするデータを、第1レイヤパケット生成部33へ出力する。また、第1レイヤ転送部73は、第1レイヤパケット生成部33へ出力したデータを、第1レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ転送するための転送処理を行う。転送処理の際に、第1レイヤ転送部73は、パケットの宛先アドレスと転送先アドレスを経路決定部から取得し、第1レイヤパケット生成部33へ与える。
【0108】
第2レイヤ転送部74は、転送レイヤ判定部71又は第2レイヤパケット解析部72から受信したデータ、又は無線装置10−aを送信元とするデータを、第2レイヤパケット生成部35へ出力する。また、第2レイヤ転送部74は、第2レイヤパケット生成部35へ出力したデータを、第2レイヤにおいて次の転送先の無線装置へ転送するための転送処理を行う。転送処理の際に、第2レイヤ転送部74は、パケットの宛先アドレスと転送先アドレスを経路決定部から取得し、第2レイヤパケット生成部35へ与える。
【0109】
本実施例によれば、転送レイヤ判定部71によりパケットの転送レイヤが判定され、転送レイヤが第1レイヤであるとき、第2レイヤパケットより下位の第1レイヤパケットから受信データを取り出すことができる。このため第2レイヤパケットの解析処理を省いて、転送処理を高速化することができる。
【0110】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0111】
(付記1)
第1の種類の無線装置であって、
第1レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第1転送部と、
前記第1レイヤよりも上位の第2レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第2転送部と、
前記第1の種類の他の無線装置から前記第1レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を受信する第1アドレス受信部と、
前記第1の種類の他の無線装置から前記第2レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を、及び前記第2レイヤにおけるパケットの転送を行う第2の種類の無線装置から前記第2レイヤにおける前記第2の種類の前記無線装置のアドレス情報を受信する第2アドレス受信部と、
前記第1アドレス受信部及び前記第2アドレス受信部により受信された前記アドレス情報に基づき、前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置を検出する検出部と、
パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスの無線装置の種類が前記第1の種類か第2の種類かに応じて、前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを、前記第1レイヤ及び前記第2レイヤのいずれか一方から選択する転送レイヤ選択部と、
を備える無線装置。
【0112】
(付記2)
前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置から経路情報を受信する経路情報受信部と、
受信した前記経路情報に基づいて、パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスを指定する転送先アドレス情報を生成する転送先アドレス情報生成部と、を備え、
前記経路情報は、前記経路情報の送信元の無線装置のアドレス情報と前記送信元の無線装置からパケットを転送できる宛先アドレスとを含む、付記1に記載の無線装置。
【0113】
(付記3)
前記転送先アドレス情報生成部は、パケットの転送レイヤが前記第1レイヤか第2レイヤかに応じて異なる経路コストに基づいて、次の転送先アドレスを決定する付記2に記載の無線装置。
【0114】
(付記4)
前記転送先アドレス情報生成部は、複数の経路の経路コストが等しい場合、各前記経路におけるホップ数に基づいて、次の転送先アドレスを決定する付記3に記載の無線装置。
【0115】
(付記5)
パケットを受信するパケット受信部と、
受信された前記パケットのヘッダの値に応じて、受信された前記パケットが前記第1レイヤ及び第2レイヤのいずれで転送されたかを判定する判定部と、
を備える付記1〜4のいずれか一項に記載の無線装置。
【0116】
(付記6)
前記第1レイヤにおいてパケットを転送する場合、前記第1転送部は、前記第1レイヤのヘッダ内に前記第2レイヤにおける宛先アドレスを格納する付記1〜5のいずれか一項に記載の無線装置。
(付記7)
第1の種類の無線装置にて実行されるパケットの転送方法であって、
第1レイヤ及び前記第1レイヤよりも上位の第2レイヤのうちパケット転送を行うレイヤを選択する前記第1の種類の他の無線装置から、前記第1レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を受信し、
前記他の無線装置から前記第2レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を、及び前記第2レイヤにおけるパケットの転送を行う第2の種類の無線装置から前記第2レイヤにおける前記第2の種類の前記無線装置のアドレス情報を受信し、
受信された前記アドレス情報に基づき、前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置を検出し、
パケットの宛先アドレスに対して指定される次の転送先アドレスの無線装置の種類が前記第1の種類か第2の種類かに応じて、前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを、前記第1レイヤ及び前記第2レイヤのいずれか一方から選択し、
選択されたレイヤにおいて前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する、
パケットの転送方法。
【符号の説明】
【0117】
1 ネットワーク
10−a、10−1、10−2、10−5 第1の種類の無線装置
10−3、10−4 第2の種類の無線装置
32 第1転送部
34 第2転送部
36 第1アドレス受信部
37 第2アドレス受信部
38 検出部
39 転送先アドレス記憶部
40 転送レイヤ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の種類の無線装置であって、
第1レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第1転送部と、
前記第1レイヤよりも上位の第2レイヤにおいてパケットを次の転送先へ転送する第2転送部と、
前記第1の種類の他の無線装置から前記第1レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を受信する第1アドレス受信部と、
前記他の無線装置から前記第2レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を、及び前記第2レイヤにおけるパケットの転送を行う第2の種類の無線装置から前記第2レイヤにおける前記第2の種類の前記無線装置のアドレス情報を受信する第2アドレス受信部と、
前記第1アドレス受信部及び前記第2アドレス受信部により受信された前記アドレス情報に基づき、前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置を検出する検出部と、
パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスの無線装置の種類が前記第1の種類か第2の種類かに応じて、前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを、前記第1レイヤ及び前記第2レイヤのいずれか一方から選択する転送レイヤ選択部と、
を備える無線装置。
【請求項2】
前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置から経路情報を受信する経路情報受信部と、
受信した前記経路情報に基づいて、パケットの宛先アドレスに対する次の転送先アドレスを指定する転送先アドレス情報を生成する転送先アドレス情報生成部と、を備え、
前記経路情報は、前記経路情報の送信元の無線装置のアドレス情報と前記送信元の無線装置からパケットを転送できる宛先アドレスとを含む、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記転送先アドレス情報生成部は、パケットの転送レイヤが前記第1レイヤか前記第2レイヤかに応じて異なる経路コストに基づいて、次の転送先アドレスを決定する請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記第1レイヤにおいてパケットを転送する場合、前記第1転送部は、前記第1レイヤのヘッダ内に前記第2レイヤにおける宛先アドレスを格納する請求項1〜3のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項5】
第1の種類の無線装置にて実行されるパケットの転送方法であって、
第1レイヤ及び前記第1レイヤよりも上位の第2レイヤのうちパケット転送を行うレイヤを選択する前記第1の種類の他の無線装置から、前記第1レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を受信し、
前記他の無線装置から前記第2レイヤにおける前記他の無線装置のアドレス情報を、及び前記第2レイヤにおけるパケットの転送を行う第2の種類の無線装置から前記第2レイヤにおける前記第2の種類の前記無線装置のアドレス情報を受信し、
受信された前記アドレス情報に基づき、前記他の無線装置及び前記第2の種類の前記無線装置を検出し、
パケットの宛先アドレスに対して指定される次の転送先アドレスの無線装置の種類が前記第1の種類か第2の種類かに応じて、前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する転送レイヤを、前記第1レイヤ及び前記第2レイヤのいずれか一方から選択し、
選択されたレイヤにおいて前記パケットを前記次の転送先アドレスへ転送する、
パケットの転送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−234300(P2011−234300A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105433(P2010−105433)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】