説明

無線通信装置、無線通信方法および無線通信プログラム

【課題】マルチホップ通信ネットワークにおいて各ノードの通信機会が公平に保たれるようにしつつフロー制御を行う技術を提供する。
【解決手段】自ノードの通信負荷を判定し、通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードへパケットを送信している隣接ノードに対して送信レートを抑制するよう指示する。ここで、送信レートを抑制するよう指示する対象となる隣接ノードは、自ノードにパケットを送信している隣接ノードのうちから、その隣接ノードから送信されるパケットの量が、その隣接ノードのパケットに係る送信元ノードあるいはストリーム(送受信ノードペア)の数に比して最も多い隣接ノードとして決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップ通信ネットワークにおいて通信量を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークでは、1または複数のノードの中継を介して目的とする宛先ノードと通信(マルチホップ通信)を行っている。このようなアドホックネットワークでは、経路が集約する傾向にあり、同一の経路を複数の通信で共有することが起こりやすい。無線アクセスポイントなどは多くのノードが通信しようとするノードの一例である。多くのノードがアクセスポイントと通信するため、アクセスポイントに近くなればなるほど他ノードのパケットを中継する負荷が高くなってしまう。
【0003】
図13は、宛先ノードDに、ノード1,4,5,6が同時にパケットを送信している状況を示した図である。ノード1,4,5,6からの通信はノードDに向かっているため、ノードDに近くなればなるほど多くの通信負荷がかかる。このような状況では、ノード1は自らのパケットを送信する機会を失うばかりでなく、ノード4,5,6のパケットも途中で損失されるといったことが発生する。
【0004】
これに対して、特許文献1、2に記載の技術は、アドホックネットワークにおいて他通信の中継ノードとなっているノードが、自ら生成するパケットの送信機会が減ってしまうことを解決課題とし、中継パケットよりも自ら生成したパケットの優先度を高く設定することで、中継ノードが不利となる可能性を減らしている。
【0005】
また、特許文献3に記載の技術は、通信負荷が大きくなったノードが隣接ノードに対して、送信モードを切り替える要求を出すことが記載されている。ここで、送信モードの切替とは、例えば動画配信においては、データ圧縮方式を変更したり、フレームレートを変更したりすることであり、これによって送信データ量を制御することができる。したがって、通信負荷が大きくなったノードは隣接するノードに対して送信量を減らすよう指示することで輻輳を回避することができる。
【0006】
また、半二重通信方式のイーサネット(登録商標)において、通信負荷が大きくなった場合にジャミング信号(信号)を故意に送信して、他のノードの送信を一定時間停止させるバックプレッシャという技術も知られている(非特許文献1)。
【0007】
また、特許文献4に記載の技術は、アドホックネットワーク内の各ノードが負荷情報を交換しネットワーク全体の負荷を知り、高負荷のノードに対して多くの通信リソースを割り当てることで、各ノードの通信機会を公平化している。
【特許文献1】特開2004−312542号公報
【特許文献2】特開2006−101477号公報
【特許文献3】特開2006−50371号公報
【特許文献4】特開2005−303828号公報
【非特許文献1】大崎 博之、他3名、「バックプレッシャ機能を有するATM LANスイッチの性能評価 最大スループット解析」、電子情報通信学会論文誌、Vol.J78−B−I、pp.179−188,1995年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
【0009】
特許文献1,2に記載の技術のように自ノードが生成したパケットの優先度を高くして送信する方法では、中継ノードが不利を被る可能性を減らすことはできるものの、ネットワーク内の各ノードが送信する機会を公平にすることはできない。複数のノードが同一ノード宛てにパケットを送信する場合、最も宛先ノードに近いノードが送信するパケットが最優先され、その他のパケットが届かないという問題が発生する。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術は、動画の圧縮方式やフレームレートを変更するというアプリケーションレベルでの処理を変更することによって送信量を制御している。つまり、どのようにして送信量を制御するかという処理を各アプリケーションに記述する必要があり、アドホックネットワーク一般に適用することは困難である。
【0011】
また、バックプレッシャは、有線で利用するものであり該当するポートにジャミング信号を流すことで必要なノードに対してのみ送信を抑制させることができるが、無線では周囲のノード全てに影響が出てしまう。また、ジャミングを通知されたノードは全ての通信が(宛先や緊急度・優先度に関係なく)強制的に停止されてしまうという問題もある。
【0012】
また、特許文献4に記載の技術は、ネットワーク全体の負荷情報を把握した上でリソースを割り当てる方式であるため、公平な通信機会を実現することは可能であるものの、ネットワーク全体の負荷情報を把握するための処理にオーバーヘッドがかかりすぎるという問題がある。また、ネットワークの大きさが大きくなったり、モバイル環境でネットワークトポロジーに変化があると、常に変化する通信負荷量をネットワーク全体で共有することは困難となる。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、マルチホップ通信ネットワークにおいて各ノードの通信機会が公平に保たれるようにしつつ輻輳を回避する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信装置は、複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置であって、自ノードの送信レートを管理する送信レート管理手段と、隣接ノードからパケットを受信する受信手段と、自ノードの通信負荷を判定する負荷判定手段と、自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している隣接ノードに対して送信レートの抑制を要求する送信レート抑制要求手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、前記送信レート抑制要求手段は、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求することが好適である。
【0016】
この構成によれば、上記無線通信システム内の各無線通信装置の送信レートを抑制して輻輳を回避する際に各無線通信装置から送信される送信レートが、各ノードで等しくなるように制御される。また、各無線通信装置は、自ノード内の情報のみに基づいて送信レート抑制要求を送信しており、他のノードと通信することなく送信レート抑制要求を送信できるので、過大なオーバーヘッドを要することなく送信レートの抑制処理が可能となる。
【0017】
また、前記送信レート抑制要求手段は、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケッ
トに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求することが好適である。
【0018】
この構成によれば、上記無線通信システム内の各無線通信装置の送信レートを抑制して輻輳を回避する際に各無線通信装置から送信される1ストリームあたりの送信レートが公平となるように制御される。また、各無線通信装置は、自ノード内の情報のみ基づいて送信レート抑制要求を送信しており、他のノードと通信することなく送信レート抑制要求を送信できるので、過大なオーバーヘッドを要することなく送信レートの抑制処理が可能となる。
【0019】
また、前記送信レート管理手段は、通信に割り当てるリソースを調整することで送信レートを管理するものであり、前記リソースは、利用するチャネル数、帯域幅またはスロット数もしくはバックオフ時間の少なくともいずれかであることが好適である。
【0020】
また、前記送信レート管理手段は、パケットを転送する転送先ごとに、送信レートを設定するものであり、前記送信レート抑制要求手段は、特定隣接ノードに対して自ノードを転送先とするパケットの送信を抑制するよう要求することが好適である。
【0021】
このような構成によれば、各ノードは通信負荷が過大な転送先ノードに対するパケットの送信レートのみを抑制し、その他の転送先ノードに対する送信レートを維持できるので、効率的な通信を実現可能である。
【0022】
また、前記送信レート管理手段は、パケットを送信する宛先ごとに、送信レートを設定するものであり、前記負荷判定手段は、宛先ノードごとに通信負荷を判定し、前記送信レート抑制要求手段は、過負荷であると判定された宛先ノードへの通信について、前記ストリーム数もしくは前記送信元ノード数に比した送信パケットの量が最も多い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、該宛先ノードへの送信レートを抑制するよう要求することが好適である。
【0023】
このような構成によれば、各ノードは通信負荷が過大な宛先ノードに対するパケットの送信レートのみを抑制し、その他ノードを宛先とするパケットの送信レートを維持できるので、効率的な通信を実現可能である。
【0024】
また、本発明に係る無線通信方法は、複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置が行う無線通信方法であって、前記無線通信装置が、自ノードの送信レートを管理し、隣接ノードからパケットを受信し、自ノードの通信負荷を判定し、自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る無線通信方法は、複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置が行う無線通信方法であって、前記無線通信装置が、自ノードの送信レートを管理し、隣接ノードからパケットを受信し、自ノードの通信負荷を判定し、自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る無線通信プログラムは、複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信プログラムであって、前記無線通信装置に対して、自ノードの送信レートを管理させ、隣接ノードからパケットを受信させ、自ノードの通信負荷を判定させ、自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求させることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る無線通信プログラムは、複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信プログラムであって、前記無線通信装置に対して、自ノードの送信レートを管理させ、隣接ノードからパケットを受信させ、自ノードの通信負荷を判定させ、自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、マルチホップ通信ネットワークにおいて各ノードの通信機会が公平に保たれるようにしつつ輻輳を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態では、複数の移動可能な無線通信装置からアドホック無線通信ネットワークが構成される。アドホック無線ネットワークでは、直接通信することができないノード間の通信は、他のノードによる中継を介して実現される。このように、アドホック無線ネットワークは、複数のホップによって送信元ノードと宛先ノードの間で通信が行われるマルチホップ通信を用いている。
【0031】
図1は、本実施形態に係るアドホック無線通信システムのネットワークトポロジーの例を示す図である。図1において、実線で結ばれたノード同士は直接通信を行うことができる。具体的には、図1におけるノード1はノードDおよびノード2と直接通信できる。このように、ノード1と直接通信できるノードのことを、ノード1の隣接ノードという。
【0032】
さて、図1においてノードDはインターネットなどへの接続を提供するアクセスポイントであるとする。このような場合、ネットワーク内の多くのノードがノードDと通信しようとするため、ノードDに近いほど通信負荷が増大し、輻輳が発生してしまう。本実施形態は、各ノードの送信レート(単位時間あたりに送信するパケットの量)を制御して輻輳を回避する際に、各ノードの送信機会が公平となるように送信レートを制御することを目的とする。
【0033】
<機能構成>
本実施形態における無線通信装置について説明する。まず、本実施形態における無線通信装置は、移動可能な無線通信装置である。具体的には、ノートパソコン、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等のようにその装置自体を持ち運び可能なものの他、自動車等に固定されて設置されてはいるが設置された対象物(自動車等)が移動体で
あるため移動する無線通信装置も含まれる。無線通信装置は、ハードウェア構成としては、バスを介して接続されたCPU(中央演算処理装置)、主記憶装置(RAM)、補助記憶装置(ROM)、通信インタフェースなどを備えるように構成される。
【0034】
図2は、本実施形態における無線通信装置の機能構成を示す図である。本実施形態における無線通信装置は、補助記憶装置に記憶された各種のプログラム(OS、アプリケーション等)が主記憶装置にロードされCPUによって実行されることによって、パケット受信部11、パケット判定部12、パケットバッファ13、負荷判定部14、通信リソース割当部15、リソース割当パケット生成部16、パケット送信部17、経路記憶部18として機能する。また、本実施形態における無線通信装置の全部または一部の機能部は、専用のチップによって構成されても良い。
【0035】
以下、図2を参照して無線通信装置の各機能部について説明する。なお、各機能部の詳細な動作については後述する処理フローの中で説明することとし、ここでは各機能部の概要について説明する。
【0036】
パケット受信部11は、送信されるパケットを受信する。受信したパケットはパケット判定部12へ送られる。
【0037】
パケット判定部12は、受信したパケットが自ノード宛である場合には上位層へと渡す。受信したパケットが他ノード宛であり中継すべきパケットである場合には、パケットバッファ13へ格納する。また、受信したパケットがリソース割当に関するパケット(リソース割当パケット)である場合には、通信リソース割当部15へと送る。
【0038】
パケットバッファ13は、送信するパケットを一時的に格納する。具体的には上位層(アプリケーションプログラム)から送信されるパケットや、自ノードが中継するパケットが格納される。
【0039】
負荷判定部14は、パケットバッファ13に溜まっているパケット量の変化をみることで、現在自ノードに割り当てられている通信リソースの過不足を判定する。
【0040】
通信リソース割当部15は、隣接ノードから送信される通信リソース割当パケット(後述)にしたがって、自ノードに割り当てる通信リソースを調整する。また、通信リソース割当部15は、負荷判定部14によって自ノードに割り当てられている通信リソースが不足(通信負荷が過負荷)の場合に、パケット送信部17に割り当てている通信リソースの量を増やす。ここで、自ノードの通信リソースをこれ以上増やすことができない場合には、自ノードの上位層に対して送信量を少なくする通知を行うか、中継すべきパケットを送ってくる隣接ノードに対して通信リソースの削減を要求する。なお、通信リソースを削減することによって単位時間あたりに送信するパケットの数が低下するので、通信リソースの削減要求は送信レートの抑制要求に相当する。
【0041】
逆に、自ノードに割り当てられている通信リソースと比べて通信負荷が少ない場合は、上位層または中継すべきパケットを送ってくる隣接ノードに対して、通信リソースの割当を増加させることを許可する通知を行う。
【0042】
なお、通信リソースとは通信に係る資源(リソース)であり、多く割り当てられるほど単位時間あたりに送信できるパケットの量(送信レート)が向上する。通信リソースの例として、無線通信装置が使用する無線通信方式に応じて、チャネル数、帯域幅、スロット数、バックオフ時間などを上げることができる。ここで、チャネル数、帯域幅およびスロット数については割当数が多いほどリソースが多くなる(送信レートが大きくなる)のに
対し、バックオフ時間については割り当てるバックオフ時間が短いほどリソースが多くなる。
【0043】
リソース割当パケット生成部16は、通信リソース割当部15によって、隣接ノードに対して通信リソースの削減を要求したり、通信リソースの割当を増加させることを許可したりすると判定された場合に、隣接ノードに対して送信するパケット(リソース割当パケット)を生成する。
【0044】
パケット送信部17は、パケットバッファ13に格納されているパケットや、リソース割当パケット生成部16が生成したリソース割当パケットを送信する。この際、パケット生成部17は、通信リソース割当部15によって自ノードに割り当てられている通信リソースの範囲内でパケットの送信を行う。
【0045】
経路記憶部18には、経路情報が記憶されており、宛先ノードごとに次にどの隣接ノードにパケットを送信すればよいかが記憶されている。経路情報の作成は既存のどのような技術によって行われても良く、例えば、AODV(Ad-hoc On-demand Distance Vector)プロトコルやOLSR(Optimized Link State Routing)プロトコルなどによって作成することができるが、その他の方法によって経路情報を作成しても良い。なお、プロアクティブ型のルーティングプロトコルを用いてあらかじめ経路情報テーブルを作成しておく方法以外に、DSR(Dynamic Source Routing)プロトコル等のリアクティブ型のルーティングプロトコルを用いてパケット送信時に経路情報を取得する構成としても構わない。
【0046】
<処理フロー>
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施形態における無線通信装置の流量制御の処理フローについて説明する。この図3のフローチャートは一定時間ごとに行われる処理である。
【0047】
まず、負荷判定部14がパケットバッファ13をチェックし(S101)、現在の通信負荷と自ノードに割り当てられている通信リソースとの比較を行う(S102)。この比較は、パケットバッファ13に溜まっているパケットの量が増加しているのか、減少しているのか、変化がないのかを判定することによって行われる。
【0048】
通信負荷が通信リソースよりも大きい過負荷状態の場合、すなわちパケットバッファ13内のパケット数が増加している場合は、ステップS103へと進む。
【0049】
ステップS103では、自ノードに通信リソースを割り当てることが可能であるか判定する(S103)。すなわち、現在自ノードに割り当てられている通信リソースと、自ノードが割当可能な通信リソースを比較し、現在割り当てられている通信リソースが割当可能な通信リソースよりも少ない場合は、割当可能な範囲内で自ノードに通信リソースを割り当てる。なお、通信リソースが割当可能であるというのは、自ノードが能力的に余剰の通信リソースを保有しているだけでなく、これに加えて他ノードから通信リソースの割当を許可されていることをいう。
【0050】
自ノードに通信リソースを割り当てることが可能である場合(S103−YES)は、自ノードのパケット送信部17に通信リソースを割り当てる(S104)。一方、自ノードにこれ以上通信リソースを割り当てられない場合(S103−NO)は、通信リソース割当部15が、自ノードが送信すべきパケット量を削減(送信レートを低下)するために、自ノードの上位層もしくは自ノードにパケットを送信してくる隣接ノードに対して送信レートを低下する送信量削減処理を行う(S105)。この処理の詳細は後述する。
【0051】
また、ステップS102において、通信負荷が通信リソースよりも小さい場合、すなわちパケットバッファ13内のパケット数が減少している場合は、ステップS106へと進み、自ノードの上位層もしくは自ノードにパケットを送信してくる隣接ノードに対して送信レートを増加させても良いことを通知する送信量増加処理を行う(S106)。この処理の詳細も後述する。
【0052】
また、通信負荷と通信リソースとが均衡している場合、すなわちパケットバッファ13内のパケット数に変化がない場合には、特に処理を行わずこのルーチンを終了する。なお、パケットバッファ13に溜まっているパケット数に変化があるかないかの判定は、ある程度のマージンを取って判定する構成としても構わない。
【0053】
[送信量削減処理]
次に、通信リソース割当部15がステップS105において行う、送信量削減処理の詳細を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
通信リソース割当部15は、まず、パケットバッファ13に溜まっているパケットを調べて、転送元ノードごとに、そのノードからのパケットの数と、そのパケットに係る送信元ノードの数を算出する(S201)。バッファ内に溜まっているパケットの量は、その転送元ノードからの送信レート(に比例する)とみなすことができる。なお、ここで転送元ノードには自ノードも含まれる。すなわち、自ノードの上位層がパケットバッファ13に格納したパケットについても、ステップS201において調べられることになる。
【0055】
全ての転送元ノードについてパケット数および送信元ノード数を算出した後に、送信元ノードあたりのパケット数が最も多いノードを選択する(S202)。すなわち、送信元ノードの数に比して最も送信レートの高いノードを選択する。ここで、送信元ノードあたりのパケット数が最も多いノードが複数存在する場合には、パケットバッファに格納されているパケット数が最も多いノードを選択することが好適である。また、格納されているパケット数も同数である場合には、ランダムに1つのノードを選択するようにしてもよい。
【0056】
そして、選択されたノードが自ノードであるか判定し(S203)、自ノードである場合(S203−YES)には、通信リソース割当部15は上位層へ送信量を削減するよう要求する(S205)。一方、選択されたノードが自ノードではない場合(S203−NO)、すなわち選択されたノードが隣接ノードである場合には、選択したノードへリソースを削減する指示を送信する(S204)。隣接ノードへのリソース削減の指示は、具体的には、リソース割当パケット生成部16が、リソースの削減を指示するパケット(リソース割当パケット)を生成し、このパケットをパケット送信部17が送信することによって行われる。
【0057】
図5は、リソース割当パケットのメッセージフォーマットを示す図である。図5が示すように、リソース割当パケットは、IPヘッダ51、TCP/UDPヘッダ52、リソースの削減を通知するのか増加許可を通知するのかを示す種別53、時刻54、どの宛先ノードあての通信についてリソースの割当を通知するのかを示す宛先アドレス55、および割り当てるリソースをどれだけ削減もしくは増加するのかを示すリソース変化量56とから構成される。
【0058】
S204においては、リソースを削減する要求するリソース割当パケットが生成され、これを受信した隣接ノードは、自ノードの通信リソースの割当を減少させる。
【0059】
[送信量増加処理]
次に、通信リソース割当部15がステップS106において行う、送信量増加処理の詳細を図6のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
通信リソース割当部15は、まず、パケットバッファ13に溜まっているパケットを調べて、転送元ノードごとに、そのノードからのパケットの数と、そのパケットに係る送信元ノードの数を算出する(S301)。ここで、転送元ノードに自ノードが含まれることは上記の送信量削減処理と同様である。
【0061】
全ての転送元ノードについてパケット数および送信元ノード数を算出した後に、送信元ノードあたりのパケット数が最も少ないノードを選択する(S302)。すなわち、送信元ノードの数に比して最も送信レートの低いノードを選択する。そして、選択されたノードが自ノードであるか判定し(S303)、自ノードである場合(S303−YES)には、通信リソース割当部15は上位層へ送信量を増加しても良いことを通知する(S305)。一方、選択されたノードが自ノードではない場合(S303−NO)、すなわち選択されたノードが隣接ノードである場合には、選択されたノードへリソースを増加しても良いことを通知する(S304)。隣接ノードへのリソース増加許可の通知は、上記と同様に、リソース割当パケット生成部16が図5に示すリソース割当パケットを生成して、これをパケット送信部17が送信することによって行われる。
【0062】
<動作例>
本実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する。ここでは、図1の示すネットワークトポロジーの状況において、ノード1,4,5,6の4つのノードがノードDに対してパケットを送信する場合を例にとって説明する。
【0063】
なお、ここでは、通信リソースの量を単位時間あたりに送信できるパケットの量で示すことにし、各隣接ノード間に割り当てること可能な最大通信リソース数を「4」として説明する。
【0064】
図7a〜図7gは、リソース割当の変化すなわち各ノードの送信レートの変化を説明する図である。図7aでは全てのノードが最大の送信レートでパケットを送信しており、徐々にフロー制御が効いて図7gでパケット落ちの生じない定常状態となっている。なお、図7a〜図7gでは、ノード間で単位時間あたりに送信されるパケットの数(送信レート)とそのパケットの送信元ノード、および各ノードに割り当てられる通信リソースの量が示されている。例えば、図7aにおいて、ノード1はノードDに対して単位時間あたり4つのパケットを送信しており、それらのパケットの送信元ノードはノード1,4,5,6である。また、ノード1に割り当てられている通信リソース量が「4」であることが分かる。
【0065】
図7aの状況において、ノード1,2,3の各ノードに対して、単位時間あたり4つ以上のパケットが入ってくるため、ここでパケット落ちが生じている。なお、ノード1が受信するパケットの数は単位時間あたり4つであるが、ノード1(のアプリケーション)からもパケットの送信が行われるため、パケット落ちが生じてしまう。
【0066】
そこで、ノード1は、送信元のノードであるノード2に対してリソースの削減(送信レートの低減)を要求する。
【0067】
また、ノード2も送信元のノードに対してリソースの削減を要求する。ここで、ノード2はノード3とノード4からパケットを受信しており、どのノードに対してリソースの削減を要求するのか以下のようにして決定する。ノード3から受信するパケットは、送信元ノードがノード5,6の2つであってパケット数(送信レート)は「4」であることが分
かる。一方、ノード4から受信するパケットは、送信元ノードがノード4の1つだけであってパケット数は「4」であることが分かる。したがって、ノード2からは送信元ノードあたり2つのパケットが送信されてくるのに対し、ノード4からは送信元ノードあたり4つのパケットが送信されてくる。したがって、ノード2は、送信元ノードあたりの送信パケット数が多い(送信レートが高い)ノード4に対してリソースを削減する要求を送信する。
【0068】
また、ノード3も送信元のノードに対してリソースの削減を要求する。この際、ノード3は、ノード5,6からパケットを受信しており、いずれのノードからも送信元ノードあたり4つのパケットを受信している。したがって、ノード5,6のどちらにリソースの削減を要求しても良く、ここではノード5に対してリソースの削減を要求している。
【0069】
図7aにおいて上記のようにパケット落ちの発生している各ノードが隣接ノードに対してリソース削減要求を送信した結果、図7bに示す状況となる。
【0070】
図7bに示す状況において、ノード1では、ノード2からの送信レートが低下したためパケット落ちが解消している。一方、ノード2,3ではパケット落ちが解消していないので、さらに隣接ノードに対してリソースの削減要求を行う。ノード2は、送信元ノードあたり3つのパケットを送信しているノード4に対してリソースの削減要求を行う。また、ノード3は、送信元ノードあたり4つのパケットを送信しているノード6に対してリソースの削減要求を行う。
【0071】
この結果、図7bに示す状況から図7cに示す状況となる。ここでも、未だにノード2,3でパケット落ちが解消していないので、さらに隣接ノードに対してリソースの削減要求を行う。ノード2は、ノード3,4のいずれからも送信元ノードあたり2つのパケットを受信している。そこでノード2は単位時間あたりに送信するパケットの量の多いノード3に対してリソースの削減要求を行う。ノード3は、ノード5,6が同じ条件でパケットを送信しているため、ノード5,6のどちらに対してリソースの削減要求を送信しても良い。ここではノード5に対してリソースの削減要求を送信することとする。
【0072】
この結果、図7cに示す状況から図7dに示す状況となる。ここでも、未だにノード2,3でパケット落ちが解消していないので、さらに隣接ノードに対してリソースの削減要求を行う。上記と同様の基準によって、ノード2はノード4に対して、ノード3はノード6に対してリソースの削減を要求する。
【0073】
この結果、図7dに示す状況から図7eに示す状況となる。ここでも、未だにノード2,3でパケット落ちが解消していないので、さらに隣接ノードに対してリソースの削減要求を行う。上記と同様の基準によって、ノード2はノード3に対して、ノード3はノード5に対してリソースの削減を要求する。
【0074】
この結果、図7eに示す状況から図7fに示す状況となる。この時点でノード2ではパケット落ちが解消する。一方、ノード3ではパケット落ちが解消していないので、さらにノード6に対してリソースの削減要求を行う。
【0075】
最終的に図7gに示す状況となり、ノード3においてもパケット落ちが解消され、全てのノードにおいてパケット落ちが解消される。図7gに示すように、ノードDに対してパケットを送信しているノード1,4,5,6はいずれも、単位時間あたりに1つのパケットを送信するように送信レートが制御され、各送信元ノードに割り当てられる通信リソースが均等になるようにフロー制御が実行されたことが分かる。
【0076】
<作用・効果>
本実施形態によれば、通信が集約してパケット落ちが発生するような状況において、各ノードに割り当てられる通信リソースを制御して送信レートを制御することでパケット落ちを解消することが可能となる。これにより、パケット落ちに伴う再送処理等を省くことができるため、効率的な通信を行うことが可能となる。
【0077】
そして、送信レートの制御において、各送信元ノードに対して割り当てられる通信リソースの量が均等になるようにフロー制御が行われる。すなわち、図7gに示すように、ノード1,4,5,6のいずれも同じ送信レートでノードDと通信を行うことができ、各ノードで均等な通信機会を得ることができる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、各ノードは隣接ノードに対して送信レートを変更するよう指示するだけで、システム全体の通信が最適化される。また、送信レートの変更を要求する際に、各ノードは自ノード内で取得可能な情報のみに基づいてどのノードに対して送信レートの変更を要求するか決定しており、他ノードとの通信はリソース削減を要求する通知のみとなっている。したがって、フロー制御を行うために余計な通信が発生することがなくオーバーヘッドが生じないため、効率的に通信を行うことができる。
【0079】
<変形例>
上記の説明では、通信リソースの削減を要求する際に、通信リソースを「1」ずつ削減しているが、通信負荷が大きい場合にはさらに多くの量の通信リソースを削減するよう要求しても良い。通信負荷が大きいか否かは、パケットバッファに溜まっているパケットの量の増加量が所定の閾値よりも大きいか否かによって判断することができる。
【0080】
また、上記の説明では、通信リソースの削減は隣接ノードのうちの1つのノードに対してのみ通知していたが、複数のノードに対して同時に通信リソースを削減するように要求しても良い。特に、通信負荷が大きい場合に複数のノードに対して同時に通信リソースを削減することが好ましい。
【0081】
これらの方法によれば、より迅速にパケット落ちを解消することが可能となる。
【0082】
また、上記の説明では、自ノードにパケットを送信してくる隣接ノードの送信レートを、パケットバッファ13内に溜まっているパケット数に基づいて判断しているが、より直接的に単位時間あたりに何個のパケットを受信したかによって判断しても構わない。
【0083】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、各送信元ノードの送信レートが均等になるようにフロー制御を行った。これに対して本実施形態では、各ストリームあたりの送信レートが均等になるようにフロー制御を行う。なお、ストリームとは、送信元ノードと宛先ノードのペアであり、同じ送信元ノードから送信されるパケットであっても宛先が異なればそれらは異なるストリームである。
【0084】
本実施形態も第1の実施形態の構成と基本的に同様であるため、異なる部分について説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、図3のフローチャートにおける、送信量削減処理(S105)および送信量増加処理(S106)の内容である。
【0085】
本実施形態における自ノードの送信量を削減するための送信量削減処理のフローチャートは図8に示すとおりである。通信リソース割当部15は、まず、転送元ノードごとに、転送元ノードが送信しているストリームの数とパケットバッファ13に格納されているパケットの数を算出する(S801)。ストリームの数は、パケットバッファ13内に格納
されている特定の送信元ノードからのパケットを調べて、宛先ノードが何種類存在するか調べることによって得られる。
【0086】
そして、通信リソース割当部15はストリームあたりのパケット数が最も多い送信元ノードを選択する(S802)。すなわち、ストリームあたりのパケット数が最も多い送信元ノードが複数存在する場合は、パケットバッファ13内のパケット数が最も多い送信元ノードを選択することが好ましく、この条件も同等の場合はランダムに送信元ノードを選択して良い。
【0087】
選択されたノードが自ノードである場合(S803−YES)は、自ノードの上位層に対して送信量の削減を要求し(S805)、選択されたノードが隣接ノードである場合(S803−NO)は、選択されたノードに対してリソース削減指示を送信する(S804)。隣接ノードへのリソース削減指示は、第1の実施形態と同様に、リソース割当パケット生成部16によって生成されたリソース割当パケットを送信することによって行われる。
【0088】
また、本実施形態における送信量増加処理のフローチャートは図9に示すとおりである。送信量増加処理においても上記の送信量削減処理と同様に、転送元ノードごとに、ストリームの数とパケットの数とを算出し(S901)、ストリームあたりのパケット数が最も少ないノードを選択している(S902)。そして、選択されたノードに対して送信量を増加しても良いことを通知している(S904・S905)。
【0089】
次に、本実施形態におけるフロー制御の動作例を図10a〜図10fを用いて説明する。ここでは、図10aに示すネットワークトポロジーの状況において、ノード1,2,3,4の4つのノードがノードDに対してパケットを送信し、かつ、ノード3はノード1に対してもパケットを送信している場合を例に説明する。図10aに示す状況では、ノード1,2,4は1ストリームのみの通信を行っているのに対し、ノード3は2ストリームの通信を行っている。なお、図10aにおいて、四角で表されるパケットがノードD宛であり、丸で表されるパケットがノード1宛である。また、パケット内に示されている数字は送信元ノードの番号である。
【0090】
図10aに示す状況では、全てのノードが最大の送信レート(割当リソース量「4」)でパケットを送信している。ここで、ノード1には単位時間あたり4個のパケットが送信され、自ノードからも単位時間あたり1個のパケットを送信するが、受信パケットのうち1個は自ノード宛であるため、ノード1においてはパケット落ちが生じていない。これに対してノード2においては、転送すべきパケットの量が送信レートを超えるためパケット落ちが生じてしまう。
【0091】
そこで、ノード2は送信量を削減すべく自ノードの隣接ノードに対して送信レートの削減を要求する。ノード3はノードD宛とノード1宛の2ストリームの通信を行っており、送信量は単位時間あたり「4」であるため、ストリームあたりの送信量は「2」である。これに対して、ノード4はノードD宛の1ストリームの通信に対して、送信量「4」である。したがって、1ストリームあたりの送信量はノード4の方が多いので、ノード2はノード4に対して、リソースの削減(送信レートの低下)を要求する。
【0092】
この結果、図10bに示すようにノード4に割り当てられる通信リソース量が「3」に減少するが、まだノード2においてパケット落ちが発生している。ここで、ノード3は1ストリームあたりの送信量が「2」で、ノード4は1ストリームあたりの送信量が「3」であるため、ノード2はノード4に対してさらにリソースの削減を要求する。
【0093】
この結果、ノード4の通信リソース量が「2」となる(図10c)が、ノード2でのパケット落ちは解消していない。ここで、ノード3,4ともに1ストリームあたりの送信量が「2」であるが、ノード3からのパケットの量の方が多いので、ここではノード2はノード3に対して通信リソースの削減を要求する。
【0094】
この結果、ノード3の通信リソース量が「3」となる(図10d)が、ノード2でのパケット落ちは解消していない。ここで、ノード3は1ストリームあたりの送信量が「1.5」であるのに対し、ノード4は1ストリームあたりの送信量が「2」であるため、ノード2はノード4に対して通信リソースの削減を要求する。
【0095】
この結果、ノード4の通信リソース量は「1」となる(図10e)が、ノード2でのパケット落ちは解消していない。ここで、ノード3は1ストリームあたりの送信量が「1.5」であるのに対し、ノード4は1ストリームあたりの送信量が「1」であるため、ノード2はノード3に対して通信リソースの削減を要求する。
【0096】
この結果、ノード3の通信リソース量が「2」となる(図10f)。この状態でノード2におけるパケット落ちが解消する。図10eに示すように、いずれのノードについても割り当てられる通信リソース量は、そのノードが通信しているストリーム数に比例したものになる。すなわち、1ストリームあたりに割り当てられる通信リソース量(送信レート)が均等になり、各ストリーム(送受信ノードのペア)について平等な通信機会が与えられるようにフロー制御が実現される。
【0097】
(第3の実施形態)
本実施形態では、各ノードは転送先ノードごとに異なる通信リソース量(送信レート)を設定することを特徴とする。
【0098】
ここでは、図11に示す状況を例に説明する。図11においては、ノード1はノードD1とノードD2を宛先とする通信を行っており、ノード2はノードD1のみを宛先とする通信を行っている。図11に示すように、ノード1からのノードD1およびノードD2への通信経路はノード3で分岐している。一方、ノード1からノードD1への経路とノード2からノードD2への経路はノード4で合流している。
【0099】
上記第1および第2の実施形態で説明した方法でフロー制御を行うと、ノード4でパケット落ちが発生するので、ノード4はノード3(およびノード2)に対して通信リソースの削減を要求する。この要求にしたがってノード3は通信リソースを減らし送信レートを低下させるが、ノード3−ノードD2間ではパケット落ちは発生しておらず、この間の通信の送信レートを低下させる必要はない。
【0100】
そこで、各ノードは、割り当てる通信リソース量の設定を転送先ノードごとに保有することとする。そして、パケット落ちが発生しているノードは、自ノードを転送先とする通信に割り当てる通信リソース量を削減するように隣接ノードに要求する。図11では、ノード4は、ノード3に対して、ノード4を転送先とする通信に割り当てる通信リソース量を削減するよう要求する。本実施形態で使用する、通信リソース割当パケットのフォーマットを図12に示す。本実施形態における通信リソース割当パケットが上記の実施形態と異なる点は、宛先アドレス55の代わりに転送先アドレス57が設けられている点である。このフィールドに、このパケットがどのノードを転送先とする通信のリソースを割り当てるに関するものであるかを格納する。
【0101】
このように、転送先ごとに異なる通信リソース量を割り当てることにより、通信負荷の大きい転送先ノードへの送信レートを抑え、通信負荷の大きくない転送先ノードへは大き
な送信レートを使用するため、効率的な通信を実現できる。図11の例では、ノード3は、ノード4を転送先とする通信は送信レートを下げて行うが、ノードD2を転送先とする通信は特に送信レートを下げずに行うことができる。
【0102】
(第4の実施形態)
本実施形態では、各ノードは宛先ノードごとに異なる通信リソース量(送信レート)を設定することを特徴とする。
【0103】
図11に示す状況を再び例にとって説明すると、ノード3は、ノード1に対してノードD1を宛先とする通信へ割り当てるリソースを削減するよう要求することができる。すなわち、ノード1はノードD1宛のパケットの送信レートのみを下げて、ノードD2宛のパケットの送信レートを維持することができる。
【0104】
なお、このように宛先ノードごとに異なる通信リソースの割当を制御するために、図3に示すフロー制御を、それぞれの宛先ごとに行う必要がある。つまり、特定の宛先のパケットのみを対象にして、負荷判定とリソース割当制御を行う必要がある。
【0105】
このように、宛先ごとに異なる通信リソース量を割り当てることにより、通信負荷の大きい宛先ノードへの送信レートを抑え、通信負荷の大きくない宛先ノードへは大きな送信レートを使用するため、効率的な通信を実現できる。図11の例では、ノード1は、ノードD1を宛先とする通信は送信レートを下げて行うが、ノードD2を宛先とする通信は特に送信レートを下げずに行うことができる。
【0106】
(第5の実施形態)
上記の実施形態では、自ノードにかかる通信負荷が低いときに隣接ノードに対して送信量の増加を許可する処理(図3のS106)は、図4および図8のフローチャートに示すように、送信元ノードもしくはストリームあたりの送信レートが最も低いノードを選択してこのノードに対して通信リソースの割当を許可することによって行っている。
【0107】
しかしながら、選択したノードの通信リソースが不足しているので送信レートが低い場合以外に、そのノードのアプリケーションがそれほど高い送信レートで送信していない場合もあり得る。送信量の増加を許可するノードは、この違いを判断することが困難であり、それほど高い送信レートを必要としないノードに対して送信量の増加を許可してしまうことも起こり得る。
【0108】
そこで、本実施形態においては以下のようにして、送信量の増加を許可する処理を行う。すなわち、自ノードにかかる通信負荷が低いノードは、隣接する全てのノードに対して送信量の増加、すなわち、割り当てる通信リソースの増加を許可する。これによって、リソース不足によって送信レートが抑えられていたノードからは送信量が増え、元々アプリケーションからの送信レートが低いノードからの送信量は変化しない。このように隣接する全てのノードに対して割り当てる通信リソースの増加を許可することで、通信リソースの増加を必要とするノードは割当を増加することができる。
【0109】
このように隣接する全てのノードに対して送信量の増加を徐々に許可することで、自ノードが受信するパケットの量が増え、最終的には自ノードにかかる通信負荷が過負荷になってリソース不足(パケット落ち)が発生する。自ノードにリソース不足が発生した時点で、上記で説明したように、送信元ノードもしくはストリームあたりの送信レートが最も高い隣接ノードに対して送信レートの低下をすることで、より好適なリソース割当が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信システムのネットワークトポロジーの例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるフロー(流量)制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態における自ノードの送信量を削減するために自ノードの上位層もしくは隣接ノードの送信レートを低下させる処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態におけるリソース割当パケットのフォーマットを示す図である。
【図6】第1の実施形態における自ノードの送信量を増加するために自ノードの上位層もしくは隣接ノードの送信レートの増加を許可する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7a】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7b】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7c】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7d】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7e】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7f】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図7g】第1の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図8】第2の実施形態における自ノードの送信量を削減するために自ノードの上位層もしくは隣接ノードの送信レートを低下させる処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における自ノードの送信量を増加するために自ノードの上位層もしくは隣接ノードの送信レートの増加を許可する処理の流れを示すフローチャートである。
【図10a】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図10b】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図10c】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図10d】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図10e】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図10f】第2の実施形態におけるフロー制御の動作例を説明する図である。
【図11】第3の実施形態におけるフロー制御を説明するためのネットワークトポロジーの例である。
【図12】第3の実施形態におけるリソース割当パケットのフォーマットを示す図である。
【図13】アドホックネットワークにおいて複数のノードが特定のノードと同時に通信している状況を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
11 パケット受信部
12 パケット判定部
13 パケットバッファ
14 負荷判定部
15 通信リソース割当部
16 リソース割当パケット生成部
17 パケット送信部
18 経路記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置であって、
自ノードの送信レートを管理する送信レート管理手段と、
隣接ノードからパケットを受信する受信手段と、
自ノードの通信負荷を判定する負荷判定手段と、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している隣接ノードに対して送信レートの抑制を要求する送信レート抑制要求手段と、
を有し、
前記送信レート抑制要求手段は、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置であって、
自ノードの送信レートを管理する送信レート管理手段と、
隣接ノードからパケットを受信する受信手段と、
自ノードの通信負荷を判定する負荷判定手段と、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している隣接ノードに対して送信レートの抑制を要求する送信レート抑制要求手段と、
を有し、
前記送信レート抑制要求手段は、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記送信レート管理手段は、通信に割り当てるリソースを調整することで送信レートを管理するものであり、
前記リソースは、利用するチャネル数、帯域幅またはスロット数もしくはバックオフ時間の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信レート管理手段は、パケットを転送する転送先ごとに、送信レートを設定するものであり、
前記送信レート抑制要求手段は、前記特定隣接ノードに対して自ノードを転送先とするパケットの送信を抑制するよう要求する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送信レート管理手段は、パケットを送信する宛先ごとに、送信レートを設定するものであり、
前記負荷判定手段は、宛先ノードごとに通信負荷を判定し、
前記送信レート抑制要求手段は、過負荷であると判定された宛先ノードへの通信について前記特定隣接ノードを決定し、該特定隣接ノードに対して前記宛先ノードへの送信レートを抑制するよう要求する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置が行う無線通信方法であって、
前記無線通信装置が、
自ノードの送信レートを管理し、
隣接ノードからパケットを受信し、
自ノードの通信負荷を判定し、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信装置が行う無線通信方法であって、
前記無線通信装置が、
自ノードの送信レートを管理し、
隣接ノードからパケットを受信し、
自ノードの通信負荷を判定し、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信プログラムであって、
前記無線通信装置に対して、
自ノードの送信レートを管理させ、
隣接ノードからパケットを受信させ、
自ノードの通信負荷を判定させ、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係る送信元ノードの数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求させる
ことを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項9】
複数の無線通信装置から構成され、1または複数の無線通信装置が中継することによって無線通信装置間で通信を行う無線通信システムにおける無線通信プログラムであって、
前記無線通信装置に対して、
自ノードの送信レートを管理させ、
隣接ノードからパケットを受信させ、
自ノードの通信負荷を判定させ、
自ノードの通信負荷が過負荷であると判定された場合に、自ノードにパケットを送信している複数の隣接ノードのうち、その隣接ノードから送信されるパケットの送信レートが送信されるパケットに係るストリーム数に比して最も高い隣接ノードである特定隣接ノードに対して、送信レートの抑制を要求させる
ことを特徴とする無線通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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